行政法ゼロから行政法#13

適正手続の原則と説明責任の原則

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第1章 行政法の基礎 ⑬/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

条文どおりなのに

営業停止の通知(山あいの町/A=町の担当/B=駅前の喫茶店の店主/町の条例=基準を満たさない店の営業を止められる/Bの店は形のうえで基準を満たしていないと見える/AはBに理由も告げず、言い分も聞かず、営業停止の通知を郵送した/BからAへの矢印は無い) 図:営業停止の通知

  • 山あいの町
  • A=町の担当
  • B=駅前の喫茶店の店主
  • 町の条例=基準を満たさない店の営業を止められる
  • Bの店は形のうえで基準を満たしていないと見える
  • AはBに理由も告げず、言い分も聞かず、営業停止の通知を郵送した
  • BからAへの矢印は無い

山あいの町に、条例があります。基準を満たさない店は、営業を止められる、という定めです。駅前の喫茶店の店主Bの店は、形のうえで、基準を満たしていない、と見える状態です。町の担当のAは、Bに理由を告げず、言い分も聞かず、営業を止める通知を、郵送しました。この条例にも、ほかの決まりにも、止める前に店主の言い分を聞く、という定めは無いとします。要件を満たしていれば、結論は正しいので問題は無い。Bは、そう思っていません。Bが問題にしているのは、結論ではありません。聞いてもらえなかったことです。結論が正しいかもしれない。条文の要件にも当てはまる。それでも、なお問題が残ることがあります。今日の1問は、これです。条文どおりの行政を、条文のほかに、何で縛るのか。

法律に違反していなければ違法にはならない、とは限りません。そこが、今日いちばん直感に反する点です。法律の条文に違反していなくても、行政活動は違法になりうる、と考えられています。その働きをするのが、一般原則です。今日は、一般原則のうち、手続の側の適正手続の原則と、情報の側の説明責任の原則を見ます。

一般原則とは何か

一般原則の使う順序(事案→①法令の要件・効果を当てる→明確で妥当な結論なら、そこで終わり/規定が明確でない、または形式的に当てると正義に反する結論になるなら→②一般原則を考える) 図:一般原則の使う順序

  • 事案→①法令の要件・効果を当てる→明確で妥当な結論なら、そこで終わり
  • 規定が明確でない、または形式的に当てると正義に反する結論になるなら→②一般原則を考える

前の回までは、法律による行政の原理を見ました。法律の優位は、定めがあるときに、そこから外れていないか、を見る物差しでした。Bの場面は、条例の要件に当てはまっているので、この物差しでは問題が出ません。一般原則は、その先で出番がある物差しです。法律による行政の原理のほかに、行政法の全体を通じて通用する原則のことです。どうして、条文に反していないのに、違法になるのですか。条文が、いちばん大事なのではないのですか。条文は、多数の場合を思い浮かべて、一般的に書かれるからです。町の図書館に、館内は飲食禁止、という決まりがあるとします。せき止めの飴を1つなめた人にまで、形どおりに当てはめて退出させたら、どうでしょう。決まりの文言には当てはまっても、決まりを作った目的からは、行き過ぎです。条文は、すべての個別の事情を書き尽くせません。形式どおりに当てはめると、不当な結果になることが、出てきます。その調整役が一般原則です。

条文を飛ばして、いきなり一般原則を使ってもよいのですか。違います。順序があります。板のとおり、まず、法令の要件と効果の規定を当てます。その結論が明確で妥当なら、そこで終わりです。規定が明確でない場合や、形式どおりに当てると正義に反する場合に、はじめて一般原則を考えます。条文を飛ばして一般原則、ではありません。

一般原則の顔ぶれ(行政法全体に通じる原則=適正手続・説明責任・公正性と透明性・国民参加・効率性・補完性。うち適正手続と説明責任は憲法の観点からも重要/法の一般原則で、法源に含まれるもの=信義則・権利濫用禁止・比例原則・平等原則/何を一般原則に数えるかは学説上一致しない) 図:一般原則の顔ぶれ

  • 行政法全体に通じる原則=適正手続・説明責任・公正性と透明性・国民参加・効率性・補完性。うち適正手続と説明責任は憲法の観点からも重要/法の一般原則で
  • 法源に含まれるもの=信義則・権利濫用禁止・比例原則・平等原則/何を一般原則に数えるかは学説上一致しない

