審査請求の要件②(審査庁・期間・適格)
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第10章 行政不服申立て #133/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
対象は問題なし。では、誰に・いつまでに・誰が
図:今日の問い
- Bの営業停止は審査請求の対象になる
- 要件の残り3つ=審査庁〔どこに〕・審査請求期間〔いつまでに〕・審査請求適格〔誰が〕
- どれか1つでも欠けると門前払い
- 道筋=審査庁→審査請求期間→審査請求適格→4要件の一覧表
今日は、残りの3つの要件を見ます。設例は前回と同じで、甲県の知事Aに営業停止2か月を命じられた、飲食店の経営者Bです。営業停止の事務は、県の自治事務と仮定します。営業停止命令は処分ですから、対象としては問題ありません。それでも、要件が1つ欠けると、中身を見てもらえず門前払いです。今日の問いは3つです。Bの審査請求は、どこに出すのか。いつまでに出さなければならないのか。そして、B以外にも審査請求ができる人はいるのか。順に、審査庁、審査請求期間、審査請求適格です。
審査庁①——4条の読み方

まず、どこに出すか、です。審査請求を受ける行政庁を、審査庁と呼びます。審査庁は4条が決めています。4条は、行審法の全体像の回で、知事Aの例を使って、1号と4号を見ました。今日は、そこで細目を残した2号と3号も含めて、号ごとに当てはめます。全文をもう一度読みます。
条文行政不服審査法4条
行政不服審査法 第四条(審査請求をすべき行政庁) 審査請求は、法律(条例に基づく処分については、条例)に特別の定めがある場合を除くほか、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める行政庁に対してするものとする。 一 処分庁等(処分をした行政庁(以下「処分庁」という。)又は不作為に係る行政庁(以下「不作為庁」という。)をいう。以下同じ。)に上級行政庁がない場合又は処分庁等が主任の大臣若しくは宮内庁長官若しくは内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する庁の長である場合 当該処分庁等 二 宮内庁長官又は内閣府設置法第四十九条第一項若しくは第二項若しくは国家行政組織法第三条第二項に規定する庁の長が処分庁等の上級行政庁である場合 宮内庁長官又は当該庁の長 三 主任の大臣が処分庁等の上級行政庁である場合(前二号に掲げる場合を除く。) 当該主任の大臣 四 前三号に掲げる場合以外の場合 当該処分庁等の最上級行政庁
長い条文ですが、読む順番は決まっています。1つ目、柱書です。法律、条例に特別の定めがあれば、そちらが先です。2つ目、無ければ、1号から順に当てはめます。1号は、処分庁等に上級行政庁が無い場合か、処分庁等が大臣や庁の長である場合で、答えは処分庁等自身です。処分庁等とは、処分をした処分庁、または不作為をしている不作為庁のことです。2号は、庁の長が処分庁等の上級行政庁である場合で、答えはその庁の長。3号は、主任の大臣が上級行政庁である場合で、答えはその大臣。4号は、それ以外の場合で、答えは処分庁等の最上級行政庁です。号の先後が大事です。3号には、前二号を除く、という条件が付いています。4号は、前三号以外の場合です。上から順に確かめて、最初に当たった号で決まります。
最上級にする理由は、一番上の行政庁が見直すほうが、処分を公正に見直せますし、同じ種類の事務を、全体で統一して処理できるからです。
図:号ごとの例
- 1号=甲県知事A〔自治事務・上級が無い〕・大臣自身の処分
- 2号=庁〔外局〕の長が上に立つ場合→その庁の長
- 3号=省の地方出先機関の長の処分→省の大臣
- 4号=市長から権限の委任を受けた市の出先機関の長の処分→市長〔市長の上に上級は無い〕
- 2号3号の庁の細目は暗記しない
号ごとの例を作ります。1号は、設例の知事Aです。県の自治事務で、知事の上には上級行政庁がありません。ですからBの審査請求は、知事A自身に出します。大臣自身の処分も、1号です。2号は、庁の長が上に立つ場合です。庁は、省や内閣府の外局でした。第2章で、公安調査庁は法務省の外局、と見ました。たとえば、庁の地方の出先機関の長が処分をしたなら、上には庁の長官がいて、その上に大臣もいます。3号には前の号を除くとありますから、先に当たる2号で、審査庁はその庁の長官です。3号は、省の地方の出先機関の長が処分をしたなら、審査庁はその省の大臣です。4号は、市長から権限の委任を受けた、市の出先機関の長が処分をした場合で、その上に立つのは市長です。市長の上には、上級行政庁がありません。ですから審査庁は市長です。庁や宮内庁長官の細かい範囲は、暗記しなくて大丈夫です。名前と構造が分かれば足ります。
