行政法ゼロから行政法#22

行政機関とは何か

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第2章 行政組織法 ㉒/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

市長名の命令書

市長名の命令書(A=建築主〔物置を建てた〕/B=市長〔差出人欄の名義人〕/C=担当課の職員〔起案・決裁をした〕/D=市/C→B=起案・決裁/B→A=施工停止の命令書/問い=この命令は誰がしたことになるのか) 図:市長名の命令書

  • A=建築主〔物置を建てた〕
  • B=市長〔差出人欄の名義人〕
  • C=担当課の職員〔起案・決裁をした〕
  • D=市
  • C→B=起案・決裁
  • B→A=施工停止の命令書
  • 問い=この命令は誰がしたことになるのか

Aさんが、敷地に物置を建てました。ところが、これが建築基準法の基準に違反していました。そこへ、市から命令書が届きます。工事の施工を停止せよ、という命令です。差出人の欄には、「なになに市長」と書いてあります。なお、この市は、建築主事、つまり建築確認を担当する専門の職員を置く市とします。不審に思ったAさんが、市役所で事情を聞くと、書類を作ったのは担当課の係員でした。課長と部長が決裁をして、市長は、命令書の中身を見てもいません。しかも、市長は、先月の選挙で交代したばかりです。市長が見てもいない命令なのに、市長の名前で届くんですか。そこが今日の出発点です。この命令は、誰がしたことになるのか。市長が替わったら、命令は消えるのか。争うなら、書類を作った係員を相手にするのか。この3つを、順に解いていきます。前の回で、行政をするのは法人で、法人のために意思を決めて動くのが機関だ、と見ました。今日は、その機関がどう分かれていて、命令を出す者はどこにいるのかを見ます。これまで、役所くらいの意味で何気なく使ってきた、行政機関という言葉も、今日、きちんと定義します。今日の1問です。処分をするのは、法人の中の誰なのか。答えを先に言うと、条文が主語に置いた地位、行政庁です。そして、行政機関という言葉は、実は2つの意味で使われています。命令書の問いは、最後に回収します。3つの問いを、板に出します。

行政機関の3つの問い(①組織の編成は法律で決めるのか=官制大権から65条・73条6号へ/②機関はどう分かれ、処分をするのは誰か=行政庁・補助機関・諮問機関・参与機関・執行機関/③「行政機関」という語は何を指すか=作用法的と事務配分的) 図:行政機関の3つの問い

  • ①組織の編成は法律で決めるのか=官制大権から65条・73条6号へ
  • ②機関はどう分かれ、処分をするのは誰か=行政庁・補助機関・諮問機関・参与機関・執行機関
  • ③「行政機関」という語は何を指すか=作用法的と事務配分的

1つ目は、役所の組織の作り方を、法律で決めるのか。2つ目は、機関はどう分かれて、処分をするのは誰か。3つ目は、行政機関という言葉は、何を指すのか。この順で見ていきます。

組織の編成と法律

組織の編成と法律(明治憲法10条=官制大権〔天皇が行政各部の官制を定める〕→日本国憲法で消滅/憲法は編成権の所在を明言せず→65条〔行政権は内閣に属する〕・73条6号〔政令の制定〕で法律事項と政令事項の振り分けが解釈問題/法治主義説・民主的統治構造説/どちらも細部は行政に委ねてよい) 図:組織の編成と法律

  • 明治憲法10条=官制大権〔天皇が行政各部の官制を定める〕→日本国憲法で消滅
  • 憲法は編成権の所在を明言せず→65条〔行政権は内閣に属する〕・73条6号〔政令の制定〕で法律事項と政令事項の振り分けが解釈問題
  • 法治主義説・民主的統治構造説
  • どちらも細部は行政に委ねてよい

最初に、組織を、誰がどう決めるのかを掘り下げます。その前に1問です。以前、組織の定めのうち、憲法が、法律で定めると書いている組織は、何と何でしたか?内閣と、会計検査院でした。その上で、そのほかの役所の組織は、法律で決めなければならないのか、という問題が残ります。そこで、主な組織は法律で定めるのが望ましい、と言いました。今日は、その中身を見ます。昔の憲法、明治憲法の10条は、行政各部の官制、つまり役所の組織を定める権限を、天皇に与えていました。これを、官制大権といいます。役所の編成は、法律ではなく天皇が決める。国民の権利や利益とは関係がないので、行政の側が、自分で決めてよい、という考え方です。日本国憲法では、この官制大権は、なくなりました。ところが、新しい憲法は、行政組織を誰がどう決めるのか、はっきりとは書いていません。手がかりは、2つの条文です。まず、65条です。

