行政法ゼロから行政法#47

公定力の限界

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第4章 行政行為 ㊼/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

取り消していない命令の違法を、別の窓口で言えるか

設例(町の役場AがBに営業停止命令を出す/Bは違法と確信している/Bの前に窓口が3つ=取消訴訟〔命令の効力を取り消す〕・刑事裁判〔起訴されたとき〕・賠償の裁判〔損害をお金で求める〕/問い=取消訴訟以外の窓口で「命令は違法だ」と言えるか) 図:設例

  • 町の役場AがBに営業停止命令を出す
  • Bは違法と確信している
  • Bの前に窓口が3つ=取消訴訟〔命令の効力を取り消す〕・刑事裁判〔起訴されたとき〕・賠償の裁判〔損害をお金で求める〕
  • 問い=取消訴訟以外の窓口で「命令は違法だ」と言えるか

今日は、取消訴訟を経ていない処分の違法を、ほかの裁判で言えるのか、という問いに答えます。もう1つ、前に余目町の事件で、会社が無罪になったのを見ました。違法な認可でも取り消されるまで有効、という考え方と、この無罪が、どうつながるのか。今日はそれにも答えます。前回の内容を、一言で言い直します。町の役場Aが、喫茶店の店主Bに、営業停止の命令を出しました。Bは違法だと確信していますが、命令は取り消されるまで有効と扱われます。これが公定力です。理由は、処分の効力を争うなら、取消訴訟という専用の窓口に限る、という仕組みがあるから、でした。

ここで、Bの前に窓口が3つ並んでいると考えてください。1つ目が取消訴訟で、命令の効力を取り消す窓口です。2つ目が刑事裁判で、命令に従わずに営業を続けて起訴されたときに立つ場です。3つ目が賠償の裁判で、命令のせいで出た損害を、お金で請求する窓口です。前回扱ったのは、1つ目でした。では、2つ目と3つ目の窓口で、命令は違法だと言ってよいのか。取消訴訟を通らずに言えば、専用の窓口を無視することにならないか。この疑問が、今日の出発点です。結論の形だけ、先に言います。言えます。ただし、専用の窓口の例外が認められるからではありません。そもそも、窓口が重ならない場面だからです。順番は、こうです。まず、問いの立て方を整えます。次に刑事裁判で、余目町の事件と、その後の判例を見ます。最後に国家賠償で、一般の処分、課税処分、生活保護の廃止決定の順に見ていきます。本題の前に、思い出す問いです。前回、公定力の根拠は何だと言いましたか?

取消訴訟の排他的管轄です。処分の効力を争うなら専用の窓口に限られるので、取り消されるまでは有効と扱う、でした。

公定力は制度の結果にすぎない——だから問いが開く

根拠の変遷(かつて=適法性の推定〔国は正しい処分をするはず〕→有効≒実体的に有効/今=取消訴訟の排他的管轄があるので「有効と扱う」/→窓口が違えば処分の違法を前提にできる場面がありうる) 図:根拠の変遷

  • かつて=適法性の推定〔国は正しい処分をするはず〕→有効≒実体的に有効
  • 今=取消訴訟の排他的管轄があるので「有効と扱う」
  • →窓口が違えば処分の違法を前提にできる場面がありうる

出発点は、公定力の位置づけです。公定力は、取消訴訟の排他的管轄の結果として出てくる力でした。この、結果という点が、今日の鍵です。昔の説明は、違いました。適法性の推定という考え方です。国は正しい処分をするものだから、処分は適法と推定され、だから有効なのだ、という説明です。この見方に立つと、有効とは、中身まで含めて実体として有効、という意味に近くなります。すると、別の訴訟で処分の違法を言う余地は、ほとんどありません。ところが、その説明は今は維持できないと、前回見ました。今の通説は、取消訴訟という制度があるから、便宜上、有効と扱う、という説明です。前回の看板で言い直します。誤って立てられた通行止めの看板は、誤りのままです。ただ、撤去を求める専用の窓口があるので、撤去されるまでは、看板として扱う。有効と扱うのは、窓口の仕組みに乗った扱いにすぎません。看板が正しくなったわけではありません。

取消訴訟の外にも窓口があります。そこで処分の違法を前提にしてよい場面がありうる。これで、問いが開きます。

2種類の訴え(処分の効力を否定する訴え=取消訴訟〔看板を撤去させる〕⇔処分の違法を理由に金銭を求める訴え=国家賠償〔看板のせいで出た損を請求する・看板は立ったまま〕/刑事=処分に違反した行為を罪に問う手続〔処分の効力そのものを争う場ではない〕) 図:2種類の訴え

  • 処分の効力を否定する訴え=取消訴訟〔看板を撤去させる〕⇔処分の違法を理由に金銭を求める訴え=国家賠償〔看板のせいで出た損を請求する・看板は立ったまま〕
  • 刑事=処分に違反した行為を罪に問う手続〔処分の効力そのものを争う場ではない〕

整理のために、訴えを2種類に分けます。1つは、処分の効力を否定する訴えです。取消訴訟がこれで、看板を撤去させる訴えにあたります。もう1つは、処分の違法を理由に、金銭を求める訴えです。国家賠償がこれで、看板のせいで出た損を請求する訴えです。看板そのものは、立ったままです。刑事裁判は、少し違います。処分に違反した行為を、罪に問う手続です。処分の効力を争う場ではありません。ただ、その罪が成り立つかを考えるときに、処分の効力がどう関わるかが問題になります。問いです。取消訴訟を経ていない別の訴訟で、処分の違法を言うことは、取消訴訟の排他的管轄に反するでしょうか?

