行政法ゼロから行政法#132

審査請求の要件①(対象と適用除外)

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第10章 行政不服申立て #132/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

審査請求を出せば、必ず審理してもらえるのか

今日の問い(前回の続き=知事Aに営業停止2か月を命じられたBは審査請求をすることにした/落とし穴=要件を欠くと審理に入る前に却下〔門前払い〕/問い=Bの審査請求が門前払いにならないためには、何が要るか/道筋=要件の地図→処分→不作為→一般概括主義→7条1項→7条2項「固有の資格」) 図:今日の問い

  • 前回の続き=知事Aに営業停止2か月を命じられたBは審査請求をすることにした
  • 落とし穴=要件を欠くと審理に入る前に却下〔門前払い〕
  • 問い=Bの審査請求が門前払いにならないためには、何が要るか
  • 道筋=要件の地図→処分→不作為→一般概括主義→7条1項→7条2項「固有の資格」

実は、審査請求を出せば必ず審理してもらえる、とは限りません。審査請求には要件があり、欠けていると、審理に入る前に却下されます。いわゆる門前払いです。前回は、審査請求と、再調査の請求、再審査請求の3種類を見て、原則が審査請求であることを確かめました。今日はその審査請求の入口、つまり要件を見ます。設例は前回の続きで、甲県の知事Aに食品衛生上の営業停止2か月を命じられた、飲食店の経営者Bです。営業停止の事務は、前回と同じく県の自治事務と仮定します。今日の問いは、Bの審査請求が門前払いにならないためには、何が要るのか、です。要件は4つあります。今日はそのうち、何に対して審査請求ができるのか、つまり対象を見ます。先に答えを言うと、処分か不作為であって、しかも適用除外に当たらないこと、です。できないものは何か。

要件の地図——取消訴訟の訴訟要件と並べる

審査請求の要件と取消訴訟の訴訟要件(審査請求=対象〔処分・不作為〕2条・3条/審査庁〔どこに出すか〕4条〔次回〕/審査請求期間18条〔次回〕/審査請求適格〔不服がある者〕〔次回〕/審査請求書の提出19条〔次回〕 ↔ 取消訴訟=処分性/相手方の問題/出訴期間/原告適格/訴状の提出/要件を欠くと却下) 図:審査請求の要件と取消訴訟の訴訟要件

  • 審査請求=対象〔処分・不作為〕2条・3条
  • 審査庁〔どこに出すか〕4条〔次回〕
  • 審査請求期間18条〔次回〕
  • 審査請求適格〔不服がある者〕〔次回〕
  • 審査請求書の提出19条〔次回〕 ↔ 取消訴訟=処分性
  • 相手方の問題
  • 出訴期間
  • 原告適格
  • 訴状の提出
  • 要件を欠くと却下

取消訴訟でも、訴訟要件を欠けば、中身の判断なしに却下されます。審査請求にも、同じ型の入口の関所があります。板の左が審査請求の要件、右が取消訴訟の訴訟要件です。左右とも、何に対して、どこに、いつまでに、誰が出せるか、という同じ問いに答えています。何に対して出せるかが、審査請求では対象、取消訴訟では処分性です。どこに出すかが審査庁で、訴える相手の問題に近いものです。いつまでに出すかが、審査請求期間と、出訴期間です。誰が出せるかが、審査請求適格と、原告適格、つまり訴えを起こす資格です。このほか、書面を出すことが、訴状の提出に当たります。問いが同じなので、片方の確かめ方を覚えると、もう片方にも使えます。

審査庁と被告は、同じではありません。審査庁は審査請求を出す相手で、被告は訴えられる相手です。ですから、対応するというより、ならべて覚える、と考えてください。取消訴訟の側の細目は、別の回で扱います。今日は、板の一番上の、対象だけを見ます。

対象①——処分

審査請求の対象=処分(1条2項かっこ書・2条/処分=行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為/行訴法の処分と同じ言葉/○営業停止命令〔相手方の権利義務に直接作用〕・物の留置〔継続的事実行為〕・条例に基づく処分/×衛生管理のお願い〔行政指導〕/再調査の請求・再審査請求の不服申立ての対象も処分だけ)