条文日本国憲法65条

日本国憲法第65条 行政権は、内閣に属する。

次に、73条です。柱書と6号を読みます。

条文日本国憲法73条(柱書・6号)

日本国憲法第73条 内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。  六 この憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。

行政権は内閣のもの。内閣は、法律を実施するために政令を作れる。そうすると、役所の組織の編成は、法律で決める事項なのか、それとも内閣が政令で決めてよい事項なのか。この振り分けが、解釈の問題として残ります。

2つの考え方(法治主義説=法律による行政の原理を組織にも当てる/民主的統治構造説=41条・国会が中心→編成権も国会/結論は近い=細部は行政へ) 図:2つの考え方

  • 法治主義説=法律による行政の原理を組織にも当てる
  • 民主的統治構造説=41条・国会が中心→編成権も国会
  • 結論は近い=細部は行政へ

考え方は2つあります。1つ目は、法治主義説です。官制大権がなくなった以上、役所の組織を決めるときにも、法治主義、つまり前に見た法律による行政の原理が、そのまま当てはまる。国民との間の法律関係に影響する権限をもつ機関を置いたり廃止したりするのは、法律で、という考え方です。2つ目は、民主的統治構造説です。憲法41条は、国会を、国権の最高機関で、国の唯一の立法機関としています。国の仕組みの中心が国会なら、行政組織の骨組みを決める権限も、国会にある。前に、41条の立法に組織の定めも含まれるとする見解がある、と触れたのは、この方向の考え方です。組織を決める規範も、原則として法律で定める。今は、こちらの考え方が有力です。

2つの説は、理由は違いますが、結論は近いです。どちらの説でも、組織の細部まで、全部を法律で決めるわけではありません。細かい部分は、行政が自分で決めてよい。ここが暗記の中心です。

法律と政令の振り分け(省・委員会・庁の設置廃止=法律〔国組法3条2項〕/官房・局・部・課の設置と所掌=原則として政令〔国組法7条〕/なぜ=組織の手直しのたびに国会の議決では追いつかない) 図:法律と政令の振り分け

  • 省・委員会・庁の設置廃止=法律〔国組法3条2項〕
  • 官房・局・部・課の設置と所掌=原則として政令〔国組法7条〕
  • なぜ=組織の手直しのたびに国会の議決では追いつかない

実際の法律を、1行だけ見ます。省と、委員会と、庁の設置と廃止は、法律で決めます。これに対して、官房、局、部、そしてその下の課の設置と、それぞれの仕事の範囲は、原則として政令で決めます。国家行政組織法の3条2項と7条の振り分けです。中身は、国の組織の回で見ます。ここで1問です。省の内部に課を新設するのに、個別の法律の改正は要るでしょうか。課は細かい単位だから、法律を変えなくても、政令でいいのかなと思います。省の設置は法律ですが、内部の課の設置は、原則として政令で定められます。なぜ細部は任せてよいのか。省の中の課を1つ作り直すたびに国会の議決が要るとしたら、仕事の変化に追いつけません。国民の権利に響く骨組みを国会が決めておけば、民主的な統制としては足りる、という考え方です。つまずきやすい区別があります。今日の話は、役所の組織を、誰が決めるかです。これに対して、国民の権利を制限する行政活動には、法律の根拠が要る、という話がありました。法律の留保です。組織の定めを法律でするかということと、活動に法律の根拠が要るかということは、別の問題です。

行政機関と行政庁

行政機関と機関の分類(行政機関=行政主体の内部組織を構成する基礎単位〔権限の範囲内の行為の効果は行政主体に帰属〕/機関は地位であって人ではない/行政庁を中心に、補助機関・諮問機関〔拘束するなら参与機関〕・執行機関を配置) 図:行政機関と機関の分類

  • 行政機関=行政主体の内部組織を構成する基礎単位〔権限の範囲内の行為の効果は行政主体に帰属〕
  • 機関は地位であって人ではない
  • 行政庁を中心に、補助機関・諮問機関〔拘束するなら参与機関〕・執行機関を配置

