民訴ゼロから民訴#79

同時審判申出共同訴訟と主観的予備的併合

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第4章 複雑訴訟 #79/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

どちらかには勝てるはずなのに——両方に負けた

冒頭事案の関係図(原告A/本人B/Bの代理人と名乗ったC/AはCと契約した/AはBに履行を求め敗訴=代理権は与えていない/AはCに責任を求め敗訴=代理権はあった/争点はどちらも代理権の有無) 図:冒頭事案の関係図

  • 原告A
  • 本人B/Bの代理人と名乗ったC/AはCと契約した
  • AはBに履行を求め敗訴=代理権は与えていない
  • AはCに責任を求め敗訴=代理権はあった
  • 争点はどちらも代理権の有無

Aさんは、Bさんの代理人だと名乗るCさんと契約しました。ところが、契約は履行されません。そこでAさんは、まずBさんを訴えました。すると裁判所は、「BさんはCさんに代理権を与えていない」と認定して、請求を棄却しました。次に、代理人を名乗ったCさんを訴えました。今度は別の裁判所が、「Cさんには代理権があった」と認定して、また棄却しました。2つの裁判は、争点が同じ「代理権の有無」です。それなのに結論が逆向きで、Aさんは両方に負けました。今日は、この「両負け」をどう防ぐかを見ます。前に見た通常共同訴訟の弱点が、土台になっています。共同訴訟人の1人に生じた事項は他に影響しない、という39条と、裁判所は弁論を分離できる、という152条1項です。この2つの条文が、両負けの原因になります。持ち帰ってほしいことは5つです。1つめ、別々に訴えても、共同被告にしても、両負けはありうること。2つめ、同時審判の申出ができる要件は3つで、とくに「法律上」併存しえない、という言葉が肝心なこと。3つめ、申出の効果は弁論と裁判の分離禁止と、控訴審での併合強制で、それ以外は通常共同訴訟のままであること。4つめ、被告に順位をつける主観的予備的併合は、判例が不適法としたこと。5つめ、訴え提起後に被告を足す主観的追加的併合のうち、明文のない形を判例が否定したことです。

両負けは、なぜ起きるのか

両負けの仕組みの板(実体法=Bへの請求は代理権あり・Cへの請求は代理権なしが前提で両立しない/別訴=各裁判所が別々に認定/既判力は当事者間だけ/共同被告でも通常共同訴訟=39条で資料は統一されず152条1項で分離されうる) 図:両負けの仕組みの板

  • 実体法=Bへの請求は代理権あり・Cへの請求は代理権なしが前提で両立しない
  • 別訴=各裁判所が別々に認定
  • 既判力は当事者間だけ
  • 共同被告でも通常共同訴訟=39条で資料は統一されず152条1項で分離されうる

先に1問です。共同訴訟人の1人が、相手方の主張を認める自白をしたとします。通常共同訴訟なら、他の共同訴訟人には、どう効きますか?他の人には影響しません。39条で、それぞれ独立しているからです。その独立が、今日の問題の出発点になります。まず、AさんがBさんとCさんに求めている中身を、実体法で確かめます。

条文民法117条1項

民法117条1項(無権代理人の責任) 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。

無権代理人の責任を定める条文です。詳しい中身は民法で扱いますので、今は、本人の追認などの事情は脇に置いて、訴訟の目でこの構造だけ見てください。代理権があったのなら、契約の効果は本人のBさんに及びます。なかったのなら、代理人を名乗ったCさんが、この条文で責任を負います。つまり、Bさんへの請求が成り立つのは代理権があるとき、Cさんへの請求が成り立つのは代理権がないとき、です。同時には成り立ちません。だからAさんは、どちらかには勝てるはずです。なのに、負けるのはどうしてですか。別々に訴えると、各裁判所が同じ争点を、別々に判断できるからです。既判力は、原則として当事者の間にしか及びません。Bさんとの裁判の結論は、Cさんとの裁判を縛りません。矛盾する判断が出ても、止める仕組みがないのです。

共同被告にする道にも、落とし穴があります。1つの訴えでBさんとCさんを同時に訴えても、この2つの請求は、通常共同訴訟にすぎません。前に見た2つの条文を出します。

条文民事訴訟法39条

民事訴訟法39条(共同訴訟人の地位) 共同訴訟人の一人の訴訟行為、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の一人について生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない。

