行政法ゼロから行政法#31

条例で決められること

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第2章 行政組織法 ㉛/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

規則で罰金は取れるか

みなと町の問い(A=町長/B=空き家の持ち主/C=浜辺で花火をする人/D=町議会/A→B=町長の規則で修理を命じる?/A→C=町長の規則で花火を禁止し違反者から罰金を取る?/D=この計画に関わっていない) 図:みなと町の問い

  • A=町長
  • B=空き家の持ち主
  • C=浜辺で花火をする人
  • D=町議会
  • A→B=町長の規則で修理を命じる?
  • A→C=町長の規則で花火を禁止し違反者から罰金を取る?
  • D=この計画に関わっていない

今日は、地方公共団体が自分でつくる決まり、条例を見ます。板は、海沿いのみなと町です。この町の浜辺では、夜になると花火をする人が増えて、燃えがらとごみが砂に残っています。町の奥には、屋根が落ちかけた空き家があって、近所の人が怖がっています。町長が言いました。「町長の規則で、空き家の持ち主に修理を命じよう。浜辺の花火は禁止して、守らない人からは罰金を取ろう」。気持ちはわかります。けれど、この進め方は、そのままでは通りません。空き家には国の法律との関係もありますが、それは次の回で触れます。今日は、持ち主に義務を課す例として使うだけです。通らない理由は2つあります。そして、通る形にするには、町は何をどう作ればよいのか。これが今日の話です。

今日の問い(①条例は何でも決められるのか/②人に命じる・罰を科す=なぜ条例でなければならないのか/③条例は誰が、どういう順で作るのか) 図:今日の問い

  • ①条例は何でも決められるのか
  • ②人に命じる・罰を科す=なぜ条例でなければならないのか
  • ③条例は誰が、どういう順で作るのか

問いは3つです。1つ目。条例は、何でも決められるのか。2つ目。人に命じたり、罰を科したりするのは、なぜ条例でなければならないのか。3つ目。条例は、誰が、どういう順で作るのか。持ち帰ってほしいのは、条文の番号ではなく、骨組みです。

条例で決められる範囲

決められること・決められないこと(決められる=浜辺の花火の禁止・空き家の管理・町の公園の使い方/決められない=外交や防衛などの国の事務そのもの・町の区域の外の出来事/法令に違反しない限りで/自治事務も法定受託事務も対象) 図:決められること・決められないこと

  • 決められる=浜辺の花火の禁止・空き家の管理・町の公園の使い方
  • 決められない=外交や防衛などの国の事務そのもの・町の区域の外の出来事
  • 法令に違反しない限りで
  • 自治事務も法定受託事務も対象

まず、条例とは何かです。条例は、地方公共団体が、自分の議会の議決でつくる決まりです。国の法律に対して、地方公共団体の自主法と呼びます。自主法とは、自分たちで決めて、自分たちの区域に適用する法、という意味です。憲法の回では、長や委員会の規則まで広く条例に含める見方も見ましたが、今日の条例は、議会が議決する狭い意味のものです。条例の出どころも、憲法の回で見ました。憲法94条が、地方公共団体は法律の範囲内で条例を制定できる、と定めていました。国の政令は、法律の委任がなければ、罰則も、国民の権利や義務にかかわる定めも置けません。条例は、制定そのものに、国の法令の委任が要りません。住民が選んだ議会が議決する、民主的な立法だからです。

条文地方自治法14条1項

地方自治法第14条第1項 普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。

骨格は、法令に違反しない限りにおいて、2条2項の事務に関し、条例を制定できる、です。枠は、2つあります。事務の枠と、法令の枠です。事務の枠から見ます。2条2項の事務は、憲法の回で見たとおり、地域における事務と、法律や政令で処理することとされた事務でした。ここで、事務の2区分の回で見た、自治事務と法定受託事務が効いてきます。どちらも地方公共団体の事務ですから、どちらについても条例を作れます。法定受託事務は国から任された事務ですが、戸籍の届出の受理のように、処理するのは町で、町の事務です。かつての機関委任事務、つまり長が国の機関として国の仕事をする制度では、条例の対象外でしたが、その制度はもうありません。