結論から言うと、国賠も刑事も、処分の効力を取り消す場ではないので、排他的管轄には反しません。ただ、刑事はもう少し丁寧に見る必要があります。注意を2つ言います。1つ目、これは排他的管轄の例外ではなく、窓口が重ならない場面です。もう1つ、無効の処分は別の話で、別の回で扱います。今日は、取り消されるべき違法にとどまる処分を前提にします。判決で確かめましょう。その前に、思い出す問いです。前に見た余目町の事件です。業者の営業を規制するために、町が、近くの児童遊園を、知事に児童福祉施設として認可してもらった事件でした。その認可は、何を規制しうる効力を持たないと判断されましたか?

会社の浴場の営業を規制しうる効力を、持たない、でした。

刑事裁判①——余目町の事件は無罪

設例(BがAの営業停止命令に従わず営業を続ける→命令違反の罪で起訴→Bの主張=命令は違法だ・先に取消訴訟で勝ってはいない→刑事裁判所は命令の違法を理由に無罪にできるか/判決が答えたのはこの設例そのものではない) 図:設例

  • BがAの営業停止命令に従わず営業を続ける→命令違反の罪で起訴→Bの主張=命令は違法だ・先に取消訴訟で勝ってはいない→刑事裁判所は命令の違法を理由に無罪にできるか
  • 判決が答えたのはこの設例そのものではない

設例から入ります。Bが、Aの営業停止命令に従わず、営業を続けたとします。命令に違反した罪で、Bは起訴されました。Bは主張します。命令は違法だ。ただし、先に取消訴訟で勝ったわけではない。刑事裁判所は、命令の違法を理由に、Bを無罪にできるでしょうか。取消訴訟の窓口を通らず、刑事裁判の中で命令の違法を言う形です。ただ、この設例の答えを、判決が直接言っているわけではありません。次の事件で、実際の形を確かめます。

事件の構造(児童福祉施設の近くの一定区域では個室付浴場の営業を禁じる/約134.5メートル先に町立の児童遊園〔浴場の経営許可の51日前に知事が認可〕/罪になる条件=そこに児童福祉施設があること/その根拠=当時は知事の認可/認可に営業を規制しうる効力がない→条件を欠く→無罪) 図:事件の構造

  • 児童福祉施設の近くの一定区域では個室付浴場の営業を禁じる
  • 約134.5メートル先に町立の児童遊園〔浴場の経営許可の51日前に知事が認可〕
  • 罪になる条件=そこに児童福祉施設があること
  • その根拠=当時は知事の認可
  • 認可に営業を規制しうる効力がない→条件を欠く→無罪

事件は、余目町の事件です。判決の事実から、順に起こします。個室付浴場を営む会社がありました。この会社が、当時の風俗営業等取締法の違反で起訴されます。法律は、児童福祉施設の近くの一定の区域では、個室付浴場の営業を禁じていました。この会社の浴場から約134.5メートル先に、町立の児童遊園がありました。児童遊園は、児童福祉施設です。ですから、営業は禁止区域の中で、違反だ、という起訴でした。注目してほしいのは、罪が成り立つ条件です。罪になるには、そこに児童福祉施設がある、ことが条件です。そして、その条件を満たす根拠が、山形県知事の認可でした。当時は、町の児童遊園は、知事の認可を受けて、はじめて法律の上の児童福祉施設になる扱いでした。ですから、認可に効力が無ければ、近くに児童福祉施設があった、とは言えなくなります。児童遊園は、会社が浴場の経営許可を受ける51日前に、知事の認可を受けていました。この認可は、前に見たとおり、浴場の営業を規制することを主たる動機として、町が申請したものでした。

認可は取り消されていないんですよね。それでも罪は成り立たないんですか。そこが争点です。判決自身が、争点は、認可処分の適法性と有効性だ、と書いています。最高裁の結論は、こうです。認可には、行政権の濫用に相当する違法性があり、会社の営業を規制しうる効力を有しない。だから、児童福祉施設の存在の証明を欠く。無罪、です。最高裁が、原判決と第一審判決を破棄して、自ら無罪を言い渡しました。判旨を読みます。

判例最判昭53・6・16 刑集32巻4号605頁

認可の効力と、無罪の言渡し これを規制しうる児童福祉法七条に規定する児童福祉施設の存在についての証明を欠くことになり、被告会社に無罪の言渡をすべきものである。したがつて、原判決及び第一審判決は、犯罪構成要件に関連する行政処分の法的評価を誤つて被告会社を有罪としたものにほかならず

判旨の読み方(1 これを規制しうる児童福祉施設の存在の証明を欠く=罪の条件を満たさない/2 犯罪構成要件に関連する行政処分の法的評価=認可の効力を刑事の中で評価した/3 主文=破棄と無罪の言渡しのみ・認可の取消しは含まれない/4 「効力を有しない」はこの会社の営業との関係で) 図:判旨の読み方

