行政法ゼロから行政法#46

規律力と公定力

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第4章 行政行為 ㊻/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

違法だと確信しても、店は閉めなければならない

設例(町の役場Aが喫茶店の店主Bに営業停止の命令を出す/Bは「この命令は違法だ」と確信している/それでも取り消されるまでBは店を閉めなければならない/問い=この力はどの制度から来るのか) 図:設例

  • 町の役場Aが喫茶店の店主Bに営業停止の命令を出す
  • Bは「この命令は違法だ」と確信している
  • それでも取り消されるまでBは店を閉めなければならない
  • 問い=この力はどの制度から来るのか

今日は、営業停止の命令です。Bの喫茶店は、1週間、営業してはならない、と書いてあります。Bは読んで、こう確信しました。この命令は、違法だ。法律の要件を満たしていない。間違いない、と。違法なら、従わなくていいんじゃないですか。そう感じますよね。ところが、Bは店を閉めなければなりません。命令が取り消されるまでは、です。違法な命令でも従わなければならない。この割り切れなさの正体が、今日の主役です。命令には、Bに届いた時から、いくつかの力が備わります。その力は、どこから来るのか。これが、今日の問いです。答えの形だけ、先に言います。この力は、命令に生まれつき備わったものではありません。法律が、そういう制度を作っているから、生じる力です。

行政行為の効力は5つ——どの制度から来るか

効力5つ×出どころ制度(規律力=行政行為の定義そのもの〔権力的・一方的に権利義務を規律する〕/公定力=取消訴訟の排他的管轄/不可争力=出訴期間の限定/執行力=行政代執行法・国税徴収法など法律の根拠/不可変更力・実質的確定力=争訟を裁く性質をもつ行為〔裁決など〕/今日は規律力と公定力を扱う) 図:効力5つ×出どころ制度

  • 規律力=行政行為の定義そのもの〔権力的・一方的に権利義務を規律する〕
  • 公定力=取消訴訟の排他的管轄
  • 不可争力=出訴期間の限定
  • 執行力=行政代執行法・国税徴収法など法律の根拠
  • 不可変更力・実質的確定力=争訟を裁く性質をもつ行為〔裁決など〕
  • 今日は規律力と公定力を扱う

最初に、思い出す問いです。行政行為の最初の回で、行政行為の効力は、何の反映だと言いましたか?行政行為に最初から備わった性質ではなくて、法が仕組んだ制度の反映、でした。そのとき、効力の仮の説明を、3つ挙げました。公定力は、取消訴訟という制度の反映。不可争力は、出訴期間の制度の反映。執行力は、行政代執行法など、法律の根拠の反映です。今日は、それを5つに広げます。規律力、公定力、不可争力、執行力、不可変更力です。不可変更力には、実質的確定力という、近い仲間が付きます。どちらも、争いを裁く行為にだけ生じる力なので、5つ目の不可変更力の側にまとめて数えます。違いは、別の回で見ます。1つずつ、出どころと一緒に見ます。最初の2つは、Bの命令で確かめます。規律力は、命令の効力が生じたら、BもAも、その内容に縛られる力です。出どころは、行政行為の定義そのものです。行政行為は、法令に基づいて、一方的に権利義務を決める行為だからです。公定力は、命令が違法でも、取り消されるまで有効として扱われる力です。出どころは、取消訴訟の排他的管轄です。処分の効力を訴訟で争うなら、取消訴訟という専用の訴えに限る、という仕組みのことです。中身は、最後の節で見ます。不可争力は、争える期間を過ぎたら、もう争えなくなる力です。出どころは、出訴期間の制度です。執行力は、行政が裁判所を通さずに、自分で内容を実現できる力です。出どころは、行政代執行法や国税徴収法のような、法律の根拠です。

不可変更力は、争いを裁く性質を持つ行為、たとえば裁決を、出した庁自身が変えられない力です。出どころは、その行為が争いを裁く性質を持つことです。争いを裁いた庁が、後から自分で結論を変えられたら、裁いた意味がなくなるからです。混ざりやすいので、軸を1本にします。5つとも、どの制度から来る力か、で区別してください。力の名前を暗記するより、出どころを言えるようにするほうが、答案で崩れません。今日は、最初の2つ、規律力と公定力を埋めます。残りの3つは、別の回で埋めます。順番は、こうです。まず規律力。次に、公定力の意味と、体感できる例。それから、判例の言い方、公定力が及ぶ範囲。最後に、なぜ違法でも有効と扱うのか、その根拠です。