知事Aが自分の処分を見直す場合でも、処分に関与していない職員が、審理員として審理しますから、公正を保てます。
審査庁②——特別の定めと権限の委任
図:特別の定めが先
- 地方自治法255条の2第1項
- 法定受託事務の処分をした者→審査請求先
- 都道府県知事その他の都道府県の執行機関〔1号〕→その事務を定める法律・政令を所管する各大臣
- 市町村長その他の市町村の執行機関〔教育委員会・選挙管理委員会を除く〕〔2号〕→都道府県知事
- 自治事務なら大臣は上級ではない
4条の柱書は、特別の定めが先でした。特別の定めの代表を2つ見ます。1つ目は、法定受託事務に関する、地方自治法255条の2です。第2章で、法定受託事務の審査請求は所管の大臣や知事に行く、と少しだけ見ました。その中身です。法定受託事務も、県や市町村自身の事務です。ただ、国や都道府県が本来果たすべき役割に係り、その適正な処理を特に確保する必要がある事務です。ですから、審査請求先も、4条とは別に決まります。板の表のとおりです。都道府県知事などが処分をした場合は、その事務を定める法律や政令を所管する各大臣に出します。市町村長などが処分をした場合は、都道府県知事に出します。ただし、教育委員会と選挙管理委員会は、この市町村長などから除かれます。前回の事件で、審査請求が所管の大臣に向かったのは、この都道府県の執行機関の場合に当たるからです。埋立ての承認が法定受託事務だったのです。これに対して、今回のAの営業停止は自治事務です。国と県は別々の行政主体で、国が上、県が下という関係ではありません。知事は県の長で、大臣の部下ではないのです。大臣が知事を指揮監督した機関委任事務は、第2章で見たとおり廃止されました。法定受託事務なら、いま見た255条の2が大臣への道を特に作っていますが、自治事務にはその定めがありません。ですから、大臣は知事の上級行政庁ではなく、Bの審査請求は、4条1号で、知事A自身に出します。

2つ目は、個別法の特別の定めです。生活保護法64条は、市長が福祉事務所長に権限を委任した場合の審査請求を、最初から都道府県知事と定めています。4条どおりなら、審査庁は福祉事務所長の上に立つ市長のはずですが、個別法が先です。生活保護の審査請求先は、前に読んだ回でも出てきました。ここで、さっきの4号の例に戻ります。市長から権限の委任を受けた市の出先機関の長の処分で、審査庁が市長になるのは、なぜでしょうか。その前に1問だけ、復習です。権限の委任では、権限そのものは誰に移るのでしたか?受任した機関に、移ります。権限そのものが、受任庁に移ります。ですから、処分をしたのは受任庁です。審査庁は4条で決まります。では、受任庁の上級行政庁は誰か。委任したから上級になるのではありません。市の出先機関の長は、もともと市長の補助機関で、市長の指揮監督の下にいます。だから上級行政庁は市長で、市長の上には上級行政庁がありません。4号で、最上級行政庁の市長です。ただし、生活保護のように個別法が別に決めていれば、個別法が先です。法定受託事務で、委任を受けた職員が処分をした場合も、地方自治法255条の2第2項が、委任をした執行機関が裁決をすることを前提に、その裁決への再審査請求の道を定めています。上に立つ委任庁が審査庁になる前提は、ここでも同じです。専決や代理との違いは、行政組織の回で見ました。専決や代理では、権限は移らず、法的にはもとの行政庁の処分です。ですから、審査庁も、もとの行政庁から4条で決めます。
最後に、不作為の審査庁も、同じ4条です。処分庁等には、不作為庁も含まれていたからです。
審査請求期間——主観的請求期間と客観的請求期間
図:審査請求期間
- 18条
- 主観的請求期間(知った日の翌日から3か月)〔再調査の請求の決定を経たときは、その決定を知った日の翌日から1か月〕
- 客観的請求期間(処分の日の翌日から1年)〔再調査の決定を経たときは、その決定の日の翌日から1年〕
- どちらにも正当な理由の例外
- 両方守る
- 通知される処分は主観が先に尽きる
次は、いつまでに出すか、です。18条の1項と2項を読みます。
条文行政不服審査法18条1項・2項
行政不服審査法 第十八条(審査請求期間)(1項・2項) 処分についての審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して三月(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定があったことを知った日の翌日から起算して一月)を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。 2 処分についての審査請求は、処分(当該処分について再調査の請求をしたときは、当該再調査の請求についての決定)があった日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
