議会と長
印刷のコツ
プリンターでは次の設定がおすすめです。
- 用紙:A4 / 向き:縦
- 拡大縮小:「実際のサイズ」(フィット縮小しない)
- 両面印刷:オン、とじ方は「長辺をとじる」(左綴じ)
- モノクロ印刷OK(強調は色でなく太字なので白黒でも読めます)
第2章 行政組織法 ㉗/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
ねじれの市
図:ねじれの市
- A=住民
- B=市長〔改革派〕
- C=市議会〔反対派が多数〕
- D=予算案
- A→B=市長選で選ぶ
- A→C=市議会選で選ぶ
- B→C=予算案を出す
- C→B=否決する
国の組織を見終えたので、今日は地方の側、市や県の組織に入ります。ある市で、市長選と市議会選が同じ日に行われました。住民が選んだ市長は、改革を掲げる候補でした。ところが市議会では、改革に反対する会派が多数になりました。市長は、改革を盛り込んだ予算案を議会に出しました。結果は否決です。住民が選んだ人たちなのに、市長と議会がぶつかるんですか。そこが今日の入口です。国で同じことが起きるかを考えます。国の首相は、国会が指名します。つまり国会の多数派の代表です。首相の出した予算が、与党が多数の国会で否決される。これは普通は起きにくいですね。
市では、なぜ起きるんですか。先に一言で言うと、市では、住民が市長と議員を別々に選ぶからです。もうひとつ。起きてしまったとき、法律は誰にどんな手を残しているのか。答えは、長にも議会にも、相手に使える手が渡されている、です。中身を順に見ていきます。
図:今日の3つの問い
- ①市長と議会は、国の内閣と国会と同じ関係か
- ②市の行政は、全部、市長の下にあるか
- ③長と議会が対立したら、法律はどうほどくか/答えは順に1つずつ出して最後に全部を板に並べる
問いは3つです。1つ目。市長と議会は、国の内閣と国会と同じ関係でしょうか。2つ目。市の行政は、全部、市長の下にあるのでしょうか。3つ目。対立したとき、法律はどうほどくのでしょうか。答えは1つずつ出して、最後にまとめて板に並べます。
2つの自治が組織に現れる
図:2つの自治と今日の見方
- 団体自治=国から独立した団体が自分の事務を処理する→何が地方公共団体か、という種類の話
- 住民自治=住民の意思で決める→住民が選ぶ議会と長の話
- 憲法92条=組織及び運営に関する事項は地方自治の本旨に基づいて法律で定める→その法律の中心が地方自治法
憲法の回で、地方自治の本旨には2つの柱があると見ました。確認です。国からの独立を意味するのは、団体自治と住民自治のどちらでしたか?団体自治です。住民自治は、地方の政治を住民の意思で決める、という柱でした。団体自治は、地方公共団体が国とは別の団体として、自分の事務を自分で処理することでした。前の動画で読んだ自治法2条1項の、地方公共団体は法人、つまり独立の権利の主体になる団体だ、という定めと結びつきます。憲法92条は、地方公共団体の組織と運営は法律で定める、と言っていました。その法律の中心が地方自治法です。今日読む条文は、ほとんどが自治法です。今日の見方を決めます。団体自治は、地方自治が国から独立した団体に委ねられる、という柱でした。だから、どの団体が国とは別の地方公共団体として立っているのか、という種類の話に出てきます。住民自治は、地方自治が住民の意思に基づいて行われる、という柱でした。だから、その意思を受け止める、住民が選ぶ議会と長の話に出てきます。国とは別の家を構えても、その中身を住民が決めなければ地方自治にはなりません。2つがそろって初めて地方自治なので、組織もこの2つの目で見ていきます。
憲法が理念を言い、自治法が組織の形を決めています。
地方公共団体の種類
図:地方公共団体の種類
- 地方公共団体〔どれも法人〕
- 普通地方公共団体=都道府県・市町村
- 特別地方公共団体=特別区・地方公共団体の組合・財産区
- 1条の3
議会と長の前に、地方公共団体には何があるのかを整理します。団体自治の側の話です。種類は1条の3に書かれています。
条文地方自治法1条の3第1項・2項
地方自治法第1条の3 地方公共団体は、普通地方公共団体及び特別地方公共団体とする。 2 普通地方公共団体は、都道府県及び市町村とする。
地方公共団体は、普通と特別の2系統です。普通は都道府県と市町村です。3項の特別区と組合と財産区は、前の動画で条文を読みました。中身は、このあと1つずつ見ます。この3つが特別地方公共団体です。都道府県は市町村を包括する、と聞きました。県が上で、市が下ということですか。そう読みたくなります。ここがつまずきです。条文を読みます。
条文地方自治法2条3項・5項
地方自治法第2条第3項・第5項 3 市町村は、基礎的な地方公共団体として、第五項において都道府県が処理するものとされているものを除き、一般的に、前項の事務を処理するものとする。 5 都道府県は、市町村を包括する広域の地方公共団体として、第二項の事務で、広域にわたるもの、市町村に関する連絡調整に関するもの及びその規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものを処理するものとする。
