行政契約とは何か(契約という手段と調達のルール)
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第6章 行政契約・行政指導・行政計画 #69/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
市が消防車を買うとき、誰から買ってもよいか
図:今日の問い
- A市が消防車を1台買う
- 市長の知り合いの会社に「いくらでもいいから売ってほしい」と頼めるか
- 私人なら誰から買うのも自由・役所はなぜ違うのか
今日は、その問いから始めます。設例は、架空のA市です。A市が、古くなった消防車を入れ替えるため、新しい消防車を1台買います。市長は、知り合いが経営する会社に、言い値で売ってほしい、と頼みました。私たちが自分の車を買うなら、誰から、いくらで買っても自由です。契約自由の原則です。契約をするかどうか、誰とするか、中身をどうするかを、自分で決められます。市も私人と同じように、相手も値段も自由に選べるのか。その疑問が、今日の入口です。結論を先に言うと、市は、そこまで自由ではありません。なぜ私人と違うのか。その理由を、条文で確かめます。第6章に入ります。ここまでは、許可や命令のように、行政が一方的に決める処分を中心に見てきました。この章で見るのは、契約、指導、計画です。法律の根拠が薄くても動ける、柔らかい手段です。柔らかいからこそ、合意したのだから、お願いしただけだから、と言われて、統制や救済が届きにくくなります。この章の通しの問いは、柔らかい手段を、どう縛り、どう争うか、です。
図:今日の道順
- 1 行政契約とは何か
- 2 根拠は要らないのに、なぜ自由ではないのか
- 3 契約は三つの行政領域でどう違うか
- 4 調達のルール① 財産の区分
- 5 調達のルール② 契約の結び方・一般競争入札が原則
- 6 契約と行政指導
- 7 まとめ
今日の道順です。まず、行政契約とは何か。次に、根拠の法律が要らないのに、なぜ自由ではないのか。三つ目に、契約が使われる行政の場面の地図。そして、調達のルールを二つ。財産の区分と、契約の結び方です。最後に、行政指導との違いを、契約の側から確かめます。
行政契約とは何か
図:処分と契約の対比
- A=A市
- B=住民
- 処分=AがBに一方的に決める
- 契約=AとBの合意で権利義務が生まれる
一つ目の問いです。行政契約とは何か。行政主体が、行政の目的を達成するために結ぶ契約です。法律に定義があるわけではなく、概念として押さえます。名前も、契約、協定、申合せ、合意と、いろいろです。思い出してください。第3章で、行政の活動を、法的な特徴で五つの型に分けた、行為形式の地図を見ました。行政処分、行政基準、行政計画、行政契約、行政指導の五つです。契約は、そこで名前と一行の例だけ出した型ですね。ここで1問です。行為形式の五つのうち、個別の相手の権利や義務を、一方的に決める型は、どれでしたか?行政処分です。許可や取消しのように、相手の同意がなくても、行政が決めれば効力が生まれます。処分は、行政が法令に照らして、一方的に決めます。契約は反対です。申込みと承諾、つまり双方の合意で、権利義務が生まれます。A市の三つの場面で分けてみます。一つ目、消防車を買う。二つ目、小学校の改修工事を頼む。三つ目、飲食店に営業許可を出す。消防車と改修工事は、契約です。市と相手が、申込みと承諾で結びます。三つ目は処分です。申請はきっかけにすぎず、許可するかどうかは、法令に照らして市が決めます。
民間同士の契約との違いは、片方の当事者が行政主体で、目的が行政の目的だ、という点です。形は民法の契約と同じことが多いです。ただ、同じに見えるせいで、落とし穴があります。それは次の問いです。行政が契約を使う理由も、一言だけ。処分と違って、相手の事情に合わせて柔軟に決められます。民間委託や民営化が進んで、契約の重みは増えています。
根拠は要らない、でも自由ではない
図:要らないものと、残るもの
- 要らない=契約を結ぶための根拠規範〔合意で成立する非権力的な活動〕
- 残る三つ=公益からの制約・公金のルール・一般原則〔平等原則・比例原則〕
- ほかにも残る=法律の優位・予算の議決
- 根拠が要らない≠縛りが無い
二つ目の問いです。契約を結ぶのに、法律の根拠は要るのでしょうか。ここで1問です。侵害留保説は、どんな行政活動に法律の根拠を求めましたか?国民の自由や財産を侵害する活動です。契約は、相手が合意して初めて成り立ちます。相手の権利や自由を、一方的に取り上げる活動ではありません。権力を使わない、非権力的な活動です。ですから、侵害留保の下では、行政契約に法律の根拠は原則として要りません。小学校の改修工事を頼むたびに、工事の請負を許す法律が要るわけではないのです。法律の留保の回で見た権力留保説でも、契約の形なら要りませんでした。線の引き方は違っても、契約については、結論がそろいます。
