行政法ゼロから行政法#21

行政主体

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第2章 行政組織法 ㉑/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

拒否の通知書の差出人

建築確認を断られたAさん(A=建築主〔家を建てたい〕/B=民間の株式会社〔指定確認検査機関〕/C=市/D=国/A→B=建築確認の申請/B→A=拒否の通知書/問い=C・D・Bのどれを相手に何を争うか) 図:建築確認を断られたAさん

  • A=建築主〔家を建てたい〕
  • B=民間の株式会社〔指定確認検査機関〕
  • C=市
  • D=国
  • A→B=建築確認の申請
  • B→A=拒否の通知書
  • 問い=C・D・Bのどれを相手に何を争うか

家を建てようとしたAさんが、建築確認を申請しました。しばらくして、通知書が届きます。結果は、確認できない、という拒否でした。ところが、差出人の欄を見ると、市役所ではありません。民間の株式会社でした。建築確認は役所の仕事、と感じるのが普通です。ところが、法律が、民間の会社にも確認を任せているのです。さて、Aさんは納得がいきません。争うなら、国を相手にするのか、市を相手にするのか、それとも、この会社なのか。何を争えばよいのでしょうか。ここから、行政組織法の章に入ります。最初の回で、行政法を、誰が行政をするのか、どう行うのか、救済はどうか、の3つの柱で見ました。この章は、1つ目の柱、誰が行政をするのか、つまり、組織法です。その一番外側の輪、法人から入ります。今日の1問です。行政をする誰かは、国と自治体だけなのか。そうでない誰かが混じると、何が変わるのか。答えを先に言います。行政をする主体には、国と自治体の外側の法人がいます。その見分け方の物差しと、法人が違うと変わる4点、監督、手続、被告、情報公開を持ち帰ります。冒頭の会社が何者かは、最後に回収します。4つの問いを、板に出します。

行政主体の4つの問い(①権利義務は誰のものか=法人と機関/②国と自治体の外側に誰がいるか/③どう見分けるか=設立の仕方・担う事務・私人への強制/④法人が違うと何が変わるか=監督・手続・被告・情報公開) 図:行政主体の4つの問い

  • ①権利義務は誰のものか=法人と機関
  • ②国と自治体の外側に誰がいるか
  • ③どう見分けるか=設立の仕方・担う事務・私人への強制
  • ④法人が違うと何が変わるか=監督・手続・被告・情報公開

1つ目は、権利と義務は、誰のものか。2つ目は、国と自治体の外側に、誰がいるか。3つ目は、どう見分けるか。4つ目は、法人が違うと、何が変わるか。この順で見ていきます。

法人と機関 行政主体という道具

法人と機関(A=町〔法人=権利義務の帰属先〕/B=町長〔機関=町のために意思を決め表示する地位〕/C=土地の売主/B→C=町の名で売買契約/効果はAに帰属/民法33条1項=法人は法律の規定によらなければ成立しない/民法34条=法令・定款の目的の範囲内で権利を有し義務を負う) 図:法人と機関

  • A=町〔法人=権利義務の帰属先〕
  • B=町長〔機関=町のために意思を決め表示する地位〕
  • C=土地の売主
  • B→C=町の名で売買契約
  • 効果はAに帰属
  • 民法33条1項=法人は法律の規定によらなければ成立しない
  • 民法34条=法令・定款の目的の範囲内で権利を有し義務を負う

まず、言葉を2つ定義します。最初は、法人です。法人とは、独立の権利の主体になる資格を、法律によって認められた団体のことです。自分の名前で契約し、権利を持ち、義務を負います。株式会社や、一般社団法人が、身近な例です。民法の法人の回で見たとおり、法人は、法律の規定によらなければ成り立ちません。2つ目は、機関です。機関とは、法人のために意思を決めて、行動する、人や会議体の地位のことです。法人は、体を持ちません。だから、誰かの意思と行為を、法人のものとして扱う必要があります。株式会社なら、代表取締役が、その席に座っています。例で見ます。町長が、町の名で、土地を買う契約を結びました。この契約の当事者は、誰でしょうか。

