行政法ゼロから行政法#44

許可・特許・認可

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第4章 行政行為 ㊹/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

同じ「許可」と書かれた3枚の紙

設例(喫茶店の店主Bの手元に、名前がどれも「許可」の紙が3枚/1枚目=店を開く飲食店営業の許可〔出すのは県の知事〕/2枚目=店の前の町道にテーブル席を継続して出す道路の占用の許可〔出すのは道路管理者の町=町の役場A〕/3枚目=隣の畑を買う農地の権利移動の許可〔出すのは農業委員会・Bは自分で農作業に従事する/畑の売主とBが売買契約〕) 図:設例

  • 喫茶店の店主Bの手元に、名前がどれも「許可」の紙が3枚
  • 1枚目=店を開く飲食店営業の許可〔出すのは県の知事〕
  • 2枚目=店の前の町道にテーブル席を継続して出す道路の占用の許可〔出すのは道路管理者の町=町の役場A〕
  • 3枚目=隣の畑を買う農地の権利移動の許可〔出すのは農業委員会・Bは自分で農作業に従事する/畑の売主とBが売買契約〕

今日は、Bが自分から求めて受ける紙を、3枚並べます。名前は、どれも「許可」です。1枚目は、喫茶店を開くための、飲食店営業の許可です。これを出すのは、県の知事です。町の役場ではありません。2枚目は、店の前の町道に、テーブル席を継続して出すための、道路の占用の許可です。町道を管理するのは町ですから、これは町の役場Aが出します。3枚目は、隣の畑を買って、ハーブを育てるための、農地の売買の許可です。出すのは、町の農業委員会です。Bは、自分で畑の農作業に従事する、という前提にします。県の知事、町の役場A、町の農業委員会です。

今日の3つの問い(問い1 3枚とも名前は同じ「許可」/性質も同じ許可なのか/問い2 3枚とも受けずに始めたら=売ったコーヒーの代金の契約・道路に出したテーブル席・買った畑の売買はそれぞれどうなるか/問い3 県も町も農業委員会も、3枚とも要件がそろえば出さなければならないのか) 図:今日の3つの問い

  • 問い1 3枚とも名前は同じ「許可」
  • 性質も同じ許可なのか
  • 問い2 3枚とも受けずに始めたら=売ったコーヒーの代金の契約・道路に出したテーブル席・買った畑の売買はそれぞれどうなるか
  • 問い3 県も町も農業委員会も、3枚とも要件がそろえば出さなければならないのか

今日の問いは3つです。1つ目。3枚とも、名前は同じ許可です。性質も、同じ許可なのか。2つ目。もしBが、3枚とも受けずに始めてしまったら、どうなるか。売ったコーヒーの代金の契約。道路に出したテーブル席。買った畑の売買。それぞれ、どうなるでしょうか。3つ目。県も、町も、農業委員会も、3枚とも、要件がそろえば出さなければならないのか。名前が同じなら答えも同じ、と考えるところが落とし穴です。答えは、最後に回収します。先に、答えの形を言います。名前は同じ許可でも、中身は、許可、特許、認可の3つに分かれます。そして、分かれると、裁量の広さも、受けずにした行為の効力も、変わります。

なぜ3つに分けるのか

前回のツリーの再掲(行政行為→法律行為的行政行為=命令的行為〔下命・禁止・許可・免除〕/形成的行為〔特許・認可・代理〕。今日の3つ=許可は命令的行為の側・特許と認可は形成的行為の側/区別すると変わること=1 行政庁の裁量の広さ 2 受けずにした行為の効力 3 監督や負担がついて回るか) 図:前回のツリーの再掲

  • 行政行為→法律行為的行政行為=命令的行為〔下命・禁止・許可・免除〕
  • 形成的行為〔特許・認可・代理〕。今日の3つ=許可は命令的行為の側・特許と認可は形成的行為の側
  • 区別すると変わること=1 行政庁の裁量の広さ 2 受けずにした行為の効力 3 監督や負担がついて回るか

前回のツリーを、もう一度出します。行政庁の効果意思で効果が生じる法律行為的行政行為が、2つに分かれていました。命令的行為と、形成的行為です。命令的行為に、下命、禁止、許可、免除が入ります。形成的行為に、特許、認可、代理が入ります。今日は、このうち、許可、特許、認可の中身を見ます。許可は、命令的行為の側です。特許と認可は、形成的行為の側です。

区別すると変わること3つ(行政庁の裁量の広さ/受けずにした行為の効力/監督や負担がついて回るか) 図:区別すると変わること3つ

  • 行政庁の裁量の広さ
  • 受けずにした行為の効力
  • 監督や負担がついて回るか

どうして3つも分けるんですか。全部、行政の許可で足りませんか。分けると、3つのことが変わるからです。1つ目は、行政庁の裁量の広さです。要件がそろえば出す方向なのか、広い判断の余地があるのか、です。2つ目は、それを受けずにした行為の効力です。3つ目は、監督や負担が、ついて回るかどうかです。分類は、名前を覚えるためのものではありません。この3つを、すばやく読むための道具です。ここで、最初の回を思い出します。そこで、許可を、法律で原則として禁止されていることを、特定の場合に解除する行為、と言いました。前回は、それを、柵の扉の鍵にたとえました。今日は、この解除の中身を、もう一歩進めます。解除されて戻ってくるのは、もともと持っていた自由です。だから、裁量が狭い。この道筋を、次の節でたどります。

ですから、今日の背骨は一つです。名前ではなく、法律の仕組みで決める。この言葉を、最後まで持っていてください。

許可——禁止を解いて、自由を戻す

許可の定義と例(許可=本来誰でも持つ自由を、公共の福祉のために一般的に禁止しておき、申請に応じて個別に解除する行為/解除されると、もともとの自由が戻る〔新しい権利をもらうのではない〕/例=食品衛生法55条1項〔飲食店営業・都道府県知事〕/旅館業法3条1項〔旅館業・都道府県知事。保健所を設置する市・特別区は市長・区長〕/風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律3条1項〔風俗営業・公安委員会〕/警察許可=広い意味の警察・消極規制〔害悪の発生を防ぐ目的〕) 図:許可の定義と例

  • 許可=本来誰でも持つ自由を、公共の福祉のために一般的に禁止しておき、申請に応じて個別に解除する行為
  • 解除されると、もともとの自由が戻る〔新しい権利をもらうのではない〕
  • 例=食品衛生法55条1項〔飲食店営業・都道府県知事〕
  • 旅館業法3条1項〔旅館業・都道府県知事。保健所を設置する市・特別区は市長・区長〕
  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律3条1項〔風俗営業・公安委員会〕
  • 警察許可=広い意味の警察・消極規制〔害悪の発生を防ぐ目的〕

