行政行為とは何か
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第4章 行政行為 ㊷/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
民間の会社がする確認も、処分なのか
図:設例
- 喫茶店の店主Bの建て替え確認
- この町には建築主事が置かれている→町の役場Aに確認を申請
- もう1つの道=民間の確認検査会社Cに申請
- どちらも法律では「処分」
- 引っかかり=処分の定式は国または公共団体が行う行為・株式会社は国でも公共団体でもない
設例の町には、建築の計画を確かめる担当者、建築主事が置かれているとします。ですからBは、町の役場Aに確認を申請できます。実は、Bには、もう1つ道があります。民間の確認検査会社、Cに申請することです。どちらの確認も、法律では、処分として扱われます。民間の会社の確認が処分になる点は、確かに引っかかるところです。前に読んだ処分の定式は、国または公共団体が行う行為、と言っていました。株式会社は、国でも公共団体でもありません。
図:3つの問い
- 設例=喫茶店の店主Bの建て替え確認〔この町には建築主事が置かれている/町の役場Aに出す・民間の確認検査会社Cに出す〕→どちらも法律では「処分」
- 問い1 民間の会社の確認を、なぜ処分と呼べるのか
- 問い2 学問の「行政行為」と法律の「処分」は言い換えなのか
- 問い3 通る人みんなに向けた決定は「具体的」に当たるのか
今日の問いは3つです。1つ目。民間の会社がする確認を、なぜ処分と呼べるのか。2つ目。学問の言葉の行政行為と、法律の言葉の処分は、同じ意味の言い換えなのか。前に、ほぼ重なる、と言いました。今日は、その重ならない部分を調べます。3つ目。道路を使い始める、という決定は、特定の誰かではなく、通る人みんなに向けたものです。それでも、決定が具体的である、と言えるのか。先に、答えの形を言います。3つとも、行政行為の定義と、法律の処分と、行政庁の範囲が、重なるけれど、ぴったりは一致しない、という話です。まず、行政行為という考え方そのものから入ります。
行政行為という考え方——契約との対比
図:契約と行政行為
- 私人どうし=契約〔両者の意思の合致・内容は当事者が決める〕
- 行政と私人=行政行為〔行政庁が一方的に規律・法律が中身を決める〕
- 例=町Aと店主Bの道路補修の契約・Bの営業許可
入る前に、法律の留保の回で見た話を思い出します。国民の自由を制限する行政活動に、法律の根拠が要る、という考え方は、何説でしたか?侵害留保説です。今日は、その考え方が、行政行為のどこに効くかを見ていきます。まず、私人どうしの関係です。Bが内装業者と、店の内装工事を頼む契約を結ぶとします。内容は、Bと業者が話し合って決めます。両方の意思が合致して、初めて契約が成立します。一方、行政と私人の関係は、これと違います。Bが営業の許可を受けるとき、許可の中身は、Bと役所の話し合いでは決まりません。法律が決めた基準に沿って、行政庁が決めます。この、行政庁が、法律にもとづいて、公権力の行使として、相手の権利や義務を一方的に決める行為の形が、行政行為です。行政活動の最も基本的な行為の形です。
町と店主の間でも、契約になる場合はあります。前に見た、町が道路の補修を、業者と契約で頼む場合です。これは、対等な契約です。同じ役所の活動でも、契約の形をとるか、行政行為の形をとるかで、扱いが変わります。
図:一方的に決める形と歯止め
- 理由=道路の安全・建物の安全・衛生は相手が嫌がっても同じ基準で進める・1人ずつ合意では成り立たない
- 歯止め①=国民を縛る内容は法律の根拠が要る〔侵害留保説の線〕
- 歯止め②=行政庁は法律の定めに従って決める(定めから外れてはならない)〔法律の優位〕
では、なぜ行政には、わざわざ一方的に決める形が用意されているのでしょうか。理由は、行政が担う仕事にあります。道路の安全、建物の安全、衛生。こうした公共の仕事は、相手が嫌がっても、同じ基準で、同じように進めなければなりません。1人ずつ合意を取り付けていたら、成り立たないのです。相手の権利を一方的に左右できる以上、歯止めが要ります。その歯止めが、法律の根拠です。国民を縛る内容の行政行為は、法律の根拠が要ります。これが、前に見た侵害留保説の線です。自由や財産を制限する行政行為には、必ず法律の根拠が要ります。そして、中身も、法律があらかじめ定めておきます。行政庁は、その法律に従って決めます。前に見た法律の優位です。