町長個人ではありません。買主は、町、という法人です。代金を払う義務を負うのも町で、土地を手に入れるのも町です。町長は、町のために意思を決めて、示す機関です。前の章で、組織規範を見たときに、担当者がした行為を、その人個人のものではなく、国や町の行為として扱わせる働き、という話をしました。その働きの正体が、これです。行為の効果が、機関の背後にいる法人に帰属する、という考え方です。席に座る人が替わっても、契約の名義人は、町のまま変わりません。ここで、今日の主役の言葉を定義します。行政主体とは、行政上の権利義務を負い、自己の名と責任で、行政活動を行う法人のことです。暗記する定義です。さきほどの町で言えば、町長が町の名でした行為の効果は、町長個人ではなく、町に帰属します。国でも同じで、大臣の行為の効果は、国に帰属します。

普通の会社も、法人です。わざわざ、行政主体という別の名前を立てる意味は何ですか。国の仕事をする法人を、民間の会社や団体と区別して、違う扱いをするためです。どんな違う扱いがあるかは、後半で4つ見ます。ここでは、行政主体は、扱いが違う法人に付ける名前だ、と覚えてください。

内部法と外部法(内部法=行政主体の内部の関係を規律〔上級機関と下級機関/国と国の機関〕/外部法=行政主体と私人の関係を規律〔許可を出す国と申請者〕/喩え=家の中の決まりと、家と隣人の約束) 図:内部法と外部法

  • 内部法=行政主体の内部の関係を規律〔上級機関と下級機関/国と国の機関〕
  • 外部法=行政主体と私人の関係を規律〔許可を出す国と申請者〕
  • 喩え=家の中の決まりと、家と隣人の約束

もう1組、言葉があります。行政主体の中だけの関係を律する法を、内部法といいます。たとえば、上級の機関と下級の機関の関係です。これに対して、行政主体と私人の関係を律する法を、外部法といいます。許可を出す国と、申請する人の関係です。家の中の決まりと、家と隣人の約束、と考えると、区別しやすいです。なぜ区別するのか。この見方は、後半の1点目で、実際に結論を左右します。覚えておいてください。ここで1問です。町、総務大臣、神奈川県、横浜市長のうち、法人はどれでしょうか。町と神奈川県が法人です。大臣と市長は、機関だと思います。町と神奈川県が法人で、総務大臣と横浜市長は、その法人のために動く機関です。ここまでの要点は、帰属先が法人、動くのが機関、でした。

統治団体 国と地方公共団体

統治団体(統治団体=国と地方公共団体/行政主体の典型/憲法92条=地方公共団体の組織・運営は地方自治の本旨に基づき法律で定める/地方自治法2条1項=地方公共団体は法人とする/区の対比=東京の特別区は特別地方公共団体で独立の法人・政令指定都市の区は市の内部の区域で法人ではない) 図:統治団体

  • 統治団体=国と地方公共団体
  • 行政主体の典型
  • 憲法92条=地方公共団体の組織・運営は地方自治の本旨に基づき法律で定める
  • 地方自治法2条1項=地方公共団体は法人とする
  • 区の対比=東京の特別区は特別地方公共団体で独立の法人・政令指定都市の区は市の内部の区域で法人ではない

行政主体の典型は、国と地方公共団体です。この2つを、統治団体といいます。国は、統治団体として、最も重要な行政主体です。前の章で、町は内閣そのものではない、と言いました。では、町と国は、どんな関係でしたか?町は、国とは別の主体で、それでも、行政をする側に立つ、という話でした。今日は、その別の主体の正体を見ます。地方公共団体は、国から独立した統治団体で、国とは別の法人です。根拠を見ます。まず憲法です。

条文日本国憲法92条

日本国憲法第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

地方公共団体の存在を前提に、組織と運営は、地方自治の本旨に基づいて、法律で定める、という条文です。地方自治の中身は、憲法の回で見ました。そして、法人であることの明文の根拠は、地方自治法にあります。