骨格は、市町村は住民に最も身近な団体として地域の事務を一般的に処理する。都道府県は、広域にわたる事務と市町村の連絡調整と、一般の市町村では処理が適当でない事務を処理する、です。「包括する」は、区域を含むという意味です。上司という意味ではありません。ごみの収集や小学校の運営のような身近な事務は、まず市町村です。県道の管理や市と市の連絡調整は県です。担当が違うだけです。
図:都道府県と市町村
- A=都道府県〔法人〕
- B=市町村〔法人〕
- C=国の法務局〔国の機関〕
- A―B=横並びの別々の法人で役割が違う
- 国→C=国の一部
- 市町村は都道府県の出先ではない
- 2条6項=事務の処理で互いに競合しないようにする
境界のすぐ外を見ます。前の動画で、法務局は国の出先機関でした。国の機関ですから、法務大臣の下にある国の一部です。これに対して市は、県の出先ではありません。県とは別の法人で、市長は知事の部下ではありません。2条6項は、都道府県と市町村は事務を処理するときに互いに競合しないようにしなければならない、と言っています。上下の関係ではなく、役割分担です。事務の中身や国との関わり方は、別の回で扱います。法律上は同じ市で、普通地方公共団体です。ただし大都市の特例があります。人口50万以上で政令で指定された市を、指定都市と言います。都道府県が処理する事務の一部、たとえば児童福祉に関する事務を処理できます。中核市は人口20万以上で、特例の範囲が少し小さくなります。人口の数字は暗記しなくて構いません。大事なのは、特例を受けても市のままだということです。指定都市の区は、前の動画で読んだとおり法人ではありません。市の内部の組織です。区に代えて、区の長に任せる仕事を広げた総合区を置く道もあり、その長は市長が議会の同意を得て選任します。
図:特別区の言い方
- 法律上は特別地方公共団体で独立の法人
- 憲法93条2項の地方公共団体かは別の問い→判例は当たらないとした〔憲法の回〕
- 281条1項=都の区を特別区という
- 281条の2第1項=都は特別区を包括する広域の地方公共団体として一体的に処理が必要な大都市の事務も処理する
次は特別区です。東京の区のことです。281条1項と281条の2第1項を読みます。
条文地方自治法281条1項
地方自治法第281条第1項 都の区は、これを特別区という。
条文地方自治法281条の2第1項
地方自治法第281条の2第1項 都は、特別区の存する区域において、特別区を包括する広域の地方公共団体として、第二条第五項において都道府県が処理するものとされている事務及び特別区に関する連絡調整に関する事務のほか、同条第三項において市町村が処理するものとされている事務のうち、人口が高度に集中する大都市地域における行政の一体性及び統一性の確保の観点から当該区域を通じて都が一体的に処理することが必要であると認められる事務を処理するものとする。
骨格は、都の区が特別区です。都は特別区を包括する広域の団体として、県の事務に加えて、大都市として一体で処理する必要のある市の事務も処理する、です。ここでも包括は上下ではなく、役割の分担です。特別区は、基礎的な地方公共団体として身近な事務を処理します。特別区は、法律上は特別地方公共団体で、独立の法人です。ただし憲法93条2項の地方公共団体に当たるかは、法人かどうかとは別の問いで、判例は当たらないとしました。憲法の回で見たとおりです。法律で見る目と憲法で見る目を分けておきます。
図:組合と財産区
- 地方公共団体の組合=一部事務組合・広域連合〔284条1項〕
- 財産区=市町村及び特別区の一部で財産を有し若しくは公の施設を設けているもの〔294条1項〕
- 例=ごみ処理を複数の市で共同する一部事務組合
- 山林を持つ集落の財産区
- 町内会は地方公共団体ではない
残りの2つです。まず地方公共団体の組合です。284条1項は、一部事務組合と広域連合を挙げています。たとえば隣り合う3つの市が、ごみ処理場を別々に作ると無駄が大きい。そこで、ごみ処理の事務だけを共同で処理する団体を作ります。これが一部事務組合です。広域連合は、より広い範囲で計画をもとに事務を処理する団体です。組合は、参加した団体とは別の独立の法人です。前の動画の公共組合、たとえば土地区画整理組合とは別物です。あちらは特別の法律で人を組合員にする法人で、こちらは地方公共団体どうしが作る団体です。もうひとつは財産区です。市町村の一部の区域が、山林や公の施設を持っていることがあります。その財産の管理と処分のために、法律が認めた団体です。
町内会や自治会は、この仲間に入りますか。入りません。町内会は、市町村長の認可を受けると、権利を有し義務を負う団体になれます。けれども地方公共団体ではありません。行政組織の一部になるわけでもありません。練習です。政令指定都市の区と東京の特別区と広域連合のうち、特別地方公共団体で独立の法人はどれでしょうか。特別区と広域連合です。指定都市の区は市の内部の組織で、法人ではありません。ここまでで、地方公共団体の種類が整いました。次は、市長や知事と並ぶもうひとつの顔、議会です。
議会
図:議会のあらまし
- 議事機関〔89条1項〕=住民が選挙した議員で組織