図:利益を与える行政行為と法律の根拠
- 許可のように利益を与える行政行為にも法律の根拠が要るか=説によって違う
- 侵害留保説=必須ではない
- 権力留保説=権力的な形式をとる以上、要る
- 境界のペア=営業を停止させる命令は必須・ささやかな補助は必須ではない
- 短答=常に法律の根拠が要るは誤り
1点、注意です。許可のように、相手に利益を与える方向の行政行為にも、法律の根拠が要るか。これは、説によって違います。侵害留保説なら必須ではありません。権力留保説なら、権力的な形式をとる以上、要ります。境界のペアにします。Bの店の営業を停止させる命令には、侵害留保説でも、法律の根拠が必須です。他方、町が地域の店に出す、ささやかな補助は、侵害ではないので、法律の根拠は必須ではありません。短答の誤り肢です。行政行為には、常に法律の根拠が要る、は誤りです。国民を縛る内容には要りますが、授益的な処分、つまり許可のように利益を与える処分の根拠は説によります。
効力は最初から備わる性質ではない
図:行政行為の効力3つ(仮の説明)
- 公定力=違法な疑いがあっても権限のある機関が取り消すまでは有効なものとして扱われる力
- 不可争力=一定の期間が過ぎると相手方から争えなくなる力
- 執行力=裁判所の判決を待たず行政庁が自分で義務の実現を図れる力
- 中身はこの章の続きでひとつずつ見る
この章を通して出てくる前提を、1つ置いておきます。行政行為の効力です。行政行為には、普通の契約にはない効力がある、と説明されます。代表が3つ。公定力、不可争力、執行力です。ここでは、仮の説明だけにします。公定力は、違法な疑いがあっても、権限のある機関が取り消すまでは、有効なものとして扱われる力。不可争力は、一定の期間が過ぎると、相手方から争えなくなる力。執行力は、裁判所の判決を待たず、行政庁が自分で義務の実現を図れる力です。中身は、この章の続きで、ひとつずつ見ます。
図:行政行為の効力は制度の反映
- 公定力←取消訴訟制度を定める行訴法
- 不可争力←出訴期間の規定
- 執行力←行政代執行法など
- かつては行政行為に最初から備わる特別な性質と説明された→今は法が仕組んだ個々の制度の反映
- 効力それぞれの中身は章の続き
今日押さえたいのは、効力の出どころです。かつては、行政行為には、法律に書いていなくても、最初から特別な効力が備わっている、と説明されました。国の権力だから、当然に強いのだ、という発想です。けれど、当然に強い、というのでは、法律の根拠が要る、という考え方と合いません。そこで、今日の理解は違います。効力は、行政行為に最初から備わった性質ではなく、法が仕組んだ、個々の制度の反映だと考えます。対応を見ます。公定力は、取消訴訟という制度の反映です。たとえば、Bの店に営業停止の命令が出て、Bは違法だと考えたとします。それでも、Bが取消訴訟を起こして、裁判所が取り消すまでは、命令は有効として扱われ、Bは店を閉めなければなりません。取り消されるまでは通用する、という仕組みが、公定力として見えているのです。不可争力は、出訴期間の規定の反映です。取消訴訟は、いつまでも起こせるわけではなく、起こせる期間が法律で区切られています。これが出訴期間です。期間が過ぎると訴えられなくなるので、争えなくなります。執行力は、行政代執行法などの反映です。前に、危ない建物の補強や取壊しを、命じられた人がしないとき、役所が代わりに行う、行政代執行を見ました。法律が、行政が自分で実現してよい場面と手続を決めているから、できるのです。ここから、答案に効く結論が出ます。効力を答案で言うときは、どの制度が根拠か、を言います。公定力があるから、で止めずに、取消訴訟の制度があるから、と書くのです。短答の誤り肢です。行政行為の効力は、行政行為に当然に備わる、は誤りです。法が仕組んだ制度の反映です。効力それぞれの中身は、この章の続きで見ます。
定義を5つの部品で読む
図:行政行為の定義の5つの部品
- 行政庁が
- 法律に基づき〔条例を含む〕
- 公権力の行使として=物差し3
- 直接・具体的に=物差し1・2
- 国民の権利義務を規律する行為=権利義務を生じさせたり範囲を確定したりすること
