行政法ゼロから行政法#3

行政の存在理由②(事前規制と行政上の強制)

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第1章 行政法の基礎 ③/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

隣の建物は、自分の手で壊せるのか

隣の違反建築(B=店主が確認を受けた図面より柱を減らして3階建てに/C=隣の住民は自分で壊せず裁判所に訴えるしかない/A=役所は命令を出し従わなければ自分の手で取り壊せる) 図:隣の違反建築

  • B=店主が確認を受けた図面より柱を減らして3階建てに
  • C=隣の住民は自分で壊せず裁判所に訴えるしかない
  • A=役所は命令を出し従わなければ自分の手で取り壊せる

山あいの町の駅前にある喫茶店が、店を3階建てに建て替えました。店主はBです。ところが工事の途中で費用を削り、役所の確認を受けた図面より、柱を減らして建ててしまいました。隣に住んでいるのが、Cです。大きな地震が来たら、柱の足りない建物が倒れてくるかもしれません。ではCは、自分の手で、その建物を壊しに行ってよいでしょうか。Cが自分の手で壊すことは、許されません。Cにできるのは、裁判所に訴えることまでです。ところが町の役所Aは、Bに命令を出し、Bが従わず、法律の要件を満たせば、自分の手で建物を取り壊すことができます。

前回、命令には2つの意味があると見ました。省令のように行政が作るルールと、個別の相手への指図です。ここでの命令は後者で、Bという特定の相手に、この柱を直しなさいと直接求めるものです。たとえ自分の権利でも、自分の手で実現してはいけない。これが法の大原則です。行政には、法律の根拠があれば、その例外が認められます。なぜ行政には許されるのか。今日の山場はここです。

行政の関わりの5段(1.始める前のチェック/2.始めた後の処分・命令/3.不利益な決定の前に言い分を聴く手続/4.従わないときの罰則/5.行政自身による強制) 図:行政の関わりの5段

  • 1.始める前のチェック
  • 2.始めた後の処分・命令
  • 3.不利益な決定の前に言い分を聴く手続
  • 4.従わないときの罰則
  • 5.行政自身による強制

今日の1問は、行政は、始める前から最後の強制まで、どう関わるのか、です。答えを先に言います。事前のチェック、違反への命令、言い分を聴く手続、罰則、行政自身による強制。この5段が、1本につながっています。1段目は、事業を始める前のチェックです。2段目は、始めた後に違反が出たときの、免許の取消しや是正命令といった処分。3段目は、そうした不利益な決定を出す直前に、相手の言い分を聴く手続です。4段目は、従わない人への罰則。5段目が、行政が自分の手で実現する強制です。3段目は、処分を出す直前の手続なので、2段目とセットで見てください。この5段を、運転の道路交通法と、建物の建築基準法で、2回通します。個別の法律が違っても道具は同じだと、2つの法律で確かめます。

免許は「一律に禁止」から出発する

免許制(A=公安委員会/B=喫茶店の店主/免許のない人はだれでも運転できない=一律の禁止/試験に合格した人にだけ個別に解除) 図:免許制

  • A=公安委員会
  • B=喫茶店の店主
  • 免許のない人はだれでも運転できない=一律の禁止
  • 試験に合格した人にだけ個別に解除

店主のBは、町の端の家までテイクアウトを届けるため、配達を始めます。軽自動車を自分で運転したい。ここが1段目、始める前のチェックです。道路交通法84条1項を、全文で見ましょう。

条文道路交通法84条1項

道路交通法第84条第1項 自動車及び一般原動機付自転車(以下「自動車等」という。)を運転しようとする者は、公安委員会の運転免許(以下「免許」という。)を受けなければならない。

公安委員会は、都道府県に置かれた、運転免許を与える側の行政機関です。図のAにあたります。免許の仕組みを、法の形で言い直します。免許のない人は、だれであっても運転してはならない。これが一律の禁止です。町のだれにも例外なく、いったん運転できない状態から出発します。そのうえで、試験に合格した人にだけ、公安委員会が免許を与えます。一人ひとり、運転できると確かめて、禁止を解くので、これが個別の解除です。試験に合格した者には原則として免許を与えなければならないと、90条が定めています。解除の条件も、法律で決まっているのです。

免許も、認可や届出と並ぶ、事前のチェックの仲間です。型は、一律に禁止して、個別に解除する。前々回、飲食店の営業の許可で見た、禁止しておいて解除する仕組みと、同じ型です。Bは、試験に受かって初めて、軽自動車に乗れます。条文の言葉も確認しておきます。自動車等には、自動車と、一般原動機付自転車、つまり原付が入ります。電動キックボードのような特定小型原動機付自転車は、この条文の自動車等には入りません。条文に「一般」と付いているのは、この2つを分けるためです。

