行政法ゼロから行政法#17

平等原則

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第1章 行政法の基礎 ⑰/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

隣にだけ出た補助金

断熱改修の補助金と不交付(A=市/B=申請者P〔補助を受けた〕/C=申請者Q〔同じ条件のはずなのに断られた〕/補助は法律にも条例にも書かれていない・市が要綱と予算で決めた制度/問い①=不公平だから違法と言えるか/問い②=Pが本当は要件を満たしていなかったら、Pと同じに扱えと言えるか) 図:断熱改修の補助金と不交付

  • A=市
  • B=申請者P〔補助を受けた〕
  • C=申請者Q〔同じ条件のはずなのに断られた〕
  • 補助は法律にも条例にも書かれていない・市が要綱と予算で決めた制度
  • 問い①=不公平だから違法と言えるか
  • 問い②=Pが本当は要件を満たしていなかったら、Pと同じに扱えと言えるか

市のAが、住宅の断熱改修に補助金を出しています。隣の家のPは、この補助を受けられました。同じ条件のはずの、Qは、断られました。この補助は、法律にも条例にも書かれていません。市が、要綱と予算で決めた制度です。今日の1問は、これです。法律の根拠が無い補助金でも、不公平だから違法、と言えるのか。さらに、Pが本当は要件を満たしていなかったと分かったら、Qは「Pと同じに扱え」と言えるのか。先に答えを言います。1つ目は、言えます。法律の根拠が無い給付でも、不公平は違法になりえます。2つ目は、原則として言えません。違法な扱いを自分にも、とは求められないのです。

前の回で、処分の重さをほかの処分例と比べたとき、同じような非行は同じように扱う、という要請は、次の回の平等原則とつながる、と話しました。その平等原則の回です。この回では、不公平を止める物差しと、法律による行政の原理との、ぶつかり方を見ます。あわせて、一般原則の顔ぶれで残っていた、補完性の原則と効率性の原則を、名前と骨格まで押さえます。

平等原則とは

平等原則の定義と根拠(平等原則=行政は合理的な理由なく国民を区別して〔別扱いして〕はならない/根拠=憲法14条1項/問いはいつも「区別に合理的な理由があるか」/行政法で足すもの=①行政活動のあらゆる場面で効く一般原則 ②法律による行政の原理との関係 ③法律が具体化している場面がある) 図:平等原則の定義と根拠

  • 平等原則=行政は合理的な理由なく国民を区別して〔別扱いして〕はならない/根拠=憲法14条1項/問いはいつも「区別に合理的な理由があるか」/行政法で足すもの=①行政活動のあらゆる場面で効く一般原則
  • ②法律による行政の原理との関係
  • ③法律が具体化している場面がある

定義から入ります。平等原則とは、行政は、合理的な理由なく、国民を区別してはならない、という原則です。区別とは、ある人を別扱いすることです。根拠は、憲法14条1項に求められます。

条文日本国憲法14条1項

日本国憲法第14条第1項 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

憲法14条の中身、つまり、区別が合理的かを審査するときの枠組みや、後段に列挙された事由の意味は、憲法の平等の回で扱いました。行政法で足すものだけを、3つ持ち帰ります。1つ目。この原則は、補助金でも許可でも課税でも、行政活動のあらゆる場面で効く一般原則です。2つ目。法律による行政の原理との関係が、独特です。これが今日の中心です。3つ目。法律が、この原則を具体的な規定にしている場面があります。問いは、いつも1つに帰着します。その区別に、合理的な理由があるか、です。比べる相手がいて、扱いに差がある。その差に、筋の通った理由があるのか。この問いを、場面ごとに当てていきます。

対立しない場面=補助金

補助金は贈与ではない(侵害留保説=侵害に当たらない補助金に法律の根拠は不要→私人が補助を受ける権利を憲法や法律から直接導くのは難しい/しかし公金を使う行政活動=私人の贈与と違い平等原則に縛られる/合理的な理由なく一方に給付し他方に給付しないのは違法になりうる/法律で権利として定められた給付〔生活保護〕とは出発点が違う/勝負どころ=PとQを区別する理由が補助の目的に沿うか) 図:補助金は贈与ではない