規律力——効力が生じると、双方が縛られる

契約と行政行為の対比(契約〔BがCから店の裏の駐車場を借りる〕=対等な両者の合意で拘束が生じる・同意しなければ生じない/行政行為〔AがBに出す営業停止命令〕=法令に基づく行政庁の一方的な判断で権利義務が変わる・Bの同意は要らない/効力が生じるとBも拘束され、Aも内容に拘束される) 図:契約と行政行為の対比

  • 契約〔BがCから店の裏の駐車場を借りる〕=対等な両者の合意で拘束が生じる・同意しなければ生じない
  • 行政行為〔AがBに出す営業停止命令〕=法令に基づく行政庁の一方的な判断で権利義務が変わる・Bの同意は要らない
  • 効力が生じるとBも拘束され、Aも内容に拘束される

まず、規律力です。定義から言います。行政行為が成立して、効力が生じると、相手方は、その内容に従うよう、法的に拘束されます。同時に、行政の側も、その内容に拘束されます。拘束が生じる理由が違います。具体例で比べます。BがCから、店の裏の駐車場を借りる契約を結ぶとします。Cが貸す、Bが借りる、という合意があって初めて、拘束が生じます。Bが同意しなければ、契約は成立しません。営業停止の命令は、違います。町の役場Aが、法令に基づいて、Bの店は1週間営業してはならない、と一方的に決めます。Bが同意したかどうかは、関係ありません。命令の効力が生じれば、Bは営業しない義務を負います。

行政の側が強いから、一方的に決められるのではありません。法律が、Aにその判断をする権限を与えているからです。行政行為の定義にある、一方的に決める、という言葉の意味は、ここにあります。申請に応じて出す処分でも、同じです。申請したから内容に縛られるのではなく、内容を決めるのは行政庁で、拘束の根拠は法律です。たとえば、Bが喫茶店を開くときに受けた、営業の許可も同じです。申請したのはBですが、許可を出すか、どんな条件を付けるかを決めたのは、許可を出した行政庁です。Bがその中身に縛られる根拠は、法律です。次に、行政の側の拘束です。規律力は、相手方だけでなく、命令を出したAも縛ります。たとえば、翌日になってAが、昨日の命令は気にしなくていいですよ、と口約束で黙認したとします。これは許されません。命令の内容を変えたり、なかったことにしたりするには、命令を取り消すなどの、正式な手続が要ります。

効力が生じれば、内容は、Bだけでなく、Aも縛る。これが規律力です。混同しやすい点を、1つ言います。規律力は、成立した行為の内容に縛られる力です。違法でも取り消されるまで有効、という力は、別の力で、あとで見る公定力です。

効力が生じる時期(一般=相手方が内容を知った時、または知りうる状態になった時/例=命令書が郵便でBの店に届き郵便受けに入った時/告示で生じる場合=法律が告示の日から効力を生ずると定める〔事業の認定〕/理由=関係者が大勢いて一人ずつ届けられない) 図:効力が生じる時期

  • 一般=相手方が内容を知った時、または知りうる状態になった時
  • 例=命令書が郵便でBの店に届き郵便受けに入った時
  • 告示で生じる場合=法律が告示の日から効力を生ずると定める〔事業の認定〕
  • 理由=関係者が大勢いて一人ずつ届けられない

では、その拘束は、いつから生じるのか。効力が生じる時期です。行政行為の最初の回で、一言だけ置きました。行政行為は、外部に表示されて成立し、相手方に到達して、効力が生じます。縛るのは、効力が生じた時からです。今日は、その時期を詳しく見ます。一般には、相手方が内容を知った時、または知ろうと思えば知れる状態になった時から、効力が生じると説明されます。例です。Aが命令書を郵送して、Bの店の郵便受けに入ったとします。Bがまだ開けていなくても、読めば分かる状態になりました。この時から、効力が生じるという考え方です。