  • 1 これを規制しうる児童福祉施設の存在の証明を欠く=罪の条件を満たさない
  • 2 犯罪構成要件に関連する行政処分の法的評価=認可の効力を刑事の中で評価した
  • 3 主文=破棄と無罪の言渡しのみ・認可の取消しは含まれない
  • 4 「効力を有しない」はこの会社の営業との関係で

読み方を、4つに分けます。冒頭の、これを、は、会社の浴場の営業を指します。1つ目。児童福祉施設の存在についての証明を欠く、とあります。罪の条件が満たされていない、ということです。2つ目。犯罪構成要件に関連する行政処分の法的評価、とあります。構成要件とは、罪が成り立つための条件のことです。認可の効力がどうかを、刑事裁判の中で評価したのです。3つ目。判決は、認可が取消訴訟で取り消されたとは認定していません。取消訴訟の有無にも触れていません。主文は、原判決などの破棄と無罪の言渡しだけで、認可の取消しは含まれていません。ですから、会社が取消訴訟を起こさなかった、とも、認可が取り消された、とも言えません。認可は、取り消されないまま、刑事の中で、効力を有しないと評価されたのです。4つ目。効力を有しない、は、この会社の営業との関係で、です。判決の言い回しは、会社の営業を規制しうる効力を有しない、でした。認可が誰にとっても消えた、という意味ではありません。

判決は、同じ認可をめぐる国家賠償の判決が、すでに確定していることにも触れています。前に読んだとおり、認可を、行政権の著しい濫用で違法として、賠償を認めた判決でした。違法な処分なら、いつでも無罪になる、ということですか。違います。この判決が言ったのは、行政権の濫用に相当する違法性がある認可は、営業を規制しうる効力を有しない、までです。どの程度の違法なら効力が否定されるのかという、一般的な物差しは、判決の中にありません。ここまでで、設例の形は見えました。取消訴訟を経ていなくても、刑事裁判の中で、処分の効力を評価して、無罪になることがある。次の節では、なぜ、それでよいのかを考えます。

刑事裁判②——なぜ取消訴訟を経なくてよいのか

理由の整理(判決自身は理由を述べていない→学説の説明/1 処罰規定の解釈=構成要件の解釈の問題/2 罪刑法定主義〔憲法31条〕/3 出訴期間〔行訴法14条〕/4 取消訴訟を起こす機会があったか/結論=取り消したのではなく、刑事の中で評価した) 図:理由の整理

  • 判決自身は理由を述べていない→学説の説明
  • 1 処罰規定の解釈=構成要件の解釈の問題
  • 2 罪刑法定主義〔憲法31条〕
  • 3 出訴期間〔行訴法14条〕
  • 4 取消訴訟を起こす機会があったか
  • 結論=取り消したのではなく、刑事の中で評価した

大事な注意から言います。なぜ取消訴訟を経なくてよいのか。その理由を、判決自身は述べていません。判決が言ったのは、犯罪構成要件に関連する行政処分の法的評価を誤った、という点までです。判断の理由の中では、憲法31条にも、取消訴訟にも、触れていません。ですから、これから挙げる理由は、学説による説明です。答案でも、判例はこう言った、とは書かないでください。構成要件の解釈として、と書きます。

理由1(処罰規定の解釈=構成要件の解釈の問題→刑事裁判所が自分で判断できる) 図:理由1(処罰規定の解釈=構成要件の解釈の問題→刑事裁判所が自分で判断できる)

1つ目の理由は、問題の性質です。設例のBで考えます。命令に違反した行為を処罰する規定は、命令が違法でも、守らなければ罰する趣旨だと読むのか。命令が違法なら罰しない趣旨だと読むのか。これは、処罰規定をどう解釈するかの問題です。犯罪構成要件の解釈の問題ですから、刑事裁判所が、自分で判断できます。余目町の事件でも、罪の条件は、児童福祉施設の存在でした。その条件を満たす根拠として、認可の効力を使えるか。その判断は、刑事裁判所が、罪が成り立つかを考える中で行います。

理由2(憲法31条・罪刑法定主義→構成要件の解釈は刑事で独自に/公定力を持ち込むと取消訴訟の結果で処罰が左右される) 図:理由2

  • 憲法31条・罪刑法定主義→構成要件の解釈は刑事で独自に
  • 公定力を持ち込むと取消訴訟の結果で処罰が左右される

2つ目の理由は、憲法です。条文を見ます。

条文日本国憲法31条

日本国憲法第31条 何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

法律の定める手続によらなければ、刑罰を科せられない。ここから、何が罪になるかは法律で決まっていなければならない、という罪刑法定主義が導かれます。法律が決めた罪の条件を満たしたかどうかは、刑事裁判所が、その法律に照らして確かめることになります。学説は、だから構成要件の解釈は、刑事裁判で独自にされるべきだと説明します。ここに公定力を持ち込むと、どうなるか。罪の条件を満たす行為をしたかどうかではなく、取消訴訟を起こして勝てたかどうかで、処罰が左右されてしまいます。これは、おかしいはずです。罪が成り立つかどうかが、法律の条件ではなく、取消訴訟の結果で決まってしまうからです。

理由3・4(出訴期間=行訴法14条/取消訴訟を起こす機会があったか) 図:理由3・4(出訴期間=行訴法14条/取消訴訟を起こす機会があったか)