  • 侵害留保説=侵害に当たらない補助金に法律の根拠は不要→私人が補助を受ける権利を憲法や法律から直接導くのは難しい
  • しかし公金を使う行政活動=私人の贈与と違い平等原則に縛られる
  • 合理的な理由なく一方に給付し他方に給付しないのは違法になりうる
  • 法律で権利として定められた給付〔生活保護〕とは出発点が違う
  • 勝負どころ=PとQを区別する理由が補助の目的に沿うか

導入の補助金から考えます。その前に、前の回までの回収です。法律の留保で、侵害に当たらない補助金には法律の根拠は要らない、としたのは、何説だったでしょうか?侵害留保説です。国民の権利を侵害する行政活動にだけ、法律の根拠が要る、という考え方でした。ですから、補助金は、法律の根拠が無くても出せます。すると、Qが、補助を受ける権利を、憲法や法律から直接に導くのは、難しくなります。法律に権利として定められた、生活保護のような給付とは、出発点が違います。市の自由にはなりません。ここが、この回の最初の山です。私人が自分のお金で友人にプレゼントをするなら、誰にあげても、理由を説明する必要はありません。贈与は、持ち主の自由だからです。けれど、市が配るのは、公金です。町内会費で買った景品を配る係が、気に入った人にだけ渡していたら、会員は怒りますよね。それと同じです。市の公金は、住民から集めた税金です。市は、それを住民全体のために預かって使う立場にあります。だから、配り方にも、住民の誰に対しても説明できる理由が要ります。公金を使う行政活動は、法律の根拠が無くても、平等原則に縛られます。つまり、根拠が無い、は、縛られない、という意味ではありません。根拠が無くても、合理的な理由なく、一方に給付して他方に給付しなければ、違法になりうるのです。

補助の目的との関係で見ます。この補助の目的は、住宅の断熱による省エネです。PとQを区別した理由が、その目的に沿っているかを問います。公金による給付については、最高裁も、同じ見方をとっています。持続化給付金の事件で、給付の対象とされた事業者と、そうでない事業者を区別することに、不合理な点がないかが問われました。

判例最判令7・6・16 民集79巻4号1523頁

公費給付と区別の合理性 本件各取扱いについては、本件各給付金が一定の政策目的をもって公費により給付されるものであることを踏まえた上で、給付対象となる事業者と本件特殊営業を行う事業者を区別することが不合理であるといえない限り、同項に違反するものではないというべきである。

区別の理由は補助の目的に沿うか(最判令7・6・16=公費による給付は政策目的を踏まえ、区別が不合理といえない限り憲法14条1項に違反しない/設例=住宅の断熱による省エネの補助/Qは数年前に同種の補助で改修済み=目的に沿う=合理的な理由/Qは町内会に入っていない=省エネと無関係=合理的な理由とは言いにくく違法の可能性) 図:区別の理由は補助の目的に沿うか

  • 最判令7・6・16=公費による給付は政策目的を踏まえ、区別が不合理といえない限り憲法14条1項に違反しない
  • 設例=住宅の断熱による省エネの補助
  • Qは数年前に同種の補助で改修済み=目的に沿う=合理的な理由
  • Qは町内会に入っていない=省エネと無関係=合理的な理由とは言いにくく違法の可能性

本件特殊営業とは、店舗を持たない形の、性風俗に関わる特殊な営業のことで、同項とは、憲法14条1項のことです。公費による給付では、政策の目的を踏まえて、区別が不合理といえるかを見る、ということです。PとQの補助でいえば、省エネという目的に照らして、区別の理由が筋の通るものかを見ます。理由が2つ挙がったとします。まず、Qは数年前に、同じ種類の補助を受けて、すでに改修を済ませていた。これは、省エネの目的に沿います。すでに目的が達成された家に、重ねて出さない、というのは、筋が通ります。合理的な理由です。2つ目、Qは町内会に入っていないから。これは、断熱による省エネと、関係がありません。目的に沿わない理由で区別したのですから、合理的な理由とは言いにくく、違法になる可能性があります。

