民訴ゼロから民訴#78

固有必要的共同訴訟と類似必要的共同訴訟

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第4章 複雑訴訟 #78/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

1人が乗らない——残る4人は訴えられないのか

冒頭事案の関係図(相続人A・B・C・DはEを含む全員の共有であることを裁判で確かめたい/Eだけが「裁判なんてやりたくない」と乗らない/第三者は図に出さない) 図:冒頭事案の関係図

  • 相続人A・B・C・DはEを含む全員の共有であることを裁判で確かめたい
  • Eだけが「裁判なんてやりたくない」と乗らない
  • 第三者は図に出さない

亡くなった親の土地を、第三者が「あれは自分のものだ」と言い張っています。相続人は、Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんの5人です。4人は「あの土地は、相続人全員の共有だ」と裁判ではっきりさせたい。ところがEさんだけが「裁判なんてやりたくない」と言って、動きません。全員がそろわないと訴えられない決まりだとしたら、Eさんが黙っている限り、AさんからDさんまでは何もできないことになります。その不安に、今日は2段で答えます。1段目は、何の確認を求めるかによっては、Eさんを待たずに訴えられること。2段目は、全員が必要な場合にも、Eさんを被告の側に回す道が考えられることです。前回は、必要的共同訴訟に乗ったとき、40条が1人の行為をどう扱うかを見ました。固有必要的共同訴訟は全員がそろわないと当事者適格を欠く型。類似必要的共同訴訟は単独でも訴えられるけれど、共同なら合一確定が要請される型でした。今日はその規律に乗る紛争を、どう見分けるかです。持ち帰ってほしいことは5つです。1つめ、固有必要的共同訴訟の意味と、欠けても終わりではないこと。2つめ、判断基準の3つの層と、共有だからといって固有とは限らないこと。3つめ、境界確定の訴えにおける当事者適格。4つめ、類似必要的共同訴訟の成り立ち。5つめ、40条の適用は固有も類似も同じで、違いは取下げと上訴に出ることです。

固有必要的共同訴訟——欠けたら終わりではない

固有必要的共同訴訟の板(定義=全員が共同して訴え訴えられなければ当事者適格を欠き訴えは不適法=訴訟共同の強制/基準時=口頭弁論終結時/そろえる道=(1)共同訴訟参加52条 (2)別訴を起こして弁論の併合を申し立てる/追加的併合=明文なし・争いあり) 図:固有必要的共同訴訟の板

  • 定義=全員が共同して訴え訴えられなければ当事者適格を欠き訴えは不適法=訴訟共同の強制
  • 基準時=口頭弁論終結時
  • そろえる道=(1)共同訴訟参加52条 (2)別訴を起こして弁論の併合を申し立てる
  • 追加的併合=明文なし・争いあり

固有必要的共同訴訟は、関係する人の全員が、そろって訴える側、またはそろって訴えられる側に立たなければ、当事者適格が認められず、訴えは不適法になる型です。訴訟共同の強制がはたらきます。1人が欠けても、それだけで却下が決まるわけではありません。当事者適格は訴訟要件で、あるかないかを見る基準時は、口頭弁論の終結時です。訴えを起こしたときに欠けていても、終結までに当事者をそろえれば、却下を免れます。そろえる道は、主に2つあります。1つは共同訴訟参加。もう1つは、欠けている人を相手に別の訴えを起こして、2つの訴訟を1つの手続にまとめる、弁論の併合を申し立てる方法です。

条文民事訴訟法52条

民事訴訟法52条(共同訴訟参加) 訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合には、その第三者は、共同訴訟人としてその訴訟に参加することができる。 2 第四十三条並びに第四十七条第二項及び第三項の規定は、前項の規定による参加の申出について準用する。

参加の中身は別の回で扱います。今は、そろえる道に条文がある、と押さえてください。訴えの主観的追加的併合、つまり後から当事者を足す方法も候補ですが、明文がなく、認められるかは争いがあります。欠けた人が最後まで協力しない場面をどうするかは、規律の弾力化の話です。後で扱います。先に、そもそもどの紛争が固有必要的なのか、見分け方を見ます。

判断基準の見取り図——3つの層

判断基準3層板(出発点=40条1項「合一にのみ確定すべき場合」だけでは決まらない/(a)実体法的観点=訴訟物たる権利関係の実体法上の性質が出発点/(b)訴訟法的観点=紛争解決の実効性・矛盾回避・提訴の難易・個別訴訟の不都合も加味/(c)弾力化=提訴に同調しない者を被告に加えて提訴上の困難を緩和) 図:判断基準3層板