顔ぶれを見ます。1つ目のまとまりは、行政法全体に通じる原則です。このうち、適正手続と説明責任は、憲法の観点からも重要だとされています。顔ぶれは、適正手続、説明責任、公正性と透明性、国民参加、効率性、補完性。2つ目のまとまりは、法の一般原則で、法源に含まれるものです。信義則、権利濫用の禁止、比例原則、平等原則です。何を一般原則に数えるかは、学説上、一致していません。この顔ぶれは、1つの整理だと思ってください。今日は、1つ目のまとまりのうち、適正手続と説明責任、そして、これに関連する公正性と透明性、国民参加を見ます。2つ目のまとまりは、次の回以降です。

今日は、全部を覚える必要はありません。持ち帰るのは2つです。一般原則は、法律の明文に反しない行政活動でも、違法とされうる、という働き。もう1つは、条文を当てたあとに考える、という順序です。

適正手続の原則

Bの営業停止(店は基準を満たしていないと見える=営業停止の要件に当てはまる/聞かずに決めた/営業停止の結論は正しいかもしれない/問い=結論が正しいなら、聞かなくても問題は無いか) 図:Bの営業停止

  • 店は基準を満たしていないと見える=営業停止の要件に当てはまる
  • 聞かずに決めた
  • 営業停止の結論は正しいかもしれない
  • 問い=結論が正しいなら、聞かなくても問題は無いか

Bの場面に戻ります。さっきの順序で言えば、1段目の条例は当てました。営業停止という結論は出ます。ただ、言い分を聞く定めも無いまま、形どおりに当てて終わりでよいのか。ここが、2段目の一般原則の出番です。最初の問いは、こうです。Bの営業停止の結論が正しいなら、聞かなくても問題は無いでしょうか。

2つの発想の対比(実体中心の発想=内容が正しければよい/法律の要件に合った内容の活動が行われることを重視/裁判所の審査も内容の正しさを見る想定/手続にも価値を置く発想=内容が正しいだけでなく、手続的に適正なプロセスを経ていること自体に独自の価値がある/憲法31条に象徴されるデュー・プロセスの考え方/戦後に入った) 図:2つの発想の対比

  • 実体中心の発想=内容が正しければよい
  • 法律の要件に合った内容の活動が行われることを重視
  • 裁判所の審査も内容の正しさを見る想定
  • 手続にも価値を置く発想=内容が正しいだけでなく、手続的に適正なプロセスを経ていること自体に独自の価値がある
  • 憲法31条に象徴されるデュー・プロセスの考え方
  • 戦後に入った

結論が正しいなら聞かなくてもよい。その考え方には、名前があります。内容が正しければよい、という実体中心の発想です。法律による行政の原理は、もともと、法律の要件に合った内容の活動が行われることを重視してきました。裁判所の審査も、内容が正しいかを見るもの、と想定されていました。ところが、戦後、日本国憲法のもとで、考え方が変わります。憲法の31条に象徴される、デュー・プロセス、つまり適正な手続の考え方が入りました。行政の活動は、内容が正しいだけでなく、手続的に適正なプロセスを経ていること自体に、独自の価値がある、と考えられるようになったのです。まず、憲法の条文を見ます。

条文日本国憲法31条

日本国憲法第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

憲法の回で見たとおり、31条が求める適正な手続の中核は、告知と聴聞です。不利益を受ける人が、事前に何をされようとしているかを知らされ、言い分を述べる機会が与えられる、という考え方でした。内容が正しいか、手続を踏んだか。この2つは、別の軸です。板で並べます。

実体の正しさと、手続の適正(縦軸=内容は正しいか/横軸=手続を踏んだか/内容が正しい×手続を踏んだ=問題が出にくい/内容が正しい×手続を踏んでいない=結論は正しくても、適正手続の原則の問題が残る/内容が誤り×手続を踏んだ=手続は踏んだが、内容に問題が残る/内容が誤り×手続を踏んでいない=両方に問題が残る) 図:実体の正しさと、手続の適正

  • 縦軸=内容は正しいか
  • 横軸=手続を踏んだか
  • 内容が正しい×手続を踏んだ=問題が出にくい
  • 内容が正しい×手続を踏んでいない=結論は正しくても、適正手続の原則の問題が残る
  • 内容が誤り×手続を踏んだ=手続は踏んだが、内容に問題が残る
  • 内容が誤り×手続を踏んでいない=両方に問題が残る