期間は2つあります。1項が、主観的請求期間です。処分があったことを知った日の翌日から3か月です。再調査の請求をしたときは、その決定を知った日の翌日から1か月です。2項が、客観的請求期間です。処分の日の翌日から1年。再調査の請求をしたときは、その決定の日の翌日から1年です。どちらにも、正当な理由があるときは、例外になります。期間を区切る理由です。審査請求の道は開いておきますが、いつまでも争える状態にしておくと、処分を前提にした関係がいつまでも落ち着きません。そこで、期間を過ぎたら争えないことにしています。大事なのは、両方を守る必要があることです。通常の処分は、相手に通知されますから、知った日は処分の日とほぼ同じで、3か月のほうが先に尽きます。1年が効くのは、通知されない処分を、あとから知ったような場合です。本編の問いです。Bは6月5日に、営業停止の命令書を受け取りました。審査請求ができる最後の日は、いつでしょうか。
期間は、初日を算入しません。民法140条です。ですから、起算するのは翌日の6月6日です。月で定めた期間は、起算日に応当する日の前日に満了します。民法143条2項です。起算日6月6日の応当日は9月6日で、その前日が満了日ですから、答えは9月5日です。期間の計算は、法令に特別の定めが無ければ、民法138条により民法の定めによります。
図:期間の数え方
- 時間軸
- 6月5日に知る→6月6日が起算日〔初日不算入・民法140条〕→応当日は9月6日→前日の9月5日に満了〔民法143条2項〕
- 客観的請求期間の例=処分の日が6月1日なら翌日6月2日が起算日→翌年の6月1日に満了
板で確かめます。6月5日に知って、起算は6月6日、満了は9月5日です。客観的請求期間も同じ数え方で、処分の日が6月1日なら、起算は6月2日で、満了は翌年の6月1日です。知った日とは、書面の交付や口頭の告知で、処分の存在を現実に知った日です。書面が住所に届くなど、知りうべき状態に置かれたときは、反証が無ければ、知ったものと推定されます。告示で多数の人に画一的に告知される処分は、告示のあった日です。取消訴訟の出訴期間と同じ考え方です。正当な理由も、取消訴訟と同様に解釈します。期間内に出せなかったことが、やむを得ないといえるか、という趣旨です。誤った教示をされた場合などは、別の回で扱います。
図:不服申立期間の表
- 審査請求=知った日の翌日から3か月・処分の日の翌日から1年〔18条〕
- 再調査を経た審査請求=決定を知った日の翌日から1か月・決定の日の翌日から1年〔18条〕
- 再調査の請求=知った日の翌日から3か月・処分の日の翌日から1年〔54条〕
- 再審査請求=原裁決を知った日の翌日から1か月・原裁決の日の翌日から1年〔62条〕
- 取消訴訟=知った日から6か月〔行訴法14条1項〕・処分の日から1年
他の不服申立ての期間もまとめます。審査請求と、再調査を経た審査請求は、いま見たとおりです。再調査の請求は、54条で、知った日の翌日から3か月と、処分の日の翌日から1年。再審査請求は、62条で、原裁決を知った日の翌日から1か月と、原裁決の日の翌日から1年です。審査請求のあとの再審査請求は、1か月と短い点に注意してください。取消訴訟と比べると、審査請求の3か月は、取消訴訟の6か月の半分です。客観的な期間は、どちらも1年です。審査請求をしたあとの取消訴訟の起算は、出訴期間の回で扱います。なお、審査請求書を郵便などで出したときは、送付に要した日数は期間に算入しません。18条3項です。
図:不作為の審査請求は期間制限が無い
- 不作為が続く限り出せる
- ただし申請から相当の期間が経つ前に出すと不適法として却下〔49条1項〕
- 条文に日数は書かれていない
- 3条の相当の期間が経過したにもかかわらず
最後に、不作為の審査請求です。前回、期間制限が無いと予告しました。不作為は、続いている限り、いつでも出せます。ただし、早すぎるとだめです。49条1項を読みます。
条文行政不服審査法49条1項
行政不服審査法 第四十九条(不作為についての審査請求の裁決)(1項) 不作為についての審査請求が当該不作為に係る処分についての申請から相当の期間が経過しないでされたものである場合その他不適法である場合には、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。