条文地方自治法2条1項

地方自治法第2条第1項 地方公共団体は、法人とする。

短い条文です。地方公共団体は、法人とする。だから、都道府県も市町村も、国とは別の権利義務の主体で、行政主体です。地方公共団体には、都道府県と市町村の普通地方公共団体と、特別区などの特別地方公共団体があります。種類や組織は、別の回で見ます。ここでは、法人かどうかの見分けを練習します。ここで1問です。東京の、新宿区という区と、横浜市の、中区という区は、どちらも法人でしょうか。同じ区だから、どちらも法人ではないですか。違います。まず、東京の特別区の条文です。

条文地方自治法1条の3第3項

地方自治法第1条の3第3項 特別地方公共団体は、特別区、地方公共団体の組合及び財産区とする。

骨格は、特別区は、組合や財産区と並ぶ、特別地方公共団体だ、です。地方公共団体ですから、2条1項で、独立の法人です。では、政令指定都市の区はどうでしょうか。こちらの条文です。

条文地方自治法252条の20第1項

地方自治法第252条の20第1項 指定都市は、市長の権限に属する事務を分掌させるため、条例で、その区域を分けて区を設け、区の事務所又は必要があると認めるときはその出張所を置くものとする。

骨格は、市長の事務を分担させるために、条例で市の区域を分けて、区を置く、です。地方公共団体として挙げる条文ではありません。だから、2条1項は及ばず、法人ではありません。同じ区という名前でも、根拠の条文が違います。名前でなく、法律が地方公共団体として定めているかを見て決めるのです。なお、憲法の回で、特別区は、憲法93条2項の地方公共団体には当たらない、とした判例を見ました。あれは、長を住民が直接選ぶ団体か、という憲法の問いです。法律の上で法人かどうかとは、別の問いです。

国と自治体の外側の法人たち

見分ける物差し3つ(①誰がどう設立したか=法律で直接/特別の法律による特別の設立行為/民間が発起し行政庁が認可/民間法人を行政庁が指定・登録 ②何を担うか=公権力の行使を含むか ③私人に強制できるか=強制加入・強制徴収) 図:見分ける物差し3つ

  • ①誰がどう設立したか=法律で直接/特別の法律による特別の設立行為/民間が発起し行政庁が認可/民間法人を行政庁が指定・登録
  • ②何を担うか=公権力の行使を含むか
  • ③私人に強制できるか=強制加入・強制徴収

国と自治体の外側にも、行政の事務を担う法人がいます。種類が多くて、混乱しやすいところです。そこで、名前の暗記から入らず、物差しを3つ持ちます。1つ目は、誰が、どう設立したか。法律が直接つくったのか、民間が発起して行政が認可したのか、既にある民間の法人を、行政が指定したのか。2つ目は、何を担うか。公権力の行使、つまり、相手が同意しなくても、一方的に権利や義務を決める力を含むかどうかです。3つ目は、私人に強制できるか。強制的に加入させたり、お金を強制的に徴収したりできるか、です。この物差しで、強制が一番強い公共組合から始めて、外側に行くほど民間の色が濃くなる順に、見ていきます。最初は、公共組合です。特別の法律に基づいて、公共の事業のために、一定の人を組合員として組織する法人です。土地区画整理組合、土地改良区、健康保険組合が例です。特色は4つです。強制加入、国の監督、業務に公権力性があること、組合費の強制徴収です。

公共組合の強制加入(土地区画整理組合=施行地区内の宅地の所有者・借地権者は全員組合員/設立=7人以上が共同して定款・事業計画を定め都道府県知事の認可/4つの特色=強制加入・国の監督・公権力性・強制徴収/最判昭60・12・17=設立認可は処分) 図:公共組合の強制加入

  • 土地区画整理組合=施行地区内の宅地の所有者・借地権者は全員組合員
  • 設立=7人以上が共同して定款・事業計画を定め都道府県知事の認可
  • 4つの特色=強制加入・国の監督・公権力性・強制徴収
  • 最判昭60・12・17=設立認可は処分

