行政法ゼロから行政法#29

国地方係争処理と訴え

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第2章 行政組織法 ㉙/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

納得できない県はどうするか

みなと県に届いた2通の文書(A=担当大臣/B=みなと県/C=子育て支援金〔県が独自に運営〕/D=旅券の交付〔県の窓口で処理〕/A→B=文書1 Cについて「運用の是正を求める」/A→B=文書2 Dについて「こう改めよと指示する」) 図:みなと県に届いた2通の文書

  • A=担当大臣
  • B=みなと県
  • C=子育て支援金〔県が独自に運営〕
  • D=旅券の交付〔県の窓口で処理〕
  • A→B=文書1 Cについて「運用の是正を求める」
  • A→B=文書2 Dについて「こう改めよと指示する」

県が、国から届いた文書にどうしても納得できないとき、どこで誰が決めるのでしょうか。今日は、この問いに答えます。板は、前回の終わりのみなと県です。担当大臣から2通の文書が届いています。1通目は、県が独自に運営している子育て支援金について、運用の是正を求める文書です。2通目は、県の窓口で処理している旅券の交付について、こう改めるよう指示する文書です。確認から入ります。前回の終わりに、大臣の手を強さの順に並べました。自治事務に対して、大臣が出せる一番強い手は何でしたか?是正の要求です。法定受託事務なら、その上の是正の指示があって、さらに代執行まで使えます。1通目が自治事務への是正の要求で、2通目が法定受託事務への是正の指示でした。今日は、その先を見ます。県が文書に納得できない場合があります。逆に、県が文書に従わない場合もあります。前者は県が国を争う場面で、後者は国が県を争う場面です。どちらも、手を出し合うだけでは終わりません。

最後に大臣が決めるわけではありません。国と地方公共団体は別々の行政主体で、上下の関係ではないと、前に見ました。上下でないなら、国が自分で自分の争いの判定者になるのは筋が通りません。だから、第三者が決める仕組みが用意されています。

今日の問い(③争いはどこで誰が決めるのか/出口は3本=地方から国へ〔審査の申出→国地方係争処理委員会→高等裁判所〕・国から地方へ〔不作為の違法確認の訴え・代執行訴訟〕・県と町の間〔自治紛争処理委員〕/審査の基準も事務で変わる) 図:今日の問い

  • ③争いはどこで誰が決めるのか
  • 出口は3本=地方から国へ〔審査の申出→国地方係争処理委員会→高等裁判所〕・国から地方へ〔不作為の違法確認の訴え・代執行訴訟〕・県と町の間〔自治紛争処理委員〕
  • 審査の基準も事務で変わる

前回は、2つの問いに答えました。今日の問いは、その続きの3つ目です。争いは、どこで誰が決めるのか。答えは、出口が3本あるという形で出ます。地方から国へ向かう道、国から地方へ向かう道、県と町の間の道です。最後に、実際の事件でこの道を一周してみます。

争いの出口——係争処理と訴え

出口は3本(A=国〔大臣〕/B=都道府県/C=市町村/D=国地方係争処理委員会/E=高等裁判所/B→D〔審査の申出〕・B→E〔訴え〕=地方から国へ(審査の申出→勧告→訴え)/A→E=国から地方へ〔不作為の違法確認訴訟・代執行訴訟〕/C→(自治紛争処理委員)→E=県と町の間) 図:出口は3本

  • A=国〔大臣〕
  • B=都道府県
  • C=市町村
  • D=国地方係争処理委員会
  • E=高等裁判所
  • B→D〔審査の申出〕・B→E〔訴え〕=地方から国へ(審査の申出→勧告→訴え)
  • A→E=国から地方へ〔不作為の違法確認訴訟・代執行訴訟〕
  • C→(自治紛争処理委員)→E=県と町の間