申請から相当の期間が経過しないでされた審査請求は、審査庁が裁決で却下します。条文には、何日とは書かれていません。設例です。Bが新店舗の営業許可を申請した翌日に、まだ応答が無いと審査請求を出せば、早すぎて却下です。3条の、相当の期間が経過したにもかかわらず、という言葉が、ここで効いています。
審査請求適格——不服がある者とは誰か
図:審査請求適格
- 2条=行政庁の処分に不服がある者
- 行訴法9条1項=法律上の利益を有する者
- 判例=審査請求適格も取消訴訟の原告適格と同じ物差し〔法律上保護された利益〕
- 名あて人Bは当然に適格
- 第三者は法律上保護された利益か反射的利益か
- 不服申立適格
最後は、誰が出せるか、です。2条を思い出してください。行政庁の処分に不服がある者、とだけ書いてあります。ここで、取消訴訟の原告適格の条文と、ならべて見ます。
条文行政事件訴訟法9条1項
行政事件訴訟法 第九条(原告適格)(1項) 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
行訴法9条1項には、法律上の利益を有する者、という言葉があります。行審法2条には、この言葉がありません。不服がある者としか書いていないのです。では、不服があれば、誰でも出せるのでしょうか。条文は、不服がある者としか言いませんが、判例は、取消訴訟の原告適格と同じ物差しで考えます。法律上の利益を有する者と解して、法律上保護された利益の説を採ります。この審査請求適格は、不服申立適格とも呼ばれます。設例では、営業停止を受けたBは、処分の名あて人ですから、当然に適格があります。争いになるのは、第三者です。
図:主婦連ジュース訴訟判決
- 事案=果汁飲料の表示の公正競争規約を公正取引委員会が認定→消費者団体と消費者が不服を申し立てた
- 争点=景品表示法10条6項の「不服があるもの」に当たるか
- この不服申立ては景品表示法が定めた特別の不服申立て〔行審法の適用は排除〕
- しかし判決は行政上の不服申立の一種として一般の行政処分の場合と同様に解した→審査請求にも同じ考え方が及ぶ
判例は、主婦連ジュース事件です。果汁飲料の表示について、業界が自主ルールを作り、公正取引委員会がそれを認定しました。消費者団体と消費者が、この認定に不服を申し立てました。争われたのは、景品表示法10条6項の、不服があるもの、に当たるか、です。この不服申立ては、景品表示法が定めていた特別の不服申立てで、行審法の適用は排除されていました。しかし判決は、これも行政上の不服申立ての一種として、一般の行政処分についての不服申立ての場合と同様に解しました。だから、審査請求にも、同じ考え方が及びます。判決の言葉を、2枚で読みます。
判例最判昭53・3・14 民集32巻2号211頁
法律上保護された利益 ……一般の行政処分についての不服申立の場合と同様に、当該処分について不服申立をする法律上の利益がある者、すなわち、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう、と解すべきである。
不服申立てができるのは、自己の権利や法律上保護された利益を侵害される、または必然的に侵害されるおそれのある者です。では、法律上保護された利益とは何か。次です。
判例最判昭53・3・14 民集32巻2号211頁
反射的利益との区別 ところで、右にいう法律上保護された利益とは、行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている利益であつて、それは、行政法規が他の目的、特に公益の実現を目的として行政権の行使に制約を課している結果たまたま一定の者が受けることとなる反射的利益とは区別されるべきものである。
決め手は、何のための制約か、です。行政法規が、個人の利益を保護する目的で、行政権に制約を課している。その結果として保障される利益が、法律上保護された利益です。これに対して、公益の実現を目的とする制約の結果、たまたま受ける利益が、反射的利益です。
図:法律上保護された利益と反射的利益の区別
- 法律上保護された利益=行政法規が個人の利益を保護する目的で行政権に制約を課して保障している利益→審査請求適格あり
- 反射的利益=公益の実現を目的とする制約の結果たまたま受ける利益→審査請求適格なし
- 景品表示法は公益の実現が目的→一般消費者の利益は国民一般が共通して持つ抽象的・平均的な利益→反射的利益
- 果汁を飲む人と絞っても同じ