条例にできない事柄もあります。国の事務そのものは対象外です。外交や防衛は、国が国として行う事務で、町の事務ではないからです。境界で確かめます。みなと町が「浜辺で花火をしてはならない」と決めるのは、町の区域の問題ですから、条例の範囲内です。「外国と条約を結ぶ」と決めるのは、範囲外です。もう1つの枠は、法令に違反しない限りという部分です。これは、法律による行政の原理の、法律の優位の地方版です。条例は、法律や政令に負けます。何が違反にあたるかの判断の仕方は、次の回で詳しく見ます。最後に、条例の効力が及ぶ範囲です。条例は、その町の区域の中で、住民かどうかを問わず及びます。隣の町の人が、みなと町の浜辺で花火をすれば、みなと町の条例が適用されます。逆に、みなと町の住民が、隣の町の浜辺で花火をしても、みなと町の条例は及びません。区域の外の出来事だからです。

条例は人に付くのではなく、場所に付く決まりです。この性質を、属地的といいます。

義務を課すには条例が要る

法律による行政の原理の3つ、地方版(法規創造力=国は法律/地方は条例・優位=国は法律が命令に優先/地方は法令が条例に優先〔14条1項〕・留保=国は法律の根拠が要る/地方は条例の根拠が要る〔14条2項〕) 図:法律による行政の原理の3つ、地方版

  • 法規創造力=国は法律
  • 地方は条例・優位=国は法律が命令に優先
  • 地方は法令が条例に優先〔14条1項〕・留保=国は法律の根拠が要る
  • 地方は条例の根拠が要る〔14条2項〕

ここで、行政法の最初のほうで見た、法律による行政の原理を思い出してください。国民に義務を課して権利を制限するには、何が必要だと見ましたか?法律の根拠です。法律の留保でした。あの原理には、3つの内容がありました。法律の法規創造力と、法律の優位と、法律の留保です。条例は、この3つの地方版として読めます。

条文地方自治法14条2項

地方自治法第14条第2項 普通地方公共団体は、義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない。

骨格は、義務を課し、権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除いて、条例による、です。法律の留保の、地方版です。国では、国民の権利を制限するのに国会の法律が要りました。地方では、住民の権利を制限するのに、議会の条例が要ります。3つを並べます。留保は、この14条2項です。優位は、さっきの14条1項の、法令に違反しない限りにおいて、です。法規創造力は、法規、つまり人を法的に縛る一般的な決まりを作れるのは、地方では条例だ、という形で重なります。14条2項は、町が一般的な決まりで義務を課す場面にも、目の前の1人に命じる場面にも掛かります。だから、法規創造力と留保の両方が、地方では条例に重なります。

規則では足りません。規則は、町長が一人で決められるからです。条例は、議会の議決を通ります。住民の代表が公開の場で審議して、賛成を得る。住民に義務を課すなら、そこを通すべきだ、という考えです。要綱も同じです。要綱は、役所の内部の取り決めで、住民を法的に縛る力がありません。例外は、条文の中の、法令に特別の定めがある場合です。法律が直接、住民に義務を課している場合や、法律が規則に任せている場合がそうです。

条例と、規則・要綱の仕分け(義務を課す・権利を制限する→条例=花火の禁止・空き家の持ち主への修理の命令・浜辺の利用の許可制/義務を課さない→規則・要綱でも足りる=花火大会の開催・清掃キャンペーンの呼びかけ・「ごみは持ち帰りましょう」の看板/決め手=守らなかったとき町が法的に責められるか) 図:条例と、規則・要綱の仕分け

  • 義務を課す・権利を制限する→条例=花火の禁止・空き家の持ち主への修理の命令・浜辺の利用の許可制
  • 義務を課さない→規則・要綱でも足りる=花火大会の開催・清掃キャンペーンの呼びかけ・「ごみは持ち帰りましょう」の看板
  • 決め手=守らなかったとき町が法的に責められるか