1つ目は、許可です。定義から入ります。許可とは、本来は誰でも持っている自由を、公共の福祉のために、あらかじめ一般的に禁止しておき、申請に応じて、個別に禁止を解く行為です。解かれた人には、もともと持っていた自由が戻ります。大事なのは、新しい権利をもらうのではない、という点です。飲食店を営む自由は、もともと誰にでもありました。それを、衛生の観点から、いったん全員に禁止しておきます。そして、基準に合う人にだけ、扉を開く。それが、許可です。許可は、新しく何かをもらうのではなく、もともとの自由を返してもらう行為だ、という理解で十分です。例を並べます。飲食店営業は食品衛生法、旅館業は旅館業法、風俗営業は風営法が、同じ型で定めています。いずれも、無許可で始めることを一般に禁止して、申請に応じて解きます。こうした許可は、警察許可、と呼ばれます。ここでの警察は、交番の警察ではありません。社会の秩序や安全を保つ行政の働き全体を指す、広い意味です。害悪が起きないよう防ぐ目的なので、消極規制、つまり消極目的の規制、とも言います。Bの1枚目で、条文を見ます。

条文食品衛生法55条1項・2項(各号は読み上げない)

食品衛生法第55条 1 前条に規定する営業を営もうとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。 2 前項の場合において、都道府県知事は、その営業の施設が前条の規定による基準に合うと認めるときは、許可をしなければならない。ただし、同条に規定する営業を営もうとする者が次の各号のいずれかに該当するときは、同項の許可を与えないことができる。  一 この法律又はこの法律に基づく処分に違反して刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して二年を経過しない者  二 第五十九条から第六十一条までの規定により許可を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者  三 法人であつて、その業務を行う役員のうちに前二号のいずれかに該当する者があるもの

食品衛生法は個別法なので、骨格だけ読みました。1項。営業を営もうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。2項。知事は、施設が基準に合うと認めるときは、許可をしなければならない。欠格事由に当たる者には、与えないことができる。2項に注目してください。基準に合うと認めるとき、許可をしなければならない、です。問いです。Bの店が、基準に全部合っていて、欠格事由もないとします。それでも知事が、この店は気に入らない、と言って、許可を断れるでしょうか。

許可の帰結3つ(1 裁量は狭い=要件を満たすなら与えなければならない方向〔食品衛生法55条2項・道路交通法90条1項〕/2 違反には制裁が要る=罰則・監督処分/3 無許可でした取引を無効とする必然性は無い=制裁は営業者に向く・取引の効力は別。境界ペア=無許可でコーヒーを売る→お客さんとの売買は有効/許可を受けずに農地を買う→売買は効力を生じない〔条文が効力を定める例外〕) 図:許可の帰結3つ

  • 1 裁量は狭い=要件を満たすなら与えなければならない方向〔食品衛生法55条2項・道路交通法90条1項〕
  • 2 違反には制裁が要る=罰則・監督処分
  • 3 無許可でした取引を無効とする必然性は無い=制裁は営業者に向く・取引の効力は別。境界ペア=無許可でコーヒーを売る→お客さんとの売買は有効
  • 許可を受けずに農地を買う→売買は効力を生じない〔条文が効力を定める例外〕

断れません。しなければならない、と書いてあるからです。ここが、許可の1つ目の帰結です。裁量は狭い。要件を満たすなら、許可は与えなければならない方向です。理由は、許可が、もともとの自由を戻すものだからです。自由を戻してよい人に、行政庁の好みで、戻さない。これでは、筋が通りません。ただし書は、別の話です。欠格事由に当たる場合に限って、与えないことができる、と定めています。欠格事由は、法律が先に決めた事由です。行政庁が、好みで理由を足せるわけではありません。同じ形の条文が、運転免許にもあります。前回、運転免許は許可の型だと見ました。条文で確かめます。

条文道路交通法90条1項(本文とただし書の柱書。各号は省略)

道路交通法第90条第1項 公安委員会は、前条第一項の運転免許試験に合格した者(当該運転免許試験に係る適性試験を受けた日から起算して、第一種免許又は第二種免許にあつては一年を、仮免許にあつては三月を経過していない者に限り、かつ、第九十六条第一項ただし書の規定の適用を受けて当該運転免許試験を受けた場合にあつてはその年齢が十八歳に達した者に限る。)に対し、免許を与えなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、政令で定める基準に従い、免許(仮免許を除く。以下この項から第十二項までにおいて同じ。)を与えず、又は六月を超えない範囲内において免許を保留することができる。

骨格だけです。公安委員会は、運転免許試験に合格した者に対し、免許を与えなければならない。ただし、一定の者には、与えず、または保留できる。やはり、与えなければならない、です。2つ目の帰結です。違反には、制裁が要ります。許可は、一般的な禁止を、個別に解く仕組みです。解いていない人が勝手に始めれば、禁止に違反します。ですから、無許可営業には、罰則があり、行政庁による監督処分もあります。

無許可営業と取引の効力(無許可で営んでも取引は当然には無効にならない/制裁は営業する人に向く) 図:無許可営業と取引の効力

  • 無許可で営んでも取引は当然には無効にならない
  • 制裁は営業する人に向く

3つ目の帰結が、今日の山場です。Bが、1枚目を受けずに店を開いて、コーヒーを売ったとします。お客さんとの売買は、無効になるでしょうか。違法な営業でした取引だから無効、と感じる人は多いのですが、結論は逆です。お客さんとの売買は、有効です。罰則や監督処分を受けるのはBです。でも、売買契約の効力は、別の話です。理由は、制裁の向く先にあります。許可の仕組みは、営業者を縛って、害悪を防ぐものです。取引を無効にしなくても、罰則と監督処分で、目的は果たせます。取引まで無効にすると、何も知らずに買ったお客さんまで、巻き込みます。ですから、取引を無効にしなければならない必然性が、ありません。第1章でも、同じ結論を見ました。許可を受けずに食肉販売業を営んだ買主の、食肉の買入れ契約が、有効とされた話です。許可を受けずにした営業は、制裁の対象になります。でも、取引の効力までは、当然には奪われません。境界のペアにします。無許可でコーヒーを売る。お客さんとの売買は、有効です。他方、許可を受けずに、農地を買う。この売買は、効力を生じません。後ろの例は、あとの認可の節で扱います。分かれ目は、条文が、取引の効力を直接定めているかどうかです。