国の関与は、法律の根拠があって初めて使えるものでした。ただ、枠を決めるだけでは足りません。枠が守られているかを、誰かが判定しなければ、枠は絵に描いた餅になります。その判定の仕組みが、今日の3本の出口です。1本目は、地方から国へ。国地方係争処理委員会に審査を申し出て、そこで解決しなければ高等裁判所に訴える道です。2本目は、国から地方へ。県が従わないときに、大臣が高等裁判所に起こす、不作為の違法確認の訴えです。県が措置を講じないこと、つまり不作為が違法だと、裁判所に確かめてもらう訴えです。もう1つが、前回見た代執行の手順の中で、大臣が高等裁判所に裁判を求める訴えで、代執行訴訟と呼びます。3本目は、県と町の間。事件のたびに任命される、自治紛争処理委員が処理します。順に見ます。まず1本目の入口、委員会の根拠条文です。

条文地方自治法250条の7

地方自治法第250条の7 総務省に、国地方係争処理委員会(以下本節において「委員会」という。)を置く。 2 委員会は、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与のうち国の行政機関が行うもの(以下本節において「国の関与」という。)に関する審査の申出につき、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理する。

総務省に委員会が置かれ、国の行政機関が行う関与について、審査の申出を処理します。委員は5人で、両議院の同意を得て総務大臣が任命し、任期は3年です。数字の暗記は要りません。ここで持ち帰るのは、国の機関ではあっても、大臣とは別に置かれた第三者の機関だという点です。では、誰が、何について、委員会に申し出られるのでしょうか。

条文地方自治法250条の13第1項(号は…で省略)

地方自治法第250条の13第1項 普通地方公共団体の長その他の執行機関は、その担任する事務に関する国の関与のうち是正の要求、許可の拒否その他の処分その他公権力の行使に当たるもの(次に掲げるものを除く。)に不服があるときは、委員会に対し、当該国の関与を行つた国の行政庁を相手方として、文書で、審査の申出をすることができる。 …

長その他の執行機関は、公権力の行使に当たる国の関与に不服があるとき、文書で審査の申出ができます。申出の相手方は、関与をした国の行政庁です。期間もあります。

条文地方自治法250条の13第4項

地方自治法第250条の13第4項 4 第一項の規定による審査の申出は、当該国の関与があつた日から三十日以内にしなければならない。ただし、天災その他同項の規定による審査の申出をしなかつたことについてやむを得ない理由があるときは、この限りでない。

関与があった日から30日以内です。争いを長く宙に浮かせないための短い期間です。

審査の申出の読み取りどころ(①対象=公権力の行使に当たる関与〔是正の要求・是正の指示=措置を講じる義務を負う〕/助言・勧告は対象外〔従う義務がない〕②除外=代執行の手順の中の指示と代行〔高等裁判所の裁判で決着〕③自治事務・法定受託事務のどちらの関与でも申出できる=分かれるのは審査の中身/期間=関与があった日から30日以内) 図:審査の申出の読み取りどころ

  • ①対象=公権力の行使に当たる関与〔是正の要求・是正の指示=措置を講じる義務を負う〕
  • 助言・勧告は対象外〔従う義務がない〕②除外=代執行の手順の中の指示と代行〔高等裁判所の裁判で決着〕③自治事務・法定受託事務のどちらの関与でも申出できる=分かれるのは審査の中身
  • 期間=関与があった日から30日以内

読み取りどころが3つあります。1つ目。対象は、是正の要求や許可の拒否など、公権力の行使に当たるものです。公権力の行使に当たるとは、相手の同意がなくても、一方的に義務や効果を生じさせる、ということです。是正の要求や是正の指示を受けた県は、措置を講じる義務を負います。だから、みなと県の文書1と文書2は、どちらも申出の対象になります。一方、大臣からの助言や勧告は、従う義務がもともとありません。争う必要がないので、条文の文言どおり、対象に含まれません。2つ目は、除外があることです。省略した号の中に、前回見た代執行の手順のうち、勧告のあとに大臣が出す指示と、最後に大臣が知事に代わって行う代行が入っています。この指示は、2通目の是正の指示とは別のものです。是正の指示は申出の対象で、代執行の手順の中の指示は対象外です。代執行は、指示のあとに高等裁判所の裁判を挟む手続なので、争いはその裁判で決着します。委員会に先に行く必要がありません。3つ目は、自治事務と法定受託事務のどちらの関与でも、申出ができることです。申出ができるかは、事務の種類では分かれません。分かれるのは、次の審査の中身です。