土地区画整理組合で見ます。土地区画整理事業とは、道路や公園を整えながら、土地の区画を整理し直す事業です。その組合を設立するには、7人以上が共同して、都道府県知事の認可を受けます。そして、条文はこう定めます。

条文土地区画整理法25条1項

土地区画整理法第25条第1項 組合が施行する土地区画整理事業に係る施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員とする。

骨格は、施行地区の宅地の所有者と借地権者は、全員、組合員になる、です。入りたくなくても、組合員になります。結社の自由、つまり、団体に入るか入らないかを自分で決める自由を、押さえ込む形です。それが許されるのは、公共の事業のために、法律そのものが強制加入を定めているからです。この点を、最高裁も述べています。組合の設立の認可は、施行地区の宅地の所有者などを、すべて強制的にその組合員とする公法上の法人を成立させ、事業を施行する権限を与える効力がある、だから、抗告訴訟、つまり、取消訴訟などの、行政の処分を争う訴えの対象となる処分だ、と判断しました。組合の設立の効力を争った事件です。処分かどうかの詳しい話は、別の回で扱います。ここでは、公共組合は、強制的に組合員をつくる法人だ、と確認できれば十分です。次は、特殊法人です。法律によって直接設立された法人、または、特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人のうち、次に見る独立行政法人を除いたものです。特別の設立行為とは、たとえば、国が設立委員を任命して、その委員に設立の手続を進めさせるような、国の側が主導する設立のやり方です。民間が自分から発起するのとは違います。かつては、日本国有鉄道や日本電信電話公社のように、国の事業を担う特殊法人がありました。のちに民営化などで姿を変えています。今の例は、NHKこと日本放送協会や、日本中央競馬会です。

最近の実例があります。日本学術会議は、2026年10月1日から特殊法人になりました。日本学術会議法3条は、会議は、法人とする、と定めます。以前は、国の機関でした。機関が、法人になったわけです。先ほどの、機関と法人の区別が、そのまま現代の出来事になっています。

独立行政法人(国の行政組織のうち政策の実施部分を切り離して法人格を与える/企画立案と実施の分離/通則法2条1項の3要素=①公共上の見地から確実に実施される必要がある事務・事業②国が自ら主体となって直接実施する必要がない③民間に委ねると実施されないおそれ又は一の主体に独占して行わせる必要/3類型=中期目標管理法人・国立研究開発法人・行政執行法人/国立大学法人・地方独立行政法人は別の法律) 図:独立行政法人

  • 国の行政組織のうち政策の実施部分を切り離して法人格を与える
  • 企画立案と実施の分離
  • 通則法2条1項の3要素=①公共上の見地から確実に実施される必要がある事務・事業②国が自ら主体となって直接実施する必要がない③民間に委ねると実施されないおそれ又は一の主体に独占して行わせる必要
  • 3類型=中期目標管理法人・国立研究開発法人・行政執行法人
  • 国立大学法人・地方独立行政法人は別の法律

次は、独立行政法人です。国の行政組織のうち、政策を実施する部分を切り離して、独立の法人格を与えたものです。政策の企画立案は国、実施は法人、と分ける発想です。通則法の定義を、板に出します。

条文独立行政法人通則法2条1項

独立行政法人通則法第2条第1項 この法律において「独立行政法人」とは、国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わせることが必要であるもの(以下この条において「公共上の事務等」という。)を効果的かつ効率的に行わせるため、中期目標管理法人、国立研究開発法人又は行政執行法人として、この法律及び個別法の定めるところにより設立される法人をいう。