今日の地図(1.始める前のチェック=免許制/2.なぜ事故の後では足りないのか/3.始めた後の処分と言い分を聴く手続/4.条文の住所の読み方/5.同じ流れを建物でもう一度/6.従わないとどうなるか=罰則と行政代執行/7.なぜ行政は自分で強制できるのか) 図:今日の地図

  • 1.始める前のチェック=免許制
  • 2.なぜ事故の後では足りないのか
  • 3.始めた後の処分と言い分を聴く手続
  • 4.条文の住所の読み方
  • 5.同じ流れを建物でもう一度
  • 6.従わないとどうなるか=罰則と行政代執行
  • 7.なぜ行政は自分で強制できるのか

ここで、今日の道筋を1枚にします。今が1番目です。次に、なぜ事故の後では足りないのかを見ます。そのあと、始めた後の処分と言い分を聴く手続、条文の住所の読み方、建物でもう一度、罰則と代執行、最後に、なぜ行政は自分で強制できるのかです。

なぜ「事故の後」では足りないのか

免許が要る乗り物と要らない乗り物(自動車・原付=免許あり・一度の事故で人が死にうる/自転車=免許なし・同じ重さの被害になりにくい/どちらも事故の後の民事責任・刑事責任は共通) 図:免許が要る乗り物と要らない乗り物

  • 自動車・原付=免許あり・一度の事故で人が死にうる
  • 自転車=免許なし・同じ重さの被害になりにくい
  • どちらも事故の後の民事責任・刑事責任は共通

ここに入る前に、前回の復習を1問。鉄道の運賃で、上限を行政が認可したあと、その範囲内で運賃を決めた会社が行政に出すのは、お墨付きと届出のどちらだったでしょう?届出です。上限の認可がお墨付きで、範囲内の運賃は、行政へのお知らせだけでした。そうでした。認可は事前のお墨付き、届出は事前のお知らせ。今日の免許は、この2つの隣に並ぶ、事前のチェックです。事故の後に働く手当てが、2つあります。1つは、被害者に損害賠償を払う責任で、民事責任といいます。もう1つは、刑罰を受ける責任で、刑事責任といいます。どちらも、事故が起きてからの、個別の手当てです。前回の言葉では、事後・個別でした。ところが運転では、一度の事故で人が亡くなることがあります。賠償金を払っても、罰を科しても、命は戻りません。しかも、自分は大丈夫だと考える人は、必ず出てきます。取り返しのつかない被害が出うる活動は、始める前に、条件を満たす人だけに絞る。これが事前規制です。事後の手当てだけでは間に合わないから、免許があるのです。

免許が要る乗り物と、要らない乗り物を分ける物差しは、被害の重さです。自動車や原付は、一度の事故で人が死にうる。自転車は、同じ重さの被害にはなりにくい。だから自転車には事前のチェックを置かず、民事責任と刑事責任に委ねている、という考え方です。ここで1問です。自転車に免許が要らないのは、規制が無いからでしょうか?免許が要らないだけで、交通ルールは自転車にもあるはずです。道路交通法の交通ルールは、自転車にも適用されます。さらに2026年4月からは、16歳以上の自転車の運転者にも、交通反則通告制度、いわゆる青切符が適用されています。一定の違反は、反則金を納めれば、刑事手続に進みません。つまり自転車には、免許という事前のチェックが無いだけで、事後の手当ては組まれています。反則金の中身は、後の回で扱います。

免許を後から失わせる処分

免許の取消しと停止(A=公安委員会がBに/違反の積み重ね→免許の取消し、又は半年を超えない範囲の効力の停止/相手の権利を一方的に失わせる不利益な処分) 図:免許の取消しと停止

  • A=公安委員会がBに
  • 違反の積み重ね→免許の取消し、又は半年を超えない範囲の効力の停止
  • 相手の権利を一方的に失わせる不利益な処分

試験に受かって免許を得ても、違反を重ねる人は出ます。配達を急ぐあまり、Bが速度超過や一時不停止を繰り返したとします。事前のチェックをすり抜けた後の手当てが、2段目です。103条1項を見ましょう。

条文道路交通法103条1項

道路交通法第103条第1項(抜粋) 免許(仮免許を除く。以下第百六条までにおいて同じ。)を受けた者が次の各号のいずれかに該当することとなつたときは、その者が当該各号のいずれかに該当することとなつた時におけるその者の住所地を管轄する公安委員会は、政令で定める基準に従い、その者の免許を取り消し、又は六月を超えない範囲内で期間を定めて免許の効力を停止することができる。ただし、第五号に該当する者が第百二条の二の規定の適用を受ける者であるときは、当該処分は、その者が同条に規定する講習を受けないで同条の期間を経過した後でなければ、することができない。 五 自動車等の運転に関しこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこの法律の規定に基づく処分に違反したとき(次項第一号から第四号までのいずれかに該当する場合を除く。)。

