行政行為の分類
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第4章 行政行為 ㊸/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
同じ日に届く4通の紙
図:設例
- 喫茶店の店主Bに同じ日に届く4通
- この町には建築主事が置かれている
- 1通目=店の建て替えの確認〔役場A〕
- 2通目=段差解消工事の補助金の交付決定〔役場A〕
- 3通目=基準違反を理由にした営業停止の命令〔役場A〕
- 4通目=Bの運転免許の交付〔公安委員会〕
- どれも「処分」
設例を置きます。Bの町には、建築の計画を確かめる担当者、建築主事が置かれています。ですから、建築の確認は、町の役場Aがします。1通目は、店の建て替えの確認です。2通目は、店の段差をなくす工事への、補助金の交付決定です。3通目は、基準違反を理由にした、営業停止の命令です。ここまでが役場Aから届きます。4通目は、出どころが少し違います。Bの運転免許の交付で、公安委員会が出します。同じ日に届いたことにします。前の回で、行政庁が、法律に基づき、公権力の行使として、直接具体的に国民の権利義務を決める行為を、行政行為と定義しました。4通とも、これに当たります。
図:今日の3つの問い
- 問い1 4通は「同じ処分」と呼ぶだけで足りるのか
- 分け方は1つなのか
- 問い2 1通目の確認はBには利益でも隣に住むCには不利益になりうる=どの箱に入れるのか
- 問い3 3通目の「命令」と第3章の「命令」〔法規命令〕は同じか
今日の問いは3つです。1つ目。4通を、役場から見て同じ処分、と呼ぶだけで足りるのか。分け方は、1つなのか。2つ目。1通目の確認は、Bにとっては利益です。でも、Bの隣に住むCにとっては、日当たりが悪くなるなど、不利益になりえます。この1枚は、どの箱に入れるのか。3つ目。3通目は、営業停止の命令でした。この命令と、第3章で見た、命令、つまり法規命令は、同じものなのか。命令って、どちらも同じ言葉ですよね。同じじゃないんですか。そこが落とし穴です。答えは、最後に回収します。先に、答えの形を言います。分け方は、着目する点の数だけあります。まず、なぜ分けるのか、から入ります。
分類は、あとで使う道具
図:分類は「着目点×効き所」
- 今日の4つの着目点=1 対象が人か物か
- 2 名宛人にとっての効果
- 3 手続の入口
- 4 行政庁の意思の有無
- 分類は暗記表でなく、あとで使う道具を揃える作業
- 1通の処分を複数の物差しで測れる
暗記の作業にはしません。たとえるなら、宅配の荷物の仕分けです。宛先で分ける日もあれば、重さで分ける日もあり、割れ物かどうかで分ける日もあります。同じ荷物が、物差しが変われば、別の箱に入ります。行政行為の分類も同じです。大事なのは、箱の名前より前に、何に着目して分けたのか、そして、分けると何に効くのか、の2つです。分けると何に効くのか、を、今日は効きどころと呼びます。この両方を、セットで持ちます。今日は4つ使います。1つ目、処分が人に付くか、物に付くか。2つ目、名宛人にとっての効果。3つ目、手続の入口。4つ目、行政庁の意思があるかどうか。名宛人、は、処分を向けられた相手のことです。Bに届いた紙なら、Bが名宛人です。そして、この4つは、どれか1つを選ぶ関係ではありません。1通の処分を、4つの物差しで順に測れます。ですから、今日は4通の紙を、4つの物差しに当てる表を、少しずつ埋めていきます。最後に、表がほぼ埋まります。空いたまま残るマスも、少しだけあります。