ここから、本題の機関です。まず、行政機関を定義します。行政機関とは、行政主体の内部の組織を構成する、基礎になる単位のことです。行政主体は、法人という、頭の中で考えられた存在です。実際に動くことはできません。そこで、権限を割り振られた単位、つまり機関が動きます。そして、機関が権限の範囲内でした行為の効果は、行政主体に帰属します。大事なのは、機関は地位であって、そこに座る人ではない、という点です。冒頭の、市長が交代した件に答えます。市長が替わっても、前の市長が出した命令の効力は、変わりません。市長という機関は同じで、座る人が替わっただけだからです。会社の契約書で考えると分かりやすいです。担当者が替わっても、契約は会社のものとして続きます。機関には、役割による分け方があります。行政法の中心の課題は、国が私人に対してする行政作用、とりわけ行政処分を、法的に捉えることです。だから、処分をする機関を真ん中に置いて、その周りに、ほかの機関を並べる見方をとります。真ん中に置かれるのが、行政庁です。行政庁とは、行政主体のために意思を決定して、それを外部に表示する権限をもつ機関のことです。暗記する定義です。私人に対して、法律行為、とりわけ行政処分を、自分の名で行う権限を与えられた機関ともいえます。各省の大臣、都道府県知事、市町村長が典型です。

実際の事務は、多数の職員が行います。大臣や知事は、最後に確認をするだけ、ということも多いです。それでも、法律の上では、処分をしたのは行政庁です。ここが、一番つまずきやすいところです。その見分け方を教えます。条文の主語を見る、です。法律は、国と私人の関係を単純にするために、組織全体ではなく、1つの点を主語に置きます。その主語が、行政庁です。この読み方は、被告を決めるときや、処分の主体を特定するときに使います。ここは、論文でも論点になりうる部分です。では、前に主語・要件・効果に色分けして読んだ条文で練習します。

条文の主語を見て行政庁を特定する(建築基準法9条1項〔特定行政庁は、…命ずることができる〕=独任制/建築基準法2条35号〔建築主事を置く市町村ではその長・その他の市町村では都道府県知事〕/道路交通法84条1項〔公安委員会の運転免許〕=合議制・警察法38条2項〔5人または3人の委員〕/建築基準法6条1項〔建築主事等の確認〕=独任制) 図:条文の主語を見て行政庁を特定する

  • 建築基準法9条1項〔特定行政庁は、…命ずることができる〕=独任制
  • 建築基準法2条35号〔建築主事を置く市町村ではその長・その他の市町村では都道府県知事〕
  • 道路交通法84条1項〔公安委員会の運転免許〕=合議制・警察法38条2項〔5人または3人の委員〕
  • 建築基準法6条1項〔建築主事等の確認〕=独任制

1つ目は、建築基準法9条1項です。違反した建築物について、工事の施工の停止を命じることができる者は、特定行政庁、と書いてあります。この特定行政庁が、まさに行政庁です。建築主事を置く市町村では、その長が特定行政庁で、置かない町村では、都道府県知事です。冒頭の「なになに市長」は、これに当たります。2つ目は、運転免許です。条文を読みます。

条文道路交通法84条1項

道路交通法第84条第1項 自動車及び一般原動機付自転車(以下「自動車等」という。)を運転しようとする者は、公安委員会の運転免許(以下「免許」という。)を受けなければならない。

免許を与える主語は、公安委員会です。これも行政庁です。ただし、大臣や市長と違って、単独で決めるのではありません。警察法38条2項で、都道府県の公安委員会は、5人または3人の委員で組織されます。ここで、2つの型が出てきました。1人で担う型を、独任制といいます。大臣、知事、市町村長が、これです。複数の人が合議して、1つの行為をする型を、合議制といいます。公安委員会が、これです。合議制でも、実際の事務をこなすのは職員で、その点は同じです。3つ目は、建築確認です。建築基準法6条1項は、建築主事、または建築副主事の確認、と定めています。ここでは、職員が主語になっています。職員の多くは、次に見る補助機関です。しかし、法律が確認の権限を直接与えているなら、その職そのものが行政庁です。建築主事は、市町村の長が命ずる職員で、4条6項に定めがあります。

委員会という名前がついていれば、行政庁と考えてよいのですか。違います。名前では決まりません。委員会でも、自分の名で処分をする、合議制の行政庁があります。公安委員会です。一方、意見を述べるだけの機関もあります。審議会がそうです。名前ではなく、権限の中身、つまり、処分をするのか、意見を述べるのか、で見分けます。地方公共団体の側も、見ておきます。地方自治法の138条の4第1項は、普通地方公共団体には、執行機関として、長のほか、法律の定めるところにより、委員会または委員を置く、と定めています。この執行機関は、自治法での呼び名です。このうち処分の権限をもつものは、作用法の意味では、行政庁に当たります。教育委員会や選挙管理委員会が例です。種類と組織の中身は、地方の回で扱います。最後に1つだけ。行政庁になれるのは、人や合議体だけではありません。法人が行政庁になる例も、わずかにあります。たとえば、弁護士会が、弁護士に懲戒処分をする場合です。前回、指定確認検査機関が、建築確認では行政庁として扱われる、と見ました。同じ型の話です。このときは、弁護士会という法人そのものが、法律から処分の権限を直接与えられて、行政庁の席に座っている、と考えます。ここまでをまとめます。処分をするのは、条文が主語に置いた者、つまり行政庁です。多くは、法人の中の地位です。人でも、名前でもなく、条文の主語で見つけます。