条文食品衛生法55条3項

食品衛生法第55条第3項 都道府県知事は、第一項の許可に五年を下らない有効期間その他の必要な条件を付けることができる。

付け加えると、許可にも条件は付けられます。55条3項です。条件を付けられる点は、許可にも特許にもあります。違いは、負担が通例としてついて回るかどうか。それは、特許の節で見ます。もう一つ、前回の、人に付くか、物に付くか、という物差しとつなぎます。飲食店の営業許可は、人の欠格事由と、施設の基準を、両方見ます。人にも物にも付く、両面の許可でした。短答の誤り肢です。許可は取締りの手続だから、許可を受けていない者の契約は、すべて無効、は誤りです。当然には、無効になりません。

許可の中の特許的な要素——銭湯の配置規制

設例と公衆浴場法2条(Bの町に昔からある銭湯=既存の銭湯/近くに県知事の許可を受けた新しい銭湯が開業/既存の銭湯の店主は、新しい銭湯への許可を争えるか/公衆浴場法2条=1項 都道府県知事の許可/2項 設置の場所が配置の適正を欠くと認めるときは許可を与えないことができる/3項 配置の基準は条例/衛生に加えて「配置の適正」も許可の理由) 図:設例と公衆浴場法2条

  • Bの町に昔からある銭湯=既存の銭湯
  • 近くに県知事の許可を受けた新しい銭湯が開業
  • 既存の銭湯の店主は、新しい銭湯への許可を争えるか
  • 公衆浴場法2条=1項 都道府県知事の許可
  • 2項 設置の場所が配置の適正を欠くと認めるときは許可を与えないことができる
  • 3項 配置の基準は条例
  • 衛生に加えて「配置の適正」も許可の理由

許可の中には、少し性格の違うものがあります。例が、公衆浴場、つまり銭湯の許可です。設例です。Bの町に、昔からある銭湯があります。その近くに、新しい銭湯が、知事の許可を受けて、開業することになりました。既存の銭湯の店主は、新しい銭湯への許可を、裁判で争えるでしょうか。まず、条文です。

条文公衆浴場法2条1項・2項・3項

公衆浴場法第2条 1 業として公衆浴場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。 2 都道府県知事は、公衆浴場の設置の場所若しくはその構造設備が、公衆衛生上不適当であると認めるとき又はその設置の場所が配置の適正を欠くと認めるときは、前項の許可を与えないことができる。但し、この場合においては、都道府県知事は、理由を附した書面をもつて、その旨を通知しなければならない。 3 前項の設置の場所の配置の基準については、都道府県(保健所を設置する市又は特別区にあつては、市又は特別区。以下同じ。)が条例で、これを定める。

骨格です。1項。公衆浴場を経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない。2項。設置の場所が、配置の適正を欠くと認めるときは、許可を与えないことができる。3項。配置の基準は、条例で定める。条文は、配置の適正、としか書いていません。具体的な基準は条例で決まり、いわゆる距離制限として語られます。ここが、普通の許可と違うところです。食品衛生法の許可は、衛生と、人の欠格事由を見ていました。公衆浴場法は、それに加えて、配置の適正も、許可の理由にしています。銭湯どうしが、近すぎないか、という点です。

争える利益があるか(反射的利益=法律が公益のために規制した結果、たまたま受けている利益→争えない/法的利益〔法律上保護された利益〕=法律がその人の利益として守っている→争える/既存の銭湯の店主の営業上の利益はどちらか) 図:争える利益があるか

  • 反射的利益=法律が公益のために規制した結果、たまたま受けている利益→争えない
  • 法的利益〔法律上保護された利益〕=法律がその人の利益として守っている→争える
  • 既存の銭湯の店主の営業上の利益はどちらか

問いに戻ります。既存の銭湯の店主は、争えるか。争うには、自分に、争える利益が要ります。ここで、2つの言葉を分けます。反射的利益と、法的利益です。反射的利益とは、法律が公益のために規制をした結果、たまたま誰かが受けている利益です。法律が守ろうとしたものではないので、これを失っても、裁判で争う資格は認められません。法的利益、つまり法律上保護された利益は、法律が、その人の利益として守っているものです。こちらなら、争えます。最高裁は、既存の銭湯の営業上の利益を、どちらと見たか。判旨を読みます。

判例最判昭37・1・19 民集16巻1号57頁

既存の公衆浴場営業者の利益 これら規定の趣旨から考えると公衆浴場法が許可制を採用し前述のような規定を設けたのは、主として「国民保健及び環境衛生」という公共の福祉の見地から出たものであることはむろんであるが、他面、同時に、無用の競争により経営が不合理化することのないように濫立を防止することが公共の福祉のため必要であるとの見地から、被許可者を濫立による経営の不合理化から守ろうとする意図をも有するものであることは否定し得ないところであつて、適正な許可制度の運用によつて保護せらるべき業者の営業上の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず公衆浴場法によつて保護せられる法的利益と解するを相当とする。

要点を言います。公衆浴場法の許可制は、主として、国民保健と環境衛生のためです。ところが同時に、濫立による経営の不合理化から、被許可者、つまり許可を受けた業者を守る意図も、あると言います。だから、既存業者の営業上の利益は、単なる反射的利益ではなく、法律が保護する法的利益だ、と言いました。

銭湯の判決の決め手と境界(決め手=配置の適正を許可の理由にしている→既存業者を濫立から守る面→営業上の利益は法的利益/境界=飲食店の営業許可は衛生と欠格事由だけ→同じ理屈はそのままは使えない/薬局の距離制限=違憲〔憲法の回〕/「許可の中の特許的な要素」は学説の呼び名・判決は特許と言わない) 図:銭湯の判決の決め手と境界

  • 決め手=配置の適正を許可の理由にしている→既存業者を濫立から守る面→営業上の利益は法的利益
  • 境界=飲食店の営業許可は衛生と欠格事由だけ→同じ理屈はそのままは使えない
  • 薬局の距離制限=違憲〔憲法の回〕
  • 「許可の中の特許的な要素」は学説の呼び名・判決は特許と言わない

