附款の種類と限界
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第4章 行政行為 #54/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
占用料を納め忘れたら、許可は消えるのか
図:設例キ
- 町の役場A・喫茶店の店主B
- 町道の路肩でBがキッチンカーを出す・Aが道路占用を許可
- 許可書の4つの定め=午後9時以降は営業しないこと
- 占用料を月ごとに納めること
- 来年3月末まで
- 町が必要と認めるときは許可を撤回することがある
- Bが占用料を一度納め忘れた
- 問い=許可はその時点で消えるのか・営業は続けられるのか
処分に最初から付け加える、従たる定めです。前回までは、いったんした処分を、あとから取り消す、撤回する話でした。今回は、処分をするそのときに、条件や期限、負担を書き足す話です。撤回権の留保も、その1つです。町の役場Aと喫茶店の店主Bの設例で見ます。設例キです。Bは、町道の路肩で、キッチンカーを出したいと考えました。町道の道路管理者は町ですから、許可を出すのはAです。Aは、道路の占用の許可を出しました。許可書には、4つの定めが並んでいます。午後9時以降は営業しないこと。占用料を月ごとに納めること。来年3月末まで。町が必要と認めるときは、許可を撤回することがある。ところが、Bは、占用料を一度、納め忘れました。
この回の問いは、占用料を一度納め忘れたとき、許可はその時点で消えるのか、それとも営業を続けられるのか、です。持ち帰るものは3つです。1つ目は、附款の4つの種類。2つ目は、条件か負担かで結論が変わるので、その見分け方。3つ目は、附款をどこまで付けてよいか、そして、附款だけを争えるか、です。先に答えを言います。設例キは、占用料の納め忘れで、許可は当然には消えません。営業は続けられます。ただし、Aが撤回するかどうかは、別の問題として残ります。
附款とは何か——処分に付け足す、従たる定め
図:附款の意義
- 処分の本体=主たる内容
- 附款=本体に付け加えて効果を制限したり特別な義務を課したりする従たる定め
- 例=運転免許に付く眼鏡等の使用の定め
- 設例キの本体=町道の路肩にキッチンカーを置いて営業してよい・許可書の4つの定めが附款
- 使う理由=画一的な法律を個別の事情に合わせて調整
- 呼び名=附款は学問上の言葉・法令は条件・期限と書く・負担も条件と書く
まず、附款とは何かです。行政庁は、許可や認可のような処分を出します。その処分の中心になる内容を、本体と呼びます。附款は、本体に付け加えて、効果を制限したり、特別な義務を課したりする、従たる定めです。設例キなら、本体は、町道の路肩にキッチンカーを置いて営業してよい、という許可です。許可書の4つの定めが、附款に当たります。本体になる許可の条文を見ます。
条文道路法32条1項(6号以外の各号は読み上げない)
道路法第32条第1項 道路に次の各号のいずれかに掲げる工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合においては、道路管理者の許可を受けなければならない。 一 電柱、電線、変圧塔、郵便差出箱、公衆電話所、広告塔その他これらに類する工作物 二 水管、下水道管、ガス管その他これらに類する物件 三 鉄道、軌道、自動運行補助施設その他これらに類する施設 四 歩廊、雪よけその他これらに類する施設 五 地下街、地下室、通路、浄化槽その他これらに類する施設 六 露店、商品置場その他これらに類する施設 七 前各号に掲げるもののほか、道路の構造又は交通に支障を及ぼすおそれのある工作物、物件又は施設で政令で定めるもの
骨格です。道路に露店などを設けて、継続して道路を使おうとする場合は、道路管理者の許可を受けなければなりません。キッチンカーを路肩に置いて営業するのは、この露店などに当たります。町道なら、許可を出すのは町です。この条文の許可は、許可と特許の回で、学問上は特許に当たると見ました。身近な附款の例は、運転免許です。免許の本体は、車を運転してよい、というものです。そこに、眼鏡などを使って運転すること、という定めが付くことがあります。視力が足りない人に免許を出さないのではなく、定めを付けて出すわけです。単純ですが、窮屈です。法律は、全員に同じ基準を当てる形で書かれます。でも現実は、事情がまちまちです。附款があれば、その人の事情に合わせて、定めを付けたうえで処分を出せます。附款が無ければ許可を出せない場面でも、出せるようになります。画一的な法律を、現場で調整する道具です。呼び名にも注意があります。附款は、学問上の言葉です。法令には、附款とは書いてありません。法令は、条件、期限と書きます。そして、あとで効いてきますが、法令は、負担のことも条件と書きます。つまり、法令に条件と書いてあっても、学問上の条件とは限りません。これが、今回の山場の伏線です。