補助機関と執行機関

補助機関と執行機関(補助機関=行政庁の意思決定を補助する機関〔職員の多く・副知事・副市町村長〕外部に対して自分の名で処分する権限はもたない/執行機関=実力行使を担う機関〔警察官・消防職員・徴税職員・自衛官・海上保安官〕/自治法上の「執行機関」とは別の意味) 図:補助機関と執行機関

  • 補助機関=行政庁の意思決定を補助する機関〔職員の多く・副知事・副市町村長〕外部に対して自分の名で処分する権限はもたない
  • 執行機関=実力行使を担う機関〔警察官・消防職員・徴税職員・自衛官・海上保安官〕
  • 自治法上の「執行機関」とは別の意味

行政庁の周りの機関に入ります。まず、補助機関です。補助機関とは、行政庁の意思の決定を補助する任務をもつ機関のことです。中央省庁や、県庁、市役所で働く職員の多くが、これに当たります。副知事や副市町村長も、補助機関です。地方自治法の167条1項には、「補助機関である職員」という言葉が、そのまま出てきます。補助機関は、行政庁の指揮と監督を受けながら、行政庁が権限を使うのを助けます。そして、外部に対して、自分の名で処分をする権限はもちません。冒頭の係員、課長、部長は、ここに入ります。ここで、冒頭の3つ目の問いに、先に半分答えておきます。争う相手は、書類を作った係員ではありません。係員は補助機関で、処分をする権限をもっていないからです。命令書は、市長という行政庁の処分として外に出ていて、その効果は、さきほど見たとおり、行政主体である市に帰属します。争う対象は、係員の作業ではなく、市長の処分なのです。誰を被告にするかは、最後に回収します。補助機関が決裁をしても、行政庁の名前で外に出る。この仕組みと、権限そのものを移す委任との違いは、次の回で扱います。次は、執行機関です。執行機関とは、実力を行使する機関です。警察官、消防職員、税金を取り立てる徴税職員、自衛官、海上保安官などです。代執行、直接強制、即時強制といった、実力の行使を担当します。直接強制は、義務を守らない人の体や物に、直接、力を加えること。即時強制は、義務を課す時間もない急場で、いきなり実力を使うことです。

ここに注意が1つあります。同じ執行機関という言葉でも、地方自治法の執行機関とは、別の意味です。自治法の執行機関は、長、委員会、委員のことで、138条の4第1項に出てきたとおりです。これは、今日の分類では、多くが行政庁に当たります。今日の執行機関は、実力行使をする機関の意味で、別の言葉です。ここで1問です。市の税務課の職員、市長、税の滞納処分で差押えに赴く徴税職員は、それぞれ何機関でしょうか。税務課の職員は補助機関で、市長は行政庁です。差押えに行く人は、実力を使うので、執行機関だと思います。同じ市役所の中でも、役割によって、機関の種類が分かれます。

諮問機関と参与機関

諮問機関と参与機関(A=行政庁/B=審議会/C=私人/A→B=諮問/B→A=答申〔拘束しない=諮問機関〕/同意・議決の場合 B→A=拘束する=参与機関/区別の基準は拘束力の有無) 図:諮問機関と参与機関

  • A=行政庁
  • B=審議会
  • C=私人
  • A→B=諮問
  • B→A=答申〔拘束しない=諮問機関〕
  • 同意・議決の場合 B→A=拘束する=参与機関
  • 区別の基準は拘束力の有無

ここで、また1問です。以前、審議会に諮問を経ても、処分が違法になりうるのは、どんなときだったか、覚えていますか?審議のやり方や答申に、重大な問題があったときでした。今日は、審議会という機関の位置づけを整理します。諮問機関とは、審議会や調査会のように、行政庁の諮問に応じて、意見を述べる機関です。意見は、行政庁を拘束しません。これに対して、参与機関とは、行政庁の意思の決定を拘束する、議決や同意を行う機関です。区別の基準は、拘束力の有無です。暗記してください。会社で考えると、契約を結ぶ権限をもつ部長が行政庁です。「念のため法務部に相談しておこう」の法務部が諮問機関で、意見を聞いても、従うかどうかは部長が決めます。社内の規則で「法務部の承認がなければ契約できない」となっていれば、法務部は部長を縛るので、参与機関です。

