民訴ゼロから民事訴訟法 論文

表示の訂正と任意的当事者変更の書き方(後編)

製粉会社のG社が、代表者も所在地も同じ別法人のH社を買主と思い込んで代金240万円を請求し、買主はJ社だとして請求棄却となったあと、控訴審で被告をH社からJ社に変えたいと申し立てた事例を素材に、呼び名を直す表示の訂正で足りるか、足りないなら任意的当事者変更を控訴審でもできるか、第一審の審理の結果をJ社に引き継がせられるかを、当事者の同一性・変更の性質と要件・効果の順に検討し、答案の形にまとめます。

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ゼロから民事訴訟法 論文/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

事例

原告のG社、被告のH社、買主のJ社 図:原告のG社、被告のH社、買主のJ社

前編のノートでは、訴状の当事者欄を中心に、請求の趣旨と請求の原因も含めて、合理的に解釈して当事者を決める、という実質的表示説を使いました。この後編は、その基準で確定した被告を、あとから直したい場面です。後編の事例は、前編の2つの事件とは別の、事件3です。登場するのは、製粉会社の原告のG社と、被告のH社と、買主のJ社です。H社とJ社は別の法人ですが、代表者のKは同じで、同じビルに入っています。J社はパン工場のこむぎ工房を営み、H社は営業の窓口を務めています。図には、実線と点線があります。G社からH社へは、240万円の支払を求めて訴えた線です。G社からJ社への点線は、本当の取引の相手、という意味です。時間の順に見ていきます。

時系列:取引から提訴まで 図:時系列:取引から提訴まで

取引は、代表者のKの名刺から始まりました。肩書きは、H社の代表取締役です。G社はこの名刺を見て取引を始め、請求書の宛名をH社にしました。ところが、Kは、H社とJ社の両方の代表取締役でした。小麦粉は、J社のパン工場へ、毎回120万円分、3回納められました。1回目の分は、J社名義の口座から振り込まれましたが、2回目と3回目の分、合わせて240万円が未払いのままです。G社は、H社を被告にして、240万円の支払を求めて提訴しました。被告欄はH社で、請求の原因は、H社の代表者のKとの売買です。G社の担当者は、H社とJ社を、同じ会社の別名だと思い込んでいました。

時系列:第一審から控訴審まで 図:時系列:第一審から控訴審まで

第一審で、H社は、当社は注文していない、買主はJ社だ、と争いました。H社の代理人は弁護士のMで、J社の顧問弁護士でもあります。代表者の尋問では、Kが、H社とJ社の代表として、J社が注文して受け取った、代金は240万円で間違いない、と述べました。J社の工場長のWも、証人として証言しました。争点は、買主はH社かJ社か、だけです。売買の成立も、納品も、代金額も、争いはありませんでした。判決は、買主はJ社でH社ではない、として、請求棄却でした。G社は、判決書が届いてから2週間の期間の内に控訴しました。そして、控訴審の最初の口頭弁論で、被告をH社からJ社に変えたい、と述べました。H社は、自分に対する訴えの取下げに同意しています。被告を変える話に、なぜ訴えの取下げが出てくるのかは、第2で見ます。J社は、第一審には当事者として関わっていません。

事実の整理:サ・シ・ス・セ・ソ・タ 図:事実の整理:サ・シ・ス・セ・ソ・タ

記号で整理します。事実サは、H社とJ社が別の法人で、代表者が同じであることです。事実シは、小麦粉がJ社のパン工場に納められて、240万円が未払いであることです。事実スは、G社がH社を被告に提訴したことです。事実セは、第一審の審理です。争点は買主がだれかだけで、Kと工場長のWが話し、弁護士のMはJ社の顧問でもありました。事実ソは、請求棄却と控訴です。事実タは、控訴審での被告変更の申立てと、H社の取下げへの同意です。

この事例で問うこと 図:この事例で問うこと

問うのは3つです。1つめは、被告をH社からJ社に直すのは、呼び名を直す表示の訂正で足りるのか。2つめは、足りないなら、控訴審でも直せるのか。3つめは、第一審の審理の結果を、J社に引き継がせられるのか、です。

検討の順番

検討の順番 図:検討の順番

検討の順番は3つです。1つめは、確定した被告はだれか。2つめは、表示の訂正で足りるか。3つめは、任意的当事者変更はできるか、です。

先ほどの3つの問いとは、数え方が違います。検討の順番の1つめと2つめが、問いの1つめにあたり、このノートの第1で扱います。検討の順番の3つめが、問いの2つめと3つめにあたり、第2で扱います。