そこで止まらないでください。根拠が要らないことと、縛りが無いことは、別です。法律の留保の回でも、契約の形を選んでも、行政は私人と同じ自由を持たない、と見ました。今日は、その縛りを、調達の場面に合わせて、三つに整理します。一つ目、公益です。行政は公益のために動くので、契約の中身にも、公益の観点からの制約がかかります。私人なら、気に入った車を好きに選べます。市が消防車を買うのは、火事から住民を守るためなので、その目的に役立たない車を、好みで選ぶことはできません。二つ目、お金です。代金は税金で、公金の支出を伴います。私人は自分のお金を自由に使えますが、市長のお金ではありません。最後の三つ目は、平等原則や比例原則などの、行政活動に共通する一般原則です。特定の業者だけを、理由なく有利に扱えば、平等原則に反します。法律の留保の回で並べた、平等原則以外の二つ、法律に反する契約は結べない、という法律の優位や、使えるお金の枠を議会が決める、予算の議決も、契約の形になっても残ります。町内会で考えてみます。会計係が、会長の友達の店だけから、言い値で備品を買い続けていたら、会員は納得しないでしょう。会費は皆のお金で、相手の選び方も値段も、皆に説明できなければならないからです。市の契約も同じ発想です。冒頭の設例に戻ります。知り合いの会社に、言い値で買うと何が困るか。相手の選び方が、市長の人間関係で決まります。相場より高く買えば、税金の無駄です。ほかの会社には、売る機会がありません。だから、根拠の法律は要らなくても、市は、私人ほど自由ではありません。この困りごとを、条文の形にしたものが、今日の後半の、調達のルールです。
契約が使われる三つの行政領域
図:三つの行政領域と契約の距離
- 調達=行政が必要な物・工事を手に入れる
- 契約の位置づけ=民法上の契約が基本
- 今日の位置=この回と続きの回 || 給付=住民にサービスを出す
- 契約が広く使われる・領域により法律が契約の形か処分の形かを選ぶ
- この章の先で || 規制=住民・事業者に守らせる
- 行為形式の中心は行政行為・契約〔協定〕は例外
- この章の先で
三つ目の問いです。契約は、行政のどの場面で使われるのか。場面を三つに分けます。調達、給付、規制です。調達は、行政が自分の仕事に必要な物や工事を手に入れる場面です。消防車を買う、改修工事を頼む。ここは、民法上の契約が基本です。今日と、続きの回で見ます。給付は、住民にサービスを出す場面です。たとえば水道は、申込みと承諾で結ぶ、給水の契約です。契約が広く使われます。ただし領域によって、法律が処分の形を選ぶこともあります。生活保護を出すかどうかは、役所が決める処分です。どの給付がどちらの形かは、この章の先で見ます。規制は、住民や事業者に、ルールを守らせる場面です。中心は行政行為で、契約は例外的です。事業者と結ぶ協定のような形で出てきて、それに法的な拘束力があるのかが問題になります。これも、この章の先で見ます。
形が分かれるのは、行政が相手とどんな立場で向き合うかが、場面で違うからです。調達では、行政は買い手で、売り手と合意で取引します。規制では、守らせる側なので、一方的に決める処分が中心になります。給付は、その間です。調達は、契約が一番はっきり使われる場面で、縛りも、一番はっきり条文になっています。そこを見ていきます。
調達のルール① 財産の区分
図:財産の区分
- 行政財産=公用・公共用に供し、または供すると決めた財産〔庁舎・公園〕
- 普通財産=それ以外の一切〔使っていない旧公民館用地〕
- 普通財産=貸付け・売払いができる
四つ目の問いに入ります。調達のルールの一つ目、財産の区分です。市は、庁舎、公園、使わなくなった土地など、たくさんの不動産を持っています。これを、使い道で二つに分けます。ここで1問です。庁舎と公園は、それぞれ公用物と公共用物のどちらでしたか?庁舎が公用物で、公園が公共用物です。一般の人が使う物が公共用物、役所が自分で使う物が公用物でした。ただ、公物は、私人の物でも、公の目的に使われていれば当たる、という分類でした。今日は、国や自治体が自分で持つ財産を、財産管理の側から二つに分けます。公用や公共用に供している財産、または供すると決めた財産が、行政財産。それ以外の一切が、普通財産です。庁舎や公園は行政財産。使い道のない旧公民館用地は、普通財産です。普通財産から見ます。契約で動かせる財産です。国の財産は国有財産法、自治体の財産は地方自治法が、ほぼ同じ形で定めています。条文を、全文で読みます。
条文国有財産法20条1項
国有財産法第20条第1項 普通財産は、第二十一条から第三十一条までの規定により貸し付け、管理を委託し、交換し、売り払い、譲与し、信託し、又は私権を設定することができる。
条文地方自治法238条の5第1項