みなと町に当てはめます。花火を禁止するのは、住民の自由を制限しますから、条例です。空き家の持ち主に修理を命じるのも、義務を課すので、条例です。一方、町が花火大会をひらく、清掃キャンペーンを呼びかける、といったことは、誰にも義務を課しません。規則や要綱でも足ります。境界のペアで確かめます。浜辺に「ごみは持ち帰りましょう」と看板を立てるのは、お願いです。規則や要綱でも足ります。「ごみは持ち帰らなければならない」と定めて、守らなければ制裁を科すなら、義務を課すので条例です。決め手は、守らなかったときに、町が法的に責められるかどうかです。ここは、論文でも論点になりえます。

罰則と、財産権・課税

条例で定められる罰——刑罰と過料の違い(刑罰=2年以下の拘禁刑・100万円以下の罰金・拘留・科料・没収→裁判所が刑事手続で科す/行政上の秩序罰=5万円以下の過料→長が科す/規則で置ける罰=過料まで) 図:条例で定められる罰——刑罰と過料の違い

  • 刑罰=2年以下の拘禁刑・100万円以下の罰金・拘留・科料・没収→裁判所が刑事手続で科す
  • 行政上の秩序罰=5万円以下の過料→長が科す
  • 規則で置ける罰=過料まで

次は罰です。町長は、守らない人から罰金を取ろう、と言いました。条例なら、どこまでの罰を置けるのでしょうか。

条文地方自治法14条3項

地方自治法第14条第3項 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、二年以下の拘禁刑、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。

骨格は、条例の中に、違反した者への罰を置ける。刑罰は、2年以下の拘禁刑、100万円以下の罰金、拘留、科料、没収。それとは別に、5万円以下の過料、です。刑罰の中身を一言ずつ。拘禁刑は、刑事施設に拘禁して、身体の自由を奪う刑です。罰金は、お金を納めさせる刑、科料は、それより少額のお金を納めさせる刑です。拘留は短い期間の拘禁、没収は物を取り上げる刑です。上限が条文に書いてあることに注目してください。これは、憲法の回の話とつながります。罪刑法定主義は、何が犯罪で、どんな刑かを、先に法で定めておく原則でした。条例で刑罰を定めてよいかについて、判例は、法律の授権、つまり法律が条例に任せることが要るが、相当な程度に具体的で限定されていれば足りる、としました。判例の立場に立てば、この14条3項が、まさにその授権にあたると読めます。刑の種類と上限を、法律が先に決めているからです。もう1つの罰が、過料です。過料は刑罰ではありません。行政上の秩序罰といって、行政の決まりを守らせるための、金銭の制裁です。刑罰と過料の違いは、誰が科すかです。刑罰は、裁判所が、刑事裁判の手続で科します。過料は、町長が科します。議会と長の回で見た149条の3号が、長の仕事として、過料を科すことを挙げています。過料の手続の中身は、後の回で見ます。

罰金も過料も、どちらも条例に置けます。軽い違反は過料にして、悪質なものは罰金にする、という使い分けができます。ただし、罰金を科すなら、町長ではなく、裁判所の手を通ります。町長が罰金を取るという発想は、条例にしても成り立たないことになります。次に、財産権です。たとえば、空き家の持ち主に、建物を修理する義務を課すのは、財産権の制限です。憲法29条2項は、財産権の内容は法律で定める、と書いています。けれど、条例でも制限できる、というのが通説でした。条例も、住民が選んだ議会がつくる民主的な立法で、土地ごとの事情にも機動的に応じられるからです。憲法の回で見たため池の堤とうでの耕作を禁じた条例の事件も、条例による規制が争われた例です。判決は、そもそも財産権の保障の範囲外の行為だ、という筋で決着させ、条例だから駄目だとは言いませんでした。

地方税の条例主義(地方税法3条1項=税目・課税客体・課税標準・税率その他賦課徴収は条例によらなければならない/国=法律/地方=条例/住民の請求の対象外〔住民の請求の回〕) 図:地方税の条例主義

  • 地方税法3条1項=税目・課税客体・課税標準・税率その他賦課徴収は条例によらなければならない
  • 国=法律
  • 地方=条例
  • 住民の請求の対象外〔住民の請求の回〕