取消しは、免許そのものを失わせます。停止は、免許は残したまま、半年を超えない範囲で期間を決めて、そのあいだだけ効力を止めます。どちらも、行政が相手の権利である免許を、一方的に失わせる不利益な処分です。5号の言葉には、命令の2つの意味が同居しています。この法律に基づく命令は、政令や府令のような、行政が作るルールの側。この法律の規定に基づく処分は、個別の相手への決定の側です。ただし書は、軽い違反のときの例外です。講習を受けないまま期間が過ぎた後でなければ処分できない、という条件で、中身には立ち入りません。本文が原則で、ただし書が例外や条件という読み方は、次の節で整理します。名前も出しておきます。免許の取消しは、学問上は、行政処分の撤回と呼びます。与えた時点では問題のなかった免許を、後からの違反を理由に失わせるからです。要件と限界は、後の回で扱います。

取消しは、悪いことをした罰なんですか。そこは、見方が2つあります。違反への制裁とみる見方と、懲らしめではなく、違反を重ねる人を免許制から外して、秩序を守るものとみる見方です。どちらにしても持ち帰るのは、取消しは、罰金や、刑務所に入る拘禁刑といった刑罰とは別の、行政の処分だということです。

処分の前に、言い分を聴く

意見の聴取(取消し又は90日以上の停止の前=公開の意見の聴取/期日の1週間前までに理由・期日・場所を通知し公示/本人又は代理人は意見を述べ有利な証拠を提出) 図:意見の聴取

  • 取消し又は90日以上の停止の前=公開の意見の聴取
  • 期日の1週間前までに理由・期日・場所を通知し公示
  • 本人又は代理人は意見を述べ有利な証拠を提出

取消しや長い停止は、仕事も暮らしも変えてしまいます。そこで、処分を出す前に、相手の言い分を聴く手続が入ります。3段目です。104条1項を見ましょう。

条文道路交通法104条1項

道路交通法第104条第1項 公安委員会は、第百三条第一項第五号の規定により免許を取り消し、若しくは免許の効力を九十日(公安委員会が九十日を超えない範囲内においてこれと異なる期間を定めたときは、その期間。次条第一項において同じ。)以上停止しようとするとき、第百三条第二項第一号から第四号までのいずれかの規定により免許を取り消そうとするとき、又は同条第三項(同条第五項において準用する場合を含む。)の処分移送通知書(同条第一項第五号又は第二項第一号から第四号までのいずれかに係るものに限る。)の送付を受けたときは、公開による意見の聴取を行わなければならない。この場合において、公安委員会は、意見の聴取の期日の一週間前までに、当該処分に係る者に対し、処分をしようとする理由並びに意見の聴取の期日及び場所を通知し、かつ、意見の聴取の期日及び場所を公示しなければならない。

覚えるのは2点です。対象は、取消し、または90日以上の停止。それより軽い停止は、対象外です。もう1点は、期日の1週間前までに、処分の理由と期日と場所を本人に通知し、公示することです。

条文道路交通法104条2項

道路交通法第104条第2項 意見の聴取に際しては、当該処分に係る者又はその代理人は、当該事案について意見を述べ、かつ、有利な証拠を提出することができる。

本人か代理人が、意見を述べ、有利な証拠を出せます。処分をされる側に、言い分を出す場が与えられるわけです。処分が出てから裁判で正すのでは、遅いのです。裁判には時間がかかり、そのあいだ、免許のない生活が続きます。違法な処分や不適切な処分は、出す前に防ぐほうがいい。これが、処分の前に聴く理由です。

行政手続の発想と特則(事後の裁判だけでは限界→あらかじめ手順を法律で定める/一般法=行政手続法/特則=道路交通法104条/113条の2=行政手続法第3章〔12条及び14条を除く〕は適用しない) 図:行政手続の発想と特則

  • 事後の裁判だけでは限界→あらかじめ手順を法律で定める
  • 一般法=行政手続法
  • 特則=道路交通法104条
  • 113条の2=行政手続法第3章〔12条及び14条を除く〕は適用しない

昔は、違法な処分が出てしまったら、あとから訴訟で正せば足りる、と考えられがちでした。けれど事後の裁判だけでは、限界があります。そこで、行政活動の手順を、あらかじめ法律で定めておく、という考え方が強くなりました。これが行政手続です。意見の聴取は、その一例です。行政手続には、共通のルールがあります。前々回、通則的な法律の1つとして名前が出た、行政手続法です。不利益な処分をするときに踏む手続の共通ルールで、一般法にあたります。これに対して道路交通法104条は、運転免許の場面だけの特別の定め、つまり特則です。113条の2が、行政手続法のうち、不利益な処分の手続を定めた第3章は適用しないと置いています。ただし、12条の処分基準、つまりどんな場合にどの処分をするかの物差しと、14条の理由の提示、つまり処分の理由を相手に示すことは、引き続き適用されます。注意が1つあります。ここでの意見の聴取は、道路交通法の手続です。行政手続法が定める言い分を聴く手続、つまり聴聞や弁明の機会の付与とは、別のものです。それぞれの中身は、後の回で扱います。