- 議員の任期は4年〔93条1項〕
- 町村は条例で議会に代えて町村総会を置ける〔94条〕
- 議会の権限=議決〔96条〕・選挙〔97条1項〕・検閲検査〔98条〕・意見書〔99条〕・調査〔100条〕・長の不信任〔178条〕
議会から見ます。89条1項です。
条文地方自治法89条1項
地方自治法第89条第1項 普通地方公共団体に、その議事機関として、当該普通地方公共団体の住民が選挙した議員をもつて組織される議会を置く。
骨格は、普通地方公共団体には、議事機関として、住民が選挙した議員で組織する議会を置く、です。議事機関は、議論して物事を決める機関のことです。ここに住民自治が現れています。住民が直接選んだ人たちが、地域の重要なことを決めるのです。議員の任期は、93条1項で4年です。町村は、条例で議会を置かずに、選挙権のある人の総会を開くこともできます。町村総会です。これは憲法の回で見ました。国会は国権の最高機関で、立法権を持ちます。地方の議会は、そのような最高機関ではなく、その団体の議事機関です。条例は議会が決めますが、条例を執行するのは、長の役目です。議会が議決する事件の筆頭は、条例を作ることです。
図:議決事件
- 96条1項=次の事件を議決しなければならない〔一 条例を設け又は改廃すること/二 予算を定めること/三 決算を認定すること/四〜十五号まで全15号〕
- 96条2項=条例で議決事件を追加できる
議会が議決する事件は、96条1項に並んでいます。
条文地方自治法96条1項(柱書・1号〜3号。全15号)
地方自治法第96条第1項(抜粋) 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。 一 条例を設け又は改廃すること。 二 予算を定めること。 三 決算を認定すること。 …
骨格は、議会は条例の制定改廃と予算と決算の認定を議決する、です。全部で15号あります。4号以下には、一定額以上の契約を結ぶことや、財産の処分などが並びます。たとえば大きな工事の請負契約は、条例が定める基準を超えると、議会の議決が要ります。暗記は要りません。96条2項は、これらのほかにも、条例で議決事件を追加できると定めています。議会の仕事の範囲は、条例で広げられます。議決のほかに、議会は調べる権限も持っています。98条は、書類を検閲して、長や委員会の報告を求め、事務の管理と出納を検査することを認めています。99条は、国会や関係する行政庁に意見書を出せると定めています。そして100条1項です。
条文地方自治法100条1項
地方自治法第100条第1項 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により議会の調査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。次項において同じ。)に関する調査を行うことができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。
骨格は、議会は、その団体の事務について調査ができる。特に必要なときは、関係人の出頭と証言と記録の提出を請求できる、です。括弧書きは、調査の対象にしない事務の除外です。この調査のための委員会は、条文の番号から百条委員会と呼ばれます。請求を受けた人が正当な理由なく出頭しなかったり証言を拒んだりすると、100条3項に罰則があります。拘禁刑か罰金です。議会の調べる力は、そこまで強いということです。議員の懲罰と、その司法審査は、別の回で扱います。市長の出した予算案を、議会が直して可決することはできるんですか。97条2項です。
条文地方自治法97条2項
地方自治法第97条第2項 議会は、予算について、増額してこれを議決することを妨げない。但し、普通地方公共団体の長の予算の提出の権限を侵すことはできない。
読むとおりです。議会は予算を増額して議決しても構いません。ただし長の予算の提出の権限を侵すことはできません。
図:予算は誰が作るか
- 長=予算を調製し執行する〔149条2号〕・議案として提出する
- 議会=提出された予算案を議決する・増額修正はできる〔97条2項本文〕
- ただし長の提出の権限を侵す修正はできない〔ただし書〕
- 議会の招集は長が行う〔101条1項〕
ここで決め手を言います。予算を作って責任を持つのは、長の側です。149条2号が、予算の調製、つまり予算案を作ることと、その執行を長の仕事にしています。議会が予算を一から作ってしまうと、誰がその予算の責任を持つのか分からなくなります。議会は、長が出した予算案を議決で縛る立場です。境界をペアで見ます。長が出した図書館の予算の金額を、議会が増やして可決する。これは増額修正で、認められます。これに対して、長の予算案に無い新しい事業、たとえば長が計画していない市民ホールの建設費を、議会が丸ごと書き加える。予算の組み立てを議会が長に代わって決めることになり、長の提出の権限を侵すと考えられます。どこまでが侵害かは条文では決まらず、予算の趣旨を損なうかどうかで個々に判断します。