  • 出発点=40条1項「合一にのみ確定すべき場合」だけでは決まらない
  • (a)実体法的観点=訴訟物たる権利関係の実体法上の性質が出発点
  • (b)訴訟法的観点=紛争解決の実効性・矛盾回避・提訴の難易・個別訴訟の不都合も加味
  • (c)弾力化=提訴に同調しない者を被告に加えて提訴上の困難を緩和

前回の条文を、もう一度出します。

条文民事訴訟法40条1項

民事訴訟法40条(必要的共同訴訟)第1項 訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合には、その一人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力を生ずる。

40条1項は、「合一にのみ確定すべき場合」としか書いていません。これだけでは、どの紛争が当てはまるのか分かりません。そこで、判断基準を3つの層で見ます。3つの層を通して問うのは、1つのことです。その紛争は、誰かが欠けたら、判決が意味を持たなくなるか、です。1つめは、実体法的な観点。訴訟物になっている権利関係が、実体法の上でどういう性質を持つのかを、出発点にします。2つめは、訴訟法的な観点。出発点は同じですが、紛争解決の実効性、判決の矛盾を避けること、提訴のしやすさ、個別に訴えたときの不都合も加えて考えます。3つめが、規律の弾力化です。全員必要とすると、提訴に乗らない人が1人いるだけで、他の人が裁判を受けられなくなります。この提訴上の困難をやわらげる動きです。まず1つめの層から見ます。

実体法的観点——固有必要的とされる型

実体法的観点の型の一覧板(型1=他人間の法律関係の形成・変動をもたらす訴訟:人訴12条2項/会社855条/型2=数人による共同の職務執行:破76条1項/型3=管理処分権が数人に合有・総有的に帰属:入会権など/型4=共有は訴訟物で分かれる→次の板) 図:実体法的観点の型の一覧板

  • 型1=他人間の法律関係の形成・変動をもたらす訴訟:人訴12条2項
  • 会社855条
  • 型2=数人による共同の職務執行:破76条1項
  • 型3=管理処分権が数人に合有・総有的に帰属:入会権など
  • 型4=共有は訴訟物で分かれる→次の板

固有必要的とされる型を、4つに分けて見ます。1つめは、他人どうしの法律関係を、裁判で作ったり変えたりする訴訟です。

条文人事訴訟法12条2項

人事訴訟法12条(被告適格)第2項 人事に関する訴えであって当該訴えに係る身分関係の当事者以外の者が提起するものにおいては、特別の定めがある場合を除き、当該身分関係の当事者の双方を被告とし、その一方が死亡した後は、他の一方を被告とする。

たとえば、第三者が他人の婚姻の無効を主張して訴えるとします。婚姻の当事者である夫婦の、どちらか一方だけを相手にして判決を出しても、婚姻という1つの関係の存否は決まりません。だから、夫婦の双方が被告になります。会社法にも同じ形があります。

条文会社法855条

会社法855条(被告) 前条第一項の訴え(次条及び第九百三十七条第一項第一号ヌにおいて「株式会社の役員の解任の訴え」という。)については、当該株式会社及び前条第一項の役員を被告とする。

株主が役員の解任を求める訴えは、会社と、その役員の双方が被告です。前条というのは854条で、解任の訴えを認める条文です。会社と役員の間の関係を変える判決ですから、どちらが欠けても意味が定まらないからです。2つめは、数人が共同して職務を行うことが必要な場合です。

条文破産法76条1項

破産法76条(数人の破産管財人の職務執行)第1項 破産管財人が数人あるときは、共同してその職務を行う。ただし、裁判所の許可を得て、それぞれ単独にその職務を行い、又は職務を分掌することができる。

管財人が数人いれば、その職務は共同で行うのが原則です。訴訟を追行する権限も、その職務の一つとして全員に共同で帰属します。ですから、1人だけでは当事者適格が足りず、訴えを起こすのも受けるのも共同です。3つめは、権利の管理処分権が、数人に合有的、総有的に帰属している場合です。合有や総有は、共有と違って、各自が自分の分を自由に処分したり、分けるよう求めたりできない持ち方です。入会権が代表例です。地域の集団が共同で山林を使ってきたときの、集団としての権利です。4つめは共有です。ここで、今日の山場に入ります。