長い条文ですから、骨格だけです。1つ、公共上の見地から確実に実施される必要がある事務と事業であること。2つ、国が自ら直接実施する必要がないこと。3つ、民間に任せると実施されないおそれがあるか、1つの主体に独占して行わせる必要があること。この3つです。3つ目が要です。民営化は、事業を株式会社に移して、国は経営から手を引きます。独立行政法人は、法人にしても、主務大臣が目標を示して、その達成ぶりを評価します。民間に任せると実施されないおそれがある仕事だから、国の目的のもとに置き続けるのです。もうかるから任せる、という話ではありません。種類は3つあります。中期目標管理法人、国立研究開発法人、行政執行法人です。通則法の2条2項から4項に定義があります。自主性を発揮して、中期的に運営する法人。研究開発を、中長期的に行う法人。国の関与のもとで、確実に執行する法人。名前と一言ずつを、押さえてください。共通のルールは通則法、個別の法人は、それぞれの設立法に定められています。国立大学は別です。学問の自由と大学の自治に配慮して、通則法とは別の、国立大学法人という類型になっています。国立大学法人法2条1項は、国立大学を設置することを目的として、この法律の定めるところにより設立される法人を、国立大学法人という、と定めます。自治体が設立する法人は、地方独立行政法人といい、地方独立行政法人法に定めがあります。ここで1問です。国立印刷局、国立大学、NHK、JR東日本のうち、通則法の独立行政法人はどれでしょうか。

国立印刷局だけだと思います。国立大学は国立大学法人で、NHKは特殊法人です。JR東日本は株式会社です。国立印刷局は、行政執行法人です。判断の根拠は、それぞれの設立の法律でした。

認可法人・指定法人・登録法人(認可法人=特別の法律に基づき民間人が発起人となって自主的に設立・設立に行政庁の認可〔日本銀行・日本赤十字社・預金保険機構〕/特殊法人との違い=特別の設立行為が要るか/指定法人=行政庁が指定した私法上の法人〔指定確認検査機関〕/登録法人=行政庁の登録を受けた法人に公共性のある事務を委ねる) 図:認可法人・指定法人・登録法人

  • 認可法人=特別の法律に基づき民間人が発起人となって自主的に設立・設立に行政庁の認可〔日本銀行・日本赤十字社・預金保険機構〕
  • 特殊法人との違い=特別の設立行為が要るか
  • 指定法人=行政庁が指定した私法上の法人〔指定確認検査機関〕
  • 登録法人=行政庁の登録を受けた法人に公共性のある事務を委ねる

次は、認可法人です。特別の法律に基づきますが、民間の人が発起人になって、自主的に設立します。そして、設立のときに、行政庁の認可が要ります。日本銀行、日本赤十字社、預金保険機構が例です。特殊法人との違いを確認します。特殊法人は、法律が直接つくるか、特別の設立行為でつくります。認可法人は、民間が発起して、認可を受けてつくります。違いは、特別の設立行為が要るか、民間の発起と認可か、です。一番外側にいるのが、指定法人と登録法人です。指定法人は、特別の法律に基づいて、試験、検査、検定、登録などの特定の業務を行う者として、行政庁に指定された、私法上の法人です。登録法人は、法律に基づいて行政庁の登録を受け、その法律の定める公共性のある事務を担う法人です。冒頭の会社が、この指定法人の一種です。指定確認検査機関といいます。条文を見ます。

条文建築基準法6条の2第1項

建築基準法第6条の2第1項 前条第一項各号に掲げる建築物の計画(前条第三項各号のいずれかに該当するものを除く。)が建築基準関係規定に適合するものであることについて、第七十七条の十八から第七十七条の二十一までの規定の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者の確認を受け、国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けたときは、当該確認は前条第一項の規定による確認と、当該確認済証は同項の確認済証とみなす。

骨格は、国土交通大臣や知事が指定した者の確認を受けて、確認済証の交付を受けたときは、それを、行政庁の確認と同じものとみなす、です。民間の会社なのに、建築確認という、行政の判断をする権限を持っています。

法人の類型の比較表(公共組合=特別の法律・強制加入あり/特殊法人=法律で直接又は特別の設立行為/独立行政法人=通則法と個別法で設立・国立大学法人・地方独立行政法人は別法/認可法人=民間が発起し行政庁が認可/指定法人=既存の私法上の法人を行政庁が指定/登録法人=行政庁に登録/暗記する列=設立の仕方) 図:法人の類型の比較表