まず処分です。1条2項と2条を、続けて読みます。

条文行政不服審査法1条2項

行政不服審査法 第一条(目的等)(2項) 2 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。

条文行政不服審査法2条

行政不服審査法 第二条(処分についての審査請求) 行政庁の処分に不服がある者は、第四条及び第五条第二項の定めるところにより、審査請求をすることができる。

処分とは、1条2項のかっこ書にあるとおり、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為です。この言葉は、行政事件訴訟法3条2項の処分と同じです。ですから、何が処分に当たるかの判断は、取消訴訟の処分性と同じように考えます。その詳しい判断は、別の回で扱います。設例で線を引きます。知事Aの営業停止命令は処分です。相手方であるBの権利義務に、直接作用するからです。一方、Aが店に「衛生管理を見直すようお願いします」と求めるのは、行政指導です。従うかどうかは相手に任されていて、法的な効果がありません。ですから処分ではなく、審査請求の対象になりません。行政指導そのものを止めさせたいときは、行手法の中止等の求めを使います。

処分は、命令のように言い渡すものだけとは限りません。人を収容する、物を留置する、といった権力的で継続的な事実行為も、処分に含まれます。審査請求が認められれば、解放や返還という実益があるからです。もう1つ。条例に基づく処分も、対象です。行審法は、条例に基づく処分にも直接適用されます。行手法の3条3項は、根拠が条例や規則に置かれた処分を適用除外にして、自治体の行政手続条例に任せていました。行審法は、その逆で、そのまま適用するわけです。なお、再調査の請求と再審査請求の対象も、処分だけです。前回見たとおり、再調査の請求の5条も、再審査請求の6条も、「行政庁の処分につき」と書いているので、不作為には、この2つはありません。

対象②——不作為

審査請求の対象=不作為(3条/①法令に基づく申請をした者〔条例に基づく申請も含む〕②相当の期間が経過③何らの処分もしない/不作為は申請が前提/申請→拒否処分→処分についての審査請求/申請→無応答→不作為についての審査請求)

次は不作為です。その前に1問、復習です。行手法の回で見た、申請とは、行政庁に何をすべきこととされているものでしたか?認めるか断るかの返事をすべきもの、でした。諾否の応答を求める権利が、土台になります。3条を読みます。

条文行政不服審査法3条

行政不服審査法 第三条(不作為についての審査請求) 法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、次条の定めるところにより、当該不作為についての審査請求をすることができる。

3つに分けます。1つ目、法令に基づく申請をした者であること。条例に基づく申請も含みます。2つ目、その申請から相当の期間が経過していること。3つ目、何らの処分もしていないこと。大事なのは、不作為は申請が前提だ、という点です。窓口でお願いしただけの場合や、申請の仕組みが無い要望を出しただけの場合は、不作為になりません。その場合は、前に見た処分等の求めの話になります。設例です。Bが新店舗の営業許可を申請したのに、Aが何も応答しないとします。これが不作為で、Bは不作為についての審査請求ができます。断る処分が出ていれば、その拒否処分についての審査請求です。分かれ目は、処分があるか、無いかです。申請に対して拒否処分が出たなら、処分についての審査請求。何の処分も出ないなら、不作為についての審査請求です。似た仕組みとして、行訴法の不作為の違法確認訴訟も、法令に基づく申請が要件でした。なお、不作為の審査請求には、期間制限がありません。ただし早すぎると却下されます。

一般概括主義と3つの窓口

一般概括主義=原則としてすべての処分・不作為に審査請求ができる(訴願法の列記主義との対比)/例外の窓口3つ=①7条1項〔列記された適用除外〕②7条2項〔国の機関等が固有の資格で相手方となる処分・不作為〕③他の法律の特別の定め〔1条2項〕 図:一般概括主義

  • 原則としてすべての処分・不作為に審査請求ができる(訴願法の列記主義との対比)
  • 例外の窓口3つ=①7条1項〔列記された適用除外〕②7条2項〔国の機関等が固有の資格で相手方となる処分・不作為〕③他の法律の特別の定め〔1条2項〕