区別の理由が、補助の目的と結びついているかどうかで、分かれます。注意点が1つあります。補助金の場面は、微妙な判断が多くなります。抽象的な法律論だけでは答えが出ないので、補助の目的を押さえて、理由との関係を具体的に見ることです。なお、補助を受けられなかった人が、どんな訴えで争うかは、後の回で扱います。ここまでは、法律による行政の原理と、平等原則が、ぶつからない場面でした。法律の根拠が無い、あるいは、どちらの扱いをしても法律に反しない場面だからです。次は、ぶつかる場面を見ます。

対立する場面=違法の平等は無い

飲食店の営業許可と「Pと同じに」(A=許可庁/B=施設P〔基準に合わないのに誤って許可〕/C=施設Q〔同じ仕様で申請→基準に合わず不許可〕/根拠の法律=基準に合わない施設は許可してはならない/Qの主張=Pを許可したのだから自分も許可せよ→通らない/法律による行政の原理が勝つ/Pの許可こそ見直すべき) 図:飲食店の営業許可と「Pと同じに」

  • A=許可庁
  • B=施設P〔基準に合わないのに誤って許可〕
  • C=施設Q〔同じ仕様で申請→基準に合わず不許可〕
  • 根拠の法律=基準に合わない施設は許可してはならない
  • Qの主張=Pを許可したのだから自分も許可せよ→通らない
  • 法律による行政の原理が勝つ
  • Pの許可こそ見直すべき

導入の問い②を考えるために、設例を、要件が法律で決まっている場面に変えます。ある法律が、基準に合わない施設は許可してはならない、と定めている、飲食店の営業許可です。Pの施設は、基準に合っていなかったのに、誤って許可されました。Qが、同じ仕様の施設で申請すると、基準に合わないので、不許可になりました。Qは言います。Pを許可したのだから、自分も許可しろ、と。気持ちはよく分かります。けれど、これは通りません。法律が、基準に合わない施設は許可してはならない、と決めているからです。Qを許可すれば、また1つ、違法な処分が増えます。法律による行政の原理は、行政に、法律に従うことを求めます。違法な処分を求める根拠には、平等原則を使えません。直すべきなのは、Pの許可のほうです。この結論を、違法の平等は無い、と言います。他人が違法に有利に扱われたことを理由に、自分にも同じ扱いを求めることは、原則としてできない、という意味です。信号無視をした隣の車が見逃されたから、自分も見逃せ、とは言えないのと同じです。信義則の回の租税の判決も、守ると法律に反する場面でした。あちらは役所の言葉を信頼した人を守るか、こちらはほかの人と同じ扱いを求めるか、が違います。どちらも、法律に反する扱いを求める以上、原則として通りません。

働き方を整理します。平等原則が働くのは、Qに処分Aをしても、処分Bをしても、根拠になる法令との関係で適法な場面です。つまり、処分をするかしないか、あるいはどちらの処分にするかが、行政庁の裁量に委ねられている場面です。その中で、合理的な理由なく扱いを分けるときに、違法になります。先ほどの補助金は、まさにこの場面でした。補助を出しても出さなくても、法律には反しません。だから、Pへの補助が要件どおりなら、同じ条件のQが、Pと同じに扱え、と求めることは、通りうるのです。許可の設例は、要件を満たさないものを求めているので、通りません。ここで1つ、確認します。補助金の場面では、Pと同じに、が通りうるのに、許可の場面では通らないのは、なぜでしょうか。自分の言葉で言ってみてください。

板に整理します。

2つの場面の整理(対立しない場面=法律の根拠が無い/どちらの扱いをしても適法〔裁量の場面〕→平等原則が働く→Pと同じ扱いを求めうる/対立する場面=要件を満たさないものを求める→法律による行政の原理が勝つ→違法の平等は無い・平等原則は働かない/見分けの問い=Qが求める扱いは、根拠法令に照らして適法か) 図:2つの場面の整理

  • 対立しない場面=法律の根拠が無い
  • どちらの扱いをしても適法〔裁量の場面〕→平等原則が働く→Pと同じ扱いを求めうる
  • 対立する場面=要件を満たさないものを求める→法律による行政の原理が勝つ→違法の平等は無い・平等原則は働かない
  • 見分けの問い=Qが求める扱いは、根拠法令に照らして適法か