  • 公共組合=特別の法律・強制加入あり
  • 特殊法人=法律で直接又は特別の設立行為
  • 独立行政法人=通則法と個別法で設立・国立大学法人・地方独立行政法人は別法
  • 認可法人=民間が発起し行政庁が認可
  • 指定法人=既存の私法上の法人を行政庁が指定
  • 登録法人=行政庁に登録
  • 暗記する列=設立の仕方

比較表にまとめます。暗記する列は、設立の仕方です。公共組合は、特別の法律で、強制加入です。特殊法人は、法律が直接か、特別の設立行為です。独立行政法人は、通則法と個別法です。認可法人は、民間の発起と認可です。指定法人は、既にある法人を指定します。登録法人は、登録です。外側に行くほど、民間の色が濃くなります。残りの2つの物差しは、見分けの補助です。私人に強制できるのは、強制加入と強制徴収を持つ公共組合。公権力の行使を担うのは、建築確認をする指定確認検査機関のように、法律が権限を渡した法人です。

法人が違うと何が変わるか 4つの扱い

4つの扱い(①監督の手段としての認可は内部の行為か=処分ではない/②行政手続法の適用除外/③処分をした行政庁自身が被告/④情報公開の対象法律が違う) 図:4つの扱い

  • ①監督の手段としての認可は内部の行為か=処分ではない
  • ②行政手続法の適用除外
  • ③処分をした行政庁自身が被告
  • ④情報公開の対象法律が違う

行政主体として扱われる法人は、民間の会社や団体と、違う扱いを受けます。4点を、順に見ます。その前に、1問考えてください。さきほどの会社が、建築確認を断りました。取消しを求める訴えの被告は、国と市と会社の、どれでしょうか。答えは、3つ目で出します。1つ目は、国と法人の監督の関係は、内部の行為か、です。事案です。新幹線の工事を担う特殊法人、当時の日本鉄道建設公団が、工事実施計画を作りました。所管の大臣が、全国新幹線鉄道整備法9条1項に基づいて、これを認可しました。この認可の取消しを求めて、訴えが起こされました。

新幹線の工事実施計画の認可(A=運輸大臣〔上級行政機関〕/B=日本鉄道建設公団〔下級行政機関=特殊法人〕/C=認可の取消しを求めた人々/A→B=認可〔監督手段〕は「内部」の枠の中/C→認可の取消しを求める線は内部に届かない) 図:新幹線の工事実施計画の認可

  • A=運輸大臣〔上級行政機関〕
  • B=日本鉄道建設公団〔下級行政機関=特殊法人〕
  • C=認可の取消しを求めた人々
  • A→B=認可〔監督手段〕は「内部」の枠の中
  • C→認可の取消しを求める線は内部に届かない

最高裁は、こう言いました。

判例最判昭53・12・8 民集32巻9号1617頁

新幹線の工事実施計画の認可 本件認可は、いわば上級行政機関としての運輸大臣が下級行政機関としてのD建設公団に対しその作成した本件工事実施計画の整備計画との整合性等を審査してなす監督手段としての承認の性質を有するもので、行政機関相互の行為と同視すべきものであり、行政行為として外部に対する効力を有するものではなく、また、これによつて直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する効果を伴うものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分にあたらないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。