「共有だから固有必要的」とは限らない——共有権と持分権

仕分け表の板(訴訟物/形態/判例/共有権・共有関係の確認と共有権に基づく移転登記=固有必要的/遺産確認=固有必要的/持分権の確認・持分に基づく妨害排除=通常共同訴訟で各自単独可/入会権そのものの確認=固有必要的/入会権の内容である使用収益権の確認・妨害排除=各自単独可/共同相続した建物の収去土地明渡し=通常共同訴訟) 図:仕分け表の板

  • 訴訟物
  • 形態
  • 判例
  • 共有権・共有関係の確認と共有権に基づく移転登記=固有必要的
  • 遺産確認=固有必要的
  • 持分権の確認・持分に基づく妨害排除=通常共同訴訟で各自単独可
  • 入会権そのものの確認=固有必要的
  • 入会権の内容である使用収益権の確認・妨害排除=各自単独可
  • 共同相続した建物の収去土地明渡し=通常共同訴訟

1問です。共有の土地だから、共有者全員がそろわないと訴えられない。この理解は正しいでしょうか。共有権の確認を求めるのと、各自の持分権の確認を求めるので、答えは同じでしょうか。分かれ目は、共有かどうかではなく、訴訟物が何か、です。連名の通帳と、各自の口座で考えてください。連名の通帳が全員の共有権です。ここを動かすには、名義人が全員そろう必要があります。一方、自分の口座の残高は、自分だけで請求できます。これが持分権です。まず、共有権そのものを確認する訴えです。

判例最判昭和46・10・7 民集25巻7号885頁

共有者が共同原告になり共有権の確認と移転登記を求めた事件 一個の物を共有する数名の者全員が、共同原告となり、いわゆる共有権(数人が共同して有する一個の所有権)に基づき、その共有権を争う第三者を相手方として、共有権の確認を求めているときは、その訴訟の形態はいわゆる固有必要的共同訴訟と解するのが相当である。

土地の共有を主張する2人が、共同で原告になり、名義人に共有権の確認と移転登記を求めた事件です。共有権は、全員に1つの所有権が共同でありますから、確認の結論も全員について1つでなければなりません。だから固有必要的共同訴訟です。遺産確認の訴えも、同じ型です。

判例最判平成元・3・28 民集43巻3号167頁

財産が遺産に属することの確認を求める訴え 右訴えは、共同相続人全員が当事者として関与し、その間で合一にのみ確定することを要するいわゆる固有必要的共同訴訟と解するのが相当である。

相続人の間で、この財産は遺産分割前の共有関係にある、と確認する訴えです。共同相続人の全員が関わって、その間で1つに決める訴えだということです。相続した土地に、相続人の1人が、自分の持分を第三者へ移した登記が入ったとします。別の相続人が、その移転は無効だとして、抹消を求めました。

判例最判平成15・7・11 民集57巻7号787頁

不実の持分移転登記の抹消登記手続を、共有者の一人が単独で請求できるかが争われた事件 不動産の共有者の1人は、その持分権に基づき、共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができるところ、不実の持分移転登記がされている場合には、その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じているということができるから、共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる。

判旨は、単独で請求できる、と言っています。持分権に基づく妨害排除だからです。各自が自分の権利を守る訴えなので、全員をそろえる必要がありません。共同で訴えても、それは通常共同訴訟です。判旨が言うのは「単独で請求できる」までで、「通常共同訴訟」という呼び名は、学説の整理です。入会権も、一律ではありません。入会権そのものの確認は固有必要的ですが、構成員各自の使用収益権は、別に見ます。

判例最判昭和57・7・1 民集36巻6号891頁

入会権者が自己の使用収益権に基づき妨害排除を求めた事件 各自が単独で、その者を相手方として自己の使用収益権の確認又は妨害の排除を請求することができる

入会権そのものは集団の管理処分に属します。ですから、入会権自体に基づく妨害排除は、構成員の1人ではできません。他方、各自の使用収益権は、各自が単独で守れます。冒頭の1段目の答えが出ます。Aさんたちが求めるのが、各自の持分権の確認なら、Eさんを待たずに、各自が単独で訴えられます。永久に何もできない、は言いすぎでした。共有権そのものの確認が必要になる場合は、固有必要的です。その場合の突破口は、弾力化のところで見ます。