見分けの問いは、1つです。Qが求めている扱いは、根拠法令に照らして、適法か。適法なら、平等原則が働く土台があります。違法なら、法律による行政の原理が勝ちます。

それでも平等原則が勝った裁判例

平等原則が勝った下級審① 物品税(大阪地判昭45=物品税/古いゴルフボールの再生販売/国税の通達=消費者から提供された古物の加工は製造として扱わない/通達どおりの取扱いが一般に行われている→通達の要件を満たす部分にまで課税→公平負担の原則に反し違法・その部分を取消し/通達は本来行政の内部の取り決め→平等原則を通して通達どおりの取扱いが求められた形) 図:平等原則が勝った下級審① 物品税

  • 大阪地判昭45=物品税
  • 古いゴルフボールの再生販売
  • 国税の通達=消費者から提供された古物の加工は製造として扱わない
  • 通達どおりの取扱いが一般に行われている→通達の要件を満たす部分にまで課税→公平負担の原則に反し違法・その部分を取消し
  • 通達は本来行政の内部の取り決め→平等原則を通して通達どおりの取扱いが求められた形

原則は、違法の平等は無い、です。けれど、法律上は正しい処分を、平等の考え方から違法とした下級審が、2つあります。どちらも、事案が特殊な例として読みます。1つ目は、物品税の事件です。古いゴルフボールを集めて再生し、販売していた業者への、課税処分です。裁判所は、加工を製造と解して、課税の対象になること自体は認めました。ところが、国税の通達、つまり、上の機関が下の機関に出す、取扱いの指針は、消費者から提供された古物に加工する場合は、製造として扱わない、という内容でした。そして、その通達どおりの取扱いが、税務の現場で一般に行われていました。

判例大阪地判昭45・5・12

通達と公平負担 通達によつて示達された内容が税務行政の執行一般において実現されているに拘らず、しかも或る個別的具体的場合につき右通達が定める要件を充足しているものに対し通達に反して納税者に不利益な課税処分をするならば、……租税法の基本原則の一つである公平負担の原則にも違背することになり違法な処分といわなければならない。

通達の要件を満たす部分、つまり、古いボールを預かって、同じ数を納める取引にまで課税したのです。裁判所は、公平負担の原則に反して違法だ、として、その部分の課税を取り消しました。公平負担の原則は、判決の言葉で、租税法の基本原則の1つです。通達は、本来は行政の内部の取り決めです。けれど、ほかの納税者は、通達どおりに扱われていました。その中で、この業者にだけ通達から外れた課税をすれば、同じ立場の納税者の間に、扱いの差が生まれます。その差に、合理的な理由はありません。通達そのものに外への力があるのではなく、皆が通達どおりに扱われている、という事実を通して、平等原則が、通達どおりの扱いを求めたのです。通達が外部に及ぼす効果そのものは、後の回で扱います。

平等原則が勝った下級審② 関税(大阪高判昭44=関税/ガラス小球を塗布したシート/神戸税関30%・横浜・大阪の税関20%/法律の解釈としては30%が正しい/多数が軽減した税率・追徴の見込み無し→超過10%部分は違法・ただし取り消しうるにすぎず無効ではない→返還請求は棄却/共通=多数の取扱いと違う・是正の見込みが無い等の特殊な事情) 図:平等原則が勝った下級審② 関税

  • 大阪高判昭44=関税
  • ガラス小球を塗布したシート
  • 神戸税関30%・横浜・大阪の税関20%
  • 法律の解釈としては30%が正しい
  • 多数が軽減した税率・追徴の見込み無し→超過10%部分は違法・ただし取り消しうるにすぎず無効ではない→返還請求は棄却
  • 共通=多数の取扱いと違う・是正の見込みが無い等の特殊な事情

2つ目は、関税の事件です。ガラス小球を塗布したシートの課税で、神戸税関は、税率30パーセントで課税しました。一方、横浜と大阪の税関は、同じような物品に20パーセントで課税していました。裁判所は、まず、法律の解釈としては、30パーセントのほうが正しい、としました。そのうえで、判決は、こう述べます。