4つの種類——条件・期限・負担・撤回権の留保
図:附款の4つの種類その1
- 比較表
- 条件=効力の発生・消滅を発生が不確実な事実にかからせる=停止条件〔成就で効力が生じる〕・解除条件〔成就で効力が消える〕・本体の効力そのものが動く
- 期限=効力の発生・消滅を発生が確実な事実にかからせる=始期〔効力が生じる〕・終期〔効力が消える〕・いつ来るかは関係ない
4つの種類を、順番に見ていきます。1つ目は、条件です。処分の効力の発生や消滅を、起こるかどうか分からない、不確実な事実にかからせるものです。成就したときに効力が生じるものを、停止条件と言います。成就したときに効力が消えるものを、解除条件と言います。設例キで作ってみます。歩道の拡幅工事が完成したら営業してよい、という定めは、停止条件です。完成するかどうかは、確実ではないからです。駐車場の整備が議会で決まったら、許可は効力を失う、という定めは、解除条件です。大事なのは、効き方です。条件が成就するか、しないかで、本体の効力そのものが動きます。2つ目は、期限です。処分の効力の発生や消滅を、必ず到来する事実にかからせるものです。効力が生じる時を決めるのが始期、消える時を決めるのが終期です。設例キの、来年3月末まで、は終期です。ここで問いです。条件と期限は、何で分かれるでしょうか?
そして、いつ来るかは関係ありません。来年3月末は、日付が決まっているから期限、というのではありません。たとえ日付が決まっていなくても、いつか必ず来る事実なら、期限です。逆に、日付が決まっていても、来るかどうか分からない事実なら、条件です。例えば、Bが亡くなるまで、という定めは、日付は決まっていませんが、必ず来るので期限です。来年3月末の町議会で駐車場の整備が決まったら、という定めは、日付は決まっていても、決まるかどうかは分からないので条件です。
図:期限付任用の判例
- 事案=小学校教員が勧奨退職したあと1年の期限付きで再任用された・明文なし
- 判旨=特段の事由があり身分保障の趣旨に反しなければ明文がなくても許される
- 結論=適法・上告棄却
- 考慮=勧奨退職を円滑に進める必要・本人の承諾と誓約書
期限については、最高裁の判例があります。地方公務員の期限付きの任用です。任用とは、人を職員の職に就けることです。事案は、小学校の教員が、県の教育委員会から退職を勧められてそれに応じ、退職したあと、1年の期限を付けて、再び任用された、というものです。勧奨退職とは、役所が退職を勧めて、本人がそれに応じて辞めることです。期限付きで任用できるという明文は、法律にありませんでした。職員の任用は、期限を付けないのが、法の建前です。最高裁は、無期限が建前だということは認めました。ただし、その建前は、職員の身分を保障して、安心して職務に専念させる趣旨から出たものです。だから、期限付きの任用が、その趣旨に反しないなら、明文がなくても許される、と考えました。判旨です。
判例最判昭38・4・2 民集17巻3号435頁
明文のない期限付任用も、特段の事由があり、身分保障の趣旨に反しなければ許される 職員の期限付任用も、それを必要とする特段の事由が存し、且つ、それが右の趣旨に反しない場合においては、特に法律にこれを認める旨の明文がなくても、許されるものと解するのが相当である。
結論は、この期限付任用は適法で、上告は棄却されました。決め手は、定年退職の制度がない中で、高齢の職員を入れ替えるには、勧奨退職を円滑に進めるほかなく、そのために期限付任用が必要だったことです。本人も任用を承諾し、再度の更新を受けるにあたって、年度末には自発的に退職する旨の誓約書を出していました。さらに、職員任用についての地方公務員法の規定が適用されるようになったのが、再度の更新期間中だった点も、考慮されています。