訴訟法的観点——実体法の性質だけでは決めない

訴訟法的観点の板(建物収去土地明渡請求は固有必要的ではない/理由(1)不可分債務で順次履行を求められる(2)固有必要的とすると争わない者まで被告にして無用の手続(3)所有者が不明でも一部を落とすと手続が無効になるおそれ(4)通常共同でも被告の権利保護に欠けない/遺産確認=既判力による確定の実効性) 図:訴訟法的観点の板

  • 建物収去土地明渡請求は固有必要的ではない
  • 理由(1)不可分債務で順次履行を求められる(2)固有必要的とすると争わない者まで被告にして無用の手続(3)所有者が不明でも一部を落とすと手続が無効になるおそれ(4)通常共同でも被告の権利保護に欠けない
  • 遺産確認=既判力による確定の実効性

出発点は、実体法上の管理処分権の性質です。ただ、それだけで決めているわけではありません。土地の所有者が、建物を共同相続した人たちを相手に、建物の収去と土地の明渡しを求める事件があります。

判例最判昭和43・3・15 民集22巻3号607頁

建物を共同相続した者らへの建物収去土地明渡請求が固有必要的共同訴訟かが争われた事件 土地の所有者がその所有権に基づいて地上の建物の所有者である共同相続人を相手方とし、建物収去土地明渡を請求する訴訟は、いわゆる固有必要的共同訴訟ではないと解すべきである。

建物は、相続人の共有です。それでも固有必要的にしませんでした。理由は4つです。1つめ。建物を取り壊して土地を返す義務は、不可分債務です。分けられない1つの義務を、相続人の各自が全部負う形です。土地の所有者は、各自に順番に履行を求められるので、全員を同時に被告にする必要がありません。2つめ。固有必要的にすると、争う気のない相続人まで被告にしなければならず、その一部が請求を認めても、1人だけの認諾や取下げは効きません。全員でしなければ効かないからです。無用の手続が増えます。3つめ。相続登記のない建物では、所有者が誰か分からないことがあり、1人を落とすと手続が無効になるおそれがあります。4つめ。通常共同訴訟でも、建物を取り壊す強制執行には、共有者の各自に対する判決などの債務名義か、その人の同意が要ります。判決を受けていない共有者の建物が、知らないうちに壊されることはないので、被告の権利保護には欠けません。

実体法の性質を出発点にして、訴訟法の考慮を重ねる、というのが3層の中身です。遺産確認の訴えが固有必要的とされる実質的な根拠も、訴訟法の側にあります。原告が勝つと、その財産が遺産分割の対象であることが、既判力をもって確定します。以後の分割の審判で争えなくなるので、相続人の全員を巻き込んで確定する意味が生まれます。今日は、固有必要的とされる根拠だけを押さえてください。

規律の弾力化——同調しない者を被告に加える

弾力化の図(固有必要的だと乗らない者がいれば提訴できず裁判を受ける権利が奪われる→A〜Dが原告になりEを被告側に加える/全員が当事者として関与するので判決の効力を全員に及ぼしても利益は害されない/残された問題=少数派でも原告になれるか・給付の訴えに及ぶか・共同被告間には既判力が及ばない) 図:弾力化の図

  • 固有必要的だと乗らない者がいれば提訴できず裁判を受ける権利が奪われる→A〜Dが原告になりEを被告側に加える
  • 全員が当事者として関与するので判決の効力を全員に及ぼしても利益は害されない
  • 残された問題=少数派でも原告になれるか・給付の訴えに及ぶか・共同被告間には既判力が及ばない

固有必要的の弱点を、もう一度確認します。全員が必要だと、提訴に乗らない人が1人いるだけで、他の人は裁判を受けられなくなります。憲法32条の問題です。

条文日本国憲法32条

日本国憲法32条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

最高裁は、入会権の確認で、この困難に対する道を示しました。入会集団の一部の構成員が、土地は入会地だと確認したい。ところが、提訴に同調しない構成員がいる。

判例最判平成20・7・17 民集62巻7号1994頁

入会集団の一部の構成員が、同調しない構成員を被告に加えて入会権確認の訴えを提起した事件 入会集団の構成員のうちに入会権確認の訴えを提起することに同調しない者がいる場合には、入会権の存在を主張する構成員が原告となり、同訴えを提起することに同調しない者を被告に加えて、同訴えを提起することも許されるものと解するのが相当である。 …… このような訴えの提起を認めて、判決の効力を入会集団の構成員全員に及ぼしても、構成員全員が訴訟の当事者として関与するのであるから、構成員の利益が害されることはないというべきである。