判例大阪高判昭44・9・30

課・徴税平等の原則 租税法律主義の当然の帰結である課・徴税平等の原則は、憲法一四条の課・徴税の面における発現であると言うことができる。

全国の税関の大多数が、事実上、軽減した税率で課税し、差額を追徴、つまり、足りない税を後から取り立てた形跡も、追徴する見込みも無い。そういう状況では、課税の平等により、軽減された税率のほうが、実定法、つまり、現に効力を持っている法のうえで、正当とされ、超過の10パーセント部分は違法になる、としました。多数の扱いのほうが優先される、という点が、この判決の特殊だと言われる理由です。多数が長く同じ取扱いをしていて、是正される見込みも無い。そういう状況だからです。是正の見込みが無いなら、直すべき多数の扱いは、実際には直りません。それなのに正しい税率を押しつければ、重い負担は、この1人だけに残ります。それを避けるために、平等のほうが優先された、という理屈です。しかも、結論には、続きがあります。違法な部分は、取り消しうるにすぎず、当然に無効ではない、とされました。当然に無効とまでは言えないのは、平等の要請を通して後から生じた違法であり、その瑕疵、つまり欠陥が、誰の目にも明らかとは言えないからです。取り消しうる処分は、決められた期間内に取消しを求めて争わない限り、効力が残ります。この事件は、取消しの訴えではありませんでした。処分は無効だから、払ったお金は法律上の原因なく得た利益、つまり、不当利得だとして、返還を求める請求でした。無効とは、処分が初めから効力を持たないことです。けれど、この処分は取り消しうるにすぎず、有効なまま残ります。だから、返還の請求は棄却されました。納税者は、払ったお金を取り戻せなかったのです。平等原則が勝ったといっても、その勝ち方は限られていました。

相続税の評価通達と平等原則(最判令4・4・19 民集76巻4号411頁/通達どおり画一的に評価されている中で特定の者の財産だけ通達を上回る評価=合理的な理由が無い限り平等原則に反する/通達どおりの評価では実質的な租税負担の公平に反する事情がある=合理的な理由あり) 図:相続税の評価通達と平等原則

  • 最判令4・4・19 民集76巻4号411頁
  • 通達どおり画一的に評価されている中で特定の者の財産だけ通達を上回る評価=合理的な理由が無い限り平等原則に反する
  • 通達どおりの評価では実質的な租税負担の公平に反する事情がある=合理的な理由あり

もう1つ、名前だけ挙げます。相続税の評価通達をめぐる最高裁の判決です。通達どおりに画一的に評価されているのに、特定の人の相続財産だけ、通達を上回る評価にするのは、合理的な理由が無い限り、平等原則に違反します。ただし、通達どおりの画一的な評価が、実質的な租税負担の公平に反する事情があれば、合理的な理由があるとされます。借入れと不動産の購入で、相続税の負担を大きく減らす意図の事案では、課税庁が勝ちました。平等原則は、通達の取扱いを求める力にも、通達どおりでない取扱いを正当化する力にもなる、ということです。まとめます。平等原則が、法律による行政の原理に勝つのは、多数が同じ取扱いをしていて、是正の見込みが無いなど、特殊な事情があるときです。原則は、違法の平等は無い、のままです。

法律が具体化した場面

地方自治法244条と別荘の水道料金(公の施設=住民の福祉を増進する目的でその利用に供する施設/3項=住民が公の施設を利用することについて不当な差別的取扱いの禁止=憲法14条1項の具体化/答案の順序=まず244条3項→足りなければ憲法14条/全文は板に表示・読み上げは骨格だけ) 図:地方自治法244条と別荘の水道料金

  • 公の施設=住民の福祉を増進する目的でその利用に供する施設
  • 3項=住民が公の施設を利用することについて不当な差別的取扱いの禁止=憲法14条1項の具体化
  • 答案の順序=まず244条3項→足りなければ憲法14条
  • 全文は板に表示・読み上げは骨格だけ

次は、法律が、平等原則を具体的な規定にしている場面です。この場合は、一般原則に飛びつく前に、まず、その規定の当てはめから検討します。答案の順序は、具体化した規定が先、足りなければ憲法14条、です。条文を板に出します。個別法なので、暗記は要りません。

条文地方自治法244条1項・2項・3項

地方自治法第244条 普通地方公共団体は、住民の福祉を増進する目的をもつてその利用に供するための施設(これを公の施設という。)を設けるものとする。 普通地方公共団体(次条第三項に規定する指定管理者を含む。次項において同じ。)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。 普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて、不当な差別的取扱いをしてはならない。