条文が先回りしています。101条1項は、議会を招集するのは長だと定めています。けれども、議長や議員の定数の4分の1以上の人は、長に、決まった時期に開く定例会とは別の、臨時会の招集を請求できます。長が20日以内に招集しなければ、議長が招集できる場合があります。長と議会が互いに握っている手は、ここにも出てきます。練習です。予算案を議会が増額して可決することはできるでしょうか。できないとすれば、何を侵すからでしょうか。増額はできます。ただし、長の予算の提出の権限を侵す増額はできません。議会は、議決する、調べる、長を辞めさせることもできる。けれど予算を出すのは、長の側です。
執行機関——長と委員会・委員
図:長に集中しつつ薄める
- A=住民
- B=長
- C=教育委員会
- D=選挙管理委員会
- E=議会
- A→B=選挙で選ぶ
- B⇢C・B⇢D=所轄の下・総合調整〔点線=指揮監督ではない〕
- C・Dの職権行使は長から独立
次は議会と並ぶもうひとつの顔、執行機関です。その前に、復習を1問。前の動画で、統轄と所轄は何が違うと言いましたか?統轄は、総合調整しながら指揮監督すること。所轄は、形式上の所属を示すだけで、職権行使への指揮監督は含みません。今日はこの所轄が、地方の組織を読む鍵になります。まず言葉です。執行機関には2つの意味があると前に言いました。今日の執行機関は自治法の意味の方、つまり長と委員会と委員です。実力行使を担う機関の方ではありません。138条の4第1項を読みます。
条文地方自治法138条の4第1項
地方自治法第138条の4第1項 普通地方公共団体にその執行機関として普通地方公共団体の長の外、法律の定めるところにより、委員会又は委員を置く。
骨格は、執行機関として、長のほかに法律により委員会または委員を置く、です。まず長の方から見ます。147条の、長は統轄し代表する、は前に読みました。次の148条です。
条文地方自治法148条
地方自治法第148条 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の事務を管理し及びこれを執行する。
長は、その団体の事務を管理して執行します。149条は、その事務の例を並べています。
図:長が担任する事務
議案の提出。予算の調製と執行。税を課して集める賦課徴収と、義務違反に金銭の制裁を科す過料。決算を議会の認定に付すこと。会計の監督。財産の管理。公の施設の設置と管理。証書や公文書の保管。そして9号の、その他の事務の執行です。9号は受け皿です。つまり、その団体の事務は原則として長のもの、という構えです。事務の原則を長に集める点が、国との違いです。国は各大臣が事務を分担管理して、内閣がそれを束ねました。地方は長が全体を統轄します。住民から見れば窓口が長の下にまとまっています。教育も福祉も道路も、1人の長の下で一緒に考えられます。これを総合行政と呼ぶことがあります。ただ、全部が長1人に集まると危ない仕事があります。市長の選挙を管理する選挙管理委員会が市長の部下なら、公正に管理できるでしょうか。教育の内容が市長が代わるたびに変わってよいでしょうか。市長自身の仕事を調べる監査が市長の部下で足りるでしょうか。そこで、長とは別に、独立した委員会や委員を置きます。これが執行機関の多元主義です。長への集中を、独立の委員会で薄める仕組みです。
図:委員会・委員の一覧
- 180条の5=全団体に置く:教育委員会
- 選挙管理委員会
- 人事委員会又は公平委員会
- 監査委員・都道府県に置く:公安委員会
- 労働委員会
- 収用委員会
- 海区漁業調整委員会
- 内水面漁場管理委員会・市町村に置く:農業委員会
- 固定資産評価審査委員会
- 暗記しない=教育・選挙・公安・監査の4例を押さえる
委員会の一覧は180条の5に並んでいます。板のとおりです。全団体に置くものに、教育委員会と選挙管理委員会と、人事委員会または公平委員会と、監査委員があります。都道府県に置くものに公安委員会などがあり、市町村に置くものに農業委員会などがあります。全部の名前は暗記しません。教育と選挙と公安と監査の4つを、例として押さえてください。独立しているなら、予算も自分で組むんですか。そこが落とし穴です。180条の6を読みます。
条文地方自治法180条の6
地方自治法第180条の6 普通地方公共団体の委員会又は委員は、左に掲げる権限を有しない。但し、法律に特別の定があるものは、この限りでない。 一 普通地方公共団体の予算を調製し、及びこれを執行すること。 二 普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。 三 地方税を賦課徴収し、分担金若しくは加入金を徴収し、又は過料を科すること。 四 普通地方公共団体の決算を議会の認定に付すること。
骨格は、委員会と委員は、予算の調製と執行、議案の提出、税の賦課徴収と過料、決算を議会の認定に付すこと、の4つの権限を持たない。ただし法律に特別の定めがあれば別、です。
図:委員会の独立と長の手
- 委員会が独立している=自分の職務についての判断
- 180条の6=委員会・委員は4つの権限を有しない〔予算の調製と執行/議案の提出/地方税の賦課徴収と過料/決算を議会の認定に付すこと〕ただし法律に特別の定があるものは別