条文の住所の読み方

条文の住所(103条1項の見取り図=条・項・号の順に絞る/柱書〔号より前の部分〕/本文〔原則〕とただし書〔例外・条件〕/5号) 図:条文の住所

  • 103条1項の見取り図=条・項・号の順に絞る
  • 柱書〔号より前の部分〕
  • 本文〔原則〕とただし書〔例外・条件〕
  • 5号

ここまでの道路交通法の条文で、読み方を確かめます。条文は住所です。どの法律の、どの条の、どの項の、どの号か、で場所が決まります。条の中で、改行して書き始めた段落が項です。2項からは番号が付きます。最初の段落には番号が付かないので、84条の最初の文は、84条1項と数えます。号は、条や項の中で、一、二、三と並べた項目で、単独の条文ではなく、条文の一部です。103条1項5号は、103条の第1項の第5号。引用では「第」の字を省いて書きます。柱書は、号を並べる前の、各号に共通する頭の部分です。103条1項では、5号より前の部分が柱書で、号の上に立つ柱にあたります。その中に、原則を書いた本文と、ただし、で始まる例外のただし書が入っています。ここまでが条の中の話で、次は、条そのものの番号です。

枝番号(103条2項=103条の第2項/103条の2=別の条〔免許の効力の仮停止〕/113条の2=113条と114条の間に入った別の条/117条の2と117条の2の2=別の条〔117条の2の2第1項1号〕) 図:枝番号

  • 103条2項=103条の第2項
  • 103条の2=別の条〔免許の効力の仮停止〕
  • 113条の2=113条と114条の間に入った別の条
  • 117条の2と117条の2の2=別の条〔117条の2の2第1項1号〕

103条2項と、103条の2は、同じものですか。まったく別です。103条2項は、103条の中の第2項。103条の2は、免許の効力の仮停止を定めた、別の条です。既存の条の間に新しい条を差し込むとき、後ろの条番号を繰り下げずに済ませる工夫が、枝番号です。「の2」から始まり、「の1」はありません。枝番号の付いた条文は、元の条とは別の、独立した条です。先ほどの113条の2も、113条と114条の間に入った別の条で、113条の第2項ではありません。酒酔い運転などの罰則の条と、のちほど見る無免許運転の罰則の条も、枝番号の違う別の条です。枝番号が2つ付くこともあります。無免許運転の罰則の条文は、117条の2の2です。その第1項を指すときは、117条の2の2第1項と、「第」の字を残して書きます。省くと、条の番号と項の番号が連なって、読めなくなるからです。暗記は3つです。条、項、号の順に住所を絞る。柱書は号の頭で、ただし書は例外。枝番号は別の条。条文を要件と効果に分けて読む手順は、後の回で扱います。

同じ流れを建物でもう一度——着工の前の確認

建築確認(B=店主が3階建てに建て替え→着工前にA=建築主事等へ計画を申請→確認済証の交付→工事/確認済証の前は工事できない/3階建てはこの2号に当たる) 図:建築確認

  • B=店主が3階建てに建て替え→着工前にA=建築主事等へ計画を申請→確認済証の交付→工事
  • 確認済証の前は工事できない
  • 3階建てはこの2号に当たる

運転で、5段を1回通しました。次は、店の建て替えで、同じ5段をもう一度通します。1段目の事前のチェックは、建築確認です。建築は財産権の行使として、ある程度は自由です。けれど地震で倒れる建物が建つと、周りの人の命や財産が危ない。そこで建築基準法は、最低の基準を定めています。一定の建築物は、工事に着手する前に、計画がその基準に適合するかの確認を受けなければなりません。6条1項です。

条文建築基準法6条1項(柱書第1文・2号)

建築基準法第6条第1項(抜粋) 建築主は、第一号若しくは第二号に掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号又は第二号に規定する規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第三号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事又は建築副主事(以下「建築主事等」という。)の確認(建築副主事の確認にあつては、大規模建築物以外の建築物に係るものに限る。以下この項において同じ。)を受け、確認済証の交付を受けなければならない。 二 前号に掲げる建築物を除くほか、二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超える建築物