前回、沿革で見た言葉を使います。行審法は、原則としてすべての処分と不作為を対象にします。これが一般概括主義です。明治の訴願法は、法律に列記した事項だけを対象にする、列記主義でした。それでは、列記から漏れた処分には、不服を言う道がありません。そこで、原則を全部に改め、外すものの方を法律に書く形にしたのです。ただし、例外の窓口が3つあります。1つ目は、7条1項。適用除外が列記されています。2つ目は、7条2項。国の機関などが、固有の資格で相手方となる処分です。3つ目は、他の法律の特別の定めです。1条2項のとおり、個別法が別の不服申立てを置いていれば、そちらが優先します。今日は、1つ目と2つ目を見ます。

適用除外①——7条1項の4つの理由

7条1項の適用除外=理由別4つ(①特別な機関が特別な手続でする処分〔1号〜4号〕議決・裁判・議会の同意承認・検査官会議/②審査請求より慎重な手続か、別の争い方があるもの〔5号〜7号〕/③処分の性質上なじまないもの〔8号〜11号〕/④行審法自体に基づく処分〔12号〕/処分も不作為も除外/②〜④はこのあと順に)

7条1項は、号が12まであります。順番に暗記せず、理由で4つに分けて読みます。柱書は「第二条及び第三条の規定は、適用しない」です。処分だけでなく、不作為も外れます。まず1号から4号です。

条文行政不服審査法7条1項(柱書・1号〜4号)

行政不服審査法 第七条(適用除外)(1項柱書・1号〜4号) 次に掲げる処分及びその不作為については、第二条及び第三条の規定は、適用しない。  一 国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分  二 裁判所若しくは裁判官の裁判により、又は裁判の執行としてされる処分  三 国会の両院若しくは一院若しくは議会の議決を経て、又はこれらの同意若しくは承認を得た上でされるべきものとされている処分  四 検査官会議で決すべきものとされている処分

1つ目の理由は、特別な機関が特別な手続でする処分です。議決、裁判、議会の同意や承認、会計検査院の検査官会議。どれも、議会や裁判所、独立した会計検査院といった、ふだんの行政庁の系統の外にある機関が、議決や裁判などの特別な手続で決めたり、関わったりしたものです。その結論を、行政庁である審査庁が審査し直すのは筋が違います。ですから、行政庁の通常の処分と同じ土俵には乗せません。

7条1項 理由②=審査請求より慎重な手続か、別の争い方があるもの(5号〔当事者の一方を被告とする訴えの処分〕・6号〔刑事事件〕・7号〔犯則調査〕)

次に5号から7号です。

条文行政不服審査法7条1項(5号〜7号)

行政不服審査法 第七条(適用除外)(1項5号〜7号)  五 当事者間の法律関係を確認し、又は形成する処分で、法令の規定により当該処分に関する訴えにおいてその法律関係の当事者の一方を被告とすべきものと定められているもの  六 刑事事件に関する法令に基づいて検察官、検察事務官又は司法警察職員がする処分  七 国税又は地方税の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて国税庁長官、国税局長、税務署長、国税庁、国税局若しくは税務署の当該職員、税関長、税関職員又は徴税吏員(他の法令の規定に基づいてこれらの職員の職務を行う者を含む。)がする処分及び金融商品取引の犯則事件に関する法令(他の法令において準用する場合を含む。)に基づいて証券取引等監視委員会、その職員(当該法令においてその職員とみなされる者を含む。)、財務局長又は財務支局長がする処分

長いので大づかみにします。2つ目の理由は、審査請求よりも慎重な手続か、別の争い方が用意されているものです。5号は、訴えの被告が法令で当事者の一方と決められている処分。たとえば、土地を収用されるときの補償の額は、土地の持ち主と、収用する事業者とが、裁判所で直接争う仕組みです。払う側と受け取る側の間で、裁判で決着をつける道が別にあるので、審査請求には乗せません。6号は刑事手続。7号は犯則調査です。刑事手続の処分には、刑事訴訟法の中に、準抗告など、裁判所に不服を申し立てる道が別に用意されています。脱税を摘発する犯則調査は、行政調査の回で見たとおり、裁判官の許可状つきの強制調査でした。どちらも、審査請求より慎重な仕組みか、別の争い方が、もう組み込まれているのです。号の細部を暗記する必要はありません。