条文民事訴訟法152条1項

民事訴訟法152条(口頭弁論の併合等)第1項 裁判所は、口頭弁論の制限、分離若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる。

39条があるので、Bさんが認めたことがCさんに及ぶわけではなく、裁判の資料は人ごとにばらばらです。152条1項があるので、裁判所が途中で弁論を分離して、別々に審理する可能性も残ります。しかも、同じ手続の中で、Bさんへの請求は「代理権があった」ことを前提にし、Cさんへの請求は「代理権はなかった」ことを前提にします。原告は、両立しない前提の請求を並べることになり、審理が混乱します。まとめると、共同被告にしても、それだけでは、両負けの危険は消えません。この危険を塞ぐために作られた道具が、41条です。

同時審判申出共同訴訟——41条が禁じるのは「分離」

41条の意義の板(41条1項=実体法上両立しない二つの権利+原告の申出→弁論及び裁判は分離しないでしなければならない/平成8年改正で導入/通常共同訴訟に「分離禁止」を上乗せする形) 図:41条の意義の板

  • 41条1項=実体法上両立しない二つの権利+原告の申出→弁論及び裁判は分離しないでしなければならない
  • 平成8年改正で導入
  • 通常共同訴訟に「分離禁止」を上乗せする形

条文を、3項まで全部出します。

条文民事訴訟法41条

民事訴訟法41条(同時審判の申出がある共同訴訟) 共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、原告の申出があったときは、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。 2 前項の申出は、控訴審の口頭弁論の終結の時までにしなければならない。 3 第一項の場合において、各共同被告に係る控訴事件が同一の控訴裁判所に各別に係属するときは、弁論及び裁判は、併合してしなければならない。

1項の骨組みは、こうです。実体法の上で、両立しない2つの権利がある。その両方を、原告が共同被告に対して主張している。原告が申し出れば、裁判所は、弁論も裁判も、分離してはいけません。この形を、同時審判申出共同訴訟と呼びます。平成8年の改正で入った制度です。41条が約束するのは、同じ裁判官が、同じ期日に、同じ証拠を見て、同じ日に判決を出す、という形だけです。同じ結論にしなさい、とまでは書いていません。この限界は、あとで大事になります。通し事案で言えば、Aさんは、BさんとCさんを最初から共同被告にして、「同時に審判してください」と申し出ます。すると、同じ証拠を見た同じ裁判所が、代理権の有無を判断します。別々の裁判所が、逆向きに認定するリスクは、大きく減ります。

要件その1・その3——共同被告であること、控訴審終結まで

要件3つの一覧板(要件1=すでに共同被告として成立している/要件2=一方への権利と他方への権利が法律上併存しえない/要件3=控訴審の口頭弁論の終結の時までに原告が申出/別訴の併合を強制する制度ではない) 図:要件3つの一覧板

  • 要件1=すでに共同被告として成立している
  • 要件2=一方への権利と他方への権利が法律上併存しえない
  • 要件3=控訴審の口頭弁論の終結の時までに原告が申出
  • 別訴の併合を強制する制度ではない

要件は3つです。1つめは、すでに共同訴訟として成り立っていること。条文の言葉では、「共同被告」です。別々の訴訟のまま、41条の申出をすることは、できません。41条は、別々に係属している事件を、無理やり1つにまとめる制度ではないからです。禁じられるのは、束ねた後の「分離」です。束が先になければ、禁じる相手がいません。ですから、41条の申出をするには、すでにBさんとCさんが共同被告として成立している必要があります。別々の訴訟になってしまった後は、裁判所に弁論の併合を促すことになりますが、併合するかどうかは、裁判所の判断です。併合は、原告の申出で強制できるものではありません。2つめは今日の山場なので、あとに回します。3つめは、時期です。条文は、2項で、「控訴審の口頭弁論の終結の時まで」と書いています。第一審のうちに限らず、控訴審が終わる直前までに、原告が申し出ればよいのです。控訴審でも事実を審理しますから、そこで分離されれば、同じ争点が別々に判断されるおそれは残ります。だから、控訴審の途中でも申し出る意味があるのです。申出は、原告がします。裁判所が職権ですることはできません。