同じ審議会なのに、拘束するものとしないものがあるんですか。あります。同じ機関でも、扱う事務によって、諮問機関にも参与機関にもなります。たとえば、電波監理審議会です。審査請求の裁決をするときは、審議会の議決が、総務大臣を拘束します。条文はこうです。

条文電波法94条1項

電波法第94条第1項 総務大臣は、第九十三条の四の議決があつたときは、その議決の日から七日以内に、その議決により審査請求についての裁決をする。

総務大臣は、議決によって裁決をします。議決に従うしかないので、この場面の審議会は、参与機関です。一方、99条の11に定める事項では、総務大臣は審議会に諮問しますが、その答えに縛られません。同じ審議会でも、こちらは、諮問機関です。

建築審査会の2つの役割(建築基準法78条1項=①同意と審査請求の裁決の議決〔参与機関〕②特定行政庁の諮問に応じて重要事項を調査審議〔諮問機関〕/48条15項=特例許可は建築審査会の同意が要る〔原則・16項に例外〕) 図:建築審査会の2つの役割

  • 建築基準法78条1項=①同意と審査請求の裁決の議決〔参与機関〕②特定行政庁の諮問に応じて重要事項を調査審議〔諮問機関〕
  • 48条15項=特例許可は建築審査会の同意が要る〔原則・16項に例外〕

もっと身近な例が、建築審査会です。建築基準法の78条1項を読みます。

条文建築基準法78条1項

建築基準法第78条第1項 この法律に規定する同意及び第九十四条第一項前段の審査請求に対する裁決についての議決を行わせるとともに、特定行政庁の諮問に応じて、この法律の施行に関する重要事項を調査審議させるために、建築主事を置く市町村及び都道府県に、建築審査会を置く。

条文の中に、2つの役割が入っています。1つ目は、同意と、審査請求の裁決についての議決を行う役割です。これは、参与機関です。2つ目は、特定行政庁の諮問に応じて、重要事項を調査審議する役割です。これは、諮問機関です。同意の例を、もう1つ見ます。建築基準法の48条15項です。

条文建築基準法48条15項

建築基準法第48条第15項 特定行政庁は、前各項のただし書の規定による許可(次項において「特例許可」という。)をする場合においては、あらかじめ、その許可に利害関係を有する者の出頭を求めて公開により意見を聴取し、かつ、建築審査会の同意を得なければならない。

特例許可とは、たとえば住宅街には原則として建てられない工場を、例外として建ててよいと認める許可です。特定行政庁は、建築審査会の同意を得なければ、この特例許可を出せません。つまり、行政庁を拘束する形です。なお、16項に例外がありますので、原則として、と覚えてください。ここで1問です。審議会の同意を得なければ、許可してはならない、と書く条文の審議会は、諮問機関でしょうか、参与機関でしょうか。同意がないと許可できないので、参与機関です。一方で、諮問に応じて意見を述べる、とだけ書いてあれば、諮問機関です。見るのは名前ではなく、拘束するかどうかです。

審議会等の条文上の位置(国=国家行政組織法8条1項〔法律又は政令で合議制の機関を置ける=8条機関〕/地方=地方自治法138条の4第3項〔法律又は条例で執行機関の附属機関を置ける〕/私的諮問機関=法律・政令に基づかない) 図:審議会等の条文上の位置

  • 国=国家行政組織法8条1項〔法律又は政令で合議制の機関を置ける=8条機関〕
  • 地方=地方自治法138条の4第3項〔法律又は条例で執行機関の附属機関を置ける〕
  • 私的諮問機関=法律・政令に基づかない

では、こうした審議会は、法律のどこに根拠があるのでしょうか。国の場合は、国家行政組織法8条1項です。条文を読みます。

条文国家行政組織法8条1項

国家行政組織法第8条第1項 第三条の国の行政機関には、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律又は政令の定めるところにより、重要事項に関する調査審議、不服審査その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための合議制の機関を置くことができる。

骨格は、法律または政令の定めで、重要事項の調査審議や不服審査などをする、合議制の機関を置ける、です。この8条に基づく機関が、審議会等と呼ばれるものです。地方公共団体の場合は、自治法138条の4第3項です。