条例で定めるものとして、課税もあります。

条文地方税法3条1項

地方税法第3条第1項 地方団体は、その地方税の税目、課税客体、課税標準、税率その他賦課徴収について定をするには、当該地方団体の条例によらなければならない。

骨格は、地方団体が地方税の税目、課税客体、課税標準、税率などを定めるには、条例によらなければならない、です。課税客体は、税をかける対象、課税標準は、税額を計算する元になる金額や数量、税率は、それにかける率です。空き家にもかかる固定資産税の税率も、町の税条例が定めています。国は、法律がなければ税をかけられません。租税法律主義で、憲法84条が定めています。この3条1項は、その地方版です。税は、住民の財産を直接取りますから、住民の代表の同意が要る、という趣旨でした。前の回の住民の請求で、地方税の賦課徴収に関する条例は、請求の対象外でした。負担を決める条例は、財政の根幹で、議会と長が責任を持つからです。ここで同じ線がつながっています。地方税法と条例がぶつかるときの話は、次の回で扱います。

条例ができるまで

条例ができるまで(A=議員/B=長/C=議会/D=住民/A→C=提案〔議員定数の12分の1以上の賛成〕/B→C=提案/(議会の委員会も所管事務について提案できる)/C→議決〔出席議員の過半数〕/C→B=議長が長に送付〔3日以内〕/B→公布〔送付から20日以内〕→施行〔公布の日から起算して10日を経過した日〕/例外=D→B 請求→C が決める・B 専決処分→C に事後の報告と承認) 図:条例ができるまで

  • A=議員
  • B=長
  • C=議会
  • D=住民
  • A→C=提案〔議員定数の12分の1以上の賛成〕
  • B→C=提案
  • (議会の委員会も所管事務について提案できる)
  • C→議決〔出席議員の過半数〕
  • C→B=議長が長に送付〔3日以内〕
  • B→公布〔送付から20日以内〕→施行〔公布の日から起算して10日を経過した日〕
  • 例外=D→B 請求→C が決める・B 専決処分→C に事後の報告と承認

条例は、どうやって生まれるのでしょうか。その前に、議会と長の回を思い出してください。条例を作ることを議決するのは、地方の誰の仕事でしたか?議会です。議会の議決事件の中に、条例の制定や改廃が入っていました。流れの骨格は、提案、議決、送付、公布、施行の順です。提案できるのは、まず長と議員です。長の仕事としては149条1号、議員の提案は112条が根拠で、議員定数の十二ぶんの一以上の賛成が要ります。このほか、議会の委員会も、その部門の事務について、議案を出せます。提案された案を、議会が議決します。議決は、特別の定めがなければ、出席議員の過半数で成立します。

条文地方自治法16条1項・2項・3項

地方自治法第16条第1項〜第3項 普通地方公共団体の議会の議長は、条例の制定又は改廃の議決があつたときは、その日から三日以内にこれを当該普通地方公共団体の長に送付しなければならない。 2 普通地方公共団体の長は、前項の規定により条例の送付を受けた場合は、その日から二十日以内にこれを公布しなければならない。ただし、再議その他の措置を講じた場合は、この限りでない。 3 条例は、条例に特別の定があるものを除く外、公布の日から起算して十日を経過した日から、これを施行する。

骨格は、議長が議決を長に送り、長が公布し、公布から一定の日数を経過した日に施行する、です。日数は板に書いてあります。覚えるのは、順番と、議会が決めて長が公布するという役割分担です。みなと町なら、議会が花火禁止の条例を可決すると、議長が町長に送り、町長が公布し、公布から10日を経てから施行されます。夏の浜辺に間に合わせたいなら、その日数を逆算して議会にかけることになります。公布は、決まった条例を住民に知らせる行為です。施行は、条例が実際に効力を持ち始めることです。公布と施行の間に日数を置くのは、住民が知る時間をつくるためです。条例に特別の定があれば、施行の日は別に決められます。