4通と4つの物差しだと、16マスです。全部のマスを暗記するのではなく、なぜそこに入るのかを、毎回言えるようにします。前の回の定義が、行政行為という1つの箱を作る話でした。今日は、その箱の中を仕分ける話です。
人に付くか、物に付くか
図:対人処分と対物処分
- 着目点=処分の対象が人か物か
- 対人処分=人に付く・一身専属的〔例=運転免許・生活保護決定〕
- 対物処分=物に付く・物が移っても効力は消えない〔例=違反建築物への除却命令〕
- 営業許可の多くは両面〔人の欠格事由+施設の基準〕
- 効き所=地位の承継・譲渡・相続
1つ目の物差しです。処分が、人に付くか、物に付くか、です。対人処分は、人に付く処分です。その人だけの地位や資格に付くので、一身専属的と言います。一身専属的、とは、その人だけのもので、他の人に譲ったり、相続したりできない、という意味です。対人処分の例は、Bの運転免許です。Bが亡くなっても、息子が、父の免許で運転することはできません。条文を見ます。
条文道路交通法84条1項
道路交通法第84条第1項 自動車及び一般原動機付自転車(以下「自動車等」という。)を運転しようとする者は、公安委員会の運転免許(以下「免許」という。)を受けなければならない。
道路交通法は個別法なので、骨格だけ読みました。自動車等を運転しようとする者は、公安委員会の運転免許を受けなければならない。免許を受けるのは、運転しようとする、その者です。免許は、人に付きます。生活に困る住民Dに対する、生活保護の決定も、対人処分です。Dが亡くなれば、保護を受ける地位は、家族に引き継がれず、そこで終わります。Dの困窮という事情に付いた処分だからです。反対が、対物処分です。物に付く処分で、物が第三者に移っても、効力は消えません。例が、違反建築物への除却命令です。除却、は、取り壊すことです。
図:違反建築物への除却命令
- 建築基準法9条1項=違反建築物の所有者・管理者・占有者などに対し、相当の猶予期限を付けて、除却・移転・改築・使用禁止などを命じることができる
- 命令は「その建物」の違反に付く
- Bが建物を売る→物が第三者に移っても、処分の効力は否定されない〔物に付いているから〕
建築基準法9条1項は、違反建築物について、その所有者、管理者、占有者などに、除却や使用禁止などを命じられる、と定めています。名宛人の欄に、所有者、管理者、占有者と、立場が並んでいる点に注目してください。人の名前ではなく、建物との関係で並んでいるのです。問いです。Bが、違反のある建物を、他人に売ったとします。除却命令の効力は、売ったあとも残るでしょうか。運転免許は、買主に移るでしょうか。除却命令は、建物に付いているので、売っても効力は残ります。運転免許は、人に付くので、移りません。除却命令は、建物に付いた処分です。物に付いているので、持ち主が変わっても、効力は消えません。
飲食店の営業許可の多くは、両面を持ちます。人の面は、欠格事由、つまり、一定の違反歴があると許可を受けられない、という人についての要件です。物の面は、厨房や設備が基準に合っているか、という施設の要件です。人と物の両方を見て出す許可が、多いのです。効きどころは、地位の承継、つまり、許可を受けた人の地位を、相続や譲渡で、誰かが引き継げるか、です。これは、一般論で決まりません。個別の法律に、承継を認める規定があるか、を見ます。規定があれば、その規定のとおりに引き継げます。
図:対人・対物の短答ポイント