条文地方自治法138条の4第3項

地方自治法第138条の4第3項 普通地方公共団体は、法律又は条例の定めるところにより、執行機関の附属機関として自治紛争処理委員、審査会、審議会、調査会その他の調停、審査、諮問又は調査のための機関を置くことができる。ただし、政令で定める執行機関については、この限りでない。

骨格は、法律または条例の定めで、執行機関の附属機関として、審議会や調査会などを置ける、です。国では法律か政令、地方では法律か条例、という違いがあります。なお、法律や政令に基づかず、大臣の決裁などで置かれる諮問機関も、数多くあります。これを、私的諮問機関といいます。法律上の根拠をもたないことだけ、覚えておいてください。最後に、この分類が、何の役に立つのかを見ます。群馬中央バス事件です。前に適正手続の回で、名前と結論だけ触れました。バス会社が路線の免許を申請し、陸運局長が利害関係人や参考人から意見を聴く聴聞をし、運輸審議会が公聴会を開いて答申をしたうえで、運輸大臣が申請を退けた事件です。判決は、バス事業の免許について、運輸審議会は運輸大臣の諮問機関だと位置づけました。ここから見る点は3つです。諮問機関の位置づけ、諮問を経ることの重さ、そして、補助機関との違いです。

群馬中央バス事件〔判旨〕(運輸審議会=運輸大臣から独立した第三者的機関〔諮問機関〕/陸運局長=運輸大臣の純然たる補助機関/審議会が公聴会を開く場合、陸運局長の聴聞は簡略で補充的・従たる意義しかない=その瑕疵は取消事由にならない/諮問機関の審理・答申の過程の重大な法規違反は処分を違法にする) 図:群馬中央バス事件〔判旨〕

  • 運輸審議会=運輸大臣から独立した第三者的機関〔諮問機関〕
  • 陸運局長=運輸大臣の純然たる補助機関
  • 審議会が公聴会を開く場合、陸運局長の聴聞は簡略で補充的・従たる意義しかない=その瑕疵は取消事由にならない
  • 諮問機関の審理・答申の過程の重大な法規違反は処分を違法にする

1つ目から見ます。判決は、まず、こう述べました。

判例最判昭50・5・29 民集29巻5号662頁

群馬中央バス事件(諮問機関の位置づけ) 法は、運輸大臣が運輸審議会の決定を尊重すべきことを要求するにとどまり、その決定が運輸大臣を拘束するものとはしていないから、運輸審議会は、ひつきよう、運輸大臣の諮問機関としての地位と権限を有するにすぎないものというべきであるが

判決は、続けてこう述べます。

判例最判昭50・5・29 民集29巻5号662頁

群馬中央バス事件(諮問を経ることの重さ) 一般に、行政庁が行政処分をするにあたつて、諮問機関に諮問し、その決定を尊重して処分をしなければならない旨を法が定めているのは、処分行政庁が、諮問機関の決定(答申)を慎重に検討し、これに十分な考慮を払い、特段の合理的な理由のないかぎりこれに反する処分をしないように要求することにより、当該行政処分の客観的な適正妥当と公正を担保することを法が所期しているためであると考えられるから、かかる場合における諮問機関に対する諮問の経由は、極めて重大な意義を有するものというべく、したがつて、行政処分が諮問を経ないでなされた場合はもちろん、これを経た場合においても、当該諮問機関の審理、決定(答申)の過程に重大な法規違反があることなどにより、その決定(答申)自体に法が右諮問機関に対する諮問を経ることを要求した趣旨に反すると認められるような瑕疵があるときは、これを経てなされた処分も違法として取消をまぬがれないこととなるものと解するのが相当である。

決め手を整理します。答申は拘束しません。しかし、諮問を要求している趣旨は、行政庁に答申を十分に考慮させて、処分の適正さを担保することにあります。だから、諮問を経ない処分は違法で、諮問を経ていても、審理や答申の過程に重大な法規違反があれば、処分も違法として取り消されます。2つ目は、補助機関との違いです。同じ判決が、こう述べています。

判例最判昭50・5・29 民集29巻5号662頁

群馬中央バス事件(補助機関との違い) すなわち、運輸審議会が機構的に運輸大臣から独立した地位と構成をもつ第三者的機関であるのに対し、陸運局長は運輸大臣の純然たる補助機関であり、 …… そうすると、陸運局長の聴聞が右のような従たる意義しかもたない場合には、たとえその聴聞手続に瑕疵があつたとしても、最終的な運輸大臣の許否の決定自体を取り消さなければならないほどの違法があるものとするには足りないと解するのが相当である。