送付を受けたら、定めの日数以内に公布する義務があります。ただし書きに、再議その他の措置を講じた場合は別、とあります。長は、議会の議決に異議があるとき、再議に付して、もう一度考えてもらう道を持っていました。議会と長の回で見た道です。

通常の流れの2つの例外(①住民の制定改廃請求=請求しても決めるのは議会・条例を直接つくる権利ではない/②長の専決処分=議会が成立しない・特に緊急で招集する時間がない等のとき長が処分→次の会議で議会に報告して承認を求める・承認されなくても処分の効力はそれだけでは失われない/補助機関の専決とは別物) 図:通常の流れの2つの例外

  • ①住民の制定改廃請求=請求しても決めるのは議会・条例を直接つくる権利ではない
  • ②長の専決処分=議会が成立しない・特に緊急で招集する時間がない等のとき長が処分→次の会議で議会に報告して承認を求める・承認されなくても処分の効力はそれだけでは失われない/補助機関の専決とは別物

この通常の流れには、2つの例外があります。1つ目は、住民の請求です。前の回で見た、条例の制定改廃の請求です。ここで押さえるのは、請求があっても、決めるのは議会だということです。請求は、議題にのせる権利で、条例にする権利ではありません。請求のあとの審議や公布も、いま見た通常の流れをたどります。2つ目が、長の専決処分です。議会と長の回で名前だけ出た、議会が決めるはずのことを長が代わりに決める仕組みです。

条文地方自治法179条1項

地方自治法第179条第1項 普通地方公共団体の議会が成立しないとき、第百十三条ただし書の場合においてなお会議を開くことができないとき、普通地方公共団体の長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。ただし、第百六十二条の規定による副知事又は副市町村長の選任の同意及び第二百五十二条の二十の二第四項の規定による第二百五十二条の十九第一項に規定する指定都市の総合区長の選任の同意については、この限りでない。

骨格は、議会が成立しないとき、特に緊急で議会を招集する時間がないことが明らかなとき、議会が議決すべき事件を議決しないときなどは、長がその事件を処分できる、です。1項には、副知事や副市長の選任の同意などは除く、というただし書きが付いています。処分したあとの手続は、3項と4項にあります。

条文地方自治法179条3項・4項

地方自治法第179条第3項・第4項 3 前二項の規定による処置については、普通地方公共団体の長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない。 4 前項の場合において、条例の制定若しくは改廃又は予算に関する処置について承認を求める議案が否決されたときは、普通地方公共団体の長は、速やかに、当該処置に関して必要と認める措置を講ずるとともに、その旨を議会に報告しなければならない。

3項の骨格は、処分したら、次の会議で議会に報告して、承認を求める、です。4項は、承認されなかったときの定めで、このあと見ます。場面で考えます。台風が町を直撃して、議会が開けない中で、被災した人の手数料を免除する条例の改正を急ぎたい。議会の議決を待てないので、長が改正を決めます。これが、条例の専決処分です。無効にはなりません。承認が得られなくても、処分の効力は、それだけでは失われないと解されています。条文は、承認が得られなければ無効になる、とは定めていません。すでに手数料の免除を受けた人の扱いを、後からひっくり返すと混乱します。あとに残るのは、長の政治的な責任です。承認は、議会が長の判断をあとから点検する手続です。4項は、条例の制定改廃や予算の処置が承認されなかったとき、長は、必要と認める措置を講じて、議会に報告する、と定めます。たとえば、条例案を改めて議会に出し直す、といった措置が考えられます。名前の注意です。ここでの専決処分は、補助機関が長に代わって決裁する専決とは、名前が似ているだけの別物です。議会が決めるはずのことを、長が決める話です。

規則

条例・長の規則・委員会の規則の違い(条例=議会が作る・義務を課せる・刑罰も過料も可/長の規則=長が作る・長の権限に属する事務・条例の委任がなくても可・過料まで〔5万円以下〕/委員会の規則=委員会が作る・その権限に属する事務・法律の定めるところにより) 図:条例・長の規則・委員会の規則の違い