7条1項 理由③=処分の性質上なじまないもの(8号〜11号 学校等・刑務所等・出入国帰化・試験検定)/理由④=行審法自体に基づく処分(12号)/8条=個別法が別の不服申立ての制度を置くことは妨げない/適用除外=不服を言えない、ではない 図:7条1項 理由③

  • 処分の性質上なじまないもの(8号〜11号 学校等・刑務所等・出入国帰化・試験検定)
  • 理由④=行審法自体に基づく処分(12号)
  • 8条=個別法が別の不服申立ての制度を置くことは妨げない
  • 適用除外=不服を言えない、ではない

8号から11号です。

条文行政不服審査法7条1項(8号〜11号)

行政不服審査法 第七条(適用除外)(1項8号〜11号)  八 学校、講習所、訓練所又は研修所において、教育、講習、訓練又は研修の目的を達成するために、学生、生徒、児童若しくは幼児若しくはこれらの保護者、講習生、訓練生又は研修生に対してされる処分  九 刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院又は少年鑑別所において、収容の目的を達成するためにされる処分  十 外国人の出入国又は帰化に関する処分  十一 専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分

3つ目の理由は、処分の性質上、審査請求になじまないものです。学校や刑務所の中での処分、出入国や帰化、試験や検定の結果が当たります。学校や刑務所の中の処分は、条文のとおり、教育や収容の目的のために、その場でされるものです。試験の結果は、学識や技能についての専門の判定です。出入国や帰化は、国が外国人の出入りや国籍を決める判断です。誰を国に受け入れるかは、国の主権に関わる政策的な判断なので、別の行政庁が簡易な手続で審理し直すのに向かない、と考えられています。どれも、別の行政庁が、行審法の手続で審理し直すのに向いていない、という整理です。最後に12号です。

条文行政不服審査法7条1項(12号)

行政不服審査法 第七条(適用除外)(1項12号)  十二 この法律に基づく処分(第五章第一節第一款の規定に基づく処分を除く。)

4つ目の理由は、行審法自体に基づく処分です。審査庁の判断がすでに示された後に、さらに審査請求を重ねる意味が薄いからです。かっこ書には例外がありますが、あると言えれば足ります。不服を申し立てる道は、別にあります。8条を読みます。

条文行政不服審査法8条

行政不服審査法 第八条(特別の不服申立ての制度) 前条の規定は、同条の規定により審査請求をすることができない処分又は不作為につき、別に法令で当該処分又は不作為の性質に応じた不服申立ての制度を設けることを妨げない。

7条で外れるのは、行審法に基づく審査請求だけです。個別法が、その処分の性質に応じた別の不服申立てを置くことは、8条が妨げていません。たとえば刑事施設の長の措置に不服がある人は、矯正管区の長に対して審査の申請ができます。名前と所在だけ知っておけば足ります。ですから、適用除外を、不服を言えないことと読んではいけません。行手法の適用除外の回でも、3条1項で外れた人には手続の保障がいらない、と読んではいけない、と見ました。同じ注意です。

行手法3条1項と行審法7条1項の比較(共通=議決・裁判・同意承認・検査官会議/刑事/犯則/学校等/刑務所等/出入国・帰化〔行手法は難民認定等も含む〕/試験〔10項目が重なる〕/行手法だけ=公務員の職務・身分の処分/相反する利害の裁定/現場での処分/情報収集の処分/不服申立ての裁決等/その手続や聴聞・弁明の手続の中でする処分/行審法だけ=5号〔当事者の一方を被告とする訴えの処分〕・12号〔行審法に基づく処分〕/公務員の処分は行手法では外れるが行審法7条1項には号が無い) 図:行手法3条1項と行審法7条1項の比較

  • 共通=議決・裁判・同意承認・検査官会議
  • 刑事
  • 犯則
  • 学校等
  • 刑務所等
  • 出入国・帰化〔行手法は難民認定等も含む〕
  • 試験〔10項目が重なる〕
  • 行手法だけ=公務員の職務・身分の処分
  • 相反する利害の裁定
  • 現場での処分
  • 情報収集の処分
  • 不服申立ての裁決等
  • その手続や聴聞・弁明の手続の中でする処分
  • 行審法だけ=5号〔当事者の一方を被告とする訴えの処分〕・12号〔行審法に基づく処分〕
  • 公務員の処分は行手法では外れるが行審法7条1項には号が無い