判決の筋を当てはめます。景品表示法は、公益の実現が目的です。消費者が受ける利益は、法の適正な運用による公益の保護の結果として、国民一般が共通して持つ、抽象的で平均的な利益にすぎません。つまり反射的利益です。単に一般消費者であるというだけでは、不服申立ての法律上の利益があるとはいえません。果汁を飲む人、と範囲を絞っても同じです。この結論は、短答で問われる点です。誰でも出せるわけではない理由です。不服申立制度は、国民の権利利益の救済が主眼です。行政の適正な運営の確保は、その救済を通じた間接的な効果にすぎません。ですから、自分の法律上の利益と関係のない人に開かれた、民衆争訟ではないのです。これが、判決の理由づけです。境界の例を、仮定で挙げます。Aが営業を許可したある事業者の店ができて、近所の既存店の客が減りそうです。既存店は審査請求できるでしょうか。許可の根拠となる法律が、既存店の利益を個別に守るために、許可の要件を課しているなら、法律上保護された利益です。公益、つまり衛生や安全のための要件にすぎないなら、反射的利益です。このように、分かれうるのです。判断の枠組みの詳細は、原告適格の回で扱います。取消訴訟の原告適格は、行訴法9条2項の改正で広がりました。審査請求適格も、同じ物差しで考える以上、その広がりが及ぶべきだと考えられています。ですから、9条2項の考慮事項を参考にして読みます。条文そのものは、原告適格の回で読みます。
不作為の審査請求は、もっと単純です。3条のとおり、できるのは法令に基づき、処分についての申請をした者だけです。申請者本人が、審査請求適格を持ちます。
4つの要件の一覧表と、次回の入口
図:審査請求の4要件の一覧表
- 対象〔2条・3条〕=処分は行政庁の処分〔行政指導・7条の適用除外は×〕、不作為は法令に基づく申請に何らの処分もしないこと
- 審査庁〔4条〕=処分は特別の定めが先・1号→4号の順・最上級行政庁、不作為も同じ
- 審査請求期間〔18条・49条1項〕=処分は3か月・1年・正当な理由、不作為は期間制限なし・早すぎは却下
- 審査請求適格〔2条・3条〕=処分は不服がある者=法律上の利益を有する者、不作為は申請をした者
- 審査請求書の提出〔19条1項〕は次回
ここまでの4つの要件を、処分と不作為の別に、1枚の表にします。対象は、2条と3条です。処分なら行政庁の処分で、行政指導と7条の適用除外は外れます。不作為なら、法令に基づく申請に何らの処分もしないことです。審査庁は4条で、特別の定めが先、無ければ1号から4号の順です。不作為も同じです。期間は18条で、知った日の翌日から3か月、処分の日の翌日から1年、正当な理由が例外です。不作為は期間制限が無く、早すぎる審査請求は却下されます。適格は、処分なら、不服がある者、つまり法律上の利益を有する者です。不作為は、申請をした者です。
図:次回の入口
- 審査請求書の提出
- 審査請求は19条1項により審査請求書を提出してする〔他の法律・条例に口頭でできる旨の定めがある場合を除く〕
- 取下げも書面〔27条〕
- 4要件が揃っても書面に不備があれば補正→補正しなければ審理手続を経ずに却下〔24条〕
- 書面の中身・補正・審理員は次回
4つの要件が揃っていても、出し方があります。審査請求は、他の法律や条例に口頭でできる旨の定めがある場合を除いて、審査請求書を提出してします。19条1項です。取下げも書面で、27条です。
今日の地図(保存版)
図:今日の地図
- Bの審査請求=知事A自身〔4条1号〕に・知った日の翌日から3か月以内かつ処分の日の翌日から1年以内に・名あて人として
- 審査庁=特別の定めが先→1号〜4号・最上級行政庁
- 審査請求期間=主観3か月・客観1年・正当な理由・再調査経由は1か月・不作為は制限なし
- 審査請求適格=法律上の利益を有する者
- 今いる場所=第10章の4本目
最初の問いに戻ります。Bの審査請求は、どこに、いつまでに、誰が出せるのか。設例では、知事A自身、つまり4条1号に出します。処分を知った日の翌日から3か月以内で、かつ処分の日の翌日から1年以内です。Bは処分の名あて人ですから、当然に適格があります。持ち帰るのは4点です。1つ目、審査庁は、特別の定めが先で、無ければ1号から4号の順です。原則は最上級行政庁で、直近上級ではありません。2つ目、期間は、主観が3か月、客観が1年で、どちらにも正当な理由の例外があります。再調査を経たときは1か月で、不作為は期間制限が無く、ただし早すぎると却下です。3つ目、適格は、不服がある者、つまり法律上の利益を有する者で、取消訴訟の原告適格と同じ物差しです。一般消費者というだけでは足りません。4つ目、不作為の審査請求ができるのは、申請をした者で、申請から相当の期間がたってからです。今いる場所は、第10章の4本目です。
参照条文
- 行政不服審査法4条
- 行政不服審査法18条1項・2項
- 行政不服審査法49条1項
- 行政事件訴訟法9条1項