決め手は、条文の仕組みです。配置の適正を、許可の理由にしている以上、法律は、近すぎる新規参入から、既存業者を守る面も持っている。そこから、営業上の利益が、法律の保護する利益になります。境界のペアにします。公衆浴場の既存業者は、争える側です。では、飲食店の営業許可で、近所にもう一軒できたらどうか。食品衛生法の55条は、衛生と欠格事由だけを見ていて、配置を理由にしていません。同じ理屈は、そのままは使えません。この判決の読み方を、学説は、許可の中に特許的な要素がある、と呼びます。特許は次の節の主役で、もともとの自由には無い地位を、行政庁が与える行為です。既存業者が競争から守られる地位を得ている面を、特許に似ている、と見るわけです。ただし、判決自身は、特許という言葉を使っていません。判決の言葉と、学説の呼び名は、分けて持っておきます。同じ距離制限でも、薬局の距離制限は、既存業者の保護を狙った規制ではない、とされたうえで、目的との結びつきが弱く、営業の自由への過度な規制として、違憲とされました。判断した論点は別です。これは憲法の回で見ました。既存業者に、訴える資格、つまり原告適格があるかの一般的な考え方は、訴訟の回で見ます。今日は、許可の中にも、競争を調整する性格が混じる場合がある、とだけ持ち帰ってください。短答の誤り肢です。公衆浴場の既存業者の営業上の利益は、単なる反射的利益にとどまる、は誤りです。法的利益です。

特許——自由に無い権能を与える

特許の定義と例(特許=もともとの自由に属さない特権・特別の能力を行政庁が私人に与える行為/特許法の特許とは別/例=道路の占用の許可〔道路法32条1項〕/河川の流水占用の許可〔河川法23条〕/公有水面埋立の免許〔公有水面埋立法2条1項〕/法人格・国籍の付与/道路・河川は公共用物=特定の人の独占的な使用は本来できない/第1章の公物の使用関係の特許使用に分類名を付ける) 図:特許の定義と例

  • 特許=もともとの自由に属さない特権・特別の能力を行政庁が私人に与える行為
  • 特許法の特許とは別
  • 例=道路の占用の許可〔道路法32条1項〕
  • 河川の流水占用の許可〔河川法23条〕
  • 公有水面埋立の免許〔公有水面埋立法2条1項〕
  • 法人格・国籍の付与
  • 道路・河川は公共用物=特定の人の独占的な使用は本来できない
  • 第1章の公物の使用関係の特許使用に分類名を付ける

銭湯の節で、特許的な要素、と言いました。ここからは、その特許そのものを見ます。問いです。第1章の公物の回を思い出してください。道路に物を継続して置く使い方を、何使用と呼びましたか?特許使用です。電柱やガス管、露店のように、継続して置く使い方でした。今日の特許は、その特許使用に、行政行為としての分類名を付けるものです。第1章には、祭りの行列のような、許可使用もありました。あちらは、一般的な禁止を解く使い方なので、今日の分類では、許可の側です。特許とは、もともとの自由には属さない、特権や特別の能力を、行政庁が私人に与える行為です。もらう側には、新しい権利や地位が生まれます。許可と、ここが違います。許可は自由が戻る。特許は、もともと無かったものが、新しく生まれます。

発明の特許とは、別の概念です。特許法の特許は、発明を保護する権利です。行政法の特許は、行政行為の種類で、同じ字を使っているだけです。

Bの2枚目=道路の占用(町道は公共用物/継続して使えるのは行政庁から特別の権能をもらうから)

例は、Bの2枚目です。町道に、テーブル席を継続して出す。これは、道路を継続して使うことです。しかし、道路は、みんなのための公共用物です。ある特定の人が、独占的に使うことは、本来できません。それができるようになるのは、行政庁から、特別の権能をもらうからです。条文を見ます。

条文道路法32条1項(各号は読み上げない)

道路法第32条第1項 道路に次の各号のいずれかに掲げる工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合においては、道路管理者の許可を受けなければならない。  一 電柱、電線、変圧塔、郵便差出箱、公衆電話所、広告塔その他これらに類する工作物  二 水管、下水道管、ガス管その他これらに類する物件  三 鉄道、軌道、自動運行補助施設その他これらに類する施設  四 歩廊、雪よけその他これらに類する施設  五 地下街、地下室、通路、浄化槽その他これらに類する施設  六 露店、商品置場その他これらに類する施設  七 前各号に掲げるもののほか、道路の構造又は交通に支障を及ぼすおそれのある工作物、物件又は施設で政令で定めるもの

骨格です。道路に工作物などを設け、継続して道路を使用しようとする場合には、道路管理者の許可を受けなければならない。町道の道路管理者は町です。ですから、Bの2枚目は、町の役場Aが出します。なお、道路の使い方には、警察の別の許可が関わることもあります。今日は、道路法の占用の許可だけを見ます。

特許の名前の落とし穴(法令の名前は許可・免許でも中身は特許/土地改良区の設立認可も特許の一種と言われる) 図:特許の名前の落とし穴

  • 法令の名前は許可・免許でも中身は特許
  • 土地改良区の設立認可も特許の一種と言われる

同じ型の例が、ほかにもあります。川の水を継続して使う、河川法の流水占用の許可。海や湖の水面を埋め立てる、公有水面埋立法の免許。国籍の付与や、法人格の付与も、典型です。ここで、名前の落とし穴です。道路法と河川法は、許可と書きます。埋立は、免許です。でも、分類はどれも特許です。運転免許は許可の型でしたから、同じ免許という名前でも、分類は割れます。もう一つ、逆向きの例です。土地改良法には、土地改良区の設立の認可があります。法令は、認可と書いています。しかし、私人が前もって持っていない法的地位を、新しく付ける行為なので、特許の一種、設権行為と言われます。設権行為とは、権利や地位を新しく設定する行為のことです。

特許の帰結(1 誰に与えるか広い裁量〔道路法33条1項「許可を与えることができる」/食品衛生法55条2項「許可をしなければならない」と並べる〕/2 監督と負担〔占用料=道路法39条・原状回復=40条・監督処分=71条〕引き換えの公的負担が通例/3 受けずにした行為は権能が無く効力を生じない〔罰則もある=違いは効力の話〕/4 申請が前提とされるのが通常) 図:特許の帰結

  • 1 誰に与えるか広い裁量〔道路法33条1項「許可を与えることができる」/食品衛生法55条2項「許可をしなければならない」と並べる〕
  • 2 監督と負担〔占用料=道路法39条・原状回復=40条・監督処分=71条〕引き換えの公的負担が通例
  • 3 受けずにした行為は権能が無く効力を生じない〔罰則もある=違いは効力の話〕
  • 4 申請が前提とされるのが通常