開けるかどうかをBの気分に任せると、Bは開けずに、いつまでも逃げられてしまいます。かといって、知りようもない命令に従え、というのも不意打ちです。そこで、知ることができる状態になった時を、線にします。ただし、告示で効力が生じると、法律が決めている場合もあります。相手が大勢いて、一人ずつ届けられない場面です。最初の回で見た、道路の供用開始の公示も、この形でした。例が、土地収用法の事業の認定です。道路やダムなどの工事のために、土地を取得できる事業だと認める行為です。条文は、骨格だけ読みます。

条文土地収用法26条4項

土地収用法第26条第4項 事業の認定は、第一項の規定による告示があつた日から、その効力を生ずる。

事業の認定は、告示があった日から、効力を生じます。関係する人が大勢いるので、告示の日、と法律が決めています。規律力は、ここまでです。次の公定力が、この回の山場です。

公定力——違法でも、取り消されるまで有効

公定力の定義(違法であっても、権限のある国家機関が取り消すまでは、有効なものとして扱われる力/何人もその効力を否定できない/適法とみなす力ではない/私人の契約=違法なら当然に無効 ↔ 行政行為=違法でも一定の手続を経ない限り有効と扱う) 図:公定力の定義

  • 違法であっても、権限のある国家機関が取り消すまでは、有効なものとして扱われる力
  • 何人もその効力を否定できない
  • 適法とみなす力ではない
  • 私人の契約=違法なら当然に無効 ↔ 行政行為=違法でも一定の手続を経ない限り有効と扱う

公定力の定義を、言い切ります。公定力とは、違法であっても、権限のある国家機関が取り消すまでは、有効なものとして扱われる力です。押さえる点は、2つです。1つ目は、有効と扱う、であって、適法とみなす、ではないことです。違法は、違法のままです。2つ目は、何人も、その効力を否定できないことです。私人も、ほかの行政庁も、裁判所も、取り消すための手続を通さずに、効力を否定することはできません。たとえば、道路に通行止めの看板が立っていたとします。ところが、その看板は、実は誤って立てられたものでした。それでも、看板を撤去する手続が済むまでは、通ってはいけません。看板は、誤りのままです。でも、撤去されるまでは、有効な看板として扱われます。これが、有効と扱う、です。誤った看板が、正しい看板になるわけではありません。これが、適法とみなさない、です。

契約では、違法な中身は最初から無効になるのが基本です。たとえば、公序良俗、つまり社会の秩序や道徳に反する契約は、最初から効力がありません。誰も従う必要がありません。行政行為は、逆です。違法でも、一定の手続を経ない限り、有効と扱われます。ここで、冒頭のBに戻ります。

営業停止命令の体感(Aの命令が出る→Bは違法だと確信→取消訴訟などで取り消されるまでBは営業できない/従わずに営業を続けるとさらに重い不利益処分や罰則に進む場合がある/「違法だから従わない」は通らない) 図:営業停止命令の体感

  • Aの命令が出る→Bは違法だと確信→取消訴訟などで取り消されるまでBは営業できない
  • 従わずに営業を続けるとさらに重い不利益処分や罰則に進む場合がある
  • 「違法だから従わない」は通らない

Bは、命令が違法だと確信しています。それでも、取り消されるまでは、1週間、店を閉めなければなりません。命令は、有効と扱われるからです。閉めずに営業を続けると、さらに重い不利益処分や、罰則に進む場合があります。違法だから従わない、は通らないのです。取消訴訟を起こせば、すぐ止まるのでは、と思うかもしれません。起こしただけでは、原則として、効力は止まりません。止める仕組みは、別にあります。それは、後の章で扱います。問いです。Bは、命令が違法だと確信しています。それでも、店を閉めるべきなのは、なぜでしょうか?

命令が違法でも、取り消されるまでは、有効と扱われるからです。公定力がある、ということですね。公定力があるので、取り消されるまでは、有効なものとして従わなければなりません。なぜ、そんな仕組みが必要なのでしょうか。理由を1つ挙げます。Bのような店が、町に100軒あるとします。命令が出るたびに、各店が、これは違法だと自分で判断して、従うか決められるとしたら、どうなるでしょうか。命令を出しても、守る店と守らない店が出て、バラバラになりますね。違法かどうかの判断は、裁判所などの決まった場で、決まった手続で行うことにして、それまでは有効に扱う。そうしないと、行政が、まともに動かなくなってしまうからです。ただ、これは、なぜ違法かどうかの判断を決まった手続に集めるのか、という中身の側の理由です。この理由で足りるかには、疑問も出されています。それは、根拠の節で見ます。