判決は、大臣を上級の機関、公団を下級の機関のように扱いました。公団は、別の法人ですが、鉄道を建設させるために、国が法律でつくった特殊法人で、計画にも、大臣の認可が要ります。そこで、大臣と公団のあいだの認可を、行政機関どうしの行為と同じに見たのです。決め手は、認可が、監督の手段としての承認で、外部に対する効力が無く、直接、国民の権利義務を決めるものでもない、という点です。取消訴訟で争える処分ではない、という結論です。同じ認可でも、区画整理組合の設立の認可は処分で、新幹線の計画の認可は処分ではありません。分かれ目は、認可が、誰に効くかです。組合の設立の認可は、反対する土地の所有者まで、組合員にしてしまいます。私人の権利義務が、直接変わります。新幹線の計画の認可は、大臣と公団の間で、計画を確かめるだけで、住民の権利義務は、まだ何も決まりません。認可が私人に直接効くかどうかで、結論が分かれたのです。ここで、先ほどの内部法と外部法が効きます。この認可は、内部法の側の行為だ、ということです。ただし、独立の法人格を与えた以上、国との関係にも、公正さと透明性が求められるはずだ、という批判があります。機関どうしの行為の処分性は、別の回で整理します。なお、判決当時の運輸大臣は、今は国土交通大臣です。公団も、のちに解散して、業務は独立行政法人に引き継がれました。2つ目は、行政手続法の適用除外です。条文は、4条の2項と3項です。まず2項です。

条文行政手続法4条2項

行政手続法第4条第2項 2 次の各号のいずれかに該当する法人に対する処分であって、当該法人の監督に関する法律の特別の規定に基づいてされるもの(当該法人の解散を命じ、若しくは設立に関する認可を取り消す処分又は当該法人の役員若しくは当該法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については、次章及び第三章の規定は、適用しない。  一 法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人  二 特別の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政庁の認可を要する法人のうち、その行う業務が国又は地方公共団体の行政運営と密接な関連を有するものとして政令で定める法人

続けて、3項です。

条文行政手続法4条3項

行政手続法第4条第3項 3 行政庁が法律の規定に基づく試験、検査、検定、登録その他の行政上の事務について当該法律に基づきその全部又は一部を行わせる者を指定した場合において、その指定を受けた者(その者が法人である場合にあっては、その役員)又は職員その他の者が当該事務に従事することに関し公務に従事する職員とみなされるときは、その指定を受けた者に対し当該法律に基づいて当該事務に関し監督上される処分(当該指定を取り消す処分、その指定を受けた者が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる処分又はその指定を受けた者の当該事務に従事する者の解任を命ずる処分を除く。)については、次章及び第三章の規定は、適用しない。

骨格は、本則から読みます。法人に対する、監督のための処分は、申請に対する処分の章と、相手に、直接、義務を課したり、権利を制限したりする、不利益処分の章の規定を、適用しない。次に、括弧書きです。解散、認可の取消し、役員の解任は、除外の除外で、手続法が適用されます。3項は、指定を受けて、公務に従事する職員とみなされる者の、監督処分で、指定の取消しを除いて、同じ扱いです。つまずきやすい点があります。除外されるのは、法人に対する、監督に関する法律の特別の規定に基づく処分だけです。法人が申請者として許可を求めるような、通常の場面は、除外されません。趣旨は、1点目と同じで、国と法人の監督関係を内部の関係と見る考え方です。これにも、透明性の面から、疑問が出されています。手続法の適用除外の全体は、別の回で扱います。3つ目です。先ほどの問いに戻ります。まず、条文を確認します。

条文行政事件訴訟法11条2項

行政事件訴訟法第11条第2項 処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属しない場合には、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない。

全文を読みます。処分をした行政庁が、国や公共団体に所属しないときは、取消訴訟は、その行政庁を被告にする、です。1項は、行政庁が国や公共団体に所属するなら、国や公共団体が被告になる、という定めです。行政庁とは何かは、次の回で扱います。ここでは、処分をした主体だと思ってください。

被告は誰か(A=建築主/B=指定確認検査機関〔建築確認の処分については行政庁として扱われる〕/C=市/D=国/A→B=取消訴訟〔実線〕/C・Dには矢印を引かない/行訴法11条2項) 図:被告は誰か

  • A=建築主
  • B=指定確認検査機関〔建築確認の処分については行政庁として扱われる〕
  • C=市
  • D=国
  • A→B=取消訴訟〔実線〕
  • C・Dには矢印を引かない
  • 行訴法11条2項