骨格は、公の施設の利用で、住民への不当な差別的取扱いは禁止、という3項です。公の施設は、住民の福祉のための施設で、水道や公民館などが当たります。公の施設そのものは、別の回で扱います。

別荘の水道料金の事件(町営の簡易水道/別荘の給水契約者の基本料金=別荘以外の契約者との大きな格差〔口径13ミリ=別荘5,000円・それ以外1,400円〕に改定/別荘の所有者=住民基本台帳に記録されていない/判断は2段=①3項は住民でない別荘の所有者に及ぶか ②及ぶなら料金の格差に合理的な理由があるか) 図:別荘の水道料金の事件

  • 町営の簡易水道
  • 別荘の給水契約者の基本料金=別荘以外の契約者との大きな格差〔口径13ミリ=別荘5,000円・それ以外1,400円〕に改定
  • 別荘の所有者=住民基本台帳に記録されていない
  • 判断は2段=①3項は住民でない別荘の所有者に及ぶか ②及ぶなら料金の格差に合理的な理由があるか

判例を見ます。町が経営する簡易水道の事件です。町は、別荘の給水契約者の基本料金を、それ以外の給水契約者より、大きく高い額に改定しました。たとえば口径13ミリでは、別荘が5,000円、それ以外が1,400円です。別荘の所有者は、住民基本台帳に記録されていない人たちです。この条例の規定が、差別的な取扱いではないか、が争われました。判決の判断は、2段です。3項が、住民ではない別荘の人にも及ぶか。及ぶなら、料金の差に、合理的な理由があるか。住民ではない別荘の人にも3項が及ぶかどうか、これが1つ目の判断です。まず、判決は、簡易水道の施設が公の施設に当たり、3項が不当な差別的取扱いを禁じている、と確認します。

判例最判平18・7・14 民集60巻6号2369頁

3項の位置づけ 同項が憲法14条1項が保障する法の下の平等の原則を公の施設の利用関係につき具体的に規定したものであることを考えれば,上記のような住民に準ずる地位にある者による公の施設の利用関係に地方自治法244条3項の規律が及ばないと解するのは相当でなく,これらの者が公の施設を利用することについて,当該公の施設の性質やこれらの者と当該普通地方公共団体との結び付きの程度等に照らし合理的な理由なく差別的取扱いをすることは,同項に違反するものというべきである。

住民に準ずる地位にある者、というのは、住民ではないが、その区域内に事務所や事業所、家屋や敷地、寮などを持ち、地方税を納める義務を負う人などのことです。別荘の所有者は、別荘を使う間は住民と変わらない生活をする人なので、これに当たる、とされました。3項は、憲法14条1項の平等原則を、公の施設の利用関係で具体的に規定したものです。だから、住民そのものでなくても、住民に準ずる人には、規律が及びます。そして、合理的な理由なく差別的に扱えば、3項に違反します。

格差の根拠=料金の決め方(別荘の基本料金を高めにすること自体=許される〔夏に使用が集中・最大使用量に耐える施設が要る〕/町の決め方=別荘以外の契約者〔ホテル等の大口を含む〕の平均額と別荘の負担額をほぼ同水準に→格差を正当化できない/原則=水道料金は給水に要する個別原価に基づいて設定/結論=3項違反で条例の規定は無効・憲法14条1項は判断するまでもない)

別荘の料金を高めに設定すること自体には、裁量が認められます。別荘は、使用が夏の時期に集中します。最大の使用量に耐える施設が要るので、別荘の基本料金を高めに設定すること自体は、許されます。問題は、その高さの決め方です。町は、大口の需要者のホテルなどを含む、別荘以外の契約者の平均額と、別荘の負担額を、ほぼ同じ水準にする、という設定方法をとりました。判決は、これを認めませんでした。

判例最判平18・7・14 民集60巻6号2369頁

水道料金の決め方 公営企業として営まれる水道事業において水道使用の対価である水道料金は原則として当該給水に要する個別原価に基づいて設定されるべきものであり,このような原則に照らせば,上告人の主張に係る本件改正条例における水道料金の設定方法は,本件別表における別荘給水契約者と別荘以外の給水契約者との間の基本料金の大きな格差を正当化するに足りる合理性を有するものではない。