条文地方自治法250条の14第1項

地方自治法第250条の14第1項 委員会は、自治事務に関する国の関与について前条第一項の規定による審査の申出があつた場合においては、審査を行い、相手方である国の行政庁の行つた国の関与が違法でなく、かつ、普通地方公共団体の自主性及び自立性を尊重する観点から不当でないと認めるときは、理由を付してその旨を当該審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関及び当該国の行政庁に通知するとともに、これを公表し、当該国の行政庁の行つた国の関与が違法又は普通地方公共団体の自主性及び自立性を尊重する観点から不当であると認めるときは、当該国の行政庁に対し、理由を付し、かつ、期間を示して、必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を当該普通地方公共団体の長その他の執行機関に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

自治事務の関与について、委員会は、違法でなく、かつ、自主性と自立性を尊重する観点から不当でもないと認めれば、そう通知して公表します。違法または不当と認めれば、国の行政庁に勧告します。ここでの勧告は、さっきの大臣からの勧告とは別のもので、必要な措置を講じるよう、委員会が国の行政庁に求めることです。

条文地方自治法250条の14第2項

地方自治法第250条の14第2項 2 委員会は、法定受託事務に関する国の関与について前条第一項の規定による審査の申出があつた場合においては、審査を行い、相手方である国の行政庁の行つた国の関与が違法でないと認めるときは、理由を付してその旨を当該審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関及び当該国の行政庁に通知するとともに、これを公表し、当該国の行政庁の行つた国の関与が違法であると認めるときは、当該国の行政庁に対し、理由を付し、かつ、期間を示して、必要な措置を講ずべきことを勧告するとともに、当該勧告の内容を当該普通地方公共団体の長その他の執行機関に通知し、かつ、これを公表しなければならない。

法定受託事務の関与は、違法かどうかだけを見ます。違法でなければ通知して公表し、違法なら勧告します。

審査の基準(自治事務の関与=違法・不当を審査〔自主性及び自立性を尊重する観点から不当かどうかも見る〕→違法でなく不当でない=通知・公表/違法又は不当=勧告/法定受託事務の関与=違法だけを審査→違法でない=通知・公表/違法=勧告/委員会は90日以内に審査〔250条の14第5項〕/勧告を受けた国の行政庁は勧告に即して必要な措置を講じ委員会に通知〔250条の18第1項〕) 図:審査の基準

  • 自治事務の関与=違法・不当を審査〔自主性及び自立性を尊重する観点から不当かどうかも見る〕→違法でなく不当でない=通知・公表
  • 違法又は不当=勧告
  • 法定受託事務の関与=違法だけを審査→違法でない=通知・公表
  • 違法=勧告
  • 委員会は90日以内に審査〔250条の14第5項〕
  • 勧告を受けた国の行政庁は勧告に即して必要な措置を講じ委員会に通知〔250条の18第1項〕

自治事務は違法と不当、法定受託事務は違法だけ。ここは、2つの事務を比べて問われやすいところです。理由を考えます。自治事務は、地方が自分で決める余地が大きい事務です。だから国の関与が、違法ではなくても、地方の自主性を不当に損なっていないかまで見ます。法定受託事務は、国が適正な処理を特に確保したい事務です。審査は、違法かどうかで線を引きます。みなと県の2通で言います。1通目の子育て支援金なら、大臣の要求が法律の範囲内でも、県が独自に決めた支給のやり方まで細かく揃えさせるものなら、不当として勧告されることがありえます。2通目の旅券の交付なら、同じように細かい指示でも、違法でない限り、勧告は出ません。手続の流れも押さえます。委員会は、申出から90日以内に審査します。勧告を受けた国の行政庁は、勧告に即して必要な措置を講じ、委員会に通知します。審査の申出を受けた委員会が、相当と認めるときは、自分から調停案を作って双方に示し、受け入れを勧めることもできます。練習です。自治事務の関与について、委員会が審査するのは違法性だけでしょうか。

違法に加えて、自主性と自立性を尊重する観点から不当かどうかも見ます。法定受託事務は違法だけです。委員会の結論に不服なら、次の段が裁判所です。

出口は3本(A=国〔大臣〕/B=都道府県/C=市町村/D=国地方係争処理委員会/E=高等裁判所/B→D〔審査の申出〕・B→E〔訴え〕=地方から国へ(審査の申出→勧告→訴え)/A→E=国から地方へ〔不作為の違法確認訴訟・代執行訴訟〕/C→(自治紛争処理委員)→E=県と町の間) 図:出口は3本