⭐ 論文で書く規範:判例(期限付任用):職員の期限付任用は、それを必要とする特段の事由があり、身分保障の趣旨に反しなければ、明文がなくても許される (短答知識)
判例が判断したのは、職員の期限付任用です。ここから、附款は、明文がなくても、必要な事情があり、本体の趣旨に反しなければ付けられる、という整理が引き出されます。ただし、これは判例そのものではなく、判例を手がかりにした一般的な整理です。この判例は、附款はどこまで付けられるかという問いの入口です。あとの節で、もう一度使います。
図:附款の4つの種類その2
- 比較表
- 負担=法令が定めるもの以外の義務を課す・違反しても本体の効力は当然には失われない・撤回の理由にとどまる
- 撤回権の留保=撤回する権利を処分のときに書いておく・確認的な意味にとどまる
3つ目は、負担です。法令が定めるもの以外の、作為や不作為の義務を、相手に課すものです。効き方が肝心で、負担に違反しても、処分の効力は、当然には失われません。許可そのものは、完全に効力を生じていて、その上に、別に義務が1つ乗っているだけだからです。せいぜい、撤回の理由になるにとどまります。条件とは、ここが正反対です。設例キの、午後9時以降は営業しないこと、は、営業を控える不作為の義務です。許可は出たまま、守るべきことが付いているので、負担です。負担の典型は、こうした営業時間の制限、安全のための措置、許可が終わったときの原状回復など、許可の際に書き足す義務です。占用料を月ごとに納めること、も、許可書に義務として書き込まれているので、ここではひとまず、負担の側に置きます。占用料を取れること自体は、道路法39条に定めがあります。ですから、ここで負担と呼んでいるのは、許可書に書き込まれた、納付の義務のほうです。
条文道路法39条1項
道路法第39条第1項 道路管理者は、道路の占用につき占用料を徴収することができる。ただし、道路の占用が国の行う事業及び地方公共団体の行う事業で地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第六条に規定する公営企業以外のものに係る場合においては、この限りでない。
骨格です。道路管理者は、道路の占用について、占用料を徴収することができる。許可と特許の回で、特許には、占用料のような公的な負担が付いてまわる、と見ました。その中身が、これです。4つ目は、撤回権の留保です。撤回する権利を、処分のときに、あらかじめ書いておくものです。設例キの、町が必要と認めるときは許可を撤回することがある、が、これに当たります。書いてあるなら、Aは、いつでも好きに撤回できるんですか。違います。ここが肝心です。前々回見たとおり、撤回は、明文が無くても、できました。処分をする権限を持つ行政庁は、その権限の中で撤回もできる、という理由でした。書いてなくてもできるのですから、書いたことで、撤回できる範囲が広がるわけではありません。かといって、書いてあれば、いつでも撤回できるわけでもありません。撤回できるかどうかは、結局、前回の物差しで決まります。守る利益と、相手の不利益を比べる、というものです。だから、撤回権の留保は、確認的な意味にとどまります。
図:設例キの仕分け
- 期限=来年3月末まで
- 撤回権の留保=町が必要と認めるときは撤回することがある
- 午後9時以降は営業しない=負担
- 占用料を月ごとに納める〔許可書に義務として書き込まれた納付〕=さしあたり負担と見る
- ただし条件か負担かは仕組みで決める=次の節で確定
設例キを仕分けします。来年3月末までは期限、撤回の定めは撤回権の留保です。午後9時以降の営業禁止と、占用料の納付は、さしあたり、負担と見ました。ただ、本当に負担なのか、条件なのかは、まだ決めていません。法令は、負担も条件と書くからです。ここが、結論を分けます。
条件か負担か——結論が変わる見分け
図:条件か負担か
- 同じ「条件」の文言でも結論が変わる
- 条件=不成就・違反で本体の効力が当然に失われる
- 負担=効力は完全に生じている・違反は撤回などの問題
入る前に、前回の確認です。撤回できるかを絞る物差しは、何と何を比べるものでしたか?撤回で守ろうとする利益と、撤回されると相手方が受ける不利益、です。この物差しを、今回の見分けにつなげます。なぜ、条件か負担かが大事なのか。法令は、同じ、条件という文言で、両方を書きます。でも、条件なら、不成就や違反で、本体の効力が当然に失われます。負担なら、効力は完全に生じていて、違反は、撤回などの問題になるだけです。結論が、正反対です。