行手法の3条1項とならべて比べます。議決や裁判、刑事、犯則、学校、刑務所、出入国、試験など、10項目は重なります。違うところは、行手法が、事前の手続になじまないものを足していることです。公務員の職務や身分の処分、現場での処分、情報収集の処分などです。行審法は、別の争い方があるものと、行審法自身の処分を足しています。特に取り違えやすいのが、公務員への処分です。行手法の手続は適用されませんが、行審法7条1項には、これに当たる号がありません。つまり審査請求の対象になります。短答で狙われる点です。

適用除外②——7条2項「固有の資格」

7条2項と行手法4条1項(行審法7条2項=国の機関等に対する処分と不作為/条件=固有の資格において「相手方」となるもの/行手法4条1項=国の機関等に対する処分・行政指導と、国の機関等がする届出) 図:7条2項と行手法4条1項

  • 行審法7条2項=国の機関等に対する処分と不作為
  • 条件=固有の資格において「相手方」となるもの
  • 行手法4条1項=国の機関等に対する処分・行政指導と、国の機関等がする届出

次は7条2項です。その前に1問です。行手法の適用除外の回で見た、4条1項の固有の資格とは、どんな立場のことでしたか?国や地方公共団体だけが立てる立場で、一般の私人が立つことのない立場、でした。行審法にも同じ言葉が出てきます。2つをならべて読みます。

条文行政不服審査法7条2項

行政不服審査法 第七条(適用除外)(2項) 2 国の機関又は地方公共団体その他の公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の相手方となるもの及びその不作為については、この法律の規定は、適用しない。

条文行政手続法4条1項

行政手続法 第四条(国の機関等に対する処分等の適用除外)(1項) 国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分(これらの機関又は団体がその固有の資格において当該処分の名あて人となるものに限る。)及び行政指導並びにこれらの機関又は団体がする届出(これらの機関又は団体がその固有の資格においてすべきこととされているものに限る。)については、この法律の規定は、適用しない。

7条2項と行手法4条1項の比較(行審法7条2項=国の機関等に対する処分と不作為/条件=固有の資格において「相手方」となるもの/行手法4条1項=国の機関等に対する処分・行政指導と、国の機関等がする届出/条件=処分は固有の資格において「名あて人」となるもの・届出は固有の資格においてすべきもの〔行政指導は固有の資格を問わず外れる〕/共通=固有の資格=国や地方公共団体だからこそ立てる立場/機関どうしなら全部除外ではない) 図:7条2項と行手法4条1項の比較

  • 行審法7条2項=国の機関等に対する処分と不作為
  • 条件=固有の資格において「相手方」となるもの
  • 行手法4条1項=国の機関等に対する処分・行政指導と、国の機関等がする届出
  • 条件=処分は固有の資格において「名あて人」となるもの・届出は固有の資格においてすべきもの〔行政指導は固有の資格を問わず外れる〕
  • 共通=固有の資格=国や地方公共団体だからこそ立てる立場
  • 機関どうしなら全部除外ではない

違いを整理します。行審法7条2項が外すのは、国の機関などに対する処分と、その不作為です。条件は、固有の資格において相手方となることです。行手法4条1項は、処分と行政指導、それに国の機関などがする届出を外します。処分と届出には、固有の資格が条件で、行政指導は固有の資格を問わず外れます。注意点が1つ。国や自治体への処分なら全部除外、と覚えてはいけません。外れるのは、固有の資格のときだけです。私人と同じ立場で処分を受けるなら、国の機関でも、審査請求ができます。なぜ固有の資格のときだけ外すのか。前回読んだ1条1項のとおり、行審法の目的は、国民の権利利益の救済です。国や自治体だからこそ立てる立場で受ける処分は、この国民の救済の仕組みになじみません。後で読む判決も、この目的から出発します。