  • A=国〔大臣〕
  • B=都道府県
  • C=市町村
  • D=国地方係争処理委員会
  • E=高等裁判所
  • B→D〔審査の申出〕・B→E〔訴え〕=地方から国へ(審査の申出→勧告→訴え)
  • A→E=国から地方へ〔不作為の違法確認訴訟・代執行訴訟〕
  • C→(自治紛争処理委員)→E=県と町の間

委員会の先にあるのが、裁判所です。出口の図でいえば、県から高等裁判所へ進む矢印です。

条文地方自治法251条の5第1項(柱書)

地方自治法第251条の5第1項(柱書) 第二百五十条の十三第一項又は第二項の規定による審査の申出をした普通地方公共団体の長その他の執行機関は、次の各号のいずれかに該当するときは、高等裁判所に対し、当該審査の申出の相手方となつた国の行政庁(国の関与があつた後又は申請等が行われた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁)を被告として、訴えをもつて当該審査の申出に係る違法な国の関与の取消し又は当該審査の申出に係る国の不作為の違法の確認を求めることができる。ただし、違法な国の関与の取消しを求める訴えを提起する場合において、被告とすべき行政庁がないときは、当該訴えは、国を被告として提起しなければならない。

柱書の骨格は、審査の申出をした長その他の執行機関は、高等裁判所に、違法な国の関与の取消しなどを求める訴えを起こせる、です。どんな場合に起こせるかは、各号に並んでいます。

条文地方自治法251条の5第1項(各号)

地方自治法第251条の5第1項(各号) 一 第二百五十条の十四第一項から第三項までの規定による委員会の審査の結果又は勧告に不服があるとき。 二 第二百五十条の十八第一項の規定による国の行政庁の措置に不服があるとき。 三 当該審査の申出をした日から九十日を経過しても、委員会が第二百五十条の十四第一項から第三項までの規定による審査又は勧告を行わないとき。 四 国の行政庁が第二百五十条の十八第一項の規定による措置を講じないとき。

4つの場合を順に言います。委員会の結果や勧告に不服があるとき。国の行政庁の措置に不服があるとき。90日を過ぎても委員会が何もしないとき。国の行政庁が措置を講じないとき。求められるのは、違法な国の関与の取消しなどです。

条文地方自治法251条の5第3項

地方自治法第251条の5第3項 3 第一項の訴えは、当該普通地方公共団体の区域を管轄する高等裁判所の管轄に専属する。

この訴えは、その団体の区域を管轄する高等裁判所の専属です。みなと県なら、みなと県を管轄する高等裁判所です。

国の関与に関する訴え(原告=審査の申出をした長その他の執行機関/被告=関与をした国の行政庁/裁判所=その団体の区域を管轄する高等裁判所〔専属〕/提訴期間=原則として委員会の通知から30日以内〔申出は関与があった日から30日以内=数え始めが違う〕/提訴から15日以内に口頭弁論・上告期間1週間/機関どうしの争い=機関訴訟の例) 図:国の関与に関する訴え

  • 原告=審査の申出をした長その他の執行機関
  • 被告=関与をした国の行政庁
  • 裁判所=その団体の区域を管轄する高等裁判所〔専属〕
  • 提訴期間=原則として委員会の通知から30日以内〔申出は関与があった日から30日以内=数え始めが違う〕
  • 提訴から15日以内に口頭弁論・上告期間1週間
  • 機関どうしの争い=機関訴訟の例

要点は、委員会への申出が先にあることです。いきなり訴えるのではなく、委員会の手続を通ったあとで訴えます。被告は関与をした国の行政庁です。提訴の期間は、原則として、委員会から審査の結果などの通知があった日から30日以内です。申出の30日は関与があった日から、訴えの30日は委員会の通知から、と数え始めが違います。提訴から15日以内に口頭弁論の期日が開かれ、上告期間も1週間です。前回の代執行訴訟と同じく、ここも急がされています。取消しの判決は、関係する行政機関に対しても効力を持ちます。この訴えは、国の機関と地方の機関という、機関どうしの争いです。行政の機関どうしの権限をめぐる訴訟を、機関訴訟といいます。この訴えは、その具体例として挙げられますが、訴訟の類型の話は別の回で扱います。1本目の道は、これで終わりです。次は国から起こす道です。その前に、前回の確認をします。是正の要求と是正の指示は、それぞれどちらの事務に対して出せましたか?