税務署の更正処分から差押えまで(税務署が所得税の更正処分をする→納税者は違法だと考える→納期限に払わない〔国税通則法37条1項〕→督促→督促を受けても払わない→財産の差押え〔国税徴収法47条1項〕/違法だから払わない、は通らない/取消訴訟を起こしただけでは手続の進行は止まらない) 図:税務署の更正処分から差押えまで

  • 税務署が所得税の更正処分をする→納税者は違法だと考える→納期限に払わない〔国税通則法37条1項〕→督促→督促を受けても払わない→財産の差押え〔国税徴収法47条1項〕
  • 違法だから払わない、は通らない
  • 取消訴訟を起こしただけでは手続の進行は止まらない

もう1つ、体感できる例です。今度は税金です。登場するのは、町の役場Aではなく、税務署です。税務署が、ある納税者に、所得税の更正処分をしました。更正処分とは、申告された税額を、税務署の側で調べ直して、改める処分のことです。納税者は、この更正は違法だ、と考えます。そこで、納期限に、払いませんでした。すると、税務署は、督促をします。それでも払わなければ、財産の差押えに進みます。滞納処分と呼ばれる手続です。自分の判断で、納税を拒むことはできません。更正処分が違法だと思うなら、取り消してもらう道を、通らなければなりません。取り消されない限り、更正処分は有効と扱われ、納税の義務があるものとして、手続が進みます。

取り消される道は2つ(争訟取消し=私人が不服申立て〔審査請求など〕や取消訴訟を起こして認められる/職権取消し=処分をした行政庁が自ら取り消す/行政事件訴訟法3条2項=処分の取消しの訴え/8条1項=審査請求ができる場合でも直ちに取消訴訟を提起できる〔原則〕) 図:取り消される道は2つ

  • 争訟取消し=私人が不服申立て〔審査請求など〕や取消訴訟を起こして認められる
  • 職権取消し=処分をした行政庁が自ら取り消す
  • 行政事件訴訟法3条2項=処分の取消しの訴え
  • 8条1項=審査請求ができる場合でも直ちに取消訴訟を提起できる〔原則〕

では、有効と扱われる処分を、取り消すには、どうするのか。道は、2つです。1つ目は、争訟取消しです。私人が、不服申立てや取消訴訟を起こして、認められて取り消される道です。不服申立ての代表が、審査請求です。2つ目は、職権取消しです。処分をした行政庁が、自分で取り消す道です。職権取消しの細かい中身は、別の回で扱います。1つ目の、取消訴訟の条文です。行政処分を軸にした体系の回でも見た、行政事件訴訟法の3条2項です。

条文行政事件訴訟法3条2項

行政事件訴訟法第3条第2項 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

処分の取消しの訴えとは、行政庁の処分の取消しを求める訴訟のことです。Bの営業停止命令も、税務署の更正処分も、ここでいう処分です。処分が違法なら、この訴えで、取消しを求めます。次に、審査請求との関係です。

条文行政事件訴訟法8条1項

行政事件訴訟法第8条第1項 処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。

本文は、審査請求ができる場合でも、直ちに取消訴訟を起こしてよい、という意味です。審査請求にするか、訴訟にするかは、自分で選べるのが原則です。ただし書は、法律が、審査請求の裁決を経た後でなければ訴えられない、と定めている場合の例外です。その例外は、別の回で扱います。

判例の言い方——違法でも完全に効力を持つ

事案(ある県の農地委員会が訴願〔今の審査請求にあたる〕の裁決を出した→後から自分でその裁決を取り消し、別の結論の裁決をした/裁決庁が自分で裁決を取り消すのは原則許されない=違法/しかし取消しの裁決は取り消されておらず、当然無効とも言えない→有効な効力を持つ/上告棄却) 図:事案

  • ある県の農地委員会が訴願〔今の審査請求にあたる〕の裁決を出した→後から自分でその裁決を取り消し、別の結論の裁決をした
  • 裁決庁が自分で裁決を取り消すのは原則許されない=違法
  • しかし取消しの裁決は取り消されておらず、当然無効とも言えない→有効な効力を持つ
  • 上告棄却