地方自治法第238条の5第1項 普通財産は、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、若しくは出資の目的とし、又はこれに私権を設定することができる。
骨格は、普通財産は、貸し付け、交換し、売り払い、譲与できる、というものです。民法の契約と同じ形で動かせます。A市が、使っていない旧公民館用地を、民間に貸す。売る。どちらもできます。ただし、貸した後に、事情が変わったらどうなるでしょう。A市が、旧公民館用地を、C社に貸しました。ところが、その土地に、市が防災拠点を作る必要が生じました。市は、C社に返してもらえるでしょうか?民間同士の契約なら、期間の途中で返せとは、原則として言えません。でも、ここは契約自由の修正になります。条文です。
条文国有財産法24条1項・2項
国有財産法第24条第1項・第2項 1 普通財産を貸し付けた場合において、その貸付期間中に国又は公共団体において公共用、公用又は公益事業の用に供するため必要を生じたときは、当該財産を所管する各省各庁の長は、その契約を解除することができる。 2 前項の規定により契約を解除した場合においては、借受人は、これによつて生じた損失につき当該財産を所管する各省各庁の長に対し、その補償を求めることができる。
図:貸付け中の解除
- 国=公共用・公用・公益事業の必要
- 自治体=公用・公共用の必要〔公益事業は入らない〕
- 借受人=生じた損失の補償を求められる
骨格は、貸付期間中に、公共用、公用、公益事業のために必要が生じたら、契約を解除できる。借受人は、損失の補償を求められる、です。市は防災拠点のために、C社との契約を解除できます。C社は、生じた損失の補償を求められます。公益の必要と、相手方の保護の、バランスです。自治体の側にも、地方自治法に、同じ形の定めがあります。ただし、解除できる事由は同じではありません。国は、公共用、公用、公益事業。自治体は、公用または公共用です。公益事業は入りません。
図:行政財産
- 貸付け・売払いは原則できない=本来の目的が続けられなくなる
- 違反した行為は無効
- 例外=条文が列挙する場合〔庁舎の余った床を売店に〕・別の仕組み=目的外使用の許可
次に、行政財産です。条文を読みます。
条文国有財産法18条1項
国有財産法第18条第1項 行政財産は、貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、信託し、若しくは出資の目的とし、又は私権を設定することができない。
条文地方自治法238条の4第1項
地方自治法第238条の4第1項 行政財産は、次項から第四項までに定めるものを除くほか、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、出資の目的とし、若しくは信託し、又はこれに私権を設定することができない。
骨格は、行政財産は、貸し付けも、売り払いも、できない、というものです。庁舎や公園を、民間に貸したり売ったりできないのは、なぜか。本来の目的、つまり役所の事務や、住民の利用が続けられなくなるからです。目的を守るための禁止なので、これに違反した貸付けなどは、効力を持ちません。国の条文も、自治体の条文も、同じ条の別の項で、違反した行為は無効、と定めています。行政法規に反した契約の回で、契約の効力を見分ける最初の手順を、明文で効力を定めた規定があれば、それに従う、としました。ここは、その場合です。庁舎に売店が入っていることがあるのは、例外があるからです。国の条文の中にも、自治体の条文の中にも、貸付けが認められる場合が列挙されています。庁舎の床面積に余裕がある部分を貸す場合などです。個別の法律で認められる場合もあります。例外があること、そして、あくまで例外であることを、押さえてください。また、貸す代わりに、用途を妨げない限度で、使うことを許可する仕組みも、別にあります。公物の回で見た、目的外使用の許可です。整理すると、普通財産は契約で動かせて、行政財産は原則として動かせません。どちらも、公金で買った財産を、公益のために守る、という発想です。
調達のルール② 契約の結び方
図:三つの方式
- 一般競争入札=広く公告して不特定の参加者から選ぶ〔小学校の改修工事を資格のある業者なら誰でも応札できる形で〕
- 指名競争入札=役所が選んだ複数の業者だけ〔特殊な設備で対応できる業者が少数〕
- 随意契約=役所が特定の相手と交渉して決める〔少額・緊急・競争になじまない〕
- せり売り〔自治体の条文にのみ列挙〕
五つ目の問いです。調達のルールの二つ目、契約の結び方です。市が、相手を選ぶ方法は、三つに分けられます。一つ目、一般競争入札。広く公告して、不特定の参加者から選びます。小学校の改修工事を、資格のある業者なら誰でも応札できる形で、頼むのです。二つ目、指名競争入札。役所が選んだ複数の業者だけが参加します。特殊な設備で、対応できる業者が少数、という場合です。三つ目、随意契約。役所が、特定の相手と交渉して決めます。少額の場合や、緊急の場合です。自治体の条文には、このほかに、せり売り、つまり買い手に値段を競り上げさせて売る方法も出てきます。国の条文から読みます。