Bの3階建ては、どの号に入るんですか。2号です。二以上の階数を有する、に当たります。決め手は、階数が2以上であることです。1号は、特殊建築物で床面積が大きいもの。3号は、都市計画区域などの中の建築物を、前の2つを除いて拾います。確認をするのは建築主事等で、自治体に置かれた担当者です。国や知事が指定した民間の機関が確認をする場合もあり、その確認は建築主事の確認とみなされます。この動画の事例では、役所の建築主事が確認をする場合で考え、図のAで表します。続けて、8項です。

条文建築基準法6条8項

建築基準法第6条第8項 第一項の確認済証の交付を受けた後でなければ、同項の建築物の建築、大規模の修繕又は大規模の模様替の工事は、することができない。

確認済証を受けるまで、工事はできません。免許で見た段と同じ型です。いったん着工できない状態から出発し、確認を受けて初めて進める。審査は、3階建てのBの場合、申請書の受理から35日以内。適合を確認すれば確認済証が出て、適合しないときは、理由を書いた通知書が出ます。建ててから違反を直させるのでは、周りの住民には、遅すぎます。是正の前に、大地震が来るかもしれません。一度建てた建物を壊すのは、Bにも町にも大きな損失です。だから、工事の前に確認します。ただし、確認は計画の確認で、建築物そのものの確認ではありません。図面どおりに建たなければ、確認を通っていても違反は生じます。一定の小規模な建築には、確認が要らない場合もあります。事前のチェックだけでは、漏れが出る。そこで2段目です。

図面と違う建物には是正命令

確認は計画・命令は建物(確認を受けた図面=柱が十分/実際の建物=柱を減らした→構造耐力の基準に違反→特定行政庁Aが違反を是正するため必要な措置を命ずる) 図:確認は計画・命令は建物

  • 確認を受けた図面=柱が十分
  • 実際の建物=柱を減らした→構造耐力の基準に違反→特定行政庁Aが違反を是正するため必要な措置を命ずる

Bは確認済証をもらったのに、費用を削って、図面より柱を減らしました。構造の強さについての基準に反する建物です。2段目、始めた後の手当てが、9条1項の違反是正命令です。

条文建築基準法9条1項

建築基準法第9条第1項 特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。

命じるのは、だれですか。特定行政庁です。建築主事などを置く市町村の区域ではその市町村長、それ以外の区域では都道府県知事です。いま見た9条1項の是正命令を出すのは、確認をする建築主事ではなく、特定行政庁です。どちらも役所の側なので、図では同じAで表しています。命じる相手は、建築主、工事の請負人、現場管理者、建物の所有者や管理者、占有者です。命じる中身は、工事の施工の停止か、相当の猶予期限を付けた、除却つまり取壊し、修繕、使用禁止などの是正措置です。この命令は、免許の取消しと同じく、個別の相手への指図であり、行政が法律にもとづいて相手の義務を一方的に具体的に決める処分です。事前では対応しきれない違反を、事後で是正させる。これが違反是正命令です。

命じる前に、言い分を聴く

命令の前の手続(通知書の交付=命じようとする措置・事由・意見書の提出先と期限/意見書と有利な証拠を提出/通知書を受けた日から3日以内に請求→公開の意見の聴取) 図:命令の前の手続

  • 通知書の交付=命じようとする措置・事由・意見書の提出先と期限
  • 意見書と有利な証拠を提出
  • 通知書を受けた日から3日以内に請求→公開の意見の聴取

3段目は、免許のときと同じ発想です。命じる前に、言い分を聴きます。9条2項から見ましょう。

条文建築基準法9条2項

建築基準法第9条第2項 特定行政庁は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対して、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。

Aは、命じる前に、命じようとする措置とその事由、意見書の提出先と期限を書いた通知書を渡します。そして、意見書と有利な証拠を出す機会を与えなければなりません。書面ではなく、公開の場で言い分を述べたい人のために、3項があります。

条文建築基準法9条3項

建築基準法第9条第3項 前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から三日以内に、特定行政庁に対して、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。

通知書を受けた人は、3日以内なら、意見書の代わりに、公開の意見の聴取を請求できます。請求があったときの扱いが、4項です。

条文建築基準法9条4項

建築基準法第9条第4項 特定行政庁は、前項の規定による意見の聴取の請求があつた場合においては、第一項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。

請求があれば、Aは出頭を求めて、公開で意見の聴取を行わなければなりません。聴取では、証人を出席させて、自己に有利な証拠を出すこともできます。これは6項です。順に覚えてください。通知書、意見書、または3日以内の請求で公開の意見の聴取。9条のうち、3項から10項は、行政手続法の特則です。15項を見ましょう。

条文建築基準法9条15項

建築基準法第9条第15項 第一項、第七項又は第十項の規定による命令については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。

9条1項の命令には、行政手続法の第3章は適用されません。ただし12条と14条の規定は、引き続き適用されます。道路交通法の113条の2と同じ型です。なお、緊急の場合に手続を省く例外もありますが、ここでは、例外もある、というところまでにします。