陸運局長は、運輸大臣の補助機関です。判決は、審議会への諮問で公聴会が開かれる場合には、陸運局長の聴聞に瑕疵があっても、それだけでは処分の取消事由にならない、としました。なぜか。この聴聞は、公聴会よりも簡略な手続で、補充的で、従たる意義しかもたないからです。これに対して、諮問機関は、大臣から独立した第三者の立場で審理させることで、処分の公正さを外から支えるために置かれています。だから、その審理に重大な瑕疵があれば、処分が違法になります。つまり、どの機関の手続かによって、瑕疵の重さが違うのです。分類は、暗記のためではなく、結論を分けるために使います。

もう1つの行政機関概念

2つの行政機関概念(作用法的行政機関概念=処分をする側〔行政庁〕から見て周りの機関を位置づける〔点としての地位〕/事務配分的行政機関概念=仕事の割り振りの単位となる組織体〔省・委員会・庁〕/現行法は両者を組み合わせて使う/読み方=処分をする話か、組織の話か) 図:2つの行政機関概念

  • 作用法的行政機関概念=処分をする側〔行政庁〕から見て周りの機関を位置づける〔点としての地位〕
  • 事務配分的行政機関概念=仕事の割り振りの単位となる組織体〔省・委員会・庁〕
  • 現行法は両者を組み合わせて使う
  • 読み方=処分をする話か、組織の話か

ここまでの行政機関は、処分をする行政庁から見て、周りの機関を位置づける見方でした。点としての地位を、並べていたのです。これを、作用法的行政機関概念といいます。処分をする側から見た機関、ということです。ところが、法律には、別の意味の行政機関があります。仕事の割り振りの単位としての組織体です。人の集まりとしての、組織全体を指します。これを、事務配分的行政機関概念といいます。国家行政組織法の3条2項を読みます。

条文国家行政組織法3条2項

国家行政組織法第3条第2項 行政組織のため置かれる国の行政機関は、省、委員会及び庁とし、その設置及び廃止は、別に法律の定めるところによる。

ここでの行政機関は、省と、委員会と、庁です。つまり、なになに省を、全体として行政機関と呼んでいます。この見方では、行政機関と呼ぶのは組織全体なので、大臣という1つの職は、それだけでは行政機関と呼ばれません。大臣は、その省を率いる立場の職です。作用法の見方では、同じ大臣が、行政庁という機関でした。物差しが違うので、呼び方が変わるのです。機関が地位であることは、どちらでも変わりません。

会社で見る2つの見方(営業部が担当する=組織全体=事務配分/値引きを決められるのは営業部長=1つの席=作用法) 図:会社で見る2つの見方

  • 営業部が担当する=組織全体=事務配分
  • 値引きを決められるのは営業部長=1つの席=作用法

会社でいえば、「営業部が新しい商品を担当する」と言うときの営業部は、仕事を割り振られた組織全体です。これに対して、「値引きを決められるのは営業部長だけ」と言うときは、決める権限をもつ1つの席を指しています。前者が事務配分の見方、後者が作用法の見方です。行政手続法の2条5号も、同じ組織体の意味です。国家行政組織法3条2項の機関などを挙げたうえで、これらの機関の職員で、法律上、独立に権限を行使することを認められた職員も含めています。作用法的な見方との接点です。そして、地方公共団体の機関も、議会を除いて、ここに含まれます。情報公開法の2条1項も、組織体の意味です。長い条文なので、骨格だけ読みます。まず、一号から三号です。

条文行政機関の保有する情報の公開に関する法律2条1項(一号から三号)

行政機関の保有する情報の公開に関する法律第2条第1項 この法律において「行政機関」とは、次に掲げる機関をいう。  一 法律の規定に基づき内閣に置かれる機関(内閣府を除く。)及び内閣の所轄の下に置かれる機関  二 内閣府、宮内庁並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四十九条第一項及び第二項に規定する機関(これらの機関のうち第四号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)  三 国家行政組織法(昭和二十三年法律第百二十号)第三条第二項に規定する機関(第五号の政令で定める機関が置かれる機関にあっては、当該政令で定める機関を除く。)

続きの、四号から六号です。

条文行政機関の保有する情報の公開に関する法律2条1項(四号から六号)

行政機関の保有する情報の公開に関する法律第2条第1項(続き)  四 内閣府設置法第三十九条及び第五十五条並びに宮内庁法(昭和二十二年法律第七十号)第十六条第二項の機関並びに内閣府設置法第四十条及び第五十六条(宮内庁法第十八条第一項において準用する場合を含む。)の特別の機関で、政令で定めるもの  五 国家行政組織法第八条の二の施設等機関及び同法第八条の三の特別の機関で、政令で定めるもの  六 会計検査院