条文会計法29条の3第1項・第2項
会計法第29条の3第1項・第2項 1 契約担当官及び支出負担行為担当官(以下「契約担当官等」という。)は、売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合においては、第三項及び第四項に規定する場合を除き、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならない。 2 前項の競争に加わろうとする者に必要な資格及び同項の公告の方法その他同項の競争について必要な事項は、政令でこれを定める。
骨格です。1項、契約担当官、つまり、国の側で契約を結ぶ担当者は、契約を、公告して申込みをさせる競争に付さなければならない。これが一般競争入札で、原則です。
条文会計法29条の3第3項〜第5項
会計法第29条の3第3項・第4項・第5項 3 契約の性質又は目的により競争に加わるべき者が少数で第一項の競争に付する必要がない場合及び同項の競争に付することが不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、指名競争に付するものとする。 4 契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合及び競争に付することが不利と認められる場合においては、政令の定めるところにより、随意契約によるものとする。 5 契約に係る予定価格が少額である場合その他政令で定める場合においては、第一項及び第三項の規定にかかわらず、政令の定めるところにより、指名競争に付し又は随意契約によることができる。
3項、競争に加わる者が少数などの場合は、指名競争。4項、競争を許さない場合や、緊急の場合などは、随意契約。5項、予定価格、つまり役所が前もって見込んだ値段が少額の場合なども、指名競争か随意契約によることができる。原則が競争で、例外が、指名競争と随意契約です。自治体の条文です。
条文地方自治法234条1項・2項
地方自治法第234条第1項・第2項 1 売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。 2 前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。
注意してください。1項だけを見ると、四つの方式が並んでいます。でも、2項で、一般競争入札以外は、政令で定める場合に限る、と絞っています。だから、自治体でも原則は、一般競争入札です。並んでいるから対等だ、と読まないことが大事です。冒頭の設例で、言い値で買うと困ることを、三つ見ました。随意契約で頼んだとして、その三つに名前を付けます。一つ目、高く買うかもしれません。競争があれば、安い値段を出す業者が現れます。競争がなければ、言い値です。税金の使い方として、有利な価格で買う、経済性が確保できません。そして二つ目、ほかの業者には、機会がありません。同じ品質で、もっと安く出せる業者がいても、声すらかかりません。機会が均等でなく、公正性を欠きます。三つ目、なぜその会社なのか、外から分かりません。誰がどう決めたかが見えないと、疑いが残ります。透明性が足りません。
図:入札が原則の三つの理由
- 経済性=競争で有利な価格を引き出す
- 公正性=参加の機会が均等
- 透明性=決め方が外から見える
- 例外が認められる理由=競争を許さない・緊急・少数しか参加できない・少額・競争が不利
経済性、公正性、透明性。これが、入札が原則である理由です。公共工事の入札と契約の適正化を促す法律も、透明性の確保と、公正な競争の促進を、掲げています。公金を使う契約だから、公正さを担保する仕組みが、法律で用意されているのです。例外は、なぜ認められているんですか。競争が、かえって不合理になる場面があるからです。特許で、その会社しか作れない物は、競争のしようがありません。火事の直後で、すぐ必要な場合は、公告している暇がありません。少数の業者しか参加できないなら、広く募っても意味がありません。値段が数千円ほどの買い物で、入札の手間のほうが高くつくなら、少額として省けます。この類型は、政令が定めています。ここで、例外も、条文で縛られている点が大事です。自治体の2項は、政令で定める場合に限る、と書いていました。役所の裁量が、無制限なのではなく、法律が型を決めているのです。どの場合が許されるのか、違反したらどうなるのか、入札から外された業者はどう争えるのかは、続きの回で見ます。1問です。A市で、消防車の修理に使う部品が、緊急に必要になりました。入札を省けるでしょうか?