- お金の財布と議会への提出は長の手を通る
- 財布が委員会ごとに分かれると市全体でいくら使うかを責任を持って決める人がいなくなる
つまり、委員会が独立しているのは自分の職務についての判断です。お金の財布と議会への提出は、長の手を通ります。なぜ委員会に財布を持たせないのか。財布が委員会ごとに分かれると、市全体でいくら使うかを、責任を持って決める人がいなくなります。議会のところで見たとおり、予算を作って責任を持つのは、長の側でした。委員会の独立は、お金の責任までは分けないのです。委員会は独立していても、バラバラでは行政になりません。それを束ねるのが138条の3です。
条文地方自治法138条の3第1項〜3項
地方自治法第138条の3第1項〜第3項 普通地方公共団体の執行機関の組織は、普通地方公共団体の長の所轄の下に、それぞれ明確な範囲の所掌事務と権限を有する執行機関によつて、系統的にこれを構成しなければならない。 2 普通地方公共団体の執行機関は、普通地方公共団体の長の所轄の下に、執行機関相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない。 3 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の執行機関相互の間にその権限につき疑義が生じたときは、これを調整するように努めなければならない。
図:委員会を束ねる138条の3
- 1項=執行機関の組織は長の所轄の下に系統的に構成
- 2項=執行機関は長の所轄の下に、相互の連絡を図り一体として行政機能を発揮
- 3項=権限に疑義が生じたときは長が調整するよう努める
骨格は、執行機関は長の所轄の下に系統的に構成する。執行機関は長の所轄の下に、相互に連絡して一体として行政機能を発揮する。長は、執行機関どうしの権限の疑義を調整するよう努める、です。
図:長が委員会に持つ手
- 所轄=形式上の所属・職権行使への指揮監督は含まない
- 長に認められる=総合調整〔138条の3第3項〕と勧告〔180条の4第1項〕
- 命令ではなく、調整と勧告
長が委員会に命令することはできません。147条で長は団体全体を統轄しますが、委員会との関係について、138条の3はわざわざ所轄と書き分けています。所轄は形式上の所属で、職権行使への指揮監督は含みませんでした。長に認められているのは総合調整です。138条の3第3項は、執行機関の間で権限に疑義が生じたときは、長が調整するように努めなければならない、と定めています。180条の4第1項は、委員会の事務局の組織や定数について、長が必要な措置を勧告できる、と定めています。命令ではなく、調整と勧告です。さらに138条の2の2です。
条文地方自治法138条の2の2
地方自治法第138条の2の2 普通地方公共団体の執行機関は、当該普通地方公共団体の条例、予算その他の議会の議決に基づく事務及び法令、規則その他の規程に基づく当該普通地方公共団体の事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負う。
骨格は、執行機関は、議会の議決に基づく事務も法令に基づく事務も、自らの判断と責任において誠実に管理し執行する義務を負う、です。長も委員会も同じです。議会が決めたから、長が言ったから、と言って責任を人に預けることはできません。
図:教育の場面
- 教科書その他の教材の取扱い=教育委員会の仕事〔180条の8〕・市長の所管ではない
- 教育の予算=長が議案を作って議会に出す〔180条の6〕・教育委員会は出せない
- 作るときは別の法律で教育委員会の意見を聴く
- 独立しているのに、お金は長の手を通る
ここまでをねじれの市に当てはめます。市長が教育委員会に、この教科書を使えと命じられるでしょうか。所轄は命令を含まないので、命じられません。180条の8は、教育委員会の仕事に、教科書その他の教材の取扱いを入れています。市長の所管ではありません。ただし教育の予算は、長が議案を作って議会に出します。180条の6のとおり、教育委員会はそれを出せません。作るときには、別の法律で教育委員会の意見を聴くことになっています。独立しているのに、お金は長の手を通る。180条の6の落とし穴が、教育の場面に出てきました。練習です。長が委員会に対して持っているのは、命令する権限でしょうか。総合調整の権限でしょうか。
総合調整の権限です。138条の3と180条の4です。2つ目の問いの答えが出ました。市の行政は、長を中心にまとまっています。けれども全部が長の下にあるわけではありません。長とは別に、独立した委員会があり、それを長の所轄の下で一体として束ねています。
二元代表制と議院内閣制
図:誰が誰を選ぶか
- 国=国民が衆議院・参議院の議員を選ぶ→国会が内閣総理大臣を指名する→内閣は国会に連帯して責任を負う
- 地方=住民が長を選ぶ・住民が議員を選ぶ〔どちらも直接〕→長と議会は別々の選挙・別々の任期
- 二元代表制〔首長制〕と議院内閣制
1つ目の問いに答えます。国の議院内閣制から整理します。国民は国会議員を選びます。国会が内閣総理大臣を指名します。内閣は国会に対して連帯して責任を負います。選ばれ方が、国会を経由してつながっています。地方は違います。17条を読みます。