先に自前の対比を出します。市が営むバス事業の許可は、民間のバス会社も同じ許可を受けるので、私人と同じ立場です。他方、国が自治体に対してする是正の要求のような国の関与は、自治体だからこそ受けるもので、固有の資格です。判例の物差しは、この線を言葉にしたものです。事件を説明します。国の機関である防衛局が、海を埋め立てるために、県知事から公有水面埋立法の承認を受けていました。知事はその承認を取り消しました。国の機関は、行審法に基づいて審査請求をし、所管の大臣が、知事の取消しを取り消す裁決をしました。県側は、この裁決は違法な国の関与だと争いました。知事の処分を大臣が審査したのは、埋め立ての承認の事務が法定受託事務で、前回見たとおり、地方自治法255条の2により、審査請求先が所管の大臣になるからです。

第2章で見たとおり、国の関与に当たれば、県は国地方係争処理委員会に審査を申し出て、さらに高等裁判所で争えます。県はこの道を使いました。ただ、第2章で読んだ関与の定義、地方自治法245条3号には、かっこ書があり、行審法に基づく審査請求の裁決は、国の関与から除かれます。ところが、国の機関が固有の資格で相手方となる処分なら、そもそも行審法が適用されません。そうなると、行審法に基づく審査請求も裁決もありえず、裁決は法令上の根拠を欠いて、関与から除かれません。根拠を欠く裁決は違法な関与だ、というのが県の言い分です。固有の資格に当たるかどうかが、分かれ目だったのです。

判決の言葉を読む(固有の資格の意義/判断の物差し/実質的に異ならないとき/結論)/事件=国の機関が行審法に基づき審査請求→裁決は違法な国の関与か/固有の資格に当たるかが分かれ目 図:判決の言葉を読む

  • 固有の資格の意義
  • 判断の物差し
  • 実質的に異ならないとき
  • 結論
  • 事件=国の機関が行審法に基づき審査請求→裁決は違法な国の関与か
  • 固有の資格に当たるかが分かれ目

判決の言葉を、4枚で読みます。まず、固有の資格の意味です。

判例最判令2・3・26 民集74巻3号471頁

「固有の資格」の意義 このような同項の趣旨に照らすと,同項にいう「固有の資格」とは,国の機関等であるからこそ立ち得る特有の立場,すなわち,一般私人(国及び国の機関等を除く者をいう。以下同じ。)が立ち得ないような立場をいうものと解するのが相当である。

国の機関等だからこそ立てる立場、つまり一般私人が立てない立場です。先ほどのバスの許可と国の関与の線と同じです。次に、判断の物差しです。

判例最判令2・3・26 民集74巻3号471頁

判断の物差し 所論にいう埋立承認のような特定の事務又は事業を実施するために受けるべき処分について,国の機関等が上記立場において相手方となるものであるか否かは,当該事務又は事業の実施主体が国の機関等に限られているか否か,また,限られていないとすれば,当該事務又は事業を実施し得る地位の取得について,国の機関等が一般私人に優先するなど特別に取り扱われているか否か等を考慮して判断すべきである。

物差しは2つです。1つ目、その事務や事業の実施主体が、国の機関等に限られているか。2つ目、限られていないなら、実施する地位の取得で、国が私人より優先されるなど、特別に扱われているか。次です。

判例最判令2・3・26 民集74巻3号471頁

実質的に異ならないとき 国の機関等と一般私人のいずれについても,処分を受けて初めて当該事務又は事業を適法に実施し得る地位を得ることができるものとされ,かつ,当該処分を受けるための処分要件その他の規律が実質的に異ならない場合には,国の機関等に対する処分の名称等について特例が設けられていたとしても,国の機関等が一般私人が立ち得ないような立場において当該処分の相手方となるものとはいえず,当該処分については,等しく行政不服審査法が定める不服申立てに係る手続の対象となると解するのが相当である。

決め手は、処分を受けるための規律が実質的に異ならないかどうかです。処分の名前に特例があっても、実質が同じなら、国の機関は私人と同じ立場で、行審法の対象になります。結論です。

判例最判令2・3・26 民集74巻3号471頁

結論 したがって,埋立承認は,国の機関が行政不服審査法7条2項にいう「固有の資格」において相手方となるものということはできない。

当てはめの図(県=県知事/国=国の機関/民=民間の事業者/国→県=埋立ての承認を受ける/民→県=埋立ての免許を受ける/出願・審査・免許基準などは国の承認にも準用〔42条3項〕/国と私人の出願が競合しても国が優先する仕組みは無い/免許と承認は名前が違うだけで規律は実質的に異ならない→固有の資格ではない→行審法の対象) 図:当てはめの図