緊急の必要があるなら、随意契約にできる、と思います。ただし、緊急の必要が、要件です。担当者が忙しいから、では理由になりません。根拠は、条文と政令にあります。
図:契約の周りのルール
- 契約書の作成=契約書を作る場合は記名押印しなければ契約は確定しない〔会計法・自治法〕
- 請負=履行の監督・検査〔会計法・自治法〕
- 政府調達協定=一定の調達では市場の開放が要請される
最後に、契約の周りのルールを、名前だけ挙げます。契約書を作る場合は、双方が記名押印しなければ、契約は確定しません。請負は、履行の監督と、検査が行われます。また、国どうしが、公共の買い物で互いの国の業者を締め出さない、と約束した政府調達協定により、一定の調達では、外国の業者にも門戸を開くことが求められます。いずれも、試験で細部を問われる論点ではありません。
契約と行政指導——契約の側から
図:契約と行政指導
- 共通=非権力的〔相手の任意の協力が前提〕・根拠規範は原則不要
- 相違=契約は合意により法的な拘束力を生む法行為・指導は精神的な働きかけにとどまる事実行為で従う義務を生まない
- 履行の確保=契約は不履行なら民事上の手段
最後の問いです。契約は、行政指導と、どこが同じで、どこが違うのか。行政指導は、行為形式の五つのうち、任意の協力を求める働きかけでした。相手に命令しない点が、共通点です。どちらも、相手の任意の協力が前提の、非権力的な活動です。侵害留保の下では、根拠規範は原則として要りません。違いは、法的な拘束力です。契約は、合意によって、個別の権利義務を生みます。こうした、権利や義務を生む行為を、法行為と呼びます。結んだ以上、守る義務が生じ、守らなければ、民事上の手段で履行を求められます。改修工事を請け負った業者が、約束の期日までに仕上げなければ、市は、契約に基づいて、仕上げることや、損害の賠償を求められます。行政指導は、事実行為、つまり、権利や義務を動かさない行為です。お願いにとどまり、従う義務を生みません。市が事業者に、看板を、もう少し小さくしてもらえませんか、と頼んでも、断った事業者に、義務違反は生じません。契約は、合意したから縛られる。指導は、従わなくても縛られない。この違いが、後で効いてきます。なお、規制の場面では、契約が、実質的に規制として働くことがあります。それは、この章の先で見ます。指導そのものの詳しい仕組みも、先で見ます。
今日の地図(保存版)
図:今日の持ち帰り
- 1 行政契約=行政主体が行政目的で結ぶ契約・合意で成立
- 2 根拠規範は原則不要・しかし契約自由はそのままは通らない〔公益・公金・一般原則の三つの縛り〕
- 3 財産は行政財産〔貸付け原則不可〕と普通財産〔貸付け・売払い可〕
- 4 契約の結び方は一般競争入札が原則・指名競争入札と随意契約は政令で定める場合に限る
冒頭の問いに答えます。市長の知り合いの会社に、言い値で売ってもらうことは、できません。契約には根拠の法律は原則要りませんが、契約自由は、そのままは通らないからです。公金を使い、相手を選ぶことが公平に関わるので、平等原則などの一般原則がかかり、条文は、一般競争入札を原則にしました。持ち帰りは四点です。一点目、行政契約は、行政主体が行政目的で結ぶ契約で、合意で成立する。二点目、根拠規範は原則不要。でも、公益、公金、一般原則の、三つの縛りは残る。三点目、財産は、行政財産と普通財産に分かれる。行政財産は原則貸せず、普通財産は貸せるし売れる。貸付中でも公共用などの必要が生じれば、解除できて補償が要る。四点目、契約の結び方は、一般競争入札が原則で、指名競争入札と随意契約は、政令で定める場合に限る。
図:今日の短答の誤り肢
- 行政契約は民法の契約自由がそのまま適用され相手方の選定は自由〔誤り〕
- 行政財産は普通財産と同様に契約で自由に貸し付けられる〔誤り〕
- 国の契約は随意契約が原則で競争入札は例外〔誤り〕
最後に、短答の誤り肢を三つ。一つ目。行政契約は、民法の契約自由の原則がそのまま適用されるので、相手方の選定は自由である。誤りです。公金、平等原則、そして一般競争入札が原則、という縛りがあります。二つ目。行政財産は、普通財産と同様に、契約で自由に貸し付けることができる。これも誤りです。行政財産は、原則として貸し付けられません。三つ目。国の契約は、随意契約が原則で、競争入札は例外である。逆です。会計法29条の3第1項は、競争に付すことを原則としています。
参照条文
- 国有財産法20条1項
- 地方自治法238条の5第1項
- 国有財産法24条1項・2項
- 国有財産法18条1項
- 地方自治法238条の4第1項
- 会計法29条の3第1項・第2項
- 会計法29条の3第3項〜第5項
- 地方自治法234条1項・2項