- 誤り=運転免許は対物処分〔人に付く=対人〕
- 誤り=営業許可は対人か対物のどちらか一方〔両面〕
- 誤り=対物処分は物が第三者に移ると効力を失う〔消えない〕
- 承継の可否=個別法の規定で決まる
短答の誤り肢です。運転免許は対物処分、は誤りです。対人です。営業許可は、対人か対物のどちらか一方、も誤りで、多くは両面です。対物処分は、物が第三者に移ると効力を失う、も誤りです。物に付くので、移っても消えません。ここまでの表を埋めます。3通目の営業停止命令は、Bの営業という行為に付くので、対人の面が強いです。4通目の運転免許は、対人です。1通目の確認は、Bの資格や経歴ではなく、建てる建物の計画が基準に合うかを見るので、物に付く面が強いです。
名宛人にとって、利益か不利益か
図:侵害的処分と授益的処分
- 着目点=名宛人にとっての効果
- 侵害的処分=権利を制限し義務を課す〔例=課税・除却命令・営業停止命令〕
- 授益的処分=権利や利益を与え義務を免除する〔例=補助金交付決定・生活保護決定・許可〕
- 前に行政を侵害行政と給付行政に分けた物差しを、処分1通の単位に置き直したもの
2つ目の物差しです。名宛人にとっての効果です。前に、行政を、侵害行政と給付行政に分けました。制限する側か、便益を提供する側か、という物差しでした。同じ物差しを、処分1通ずつに当てます。名宛人の権利を制限し、義務を課す処分が、侵害的処分です。課税、除却命令、営業停止命令が典型です。反対に、権利や利益を与え、義務を免除する処分が、授益的処分です。補助金の交付決定、生活保護決定、許可が典型です。許可が授益的、と聞いて、引っかかるかもしれません。前に、営業の規制は侵害行政の型だ、と見ました。規制の仕組み全体は、禁止をかける側です。でも、許可という処分1通だけを見ると、禁止を解いてBに自由を戻すので、名宛人には利益です。仕組み全体を見るか、処分1通を見るかで、物差しの当てどころが違います。
4通目の運転免許も、運転できるという利益をBにもたらすので、授益的です。この分け方は、実は、つねに明確とは限りません。ある処分が、見方によって、侵害的にも授益的にも見えることがあります。ですから、箱に入れる前に、誰から見るか、を言う習慣をつけます。この習慣が、次の話で効きます。ここで、冒頭の2つ目の問いに戻ります。1通目の確認は、Bにはプラス、隣のCにはマイナスになりえる。この形は、前の回で一度見ました。思い出してください。今日の目で見ると、あの確認は、どんな効果の処分でしょうか?
図:二重効果的処分の関係図
- A=町の役場
- B=喫茶店の店主〔名宛人・確認=授益・プラス〕
- C=隣に住む住民〔第三者・日当たりが悪くなる=侵害的な作用・マイナス〕
- BとCは利害が対立
- 前に二重効果と呼んだ処分を、行政行為の分類では二重効果的処分〔複効的処分〕と呼ぶ
前に二重効果と呼んだ処分を、行政行為の分類では、二重効果的処分と言います。複効的処分、とも呼びます。典型は、名宛人には授益的でも、第三者には侵害的な作用を及ぼす処分です。役場AがBに確認を出します。Bには、建てられるというプラスです。隣のCには、日当たりが悪くなるというマイナスが及びます。Cは、名宛人ではありませんが、影響を受ける第三者です。逆の型もあります。柱の足りない建物に、役場が是正命令を出すとします。名宛人のBには、工事の費用がかかる、侵害的です。ところが、隣のCには、倒壊の危険が減る、授益的です。問いです。この是正命令は、Bの欄と、Cの欄で、どうなりますか?