この順番にする理由は、こうです。訴状から被告が決まらなければ、直したい相手と同じ人格かどうかを、比べる相手が定まりません。比べて別人なら、取り換えるしかありません。そして、取換えを控訴審でも許してよいかは、取換えがどんな行為かと、その要件から決まります。

第1 表示の訂正で足りるか

直したい被告は、同じ人格か 図:直したい被告は、同じ人格か

まず、確定した被告はだれか、です。訴状の被告欄はH社で、請求の原因も、H社の代表者のKとの売買です。実質的表示説で読めば、確定した被告はH社です。実際の買主はJ社ですが、それなら被告はJ社だ、とはなりません。被告がだれに確定するかは、実際の買主がだれかだけでは決まりません。確定は、訴状の表示を合理的に読んで決めます。買主がJ社だったという事実が効いてくるのは、確定した被告のH社を、J社に直せるかどうかの場面です。訴えられたのはH社で、G社が本当に相手にしたいのはJ社です。この食い違いをどう直すかが、第1の問題です。

直し方は、2通りあります。同じ人の呼び方を直す表示の訂正と、別の人に取り換える当事者の変更です。法律の定めによらずに取り換えるので、任意的当事者変更と呼びます。どちらになるかで、必要な手続も、第一審の結果の扱いも変わります。H社とJ社は、代表者も所在地も同じです。それでも、被告をH社からJ社に直すのは、呼び名を直すだけで済むのでしょうか?

呼び名を直すだけで済むかどうかは、同じ人かどうかで決まります。これを、規範にします。

規範と答案の型|表示の訂正と当事者の変更の分かれ目 図:規範と答案の型|表示の訂正と当事者の変更の分かれ目

規範は、次のとおりです。

訴状から確定した当事者と、原告が当事者にしようとする者とが、同一の人格であれば、当事者の同一性があり、表示の訂正で足ります。同一の人格でなければ、別人に取り換えるのだから、任意的当事者変更によらなければなりません。

この規範は、条文には書かれていません。表示の訂正か当事者の変更かの分かれ目を、解釈で立てたものです。通説の考え方で、答案では規範として書きます。この分かれ目について、最高裁が一般的な定式を示した判決は、見当たりません。

決め手は、訴訟に新しい人を引き込むかどうかです。同じ人格なら、訴訟の最初から、その人が当事者でした。呼び名を直しても、防御の機会を持つ人は変わりません。別の人格なら、これまで訴訟に出ていなかった人を、新しく当事者にします。その人に、自分の言い分を出す機会を、新たに用意しなければなりません。ですから、別人への取換えには、固有の手続が要るのです。

同一性:事件3 図:同一性:事件3

あてはめです。確定した被告はH社で、G社が被告にしようとするのはJ社です。事実サのとおり、H社とJ社は別の法人です。代表者のKが同じで、同じビルに入っていても、法人格は別です。ですから、同一性はありません。代表者や所在地が同じというだけでは、同じ人格とは言えません。実質的に同一視して、表示の訂正で処理する見方もありますが、答案では、人格の別を原則に立てます。別の法人を引き込む以上、言い分を出す機会を用意する手続が要る、という先ほどの決め手のとおりです。

対比:被告欄が「こむぎ工房」だけだったら 図:対比:被告欄が「こむぎ工房」だけだったら

対比のために、設例を変えます。ここは事件3の事実ではなく、仮の設例です(図や答案で指すときの記号は、事実チです)。仮に、被告欄に、こむぎ工房とだけ書かれていたとします。請求の原因を読むと、J社のパン工場の所在地で、代表者のKと売買した、という取引でした。訴状全体を合理的に読めば、当事者はJ社と確定できます。こむぎ工房は、J社のパン工場の呼び名にすぎません。直すのは呼び名だけなので、表示の訂正で足ります。

同じJ社に直すのに、片方は表示の訂正で、片方は取換えになります。分かれ目は、訴状から読み取れる当事者が、すでにJ社かどうかです。事件3は、訴状からH社と確定していて、そのH社とJ社が別人格です。対比の設例は、訴状からJ社と確定するので、呼び名の直しで済みます。