指定確認検査機関は、民間の会社ですが、建築確認については、行政庁として扱われます。そして、国にも市にも所属していません。国や市の中の役所ではなく、大臣や知事から指定を受けた、民間の会社そのものだからです。だから、建築確認の拒否の取消訴訟の被告は、その会社になります。国でも市でもありません。被告の定め方の詳しい話は、別の回で扱います。4つ目は、情報公開です。国の行政機関が持つ情報は、行政機関情報公開法の対象です。これに対し、独立行政法人と、別表第一に挙がった特殊法人や認可法人などが持つ情報は、別の法律、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律の対象で、国の機関の情報とほぼ同じ扱いになります。その2条1項を、全文で見ます。

条文独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律2条1項

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第2条第1項 この法律において「独立行政法人等」とは、独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人及び別表第一に掲げる法人をいう。

独立行政法人等とは、通則法の独立行政法人と、別表第一に掲げる法人です。別表第一には、日本銀行、日本中央競馬会、そして日本学術会議などが並んでいます。日本学術会議は、国の機関だった時は行政機関情報公開法、法人になった今は、こちらの法律の対象です。法人になっても、情報公開から外れるわけではありません。国の仕事を担う法人は、国と同じように、国民に説明する責任を負うからです。変わるのは、どの法律で、誰に請求するかです。国の機関の情報は、その行政機関の長に、法人の情報は、その法人自身に、開示を請求します。開示制度の中身は、別の回で扱います。

4つの扱いの整理(①監督=監督の手段としての認可は内部の行為〔最判昭53・12・8〕②手続=監督処分は行手法の第2章・第3章を適用しない〔4条2項・3項〕③被告=処分をした行政庁が国・公共団体に所属しなければ行政庁自身〔行訴法11条2項〕④情報公開=国の機関は行政機関情報公開法・独立行政法人等は独法等情報公開法〔2条1項〕) 図:4つの扱いの整理

4点を整理します。1つ目、監督の手段としての認可は、内部の行為で、処分ではありません。2つ目、監督処分には、手続法の2つの章が適用されない。3つ目、処分をした行政庁自身が、被告になる。4つ目、情報公開は、別の法律の対象になる。1つ目と3つ目が、特に重要です。

今日のまとめ

今日のまとめ(①法人=権利義務の帰属先/機関=動く地位/行政主体=行政上の権利義務を負い自己の名と責任で行政活動を行う法人 ②統治団体=国と地方公共団体/外側の法人=設立の仕方で見分ける ③法人で変わる4点=監督・手続・被告・情報公開) 図:今日のまとめ

  • ①法人=権利義務の帰属先/機関=動く地位/行政主体=行政上の権利義務を負い自己の名と責任で行政活動を行う法人
  • ②統治団体=国と地方公共団体/外側の法人=設立の仕方で見分ける
  • ③法人で変わる4点=監督・手続・被告・情報公開

冒頭に戻ります。Aさんに届いた通知書の差出人は、民間の株式会社でした。この会社は、建築基準法に基づいて、国土交通大臣や知事に指定された、指定確認検査機関です。会社の確認は、法律によって、行政庁の確認とみなされます。だから、拒否は、会社が、行政庁としておこなった処分です。取消訴訟の被告は、その会社です。国でも、市でもありません。持ち帰りは3つです。1つ目。権利義務の帰属先が法人で、実際に動くのが機関。行政主体は、行政上の権利義務を負い、自己の名と責任で行政活動を行う法人です。2つ目。国と自治体の外側の法人は、設立の仕方で見分ける。3つ目。法人が違うと、監督、手続、被告、情報公開の4点が変わる。

法人のために意思を決める機関がどう分かれているかは、次の回で扱います。機関のうち、処分をする者を、行政庁と呼びます。行政機関の種類と、役割を見ていきます。

参照条文

  • 日本国憲法92条
  • 地方自治法2条1項
  • 地方自治法1条の3第3項
  • 地方自治法252条の20第1項
  • 土地区画整理法25条1項
  • 独立行政法人通則法2条1項
  • 建築基準法6条の2第1項
  • 行政手続法4条2項
  • 行政手続法4条3項
  • 行政事件訴訟法11条2項
  • 独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律2条1項

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