Bには侵害的で、Cには授益的、です。前に二重効果を見たときも、この是正命令は、確認と並べて、同じ板に置きました。名宛人と第三者とで、プラスとマイナスが逆になる。この形の処分が、二重効果的処分です。確認は、その典型の向きです。同じ処分でも、誰から見るかで向きが逆になるので、誰から見るか、を先に言います。
図:効き所3つ
- 1 法律の留保=侵害的処分は法律の根拠が要る
- 授益的処分は説による〔侵害留保説なら必須でない・権力留保説なら要る〕
- 2 取消し・撤回の制限=授益的処分は名宛人の信頼があるので制限される
- 3 第三者の救済=二重効果的処分でCが裁判で争えるか
では、この分類は、何に効くのでしょうか。効きどころは3つあります。1つ目は、法律の留保です。侵害的処分は、国民を縛るので、法律の根拠が要ります。授益的処分は、説によって違います。前に見た、段差解消の補助で言い直します。侵害留保説は、自由や財産を侵害するかで線を引くので、補助金を与えるだけなら、根拠は必須ではありません。権力留保説は、形式で線を引くので、町が一方的に決める処分の形をとる以上、根拠が要ります。2つ目は、取消しや撤回の制限です。取消しは、出した時点で誤りがあった処分の効力を失わせることです。撤回は、出した時点では問題がなかった処分を、後からの事情で失わせることです。違反を理由にした免許の取消しは、学問上は撤回だ、と前に見ました。どちらでも、授益的処分を後から失わせると、補助金を当てにして工事を始めたBの信頼を裏切ります。そこで、授益的処分は、取消しや撤回が制限されます。どこまで制限されるかは、別の回で扱います。3つ目は、第三者の裁判上の救済です。二重効果的処分で、隣のCが、確認を争えるか。名宛人でないCが訴えを起こせるかは、別の回で扱います。
今日は、箱の名前と、効きどころの場所を揃えます。短答の誤り肢です。二重効果的処分とは、名宛人に不利益な処分、は誤りです。名宛人と第三者とで、利益と不利益が逆になる処分です。名宛人に不利益なだけなら、侵害的処分です。授益的処分には、どの説でも法律の根拠は不要、も誤りです。説によります。表を埋めます。1通目の確認は、二重効果的処分です。2通目の補助金は授益的、3通目の営業停止命令は侵害的、4通目の運転免許は授益的です。
手続の入口で分ける
図:行政手続法上の分類
- 着目点=手続の入口
- 申請に対する処分〔申請〔2条3号〕を受けて諾否を応答する処分〕
- 不利益処分〔2条4号=行政庁が特定の者を名あて人として義務を課し権利を制限する〕
- 効き所=審査基準・理由の提示
- 聴聞・弁明
3つ目の物差しです。手続の入口です。行政手続法は、処分を2つに分けて、それぞれに手続を用意しています。まず、申請に対する処分です。条文を見ます。
条文行政手続法2条(柱書と3号。ほかの号は省略)
行政手続法第2条(柱書・3号) この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 三 申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
申請とは、許認可等を求める行為で、行政庁が、諾否の応答をすべきこととされているものです。申請を受けて、認めるか認めないかを答える入口が、申請に対する処分です。2通目の補助金の交付決定は、行政手続法の型で言えば、Bの申請を受けて出すので、こちらです。ただし、補助金の交付決定は、法律の定めで、行政手続法の手続そのものは当てはまらないことになっています。ここで見ているのは、型です。
条文行政手続法2条(柱書と4号。ほかの号は省略)
行政手続法第2条(柱書・4号) この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 四 不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。 イ 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分 ロ 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分 ハ 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分 ニ 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの
行政手続法は個別法ではないので、全文を読みました。不利益処分は、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、義務を課し、またはその権利を制限する処分です。ただし、イからニまでのいずれかに当たるものは除かれます。3通目の営業停止命令は、Bに義務を課すので、不利益処分です。Bの営業許可を取り消す処分も、権利を失わせるので、不利益処分です。
図:4号ロ=申請拒否は不利益処分でない
- Bが営業許可を申請→役場Aが拒否
- Bには望まない結果
- でも行手法上は申請に対する処分の側〔4号ロで不利益処分から除かれる〕
- 行手法の分類は侵害的・授益的の分類と重なるが一致しない
- 誤り=申請拒否処分は不利益処分
ここが短答の山場です。ロに注目してください。申請により求められた許認可等を拒否する処分は、不利益処分から除かれます。申請を断られたBにとっては、望まない結果です。でも、行手法の分類では、申請拒否は、申請に対する処分の側で扱います。申請を受けて諾否を答える入口の中で、断った、という形だからです。境界のペアにします。Bが営業の許可を申請して、役場Aが拒否した。これは、申請に対する処分です。他方、すでにBが持っている営業許可を、役場Aが取り消した。これは、不利益処分です。入口が、申請から始まったかどうかで分かれます。決め手は、行政庁が申請に答える形か、行政庁が先に動いて義務や制限を課す形か、です。
図:2つの分類は重なるが一致しない
- 侵害的・授益的〔名宛人にとっての効果〕と、申請に対する処分・不利益処分〔手続の入口〕
- 補助金交付決定=型は申請に対する処分〔行手法の手続は適用除外〕でもあり授益的
- 営業停止命令=不利益処分でもあり侵害的
- 申請拒否=Bには望まない結果だが、手続の入口は申請に対する処分
- 誤り=行手法の分類は侵害的・授益的の分類と一致する
先ほどの分類と並べます。補助金交付決定は、授益的で、型の上では申請に対する処分です。営業停止命令は、侵害的で、不利益処分です。ここまでは重なります。でも、申請拒否は、名宛人にとって望まない結果なので、感覚は侵害的に近いのに、行手法上は申請に対する処分です。重なるが、一致しない、のです。効きどころは、手続の中身です。申請に対する処分には、審査基準や、拒否の理由の提示の手続があります。不利益処分には、言い分を述べる聴聞や弁明の手続があります。ただし、前に見た、運転免許の取消しの前の意見の聴取のように、個別の法律が、行政手続法とは別の手続を置くこともあります。中身は、それぞれの手続の回で見ます。短答の誤り肢です。申請拒否処分は、行手法の不利益処分、は誤りです。2条4号ロです。行手法の分類は、侵害的、授益的の分類と一致する、も誤りです。表を埋めます。1通目の確認も、4通目の運転免許も、Bが自分から求めて出されるものです。建て替えの確認は、Bが確認を申請します。運転免許も、Bが公安委員会に申請して受けます。ですから、申請に対する処分です。3通目の営業停止命令は、不利益処分です。4通だけを見ると、2つの物差しは、そろって見えます。それでも、申請拒否のように、箱がずれる処分があります。分け方は、着目する点の数だけある、とはこのことです。
行政庁の意思で分ける——伝統的分類
図:伝統的分類のツリー
- 行政行為→法律行為的行政行為〔行政庁の効果意思で効果が生じる〕=命令的行為〔下命・禁止・許可・免除〕
- 形成的行為〔特許・認可・代理〕
- 準法律行為的行政行為〔効果意思は要らず、法律が事実行為をとらえて効果を与える〕=確認・公証・通知・受理
- 民法の意思表示を借りた分類