結論です。事件3は、同一性がなく、表示の訂正では足りません。任意的当事者変更が必要です。

一言:新旧の会社が実質同一のとき 図:一言:新旧の会社が実質同一のとき

一言だけ付けます。別の法人でも、別人格だと主張することが許されない場合があるので、事件3がそれに当たらないことを確かめておきます。これも事件3の事実ではなく、仮の話です(記号は、事実ツです)。仮に、J社が、H社の債務から逃れるために作られた、H社と実質が同じ会社だったら、どうでしょう。最高裁の判決(最判昭48・10・26 民集27巻9号1240頁)に、債務を逃れる目的で旧会社の営業財産を流用して設立された、実質が同じ新会社について、旧会社とは別の法人だという主張は、信義則上許されない、としたものがあります。ただし、当事者の確定や任意的当事者変更を論じた判決ではありません。事件3では、H社とJ社の関係に、債務を逃れる目的は見えません。当てはまりません。

第2 任意的当事者変更はできるか

別人への取換えは、どんな行為か 図:別人への取換えは、どんな行為か

第2です。別人に取り換えるための、明文の規定は、ありません。そこで、次の3点が問題になります。任意的当事者変更は、どんな行為なのか。何が要件で、控訴審でもできるのか。そして、第一審の結果を、J社に引き継がせられるのか。2点めと3点めが、冒頭の問いの2つめと3つめです。先に、条文を1つ開きます。

条文民事訴訟法261条

民事訴訟法261条1項・2項(訴えの取下げ) 訴えは、判決が確定するまで、その全部又は一部を取り下げることができる。 2 訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。ただし、本訴の取下げがあった場合における反訴の取下げについては、この限りでない。

261条です。1項は、訴えは判決が確定するまで取り下げられる、という原則です。事件3は控訴審で、判決は確定していません。2項は、取下げに相手方の同意が要る場合を定めています。相手方が、本案について準備書面を出したり、弁論準備手続で申述をしたり、口頭弁論をしたりした後です。事件3がこれに当たるかは、あてはめで確かめます。ただし書きは、反訴の取下げの定めで、事件3には関係しません。

ここで、条文どおりの部分と、解釈で立てる部分を分けておきます。このノートで条文どおりなのは、261条です。条文を読めばそのまま出てくる内容なので、成立要件として、条文番号を添えて書けば足ります。条文に書いていない基準を、解釈で立てるものが、規範です。このノートの規範は2つです。1つめは、第1で立てた、同一性の規範。2つめは、これから立てる、任意的当事者変更の性質・要件・効果の規範です。

規範と答案の型|任意的当事者変更の性質・要件・効果 図:規範と答案の型|任意的当事者変更の性質・要件・効果

規範は、次のとおりです。

任意的当事者変更は、新当事者に対する新訴の提起と、旧当事者に対する訴えの取下げとの、複合行為である。したがって、新訴の提起の要件と、旧訴の取下げの要件、つまり261条が必要である。

新当事者の手続保障、つまり審級の利益のために、第一審に限られ、従前の訴訟資料も、当然には新当事者に及ばない。もっとも、旧当事者の訴訟追行を新当事者のそれと同視でき、新当事者の手続保障が実質的に満たされているときは、控訴審でも変更でき、従前の訴訟資料も新当事者に及ぶ。

言葉を先に確かめます。従前の訴訟資料とは、第一審の弁論と証拠調べの結果のことです。審級の利益は、第一審で防御する機会にかかわる言葉で、すぐあとで説明します。同視の例外とは、規範の最後の文、つまり、もっとも、から後ろのことです。

この規範も、条文には書かれていません。解釈で立てたものです。性質を複合行為とみることと、第一審に限るという要件は、通説の考え方です。同視の例外は、有力な考え方で、確立した扱いとまでは言えません。任意的当事者変更の要件や効果について、最高裁が正面から判断した判決は、見当たりません。

決め手を順に言います。なぜ複合行為なのか。取換えは、旧当事者に対しては訴えをやめること、新当事者に対しては訴えを起こすこと、に分けられるからです。だから、取下げの要件と、新訴の要件が、そのまま当てはまります。

なぜ第一審に限るのか。第一審は、当事者が事実を主張して、証拠を出す、最初の場です。控訴審でいきなり被告にされると、新当事者は、第一審で防御する機会を、飛ばされます。これが、審級の利益を奪われる、ということです。

第一審の審理の結果を新当事者に及ぼすのも、同じです。自分が関わっていない審理の結果で、縛られてしまいます。訴訟の途中で権利や義務を受け継いだ承継人なら、前の当事者が作った訴訟状態、つまりそれまでの審理の結果を、原則として引き継ぎます。J社は、H社から何かを受け継いだ承継人ではなく、はじめから別の会社です。だから、当然には引き継がない、が出発点になります。