骨格は、内閣に置かれる機関、内閣府や宮内庁、国家行政組織法の3条2項の機関、会計検査院などの、組織を並べている、です。情報を持っている、組織の単位を指しています。以前見た、政策の評価に関する法律の3条や、情報公開法の題名にも出てくる行政機関も、同じ組織体の意味です。大事なのは、どちらが正しいのか、ではないことです。現行法は、この2つを組み合わせて使っています。行政手続法の中でも、使い分けがあります。2号と6号を読みます。

条文行政手続法2条2号・6号

行政手続法第2条(2号・6号)  二 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。  六 行政指導 行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為又は不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいう。

行政手続法の使い分け(2号 処分=行政庁=作用法/6号 行政指導=行政機関=事務配分/見分け=処分の話か、組織の所掌・保有・窓口の話か) 図:行政手続法の使い分け

  • 2号 処分=行政庁=作用法
  • 6号 行政指導=行政機関=事務配分
  • 見分け=処分の話か、組織の所掌・保有・窓口の話か

処分は、行政庁の処分です。処分をする点が主語なので、作用法の見方です。行政指導は、行政機関がする指導です。指導は、処分のように、1つの点が権限を持っているとは限らず、組織としての任務や所掌事務の範囲で行うので、事務配分の見方です。1つの法律の中で、使い分けているのです。だから、条文を読むときの手順は、1つです。行政機関や行政庁という言葉を見たら、処分をする話か、それとも、組織としての所掌や、保有や、窓口の話か、を確かめます。前者なら行政庁の意味、後者なら組織体の意味です。練習問題です。4つ出します。まず、建築基準法9条1項の特定行政庁は、どちらの意味でしょうか。

命令を出す側なので、作用法の意味です。次に、国家行政組織法3条2項の省は、どうでしょうか。組織全体を指しているので、事務配分の意味です。3つ目、情報公開法2条1項の行政機関は、情報を持っている組織の単位なので、事務配分の意味です。4つ目、行政手続法2条2号の行政庁は、処分をする点なので、作用法の意味です。

今日のまとめ

今日のまとめ(①組織の編成は原則法律・細部は行政へ ②行政庁=条文の主語/周りに補助・諮問〔拘束するなら参与〕・執行機関 ③行政機関という語は作用法的と事務配分的の2つの意味) 図:今日のまとめ

  • ①組織の編成は原則法律・細部は行政へ
  • ②行政庁=条文の主語/周りに補助・諮問〔拘束するなら参与〕・執行機関
  • ③行政機関という語は作用法的と事務配分的の2つの意味

冒頭の命令書に戻ります。差出人の「なになに市長」は、建築基準法9条1項の特定行政庁で、行政庁です。書類を作った係員と、決裁した課長、部長は、補助機関です。係員を相手に争うのではありません。前の回で見た行政事件訴訟法11条1項のとおり、市長は市に所属する行政庁なので、処分の効果が帰属する市、つまり行政主体が、被告になります。前の回の会社のように、どこにも所属しない行政庁なら、行政庁自身が被告でした。分かれ目は、所属の有無です。市長が替わっても、市長は機関で、地位ですから、命令の効力は変わりません。市長が見ていないのに、市長の名前で出る仕組みは、次の回の、専決と委任です。持ち帰りは3つです。1つ目。組織の編成は、原則として法律で決めますが、細部は、行政に任せてよい。2つ目。行政庁は条文の主語で、周りに、補助機関、諮問機関、執行機関がいます。拘束するなら、参与機関です。3つ目。行政機関という言葉には、2つの意味があり、条文ごとに、処分の話か、組織の話かを確かめます。次の回は、機関どうしの関係です。上級の機関が下級の機関を指揮し、監督する仕組みと、権限を他の機関に任せる、委任、代理、専決を見ていきます。

参照条文

  • 日本国憲法65条
  • 日本国憲法73条(柱書・6号)
  • 道路交通法84条1項
  • 電波法94条1項
  • 建築基準法78条1項
  • 建築基準法48条15項
  • 国家行政組織法8条1項
  • 地方自治法138条の4第3項
  • 国家行政組織法3条2項
  • 行政機関の保有する情報の公開に関する法律2条1項(一号から三号)
  • 行政機関の保有する情報の公開に関する法律2条1項(四号から六号)
  • 行政手続法2条2号・6号

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