帰結を見ます。1つ目。誰に与えるか、広い裁量があります。条文の形に出ます。

条文道路法33条1項

道路法第33条第1項 道路管理者は、道路の占用が前条第一項各号のいずれかに該当するものであつて道路の敷地外に余地がないためにやむを得ないものであり、かつ、同条第二項第二号から第七号までに掲げる事項について政令で定める基準に適合する場合に限り、同条第一項又は第三項の許可を与えることができる。

骨格です。道路管理者は、道路の敷地外に余地がなくやむを得ないものであり、政令の基準に適合する場合に限り、許可を与えることができる。食品衛生法は、許可をしなければならない、でした。道路法は、許可を与えることができる、です。条文の形が違います。与えるかどうか、誰に与えるか、行政庁に広い判断の余地がある形です。道路は、みんなのものですから、使わせる場面を絞り込んで、その中で誰に与えるかを判断する形になっています。ただし、条文の形は手がかりです。形だけで決まるわけではありません。

特許の帰結2〜4(監督と負担がついて回る/受けずにした行為は道路を使う権利そのものが生じない/申請もないのに一方的に与えるものではない) 図:特許の帰結2〜4

  • 監督と負担がついて回る
  • 受けずにした行為は道路を使う権利そのものが生じない
  • 申請もないのに一方的に与えるものではない

2つ目。監督と負担が、ついて回ります。道路を占用する人は、占用料を払います。使い終われば、原状に回復する義務もあります。そして、道路管理者は、監督処分を出せます。特権を与える引き換えに、公的な負担が課されるのが通例です。この負担は、附款という形で付きます。附款とは、行政行為に付け足す条件や負担などのことです。中身は、別の回で見ます。3つ目。特許を受けずにした行為は、権能が無いので、効力を生じないのが原則です。Bが、占用の許可を受けずに、道路にテーブル席を出したら、道路を使う権利そのものが、生じません。許可の場合は、取引の効力が当然には失われませんでした。営業する自由はもともとBにあり、禁止に違反したことは、制裁で正せば足りたからです。特許の場合は、道路を使う権利が、行政庁に与えられて初めて生まれます。与えられていなければ、生まれる元がありません。罰則がある点は同じです。違いは、効力の面にあります。4つ目。特許は、申請が前提とされるのが通常です。行政庁が、申請もないのに、一方的に与えるものではありません。

公企業の特許(電気・ガス・鉄道など、伝統的に国家の任務とされた事業を行う特権を与える/裁量は大きい=申請があっても与えなければならないわけではない/競願〔同じ事業を複数人が競って申請〕=最も適切な主体を選べる・先願主義〔早い者勝ち〕は妥当しない/特権の反面=供給義務・料金の認可制などの規制/規制緩和で許可と特許は相対化〔典型的な特許として残るのは法人格・国籍の付与という見方〕) 図:公企業の特許

  • 電気・ガス・鉄道など、伝統的に国家の任務とされた事業を行う特権を与える
  • 裁量は大きい=申請があっても与えなければならないわけではない
  • 競願〔同じ事業を複数人が競って申請〕=最も適切な主体を選べる・先願主義〔早い者勝ち〕は妥当しない
  • 特権の反面=供給義務・料金の認可制などの規制
  • 規制緩和で許可と特許は相対化〔典型的な特許として残るのは法人格・国籍の付与という見方〕

特許の中に、公企業の特許、と呼ばれる型があります。電気、ガス、鉄道のように、昔から国家の任務とされてきた事業を、私人が行う特権を与えるものです。裁量は大きく、申請があっても、必ず与えなければならないわけではありません。競願、という場面があります。同じ事業をやりたい複数の人が、競って申請することです。この場合、先願主義、つまり早い者勝ちは、そのまま当てはまりません。特権を誰に与えるかは、電気やガスが途切れずに届くかに直結するからです。ですから、最も適切な主体を選べる、とされます。特権を与える反面、供給義務を課したり、料金を認可にかからせたりする規制もかかります。第1章で見た鉄道運賃の認可は、そうした料金への規制の、一つの形です。最後に、相対化の話です。規制緩和で、新規参入が容易になりました。特権的な色合いが薄れて、許可と特許の違いが、昔ほどはっきりしなくなったと言われます。典型的な特許として残るのは、法人格や国籍の付与だ、という見方もあります。短答の誤り肢です。特許は、申請がなくても行政庁が与えるのが通常、は誤りです。申請が前提です。

認可——私人どうしの行為を補う

認可の定義と農地の設例(認可=私人どうしの行為を補って、効力を完成させるもの/順番=私人どうしの合意が先にあり、行政庁が補って完成させる/Bと畑の売主が売買契約→農業委員会の許可で効力が完成〔農地法3条1項〕/法令は「許可」と書くが分類は認可/許可=禁止を解く・特許=権能を与える・認可=合意を補う) 図:認可の定義と農地の設例

  • 認可=私人どうしの行為を補って、効力を完成させるもの
  • 順番=私人どうしの合意が先にあり、行政庁が補って完成させる
  • Bと畑の売主が売買契約→農業委員会の許可で効力が完成〔農地法3条1項〕
  • 法令は「許可」と書くが分類は認可
  • 許可=禁止を解く・特許=権能を与える・認可=合意を補う

3つ目は、認可です。その前に問いです。第1章で、許可を取らずに肉の小売を始めた人が、卸売の業者から肉を仕入れた売買は、有効でしたか、無効でしたか。有効でした。この肉の売買と、農地の売買を、あとで並べます。認可とは、私人どうしの法律行為を補って、効力を完成させる行為です。前回の短い定義と同じです。ポイントは、順番です。私人どうしの合意が、先にあります。その合意だけでは、効力が完成しません。そこに、行政庁が補って、完成させます。許可は、禁止を解く。特許は、権能を与える。認可は、すでにある私人の合意を補う。働きが、まるで違います。例は、Bの3枚目です。Bは、畑の売主と、畑の売買契約を結びます。農地の権利移動は、農地法3条1項で、農業委員会の許可を受けなければなりません。条文を見ます。

条文農地法3条(1項本文・2項本文・5項・6項。1項ただし書と各号・2項ただし書と各号・3項・4項は省略)

農地法第3条 1 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。 2 前項の許可は、次の各号のいずれかに該当する場合には、することができない。 5 第一項の許可は、条件をつけてすることができる。 6 第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。