3つ目の理由は、出訴期間です。前に、不可争力の出どころとして見た、取消訴訟を起こせる期間の制限です。

条文行政事件訴訟法14条1項

行政事件訴訟法第14条第1項 取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から六箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。

処分があったことを知った日から6か月を過ぎると、原則として、取消訴訟は起こせません。期間を過ぎた人に、先に取消訴訟を、とは求められません。4つ目の理由は、機会の有無です。被告人に、取消訴訟を起こす機会が実際にあったのか。余目町の事件では、会社に、知事の認可の取消しを求める原告適格があるかどうかさえ、はっきりしないと指摘されます。原告適格とは、その訴えを起こす資格のことです。中身は、別の回で見ます。取消訴訟で勝ってから来い、と求めるのは、酷だということです。

結論(取り消したのではなく、刑事の中で評価した/窓口が重なっていない) 図:結論(取り消したのではなく、刑事の中で評価した/窓口が重なっていない)

刑事裁判は、認可を取り消したのではありません。認可が、この会社の営業を規制しうる効力を持たないと、刑事事件の中で評価しただけです。認可そのものは、取り消されないまま残っています。判決の主文は、破棄と無罪の言渡しだけで、認可の取消しを含みません。それが、その根拠です。認可の効力がほかの人との関係でどうなるかは、別の話です。決め手を、1つ言います。排他的管轄が止めるのは、処分の効力を取消訴訟以外で否定することです。刑事裁判がしたのは、効力の否定ではなく、罪の条件を満たすかの判断でした。窓口が重なっていないのです。問いです。余目町の事件で、会社が無罪になったのは、認可が取り消されたからでしょうか?

違います。認可は取り消されないまま、規制しうる効力がないと、刑事の中で評価されたからです。

刑事裁判③——前歴の処分が有効のまま使われた例

事案の流れ(免許停止処分〔県警察本部長〕→審査請求は棄却・出訴期間内に取消訴訟を起こさず→最高速度20キロ超過〔反則行為〕→免許停止の前歴があるので「反則者に当たらない」として通常の公訴→別件の事故は傷害の証明がなく無罪〔安全運転義務違反の限度で有罪〕→それでも処分は有効) 図:事案の流れ

逆の側の判例も見ます。処分の違法を言えば、いつも無罪になるわけではありません。決定の事実を、順に追います。県の警察本部長が、軽傷の交通事故で、被告人に安全運転義務違反があったと認定しました。そして、違反の累積点数に基づいて、被告人を免許停止の処分にしました。被告人は、事故は起こしていない、点数は基準以下だ、処分は違法だ、と審査請求をしました。審査請求は棄却されます。被告人は、出訴期間内に、取消訴訟を起こしませんでした。その後、被告人は、最高速度を20キロ超える違反をしました。本来なら、反則金を納めれば刑事手続に進まない、反則行為にあたります。ところが、過去1年以内に免許停止処分の前歴があったので、反則者にあたらない、とされました。当時の道路交通法が、免許停止処分の前歴がある人を、反則金で済む扱いから外していたからです。通常の刑事手続で、公訴が提起されたのです。

最高裁の判断(別件は傷害の証明がなく無罪→それでも処分は無効でなく取り消されてもいない→公訴は適法) 図:最高裁の判断

ここで、事故のほうの刑事事件に、動きがありました。傷害の事実の証明がないとして、業務上過失傷害は無罪になったのです。そこで問題になったのは、免許停止の前提が崩れたのだから、前歴は使えず、公訴は不適法ではないか、という点です。最高裁は、こう判断しました。処分をした側は、処分の当時、相当な根拠のある関係資料に基づいて、傷害を認めていた。その後、刑事裁判で傷害の証明がないとして無罪になっても、処分が無効になるわけではない。結論を読みます。

判例最決昭63・10・28 刑集42巻8号1239頁

免許停止処分と公訴の適法性 そうすると、本件免許停止処分は、無効ではなく、かつ、権限のある行政庁又は裁判所により取り消されてもいないから、被告人を反則者に当たらないと認めてなされた本件公訴の提起は、適法である。

2つの刑事判例の比べ(余目町=認可は行政権の濫用に相当する違法で営業を規制しうる効力なし→罪の条件を欠く→無罪/免許停止=処分当時に根拠があり無効でなく取り消されてもいない→有効な前歴として扱われ公訴は適法/どちらも「取消訴訟を経たか」では分かれていない) 図:2つの刑事判例の比べ

  • 余目町=認可は行政権の濫用に相当する違法で営業を規制しうる効力なし→罪の条件を欠く→無罪
  • 免許停止=処分当時に根拠があり無効でなく取り消されてもいない→有効な前歴として扱われ公訴は適法
  • どちらも「取消訴訟を経たか」では分かれていない