水道料金は、原則として、その給水にかかる個別の原価に基づいて決めるべきものです。別荘以外の契約者の平均に合わせる、という決め方は、この原則に照らして、格差を正当化できません。だから、条例の規定は、3項に違反して無効になりました。判決の結論は、憲法14条1項の違反などは、判断するまでもない、というものです。まず、具体化した規定で決着をつけたのです。答案の勘どころは、ここです。見るのは、格差そのものではありません。格差の根拠にした理屈、つまり料金の決め方に、合理性があるか、です。別荘だから高い、では足りません。なぜその額なのか、という説明が、原価の考え方と合っているかを見ます。

一般会計からの繰入れなどの事情を挙げても、判決は、それを格差を正当化するものとは見ませんでした。決め方の合理性が、中心です。なお、同じ判決は、条例を定めること自体が処分に当たるか、も判断していますが、その点は、後の回で扱います。

公にした処分基準と平等な取扱いの要請(行政庁が処分基準を定めて公にしている→基準と異なる取扱いをするには特段の事情が要る/理由=裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請・基準の内容に係る相手方の信頼の保護等/法律による行政の原理と抵触しない適法な基準の適用の場面) 図:公にした処分基準と平等な取扱いの要請

  • 行政庁が処分基準を定めて公にしている→基準と異なる取扱いをするには特段の事情が要る
  • 理由=裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請・基準の内容に係る相手方の信頼の保護等
  • 法律による行政の原理と抵触しない適法な基準の適用の場面

もう1つ、名前だけ出します。処分の基準を公にしている場合の判決です。

判例最判平27・3・3 民集69巻2号143頁

公にした処分基準 裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から,当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り,そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなる

処分基準は、法律の条文ではありません。行政が自分で定めて公にした基準です。たとえば、営業停止の日数を、過去の処分の回数に応じて何日、と決めて公表している場合です。公にした基準と違う扱いを、ある人にだけすれば、基準どおりに扱われたほかの人との間に差が出ます。だから、行政庁が、行政手続法の処分基準を定めて公にしていて、過去の処分を理由に処分を重くする定めがある場合は、基準と異なる取扱いをするには、特段の事情が要ります。理由の1つが、公正で平等な取扱いの要請です。これは、法律による行政の原理とぶつからない、適法な基準を適用する場面です。

補完性の原則と効率性の原則

補完性原則と効率性原則(補完性原則=行政の役割は必要最小限にとどめ民間の活動を補う役割に徹する=民間でできることは民間で〔官民の役割分担・小さな政府の文脈〕/効率性原則=ある目的を達成するのに最少の費用でまかなう〔経済性原則とも〕/条文=地方財政法4条1項・行政機関が行う政策の評価に関する法律3条1項/実務の現れ=費用便益分析) 図:補完性原則と効率性原則

  • 補完性原則=行政の役割は必要最小限にとどめ民間の活動を補う役割に徹する=民間でできることは民間で〔官民の役割分担・小さな政府の文脈〕
  • 効率性原則=ある目的を達成するのに最少の費用でまかなう〔経済性原則とも〕
  • 条文=地方財政法4条1項・行政機関が行う政策の評価に関する法律3条1項
  • 実務の現れ=費用便益分析

一般原則の顔ぶれを、2つのまとまりに分けたのを覚えていますか。平等原則は、2つ目の、法の一般原則のまとまりでした。補完性と効率性は、1つ目の、行政法全体に通じる原則のまとまりで、まだ見ていなかった最後の2枚です。裁判で正面から使われることは、多くありません。だから、名前と中身の骨格を押さえます。1つ目は、補完性の原則です。行政の役割は必要最小限にとどめて、民間の活動を補う役割に徹する、という原則です。短く言えば、民間でできることは民間で、です。なぜ原則と言えるのか。行政が動けば、税金を使い、ときに市民の活動を狭めます。民間で足りる仕事まで行政が抱えれば、そのぶん税金も規制も増えます。だから、行政が出るのは、民間では足りないところに限る、というのです。ある事業を、民営化するか、民間に委託するか、を考えるときに、顔を出す考え方です。たとえば、市が配食サービスを始めるとき、地域に民間の業者が十分あるなら、まず民間に任せられないかを考える、という発想です。