それでも例外があるのは、それまでの審理を、すべて無にするのは無駄だからです。G社にとっても、H社にとっても、裁判所にとっても、同じ審理のやり直しになります。そこで、新当事者の手続保障が実質的に満たされているなら、控訴審でも認めてよい、と調和を図ります。その線引きが、同視できるかどうかです。

なお、任意的当事者変更を、複合行為ではなく、特別な単一の行為と見る少数の見方もあります。その見方は、新訴と取下げの要件に分けずに、独自の要件を立てます。答案では、複合行為で立てます。明文のない取換えを、すでにある2つの行為の要件で説明できるからです。

任意的当事者変更の検討の流れ 図:任意的当事者変更の検討の流れ

あてはめは、先ほどの3点に答える規範を、5段に分けて当てます。性質、取下げの同意、第一審に限る原則、同視の例外、効果の順です。

1つめは、性質です。G社の申立ては、J社に対する新訴の提起と、H社に対する訴えの取下げです。

2つめは、取下げの要件です。訴えの取下げに相手方の同意が必要になるのは、相手方が、本案について準備書面を出したり、弁論準備手続で申述をしたり、口頭弁論をしたりした後です。261条2項です。本案とは、請求に理由があるかどうかの審理のことです。H社は、第一審で、本案の口頭弁論をして、代表者の尋問にも応じました。ですから、取下げには同意が必要です。本案で争い始めた相手方には、請求棄却の判決で決着をつける利益があるからです。一方的に取り下げられると、相手方の勝つ見込みまで、一緒に消えてしまいます。事実タのとおり、H社は同意しています。取下げの要件は満たします。

規範が挙げるもう一方の、新訴の提起の側も見ます。新訴の提起の要件とは、J社に対して新しく訴えを起こすのに要ることで、出発点は、J社を被告とする訴えの申立てがあることです。事実タのとおり、G社は、J社に被告を変えたいと申し立てています。なお、新訴は、旧訴の取下げと合わせて控訴審で提起する形になります。新旧の請求が同じ訴訟に並ぶ形をとる場面を捉えて、共同訴訟の要件、38条を挙げる答案もあります。この点や、訴状の提出などの方式の細部には、ここでは立ち入りません。事件3で結論を分けるのは、新訴の提起を控訴審でしてよいかで、次の3つめで見ます。

3つめは、第一審に限る原則です。事件3は控訴審で、J社は、第一審の審理を受けていません。原則どおりなら、控訴審での変更は認められません。J社の審級の利益を奪うからです。そうなると、H社に対する請求棄却は維持されます。G社は、J社に、別の訴えを起こすほかありません。

4つめは、同視の例外です。J社は第一審の審理を受けていません。それでも控訴審で被告にしてよいと言えるのは、どんな事情があるときでしょうか。方向としては、第一審で、H社が、J社の立場の言い分を、十分に主張して、立証していたような場合です。これを規範の言葉で言い直すと、H社の訴訟追行を、J社のそれと同視できて、J社の手続保障が実質的に満たされているか、です。第1で見たのは、人格が同じかどうかでした。ここで見るのは、人格は別のままで、訴訟の進め方を同じと見てよいか、です。

H社が第一審で言ったのは、当社は注文していない、買主はJ社だ、ということでした。それでもJ社の手続保障が実質的に満たされていたと言えるかを、第一審で、だれが、どの立場で、何を話し、何が争われたかから確かめます。事実セを、次の図の順に拾います。

同視の事実を拾う 図:同視の事実を拾う

まず、人です。Kは、H社とJ社の両方の代表取締役で、代表者の尋問で、H社とJ社の代表として、J社が注文して受け取った、代金は240万円で間違いない、と述べました。J社の立場の事実が、第一審で、証拠として語られたことになります。J社の工場長のWも、証人として証言しました。図の評価の列では、J社側の事実が、証拠として出た、としています。弁護士のMは、H社の代理人であると同時に、J社の顧問でもあります。図の評価の列では、J社の利益も踏まえた訴訟追行、としています。

次に、争われた中身です。争点は、買主がH社かJ社か、だけでした。売買の成立も、納品も、代金額も、争いがありません。J社が控訴審で争いたい点は、この買主がだれかの点で、第一審ですでに争われています。争いのない点について、図の評価の列は、新たに争う余地が小さい、としています。