余目町の事件と、並べます。余目町の事件では、認可が、行政権の濫用に相当する違法で、営業を規制しうる効力を有しないと評価されました。だから、罪の条件を欠いて、無罪です。一方、この決定では、免許停止の処分が、無効ではなく、取り消されてもいない、だから有効な前歴として扱われ、公訴は適法でした。2つの判例の分かれ目は、取消訴訟を経たかどうかではありません。2つの判決の事実を比べると、違いは、違法の程度と、その処分が刑事の条件としてどう使われたか、にあります。ただし、両者の関係を統一的に説明した判決はありません。ここは、事実を並べるとそう見える、という温度で押さえてください。2つの物差しを、2つの判例に当てます。違法の程度では、余目町の認可には、行政権の濫用に相当する違法がありました。免許停止は、処分の当時、相当な根拠のある資料に基づいていて、無効とはされませんでした。使われ方では、余目町は、認可の効力そのものが、罪の条件でした。免許停止は、処分を受けた前歴が、反則金で済む手続に乗れるかどうか、という入口の条件として使われました。つまずきどころです。この決定は、取消訴訟を経ていないから有効だ、と言っているのではありません。無効ではなく、取り消されてもいない、から有効だ、と言っています。前回読んだ、訴願裁決の取消しの判決と同じ形です。無効でなく、取り消されない限り、効力がある、という定式を、刑事の場面で使っています。

ですから、取消訴訟を経ていなければ、いつも有効に扱われる、でもなく、経ていなくても、必ず無罪になる、でもありません。この決定には、疑問を示す見解があります。刑事の側で、独自の観点から、事実を踏まえて、処分の有効性を認定するべきだった、という見方です。刑事の手続の側の細かい扱いは、刑事訴訟法の側で見ます。ここまでが、刑事です。

国家賠償①——取消しの判決は要らない

国賠の仕組み(Bが違法な営業停止命令の期間の休業損害を町に請求して勝つ→賠償金が出るだけ→命令は取り消されず有効と扱われたまま/取り消したいなら取消訴訟/効力を否定する訴え⇔違法を理由に金銭を求める訴え) 図:国賠の仕組み

  • Bが違法な営業停止命令の期間の休業損害を町に請求して勝つ→賠償金が出るだけ→命令は取り消されず有効と扱われたまま
  • 取り消したいなら取消訴訟
  • 効力を否定する訴え⇔違法を理由に金銭を求める訴え

次は、国家賠償です。設例に戻ります。Bは、違法な営業停止命令のせいで、まる1週間の売上を失いました。取消訴訟も、処分がはじめから無効だと確かめてもらう無効確認訴訟も、起こさずに、この休業の損害を、町に請求しました。これは、できるでしょうか。有効と扱われている命令なのに賠償が取れるのか、という引っかかりは、国賠訴訟で何が判断されるかを見ると解けます。問いです。国賠訴訟で原告が勝ったとき、処分の効力はどうなるでしょうか?勝訴したのだから、処分の効力もなくなる、のでしょうか。逆です。国賠訴訟では、処分の違法性は判断されます。でも、処分の効力の有無が判断されるわけではありません。Bが勝っても、町が賠償金を払うだけです。命令そのものは取り消されず、有効と扱われたままです。取り消したいなら、取消訴訟を起こします。ですから、国賠は、取消訴訟の排他的管轄に反しません。効力を否定する訴えと、違法を理由に金銭を求める訴えは、別の窓口だからです。決め手は、国賠は処分の効力に触れない、の1点です。この結論を言った判例を、見ます。ただ、先に注意があります。この判決は、国家賠償の事件ではありません。

事案(農地委員会が買収計画を立て公告→買収令書の交付前に買収の申請が取り下げられ、委員会は計画を取り消した→計画の対象とされた人が買収計画の無効確認を求めた→争点=計画は取り消されて存在しないのに無効確認を求める法律上の利益があるか/上告人は国賠請求の目的も主張→最高裁は利益を欠くとして上告棄却) 図:事案

  • 農地委員会が買収計画を立て公告→買収令書の交付前に買収の申請が取り下げられ、委員会は計画を取り消した→計画の対象とされた人が買収計画の無効確認を求めた→争点=計画は取り消されて存在しないのに無効確認を求める法律上の利益があるか
  • 上告人は国賠請求の目的も主張→最高裁は利益を欠くとして上告棄却

事案です。農地委員会が、自作農創設特別措置法に基づいて、国が土地を買い上げる買収計画を立てて、公告しました。ところが、買収を実行する書面、買収令書が交付される前に、買収の申請が取り下げられました。そこで委員会は、計画を取り消しました。計画の対象とされた人が、その買収計画の無効確認を求めました。争点は、計画はすでに取り消されて存在しないのに、なお無効確認を求める法律上の利益があるか、です。この人は、国家賠償を請求する目的もある、とも主張しました。最高裁は、無効確認を求める利益はないとして、上告を棄却しました。その中で、国賠の目的という主張を、退けています。その一節を読みます。

判例最判昭36・4・21 民集15巻4号850頁

国家賠償請求と取消し・無効確認の判決 行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ右行政処分につき取消又は無効確認の判決を得なければならないものではない

読み方です。国家賠償の請求をするには、あらかじめ取消しや無効確認の判決を得なければならないものではない、とあります。ですから、国賠の目的があるからといって、無効確認を求める独自の利益にはならない。国賠は、取消しなどを前提にしなくてよいのだから、という理由です。位置づけを正しく言います。国賠に取消判決は要らない、と、国賠の事件で判断した判決ではありません。無効確認の訴えの中で、国賠の目的という主張を退けた一節です。この一節は、国賠に取消判決は要らないことを前提にしています。取り消されるべき処分なら、国賠は必ず認められるんですか。違います。要件は別です。条文です。