4つ目の物差しです。行政庁の意思が、効果を生むかどうか、です。昔から使われてきた、伝統的分類と呼ばれるものです。民法の、意思表示を借りた分類です。効果意思、とは、行政庁が、こういう効果を生じさせたい、と考えて行うことです。行政庁の効果意思によって、効果が生じるものが、法律行為的行政行為です。効果意思が要らず、法律が、事実行為をとらえて、効果を与えるものが、準法律行為的行政行為です。事実行為は、意思表示ではなく、事実として行う行為です。たとえば、証明書を渡す、知らせる、といったことです。法律行為的は、さらに2つに分かれます。1つ目が、命令的行為です。私人が本来持っている自由に関わるもので、下命、禁止、許可、免除が入ります。2つ目が、形成的行為です。特別の権能を与えたり、補ったりするもので、特許、認可、代理が入ります。一言ずつ言うと、特許は、新しい権利や地位を与えるもの。認可は、私人どうしの行為を補って、効力を完成させるもの。代理は、本来ほかの者がすべき行為を、行政庁が代わりにして、その者がしたのと同じ効果を生じさせるものです。前に見た、行政機関どうしの権限の代理とは、別のものです。許可、特許、認可の違いと効果は、次の回で扱います。今日は、名前と、ツリーの中の位置までです。
図:準法律行為的行政行為の4つ
- 確認=ある事実や法律関係の存否を明らかにする〔例=選挙での当選人の決定〕
- 公証=存在を証明する〔例=住民票の写しなどの証明書の交付〕
- 通知=事実を知らせる〔例=行政代執行の戒告・税の督促〕
- 受理=届出を受け付ける〔例=届出の受理〕
- 効果は法律が与える
準法律行為的行政行為の4つを、一言ずつ見ます。確認は、ある事実や法律関係が存在するかを、はっきりさせる行為です。たとえば、選挙での当選人の決定です。当選人を決める側は、誰を当選させたいかを選ぶのではありません。票を数えて、誰が当選人に当たるか、という事実をはっきりさせるだけです。その決定に効果を結びつけているのは、選挙の法律です。公証は、それが存在することを、公に証明する行為です。住民票の写しなどの証明書の交付です。通知は、事実を知らせる行為です。行政代執行の戒告や、税の督促が例です。ここでの戒告は、公務員の懲戒の戒告とは別のもので、期限までに義務を果たさないと、行政が代わりに行う、と前もって知らせることです。受理は、届出を受け付ける行為です。これらは、行政庁が、こういう効果を生じさせたい、と望んだから効果が出るのではありません。法律が、その事実行為をとらえて、効果を与えているのです。税の督促で見ます。督促は、払ってください、と知らせるだけです。それでも、督促のあと一定の期間内に払わなければ、財産の差押えに進める、と法律が定めています。差押えに進めるという効果は、督促した職員の望みからではなく、法律から出ています。
通知に分類されるからといって、それだけで処分とは言えません。分類で通知に入ることと、処分として争えるかは別の問題です。処分性は、別の回で見ます。短答の誤り肢です。準法律行為的行政行為は、行政庁の効果意思で効果が生じる、は誤りです。法律が、効果を与えます。
図:「命令」の言い分け
- 今日の命令的行為の「命令」=下命・禁止=個別の相手に義務を課す処分〔第3章の命令=騒音の改善命令などと同じ側〕
- 法規命令=国民を直接縛る一般的な定め〔行政基準〕
- 誤り=ここでの命令=法規命令
ここで、冒頭の3つ目の問いに入ります。先に確認です。行政基準の回で、国民を直接縛る一般的な定めを、何と呼びましたか?法規命令です。命令という言葉には、行政が作る一般的なルールと、個別の相手への指図の、2つの意味がある、と前に見ました。法規命令は、前者です。今日の、命令的行為の命令は、後者の側で、個別の相手に、義務を課す処分です。3通目の営業停止命令がそうです。2つを分ける決め手は、一般的な定めか、個別の相手に向けた処分か、です。短答の誤り肢です。ここでの命令は、法規命令、は誤りです。最後に、批判を一言置きます。この分類には、今は厳しい批判があります。民法の意思表示を借りただけで、実際の法律の仕組みとずれるからです。ですから、分類全体を暗記するのではなく、重要な視点を与える部分を、個別に理解すれば足ります。たとえば、許可と下命の関係のように、です。もう1点、予告です。法令に書かれた名前と、分類上の名前は、一致するとは限りません。法令の名前は、その法律が付けた呼び名で、分類の名前は、効果がどう生じるかで付けた学問上の名前だからです。法令の上では確認と呼ばれる処分が、分類の上でも確認だ、とは言い切れません。これは、次の回で見ます。表を埋めます。3通目の営業停止命令は、命令的行為です。4通目の運転免許も、命令的行為の側で、どの形かは次の節で見ます。2通目の補助金は、役場Aが、交付するという効果を望んで決めるので、法律行為的の側です。1通目の確認は、名前が確認でも、分類上の確認とは限りません。いま予告した、次の回の話です。