条文地方自治法17条
地方自治法第17条 普通地方公共団体の議会の議員及び長は、別に法律の定めるところにより、選挙人が投票によりこれを選挙する。
骨格は、議員と長は選挙人が投票で選挙する、です。憲法93条2項も同じことを言っていました。長も議員も住民が直接選びます。これを二元代表制と呼びます。憲法の回で、地方は大統領制・首長制と呼ばれる仕組みに近い、と見ました。その仕組みを自治法の側から呼んだ名前です。二元代表制では、長と議会は別々の選挙で別々に選ばれます。任期も別です。長の任期も議員の任期も4年ですが、始まりの日は同じとは限りません。二元代表制がわかったところで、冒頭のねじれの市の問いに戻ります。市長と議員は別々の選挙で選ばれます。だから住民が、市長には改革派を、議会には反対派を選ぶということが、制度の上で起こりえます。国では、首相は国会の多数派から出るので、原則として起きにくい。市では、長と議会が別々に正統性を持っているので、食い違いうるのです。
図:国と地方の比較
- 長の選ばれ方=国は国会が首相を指名
- 地方は住民が直接選挙・議会との関係=国は内閣が国会の信任に依存
- 地方は別々の選挙・別々の任期・兼職=国務大臣の過半数は国会議員
- 長は議員と兼ねられない〔141条〕・不信任と解散=国は衆議院の内閣不信任と衆議院の解散〔憲法69条〕
- 地方は議会の長不信任と長の議会解散〔178条〕
比較の表を見ます。上から2つは、いま見たとおりです。3つ目は兼職です。141条を読みます。
条文地方自治法141条
地方自治法第141条 普通地方公共団体の長は、衆議院議員又は参議院議員と兼ねることができない。 2 普通地方公共団体の長は、地方公共団体の議会の議員並びに常勤の職員及び短時間勤務職員と兼ねることができない。
骨格は、長は国会議員とも地方議会の議員とも常勤の職員とも兼ねられない、です。長と議会は、人も分かれています。国は反対です。国務大臣の過半数は、国会議員でなければなりません。内閣と国会は、人も重なっています。練習です。市長が市議会議員を兼ねられるでしょうか。国務大臣が国会議員を兼ねられるでしょうか。市長は兼ねられません。国務大臣は兼ねられます。むしろ過半数は国会議員です。4つ目の違いに入る前に、復習を1問。憲法の回で見た、国の議院内閣制で、内閣不信任が可決されたら、内閣は何日以内にどうしなければなりませんか?
10日以内に衆議院を解散するか、総辞職しなければなりません。地方は、長と議会が別々に選ばれる点では国と違いますが、不信任と解散については、議院内閣制に近い仕組みを折衷的に取り入れています。憲法の回で、議院内閣制に近い仕組みが一部残ると言いました。その中身が次です。大統領制との違いも確認します。大統領制は、行政のトップを議会とは別に国民が直接選ぶ仕組みです。大統領制には、議会による不信任と、大統領による議会の解散がありません。地方は首長制を基調にしながら、不信任と解散の手を両方に持たせているのです。これが1つ目の問いの答えです。市長と議会は、国の内閣と国会と同じではありません。別々に選ばれ、別々の任期を持ちます。ただし対立をほどく手は用意されています。
長と議会の対立をほどく手
図:対立をほどく3つの手
- 再議=長が議決を突き返す〔長の手〕
- 不信任=議会が長を辞めさせる〔議会の手〕
- 解散=長が議会を解散する〔長の手〕
- 専決処分は別の回
3つ目の問いです。ねじれの市で議会が市長に反対したとき、法律は誰にどんな手を残しているのでしょうか。持ち帰るのは条文の番号ではなく、3つの型です。1つ目、長が議決を突き返す。再議です。2つ目、議会が長を辞めさせる。不信任です。3つ目、長が議会を解散する。解散です。再議から見ます。ねじれの市で、議会が、市長の進める再開発を止める条例を可決したとします。市長はその条例に異議がある。176条1項です。
条文地方自治法176条1項〜3項
地方自治法第176条第1項〜第3項 普通地方公共団体の議会の議決について異議があるときは、当該普通地方公共団体の長は、この法律に特別の定めがあるものを除くほか、その議決の日(条例の制定若しくは改廃又は予算に関する議決については、その送付を受けた日)から十日以内に理由を示してこれを再議に付することができる。 2 前項の規定による議会の議決が再議に付された議決と同じ議決であるときは、その議決は、確定する。 3 前項の規定による議決のうち条例の制定若しくは改廃又は予算に関するものについては、出席議員の三分の二以上の者の同意がなければならない。
骨格は、議決に異議があるとき、長は10日以内に理由を示して再議に付せる。再議の結果、同じ議決がされれば確定する。ただし条例と予算については、出席議員の3分の2以上の同意が要る、です。再議は長の側の手です。議会が再議を求めるのではありません。長が、もう一度考えてください、と議会に突き返すのです。決め手があります。もし再議決も過半数で足りるなら、最初の議決と同じ票で同じ議決が繰り返されるだけです。長の再議は何の意味も持たなくなります。3分の2を求めることで、再議を本当に重い異議申立てにしています。境界をペアで見ます。条例を再議決するとき、過半数では確定しません。3分の2以上が要ります。これに対して、条例や予算でない議決、たとえばある契約を結ぶことを承認する議決を再議決するときは、過半数で足ります。練習です。長が再議に付した条例の議決を、議会が出席議員の過半数で再び同じ内容で議決しました。確定するでしょうか。