評価します。J社が、第一審で主張し、立証する機会は、H社の追行を通じて、実質的に与えられていました。J社の手続保障は、実質的に満たされています。H社の訴訟追行は、J社のそれと同視できます。

5つめは、効果です。同視できるので、控訴審でも変更できます。そして、第一審の弁論と証拠調べの結果、つまり従前の訴訟資料を、J社に引き継がせることができます。

結論です。G社は、控訴審で、被告をH社からJ社に変更できます。訴訟状態も、J社に引き継がせられます。もし、工場長のWの証言がなく、Kも両社の代表でなく、弁護士のMも関わっていなかったら、同視できる、とは言いにくくなります。その場合は、原則どおり、変更は認められません。

まとめ

完成答案:第1 表示の訂正で足りるか 図:完成答案:第1 表示の訂正で足りるか

完成答案の前半です。第1は、表示の訂正で足りるか、を書いています。規範の文言と、あてはめで拾った事実の対応が、読みどころです。図と同じ文面を、本文でも置きます。

第1 表示の訂正で足りるか

1 問題の所在

 本件では、訴状の被告欄も請求の原因もH社であるから、確定した被告はH社である。G社は被告をJ社に直したい。これが表示の訂正で足りるのか、任意的当事者変更が必要なのかが問題となる。

2 規範

 訴状から確定した当事者と、原告が当事者にしようとする者とが、同一の人格であれば、当事者の同一性があり、表示の訂正で足りる。同一の人格でなければ、別人に取り換えるのだから、任意的当事者変更によらなければならない。

3 あてはめ

 H社とJ社は、代表者のKが同じで、所在地も同じであるが、法人格を異にする別の法人である。したがって、同一性はない。

4 結論

 よって、表示の訂正では足りず、任意的当事者変更が必要である。

完成答案:第2 任意的当事者変更はできるか(問題の所在・規範) 図:完成答案:第2 任意的当事者変更はできるか(問題の所在・規範)

続きです。第2の、問題の所在と規範を書いています。性質、要件、同視の例外の順に並びます。

第2 任意的当事者変更はできるか

1 問題の所在

 任意的当事者変更には明文の規定がない。その性質と要件、控訴審でもできるか、第一審の訴訟資料を新当事者に引き継がせられるかが問題となる。

2 規範

 任意的当事者変更は、新当事者に対する新訴の提起と、旧当事者に対する訴えの取下げとの複合行為である。したがって、新訴の提起の要件と、旧訴の取下げの要件(民事訴訟法261条)が必要である。新当事者の手続保障(審級の利益)のため、第一審に限られ、従前の訴訟資料も当然には新当事者に及ばない。もっとも、旧当事者の訴訟追行を新当事者のそれと同視でき、新当事者の手続保障が実質的に満たされているときは、控訴審でも変更でき、従前の訴訟資料も新当事者に及ぶ。

完成答案:第2 任意的当事者変更はできるか(あてはめ・結論) 図:完成答案:第2 任意的当事者変更はできるか(あてはめ・結論)

最後です。第2の、あてはめと結論を書いています。取下げの同意、第一審に限る原則、同視の検討、効果の順です。

第2 任意的当事者変更はできるか(続き)

3 あてはめ

 (1) G社の申立ては、J社に対する新訴の提起と、H社に対する訴えの取下げである。G社はJ社を被告とする申立てをしている。本件で主に問題となるのは、それを控訴審でしてよいかである。

 (2) H社は第一審で本案について口頭弁論をしたが、取下げに同意しているから、民事訴訟法261条2項の要件を満たす。

 (3) 本件は控訴審であり、J社は第一審の審理を受けていないから、原則として変更は認められない。

 (4) しかし、Kは両社の代表取締役で、代表者の尋問でJ社が注文して受け取ったと述べ、J社の工場長のWが証言し、弁護士のMはJ社の顧問でもあった。争点は買主がだれかだけで、売買の成立、納品、代金額に争いはない。J社が主張し立証する機会は、H社の追行を通じて実質的に与えられていたから、H社の訴訟追行はJ社のそれと同視できる。

 (5) よって、控訴審でも変更でき、第一審の弁論と証拠調べの結果もJ社に及ぶ。

4 結論

 以上より、G社は、控訴審で被告をH社からJ社に変更でき、従前の訴訟資料もJ社に引き継がせることができる。

参照条文

  • 民事訴訟法261条

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