要件その2——「法律上」併存しえない

法律上と事実上の対比板(通し事案=Bへの請求の請求原因は代理権を与えた・Cへの請求の抗弁は代理権があった=表裏で法律上併存しえない/対比設例=契約の相手がEさんかFさんのどちらか分からない=事実上の択一で要件を満たさない) 図:法律上と事実上の対比板

  • 通し事案=Bへの請求の請求原因は代理権を与えた・Cへの請求の抗弁は代理権があった=表裏で法律上併存しえない
  • 対比設例=契約の相手がEさんかFさんのどちらか分からない=事実上の択一で要件を満たさない

ここが今日の山場です。先に1問。Aさんは、契約の相手がEさんかFさんのどちらかだ、ということまでは分かっています。でも、どちらかは分かりません。EさんとFさんを共同被告にして、41条の申出はできるでしょうか?EさんとFさんを共同被告にして41条の申出をすることは、できません。理由を通し事案と比べて見ます。通し事案では、Bさんに対する請求は、「Cさんに代理権を与えた」ことが、権利を基礎づける事実、つまり請求原因です。一方、Cさんに対する請求では、「Cさんに代理権があった」ことは、Cさんが責任を免れるために自分から主張する事実、つまり抗弁になります。民法117条1項の「自己の代理権を証明したとき」を除く、という部分です。つまり、一方の請求の請求原因が、他方の請求の抗弁になっています。同じ「代理権があった」という事実が、Bさんへの請求では原告を勝たせ、Cさんへの請求では原告を負かします。主張の水準で、実体法の上から、両方は成り立ちえない表裏の関係です。これが「法律上併存しえない」です。EさんかFさんかの場合は違います。相手がどちらかは分からない、というのは、事実として分からないだけです。実体法は、EさんとFさんの両方に責任があるという主張を、排除していません。両方に勝つ可能性が、法律の上では残っています。どちらが相手かは、証拠で決まる事実の問題にとどまります。

負ける見通しと法律上の関係を取り違えないでください。「どちらか一方が負ける」という見通しでは足りません。実体法の上で、一方の請求が成り立つことが、他方の請求が成り立たないことを意味する関係が必要です。事実上の択一では、41条の申出はできません。41条が当てはまる範囲を、はっきりさせるためにも、この線引きが必要です。ここは論文で論点になりうる、と押さえておきます。

申出の効果——分離禁止、併合強制、そして独立の原則は生きている

審判手続の流れ図(第一審=申出があれば弁論・裁判を分離しない/同じ証拠・同じ期日・同じ日に判決/控訴審=各控訴事件が同一控訴裁判所に別々に係属→併合強制(3項)/それ以外=39条の共同訴訟人独立の原則が適用) 図:審判手続の流れ図

  • 第一審=申出があれば弁論・裁判を分離しない
  • 同じ証拠・同じ期日・同じ日に判決
  • 控訴審=各控訴事件が同一控訴裁判所に別々に係属→併合強制(3項)
  • それ以外=39条の共同訴訟人独立の原則が適用

もう1問です。41条の申出があったとします。それなら、第一審の判決も、控訴審の判決も、BさんとCさんで必ず同じ結論になるでしょうか?分離できないんだから、同じになるんじゃないですか。なりません。効果を分けて確認します。第一審では、申出があれば、裁判所は弁論も裁判も分離できません。分離されないので、前に見た証拠共通が最後まで働き、判決も同時に出ます。証拠共通そのものは通常共同訴訟でも認められていて、41条が上乗せするのは、分離させないという点です。ただし、それ以外の点は、通常共同訴訟のままです。39条の共同訴訟人独立の原則が、そのまま適用されます。前に見た40条の必要的共同訴訟では、全員の結論を1つにそろえることが、法律で強制されていました。41条には、その強制はありません。同じ裁判所が同じ証拠を見るので、統一されることは事実上期待できます。しかし、BさんとCさんで違う判断が出る可能性は、法律の上では残っています。控訴審では、3項が働きます。第一審で申出があり、敗訴した被告が別々に控訴して、控訴事件が、同一の控訴裁判所に別の事件として並んで係属したとします。そのとき、控訴裁判所は、弁論も裁判も、併合してしなければなりません。併合が、法律で強制されます。