公定力を、最高裁がどう言っているか。事案から見ます。ある県の農地委員会が、訴願の裁決を出しました。訴願とは、今の審査請求にあたる、昔の不服申立てです。委員会は、いったん出した裁決を、後から自分で取り消して、別の結論の裁決をしました。裁決を出した庁が、その裁決を自分で取り消すことは、原則として許されません。ですから、この取消しの裁決は、違法です。争いを裁いた庁が自分で覆せば、裁いた意味がなくなるからです。最初に見た、不可変更力の話です。違法なら、その取消しの裁決は、効力がないんじゃないですか。そこが、争点でした。判決は、効力を認めました。判旨には、当然無効という言葉が出てきます。取り消す手続を待たずに、初めから効力がない、という意味です。判旨を読みます。

判例最判昭30・12・26 民集9巻14号2070頁

違法な裁決の自己取消しと効力 訴願裁決庁が一旦なした訴願裁決を自ら取り消すことは、原則として許されないものと解すべきであるから……違法であるといわねばならない。しかしながら、行政処分は、たとえ違法であつても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認むべき場合を除いては、適法に取り消されない限り完全にその効力を有するものと解すべきところ、茨城県農地委員会のなした前記訴願裁決取消の裁決は、いまだ取り消されないことは原判決の確定するところであつて、しかもこれを当然無効のものと解することはできない。

判旨の読み方(1 たとえ違法であっても/2 除かれるのは違法が重大かつ明白で当然無効といえる場合〔別の回〕/3 それ以外は適法に取り消されない限り完全に効力を有する/この事案=違法だが取り消されておらず当然無効でもない→有効/境界=重大かつ明白な違法は取消しを待たず無効の側) 図:判旨の読み方

  • 1 たとえ違法であっても
  • 2 除かれるのは違法が重大かつ明白で当然無効といえる場合〔別の回〕
  • 3 それ以外は適法に取り消されない限り完全に効力を有する
  • この事案=違法だが取り消されておらず当然無効でもない→有効
  • 境界=重大かつ明白な違法は取消しを待たず無効の側

読み方を、3つに分けます。まず、たとえ違法であっても。次に、除かれるのは、違法が重大かつ明白で、当然無効といえる場合です。最後に、それ以外なら、適法に取り消されない限り、完全に効力を持つ。適法に、とは、権限のある国家機関が、正しい手続で、という意味です。さっき見た、取消訴訟や審査請求、職権取消しの道です。この事案は、どちらの側でしょうか。委員会の自己取消しは、違法でした。でも、まだ誰にも取り消されていませんし、当然無効とまでは言えません。ですから、有効な効力を持つ。除かれる側ではありません。なぜ、違法なのに効力を認めるのか。公定力の節で見た、町の100軒の店を思い出してください。違法かどうかを、それぞれが自分で決めて従わなくてよいとすると、行政が動かなくなります。だから、違法かどうかは取り消すための決まった手続で決め、取り消されるまでは有効と扱うのです。

重大かつ明白って、どんな場合ですか。そこは、別の回で扱います。ここでは、違法のうち、ごく例外だけが除かれて、ほとんどの違法は、取り消されるまで有効と扱われる、と押さえてください。境界を言い直します。違法だけれど、重大かつ明白とまでは言えない処分は、取り消されるまで有効です。違法が重大かつ明白で、当然無効の処分は、取り消しを待たずに、無効です。無効の処分には、公定力が及びません。この判決が答えたのは、違法だけれど、取り消されてもいないし当然無効でもない裁決は有効だ、という点までです。どんな違法なら重大かつ明白といえるのか、その物差しは、この判決からは出てきません。注意です。この事案は、裁決の自己取消しでした。でも、定式そのものは、行政処分一般について言っています。ですから、Bの営業停止命令にも、税務署の更正処分にも、そのまま当てはまります。

公定力が及ぶ範囲——その行為の法的効果だけ

範囲(公定力が及ぶ=処分の法的効果〔営業停止命令なら営業してはならない/建築確認なら計画が基準に適合するとの確認〕/及ばない=裏庭の所有権〔BとCは民事で争う〕・隣人Cの民事上の差止め請求) 図:範囲