2つの軸を掛け合わせると、4つの場合が出ます。Bの場面は、内容は正しいかもしれないが、手続を踏んでいない場合です。法律の優位は、主に内容の軸を見ます。手続の定めがあれば、それに外れることも法律の優位の問題です。Bの場面には、その定めがありません。適正手続の原則は、手続の軸を、独立に見ます。だから、内容が正しいかもしれなくても、手続の側の問題は消えません。Bの目線で考えます。同じ営業停止でも、事前に理由を告げられ、自分の言い分を聞かれたうえで決まった場合と、何も聞かれないまま郵便で届いた場合とでは、受け止めが全く違います。理由は、少なくとも2つ考えられています。1つ目は、誤りを防ぐ働きです。Bの言い分を聞けば、基準を満たしていないと見えた店が、実は満たしていたと分かるかもしれません。聞かなければ、行政が事実を取り違えていても、誰も気づけません。2つ目は、納得です。結論が同じでも、聞かれてから決まったのなら、受け入れやすい。

手続を踏まなかった処分が必ず取り消される、とは言えません。手続に不備があったとき、処分がどうなるかは、別の論点です。今日の話は、手続を踏むこと自体が原則として大事だとされる、という位置づけまでです。取消しとの関係は、後の回で扱います。この考え方は、法律の整備が進むなかで、法律による行政の原理のなかにも取り込まれてきました。その例が、行政手続法です。1条1項を、全文で読みます。行政手続全体の目的を定めた条文です。

条文行政手続法1条1項

行政手続法第1条第1項 この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続並びに命令等を定める手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性(行政上の意思決定について、その内容及び過程が国民にとって明らかであることをいう。第四十六条において同じ。)の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。

見る点は2つです。目的に、行政運営における公正の確保と、透明性の向上が掲げられていること。そして、透明性とは、行政上の意思決定の内容と過程が、国民にとって明らかであることだ、と書かれていること。適正手続の理念が、公正性と透明性という言葉で、法律のなかに入っているのです。実際、適正手続の原則と、公正性・透明性の原則は、内容が実質的に重なるところがある、と整理されています。手続を定める規定は、規制規範にあたります。その活動をするなら、こういう手続でしなければならない、とやり方を縛る定めなので、規制規範です。個々の手続の中身は、後の回で扱います。最初の問いに戻します。条文の要件に当てはまっていても、手続を飛ばした問題は、内容の正しさとは別に残ります。条文のほかに行政を縛るもの、その1つ目が、この適正手続の原則です。

行政手続の重要性を示した判例の流れ

これまでの確認(行政法の回と、憲法の回)(法律による行政の原理=法律の優位/憲法31条=もともと刑事手続の条文/問い=法律の優位は何を見る物差しか。31条は行政手続にも及びうるか/答えは次の表で) 図:これまでの確認

  • 行政法の回と、憲法の回
  • (法律による行政の原理=法律の優位/憲法31条=もともと刑事手続の条文/問い=法律の優位は何を見る物差しか。31条は行政手続にも及びうるか/答えは次の表で)

判例を見る前に、思い出してください。法律による行政の原理で、法律の優位は何を見る物差しでしたか? そして、憲法の回で見た31条は、行政手続にも及びうるのでしょうか?法律の優位は、定めがあるときに、そこから外れていないかを見る物差しでした。31条は、刑事手続ではないというだけで、枠の外に出るわけではなく、及びうる、でした。及んだとして、何を要求するかは、権利利益と公益とを比べる、総合較量で決まります。及びうる、というところが大事です。当然に及ぶ、と言い切るのではありません。では、行政手続の重要性が語られてきた判例を、見ていきます。ここでは、事案の中身は語りません。どの場面で、どの方向に続くかを、位置づけとして押さえます。

判例4件の位置づけ(個人タクシー事件=個人タクシーの免許申請の審査/審査の手続に瑕疵があれば、却下処分の違法事由になりうる〔最判昭46・10・28〕/群馬中央バス事件=バスの免許と審議会への諮問/諮問を経ても、審議・答申の過程に重大な瑕疵があれば処分は違法になりうる。事案では違法なしで棄却〔最判昭50・5・29〕/成田新法事件=工作物の使用禁止命令と、事前の告知・弁解・防御の機会/31条の保障は行政手続にも及びうる。何を要求するかは総合較量〔最大判平4・7・1〕/象のオリ訴訟=駐留軍用地の暫定使用〔処分を介さず権原が生じる規定〕と31条/成田新法の考え方は、行政処分による制限に限らず広く行政手続に及びうる。結論は法意に反しない〔最判平15・11・27〕) 図:判例4件の位置づけ