骨格です。農地について所有権を移転するなどの場合は、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。2項。次の場合には、許可をすることができない。許可は、条件を付けてすることができる。そして、許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。法律は、許可と書いています。でも、分類は認可です。売主とBの合意が先にあり、それを農業委員会が補って、効力を完成させるからです。前回、法令に書かれた名前と、分類の名前は、一致するとは限らない、と予告しました。その実例です。2項は、許可をすることができない場合を、各号で並べる形です。1枚目の食品衛生法の、許可をしなければならない、という書き方とも、2枚目の道路法の、許可を与えることができる、という書き方とも違います。たとえば、買う人が、取得したあとの農作業に、常時従事すると認められない場合です。Bは自分で農作業に従事するので、これには当たりません。

認可の帰結(1 受けずにした行為は効力を生じない〔農地法3条6項〕→畑の所有権はBに移らない/無許可で営業する人が仕入れた肉の売買=有効と並べる/2 合意の中身は書き換えられない〔法律の根拠なしに〕・条件を付けること〔3条5項〕とは別/3 認可に絡む行政指導にも限界〔任意の協力〕) 図:認可の帰結

  • 1 受けずにした行為は効力を生じない〔農地法3条6項〕→畑の所有権はBに移らない
  • 無許可で営業する人が仕入れた肉の売買=有効と並べる
  • 2 合意の中身は書き換えられない〔法律の根拠なしに〕・条件を付けること〔3条5項〕とは別
  • 3 認可に絡む行政指導にも限界〔任意の協力〕

1つ目の帰結。認可を受けずにした行為は、効力を生じません。3条6項です。Bが、許可を受けずに売主と契約を進めても、畑の所有権は、Bに移りません。さきほどの肉の売買と並べます。無許可営業でした肉の売買は、有効でした。農地の売買は、許可を受けないと、効力を生じません。同じ許可という言葉でも、受けずにした行為の効力が、正反対になります。分類が違うからです。2つ目の帰結。行政庁は、当事者の合意の内容を、勝手に直して認可することはできません。法律の根拠がない限りです。問いです。農業委員会が、売主とBの代金を安くするよう、内容を直して許可できるでしょうか。

できません。合意の内容を決めるのは、売主とBだからです。ただし、3条5項は、許可を、条件をつけてすることができる、と定めています。条件を付けることと、合意の中身を書き換えることは、別です。条件は、許可に付ける注文です。書き換えは、当事者が決めた内容を、行政庁が自分で変えることです。3つ目の帰結。認可に関連する行政指導にも、限界があります。行政庁が認可を握っているからといって、合意の内容を変えるよう、強く迫ることはできません。行政指導は、あくまで相手の任意の協力を求めるものだからです。認可を握る行政庁に強く迫られると、相手は、断れば認可がもらえないのでは、と考えて、断りにくくなります。それでは、任意の協力が損なわれるおそれがあります。法律も、従わない意思を示した相手に指導を続けて、申請の権利行使を妨げることを禁じています。詳しくは、行政指導の回で見ます。

認可は私法上の瑕疵を治さない(瑕疵=法律行為の欠陥/農地の贈与が詐害行為なら、許可のあとでも債権者は取り消せる/売買契約がまだ無い段階で、転買人のために許可を申請する合意=効力を生じない〔補う相手の契約が無い〕) 図:認可は私法上の瑕疵を治さない

  • 瑕疵=法律行為の欠陥
  • 農地の贈与が詐害行為なら、許可のあとでも債権者は取り消せる
  • 売買契約がまだ無い段階で、転買人のために許可を申請する合意=効力を生じない〔補う相手の契約が無い〕

4つ目。認可は、行政の目的のための行為で、私法上の瑕疵を治すものではありません。瑕疵とは、法律行為の欠陥のことです。例が、農地の贈与です。借金から逃れるために、農地を贈与したとします。債権者を害する贈与は、詐害行為として、債権者が取り消せます。その贈与に、農地法の許可が出たあとでも、取消しはできる、とした最高裁判決があります。農業委員会が許可で見るのは、農地をきちんと耕す人に渡るか、という農地法の目的です。贈与が債権者を害するかどうかは、見ていません。ですから、許可が出ても、詐害行為という欠陥は消えません。もう一つ。売買契約がまだ存在しない段階で、転買人のために、許可を申請するという合意をしても、効力は生じない、とした最高裁判決もあります。転買人とは、買主からさらに買う人です。認可は、すでにある契約を補うものです。補う相手の契約が無い段階の約束は、成り立ちません。

建築協定の認可(建築協定=地域の住民や土地所有者が、街並みのために建物の基準を合意で決める/合意に特定行政庁が認可を与えると効力が完成〔建築基準法73条1項〕/認可の公告後に土地所有者等になった者にも効力が及ぶ〔75条。ただし、合意をしなかった人の土地を引き継いだ人は除く〕/特定行政庁=建築主事を置く市町村では原則としてその長/認可の裁量の広さは一律でない=73条1項は「認可しなければならない」) 図:建築協定の認可

  • 建築協定=地域の住民や土地所有者が、街並みのために建物の基準を合意で決める
  • 合意に特定行政庁が認可を与えると効力が完成〔建築基準法73条1項〕
  • 認可の公告後に土地所有者等になった者にも効力が及ぶ〔75条。ただし、合意をしなかった人の土地を引き継いだ人は除く〕
  • 特定行政庁=建築主事を置く市町村では原則としてその長
  • 認可の裁量の広さは一律でない=73条1項は「認可しなければならない」

5つ目。認可の裁量の広さは、一律ではありません。建築協定の認可で見ます。建築協定は、地域の住民や土地の所有者が、街並みのために、建物の基準を合意で決める仕組みです。その合意に、特定行政庁が認可を与えると、効力が完成します。特定行政庁とは、建築主事を置く市町村では、原則として、その長です。前回の設例で、Bの町には、建築の計画を確かめる担当者、建築主事が置かれている、としました。ですから、Bの町では、町長が特定行政庁です。

条文建築基準法73条1項(柱書・1号・2号。3号は省略)

建築基準法第73条第1項 特定行政庁は、当該建築協定の認可の申請が、次に掲げる条件に該当するときは、当該建築協定を認可しなければならない。  一 建築協定の目的となつている土地又は建築物の利用を不当に制限するものでないこと。  二 第六十九条の目的に合致するものであること。

骨格です。特定行政庁は、建築協定の認可の申請が、次の条件に該当するときは、認可しなければならない。協定が、土地や建物の利用を不当に制限するものでないこと。建築協定の目的に合致すること。認可しなければならない、ですから、許可と同じく、要件がそろえば出す方向です。認可の特徴は、裁量の広さではなく、合意を補って完成させる点にあります。ふつうの契約は、結んだ人どうししか縛りません。あとから土地を買った人は、その契約の当事者ではないからです。ところが建築協定は、特定行政庁が認可すると、そのことが公告、つまり広く知らされます。そこで75条が、公告のあとで土地の所有者などになった人にも、協定の効力が及ぶ、と定めています。ただし、協定に合意しなかった人の土地を引き継いだ人は除かれます。条文を見ます。