地方自治の文脈で、近いところで決めるという意味で語られることがあります。ここでは、官民の役割分担の意味だけで使います。混ぜないでください。2つ目は、効率性の原則です。行政の費用に関して、同じ目的を果たすなら、かかるお金は少ないほうを選ぶ、という原則です。行政の費用は、すべて税金です。同じ目的を安く達成できるのに高い方を選べば、差額は、ほかの行政に使えたはずのお金の無駄になります。経済性の原則とも呼ばれます。条文を2つ、板に出します。個別法なので、暗記は要りません。

条文地方財政法4条1項

地方財政法第4条第1項 地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない。

骨格は、経費は、目的を達成するための必要かつ最少の限度を超えて支出してはならない、です。同じ品質で公民館の屋根を直せるなら、高い工法ではなく安い工法を選ぶ、ということです。

条文行政機関が行う政策の評価に関する法律3条1項

行政機関が行う政策の評価に関する法律第3条第1項 行政機関は、その所掌に係る政策について、適時に、その政策効果(当該政策に基づき実施し、又は実施しようとしている行政上の一連の行為が国民生活及び社会経済に及ぼし、又は及ぼすことが見込まれる影響をいう。以下同じ。)を把握し、これを基礎として、必要性、効率性又は有効性の観点その他当該政策の特性に応じて必要な観点から、自ら評価するとともに、その評価の結果を当該政策に適切に反映させなければならない。

こちらの骨格は、政策を、必要性、効率性、有効性の観点から、行政機関が自ら評価して、その結果を政策に反映させる、というものです。効率性は、その観点の1つとして出てきます。費用便益分析が、効率性の原則の具体的な現れだと理解されています。政策にかかる費用と、得られる便益を比べて、見合うかを見る手法です。

今日のまとめ

今日のまとめ(平等原則=合理的な理由の無い区別の禁止・根拠は憲法14条1項・問いは区別に合理的な理由があるか/対立しない場面=法律の根拠が無い補助金でも公金を使う以上は縛られる/対立する場面=違法の平等は無い・働くのはどちらの処分も適法な裁量の場面/それでも勝った例=多数の取扱い・是正見込み無し等の特殊な事情/法律が具体化していればまずその規定=自治法244条3項・別荘の水道料金の判決=格差の根拠である料金の決め方/公にした処分基準/補完性=民間でできることは民間で・効率性=最少の費用) 図:今日のまとめ

  • 平等原則=合理的な理由の無い区別の禁止・根拠は憲法14条1項・問いは区別に合理的な理由があるか
  • 対立しない場面=法律の根拠が無い補助金でも公金を使う以上は縛られる
  • 対立する場面=違法の平等は無い・働くのはどちらの処分も適法な裁量の場面
  • それでも勝った例=多数の取扱い・是正見込み無し等の特殊な事情
  • 法律が具体化していればまずその規定=自治法244条3項・別荘の水道料金の判決=格差の根拠である料金の決め方
  • 公にした処分基準
  • 補完性=民間でできることは民間で・効率性=最少の費用

導入の補助金に戻ります。PとQは、同じ条件のはずでした。補助は、法律の根拠が無い制度ですが、公金を使う活動なので、平等原則に縛られます。区別の理由が、補助の目的に沿っていなければ、Qの断られ方は、違法になりえます。では、Pが本当は要件を満たしていなかったら、どうか。そのときQが求めているのは、要件を外れた扱いを自分にも、ということです。許可の設例と同じで、直すべきなのはPの扱いのほうです。Pと同じに、とは言えません。違法の平等は無い、です。区別に合理的な理由があるか、が問いで、Qが求める扱いが適法かどうかを、先に見るのですね。そして、法律が平等原則を具体化していれば、まずその規定です。別荘の水道料金の判決では、格差そのものではなく、料金の決め方に、合理性が無いとされました。例外的に平等原則が勝った下級審は、事案の特殊性で読みます。補完性は、民間でできることは民間で、効率性は、最少の費用で、という骨格でした。これで、不公平を止める物差しと、一般原則の残りの2枚が、手に入りました。

参照条文

  • 日本国憲法14条1項
  • 地方自治法244条1項・2項・3項
  • 地方財政法4条1項
  • 行政機関が行う政策の評価に関する法律3条1項

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