従わなければ罰則——それでも動かなければ

罰則は命令・禁止を後ろから支える(無免許運転=3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金/是正命令違反=3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金/確認を受けずに着工=1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金) 図:罰則は命令・禁止を後ろから支える

  • 無免許運転=3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
  • 是正命令違反=3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金
  • 確認を受けずに着工=1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金

4段目は、罰則です。命令や禁止に従わない人に、刑罰を予告して、守らせます。罰則は、命令や禁止を、後ろから支えます。まず運転から。免許を取り消された後も、Bが配達で運転を続けたら、無免許運転です。

条文道路交通法117条の2の2第1項1号(柱書・1号)

道路交通法の無免許運転の罰則 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。 一 法令の規定による運転の免許を受けている者(第百七条の二の規定により国際運転免許証等で自動車等を運転することができることとされている者を含む。)でなければ運転し、又は操縦することができないこととされている車両等を当該免許を受けないで(法令の規定により当該免許の効力が停止されている場合を含む。)又は国際運転免許証等を所持しないで(第八十八条第一項第二号から第四号までのいずれかに該当している場合又は本邦に上陸をした日から起算して滞在期間が一年を超えている場合を含む。)運転した者

免許を受けないで運転した者は、3年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金です。取消しの後の運転は、免許を受けないでの運転にあたり、停止されている間の運転も、かっこ書きで含まれています。建物のほうは、9条1項の命令に違反した場合の罰則が、98条1項にあります。

条文建築基準法98条1項(柱書・1号)

建築基準法第98条第1項(抜粋) 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処する。 一 第九条第一項又は第十項前段(これらの規定を第八十八条第一項から第三項まで又は第九十条第三項において準用する場合を含む。)の規定による特定行政庁又は建築監視員の命令に違反した者

9条1項の命令に違反した者は、3年以下の拘禁刑、または300万円以下の罰金です。事前の確認を怠った場合には、99条1項があります。

条文建築基準法99条1項(柱書・1号・2号)

建築基準法第99条第1項(抜粋) 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。 一 第六条第一項(第八十七条第一項、第八十七条の四又は第八十八条第一項若しくは第二項において準用する場合を含む。)、第七条の六第一項(第八十七条の四又は第八十八条第二項において準用する場合を含む。)又は第六十八条の十九第二項(第八十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反した者 二 第六条第八項(第八十七条の四又は第八十八条第一項若しくは第二項において準用する場合を含む。)又は第七条の三第六項(第八十七条の四又は第八十八条第一項において準用する場合を含む。)の規定に違反した場合における当該建築物、工作物又は建築設備の工事施工者

1号は、6条1項に違反した者、つまり確認を受けずに着工した者です。2号は、6条8項に違反した場合の工事施工者で、確認済証が出る前に工事をした人です。どちらも刑は1年以下の拘禁刑か、100万円以下の罰金です。罰則があれば、柱の足りない建物は直るんですか。直りません。罰金を払っても、拘禁刑を科しても、柱の足りない建物は、そこに建ったままです。罰則は、やめさせることを保証しません。ここで1問です。隣のCは、柱の足りない建物を、自分の手で壊せるでしょうか? 役所のAは、どうでしょう。Cは壊せず、Aは法律の根拠があれば自分で実現できます。その理由こそ今日の山場ですので、まず、Aが自分で実現する仕組みから見ます。5段目、9条12項です。

行政代執行(Bが9条1項の命令を履行しない・十分でない・期限までに完了する見込みがない→Aが行政代執行法の定めに従い自ら行為をする又は第三者にさせる/費用は義務者から徴収) 図:行政代執行

  • Bが9条1項の命令を履行しない・十分でない・期限までに完了する見込みがない→Aが行政代執行法の定めに従い自ら行為をする又は第三者にさせる
  • 費用は義務者から徴収

条文建築基準法9条12項

建築基準法第9条第12項 特定行政庁は、第一項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、みずから義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。

命じられた者が、措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、履行しても期限までに完了する見込みがないとき。このどれかに当たれば、行政代執行法の定める手続に従って、Aは、みずから義務者のなすべき行為をし、または第三者にさせることができます。Bの建物なら、Aが自分で、あるいは業者に頼んで、補強や取壊しを行います。これが行政代執行です。相手が果たさない義務を、行政が自分の手で実現する仕組みを、まとめて行政上の強制執行といい、行政代執行はその一種です。