  • 個人タクシー事件=個人タクシーの免許申請の審査
  • 審査の手続に瑕疵があれば、却下処分の違法事由になりうる〔最判昭46・10・28〕
  • 群馬中央バス事件=バスの免許と審議会への諮問
  • 諮問を経ても、審議・答申の過程に重大な瑕疵があれば処分は違法になりうる。事案では違法なしで棄却〔最判昭50・5・29〕
  • 成田新法事件=工作物の使用禁止命令と、事前の告知・弁解・防御の機会
  • 31条の保障は行政手続にも及びうる。何を要求するかは総合較量〔最大判平4・7・1〕
  • 象のオリ訴訟=駐留軍用地の暫定使用〔処分を介さず権原が生じる規定〕と31条
  • 成田新法の考え方は、行政処分による制限に限らず広く行政手続に及びうる。結論は法意に反しない〔最判平15・11・27〕

表の上から順に、位置づけを言います。4件は、2つずつ組になります。前の2件は、手続の過程に欠陥があれば、処分そのものが違法になりうる、と示した組です。なぜか。適正手続の原則のところで見たとおり、言い分を聞かず、審議を尽くさなければ、行政は誤りに気づきにくい、と考えられるからです。後の2件は、憲法の31条が、行政手続にどこまで及ぶかを示した組です。個人タクシー事件は、個人タクシーの免許の申請を、どう審査するかが問題になった場面です。免許の許否を決める行政庁は、公正な手続で審査すべきで、審査の手続に瑕疵、つまり欠陥があれば、却下の処分、つまり申請を退ける処分が違法になりうる、という方向を示しました。群馬中央バス事件は、バスの免許と、審議会への諮問、つまり行政が処分の前に審議会に意見を求める手続の場面です。諮問を経ていても、審議や答申の過程に重大な瑕疵があれば、処分は違法になりうる、という考え方を示しました。ただし、この事案では、違法とは言えず、請求は棄却、つまり訴えた側の言い分は認められませんでした。

2つとも請求が退けられた、というわけではありません。個人タクシー事件は、申請した側の言い分が通った事件です。却下処分を違法とした原審、つまり1つ前の裁判所の判断を、そのまま認めました。群馬中央バス事件は、考え方は示したものの、事案では違法なしです。結論は別ですが、どちらも、手続の過程そのものが、処分の違法につながりうる、という方向を示した点で並びます。次の成田新法事件は、工作物の使用禁止命令を出すとき、事前の告知や弁解、防御の機会が要るか、という場面です。憲法で見た、行政手続にも及びうる、総合較量という枠組みです。最後の象のオリ訴訟は、駐留軍用地の暫定使用で、処分を介さずに、土地を使う法的な根拠、つまり権原が生じる規定の合憲性が問題になりました。成田新法の考え方は、行政処分による制限に限らず、広く行政手続に及びうる、とされましたが、結論は法意に反しない、でした。

象のオリ訴訟では、31条違反とされたのですか。違います。法意に反しない、つまり違反とはされていません。位置づけは、成田新法の枠組みを、処分以外の場面にも広げて考えた点にあります。4つの判決の中身は、それぞれ別の回で扱います。

説明責任の原則

町の予算の使い道(山あいの町/町が公共工事の予算の使い道を、住民に知らせないまま決めた/住民=何に使われるかを知らない/問い=知らされないまま、住民は賛成も反対も判断できるか) 図:町の予算の使い道

  • 山あいの町
  • 町が公共工事の予算の使い道を、住民に知らせないまま決めた
  • 住民=何に使われるかを知らない
  • 問い=知らされないまま、住民は賛成も反対も判断できるか

次は、情報の側です。町が、公共工事の予算の使い道を、住民に知らせないまま決めた場面を考えます。問いです。知らされないままで、住民は、賛成も反対も判断できるでしょうか。何に使われるか分からなければ、賛成も反対もできません。ここに、説明責任の原則の核心があります。政府は、国民に、自分のしていることを説明する責任を負う、という原則です。アカウンタビリティとも呼ばれます。会社に例えます。経営者が、決算を株主に一切見せないまま、会社のお金を使い続けたら、株主は、この経営者に任せ続けてよいのか、判断できません。国では、主権者は国民です。行政は、国民から任されて動く側です。任された経営者が、何をしているかを報告するのは、任せた側の判断の材料を渡すためです。

説明責任の原則のつながり(①国民主権→②主権者が国政について的確に判断するには、有用な情報が適時適切に提供される必要がある→③政府には、情報を提供し、事態を説明する責任がある=説明責任の原則→④情報公開法制は、その具体化/根拠は国民主権。情報公開法はそれを具体化した制度) 図:説明責任の原則のつながり

  • ①国民主権→②主権者が国政について的確に判断するには、有用な情報が適時適切に提供される必要がある→③政府には、情報を提供し、事態を説明する責任がある=説明責任の原則→④情報公開法制は、その具体化
  • 根拠は国民主権。情報公開法はそれを具体化した制度