  • 条例=議会が作る・義務を課せる・刑罰も過料も可
  • 長の規則=長が作る・長の権限に属する事務・条例の委任がなくても可・過料まで〔5万円以下〕
  • 委員会の規則=委員会が作る・その権限に属する事務・法律の定めるところにより

町長の発言に出てきた規則を、見ます。

条文地方自治法15条1項・2項

地方自治法第15条第1項・第2項 普通地方公共団体の長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる。 2 普通地方公共団体の長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。

骨格は、長は、法令に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則を制定できる。規則には、5万円以下の過料を置ける、です。長の規則は、条例の委任がなくても、長の権限に属する事務について作れます。議会と長の回で見た二元代表制のとおり、長も住民が直接選ぶからです。町の公園の管理の細かい手順や、役場の事務の取扱いは、規則で足ります。制裁は、過料までです。刑罰は、規則には置けません。ここに、町長の発言が通らない、もう一方の理由があります。罰金は刑罰ですから、条例でなければ置けません。刑罰は、人の自由や財産を奪う、いちばん重い制裁です。何が犯罪かを町長一人で決められるとすると、議会の審議を通らないまま犯罪が生まれてしまいます。だから法律は、刑罰を置ける場所を、議会が議決する条例に限っています。

条文地方自治法138条の4第2項

地方自治法第138条の4第2項 普通地方公共団体の委員会は、法律の定めるところにより、法令又は普通地方公共団体の条例若しくは規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができる。

長の規則のほかに、委員会の規則もあります。骨格は、委員会は、法律の定めるところにより、法令や条例や規則に違反しない限りで、その権限に属する事務に関し、規則などを定められる、です。教育委員会の規則が、身近な例です。委員会は、長から独立した機関ですから、自分の権限の範囲で規則を持ちます。似ていますが、同じとは言い切れません。国の命令は、法律の委任がなければ、国民に義務を課せません。規則は、さっき見たとおり、長の権限の範囲なら委任なしで作れます。ただし、同じ事項を条例と規則が違う内容で定めたときは、条例が優先すると解されています。議会が条例で決める仕組みを、地方自治法が重んじているからです。条例が優先すると定めた条文はありません。義務を課す領域は、条例のものです。14条2項があるので、規則は、法令や条例が任せた場合を除いて、住民に義務を課せません。ここで、立ち止まって考えてください。町長は、花火を禁止して、守らない人から罰金を取ると言いました。町長の規則では通らない理由が、2つあります。何と何でしょうか。

1つ目は、人に義務を課すのは条例だからです。2つ目は、罰金は刑罰で、規則には過料までしか置けないからです。花火の禁止は条例で定める。その条例に罰を置くとき、刑罰なら裁判所を通り、過料なら町長が科す。これが、町長の発言を、通る形に直した姿です。

自主条例と委任条例

自主条例と委任条例の区別(自主条例=法律の委任なしに自治体の事務について作る・例=花火の禁止/委任条例=法律が「条例で定める」と任せた事項を定める・例=国民健康保険の保険料/委任条例は法律の下位法令の顔を持つ→委任の範囲を超えれば無効/割り切れない場合=墓地の経営の許可の要件など) 図:自主条例と委任条例の区別

  • 自主条例=法律の委任なしに自治体の事務について作る・例=花火の禁止
  • 委任条例=法律が「条例で定める」と任せた事項を定める・例=国民健康保険の保険料
  • 委任条例は法律の下位法令の顔を持つ→委任の範囲を超えれば無効
  • 割り切れない場合=墓地の経営の許可の要件など