入る前に、前に見た話を確かめます。処分を見分ける3つの物差しは、何でしたか?国民の権利義務に直接関わるか、具体的に決めるか、そして、公権力か、です。公権力とは、法律が行政に、相手の同意がなくても一方的に決めてよい、と権限を与えている、ということでした。今日の定義は、この3つの物差しに、少し部品を足したものです。行政行為の定義は、こうです。行政庁が、法律に基づき、公権力の行使として、直接、具体的に、国民の権利義務を規律する行為。この言い方で覚えれば足ります。部品を数えます。1つ目、行政庁が。2つ目、法律に基づき。3つ目は、公権力の行使として。4つ目、直接、具体的に。5つ目、国民の権利義務を規律する。規律する、とは、権利義務を決めること、つまり、権利義務を生じさせたり、範囲を確定したりすることです。物差しとの対応は、こうです。直接、は物差し1。具体的に、は物差し2。公権力の行使として、は物差し3、一方的です。

部品には、それぞれ役目があります。第3章で見た5つの型と、型の外側の内部行為。このうち、行政行為ではないものを、落とす役目です。公権力の行使として、が落とすのは、契約です。契約は、同意が要るので、公権力ではありません。直接、が落とすのは、行政指導と内部行為です。指導は、応じるかどうかを相手が決めるので、権利義務に直接関わりません。内部行為は、役所の中の手続で、国民に直接関わりません。具体的に、が落とすのは、行政基準と行政計画です。あらゆる場合に当てはまるルールや、将来の方向を示す計画は、個別の場面を決めていません。本編の問いです。町が、公園の清掃を、民間の会社に契約で頼みました。これは行政行為でしょうか?
清掃を頼むのは、町にとって大事な仕事ですが、形が対等な契約なので、行政行為ではありません。ここで、前に全文を読んだ、ごみ焼却場の事件の定式を、部品に重ねます。
図:ごみ焼却場の事件の定式を部品に割る
- 公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち〔=行政庁・公権力の行使〕
- その行為によつて、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定する〔=直接・規律する〕
- ことが法律上認められているもの〔=法律に基づき〕
- 事案=東京都が私人との対等の契約でごみ焼却場を設置・設置計画案を都議会に出した行為は都の内部手続→処分に当たらない
- 判決は当時の行政事件訴訟特例法1条の「行政庁の処分」についての判断・最判昭39・10・29
定式は、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、直接国民の権利義務を形成し、または、その範囲を確定することが、法律上認められているもの、でした。公権力の主体たる国または公共団体、は、公権力を行使する立場の行政庁。直接国民の権利義務を形成し、範囲を確定する、は、直接、規律する。法律上認められている、は、法律に基づき。同じ内容を、処分の側から言った文です。東京都が、私人との対等な契約で、ごみ焼却場を設置し、設置計画案を都議会に出した事件です。判決は、都議会に出した行為は、都の内部の手続で、国民の権利義務に直接関わらない、として、処分に当たらないとしました。契約と内部行為、どちらも、さきほど落とした型です。この判決が見たのは、当時の法律の、行政庁の処分、という言葉でした。今の行政事件訴訟法では、取消訴訟の対象を定めた3条2項に、その言葉が受け継がれています。条文は、後で読みます。学問の定義と同じ中身を、最高裁が、以前からの判例として、判決の言葉で示しています。だから、行政行為の定義を学ぶとき、裏付けとして、まずこの判決が挙げられるのです。
3つの物差しに足す3点
図:3つの物差しに足す3点
- 1 具体的=相手が特定の人でなくてもよい〔人または対象の事実が特定されていればよい〕=一般処分
- 2 一方的=申請を待って出す許可でも一方的
- 3 ここまでの特徴は目安・最後は個別法の規定で決まる
3つの物差しに、新しく足すことが3つあります。これが、今日の問いの3つ目につながります。1つ目は、具体的に、の読み方です。前に、具体性とは、決定の及ぶ人や対象の事実が特定されていること、と見ました。ここで大事なのは、人または対象の事実、の、または、です。相手が特定の人でなくても、具体的になります。相手方を特定しない行政行為があり、一般処分と呼ばれます。たとえば、道路の供用開始です。前に、公物の回で、公用開始と呼んだものです。道路を、道路として使い始める、という決定です。これは、道路管理者が、公示という方法で行います。条文です。
条文道路法18条2項