条文建築基準法75条(括弧書きは読み上げない)

建築基準法第75条 第七十三条第二項又はこれを準用する第七十四条第二項の規定による認可の公告(次条において「建築協定の認可等の公告」という。)のあつた建築協定は、その公告のあつた日以後において当該建築協定区域内の土地の所有者等となつた者(当該建築協定について第七十条第三項又はこれを準用する第七十四条第二項の規定による合意をしなかつた者の有する土地の所有権を承継した者を除く。)に対しても、その効力があるものとする。

骨格です。認可の公告のあった建築協定は、公告の日以後に協定の区域内の土地の所有者などになった者に対しても、効力がある。私人の合意が、認可で、あとから来た人まで縛る形に完成するわけです。

第1章の認可と今日の認可(第1章=運賃の上限の認可は事前のチェックの仲間/今日の分類=私人どうしの行為の効力を完成させる行為/当たるかは法律の仕組みで決める) 図:第1章の認可と今日の認可

  • 第1章=運賃の上限の認可は事前のチェックの仲間
  • 今日の分類=私人どうしの行為の効力を完成させる行為
  • 当たるかは法律の仕組みで決める

ここで、第1章とのつなぎを一言置きます。第1章で、鉄道運賃の上限の認可を、事前のお墨付き、事前のチェックの仲間、と呼びました。これは、行政が事前に審査して関わる、という働きの面からの呼び方です。今日の分類としての認可は、効果の面から付けた名前で、私人どうしの行為の効力を完成させる行為のことです。運賃の上限の認可が、この意味の認可にきちんと当たるかどうかは、法律の仕組みを見て決める話です。名前が認可だから、と言い切ることはできません。短答の誤り肢です。認可は、行政庁が当事者の合意の内容を修正して与えることができる、は誤りです。認可を受けずにした契約も、当事者間では有効、は誤りで、効力を生じません。認可があれば、私法上の瑕疵は治る、も誤りです。

3つを1枚の表にする

許可・特許・認可の対比表(行=何をする行為か:許可=一般的な禁止の個別の解除〔自由の回復〕/特許=特別の権能の付与/認可=私人どうしの行為を補って効力を完成。前提:許可=もともとの自由〔営業・運転〕/特許=自由に属さない〔道路・河川・法人格〕/認可=私人どうしの合意が先〔契約・協定〕。裁量の広さ:許可=狭い/特許=広い/認可=法律ごと〔合意の中身は書き換えられない〕。受けずにした行為:許可=制裁が中心・取引は当然には無効でない/特許=権能が無く効力を生じない/認可=効力を生じない〔農地法3条6項〕。監督・負担:許可=違反の抑止〔停止・取消し〕/特許=監督と負担が通例〔占用料・原状回復〕/認可=合意は直せない・指導にも限界。条文の形の例:許可=「許可をしなければならない」/特許=「許可を与えることができる」/認可=「認可しなければならない」〔建築協定〕。Bの3枚:①飲食店営業の許可=許可/②町道の占用の許可=特許/③農地の権利移動の許可=認可) 図:許可・特許・認可の対比表

  • 行=何をする行為か:許可=一般的な禁止の個別の解除〔自由の回復〕/特許=特別の権能の付与/認可=私人どうしの行為を補って効力を完成。前提:許可=もともとの自由〔営業・運転〕/特許=自由に属さない〔道路・河川・法人格〕/認可=私人どうしの合意が先〔契約・協定〕。裁量の広さ:許可=狭い/特許=広い/認可=法律ごと〔合意の中身は書き換えられない〕。受けずにした行為:許可=制裁が中心・取引は当然には無効でない/特許=権能が無く効力を生じない/認可=効力を生じない〔農地法3条6項〕。監督・負担:許可=違反の抑止〔停止・取消し〕/特許=監督と負担が通例〔占用料・原状回復〕/認可=合意は直せない・指導にも限界。条文の形の例:許可=「許可をしなければならない」/特許=「許可を与えることができる」/認可=「認可しなければならない」〔建築協定〕。Bの3枚:①飲食店営業の許可=許可/②町道の占用の許可=特許/③農地の権利移動の許可=認可

3つを、1枚の表にします。表の段は、何をする行為か、前提、裁量の広さ、受けずにした行為、監督と負担、条文の形の例、そしてBの3枚です。何をする行為か。許可は、一般的な禁止の個別の解除で、自由の回復です。特許は、特別の権能の付与です。認可は、私人どうしの行為を補って、効力を完成させます。前提。許可は、もともとの自由で、営業や運転です。特許は、自由に属さないもの、つまり道路や河川の使用、法人格です。認可は、私人どうしの合意が先にあります。契約や協定です。裁量の広さ。許可は狭く、要件を満たせば与える方向です。特許は広いです。認可は法律ごとですが、合意の中身は書き換えられません。

許可・特許・認可の対比の続き(受けずにした行為の効力/監督や負担/条文の形の例/Bの3枚) 図:許可・特許・認可の対比の続き

  • 受けずにした行為の効力
  • 監督や負担
  • 条文の形の例
  • Bの3枚

受けずにした行為。許可は、制裁が中心で、取引は当然には無効になりません。特許は、権能が無く、効力を生じません。認可も、効力を生じません。農地法3条6項です。監督と負担。許可は、違反の抑止で、停止や取消しが中心です。特許は、監督と負担が通例で、占用料や原状回復です。認可は、合意を直せず、指導にも限界があります。条文の形の例。許可は、許可をしなければならない。特許は、許可を与えることができる。認可は、認可しなければならない。建築協定の例です。一番下の段に、Bの3枚を置きました。1枚目は許可、2枚目は特許、3枚目は認可です。名前は、どれも許可でした。

表の違いは、きっぱり分かれるものではありません。許可にも条件は付けられますし、特許にも罰則はあります。表の違いは、どこに主眼があるか、の違いです。条文の形も、手がかりにすぎません。決め手は、名前ではなく、行為の仕組みです。

3つの性質の判断手順(入口=その行為は何か/1 私人どうしの行為が先にあり、それを補って完成させるか→はい=認可/2 いいえ→もともとの自由に属するか→属する=許可〔一般的な禁止の個別の解除〕/属さない=特許〔特別の権能の付与〕/名前は最後に見る) 図:3つの性質の判断手順