図:設例キの当てはめ
- 占用料の納め忘れ
- 条件の違反なら=許可は消えて無許可営業
- 負担の違反なら=許可は残りAが撤回するかを考える
設例キに当てはめます。占用料を納めなかったことが、条件の違反なら、許可は消えて、営業は無許可になります。負担の違反なら、許可は残ります。そのうえで、Aが撤回するかどうかを、考えることになります。
図:条件か負担かの見分け
- 手がかり=文言でなく個別法の仕組み
- 条件違反を許可の取消し・効力停止の理由として別に定めているか
- 定めていれば違反で当然には失効しないことが前提=負担・当然に失効するなら取消しの理由に書く必要がない
- 設例キ=道路法71条1項2号・道路交通法77条5項も同じ型
- 条件のまま残る例=歩道の拡幅工事が完成したら営業してよい=Bに義務を課さず本体の効力そのものを動かす
手がかりは、文言ではなく、個別法の仕組みです。その法律が、条件に違反したときを、許可の取消しや効力の停止の理由として、別に定めているかを見ます。定めていれば、その法律は、条件に違反しても、許可は当然には失効しないことを前提にしています。違反があったとき、行政庁が事案を見て、取り消すか止めるかを決める作りだからです。違反で当然に失効するなら、わざわざ取消しの理由に書く必要がありません。設例キの許可は、道路法の占用の許可です。道路法71条1項を見ます。なお、法令は、撤回のことも、取消しと書きます。ここで言う取消しは、学問上は撤回です。
条文道路法71条1項
道路法第71条第1項 道路管理者は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定によつて与えた許可、承認若しくは認定(以下この条及び第七十二条の二第一項において「許可等」という。)を取り消し、その効力を停止し、若しくはその条件を変更し、又は行為若しくは工事の中止、道路(連結許可等に係る自動車専用道路と連結する施設を含む。以下この項において同じ。)に存する工作物その他の物件の改築、移転、除却若しくは当該工作物その他の物件により生ずべき損害を予防するために必要な施設をすること若しくは道路を原状に回復することを命ずることができる。 一 この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこれらの規定に基づく処分に違反している者 二 この法律又はこの法律に基づく命令の規定による許可又は承認に付した条件に違反している者 三 偽りその他不正な手段によりこの法律又はこの法律に基づく命令の規定による許可等を受けた者
骨格です。道路管理者は、許可に付した条件に違反している者に対して、許可を取り消し、その効力を停止することができる。ほかの号は、法令の違反や、不正な手段で許可を受けた場合です。ここで問いです。この条文があると、占用料の納め忘れで、許可は自動的に消えるでしょうか?消えないと思います。条件違反が、取消しや効力停止の理由として別に書いてあるので、自動で失効するなら、この規定は要らなくなるからです。ですから、午後9時以降の営業禁止も、許可書に書き込まれた占用料の納付も、負担です。許可は当然には消えません。Bは、営業を続けられます。Aは、撤回できる立場にはなりますが、実際にできるかどうかは、前回の物差しと、次の節の比例原則で決まります。同じ形が、道路交通法にもあります。道路で、場所を動かずに露店や屋台を出すには、警察署長の許可が要ります。設例キでは、町の占用の許可だけを見ていますが、道路上の営業には、警察の許可が重なることがあります。ここでは、仕組みの型だけを確かめます。
条文道路交通法77条5項
道路交通法第77条第5項 所轄警察署長は、第一項の規定による許可を受けた者が前二項の規定による条件に違反したとき、又は道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため特別の必要が生じたときは、その許可を取り消し、又はその許可の効力を停止することができる。