責任の根拠は、国民主権です。主権者である国民が、国政について的確に判断するためには、有用な情報が、適切な時に与えられなければなりません。そうだとすれば、政府には、情報を提供し、事態を説明する責任がある。これが、説明責任の原則です。説明責任の根拠は、情報公開法ではないのですか。逆です。根拠は国民主権です。情報公開法は、それを具体化した制度です。法律があるから責任がある、のではありません。責任が先にあって、法律がそれを形にしたのです。1条を板に出します。個別法なので、暗記は要りません。

条文行政機関の保有する情報の公開に関する法律1条

行政機関の保有する情報の公開に関する法律第1条 この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。

見る点は2つだけです。1つ目、国民主権の理念にのっとり、と書いてあること。法律の根拠が、国民主権に置かれています。2つ目、国民に説明する責務が全うされるように、と書いてあること。説明責任という言葉が、条文の目的に出てきます。町の予算の話も、同じ構造です。町が使い道を知らせなければ、住民は判断できません。国も同じです。説明することで、国民は、行政を理解し、批判することができます。情報公開制度の中身は、後の回で扱います。

国民参加の原則

国民参加の仕組み3つ(行政文書の開示請求権=情報公開/命令等を定める場合の意見公募手続=行政手続法/行政計画の策定への参加=パブリック・インボルブメント/いずれも、説明を受けた国民が行政過程に関わる) 図:国民参加の仕組み3つ

  • 行政文書の開示請求権=情報公開
  • 命令等を定める場合の意見公募手続=行政手続法
  • 行政計画の策定への参加=パブリック・インボルブメント
  • いずれも、説明を受けた国民が行政過程に関わる

説明を受けた国民は、そのあと、何をするでしょうか。町の計画を、住民が事前に知らされ、意見を言える場合と、完成してから初めて知る場合とを比べてください。前者なら、住民は、行政に働きかけ、行政を監視する側に回れます。このように、説明責任が果たされると、国民が行政過程に関わり、積極的に参画することが要請される、と整理されます。これが、国民参加の原則です。国民参加の具体的な仕組みは、板の3つです。1つ目、行政文書の開示請求権。国民が、行政の持つ文書を見せるよう求められます。2つ目、命令等を定めるときの意見公募手続。行政が、命令を作る前に、国民の意見を募ります。3つ目、行政計画の策定への参加。計画を作る過程に、住民が関わる仕組みです。名前と位置づけだけで構いません。

国民主権から、説明責任、そして国民参加へ。説明を受けた国民が、行政に関わる。この一本の流れです。

今日の地図(保存版)

今日のまとめ(一般原則の使う順序=①法令の要件・効果を当てる→②不明確、または形式的に当てると正義に反するとき一般原則/適正手続の原則=手続を踏むこと自体に独自の価値がある。内容が正しいかもしれなくても、手続の側の問題は残る/説明責任の原則=根拠は国民主権。情報公開法はその具体化/国民参加の原則=説明を受けた国民が、行政過程に関わる) 図:今日のまとめ

  • 一般原則の使う順序=①法令の要件・効果を当てる→②不明確、または形式的に当てると正義に反するとき一般原則
  • 適正手続の原則=手続を踏むこと自体に独自の価値がある。内容が正しいかもしれなくても、手続の側の問題は残る
  • 説明責任の原則=根拠は国民主権。情報公開法はその具体化
  • 国民参加の原則=説明を受けた国民が、行政過程に関わる

営業停止の場面に戻ります。町の担当のAが、Bの店に条例を当てたのは、法律の優位の問題としては、外れていません。それでも、理由を告げず、言い分も聞かずに決めたことは、適正手続の原則の問題として残ります。条文どおりでも、違法になりうるのは、このためです。町が、予算の使い道を住民に何も説明しない場面は、説明責任の原則の問題でした。根拠は、国民主権です。情報公開法は、その具体化です。そして、説明を受けた国民が、行政に関わるのが、国民参加の原則です。一般原則は、条文を当てたあとの、第二の物差し、ということですね。まず、法令の要件と効果を当てます。それで足りないときに、一般原則を考えます。使う順序を、持ち帰ってください。

今日は、手続と説明の2つを見ました。一般原則の顔ぶれのうち、法の一般原則の側にある、信義則から、次の回で見ていきます。

参照条文

  • 日本国憲法31条
  • 行政手続法1条1項
  • 行政機関の保有する情報の公開に関する法律1条

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