道路法第18条第2項 2 道路管理者は、道路の供用を開始し、又は廃止しようとする場合においては、国土交通省令で定めるところにより、その旨を公示し、かつ、これを表示した図面を道路管理者の事務所において一般の縦覧に供しなければならない。ただし、既存の道路について、その路線と重複して路線が指定され、認定され、又は変更された場合においては、その重複する道路の部分については、既に供用の開始があつたものとみなし、供用開始の公示をすることを要しない。
図:一般処分の図
- A=道路管理者
- 特定の区間と時点を公示→通る人みんなに効果が生じる
- 対比=全部の道路にいつも当てはまるルール〔行政基準〕は、特定の区間・時点を決めていない
道路法は個別法なので、骨格だけ読みました。道路管理者は、供用を開始し、または廃止するときは、公示して、図面を、誰でも見られるようにしておく。この公示で、特定の区間が、特定の時点から、道路として使えるようになります。通る人は誰か分かりませんが、決定の対象になる事実、つまり、この区間を道路にする、は、はっきり特定されています。だから、具体的です。境界のペアにします。道路の供用開始は、この区間の道路を、この日から道路にする、という決定です。区間と時点が決まっていて、1度きりです。これは一般処分です。他方、道路の使い方についての一般的な定め、あらゆる道路に、何度でも当てはまるルールは、特定の区間も時点も決めていません。これは、行政基準で、具体的ではありません。決め手は、特定の事実に向けた決定か、繰り返し当てはまる定めか、です。相手が誰かは、決め手ではありません。一般処分の処分性の判断は、別の回で扱います。今日は、相手が不特定でも具体的でありうる、という点までです。
図:申請を待って出す許可は一方的か
- 申請を待って出す許可でも一方的
- 申請はきっかけにすぎない
- 許可の中身は法律が決めた基準で行政庁が決める
- 効果を生むのは許可という行政庁の行為
- 契約は両方の意思が合致して成立
2つ目は、一方的に、の読み方です。申請を待って出す許可でも、一方的です。前に、申請はきっかけにすぎない、と見ました。Bが営業許可を申請しても、許可の中身は、法律が決めた基準で、行政庁が決めます。Bが、期間を3年にしてほしいと頼んでも、交渉で変わりません。効果を生むのは、許可という行政庁の行為です。契約は、両方の意思が合致して成立します。ここが違います。ここで1問です。申請を待って出す許可は、一方的と言えますか?
図:ここまでの特徴は目安
- 最後は個別の法律の規定で決まる
- 例=指示や勧告・同じ名前でもある法律では処分で別の法律では当たらない
- Bの店の看板の指示=法律が義務を定めていれば処分の側・お願いにとどまれば行政指導
- 短答=相手方が特定されていない行為は行政行為でないは誤り・申請に基づく許可は一方的でないは誤り
言えます。申請はきっかけで、効果を生むのは、行政庁の行為だからです。3つ目は、目安のことです。ここまでの特徴は、一応の目安です。実際の事案では、最後は、個別の法律の規定で決まります。たとえば、指示や勧告です。同じ名前の行為でも、ある法律では処分に当たり、別の法律では当たらない、ということがあります。勧告の扱いは、別の回で見ます。Bの店で考えます。役所が、Bに、店先にはみ出した看板を片付けるよう、指示したとします。法律が、この指示に従う義務を定め、従わなければ営業停止にできる、と組み立てていれば、指示がBの義務を決めているので、処分の側です。法律にそういう定めが無く、お願いとして伝えただけなら、応じるかはBが決めます。こちらは行政指導です。名前は同じ指示でも、根拠の法律の組み立てで分かれます。短答の誤り肢です。相手方が特定されていない行為は行政行為ではない、は誤りです。一般処分があります。申請に基づく許可は一方的でない、も誤りです。
行政行為・行政処分・処分
図:3つの言葉の比較
- 行政行為=学問上の概念〔理論の観点・この語を使う法律は無い〕
- 処分=実定法上の概念〔制度の観点・行手法・行審法・行訴法・法律の解釈で決まる〕
- 許可・認可・免許・命令・禁止・更正・決定・裁決=個別法の名前
- 行政処分=第3章の型の名・中身は処分と同じ〔法律にも出てくる・例=地方自治法242条の2第1項2号=住民訴訟〕
問いの2つ目です。行政行為と処分は、同じ言葉の言い換えか。第3章で、ほぼ重なる、と言いました。今日は、その重ならない部分です。行政行為は、学問上の概念です。この言葉を使う法律はありません。法律に出てくるのは、別の名前です。許可、認可、免許、命令、禁止、更正、決定、裁決。個別の法律が、それぞれ好きな名前を使っています。名前はばらばらですが、学問が、それらに共通する性質を取り出して作った言葉が、行政行為です。そして、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法といった一般の法律は、別の言葉を使います。処分です。条文を見ます。