骨格です。警察署長は、許可を受けた者が条件に違反したとき、その許可を取り消し、または効力を停止することができる。ほかに、交通の安全のため特別の必要が生じたときも、同じです。3項で、署長は許可に必要な条件を付けられるとされ、5項で、その条件の違反を、取消しや停止の理由にしています。道路法と同じ型です。逆に、条件のまま残るものもあります。先ほどの、歩道の拡幅工事が完成したら営業してよい、という定めです。これは、Bに何かをさせる義務ではないので、Bが違反することがありません。工事が完成しなければ、許可の効力がそもそも生じないだけです。本体の効力そのものを動かすので、こちらは条件です。
⭐ 論文で書く規範:解釈(一般的な整理):条件か負担かは、法令の文言ではなく、仕組みで決める。条件違反を取消しや効力停止の理由として別に定めている法律は、違反で当然には失効しないこと、つまり負担であることを前提としている (短答・論文共通)
図:負担と内容の変更
- 設例キで対比=午後9時以降は営業しない→許可は出ていてその上に営業時間の不作為義務が乗る=負担
- 駅前の角に出したいと申請したのに別の通りの場所で許可→営業の中身そのものを変えた=実質的な一部不許可・内容を変更した処分
- 附款=申請した内容にあとから義務などを付け足すもの
もう1つ、負担の線の引き方を見ます。付いた定めが、申請した内容への付け足しなのか、申請の中身そのものを変えているのか、という区別です。設例キの、午後9時以降は営業しないこと、は、申請した営業が許可されたうえで、営業時間についての不作為の義務が乗っています。付け足しなので、負担です。他方、駅前の角に出したいと申請したBに、別の通りの場所で許可を出したら、どうでしょうか。附款ではありません。附款は、申請した内容の処分に、あとから義務などを付け足すものだからです。場所を変えるのは、付け足しではなく、営業の中身そのものを変えています。実質的な一部不許可、あるいは、内容を変更した処分と見ます。申請どおりの内容に義務を乗せるのが附款、申請の内容そのものを変えるのは附款ではない、と覚えておきます。
付けられる範囲と、2つの限界
図:附款を付けられる範囲と限界
- 付けられる範囲=明文が無くても本体の処分に裁量があればその範囲で付けられる・明文があっても本体の処分に認められた裁量の範囲内
- 限界1=法の目的と無関係な附款は付けられない〔設例ク=町内会の夏祭りに寄付すること〕
- 限界2=目的に照らして過大な義務は比例原則に反する〔設例ケ=交通への支障が小さい場所で営業は毎月第1日曜の午前中に限る〕
範囲を、2段で考えます。1段目は、明文が無くても、本体の処分に裁量があれば、その範囲で、附款を付けられる、ということです。先ほどの、期限付任用の判例が、この入口でした。裁量があるとは、本体を出すかどうか、どんな中身で出すかを、行政庁が選べるということです。選べる幅があるなら、定めを付けて出すことも、その幅の中に入ります。2段目は、明文があっても、自由には付けられない、ということです。本体の処分に認められた裁量の範囲内でなければなりません。つまり、どんな附款が許されるかは、その法律が、どんな観点から、どの程度の裁量を認めているか、という解釈の問題です。裁量の広さそのものは、別の回で扱います。設例キの道路法には、明文があります。87条です。
条文道路法87条1項・2項
道路法第87条 1 国土交通大臣及び道路管理者は、この法律の規定によつてする許可、認可又は承認には、第三十四条又は第四十七条の二第一項の規定による場合のほか、道路の構造を保全し、交通の危険を防止し、その他円滑な交通を確保するために必要な条件を附することができる。 2 前項の規定による条件は、当該許可、認可又は承認を受けた者に不当な義務を課することとならないものでなければならない。
1項は、道路管理者は、許可に、道路の構造を保全し、交通の危険を防止し、円滑な交通を確保するために必要な条件を付けられる、と定めます。ここで言う条件も、学問上は負担を含みます。2項は、その条件は、許可を受けた者に不当な義務を課すものであってはならない、と定めます。1項が、付ける目的を絞っています。2項が、過大な義務を禁じています。次の2つの限界を、条文にしたものです。設例クです。Aは、許可に、町内会の夏祭りに寄付すること、という定めを付けました。設例ケです。交通への支障が小さい場所なのに、Aは、営業は毎月第1日曜の午前中に限る、という定めを付けました。どちらも、付けられないと考えます。ただ、理由が違います。どう違うでしょうか?