原審は、当事者適格を欠くとして訴えを却下しましたが、最高裁は破棄して、第一審に差し戻しました。同調しない人を被告に加えれば、全員が当事者として関わります。判決の効力を全員に及ぼしても、その人の利益は害されない、という理由です。相続の共有でも同調しない人を被告にすれば足りるか、までは断定できません。この考え方は、入会権の確認について示されたものです。相続による共有の確認にそのまま及ぶかは、判例が明示していません。ですから、冒頭の2段目の答えは、共有権そのものの確認が必要なら固有必要的で、突破口として、同調しないEさんを被告に加える道が考えられる、です。なお、この道にも残された問題があります。少数派の構成員でも原告になれるのか。確認の訴えだけでなく、給付の訴えにも及ぶのか。そして、既判力は原告と被告の間にだけ生じるので、共同被告の間には拘束力がなく、後で、被告にされた原告適格者と他の被告の間で争いが生じうる、という点です。

境界確定の訴えの当事者適格

境界確定の当事者適格の板(境界確定の訴え=筆界を裁判所が定める形式的形成訴訟/当事者適格=相隣接する土地の各所有者/隣地の一方または双方が共有なら共有者全員が共同してのみ訴え訴えられる=固有必要的/同調しない共有者は被告に回せる=その余の共有者が原告、隣地所有者と同調しない共有者が被告/補足意見=境界確定の特殊性・他の必要的共同訴訟に直ちに類推できない) 図:境界確定の当事者適格の板

  • 境界確定の訴え=筆界を裁判所が定める形式的形成訴訟
  • 当事者適格=相隣接する土地の各所有者
  • 隣地の一方または双方が共有なら共有者全員が共同してのみ訴え訴えられる=固有必要的
  • 同調しない共有者は被告に回せる=その余の共有者が原告、隣地所有者と同調しない共有者が被告
  • 補足意見=境界確定の特殊性・他の必要的共同訴訟に直ちに類推できない

境界確定の訴えは、筆界、つまり登記された土地と隣の土地との境目を、裁判所が定める訴えでした。所有権の範囲を争うものではないので、当事者の主張に縛られない、と前に見ました。その訴えの当事者適格を、ここで確かめます。当事者になれるのは、相隣接する土地の各所有者です。隣地の所有者が、境界に接する部分を時効取得したと主張していても、この適格は失われません。隣接する土地の一方または双方が共有のときは、共有者全員が共同してのみ、訴え、または訴えられます。

判例最判昭和46・12・9 民集25巻9号1457頁

隣接する土地の一方または双方が共有の場合の境界確定の訴え 土地の境界は、土地の所有権と密接な関係を有するものであり、かつ、隣接する土地の所有者全員について合一に確定すべきものであるから、境界の確定を求める訴は、隣接する土地の一方または双方が数名の共有に属する場合には、共有者全員が共同してのみ訴えまたは訴えられることを要する固有必要的共同訴訟と解するのが相当である。

共有者の一部だけが原告になり、他の共有者が当事者になっていなかったため、訴えは却下されました。境界は、隣接する土地の所有者全員について1つに決まるもの、というのが理由です。隣地の共有者の1人が同調しない場合にも、境界確定の訴えを起こす道が開かれました。

判例最判平成11・11・9 民集53巻8号1421頁

提訴に同調しない共有者がいるときの境界確定の訴え 共有者のうちに右の訴えを提起することに同調しない者がいるときには、その余の共有者は、隣接する土地の所有者と共に右の訴えを提起することに同調しない者を被告にして訴えを提起することができるものと解するのが相当である。

読み方に注意してください。「隣接する土地の所有者と共に」は、被告の側にかかります。原告は残りの共有者で、被告は、隣の土地の所有者と、同調しない共有者です。理由は、境界確定の訴えでは、裁判所が当事者の主張に拘束されないことです。共有者の全員が、原告か被告のどちらかとして関わっていれば、手続に支障がありません。原告と被告に分かれても、境界は関わった全員の間で、合一に確定されます。ただし、この判決の補足意見は、これを境界確定の訴えの特殊性に由来する便法として、他の必要的共同訴訟に直ちに当てはめることはできない、と述べています。同じ発想は、入会権の確認では、先に見た判例で認められました。射程は慎重に押さえてください。これで、境界確定の訴えの当事者適格は、共有の場合まで含めて説明できました。