是正の要求は自治事務で、是正の指示は法定受託事務です。どちらも、都道府県に対して各大臣が出します。では、そのどちらかを受けた県が、申出もせず訴えもせず、何もしなかったらどうでしょうか。大臣の側の道を見ます。

条文地方自治法251条の7第1項(柱書)

地方自治法第251条の7第1項(柱書) 第二百四十五条の五第一項若しくは第四項の規定による是正の要求又は第二百四十五条の七第一項若しくは第四項の規定による指示を行つた各大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、高等裁判所に対し、当該是正の要求又は指示を受けた普通地方公共団体の不作為(是正の要求又は指示を受けた普通地方公共団体の行政庁が、相当の期間内に是正の要求に応じた措置又は指示に係る措置を講じなければならないにもかかわらず、これを講じないことをいう。以下この項、次条及び第二百五十二条の十七の四第三項において同じ。)に係る普通地方公共団体の行政庁(当該是正の要求又は指示があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁)を被告として、訴えをもつて当該普通地方公共団体の不作為の違法の確認を求めることができる。

柱書の骨格は、是正の要求や指示をした各大臣は、高等裁判所に、県の不作為の違法の確認を求める訴えを起こせる、です。ただし、次の各号のいずれかに当たるときです。不作為とは、括弧書きにあるとおり、要求や指示を受けた団体が、相当の期間内に措置を講じなければならないのに、講じないことです。県は措置を講じる義務を負う、という前提が、ここに現れています。

条文地方自治法251条の7第1項(2号は…で省略)

地方自治法第251条の7第1項(1号) 一 普通地方公共団体の長その他の執行機関が当該是正の要求又は指示に関する第二百五十条の十三第一項の規定による審査の申出をせず(審査の申出後に第二百五十条の十七第一項の規定により当該審査の申出が取り下げられた場合を含む。)、かつ、当該是正の要求に応じた措置又は指示に係る措置を講じないとき。 二 …

1号は、県が審査の申出をせず、かつ、必要な措置も講じないときです。申出をしたのに勝てず、訴えも措置もしない場合は、省略した2号が受けます。同じ条の2項が、申出や訴えの期間が過ぎるまでは、大臣は提訴できないと定めています。県にも、争う機会を先に与える作りです。町の場合は、少し違います。前回の二層を思い出してください。町の自治事務に是正を求めるときは、大臣が県に指示して、県が町に求めるのでした。県が自分の判断だけで出せるのは、是正の勧告まででした。252条が定めていますが、条文は読みません。場面は2つです。1つは、大臣の指示を受けた県が、町の自治事務に是正の要求をした場面です。町が申出もせず従いもしないときは、大臣が県に提訴するよう指示し、県が町を相手に高等裁判所に訴えます。もう1つは、県が町の法定受託事務に是正の指示を出した場面です。町が従わないときは、指示をした県が自分で訴えます。出口の先が高等裁判所である型は同じです。

係争処理の通し(国の関与〔是正の要求・指示〕→県が措置を講じる/県が不服→審査の申出〔30日以内〕→委員会の審査〔90日以内〕→通知〔違法でない〕または勧告→国の措置→県が高等裁判所に国の関与に関する訴え〔通知から30日以内・専属〕/県が申出も訴えもせず措置も講じない→大臣が251条の7の訴え〔不作為の違法確認〕) 図:係争処理の通し

  • 国の関与〔是正の要求・指示〕→県が措置を講じる
  • 県が不服→審査の申出〔30日以内〕→委員会の審査〔90日以内〕→通知〔違法でない〕または勧告→国の措置→県が高等裁判所に国の関与に関する訴え〔通知から30日以内・専属〕
  • 県が申出も訴えもせず措置も講じない→大臣が251条の7の訴え〔不作為の違法確認〕