条例だから3分の2が要ります。過半数では確定しません。3分の2に届かなければ、その条例の議決は確定しません。
図:義務的な再議
- 176条4項=議決又は選挙が権限を超え又は法令若しくは会議規則に違反すると認めるときは、長は理由を示して再議に付し又は再選挙を行わせなければならない
- なお違反すると認めるときは総務大臣又は都道府県知事に審査を申し立て〔5項〕→取り消す旨の裁定〔6項〕→出訴〔7項・8項〕
- 177条1項=義務に属する経費・非常災害の経費の削除減額は再議に付さなければならない
再議にはもうひとつの型があります。付すことができる場合ではなく、付さなければならない場合です。176条4項は、議決や選挙が権限を超えたり法令に違反したりすると認めるときは、長は理由を示して再議に付すか再選挙を行わせなければならない、と定めています。それでも違反だと認めるときは、5項から8項に、総務大臣や知事への審査の申立てと、裁判所への出訴の道があります。ここは骨格だけ押さえます。もうひとつ、177条です。
条文地方自治法177条1項〜3項
地方自治法第177条第1項〜第3項 普通地方公共団体の議会において次に掲げる経費を削除し又は減額する議決をしたときは、その経費及びこれに伴う収入について、当該普通地方公共団体の長は、理由を示してこれを再議に付さなければならない。 一 法令により負担する経費、法律の規定に基づき当該行政庁の職権により命ずる経費その他の普通地方公共団体の義務に属する経費 二 非常の災害による応急若しくは復旧の施設のために必要な経費又は感染症予防のために必要な経費 2 前項第一号の場合において、議会の議決がなお同号に掲げる経費を削除し又は減額したときは、当該普通地方公共団体の長は、その経費及びこれに伴う収入を予算に計上してその経費を支出することができる。 3 第一項第二号の場合において、議会の議決がなお同号に掲げる経費を削除し又は減額したときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決を不信任の議決とみなすことができる。
骨格は、法令により負担する義務の経費や、非常災害の応急復旧の経費や感染症予防の経費を議会が削ったときは、長は再議に付さなければならない、です。それでも削られたときは、義務の経費は長が予算に計上して支出できます。災害や感染症予防の経費は、その議決を不信任の議決とみなせます。理由ははっきりしています。法律が払わなければならないと決めた費用や、災害の復旧費用を議会が削ってしまうと、行政が成り立ちません。議会の議決権にも限界がある、ということです。扱いが分かれる理由は、こう整理すると分かりやすいです。義務の経費は払う中身が法令で決まっているので、長が自分で計上しても、議会の判断を奪うことにはなりにくい。災害や感染症予防の経費は何にいくら使うかに判断が入るので、長に押し切らせる形にはせず、不信任とみなして議会を解散し、住民に問う道を開いている、という見方です。再議の次は議会の手です。不信任と解散です。ねじれの市で予算案の否決が続き、議会の多数派が市長を辞めさせたいと考えたとします。178条です。
条文地方自治法178条1項〜3項
地方自治法第178条第1項〜第3項 普通地方公共団体の議会において、当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をしたときは、直ちに議長からその旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなければならない。この場合においては、普通地方公共団体の長は、その通知を受けた日から十日以内に議会を解散することができる。 2 議会において当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をした場合において、前項の期間内に議会を解散しないとき、又はその解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があり、議長から当該普通地方公共団体の長に対しその旨の通知があつたときは、普通地方公共団体の長は、同項の期間が経過した日又は議長から通知があつた日においてその職を失う。 3 前二項の規定による不信任の議決については、議員数の三分の二以上の者が出席し、第一項の場合においてはその四分の三以上の者の、前項の場合においてはその過半数の者の同意がなければならない。
骨格は、議会が長の不信任を議決すると、長は10日以内に議会を解散できる。解散しなければ、または解散後に初めて招集された議会で再び不信任の議決があれば、長は職を失う、です。
図:不信任と解散の流れ
- 議会が長の不信任議決〔議員数の3分の2以上が出席・その4分の3以上の同意〕→長は通知から10日以内に議会を解散できる→①解散しない→10日が過ぎた日に失職