条文国家賠償法1条1項

国家賠償法第1条第1項 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

要件に分けます。公権力の行使にあたる公務員が、職務を行うについて、故意または過失によって、違法に他人に損害を加えたとき、国や公共団体が賠償する。国賠には、故意または過失が要ります。ですから、取消訴訟で取り消されるべき処分でも、賠償が認められるとは限りません。取り消される、と、賠償される、はイコールではありません。取消訴訟でいう違法と、国賠法上の違法が同じかどうかは、別の回の主題です。まとめます。国賠に、あらかじめ取消しや無効確認の判決は要りません。国賠で勝っても、処分の効力は否定されません。その代わり、国賠の要件は別に満たす必要があります。

国家賠償②——課税処分でも同じか

問題の所在(課税処分の過納金について国賠で賠償を認めると→税が戻る=取り消したのと同じ経済効果/反対説・原審=出訴期間や不服申立ての制度が空になる・公定力を実質的に否定する/最高裁の答え=それでも不服申立てや取消訴訟を経ずに国賠を請求できる) 図:問題の所在

  • 課税処分の過納金について国賠で賠償を認めると→税が戻る=取り消したのと同じ経済効果
  • 反対説・原審=出訴期間や不服申立ての制度が空になる・公定力を実質的に否定する
  • 最高裁の答え=それでも不服申立てや取消訴訟を経ずに国賠を請求できる

国賠のほうは、金銭を納めさせる処分で、気になる問題があります。課税処分です。課税処分の違法を理由に、国賠で賠償を認めたとします。払い過ぎた税金が、お金として戻ってきます。これは、結果として、処分を取り消したのと同じ経済効果です。税が戻るなら、期間を過ぎた取消しを認めたのと同じだ。実際に、かつての反対説や、次に見る事件の原審は、そう考えました。課税処分には、一般論は当てはまらない。国賠を認めれば、公定力を実質的に否定することになる、という考え方です。最高裁は、これを退けました。事案から見ます。

事案(名古屋市の倉庫の所有者が固定資産税・都市計画税を納付/一般用の倉庫として評価されていたが実は冷凍倉庫等で評価はより低いはず〔経年減点補正率が違う〕/市は一部の年度を減額更正・一部は還付/それ以前の年度の過納金について、固定資産評価審査委員会への審査の申出を経ずに、国賠法1条1項で賠償を請求/原審=公定力の実質的否定として請求棄却→破棄差戻し) 図:事案

  • 名古屋市の倉庫の所有者が固定資産税・都市計画税を納付
  • 一般用の倉庫として評価されていたが実は冷凍倉庫等で評価はより低いはず〔経年減点補正率が違う〕
  • 市は一部の年度を減額更正・一部は還付
  • それ以前の年度の過納金について、固定資産評価審査委員会への審査の申出を経ずに、国賠法1条1項で賠償を請求
  • 原審=公定力の実質的否定として請求棄却→破棄差戻し

事案です。名古屋市に、倉庫を持つ所有者がいました。固定資産税と都市計画税を納めてきました。倉庫は、一般用の倉庫として評価されていました。ところが、実際は冷凍倉庫などにあたり、評価基準の経年減点補正率、つまり建物の古さに応じて評価を下げる割合が違うので、評価はより低くなるはずでした。後になって、市は、一部の年度を減額して改め、一部は還付しました。所有者は、それ以前の年度の払い過ぎについて、国家賠償法1条1項に基づいて、賠償を請求しました。昭和62年度から平成13年度までの分です。

固定資産税の不服の仕組み(審査の申出→取消訴訟/この道でしか争えない/所有者は審査の申出を経ていない) 図:固定資産税の不服の仕組み

  • 審査の申出→取消訴訟
  • この道でしか争えない
  • 所有者は審査の申出を経ていない

ここで効いてくるのが、固定資産税の不服の仕組みです。個別法ですから、骨格だけ読みます。

条文地方税法434条2項

地方税法第434条第2項 第四百三十二条第一項の規定により固定資産評価審査委員会に審査を申し出ることができる事項について不服がある固定資産税の納税者は、同項及び前項の規定によることによつてのみ争うことができる。

骨格です。固定資産の価格に不服があれば、まず固定資産評価審査委員会に審査を申し出て、その決定に不服があれば取消訴訟。この事項は、この道でしか争えない、と決められています。

原審と最高裁(原審=請求棄却→破棄/判旨1=取消し・無効確認の判決は要らない/判旨2=審査の申出や取消訴訟を経るまでもなく) 図:原審と最高裁

  • 原審=請求棄却→破棄
  • 判旨1=取消し・無効確認の判決は要らない
  • 判旨2=審査の申出や取消訴訟を経るまでもなく

この所有者は、その審査の申出を、経ていませんでした。原審は、公定力を実質的に否定するなどとして、請求を棄却しました。最高裁は、原審を破棄しました。判旨を2か所、読みます。1か所目は、先に見た買収計画の判決の趣旨を、課税処分にも広げる部分です。

判例最判平22・6・3 民集64巻4号1010頁

国家賠償請求と取消し・無効確認の判決(課税処分) 行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求をするについては,あらかじめ当該行政処分について取消し又は無効確認の判決を得なければならないものではない……このことは,当該行政処分が金銭を納付させることを直接の目的としており,その違法を理由とする国家賠償請求を認容したとすれば,結果的に当該行政処分を取り消した場合と同様の経済的効果が得られるという場合であっても異ならないというべきである。