  • 入口=その行為は何か
  • 1 私人どうしの行為が先にあり、それを補って完成させるか→はい=認可
  • 2 いいえ→もともとの自由に属するか→属する=許可〔一般的な禁止の個別の解除〕
  • 属さない=特許〔特別の権能の付与〕
  • 名前は最後に見る

迷ったときの手順を置きます。最初に、私人どうしの行為が先にあって、それを補うものか、を見ます。そうなら、認可です。そうでなければ、その行為は、もともとの自由に属するか、を見ます。属するなら許可。属さないなら特許です。名前は、最後に見ます。ここは、論文でも論点になりうる所です。裁量を処分の性質から読む型は、裁量の回で扱います。

3つの問いの答え・まとめ

3つの問いの答え(問い1 3枚は同じ許可か=違う。①許可②特許③認可/問い2 受けずに始めたら=①コーヒーの代金の契約は有効〔罰則や監督処分は別〕②道路を使う権利は生じない③畑の所有権は移らない〔効力を生じない〕/問い3 要件がそろえば出さなければならないか=①県は許可しなければならない方向〔狭い〕②町は与えることができる〔広い〕③農業委員会=『しなければならない』とは書かれていない〔農地法3条2項=許可をすることができない場合を並べる形・当たれば原則として出せない〕) 図:3つの問いの答え

  • 問い1 3枚は同じ許可か=違う。①許可②特許③認可
  • 問い2 受けずに始めたら=①コーヒーの代金の契約は有効〔罰則や監督処分は別〕②道路を使う権利は生じない③畑の所有権は移らない〔効力を生じない〕
  • 問い3 要件がそろえば出さなければならないか=①県は許可しなければならない方向〔狭い〕②町は与えることができる〔広い〕③農業委員会=『しなければならない』とは書かれていない〔農地法3条2項=許可をすることができない場合を並べる形・当たれば原則として出せない〕

3つの問いに答えます。1つ目。3枚とも同じ許可か。違います。1枚目は許可、2枚目は特許、そして3枚目は認可です。法文の名前だけでは、分類は決まりません。2つ目。受けずに始めたらどうなるか。1枚目、飲食店営業。お客さんとのコーヒーの売買は、有効です。ただし、罰則や監督処分は、別に受けます。2枚目、町道のテーブル席。道路を使う権利は、生じません。3枚目、畑。効力を生じないので、所有権は、Bに移りません。3つ目。出さなければならないのか。1枚目、県は、基準に合えば許可しなければならない方向で、裁量は狭いです。2枚目、町は、許可を与えることができる、で、広いです。3枚目は、認可だからといって、裁量の広さは決まりません。同じ認可でも、建築協定は、認可しなければならない、と書く形でした。農地は、そのどれとも違います。農地法は、許可をすることができない場合を、2項に並べる形でした。ですから、3枚目の答えは、出さなければならない、とは書かれていない、です。農業委員会が見るのは、並べた場合に当たるかどうかで、当たれば、原則として出せません。Bは、農作業に常時従事しない場合には当たりません。この答えは、許可という名前からも、認可という分類からも出てきません。条文の形から出てきます。

ですから、名前ではなく、法律の仕組みで決めます。

今日の短答の誤り肢(法文に許可とあれば分類も許可〔誤り=農地法3条は認可・道路法32条は特許〕/無許可営業でした売買は当然に無効〔誤り〕/許可は要件を満たしても裁量で拒める〔誤り〕/特許は申請がなくても与えるのが通常〔誤り〕/認可は合意の内容を修正して与えられる〔誤り〕/認可を受けずにした契約も当事者間では有効〔誤り〕/認可があれば契約の私法上の瑕疵は治る〔誤り〕/公衆浴場の既存業者の営業上の利益は単なる反射的利益〔誤り=法的利益〕) 図:今日の短答の誤り肢

  • 法文に許可とあれば分類も許可〔誤り=農地法3条は認可・道路法32条は特許〕
  • 無許可営業でした売買は当然に無効〔誤り〕
  • 許可は要件を満たしても裁量で拒める〔誤り〕
  • 特許は申請がなくても与えるのが通常〔誤り〕
  • 認可は合意の内容を修正して与えられる〔誤り〕
  • 認可を受けずにした契約も当事者間では有効〔誤り〕
  • 認可があれば契約の私法上の瑕疵は治る〔誤り〕
  • 公衆浴場の既存業者の営業上の利益は単なる反射的利益〔誤り=法的利益〕

最後に、短答の誤り肢を確認します。法文に許可と書いてあれば、分類上も許可、は誤りです。農地法3条の許可は認可、道路法32条の許可は特許でした。無許可営業でした売買は、当然に無効、も誤りです。取引の効力は、当然には揺らぎません。許可は、要件を満たしていても、裁量で拒める、は誤りです。要件を満たせば、与える方向です。特許は、申請がなくても与えるのが通常、も誤りで、申請が前提です。認可は、合意の内容を修正して与えられる、は誤りです。法律の根拠が無い限り、できません。認可を受けずにした契約も、当事者間では有効、も誤りで、効力を生じません。認可があれば、契約の私法上の瑕疵は治る、も誤りです。公衆浴場の既存業者の営業上の利益は、単なる反射的利益、も誤りです。法律が保護する、法的利益です。

前回の表の残りのマス(4通のうち1通目、Bの店の建て替えの確認が残っている/次の回で別の名前の紙を分類に引き直す) 図:前回の表の残りのマス

  • 4通のうち1通目、Bの店の建て替えの確認が残っている
  • 次の回で別の名前の紙を分類に引き直す

最後に、前回、役場が出した4通の処分を物差しで仕分けた表の、残りのマスです。4通のうち1通目、Bの店の建て替えの確認が、行政庁の意思で効果が生じるのか、法律が効果を与えるのか、というマスは、次の回で埋めます。免許や確認など、別の名前の紙を、分類に引き直す回です。

参照条文

  • 食品衛生法55条1項・2項(各号は読み上げない)
  • 道路交通法90条1項(本文とただし書の柱書。各号は省略)
  • 食品衛生法55条3項
  • 公衆浴場法2条1項・2項・3項
  • 道路法32条1項(各号は読み上げない)
  • 道路法33条1項
  • 農地法3条(1項本文・2項本文・5項・6項。1項ただし書と各号・2項ただし書と各号・3項・4項は省略)
  • 建築基準法73条1項(柱書・1号・2号。3号は省略)
  • 建築基準法75条(括弧書きは読み上げない)

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