通しで見ます。大臣が是正の要求や指示を出します。県が従うなら、措置を講じて終わりです。県が不服なら、30日以内に審査の申出をします。委員会が90日以内に審査して、違法でないと通知するか、勧告します。県は、結果や国の措置に不服があるとき、高等裁判所に訴えます。県が申出も訴えもせず、措置も講じないときは、大臣が不作為の違法確認の訴えを起こします。地方に出口があり、国にも出口がある。両側から、争いが裁判所に届く形になっています。

県と町の間の出口(国と地方の係争処理と同じ型/設例=大臣の指示を受けた県が町道の管理について町に是正の要求→町が不服/都道府県の関与に関する争い→自治紛争処理委員〔251条・事件のたびに総務大臣または知事が任命〕→町長等は総務大臣に審査に付すことを求める申出〔251条の3〕→委員の審査・勧告→町が高等裁判所に都道府県の関与に関する訴え〔251条の6〕/常設の委員会5人と事件ごとの委員の違い) 図:県と町の間の出口

  • 国と地方の係争処理と同じ型
  • 設例=大臣の指示を受けた県が町道の管理について町に是正の要求→町が不服
  • 都道府県の関与に関する争い→自治紛争処理委員〔251条・事件のたびに総務大臣または知事が任命〕→町長等は総務大臣に審査に付すことを求める申出〔251条の3〕→委員の審査・勧告→町が高等裁判所に都道府県の関与に関する訴え〔251条の6〕
  • 常設の委員会5人と事件ごとの委員の違い

3本目は、県と町の間です。あおば町の町道の管理は自治事務でした。この管理について、さっきの二層のとおり、大臣の指示を受けたみなと県が、運用を改めるよう是正の要求をしたとします。町が納得できないとき、国地方係争処理委員会は出てきません。委員会が扱うのは、国の機関の関与だからです。県の関与に関する争いは、自治紛争処理委員が処理します。町長などは、審査に付すよう求める申出をします。委員の審査と勧告のあと、町は高等裁判所に、都道府県の関与に関する訴えを起こせます。国と地方の係争処理と同じ型で、国の機関が県の機関に替わっただけです。違うのは委員の置き方です。国地方係争処理委員会は常設の機関です。自治紛争処理委員は、事件のたびに任命される臨時の委員で、人数は3名です。この委員は、行政機関の回で、附属機関を置ける条文に、名前だけ出てきました。その中身が、ここで分かります。

前回の事件が通った経路(総務大臣の不指定の決定〔国の関与〕→市が250条の13第1項の審査の申出→委員会が250条の14第1項で勧告〔再検討して結果を通知せよ〕→大臣は再検討の結果として判断を維持〔250条の18第1項の措置〕→市が251条の5第1項2号の訴えを高等裁判所に提起→請求棄却→上告→最高裁が原判決を破棄して不指定の決定を取り消した/事案の経過の整理であり、判旨ではない) 図:前回の事件が通った経路

  • 総務大臣の不指定の決定〔国の関与〕→市が250条の13第1項の審査の申出→委員会が250条の14第1項で勧告〔再検討して結果を通知せよ〕→大臣は再検討の結果として判断を維持〔250条の18第1項の措置〕→市が251条の5第1項2号の訴えを高等裁判所に提起→請求棄却→上告→最高裁が原判決を破棄して不指定の決定を取り消した
  • 事案の経過の整理であり、判旨ではない

前回に読んだ、ふるさと納税の事件が、この出口をどう通ったかを流れ図にします。判旨ではなく、事案の経過の整理です。総務大臣が、ある市を制度の対象に指定しないと決める。これが国の関与です。市が、250条の13第1項の審査の申出をします。委員会が250条の14第1項で、再検討して結果を通知するよう勧告します。大臣は、再検討の結果として判断を維持しました。これが、勧告を受けた国の行政庁の措置です。市は、その措置に不服があるとして、251条の5第1項2号に基づき、高等裁判所に訴えました。請求は棄却され、市が上告します。最高裁は、原判決を破棄して、不指定の決定を取り消しました。判旨の部分は、前回読んだとおりです。ここでは、条文の1つ1つが、事件の1段階ずつに対応していることを見てください。大臣が自分で決着をつけたのではありません。委員会と裁判所という第三者を通って、決まりました。地方から国へも、国から地方へも、出口の先にいるのは第三者です。