条文行政代執行法1条

行政代執行法第1条 行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。

行政代執行法は、行政上の義務を相手が果たさないとき、それを確保する仕組みの一般法です。代執行には、この法律が定める要件と手続があり、かかった費用は義務者から取ります。建築基準法9条12項は、このうち要件をゆるめた特別の定めで、Bの事例では、手続と費用の取り方は、この法律に従います。中身は、後の回で扱います。免許を失った人に運転をやめさせる場面には、代執行の定めがありません。免許を失った人が負うのは、運転しないという義務です。これは何かをする義務ではなく、しない義務なので、だれかが代わりに行う行為がそもそもありません。代執行が使えるのは、他人が代わりにできる、何かをする義務に限られます。運転をやめさせる役目は、罰則が間接的に支えます。

同じ5段を2つの法律で(1.始める前=84条の運転免許と6条の建築確認/2.始めた後=103条の取消し・停止と9条1項の是正命令/3.言い分=104条の意見の聴取と9条2項から4項/4.罰則=117条の2の2と98条・99条/5.強制=運転免許は定めなし・建築は9条12項の代執行) 図:同じ5段を2つの法律で

  • 1.始める前=84条の運転免許と6条の建築確認
  • 2.始めた後=103条の取消し・停止と9条1項の是正命令
  • 3.言い分=104条の意見の聴取と9条2項から4項
  • 4.罰則=117条の2の2と98条・99条
  • 5.強制=運転免許は定めなし・建築は9条12項の代執行

5段を、2つの法律で並べます。事前のチェックは、免許と建築確認。始めた後の処分は、取消しや停止と、是正命令。言い分を聴く手続は、意見の聴取と、通知書や意見書、それに公開の意見の聴取。罰則は、無免許運転と命令違反。最後の強制は、運転側が空き、建築側に代執行です。空きには理由がありました。代わりにできる行為かどうかです。個別の法律ごとに、道具のどこが使えるかは変わります。だから、型を見抜いたうえで、個別の条文で確かめるのです。

なぜ行政は自分で強制できるのか

強制の2つの道筋(A=行政/B=建築主/C=隣の住民/Cの道筋=求める→訴える→裁判所の手で強制/Aの道筋=是正命令→言い分を聴く→自ら実現) 図:強制の2つの道筋

  • A=行政
  • B=建築主
  • C=隣の住民
  • Cの道筋=求める→訴える→裁判所の手で強制
  • Aの道筋=是正命令→言い分を聴く→自ら実現

山場です。まず原則から。私人は、たとえ自分の権利であっても、自分の力で実現してはならない。これを、自力救済の禁止といいます。図は、前回の三面関係と同じ配置です。Cが柱の足りない建物を直させたければ、裁判所に訴え、判決を得て、強制執行の手続を通すしかありません。強制執行は、裁判所の関与のもとで行われます。自分で壊せば、かえってCが、Bから損害賠償を請求される側になりかねません。自分の権利なのに、どうして自分の手ではいけないんですか。各自が自分の手で実現してよいことにすると、権利が本当にあるのかを、だれも確かめないまま、力の強い者の言い分がとおってしまうからです。そこで、中立の裁判所が権利を確かめてから、裁判所の手続で実現する。この順番を守らせるのが、自力救済の禁止です。

自力救済の禁止は、条文には、はっきりとは書かれていません。判例が、原則を示しています。

判例最判昭40・12・7 民集19巻9号2101頁

私力の行使が許される、例外の条件 私力の行使は、原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によつたのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許されるものと解することを妨げない。

判決のいう私力の行使が、自力救済です。原則は禁止です。例外が許されるのは、法律の手続では現状の維持が不可能か著しく困難な、緊急やむを得ない特別の事情があり、必要の限度を超えない場合だけです。事案は、敷地に所有者が板囲いを設けたのを、仮店舗の所有者が実力で撤去したもので、限界を超えると判断されました。ここで注意です。この判決が述べているのは、私人どうしの自力救済の限界です。行政が自分で実現してよい根拠ではありません。

行政に強制が許される理由(行政上の強制執行=自力救済禁止の例外/理由1=行政上の義務は公益にかかわる→確実な履行の確保が必要/理由2=行政機関は国家機関として法の執行を担う/ただし法律の根拠が要る=建築基準法9条12項と行政代執行法) 図:行政に強制が許される理由

  • 行政上の強制執行=自力救済禁止の例外
  • 理由1=行政上の義務は公益にかかわる→確実な履行の確保が必要
  • 理由2=行政機関は国家機関として法の執行を担う
  • ただし法律の根拠が要る=建築基準法9条12項と行政代執行法

行政上の強制執行は、自力救済禁止の例外です。行政は、法律の根拠があれば、裁判所を通さずに、自ら義務の実現を図れる場合があります。理由は2点です。1つ目は、行政上の義務は公益にかかわるため、円滑で確実な履行の確保が必要なこと。2つ目は、行政機関は、私人と違って、国家機関として法の執行を担っていることです。柱の足りない建物が倒れて危ないのは、隣のCだけではなく、前の道を通る町の人たちもです。Bひとりの都合に任せておけない義務なので、確実に直させる必要があります。これが1つ目です。そしてAは、自分の得のために動く私人ではなく、建築基準法を執行する役目を、法律で任された機関です。これが2つ目です。