条文行政事件訴訟法3条2項
行政事件訴訟法第3条第2項 2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
行訴法は、取消訴訟の対象を、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為、と書き、これを処分と呼んでいます。行手法と行審法も、ほぼ同じ言い回しです。
条文行政手続法2条(柱書と2号。ほかの号は省略)
行政手続法第2条(柱書・2号) この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 二 処分 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
条文行政不服審査法1条2項
行政不服審査法第1条第2項 2 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(以下単に「処分」という。)に関する不服申立てについては、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
3つの法律が、同じ言葉で、処分を定めています。では、行政処分という言葉は、どうでしょうか。第3章で、行為の型の名前として使った言葉です。中身は、この処分と同じだと考えて構いません。法律の中にも出てきます。たとえば、地方自治法の住民訴訟、つまり、住民が自治体のお金の使い方などの違法を裁判で正す仕組みの規定に、行政処分たる当該行為の取消し、という言い方で出てきます。
図:行政行為と処分の観点
- 行政行為=行政の行為を理論として整理する観点
- 処分=取消訴訟・審査請求・行政手続の入口をどこに置くかという制度の観点
- 重なる典型=Bの営業許可
- ずれの出どころ=処分は法律の解釈で決まる〔行訴法3条2項〕
観点が違います。行政行為は、行政の行為を、理論として整理する観点の言葉です。処分は、取消訴訟や審査請求や行政手続の入口をどこに置くか、という制度の観点の言葉です。たとえば、Bの営業許可は、どちらの観点で見ても、行政行為であり、処分です。2つが重なるのは、こういう典型の場面です。そして、処分は、法律の解釈で決まります。ここに、ずれの出どころがあります。行訴法3条2項の後半を見てください。処分その他公権力の行使に当たる行為、とあります。
図:処分の範囲は広げられてきた
- もとは2つの範囲が一致していた
- 訴訟で国民を救済するため処分の範囲が広げられてきた
- 例=法律に基づいて人を施設に収容し続ける行為=権力的事実行為→取消訴訟で争えるよう処分として扱われることがある
- 処分性=論文で論点になりうる
- 短答=行政行為の語を使う法律がある・完全に一致するはともに誤り
前に、もとは2つの範囲が一致していたけれど、訴訟で国民を救済するために、処分の範囲が広げられてきた、と見ました。行政行為の定義にぴったり収まらない行為でも、国民を救済するために、公権力の行使に当たる行為として、処分と解釈される場合があります。たとえば、法律に基づいて、人を施設に収容し続ける行為です。収容は、相手に義務を命じる行為ではなく、実力で身体を押さえる事実の行為です。こうした行為を、権力的事実行為と呼びます。けれど、収容が続いているのに、やめさせるよう裁判で争う道が無ければ、相手は救われません。そこで、取消訴訟で争えるように、処分として扱われることがあります。中身は別の回で扱います。ですから、おおむね一致するが、一致しない場合がある。前に、ほぼ重なる、と言ったのは、そういう意味です。処分に当たることは、処分性がある、と言います。ある行為に処分性があるかを答案で検討するのは、論文で論点になりうるところです。当てはめは別の回で扱います。短答の誤り肢です。行政行為の語を使う法律がある、は誤りです。行政行為と処分は、完全に一致する、も誤りです。
私人が行う処分
図:定式と定義の主語
- 処分の定式の主語=国または公共団体
- 行政行為の定義の主語=行政庁
- 行政庁=行政主体のために意思を決定し外部に表示する権限をもつ機関・法律で権限を与えられた機関であれば民間でもよい