類似必要的共同訴訟——単独でも訴えられるが、共同なら合一

類似必要的の成立基準の板(各自が単独で当事者適格を持つ/成立基準=ある共同訴訟人への判決の効力がほかの共同訴訟人にも及ぶ場合/既判力は本来相対効/条文で対世効がある場合は別々の判決だと直接の既判力と拡張される既判力が衝突→合一確定が必要/例=会社の組織に関する訴え・株主代表訴訟・住民訴訟・数人の人事訴訟) 図:類似必要的の成立基準の板

  • 各自が単独で当事者適格を持つ
  • 成立基準=ある共同訴訟人への判決の効力がほかの共同訴訟人にも及ぶ場合
  • 既判力は本来相対効
  • 条文で対世効がある場合は別々の判決だと直接の既判力と拡張される既判力が衝突→合一確定が必要
  • 例=会社の組織に関する訴え・株主代表訴訟・住民訴訟・数人の人事訴訟

後半に入ります。ここまでは、誰かが欠けたら判決が意味を持たなくなる型でした。類似必要的共同訴訟は、向きが逆です。1人だけでも判決は意味を持ちます。その成立基準を見ます。各自が単独で当事者適格を持っている。それなのに、なぜ共同で訴えると合一確定が要請されるのか。答えは、ある共同訴訟人が受けた判決の効力が、ほかの共同訴訟人にも及ぶ場合だ、というものです。既判力の主観的範囲の回で見たとおり、既判力は、本来相対効です。別々の訴訟で矛盾する判決が出ても、問題はありません。しかし、条文で判決の効力が第三者にも広がると決められている場合は、例外です。勝ち負けが人ごとにばらばらになると、ある人には、自分が受けた判決の既判力と、ほかの人の判決から及んでくる既判力の両方がかかり、食い違ってしまいます。

条文会社法838条1項

会社法838条(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)第1項 会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。

条文人事訴訟法24条1項

人事訴訟法24条(確定判決の効力が及ぶ者の範囲)第1項 人事訴訟の確定判決は、民事訴訟法第百十五条第一項の規定にかかわらず、第三者に対してもその効力を有する。

例を並べます。株主総会の決議の取消しや無効の訴え、会社の設立の無効の訴えといった会社の組織に関する訴えは、会社法838条で、認容判決が第三者にも及びます。数人の株主による責任追及の訴えは、判決の効力が会社に及びます。数人が提起する人事訴訟は、人事訴訟法24条で、確定判決が第三者にも及びます。複数の住民が提起する住民訴訟も、判決の効力が全住民に及びます。その仕組みは、既判力の主観的範囲の回で見たものと同じです。今日は、条文で拡張されている場合、と押さえてください。補足です。既判力が全面的に拡張される場合だけでなく、勝訴判決だけが片面的に拡張される場合も含める見解があります。会社法838条は、請求を認容する判決の効力を広げる条文ですから、片面的な例です。ただ、この見解には批判もあります。

固有と類似で分かれる場面①——取下げ

固有・類似の比較板(共通=40条の適用は固有・類似で同じ/違いが出るのは取下げと上訴だけ/取下げ:固有=全員でなければ効力を生じない・類似=各自自由/上訴:固有=1人の上訴で全員が上訴人・類似=事件類型で割れる) 図:固有・類似の比較板

  • 共通=40条の適用は固有・類似で同じ
  • 違いが出るのは取下げと上訴だけ
  • 取下げ:固有=全員でなければ効力を生じない・類似=各自自由
  • 上訴:固有=1人の上訴で全員が上訴人・類似=事件類型で割れる

前回の復習です。必要的共同訴訟で1人が自白したら、誰に、どう効くのでしたか?自白のような不利な行為は、他の人にも、本人にも効きません。ここで押さえておくのは、その40条の適用そのものは、固有も類似も同じ、という点です。1人の有利な行為だけが全員に効くことも、相手方の行為が全員に効くことも、中断や中止が全員に効くことも同じです。違いが出るのは、取下げと上訴だけです。後半の設例は、前回の株主に戻します。A・B・Cは同じ会社の株主で、取締役のDさんの責任を追及しています。

後半事案の関係図(株主A・B・Cが取締役Dの責任を共同で追及/Aだけが訴えを取り下げたい/Aだけが控訴した) 図:後半事案の関係図

  • 株主A・B・Cが取締役Dの責任を共同で追及
  • Aだけが訴えを取り下げたい
  • Aだけが控訴した

3人のうちAさんだけが、訴えを取り下げたいと言い出しました。BさんとCさんはどうなるでしょうか。固有ならどうでしょうか。先に条文です。

条文民事訴訟法261条1項

民事訴訟法261条(訴えの取下げ)第1項 訴えは、判決が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。