金銭を納付させることを直接の目的とする処分で、国賠を認めれば取り消したのと同じ経済的効果が得られる場合でも、結論は異ならない、と言っています。不服申立ての道があるのに、それを経なくていいんですか。2か所目です。固定資産税の不服の道を、経る必要があるかについての結論です。

判例最判平22・6・3 民集64巻4号1010頁

審査の申出や取消訴訟を経るまでもなく 地方税法432条1項本文に基づく審査の申出及び同法434条1項に基づく取消訴訟等の手続を経るまでもなく,国家賠償請求を行い得るものと解すべきである。

434条2項は国賠を締め出さない(審査の申出=価格を直す/国賠=損害の賠償/求めるものが違う) 図:434条2項は国賠を締め出さない

  • 審査の申出=価格を直す
  • 国賠=損害の賠償
  • 求めるものが違う

434条2項は、価格を修正することを求める手続を定めたものです。公務員が職務上の法的義務に違反した場合の、国賠の責任を否定する根拠にはなりません。審査の申出で求めるのは、登録された価格を直すことです。国賠で求めるのは、公務員の違法な職務で生じた損害の賠償です。求めるものが違うので、この道でしか争えない、は国賠を締め出さない、という読み方です。そのほかにも、国賠を否定する根拠になる規定は、見いだし難い。これが、判決の理由です。

補足意見と破棄差戻し(宮川・金築の2人の補足意見は法廷意見ではない/請求できる≠認められる) 図:補足意見と破棄差戻し

  • 宮川・金築の2人の補足意見は法廷意見ではない
  • 請求できる≠認められる

判決自身は、理由を一般論としては、あまり説明していません。実質論は、2人の裁判官の補足意見が説明しました。補足意見は、結論に加わった裁判官が個人として書き足した意見で、判決の理由そのものである法廷意見ではありません。そう断って、読み取ります。1人は、取消しの制度と国賠は、目的と要件と効果が違う、と述べます。もう1人は、こう述べます。国賠には、故意または過失が必要で、取消しが認められても、賠償が認められない場合があります。立証責任も違います。原則として、取消訴訟では課税する側が、国賠では請求する側が負担する、という違いです。結論の言い方に、注意してください。破棄差戻しです。賠償を認めたのではありません。違法かどうか、つまり職務上の法的義務に違反したかどうか、損害額はいくらか、は審理が尽くされていないので、原審に戻しました。国賠が、請求できる、であって、認められる、ではありません。

補足意見の1つは、こう言います。課税処分の国賠が、金銭が戻る点で取消しに似ているのは、課税処分が金銭の徴収を目的とするからにすぎない。国賠を否定する規定がないのに、公定力と整合させるために、扱いを分けるべきではない。判決の本文も、金銭を納めさせる処分でも結論は異ならない、として、同じ方向でした。

国家賠償③——給付を拒む処分でも

事案(京都市の福祉事務所長が、生活保護を受けていた手描き友禅の請負業者に、友禅の仕事の収入を月額11万円まで増やすよう書面で指示→従わなかったとして生活保護法62条3項で保護の廃止決定→業者は廃止決定の違法を理由に国賠法1条1項で賠償を請求→最高裁は破棄差戻し) 図:事案

最後の場面です。金銭を納めさせる処分ではなく、金銭の給付を拒む処分です。生活保護の廃止決定で見ます。ここでも、同じ問いが立ちます。保護の廃止決定を取り消させて保護を続けさせるのも、国賠で賠償金を求めるのも、結果として、受け取れるはずだった金銭を求める点が似ています。国賠を無制限に認めると、排他的管轄や出訴期間を潜り抜けられるのではないか、という疑問です。事案です。京都市の福祉事務所長が、生活保護を受けていた手描き友禅の請負業者に、友禅の仕事の収入を、月11万円まで増やすよう、書面で指示しました。業者が従わなかったとして、保護の廃止決定をしました。根拠は、生活保護法62条3項です。個別法ですから、骨格だけ読みます。

条文生活保護法62条3項

生活保護法第62条第3項 保護の実施機関は、被保護者が前二項の規定による義務に違反したときは、保護の変更、停止又は廃止をすることができる。

骨格です。実施機関は、被保護者が実施機関の指導や指示に従わなかったときは、保護の変更、停止、廃止ができる。業者は、廃止決定の違法を理由に、国家賠償法1条1項に基づいて、損害賠償を求めました。争点の中心は、書面に書かれていない口頭の指導を、指示の内容に含められるかでした。ここには深入りしません。最高裁は、書面に書かれた事項だけが指示の内容だ、として、原審の判断を是認できないとし、破棄差戻しにしました。押さえるのは、この判決の進め方です。この判決は、取消訴訟を経ているかを問題にしませんでした。そして、国賠請求の中身、つまり廃止決定が違法かどうかの審理に進みました。判決自身が、取消訴訟は要らない、と言った判決ではありません。取消訴訟を経ない国賠が可能なことを前提にした判決だと、読まれています。差戻しの理由の言い方が、大事です。読みます。

判例最判平26・10・23 集民248号1頁

違法と国家賠償法上の違法 本件廃止決定が違法となるか否か,また,仮に本件廃止決定が違法となる場合に,これが国家賠償法上も違法と評価されるか否か等について審理を尽くす必要がある。