よく見えています。1つ目の限界は、法の目的と無関係な附款は、付けられない、ということです。夏祭りへの寄付は、道路の構造の保全にも、交通の安全にも、関係がありません。87条1項が認める条件に当たりません。目的の外から持ち込んだ義務は、付けられません。警察許可のように、裁量が小さい処分では、付けられる範囲は、さらに狭くなります。2つ目の限界は、目的に照らして過大な義務は、比例原則に反する、ということです。ここで、既習の物差しを使います。手段が目的に見合っているかを見る、4つの問いの、2つ目と3つ目は何でしたか?
2つ目は、その手段が目的に適しているかという、適合性です。3つ目は、もっと軽い手段が無いかという、必要性です。設例ケに当てはめます。目的は、交通の安全と円滑で、これは正当です。ところが、必要性で引っかかります。交通への支障が小さい場所なら、混雑する時間帯だけ営業を控えさせる、といった軽い手段で足ります。さらに、比例原則の回の4つ目の問い、得られる利益と失われる利益が釣り合うかという均衡性も、満たしません。営業をほぼ封じる不利益は、得られる安全に比べて重すぎるからです。だから、過大で、87条2項の不当な義務に当たります。もう1つ、押さえておくことがあります。附款が違法なら、その附款への違反を理由に撤回することも、違法になりえます。撤回の制限と、ここで合流します。
⭐ 論文で書く規範:解釈(一般的な整理):附款は、本体の処分に裁量がある範囲で、法の目的に沿って付けることができる。法の目的と無関係なもの、目的に照らして過大なものは付けられない (短答・論文共通)
附款だけを争えるか
図:附款だけの取消訴訟
- 設例コ=Bは設例クの寄付の定めだけをやめさせたい
- 分かれ目=附款を本体から切り離せるか
- 切り離せる=その附款が無くても処分はされたと言える→附款だけを対象に取消訴訟
- 切り離せない=その附款が無ければ処分自体がされなかったと客観的に言える→処分全体の取消訴訟
- 負担=切り離しやすい・条件・期限・内容の変更=本体と一体になりやすい
設例クの寄付の定めは、違法なんですよね。Bは、許可は欲しいけれど、寄付だけはやめさせたいんです。その定めだけを、取消訴訟で争えますか。設例コです。ここで問いです。附款だけを争えるかを分けるのは、何でしょうか?そして、切り離せるかは、その附款が無くても、処分は同じようにされたと言えるか、で見ます。切り離せるなら、附款だけを対象に、取消訴訟を提起できます。附款も、相手方の権利や義務に影響するからです。切り離せない場合、つまり、その附款が無ければ、処分そのものがされなかったと客観的に言える場合は、処分全体が瑕疵を帯びると考えます。この場合は、処分全体の取消訴訟を提起します。附款だけは争えません。設例クは、寄付の義務が、道路の許可の中身と無関係です。寄付が無くても、許可は出せたはずです。だから、切り離せて、附款だけを争えます。変形を考えます。町が、この寄付を飲まないなら、そもそも許可は出さない、という姿勢だったとします。その寄付が無ければ許可がされなかった、と言える場面なら、切り離せません。この場合、処分全体を争うことになり、勝てば、許可ごと失う可能性があります。ですから、附款だけを争うのか、処分全体を争うのかは、訴訟の選び方の問題です。傾向も押さえておきます。負担は、本体の効力そのものを制限するものではないので、切り離しやすいです。条件や期限、それに内容を変えた処分は、本体と一体になりやすいです。ただし、あくまで傾向です。個別の事案で、無ければ処分されなかったか、を見ます。