最後に、条例の分け方を1つ見ます。自主条例と委任条例です。自主条例は、法律の委任なしに、地方公共団体が自分の事務について作る条例です。みなと町の花火の禁止条例が、その例です。委任条例は、法律が、この事項は条例で定める、と任せた事項を定める条例です。たとえば、国民健康保険法が、保険料の額などを条例で定めるとしています。委任条例は、法律の下位法令としての顔を持ちます。任せてくれた法律の範囲の中で作る条例だからです。範囲を超えれば、無効になります。自主条例で問題になるのは、法令にぶつかるかどうかです。委任条例で問題になるのは、委任の範囲に収まるかどうかです。超えたかの判断の仕方は、後の回で見ます。ただし、この二分法で割り切れない場合もあります。たとえば、墓地の経営の許可のように、法律は許可という枠しか定めていないのに、具体的な許可の要件を条例や規則で補うことが前提になっていると読める場合です。墓地の法律は、経営には許可が要る、とだけ定めて、どんな墓地なら許可するかは書いていません。そこで、住宅からの距離などの要件を、条例で決めている自治体があります。法的な性格には議論があるので、割り切れない場合がある、と知っておけば十分です。

旭川市の国民健康保険条例(A=条例〔保険料の総額の算定基準を定める〕/B=市長〔保険料率を決めて告示する〕/C=被保険者〔保険料を払う〕/A→B=率の決定と告示を任せる/B→C=保険料率を告示/問い=条例が率の数字を自分で書かなかったことは許されるか) 図:旭川市の国民健康保険条例

  • A=条例〔保険料の総額の算定基準を定める〕
  • B=市長〔保険料率を決めて告示する〕
  • C=被保険者〔保険料を払う〕
  • A→B=率の決定と告示を任せる
  • B→C=保険料率を告示
  • 問い=条例が率の数字を自分で書かなかったことは許されるか

委任条例の代表例を、判例で見ます。国民健康保険の保険料を、条例がどこまで決めておくべきか、が争われた事件です。国民健康保険は、市町村が運営する医療保険です。保険料は強制的に集められますが、租税そのものではありません。前の租税の回では、この判決の、憲法84条は、法律の根拠が要るという原則を税について厳しく明文化したものだ、という一節を見ました。今日は、その続きの部分です。事案を、わかりやすく置き換えます。旭川市の条例は、保険料の総額、つまり賦課総額の算定基準を、定めていました。見込みの費用から見込みの収入を引く、といった形です。けれど、保険料率、つまり実際の率の数字は、条例に書きませんでした。率を決めて告示することは、市長に任せたのです。条例が率の数字を自分で書かなかったことが、国民健康保険法や84条の趣旨に反しないか、が問題にされました。判決の文中の、法は国民健康保険法のこと、本件条例は旭川市の条例のこと、被上告人市長は旭川市長のことです。予定収納率は、保険料のうち実際に納められると見込む割合、告示は、役所が決めたことを公に知らせる形式です。判決の答えは、2段に分かれます。1段目で、条例がどこまで明確に決めておくべきかの物差しを立てます。2段目で、旭川市の条例をその物差しに当てます。

判例最大判平18・3・1 民集60巻2号587頁

84条は直接は適用されないが趣旨が及ぶ──では、どこまで明確に定めるか 市町村が行う国民健康保険は,保険料を徴収する方式のものであっても,強制加入とされ,保険料が強制徴収され,賦課徴収の強制の度合いにおいては租税に類似する性質を有するものであるから,これについても憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきであるが,他方において,保険料の使途は,国民健康保険事業に要する費用に限定されているのであって,法81条の委任に基づき条例において賦課要件がどの程度明確に定められるべきかは,賦課徴収の強制の度合いのほか,社会保険としての国民健康保険の目的,特質等をも総合考慮して判断する必要がある。

⭐ 論文で書く規範:規範(判例で立てる):委任条例で賦課要件をどの程度明確に定めるべきかは、賦課徴収の強制の度合いのほか、制度の目的・特質等を総合考慮して判断する (短答・論文共通)

読み方です。保険料は、強制加入で強制徴収ですから、租税に似ています。だから84条の趣旨が及びます。ただし、保険料の使い道は、国民健康保険の事業の費用に限られています。そこで、どこまで明確に書くべきかは、強制の度合いだけでなく、制度の目的や特質も合わせて、総合的に判断する。これが、判決の立てた枠です。厳しく見る材料と、緩く見る材料が、両方あります。租税に似ていることは厳しく、使い道が限られていることは緩く働きます。