実例で一周する——沖縄の2件

埋立承認取消しの経路(県知事が公有水面埋立ての承認を取り消す〔法定受託事務〕→国が代執行訴訟〔245条の8第3項〕→和解で取下げ→大臣が是正の指示〔245条の7第1項〕→県が審査の申出〔250条の13第1項〕→委員会が協議による解決を促す見解の決定→県は30日以内に251条の5の訴えを起こさず指示に従わない→大臣が251条の7第1項の訴え→請求認容) 図:埋立承認取消しの経路

国の側から起こす道が、実際に使われた事件を見ます。沖縄県の埋立ての事件です。県知事が、公有水面の埋立ての承認を取り消しました。公有水面とは、海や川のように、国が持つ公共の水面です。国がそこを埋め立てるときは、知事の承認が要ります。この承認は、法定受託事務です。国は、まず代執行訴訟を起こしましたが、和解で取り下げられました。次に、大臣が是正の指示を出しました。県は審査の申出をしました。委員会の結論は、違法でないという通知でも、勧告でもありませんでした。国と県が真摯に協議することが、解決への最善の道だ、という見解を、審査の結論とする決定です。県は、30日以内に高等裁判所へ訴えを起こさず、指示にも従いませんでした。そこで大臣が、251条の7第1項の訴えを起こしました。判旨を読みます。事実とは分けて、最高裁がここで述べたことだけを見ます。

判例最判平28・12・20 民集70巻9号2281頁

是正の指示 地方自治法245条の7第1項は、各大臣(内閣府設置法4条3項に規定する事務を分担管理する大臣たる内閣総理大臣又は国家行政組織法5条1項に規定する各省大臣)は、所管する法律又はこれに基づく政令に係る都道府県の法定受託事務の処理が法令の規定に違反していると認める場合に是正の指示をすることができる旨を定めるところ、その趣旨は当該法定受託事務の適正な処理を確保することにあると解される。 …… 各大臣は、その所管する法律又はこれに基づく政令に係る都道府県の法定受託事務の処理が法令の規定に違反していると認める場合には、当然に地方自治法245条の7第1項に基づいて是正の指示をすることができる。

判旨の読み方は2点です。1つ目。是正の指示の趣旨は、法定受託事務の適正な処理の確保です。2つ目。各大臣は、法令違反と認める場合には、当然に是正の指示ができます。当然に、と言える理由は、1つ目の趣旨にあります。法定受託事務は、国が適正な処理を特に確保したい事務でした。だから、法令違反と認めれば、ほかの条件を足さなくても、大臣は指示を出せます。ここで言えるのは、指示を出せることだけです。承認の取消しが違法だったかどうかは、別の問題で、別の回で扱います。手続の面も、判決は述べています。相当の期間は、国から起こす訴えの条文の括弧書きにあった言葉で、条文に何日とは書かれていません。この事件で指示が求めていたのは、承認の取消しを取り消すという、県の意思表示でした。しかも、前の代執行訴訟でも、承認の取消しが適法かどうかは既に争われていました。判決は、こうした経過を勘案して、指示から1週間が過ぎたことで、相当の期間が経過したとしました。結論は、大臣の請求を認める、というものでした。県は、委員会の決定を受けて、国に協議を申し入れていました。これについての判決の理由は短いものです。県は、指示された措置、つまり承認の取消しを取り消すことをしていない。だから不作為の違法は明らかで、協議を申し入れたことは結論を左右しない、というものでした。条文の作りから見ても、不作為の違法確認を止める道として用意されているのは、審査の申出と訴えで、協議の申入れはその中に入っていません。

出口の2本が両方使われた例(平28=国から地方へ〔251条の7の不作為の違法確認〕→請求認容/令3=地方から国へ〔サンゴ採捕の特別採捕許可をしない→大臣が是正の指示→県が審査の申出→委員会は違法でないと判断→県が251条の5第1項1号の訴え→高等裁判所が請求棄却→県が上告→最高裁も上告棄却・最高裁判決に2名の反対意見〕/「法令の規定に違反」の中身は裁量権の逸脱・濫用の判断になる) 図:出口の2本が両方使われた例