最初の問いに戻ります。入る前に、前に見た話を確かめます。行政庁とは、何でしたか?行政主体のために、意思を決定して、それを外部に表示する権限をもつ機関です。行政機関の回では、続けて、行政処分などを自分の名で行う権限を与えられた機関、とも言いました。注目は、この、与えられた、です。処分の定式の主語は、国または公共団体でした。でも、行政行為の定義の主語は、行政庁です。行政庁は、法律で権限を与えられた機関です。国や公共団体の職員とは限りません。法律が権限を与えれば、民間の者も、行政庁になれます。公の事務を民間に任せることは、現実に行われています。例が2つあります。1つ目は、Cの確認検査会社です。前に、行政主体の回で見た条文です。今日は、これを、定式の主語との食い違いに当てます。
条文建築基準法6条の2第1項
建築基準法第6条の2第1項 前条第一項各号に掲げる建築物の計画(前条第三項各号のいずれかに該当するものを除く。)が建築基準関係規定に適合するものであることについて、第七十七条の十八から第七十七条の二十一までの規定の定めるところにより国土交通大臣又は都道府県知事が指定した者の確認を受け、国土交通省令で定めるところにより確認済証の交付を受けたときは、当該確認は前条第一項の規定による確認と、当該確認済証は同項の確認済証とみなす。
図:指定した者の確認は「みなす」
- 建築基準法6条の2第1項=指定した者の確認を受け確認済証の交付を受けたとき、その確認は建築主事の確認と「みなす」
- みなす=実際は違っても法律上は同じ扱いにする
- 会社Cの確認=町の建築主事の確認と同じ扱い→処分
- 行政庁は法律で権限を与えられた機関→会社も行政庁としてこの処分をする
個別法なので、骨格だけ読みました。建築の計画が、基準に適合することについて、国土交通大臣または都道府県知事が指定した者の確認を受け、確認済証の交付を受けたときは、その確認は、建築主事の確認とみなす、です。ここでいう計画は、建築主事が確認する対象の建築物の計画です。みなす、は、実際は違っても、法律上は同じ扱いにする、という意味です。会社Cの確認は、町の建築主事の確認と、同じ扱いです。会社の確認は、処分になります。行政庁の確認と同じ扱いなので、確認を拒否された場合は、会社が行政庁としておこなった処分です。ここまでは、行政主体の回で見たとおりで、取消訴訟の被告も、その会社でした。冒頭の、定式の字面との食い違いも、これで解けます。会社の確認は、法律の上では、町の建築主事の確認、つまり、公共団体の確認と同じ扱いです。そして、行訴法3条2項の条文が言うのも、行政庁の処分でした。行政庁は、法律で権限を与えられた機関なので、会社も、行政庁としてこの処分をするのです。例を見ます。
図:私人が行う処分の関係図
- A=町〔役場・建築主事〕
- B=店主
- C=民間の確認検査会社〔指定確認検査機関〕
- D=公民館を運営する民間の団体〔指定管理者〕
- B→C 確認の申請→C→B 確認済証〔建築主事の確認とみなす〕
- B→D 会議室の使用許可の申請→D→B 許可・不許可〔審査請求は町の長へ〕
- 建築基準法4条=建築主事を置く〔政令で指定する人口25万以上の市と都道府県は必ず置く・ほかの市町村は置くことができる〕
図で整理します。BがCに確認を申請し、Cが確認済証を交付します。この確認は、みなす規定で、行政庁の確認と同じ扱いです。会社の確認は、適合かどうかを認める判断を示す行為で、行政庁の確認と同じ扱いなので、処分にあたります。2つ目の例は、指定管理者です。町の公民館を、民間の団体Dが運営しているとします。Dは、条例の定めで、町から指定を受けた団体です。
条文地方自治法244条の2第3項
地方自治法第244条の2第3項 3 普通地方公共団体は、公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるときは、条例の定めるところにより、法人その他の団体であつて当該普通地方公共団体が指定するもの(以下本条及び第二百四十四条の四において「指定管理者」という。)に、当該公の施設の管理を行わせることができる。
図:指定管理者
- 設例=町の公民館を民間の団体Dが運営〔条例の定めで町から指定を受けた〕
- 地方自治法244条の2第3項=条例の定めるところにより法人その他の団体で指定するものに公の施設の管理を行わせることができる
- 指定管理者=指定を受けた団体
- 公の施設=住民の福祉のための施設〔公民館もその1つ〕
普通地方公共団体は、法人その他の団体で、その普通地方公共団体が指定するものに、公の施設の管理を行わせることができる。ここでの前提は、必要があると認めるときに、条例の定めるところにより、という手順です。この指定を受けた団体を、指定管理者と呼びます。公の施設は、前に平等原則の回で見たとおり、住民の福祉のための施設で、公民館もその1つです。手がかりが、244条の4第1項です。