類似必要的なら、各自が自由に取り下げられます。訴訟共同の強制がないので、Aさんが抜けても、BさんとCさんは、単独の適格で訴訟を続けられます。抜けたAさんについては判決が出ないので、矛盾する判決も生まれません。ここで、前回の40条とつなげます。40条1項が止めるのは、訴訟の中で結論をそろえるべき人たちの、不利な行為でした。類似の取下げは、自分がその訴訟から抜ける行為です。抜けた人には判決が出ないので、そろえるべき結論がそもそも残りません。だから、40条1項で止める必要がなく、各自が自由にできるのです。固有必要的は違います。1人が取り下げると、残る人だけでは当事者適格が欠けて、訴えが不適法になってしまいます。取下げは、全員にとって不利な行為ですから、全員でしなければ効力を生じません。

判例最判昭和46・10・7 民集25巻7号885頁

共同原告の一人が第一審の係属中に訴えの取下げをした事件 このような訴訟の係属中に共同原告の一人が訴の取下げをしても、その取下げは効力を生じないものというべきである。

先ほどの、共有権の確認と移転登記を求めた事件です。共同原告の1人が、第一審の係属中に取下げの書面を出し、被告も同意しました。原審は取下げを無効としました。最高裁も、その取下げは効力を生じない、と判断しました。

固有と類似で分かれる場面②——上訴

上訴の対比板(固有=1人の上訴で全員が上訴人・上訴審は全員を名宛人として審判/類似=確定遮断と移審は全員に及ぶが上訴しなかった者は上訴人にならない(住民訴訟・株主代表訴訟)/事件類型で割れる=養子縁組無効は共同訴訟人の一人が上告した後の他の共同訴訟人の上告は二重上告として不適法) 図:上訴の対比板

  • 固有=1人の上訴で全員が上訴人・上訴審は全員を名宛人として審判
  • 類似=確定遮断と移審は全員に及ぶが上訴しなかった者は上訴人にならない(住民訴訟・株主代表訴訟)
  • 事件類型で割れる=養子縁組無効は共同訴訟人の一人が上告した後の他の共同訴訟人の上告は二重上告として不適法

次は上訴です。Aさんだけが控訴しました。固有必要的なら、1人の上訴で全員が上訴人になり、上訴審は共同訴訟人の全員を名宛人として審判します。類似必要的では、判例の言い方が事件の種類で分かれます。まず、株主代表訴訟です。

判例最判平成12・7・7 民集54巻6号1767頁

株主代表訴訟で、自ら上訴をしなかった共同訴訟人の地位が問題になった事件 株主代表訴訟については、自ら上訴をしなかった共同訴訟人を上訴人の地位に就かせる効力までが民訴法四〇条一項によって生ずると解するのは相当でなく、自ら上訴をしなかった共同訴訟人たる株主は、上訴人にはならないものと解すべきである

証券会社の株主が、取締役の責任を追及した事件です。上告審で、自ら上告しなかった株主の地位が問題になりました。住民訴訟も同じ結論です。

判例最大判平成9・4・2 民集51巻4号1673頁(判決当時の民訴62条=現40条)

住民訴訟で、自ら上訴をしなかった共同訴訟人の地位が問題になった事件 住民訴訟については、自ら上訴をしなかった共同訴訟人をその意に反して上訴人の地位に就かせる効力までが行政事件訴訟法七条、民訴法六二条一項によって生ずると解するのは相当でなく、自ら上訴をしなかった共同訴訟人は、上訴人にはならないものと解すべきである。

判決の中の民訴62条は、当時の条文で、今の40条にあたります。上訴人にならないことと、確定遮断も移審も全員に及ぶことは、矛盾しません。判旨も、1人が上訴すれば、原判決の確定は妨げられ、事件は全体として上訴審に移り、上訴審の判決の効力は、上訴しなかった人にも及ぶ、としています。そのうえで、自ら上訴しなかった人を、上訴人の地位に就かせる効力までは、40条1項から生じない、とします。判決の確定が止まる確定遮断と、事件が上に移る移審は全員に及ぶけれど、上訴人の地位は与えない。前回見た、上訴は全員に効くという話の続きです。理由は3つです。合一確定のためには、確定遮断と移審の範囲で足りること。訴訟を追行する意思を失った人に、上訴人の地位を強いるのは相当でないこと。そして株主や住民の個別の利益が問題なのではなく、人数が減っても、審判の範囲や判決の効力に影響しないことです。ただし、ここは一本化して言い切れません。