  • 公定力が及ぶ=処分の法的効果〔営業停止命令なら営業してはならない/建築確認なら計画が基準に適合するとの確認〕
  • 及ばない=裏庭の所有権〔BとCは民事で争う〕・隣人Cの民事上の差止め請求

次の問いです。公定力は、どこまで及ぶのか。結論は、その行為の法的効果にだけ及ぶ、です。具体例で見ます。Bは、喫茶店の裏庭に、建て増しをしたくなりました。ところが、その裏庭の境界で、隣人Cと、もめています。Bは、裏庭は全部Bの土地だ、と主張します。Cは、一部はCの土地だ、と主張します。

設例(Bが町の役場Aから建築確認を受けて裏庭に建て増しをしたい/裏庭の境界でBと隣人Cが争う/確認=計画が建築基準関係規定に適合することの確認/確認があっても裏庭がBの土地と決まったわけではない) 図:設例

  • Bが町の役場Aから建築確認を受けて裏庭に建て増しをしたい
  • 裏庭の境界でBと隣人Cが争う
  • 確認=計画が建築基準関係規定に適合することの確認
  • 確認があっても裏庭がBの土地と決まったわけではない

Bは、町の役場Aに、建築確認を申請して、受けました。条文は、骨格だけ読みます。

条文建築基準法6条4項

建築基準法第6条第4項 4 建築主事等は、第一項の申請書を受理した場合においては、同項第一号又は第二号に係るものにあつてはその受理した日から三十五日以内に、同項第三号に係るものにあつてはその受理した日から七日以内に、申請に係る建築物の計画が建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し、審査の結果に基づいて建築基準関係規定に適合することを確認したときは、当該申請者に確認済証を交付しなければならない。

骨格です。申請に係る建築物の計画が、建築基準関係規定に適合するかどうかを審査し、適合することを確認したときは、確認済証を交付しなければならない。ここで確認されるのは、計画が建築基準関係規定、つまり建物について定めた基準に、適合する、という点です。裏庭が誰の土地か、は審査の対象ではありません。ですから、確認を受けても、裏庭がBの土地だと決まったわけではありません。前回見たとおり、確認の法的効果は、その計画で工事ができるようになること、です。公定力が及ぶのは、この効果だけです。土地の所有権は、決めません。所有権の争いは、民事の手続で決着をつけます。逆の側から見ても、同じです。Cが、あの土地はCのものだから確認は違法だ、と主張して確認の取消しを求めたとします。でも、土地が誰のものかは確認の審査の対象ではないので、その主張で確認が違法になるわけではありません。土地の争いは、民事で決める話です。

営業許可と民事の差止め(Bの喫茶店は営業の許可を受けている/隣人Cが換気扇の騒音と臭いを理由に民事で差止めを求める/許可があっても民事の差止めの請求は妨げられない/民事の判決が出ても許可の効力が自動的に消えるわけではない) 図:営業許可と民事の差止め

  • Bの喫茶店は営業の許可を受けている
  • 隣人Cが換気扇の騒音と臭いを理由に民事で差止めを求める
  • 許可があっても民事の差止めの請求は妨げられない
  • 民事の判決が出ても許可の効力が自動的に消えるわけではない

もう1つ、例です。Bの喫茶店は、営業の許可を受けています。ところが、隣人Cは、厨房の換気扇の騒音と臭いに悩まされて、民事の裁判で、止めてほしい、と求めました。営業の許可があっても、Cの民事の請求が、それだけで退けられることはありません。許可は、行政上の営業の禁止を解くものです。隣人との間の、民事上の権利関係までは、決めません。ですから、許可があっても、民事の差止めの請求は、妨げられません。行政行為の分類の回で見た、許可は禁止を解くだけで、私法上の権利までは与えない、という話と同じ向きです。行為の中身が法的効果を決め、公定力は、その法的効果の範囲でだけ働きます。反対に、民事の判決で差止めが認められても、許可の効力が自動的に消えるわけでもありません。別の問題だからです。ただし、公共性の高い施設の場合に、民事の差止めがどこまで認められるかは、また別の問題があります。それは、別の回で扱います。整理します。公定力は、処分の法的効果を、取消しの手続でしか否定できなくする力です。処分の前提にある事実や、私法上の権利関係までは、決めません。つまずきどころです。許可が出た、は、適法と確定した、ではありません。許可の法的効果は、有効と扱われます。でも、そのことで、適法だと決まったわけではありません。公定力が、適法とみなす力ではない、という点と、同じ根っこです。