私人に自分の手での実現を禁じたのは、権利が本当にあるのかを、だれも確かめないまま力が使われるからでした。行政の場合、Bが負う義務の中身は、Aが好きに決めたものではありません。建築基準法が定めた基準にもとづき、Bに言い分を述べる機会を与えたうえでの命令によって、具体的に決まっています。緊急の場合の例外は別です。その法律を実現する役目を任されたAが、法律の決めた手順で実現する。だから法律は、裁判所を通さない道を、行政に用意しているのです。行政でも、何でも自分で強制できるわけではありません。法律の根拠が要ります。今日の例では、建築基準法9条12項と、行政代執行法です。戦前は、行政が広く自分で執行できましたが、その反省から、いまは法律で厳しく絞られています。

私人の道筋と行政の道筋(最初の一手=Cは求めても義務は生まれない/Aは命令で義務が生まれる、命令前の手続=Cは定めなし/Aは言い分を聴く、応じないとき=Cは訴えて判決/Aは9条12項で自ら実現、強制するのは=裁判所の関与の下/行政自身、理由=自力救済禁止/例外) 図:私人の道筋と行政の道筋

  • 最初の一手=Cは求めても義務は生まれない/Aは命令で義務が生まれる
  • 命令前の手続=Cは定めなし/Aは言い分を聴く
  • 応じないとき=Cは訴えて判決/Aは9条12項で自ら実現
  • 強制するのは=裁判所の関与の下/行政自身
  • 理由=自力救済禁止/例外

2つの道筋を並べます。Cが「直して」と求めても、Bに法的な義務は生まれません。応じなければ、裁判所に訴えて判決を得て、裁判所の関与のもとでの強制執行です。Aは違います。是正命令で、Bに義務が一方的に生まれ、応じなければ、9条12項で、裁判所を通さずに自分で実現します。だからこそ、手前に歯止めが積まれています。言い分を聴く手続と、法律の根拠、そして要件、つまり、命令を履行しないときなど、法律が決めた強制してよい場合の条件です。裁判所を通さない強い力だから、手前に手続を置く。5段が1本につながっている理由は、ここにあります。自力救済禁止とその例外の理由は、論文でも、行政の強制を論じるときの背景になりえます。

今日の地図(保存版)

今日のまとめ(5段=事前のチェック→処分・命令→言い分を聴く手続→罰則→行政自身による強制/事前規制の理由=事後では間に合わない/免許=一律に禁止し個別に解除/最後の強制=自力救済禁止の例外・理由2点・法律の根拠) 図:今日のまとめ

  • 5段=事前のチェック→処分・命令→言い分を聴く手続→罰則→行政自身による強制
  • 事前規制の理由=事後では間に合わない
  • 免許=一律に禁止し個別に解除
  • 最後の強制=自力救済禁止の例外・理由2点・法律の根拠

最初の1問に戻ります。行政は、始める前から最後の強制まで、どう関わるのか。事前のチェック、命令、言い分を聴く手続、罰則、行政自身による強制の、5段が1本につながっている、でした。免許は、いったん一律に禁止して、試験に受かった人にだけ個別に解除する仕組みでした。事故の後の賠償や刑罰は、命を戻せない。だから、取り返しのつかない被害が出うる活動には、事前のチェックが置かれます。事前のチェックだけでは、漏れが出ます。違反が出たら、取消しや是正命令で正し、その前には、相手の言い分を聴く。従わなければ罰則が後ろから支え、それでも動かないとき、行政は法律の根拠にもとづいて、自分の手で実現できます。

行政にそれが認められるのは、公益にかかわる義務を確実に実現する必要があり、行政は法の執行を担う機関だからです。ただし、法律の根拠が要ります。運転と建物で道具の並びは同じでも、条文の細部は個別法ごとに違います。この道具を、後の回で、1つずつ詳しく見ていきます。

参照条文

  • 道路交通法84条1項
  • 道路交通法103条1項
  • 道路交通法104条1項
  • 道路交通法104条2項
  • 建築基準法6条1項(柱書第1文・2号)
  • 建築基準法6条8項
  • 建築基準法9条1項
  • 建築基準法9条2項
  • 建築基準法9条3項
  • 建築基準法9条4項
  • 建築基準法9条15項
  • 道路交通法117条の2の2第1項1号(柱書・1号)
  • 建築基準法98条1項(柱書・1号)
  • 建築基準法99条1項(柱書・1号・2号)
  • 建築基準法9条12項
  • 行政代執行法1条

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