違法になる場合に、国賠法上も違法と評価されるか、とわざわざ分けているんです。そこが大事です。取消訴訟でいう違法と、国賠法上の違法が、同じかどうかは、別の問題として残る。判決は、そう明示しています。射程です。金銭を納めさせる処分に限らず、金銭の給付を目的とする処分にも、同じ考え方が当てはまると考えられています。なぜ、給付を拒む処分でも同じでよいのか。国賠で勝っても、廃止決定の効力は否定されず、保護が当然に再開されるわけではありません。しかも国賠には、故意または過失や、国賠法上の違法という別の関門があります。取消訴訟の代わりに使える抜け道にはならない、ということです。

今日の地図(保存版)

比べ表(取消訴訟=争うもの=処分の効力/勝った結果=処分が取り消される/公定力=正面から問題になる。刑事訴訟〔余目町〕=争うもの=罪が成り立つか/勝った結果=無罪・認可は取り消されない/公定力=効力は取り消さず刑事の中で評価。国賠訴訟〔一般・課税・給付〕=争うもの=処分の違法を理由とする賠償/勝った結果=賠償金が出るだけ・処分の効力は否定されない/公定力=抵触しない) 図:比べ表

  • 取消訴訟=争うもの=処分の効力
  • 勝った結果=処分が取り消される
  • 公定力=正面から問題になる。刑事訴訟〔余目町〕=争うもの=罪が成り立つか
  • 勝った結果=無罪・認可は取り消されない
  • 公定力=効力は取り消さず刑事の中で評価。国賠訴訟〔一般・課税・給付〕=争うもの=処分の違法を理由とする賠償
  • 勝った結果=賠償金が出るだけ・処分の効力は否定されない
  • 公定力=抵触しない

まとめます。冒頭の問いに答えます。取消訴訟を経ていない別の訴訟で、処分の違法を言ってよいのか。言えます。ただし、排他的管轄の例外ではありません。窓口が、重ならない場面です。3つの窓口を、比べます。取消訴訟は、処分の効力を争う場です。勝つと、処分が取り消されます。刑事訴訟は、罪が成り立つかを争う場です。余目町の事件では、認可は取り消されないまま、営業を規制しうる効力を有しないと評価されて、無罪でした。国賠訴訟は、処分の違法を理由とする賠償を求める場です。勝っても、賠償金が出るだけで、処分の効力は否定されません。3点に絞ります。1つ目、国賠も刑事も、排他的管轄の例外ではなく、窓口が重ならない場面です。2つ目、国賠では、取消しや無効確認の判決は要りません。課税処分でも、給付を拒む処分でも、同じです。3つ目、取消訴訟でいう違法と、国賠法上の違法は、別の問題として残ります。前回、取り消されるまで有効と言い切りました。今日は、その有効が、取消訴訟の窓口の中での扱いだと確かめました。窓口が違えば、処分の違法を前提にできる場面があります。

今日の短答の誤り肢(国賠訴訟を起こすにはあらかじめ取消判決が要る〔誤り〕/課税処分の違法を理由とする国賠は不服申立てを経ないと請求できない〔誤り〕/刑事訴訟では取り消されていない処分の違法を理由に無罪を主張できない〔誤り〕/国賠で勝てば処分の効力は否定される〔誤り〕/取り消されるべき処分は国賠でも必ず認められる〔誤り〕/免許停止の根拠の刑事事件で無罪になれば処分は当然に無効になる〔誤り〕) 図:今日の短答の誤り肢

  • 国賠訴訟を起こすにはあらかじめ取消判決が要る〔誤り〕
  • 課税処分の違法を理由とする国賠は不服申立てを経ないと請求できない〔誤り〕
  • 刑事訴訟では取り消されていない処分の違法を理由に無罪を主張できない〔誤り〕
  • 国賠で勝てば処分の効力は否定される〔誤り〕
  • 取り消されるべき処分は国賠でも必ず認められる〔誤り〕
  • 免許停止の根拠の刑事事件で無罪になれば処分は当然に無効になる〔誤り〕

最後に、短答の誤り肢を確認します。国賠訴訟を起こすには、あらかじめ処分の取消判決を得ていなければならない、は誤りです。要りません。課税処分の違法を理由とする国賠は、不服申立てを経ないと請求できない、も誤りです。経なくても請求できます。刑事訴訟では、取り消されていない処分の違法を理由に、無罪を主張することはできない、も誤りです。余目町の事件が、無罪になった例です。国賠訴訟で勝てば、処分の効力は否定される、は誤りです。賠償金が出るだけで、処分の効力は否定されません。取消訴訟で取り消されるべき処分は、国賠でも必ず認められる、も誤りです。国賠は、故意または過失など、要件が別です。免許停止処分の根拠になった刑事事件で無罪になれば、その処分は当然に無効になる、も誤りです。処分は、無効ではなく、取り消されてもいない限り、有効なままでした。刑事と国賠で、公定力がなぜ問題にならないのか。その理由の説明は、論文でも論点になりうる所です。

参照条文

  • 日本国憲法31条
  • 行政事件訴訟法14条1項
  • 国家賠償法1条1項
  • 地方税法434条2項
  • 生活保護法62条3項

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