  • 県=県知事
  • 国=国の機関
  • 民=民間の事業者
  • 国→県=埋立ての承認を受ける
  • 民→県=埋立ての免許を受ける
  • 出願・審査・免許基準などは国の承認にも準用〔42条3項〕
  • 国と私人の出願が競合しても国が優先する仕組みは無い
  • 免許と承認は名前が違うだけで規律は実質的に異ならない→固有の資格ではない→行審法の対象

名前は決め手になりません。埋め立ては、国以外の者は知事の免許を、国の機関は知事の承認を受けて、初めて適法にできます。出願や審査、免許の基準などは、承認にも準用されています。国と私人の出願が競合しても、国が優先する仕組みはなく、同列に審査されます。免許と承認は名前が違うだけで、受けるための規律は実質的に異ならない。だから国の機関は私人と同じ立場で、固有の資格ではなく、行審法の対象になります。国にだけ特別な規定がある、というのは確かです。ただ、それは処分を受けた後の、実施の過程の規律です。その処分に対する不服申立てで審査される規律ではありません。ですから、差があっても、それだけでは適用除外の理由になりません。見るのは、審査の対象となるべき規律です。射程には注意してください。この判決は行審法7条2項の判断で、行手法4条1項の固有の資格が同じ物差しで読まれるかは、述べていません。同じ言葉なので同じ筋で読むのが自然、というところまでにしておきます。短答では、国の機関が埋立承認を受ける場合は固有の資格に当たらず、行審法の対象になる、が押さえどころです。これで、対象の答えがそろいました。処分か不作為であって、しかも適用除外に当たらないこと。確かめ方は3つです。処分か不作為か。7条1項の理由に当たらないか。国や自治体が相手なら、固有の資格ではないか。

今日の地図(保存版)

今日の地図(要件4つ=対象・審査庁・期間・適格〔今日は対象〕/対象=処分〔行政指導は×〕と法令に基づく申請への不作為/一般概括主義と3つの窓口/7条1項=理由別4つ〔特別な機関の手続・慎重な別手続か別の争い方・性質上なじまない・行審法自体〕/7条2項=固有の資格=国の機関等だからこそ立てる立場/外れても8条で別の制度がありうる/今いる場所=第10章の3本目) 図:今日の地図

  • 要件4つ=対象・審査庁・期間・適格〔今日は対象〕
  • 対象=処分〔行政指導は×〕と法令に基づく申請への不作為
  • 一般概括主義と3つの窓口
  • 7条1項=理由別4つ〔特別な機関の手続・慎重な別手続か別の争い方・性質上なじまない・行審法自体〕
  • 7条2項=固有の資格=国の機関等だからこそ立てる立場
  • 外れても8条で別の制度がありうる
  • 今いる場所=第10章の3本目

最初の問いに戻ります。Bの審査請求が門前払いにならないためには、何が要るのか。今日の答えは、対象になる行為であることです。営業停止命令は処分なので対象です。新店舗の許可の申請に応答が無ければ、不作為として対象になります。衛生管理のお願いは行政指導なので、対象になりません。持ち帰るのは4点です。1つ目、対象は処分と不作為で、不作為は申請が前提です。2つ目、原則はすべてが対象の一般概括主義で、例外の窓口は3つあります。3つ目、7条1項は理由で4つに分けます。特別な機関の手続、慎重な別手続か別の争い方、性質上なじまないもの、行審法自体の処分です。外れても8条で別の制度があります。公務員への処分は行審法では外れません。4つ目、7条2項の固有の資格は、国の機関等だからこそ立てる立場です。実質的に異ならなければ、私人と同じ立場です。今いる場所は、第10章の3本目です。

参照条文

  • 行政不服審査法1条2項
  • 行政不服審査法2条
  • 行政不服審査法3条
  • 行政不服審査法7条1項(柱書・1号〜4号)
  • 行政不服審査法7条1項(5号〜7号)
  • 行政不服審査法7条1項(8号〜11号)
  • 行政不服審査法7条1項(12号)
  • 行政不服審査法8条
  • 行政不服審査法7条2項
  • 行政手続法4条1項

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