まだ穴があります。第一審で、AさんがBさんには勝ち、Cさんには負けたとします。裁判所は、Cさんに代理権があったと認めて、Cさんへの請求を棄却したのです。ここでBさんだけが控訴したらどうなるでしょうか。前に見たとおり、控訴は共同訴訟人の1人がする訴訟行為で、39条により、控訴審に移るのは控訴された請求だけです。1つの訴訟に請求を束ねた客観的併合なら、全部が上に運ばれました。しかし共同訴訟では、39条によって、人ごとの請求が独立して扱われます。Aさんの、Cさんに対する請求の棄却は、控訴されないまま確定します。控訴審は、Bさんへの請求だけを審理します。そして控訴審が、「Cさんには代理権がなかった」と認定して、Bさんへの請求を棄却したとします。Cさんへの請求はもう確定していますから、Aさんの両負けが、ここで再び浮かび上がります。

ひどい。防ぐ方法はないんですか。あります。Aさん自身が、負けたCさんへの請求についても、念のため控訴するのです。すると、2つの控訴事件が同一の控訴裁判所に係属して、3項により併合されます。同じ控訴裁判所が、同じ証拠で、代理権の有無を判断します。3項が働くのは、両方の控訴事件が、同じ控訴裁判所に係属している場合だけです。このため、Aさんは、負けた側にも控訴しておく必要があります。整理します。41条の効果は、第一審の分離禁止と、控訴審の併合強制です。それでも、独立の原則は消えていません。だから、1人だけの控訴を許すと、両負けが戻ってきます。

順位をつけたい——主観的予備的併合と判例

主観的予備的併合の板(客観的予備的併合=請求に順位=主位的請求の認容を解除条件に予備的請求を審判/主観的予備的併合=被告に順位=主位的被告への請求の認容を解除条件に予備的被告への請求を併合/通し事案=第一次的にBへ・Cに代理権がなければ第二次的にCへ) 図:主観的予備的併合の板

  • 客観的予備的併合=請求に順位=主位的請求の認容を解除条件に予備的請求を審判
  • 主観的予備的併合=被告に順位=主位的被告への請求の認容を解除条件に予備的被告への請求を併合
  • 通し事案=第一次的にBへ・Cに代理権がなければ第二次的にCへ

41条は分離を禁じるだけで、順位はつけられません。原告として、「まずBさんに請求したい。Cさんに代理権がなかったなら、次にCさんの責任を求めたい」と考えるかもしれません。これが、主観的予備的併合です。客観的併合の回で、予備的併合を見ました。請求に順位をつけて、主位的請求が認容されることを解除条件に、予備的請求を審判してもらうものでした。主位的請求が認められれば、予備的請求への審判の求めは、その時点で自動的に消える、という条件の付け方です。主観的予備的併合は、それを被告に置きかえたものです。主位的被告に対する請求が認容されることを解除条件に、予備的被告に対する請求を併合して申し立てます。通し事案でいえば、Aさんが、第一次的にBさんへの履行を求め、Bさんへの請求が認められなかったときに備えて、第二次的にCさんの責任を求める、という形です。

請求に順位をつけるのと、被告に順位をつけるのは、そんなに違うんでしょうか。違います。客観的予備的併合は、相手が1人で、原告が請求に順位をつけます。主観的予備的併合は、相手が2人です。予備的被告のCさんは、Bさんの結論が出るまで、自分に対する請求が生きているのかどうかが分からない立場に置かれます。Bさんへの請求が認められれば、Cさんへの請求は消えます。認められなければ、Cさんへの請求が審理されます。防御の目標が定まらず、地位が不安定です。判例は、この形を認めませんでした。

判例最判昭和43・3・8 民集22巻3号551頁

訴えの主観的予備的併合の適否が争われた事件 訴の主観的予備的併合は不適法であつて許されないとする原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法は存しない。