判例最決平成23・2・17 集民236号67頁

養子縁組無効の訴えの共同訴訟人の一人が上告した後に、他の共同訴訟人が上告した事件 数人の提起する養子縁組無効の訴えは、いわゆる類似必要的共同訴訟と解すべきであるところ……上告人兼申立人が本件上告を提起するとともに、本件上告受理の申立てをした時には、既に共同訴訟人であるX2が本件養子縁組無効の訴えにつき上告を提起し、上告受理の申立てをしていたことが明らかであるから、上告人の本件上告は、二重上告であり……不適法である。

養子縁組無効の訴えを、数人が共同で起こした事件です。共同訴訟人の1人が上告した後に、別の共同訴訟人が上告したところ、二重上告、つまり、すでに上告した人が重ねて上告したものとして、不適法とされました。重ねて、と言えるのは、この人がすでに上告人になっていたからです。先に上告した1人の行為で、ほかの共同訴訟人も上告人として扱われていた、と読めます。つまり、類似必要的でも、上訴した人以外が上訴人になるかは、事件の類型で判例が割れています。住民訴訟と株主代表訴訟では上訴人にならない。養子縁組無効では、上訴人になる、と読める決定があります。どれか1つの結論に一本化して覚えないでください。割れる手がかりは、判旨の書き出しにあります。どちらも「株主代表訴訟については」「住民訴訟については」と、事件の種類を限って述べています。3つめの理由、個人の利益が問題ではないという点も、その種類の訴えについて言われたものです。養子縁組無効の決定は、この点の理由を述べていません。ですから、3つめの理由がそのまま当てはまるかは、決定からは分かりません。

今日の地図(保存版)

総括の板(冒頭:持分権の確認=各自単独/共有権の確認=固有必要的→同調しない者を被告に加える道(相続の共有に及ぶかは判例未明示)/判断基準=実体法→訴訟法→弾力化/共有だから固有ではない/境界確定=共有なら全員・同調しない者は被告に/類似必要的=判決効が拡張される場合/40条は共通・違いは取下げと上訴) 図:総括の板

  • 冒頭:持分権の確認=各自単独
  • 共有権の確認=固有必要的→同調しない者を被告に加える道(相続の共有に及ぶかは判例未明示)
  • 判断基準=実体法→訴訟法→弾力化
  • 共有だから固有ではない
  • 境界確定=共有なら全員・同調しない者は被告に
  • 類似必要的=判決効が拡張される場合
  • 40条は共通・違いは取下げと上訴

まとめます。冒頭のAさんからEさんに戻ります。求めるのが各自の持分権の確認なら、Eさんを待たずに、各自が単独で訴えられます。共有権そのものの確認が必要なら、固有必要的です。その場合の突破口として、同調しないEさんを被告に加える道が考えられます。ただ、相続の共有へそのまま及ぶかは、判例が明示していません。固有必要的共同訴訟は、全員が当事者にならなければ当事者適格を欠き、訴えが不適法になる型です。ただし基準時は口頭弁論の終結時ですから、それまでにそろえれば却下を免れます。判断基準は3層です。実体法的観点が出発点で、訴訟法的観点で実効性や矛盾回避、提訴の難しさを加え、弾力化で、同調しない人を被告に加える道を用意する。共有だからといって固有とは限らず、共有権や遺産の確認は固有、持分権や、建物収去土地明渡しは通常共同です。境界確定の訴えは、隣地が共有なら共有者全員が当事者で、固有必要的です。同調しない共有者は、被告に回せます。類似必要的は、各自が単独で適格を持ち、判決の効力が他の人に拡張される場合に成り立ちます。最後に、40条の適用は固有も類似も同じです。違いは取下げと上訴。固有は取下げが全員でなければ効かず、1人の上訴で全員が上訴人になります。類似は取下げが各自自由で、上訴は事件の類型で割れます。試験では、まず訴訟物を見て、固有か通常か類似かを見分けてから、規律を当ててください。

参照条文

  • 民事訴訟法52条
  • 民事訴訟法40条1項
  • 人事訴訟法12条2項
  • 会社法855条
  • 破産法76条1項
  • 日本国憲法32条
  • 会社法838条1項
  • 人事訴訟法24条1項
  • 民事訴訟法261条1項

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