条文地方自治法244条の4第1項
地方自治法第244条の4第1項 普通地方公共団体の長以外の機関(指定管理者を含む。)がした公の施設を利用する権利に関する処分についての審査請求は、普通地方公共団体の長が当該機関の最上級行政庁でない場合においても、当該普通地方公共団体の長に対してするものとする。
図:指定管理者がした処分
- 地方自治法244条の4第1項=指定管理者を含む機関がした公の施設を利用する権利に関する処分の審査請求は自治体の長にする
- BがDに会議室の使用許可を申請→Dが不許可→Dは行政庁として処分をしたことになりBは町の長に審査請求
- 任せられない=強制的な取り立てを認めた使用料の差押えのような取り立ての権限〔自治体の長に与えられたもの〕
- 任せられる=使用許可など法律が認めた範囲
- 短答=行政行為をするのは国と公共団体だけは誤り
長以外の機関、指定管理者を含む、がした、公の施設を利用する権利に関する処分についての審査請求は、その自治体の長にする。かっこ書きで、指定管理者が出てきます。指定管理者がした、公の施設を使う権利に関する処分、つまり使用許可や不許可が、処分である、という前提で、審査請求の先が定められているのです。図で言えば、BがDに会議室の使用許可を申請し、Dが不許可にしたとします。Dは行政庁として処分をしたことになり、Bは、町の長に審査請求をします。ただし、指定管理者に何でも任せられるわけではありません。たとえば、法律が強制的な取り立てを認めた使用料を、滞納されたときに、財産の差押えのような方法で取り立てる権限は、法律が自治体の長に与えたもので、指定管理者には任せられません。任せられるのは、公の施設の使用許可など、法律が認めた範囲です。短答の誤り肢です。行政行為をするのは国と公共団体だけ、は誤りです。法律の根拠があれば、私人も行政庁になれます。
いつ効力が生じるか・3つの問いの答え
図:行政行為の成立と発効
- 成立=外部への表示
- 発効=相手方への到達〔了知できる状態になった時〕
- 告示・公示で生じる場合もある〔道路の供用開始の公示〕
- 法律が方式を定める行為は定められた方式が要る
最後に、行政行為がいつ効力を生じるかを、一言だけ置きます。行政行為は、外部に表示されて、成立します。そして、相手方に到達して、効力が生じます。通知される場合は、相手方が内容を知った時、または、知ることができる状態になった時です。告示や公示で、効力が生じる場合もあります。さきほどの、道路の供用開始がそうです。通る人全員に通知はできないので、公示で効力が生じます。また、法律が書面などの方式を定めている行為は、その方式で行う必要があります。詳しくは後の回です。
図:今日のまとめ
- 行政行為の定義=行政庁が・法律に基づき・公権力の行使として・直接具体的に・国民の権利義務を規律する行為
- ずれ3つ=1 具体的は特定の人に限らない〔一般処分〕/2 処分は法律の解釈で決まり行政行為と一致しない場合がある〔観点が違う〕/3 行政庁は法律で権限を与えられた機関で私人もなれる
3つの問いに答えます。1つ目。民間の会社の確認が、なぜ処分か。定義の主語は行政庁で、法律で権限を与えられた機関です。建築基準法が、指定した会社の確認を、行政庁の確認とみなしているので、処分になります。2つ目。行政行為と処分は、同じ言葉の言い換えか。違います。観点が違います。行政行為は理論の言葉、処分は制度の言葉で、法律の解釈で決まるので、おおむね重なりますが、一致しない場合があります。3つ目。通る人みんなに向けた決定は、具体的か。具体的でありえます。人が不特定でも、道路を供用開始するという対象の事実が特定されていれば、具体的で、一般処分になります。
最後に、短答の誤り肢を確認します。行政行為の語を使う法律がある、は誤り。行政行為と処分は完全に一致する、も誤り。相手方が特定されていない行為は行政行為でない、は誤り。申請に基づく許可は一方的でない、は誤り。行政行為をするのは国と公共団体だけ、は誤り。効力は当然に備わる、は誤り。常に法律の根拠が要る、も誤りです。
参照条文
- 道路法18条2項
- 行政事件訴訟法3条2項
- 行政手続法2条(柱書と2号。ほかの号は省略)
- 行政不服審査法1条2項
- 建築基準法6条の2第1項
- 地方自治法244条の2第3項
- 地方自治法244条の4第1項