根拠——なぜ違法でも有効と扱うのか

根拠の変遷・かつての説明(かつての説明=適法性の推定〔国家は正しい処分をするもの〕→維持できない〔行政庁の判断が正しい論理必然性はない〕) 図:根拠の変遷・かつての説明

最後の問いです。そもそも、なぜ違法な処分を、有効と扱うのか。その前に、思い出す問いです。さっき見た、取消訴訟は、何を求める訴えでしたか?処分の取消しを求める訴えでした。この取消訴訟が、今日の根拠の鍵になります。もう1問、先に聞きます。違法かもしれない処分が、有効と扱われるのは、行政庁の判断が、正しいからでしょうか?違うと思います。間違っている可能性があるから、取消訴訟があるんです。ところが、かつては、行政庁の判断は正しいという前提で説明されていました。適法性の推定、という考え方です。国家は、正しい処分をするものだ、という公権力への信頼が背景にありました。処分は適法だと推定されるから、有効に扱う、という説明です。この説明は、今は維持できません。行政庁の判断が正しいという論理的な必然性は、どこにもないからです。現に、違法な処分が出て、取消訴訟で取り消されることがあります。

根拠の変遷・今の通説(かつての説明=適法性の推定→維持できない/今の通説=取消訴訟の排他的管轄/中身=処分の違法は専用の手続で争う) 図:根拠の変遷・今の通説

  • かつての説明=適法性の推定→維持できない
  • 今の通説=取消訴訟の排他的管轄
  • 中身=処分の違法は専用の手続で争う

そこで、今の通説は、別の説明をします。立法者は、取消訴訟という、処分を争うための専用の訴訟の形を設けました。処分に違法があるなら、この手続を使うはずです。ですから、ほかの訴訟の形で、処分の効力を争うことは、原則としてできません。これを、取消訴訟の排他的管轄と言います。たとえで説明します。町の役場に、処分への苦情だけを受け付ける、専用の窓口が1つあるとします。ほかの窓口に苦情を持ち込んでも、受け付けてもらえません。専用の窓口を通って、取り消しの結果が出るまでは、処分は、そのまま動き続けます。この専用の窓口が、取消訴訟です。ほかの窓口に持ち込めない、が排他的管轄です。ほかの訴訟では、原則として、処分の効力を否定できません。ですから、効力をなくせるのは、取消訴訟などで取り消されたときだけです。取り消されるまでは、誰も効力を否定できないので、有効なものとして扱われます。公定力は、その結果として出てくる力です。最初の回で、公定力は取消訴訟制度の反映、と言いました。その中身が、ここで埋まります。行政処分を軸にした体系の回で、処分の効力を否定したいときは取消訴訟の道を通す、その理由は後で見る、と言いました。その理由も、これです。決め手を、1つ添えます。適法性の推定が使えない以上、違法かもしれない処分を有効と扱う理由は、実際に法律が置いている手続、つまり取消訴訟から説明するほかありません。それで、今の通説は、排他的管轄に根拠を置きます。

根拠の変遷・残る弱さ(かつての説明=適法性の推定→維持できない/今の通説=取消訴訟の排他的管轄〔処分の違法は専用の手続で争う〕/残る弱さ=形式的な説明にとどまる) 図:根拠の変遷・残る弱さ

  • かつての説明=適法性の推定→維持できない
  • 今の通説=取消訴訟の排他的管轄〔処分の違法は専用の手続で争う〕
  • 残る弱さ=形式的な説明にとどまる

通説の説明には、弱さが残ります。取消訴訟が設けられているから、という形式的な説明にとどまるからです。窓口が1つに絞られているのは分かります。でも、なぜ絞ることが合理的なのか。紛争を合理的に解決するためか、法治主義を守るためか。そこは、十分に説得的とは言えない、と指摘されています。公定力の節で見た、100軒の店がバラバラになる、という話は、このうちの、紛争を合理的に解決する、という側の理由です。ただ、行政が動かなくなるのは困る、というだけで、違法なものを有効と扱ってよいのか。そこに疑問が残る、というのが、ここでいう弱さです。つまり、公定力は、やや弱い根拠に、かろうじて支えられている力です。それでも、答案では、この通説に沿って書きます。答案での書き方です。公定力があるから、で止めないでください。取消訴訟の排他的管轄があるから、まで書きます。