下命と許可の関係
図:下命・禁止・許可・免除
- 下命=義務を課す〔作為を命じる=下命/不作為を命じる=禁止〕
- 許可=一般的な禁止を、一定の要件を満たす人に個別に解いて、自由を回復する
- 免除=義務を個別に解く
- 道路交通法64条1項=何人も免許なく運転してはならない〔一般的な禁止〕
- 84条1項=免許を受けなければならない
最後の節です。命令的行為の中の、下命と許可の関係を見ます。下命は、義務を課す処分です。作為、つまり何かをすることを命じる場合が、狭い意味での下命です。不作為、つまり何かをしないことを命じる場合が、禁止です。3通目の営業停止命令は、営業をしてはならない、と命じるので、禁止の形です。許可は、一般的な禁止を、一定の要件を満たす人に、個別に解いて、自由を回復する処分です。条文で、仕組みを読みます。
条文道路交通法64条1項
道路交通法第64条第1項 何人も、第八十四条第一項の規定による公安委員会の運転免許を受けないで(第九十条第五項、第百三条第一項若しくは第四項、第百三条の二第一項、第百四条の二の三第一項若しくは第三項又は同条第五項において準用する第百三条第四項の規定により運転免許の効力が停止されている場合を含む。)、自動車又は一般原動機付自転車を運転してはならない。
道路交通法は個別法なので、骨格だけ読みました。何人も、免許を受けないで、自動車等を運転してはならない。これが、一般的な禁止です。誰にでも、運転は禁止されています。そして、さきほどの84条1項が、免許を受けなければならない、と定めていました。要件を満たす人に、公安委員会が個別に免許を出すと、その人にだけ、禁止が解かれて、運転する自由が回復します。これが、許可の型です。禁止を解いて、自由を回復する、というのは、新しい権利をもらうのとは違うんですか。違います。許可は、柵の扉の鍵のようなものです。柵という一般的な禁止は残したままで、条件を満たした人にだけ、扉を開けます。開くのは、もともと持っていた自由に通じる扉です。新しい権利が生まれるわけではありません。
図:免除の型
- 学校教育法18条=就学困難と認められる者の保護者に対し、市町村の教育委員会が就学義務を猶予又は免除することができる
- 義務を個別に解く型
- 許可=禁止を個別に解く
- 免除=作為義務を個別に解く
免除も同じ型です。免除は、義務を、個別に解く処分です。許可は禁止を解きます。免除は、作為の義務を解きます。例を見ます。
条文学校教育法18条
学校教育法第18条 前条第一項又は第二項の規定によつて、保護者が就学させなければならない子(以下それぞれ「学齢児童」又は「学齢生徒」という。)で、病弱、発育不完全その他やむを得ない事由のため、就学困難と認められる者の保護者に対しては、市町村の教育委員会は、文部科学大臣の定めるところにより、同条第一項又は第二項の義務を猶予又は免除することができる。
学校教育法は個別法なので、骨格だけ読みました。病弱その他やむを得ない事由のため就学困難と認められる者の保護者に対して、市町村の教育委員会は、就学の義務を、猶予または免除できる。子どもを就学させる義務を、個別に解く型です。
図:許可と私法上の権利
- 設例=Bは貸主Xから店舗を借りて営業許可を得ている
- Xが賃貸借契約を解除して明渡しを求める
- 許可は営業する自由を回復しただけ→場所を使う私法上の権原までは与えない
- 許可を取り消さなくても、Xは明渡しを求められる
- 誤り=許可を取り消さなければ明渡しを求められない
この仕組みから、帰結が2つ出ます。1つ目。許可は、営業する自由を回復するだけで、場所を使う私法上の権原までは与えません。設例です。Bは、貸主Xから店舗を借りて、営業許可を得ています。Xが賃貸借契約を解除して、明渡しを求めたとします。Bは、許可があるから出ていかない、と言えるでしょうか。許可は、営業していい自由を戻しただけだから、場所を使う権利は別の話です。言えません。許可を取り消さなくても、Xは明渡しを求められます。許可と、土地や建物を使う権利は、別の世界の話だからです。2つ目の帰結です。命令は、その行為をする自由を持つ者に対して出します。営業停止命令の名宛人は、営業者のBです。店の場所を貸しているだけのXには、営業停止命令は出せません。問いです。許可を受けたBの営業を止めさせるのに、貸主Xに命令を出せますか?