- ②解散→選挙で新しい議会→初めて招集された議会で再び不信任〔3分の2以上が出席・過半数の同意〕→通知の日に失職
- 再び不信任がなければ長は続投
流れを板で確認します。不信任の議決は、議員数の3分の2以上が出席して、その4分の3以上の同意が要ります。議員40人の議会で全員が出席したなら、30人以上の賛成が要るという数です。かなり重い要件で、国の内閣不信任よりずっと重くなっています。なぜ国より重いのか。国の首相は国会が指名した人なので、衆議院で出席議員の過半数が不信任を決めれば足ります。地方の長は、住民が直接選んだ人です。その長を議会だけで辞めさせるのですから、入口を狭くしてあるのです。長には2つの道があります。解散しないなら、10日が過ぎた日に職を失います。解散すれば、住民が選び直した議会に判断を委ねることになります。新しい議会が最初に開かれたとき再び不信任を議決すれば、長は職を失います。今度は過半数の同意で足ります。
決め手は、住民の判断が入ったことです。最初の不信任は、前の選挙で選ばれた議会の判断です。解散で選挙をやり直して、それでも新しい議会が不信任を出すなら、住民の意思が議会の側にあると見てよい。だから要件が軽くなります。
図:国と地方の不信任
- 国=衆議院が内閣不信任を可決〔過半数〕→10日以内に衆議院を解散しない限り総辞職〔憲法69条〕
- 地方=議会が長を不信任〔3分の2出席・4分の3同意〕→10日以内に議会を解散しない限り失職〔178条〕
- 国は総辞職で責任をとる・地方は失職
国との違いを並べます。国は、衆議院が内閣を不信任すると、10日以内に衆議院を解散しない限り、内閣は総辞職します。出席議員の過半数で足ります。地方は、議会が長を不信任すると、10日以内に議会を解散しない限り、長は失職します。特別多数が要ります。国は内閣全体が総辞職して責任をとります。地方は長1人が失職します。長は1人で、内閣のような合議体ではないからです。ねじれの市に戻ります。議会が市長の進める再開発を止める条例を可決した。市長は10日以内に理由を示して再議に付す。議会が出席議員の3分の2以上で再び可決すれば、条例は確定し、市長は従います。予算案の否決が続いて行政が止まりそうなときは、議会が市長を不信任できます。市長は解散か失職かを選びます。議会の側にも市長の側にも、相手に使える手が用意されています。ほかにも道があります。議会が議決すべき事件を議決しないときなどに、長が代わりに処分する専決処分は、別の回で扱います。前の動画の専決は、補助機関が決裁して、外へは行政庁の名で出すだけで、権限は動きませんでした。専決処分は、議会が決めるはずのことを長が決める制度で、名前は似ていても別物です。住民が直接請求で議会の解散や長の解職を求める道もあります。これも別の回で扱います。これで3つ目の問いの答えが出ました。法律は、再議と不信任と解散という、互いに握り合う手を残しています。
3つの問いの答えとまとめ
図:3つの問いの答え
- ①二元代表制=長も議員も住民が直接選ぶ→ねじれが起きうる〔国は議院内閣制:国会が首相を指名〕
- ②執行機関の多元主義=長に集中しつつ、独立の委員会・委員を置く→長の所轄の下で一体として行政機能を発揮〔束ねるのは命令でなく総合調整〕
- ③再議・不信任と解散=長と議会が互いに握る手
冒頭の問いに戻ります。3つの問いに順に答えます。1つ目。市長と議会は、国の内閣と国会と同じ関係でしょうか。違います。国は、国会が首相を指名する議院内閣制です。地方は、長も議員も住民が直接選ぶ二元代表制です。だから、ねじれの市のように色が食い違うことが起こりえます。2つ目。市の行政は、全部、長の下にあるのでしょうか。長が全体を統轄する点で、国の分担管理と違います。けれども、選挙や教育や警察や監査のように、長に集中させては困る仕事は、独立した委員会や委員に任せています。これが執行機関の多元主義です。それを長の所轄の下で一体として束ねます。束ねる手段は、命令ではなく総合調整です。3つ目。対立したとき、法律はどうほどくのか。長には再議があります。条例や予算の再議決には3分の2が要ります。議会には不信任があります。3分の2が出席して4分の3の同意が要ります。長は10日以内に議会を解散できます。解散しなければ失職し、解散後の議会が再び不信任なら、やはり失職です。長と議会が別々に住民から選ばれる以上、ぶつかることは制度が織り込んでいます。そのうえで互いに使える手を、条文があらかじめ渡しているのです。
参照条文
- 地方自治法1条の3第1項・2項
- 地方自治法2条3項・5項
- 地方自治法281条1項
- 地方自治法281条の2第1項
- 地方自治法89条1項
- 地方自治法96条1項(柱書・1号〜3号。全15号)
- 地方自治法100条1項
- 地方自治法97条2項
- 地方自治法138条の4第1項
- 地方自治法148条
- 地方自治法180条の6
- 地方自治法138条の3第1項〜3項
- 地方自治法138条の2の2
- 地方自治法17条
- 地方自治法141条
- 地方自治法176条1項〜3項
- 地方自治法177条1項〜3項
- 地方自治法178条1項〜3項