判旨は、結論を短く述べる形です。主観的予備的併合は不適法で、許されない、というものです。判旨は理由を述べていません。この結論は、予備的被告の応訴上の不安定と不利益が大きいこと、原告の便宜に偏っていることなどから説明されます。学説では、紛争の統一的解決に役立つとして、認める見解が有力でした。判例の結論は、それを認めない立場です。原告がこの形で望んでいたのは、BさんかCさんか、どちらかには必ず勝つことでした。41条は、この利益を、順位をつけずに、分離を禁じることで実現するために作られた面があります。同じところは、まず、分離禁止によって併合審判が維持されることです。分離されないので、証拠共通も最後まで働きます。予備的被告の応訴上の不安定も、なくなります。BさんもCさんも、同時に審判される立場で、順位の結論を待たされません。違う点は2つです。1つめ、41条では、請求にも被告にも、順位をつけられません。両方とも、通常の請求です。2つめ、上訴の段階で、統一が不十分です。先に見た、3項の限定と、1人だけの控訴で両負けが戻る問題が、そのまま残ります。

41条があれば、主観的予備的併合は要らないんですか。言い切れません。41条があっても、順位はつけられず、上訴の段階の統一も不十分です。そのため、主観的予備的併合を、なお必要とする見解があります。ここは、どちらかに決めつけず、判例は不適法、41条は代わりを務める面はあるが完全には一致しない、と押さえてください。

訴え提起後に被告を足す——主観的追加的併合

主観的追加的併合の分類板(共同訴訟が訴え提起後に生じる=(1)裁判所による弁論の併合152条1項(2)当事者の訴訟行為=主観的追加的併合/明文あり=参加型(追加的選定・参加承継・共同訴訟参加)と引込み型(訴訟引受)/明文なし=原告による被告の追加=判例否定) 図:主観的追加的併合の分類板

  • 共同訴訟が訴え提起後に生じる=(1)裁判所による弁論の併合152条1項(2)当事者の訴訟行為=主観的追加的併合
  • 明文あり=参加型(追加的選定・参加承継・共同訴訟参加)と引込み型(訴訟引受)
  • 明文なし=原告による被告の追加=判例否定

最後の論点です。共同訴訟は、訴えを起こしたときから存在するとは限りません。訴えを起こした後に、共同訴訟が生じる場合もあります。生じ方は2通りです。1つは、裁判所が、別々の訴訟の弁論を併合する場合。もう1つは、当事者の訴訟行為によって、後から当事者が加わる場合です。この後者を、訴えの主観的追加的併合と呼びます。通し事案から派生させます。Aさんが、Bさんを訴えた後で、Cさんを雇っていて、Cさんの行為について責任を負うかもしれない使用者のDさんの存在に気づいたとします。Aさんは、このDさんを、今の訴訟に被告として足したくなりました。

まず、明文のある形を分けます。参加型は、第三者が自分の意思で入る形です。訴訟の外にいる人が、今の当事者を自分の代表に選び、自分の分もその訴訟で扱ってもらう追加的選定。訴訟の途中で、争いになっている権利や義務を引き継いだ人が、自分から入る参加承継。結論を全員でそろえなければならない関係にある第三者が、共同訴訟人として加わる共同訴訟参加。これらが参加型です。引込み型は、当事者が第三者を今の訴訟に引き込む形です。そのうち明文があるのは、途中で権利や義務を引き継いだ人を、当事者の申立てで引き込む訴訟引受です。原告が被告を足す形には、明文がありません。参加型と訴訟引受の中身は、それぞれ別の回で扱います。今は、一言の説明と分類までで足ります。問題は、明文がない場合です。固有必要的共同訴訟の回で、後から当事者を足す方法は明文がなく争いがある、と一言だけ触れました。争いがあるのは、この明文のない形のほうです。あの回で別の道として挙げた共同訴訟参加は、明文のある参加型に入ります。原告が、係属中の訴訟に、あとから被告を足したい。これが認められるでしょうか。認める利点は、はっきりしています。係属中の訴訟の成果を使えて、審判の重複を避けられ、統一的に解決できることです。学説では、この基本形を認める見解が、一般的でした。しかし、判例は、この基本形すら、認めませんでした。

判例最判昭和62・7・17 民集41巻5号1402頁(判決当時の民訴132条=現152条、59条=現38条)

訴訟の係属後に被告を追加する請求を、既存の訴訟に当然に併合できるかが争われた事件 甲が、乙を被告として提起した訴訟(以下「旧訴訟」という。)の係属後に丙を被告とする請求を旧訴訟に追加して一個の判決を得ようとする場合は、甲は、丙に対する別訴(以下「新訴」という。)を提起したうえで、法一三二条の規定による口頭弁論の併合を裁判所に促し、併合につき裁判所の判断を受けるべきであり、仮に新旧両訴訟の目的たる権利又は義務につき法五九条所定の共同訴訟の要件が具備する場合であっても、新訴が法一三二条の適用をまたずに当然に旧訴訟に併合されるとの効果を認めることはできないというべきである。