判例最大判平18・3・1 民集60巻2号587頁

算定基準は条例、細目は市長の合理的な選択 このように,本件条例は,保険料率算定の基礎となる賦課総額の算定基準を明確に規定した上で,その算定に必要な上記の費用及び収入の各見込額並びに予定収納率の推計に関する専門的及び技術的な細目にかかわる事項を,被上告人市長の合理的な選択にゆだねたものであり,また,上記見込額等の推計については,国民健康保険事業特別会計の予算及び決算の審議を通じて議会による民主的統制が及ぶものということができる。そうすると,本件条例が,8条において保険料率算定の基礎となる賦課総額の算定基準を定めた上で,12条3項において,被上告人市長に対し,同基準に基づいて保険料率を決定し,決定した保険料率を告示の方式により公示することを委任したことをもって,法81条に違反するということはできず,また,これが憲法84条の趣旨に反するということもできない。

結論は、反しない、です。決め手は3つあります。1つ目。条例が、賦課総額の算定基準を、明確に定めていたこと。2つ目。市長に任せたのは、見込額の推計という、専門的で技術的な細目だけだったこと。3つ目。その推計は、予算と決算の審議を通じて、議会の民主的統制が及ぶこと。判決は、数字そのものは市長が決めても、その元になる見込額は、予算と決算の審議にかかる、と見ました。つまり、議会は、率の数字ではなく、その土台を毎年点検できます。ここから持ち帰る形は、条例が基準を定め、技術的な細目だけを長に任せるのは許される、です。逆に、基準まで丸ごと長に任せる形なら、この理由は使えず、さっきの総合考慮の物差しで、明確さが足りるかを一から量ることになります。ここも、論文でも論点になりえます。

問いの答えとまとめ

今日の答え(①決められる範囲=自治事務も法定受託事務も・国の事務そのものは不可・区域内なら誰にでも・法令に違反しない限り/②義務を課す・権利を制限する→条例〔14条2項〕・刑罰は条例・規則は過料まで/③議会が議決→長が公布→施行・例外は住民の請求と専決処分/④条例の種類=自主条例と委任条例〔委任の範囲が問題〕) 図:今日の答え

  • ①決められる範囲=自治事務も法定受託事務も・国の事務そのものは不可・区域内なら誰にでも・法令に違反しない限り
  • ②義務を課す・権利を制限する→条例〔14条2項〕・刑罰は条例・規則は過料まで
  • ③議会が議決→長が公布→施行・例外は住民の請求と専決処分
  • ④条例の種類=自主条例と委任条例〔委任の範囲が問題〕

冒頭の問いに戻ります。町長の、規則で修理を命じ、花火を禁止し、罰金を取る、という計画は、なぜ通らないのか。どう作ればよいのか。1つ目の問いの答えです。条例が決められるのは、自治事務と法定受託事務のどちらも含む、町の事務です。国の事務そのものは決められません。効力は、区域の中で、住民かどうかを問わず及びます。そして、法令に違反しない限りです。2つ目の問いの答えです。住民に義務を課して権利を制限するのは、条例です。法律の留保の地方版でした。罰は、条例なら刑罰も過料も置けて、刑罰は裁判所が、過料は町長が科します。規則は、過料までです。花火の禁止も、空き家の持ち主への命令も、町長の規則ではなく、条例で定める。これが、通る形です。3つ目の問いの答えです。条例は、長や議員などが提案して、議会が議決して、議長が長に送り、長が公布して、施行されます。例外が2つあって、住民の請求があっても決めるのは議会で、専決処分は、承認を得られなくても、効力は当然には失われないと解されています。最後に、自主条例は、法令にぶつからないかが問題になり、委任条例は、委任の範囲に収まるかが問題になる。旭川市の事件は、基準を条例が定め、細目だけを長に任せる形を認めました。

参照条文

  • 地方自治法14条1項
  • 地方自治法14条2項
  • 地方自治法14条3項
  • 地方税法3条1項
  • 地方自治法16条1項・2項・3項
  • 地方自治法179条1項
  • 地方自治法179条3項・4項
  • 地方自治法15条1項・2項
  • 地方自治法138条の4第2項

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