  • 平28=国から地方へ〔251条の7の不作為の違法確認〕→請求認容
  • 令3=地方から国へ〔サンゴ採捕の特別採捕許可をしない→大臣が是正の指示→県が審査の申出→委員会は違法でないと判断→県が251条の5第1項1号の訴え→高等裁判所が請求棄却→県が上告→最高裁も上告棄却・最高裁判決に2名の反対意見〕
  • 「法令の規定に違反」の中身は裁量権の逸脱・濫用の判断になる

もう1件、沖縄県のサンゴの採捕の事件があります。サンゴの採捕は、県の規則で全面的に禁止されていて、試験研究などのために知事から個別に許可を受けたときだけ、例外的に許されます。この許可を、特別採捕許可といいます。県が法定受託事務である特別採捕許可をしないでいたところ、大臣が是正の指示を出しました。県は審査の申出をして、委員会は、指示は違法でないと判断しました。県は、251条の5第1項1号の訴えを高等裁判所に起こしましたが、請求は棄却されました。県は上告しましたが、最高裁も上告を棄却しました。反対意見が2名付いているのは、この最高裁の判決です。先ほどの埋立ての事件は、国から起こす訴えでした。こちらは、県から起こす取消しの訴えです。出口の2本が、両方使われた例です。では、指示が法令の規定に違反しているかどうかは、どう決まるのか。判決は、特別採捕許可を出すかどうかは、専門技術的な知見を踏まえた知事の裁量に委ねられている、としました。裁量とは、法律が行政に任せた判断の幅です。幅の中の判断は違法になりません。幅を超えたり、濫用したりしたときに、規則と法律に違反することになり、そのとき初めて、是正の指示の要件である、法令の規定に違反している場合に当たる、とされました。裁量の中身は別の回で扱います。

問いの答えとまとめ

問い③の答え(地方から=審査の申出→国地方係争処理委員会→高等裁判所〔国の関与に関する訴え〕/国から=不作為の違法確認の訴え・代執行訴訟/県と町=自治紛争処理委員→高等裁判所/審査の基準=自治事務は違法・不当・法定受託事務は違法のみ) 図:問い③の答え

  • 地方から=審査の申出→国地方係争処理委員会→高等裁判所〔国の関与に関する訴え〕
  • 国から=不作為の違法確認の訴え・代執行訴訟
  • 県と町=自治紛争処理委員→高等裁判所
  • 審査の基準=自治事務は違法・不当・法定受託事務は違法のみ

冒頭の問いに戻ります。県が国の文書に納得できないとき、どこで誰が決めるのか。地方から国へは、30日以内の審査の申出から、国地方係争処理委員会の審査と勧告、そして高等裁判所への訴えへと進みます。国から地方へは、不作為の違法確認の訴えと、前回見た代執行訴訟です。県と町の間は、自治紛争処理委員が処理します。審査の基準は、自治事務が違法と不当、法定受託事務が違法だけでした。最初の2通の文書に戻ります。1通目の是正の要求も、2通目の是正の指示も、県は措置を講じる義務を負います。前回見た、大臣からの助言や勧告なら、従う義務はありませんでした。委員会が国に出す勧告とは、別のものです。県が納得できなければ、30日以内に審査の申出をして、委員会の審査、高等裁判所の訴えへと進めます。申出も訴えもせず、措置も講じなければ、大臣が不作為の違法確認の訴えを起こせます。国と地方は上下の関係ではないので、最後は、どちらの手でもない第三者が決める形になっていました。

参照条文

  • 地方自治法250条の7
  • 地方自治法250条の13第1項(号は…で省略)
  • 地方自治法250条の13第4項
  • 地方自治法250条の14第1項
  • 地方自治法250条の14第2項
  • 地方自治法251条の5第1項(柱書)
  • 地方自治法251条の5第1項(各号)
  • 地方自治法251条の5第3項
  • 地方自治法251条の7第1項(柱書)
  • 地方自治法251条の7第1項(2号は…で省略)

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