事件では、原告が、追加した被告への請求は既存の訴訟に併合されたのだから、新しい訴えの手数料は要らない、として納めませんでした。納付を命じられても納めなかったので、訴えは却下されました。当然に併合されるかどうかが、手数料が要るかどうかを決めたのです。最高裁は、当然の併合を認めず、却下を支持しました。判旨の中の132条は今の152条、59条は今の38条です。判旨の読み方です。原告は、追加したい被告に対する別の訴えを、新しく起こします。そのうえで、裁判所に、弁論の併合を促します。併合するかどうかは、裁判所が判断します。共同訴訟の要件が整っていても、新しい訴えが当然に、古い訴訟に合流するわけではありません。

判決が挙げる理由は、4点です。1つめ、そうした追加を認める明文の規定がないこと。2つめ、旧訴訟の訴訟状態を当然に利用できるかが問題で、訴訟経済に必ずしも適わず、かえって訴訟が複雑になること。3つめ、軽率な提訴や濫訴のおそれがあること。4つめ、訴訟の遅延を招くことです。学説には、一定の要件のもとで許すべきだという有力な見解があります。弊害が出れば、弁論を分離すればよい、という考えです。ただ、判例の結論は否定です。混ぜないでください。参加承継、訴訟引受、共同訴訟参加、追加的選定は、明文があります。ここで否定されたのは、明文のない、原告による被告の追加です。通し事案に戻ります。DさんをAさんの訴訟に足したいなら、Aさんは、Dさんに対する別訴を提起して、併合を促すしかありません。併合を強制することはできません。だから、併合を促した後は、裁判所の判断を待つことになります。

今日の地図(保存版)

総括の板(別訴も共同被告も両負けはありうる/41条=共同被告として成立・法律上併存しえない・控訴審終結まで原告の申出→分離禁止+控訴審の併合強制/独立の原則は生きている・1人だけ控訴で両負け再浮上→負けた側も控訴/主観的予備的併合=判例不適法・41条だけでは足りないとする見解/主観的追加的併合=明文なしは判例否定=別訴+併合を促す) 図:総括の板

  • 別訴も共同被告も両負けはありうる
  • 41条=共同被告として成立・法律上併存しえない・控訴審終結まで原告の申出→分離禁止+控訴審の併合強制
  • 独立の原則は生きている・1人だけ控訴で両負け再浮上→負けた側も控訴
  • 主観的予備的併合=判例不適法・41条だけでは足りないとする見解
  • 主観的追加的併合=明文なしは判例否定=別訴+併合を促す

まとめます。冒頭の、AさんとBさんとCさんに戻ります。別々に訴えても、共同被告にしても、通常共同訴訟である限り、両負けはありえます。41条の申出には、3つの要件があります。すでに共同被告として成立していること。一方への権利と他方への権利が、法律上、併存しえないこと。控訴審の口頭弁論の終結の時までに、原告が申し出ること。事実上の択一では、法律上併存しえないとは言えません。効果は、弁論と裁判の分離禁止と、同じ控訴裁判所に別々に控訴事件が係属したときの併合強制です。それ以外は、通常共同訴訟で、独立の原則が生きています。だから、1人だけが控訴すると、両負けが戻ってきます。負けた側にも控訴しておく必要があります。主観的予備的併合は、被告に順位をつける形で、判例は不適法としました。41条は、その原告の利益を実現する面がありますが、順位はつけられず、上訴の段階の統一も弱いので、なお必要とする見解があります。主観的追加的併合のうち、明文のあるものは、一言の説明と分類で押さえます。明文のない、原告による被告の追加は、判例が否定しています。別訴を提起して、併合を促すことになります。試験では、まず実体法で請求が両立しないかを見て、法律上併存しえないなら41条、事実上の択一なら通常共同訴訟のまま、と分けてください。

参照条文

  • 民法117条1項
  • 民事訴訟法39条
  • 民事訴訟法152条1項
  • 民事訴訟法41条

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