出せません。営業する自由を持っているのはBだからです。短答の誤り肢です。許可を取り消さなければ、土地の明渡しを求められない、は誤りです。営業停止命令を、土地の貸主に出せる、も誤りです。許可の要件や裁量などの中身は、次の回で見ます。
3つの問いの答え・まとめ
図:4通の紙×4つの物差し(完成表)
- 1通目 建て替えの確認=物に付く面が強い
- 二重効果的処分
- 申請に対する処分
- 法律行為的か準法律行為的かは名前だけでは決まらない=次の回
- 2通目 補助金の交付決定=授益的
- 申請に対する処分
- 法律行為的の側
- 3通目 営業停止の命令=対人の面が強い
- 侵害的
- 不利益処分
- 命令的行為〔禁止〕
- 4通目 運転免許=対人
- 授益的
- 申請に対する処分
- 命令的行為〔許可〕
3つの問いに答えます。1つ目。4通は、同じ処分と呼ぶだけで足りるのか。足りません。分け方は1つではありません。着目する点の数だけあります。人に付くか物に付くか、名宛人にとっての効果、手続の入口、行政庁の意思の有無です。表は、2つのマスを残して、埋まりました。2通目の補助金が、人に付くか物に付くかは、今日の設例に持ち主が変わる場面が無いので、空けておきます。1通目の確認の、意思があるかどうかは、次の回で埋めます。2つ目。1通目の確認は、どの箱か。二重効果的処分です。名宛人のBに授益、第三者のCに侵害です。誰から見るかを先に言うと、迷いません。3つ目。3通目の命令は、法規命令と同じか。違います。処分としての命令、つまり下命や禁止で、個別の相手に義務を課す処分です。法規命令は、一般的な定めです。
図:今日の短答の誤り肢
- 運転免許は対物処分(誤り)
- 営業許可は対人か対物のどちらか一方(誤り)
- 対物処分は物が第三者に移ると効力を失う(誤り)
- 二重効果的処分は名宛人に不利益な処分(誤り)
- 授益的処分にはどの説でも法律の根拠は不要(誤り)
- 申請拒否処分は行手法の不利益処分(誤り)
- 行手法の分類は侵害的・授益的の分類と一致(誤り)
- 許可を取り消さなければ明渡しを求められない(誤り)
- 営業停止命令を土地の貸主に出せる(誤り)
- 準法律行為的行政行為は行政庁の効果意思で効果が生じる(誤り)
- ここでの命令=法規命令(誤り)
- 通知は準法律行為的行政行為だから当然に処分(誤り)
最後に、短答の誤り肢を確認します。運転免許は対物処分、は誤り。営業許可は対人か対物のどちらか一方、は誤り。対物処分は、物が第三者に移ると効力を失う、は誤りです。二重効果的処分は、名宛人に不利益な処分、は誤り。授益的処分には、どの説でも法律の根拠は不要、は誤り。申請拒否処分は、行手法の不利益処分、は誤りで、2条4号ロです。行手法の分類は、侵害的、授益的の分類と一致する、も誤りです。許可を取り消さなければ、明渡しを求められない、は誤り。営業停止命令を、土地の貸主に出せる、も誤り。準法律行為的行政行為は、行政庁の効果意思で効果が生じる、は誤りで、法律が効果を与えます。ここでの命令は、法規命令、は誤り。通知は、準法律行為的行政行為だから、当然に処分、も誤りです。許可、特許、認可の中身は、次の回で扱います。今日は、名前とツリーの位置まで、持ち帰ってください。
参照条文
- 道路交通法84条1項
- 行政手続法2条(柱書と3号。ほかの号は省略)
- 行政手続法2条(柱書と4号。ほかの号は省略)
- 道路交通法64条1項
- 学校教育法18条