⭐ 論文で書く規範:解釈(一般的な整理):附款だけの取消しを求められるのは、附款が本体から切り離せる場合に限る。その附款が無ければ処分自体がされなかったと客観的に言える場合は、処分全体を争う (短答・論文共通)
なお、負担が守られないとき、第三者が行政庁に撤回を求める訴えについては、別の回で扱います。
今日の地図(保存版)
図:今日の整理①
- 附款=本体に付け加えた従たる定め
- 4つの種類=条件〔不確実な事実・本体の効力が動く〕・期限〔確実な事実〕・負担〔義務・本体は当然には失効しない〕・撤回権の留保〔確認的〕
- 条件か負担かは文言でなく仕組みで決める=条件違反を別に取消し・効力停止の理由として定める法律は負担が前提
- 設例キ=占用料の納め忘れ→道路法71条1項2号→負担→許可は当然には消えない
まとめます。冒頭の問いに答えます。設例キで、占用料を納め忘れても、許可は当然には消えません。道路法71条1項2号が、条件違反を、取消しや効力停止の理由として、別に定めているからです。ですから、許可書に義務として書き込まれた占用料の納付は、負担です。Bは営業を続けられます。Aは撤回できる立場にはなりますが、実際にできるかは、守る利益と相手の不利益の比較と、比例原則で決まります。4つの種類です。条件は、不確実な事実にかけるもので、本体の効力そのものが動きます。期限は、確実な事実にかけるものです。負担は、義務を課すもので、本体は当然には失効しません。撤回権の留保は、書いても書かなくても撤回の可否は変わらないので、確認的です。
図:今日の整理②
- 附款を付けられる範囲=本体の処分に裁量がある範囲で法の目的に沿って
- 明文が無くても可〔期限付任用の判例〕・明文があっても裁量の範囲内
- 限界=目的と無関係な附款〔夏祭りへの寄付〕・目的に照らして過大な義務〔比例原則に反する〕
- 争い方=切り離せれば附款だけの取消訴訟・その附款が無ければ処分自体がされなかったと言える場合は処分全体
付けられる範囲です。本体の処分に裁量がある範囲で、法の目的に沿って付けられます。目的と無関係なもの、目的に照らして過大なものは、付けられません。争い方は、切り離せれば附款だけ、切り離せなければ処分全体です。
図:今日の短答の誤り肢
- 負担に違反すると許可は当然に失効する〔誤り〕
- 撤回権を留保すれば事情を問わず撤回できる〔誤り〕
- 法令に条件と書いてあれば学問上も条件である〔誤り〕
- 附款は明文の根拠がなければ付けられない〔誤り〕
- 違法な附款はいつでも附款だけ取り消せる〔誤り〕
最後に、短答の誤り肢です。負担に違反すると、許可は当然に失効する、は誤りです。撤回の理由になるにとどまります。撤回権を留保すれば、事情を問わず撤回できる、も誤りです。留保は確認的で、撤回できるかは、法令の解釈と、守る利益と相手の不利益の比較で決まります。法令に条件と書いてあれば、学問上も条件である、も誤りです。法令は負担も条件と書くので、仕組みで決めます。附款は、明文の根拠がなければ付けられない、も誤りです。本体に裁量があれば、その範囲で付けられます。違法な附款は、いつでも附款だけ取り消せる、も誤りです。その附款が無ければ処分がされなかったと言える場合は、処分全体を争います。
参照条文
- 道路法32条1項(6号以外の各号は読み上げない)
- 道路法39条1項
- 道路法71条1項
- 道路交通法77条5項
- 道路法87条1項・2項