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今日のまとめ(効力5つ=規律力・公定力・不可争力・執行力・不可変更力/規律力=効力が生じると相手方も行政も内容に縛られる・時期は知った時または知りうる状態になった時・告示で生じる場合もある/公定力=違法でも・取り消されるまで・適法とみなすのではない/取り消される道は争訟取消しと職権取消し/及ぶ範囲=法的効果だけ/根拠=取消訴訟の排他的管轄〔形式的で実質は弱い〕) 図:今日のまとめ

  • 効力5つ=規律力・公定力・不可争力・執行力・不可変更力
  • 規律力=効力が生じると相手方も行政も内容に縛られる・時期は知った時または知りうる状態になった時・告示で生じる場合もある
  • 公定力=違法でも・取り消されるまで・適法とみなすのではない
  • 取り消される道は争訟取消しと職権取消し
  • 及ぶ範囲=法的効果だけ
  • 根拠=取消訴訟の排他的管轄〔形式的で実質は弱い〕

まとめます。冒頭のBの問いに、答えます。違法だと確信しても、Bが店を閉めなければならないのは、なぜか。命令に、公定力があるからです。公定力とは、違法であっても、権限のある国家機関が取り消すまでは、有効なものとして扱われる力です。その出どころは、取消訴訟の排他的管轄です。処分の違法は、取消訴訟という専用の窓口で争うことになっているので、取り消されるまでは、有効と扱われます。公定力の3点は、違法でも、取り消されるまで、適法とみなすのではない、です。取り消される道は、争訟取消しと、職権取消しの2つです。及ぶ範囲は、その行為の法的効果だけです。建築確認は、敷地の所有権を決めません。営業の許可は、隣人の民事の差止めを妨げません。規律力は、効力が生じた時点で、相手方も行政も、内容に縛られる力でした。時期は、相手方が知った時、または知りうる状態になった時です。告示で生じる、と法律が決める場合もあります。

規律力は、成立した内容に縛られる力です。公定力は、違法でも取り消されるまで有効と扱う力です。

今日の短答の誤り肢(公定力は行政行為を適法にする効力である〔誤り=有効と扱うだけ〕/公定力のある処分は違法なら当然に無効になる〔誤り=取り消されるまで有効〕/公定力の根拠は適法性の推定である〔誤り=今の通説は取消訴訟の排他的管轄〕/公定力は処分の前提となる私法上の権利関係にも及ぶ〔誤り=法的効果だけ〕/規律力は行政庁の側を拘束しない〔誤り=行政庁も拘束される〕) 図:今日の短答の誤り肢

  • 公定力は行政行為を適法にする効力である〔誤り=有効と扱うだけ〕
  • 公定力のある処分は違法なら当然に無効になる〔誤り=取り消されるまで有効〕
  • 公定力の根拠は適法性の推定である〔誤り=今の通説は取消訴訟の排他的管轄〕
  • 公定力は処分の前提となる私法上の権利関係にも及ぶ〔誤り=法的効果だけ〕
  • 規律力は行政庁の側を拘束しない〔誤り=行政庁も拘束される〕

最後に、短答の誤り肢を確認します。公定力は、行政行為を適法にする効力である、は誤りです。有効と扱うだけで、違法は違法のままです。公定力のある処分は、違法なら当然に無効になる、も誤りです。取り消されるまでは、有効と扱われます。公定力の根拠は、適法性の推定である、は、今は誤りです。今の通説は、取消訴訟の排他的管轄に根拠を置きます。公定力は、処分の前提となる私法上の権利関係にも及ぶ、は誤りです。及ぶのは、その行為の法的効果だけです。規律力は、行政庁の側を拘束しない、も誤りです。成立した行為の内容には、行政庁も拘束されます。取消訴訟以外の訴訟、たとえば国家賠償の訴えで、取り消されていない処分を違法だと言えるのか。公定力がどこまで効くかは、論文でも論点になりうる所です。

参照条文

  • 土地収用法26条4項
  • 行政事件訴訟法3条2項
  • 行政事件訴訟法8条1項
  • 建築基準法6条4項

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