行政法ゼロから行政法#86

行政調査の3分類

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第7章 行政調査・義務履行確保・行政罰 #86/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

3つの「調べに来ました」——断れるのはどれ

今日の問い(A保健所の職員=「お話を聞かせてください」/B税務署の職員=「帳簿を見せてください。断ると罰則があります」/C国税局の職員=裁判官の許可状を示して「捜索します」/断れるか・断ったら何が起きるか) 図:今日の問い

  • A保健所の職員=「お話を聞かせてください」
  • B税務署の職員=「帳簿を見せてください。断ると罰則があります」
  • C国税局の職員=裁判官の許可状を示して「捜索します」
  • 断れるか・断ったら何が起きるか

断れるかどうかは、場合によります。設例を3つ作ります。1つ目、保健所の職員が店に来て、お話を聞かせてください、と言います。2つ目、税務署の職員が来て、帳簿を見せてください、断ると罰則があります、と言います。3つ目、国税局の職員が、裁判官の許可状を示して、これから捜索します、と言います。ただ、2つ目が難しいところです。断れはするのに、断ると罰を受けます。答えを先に言うと、この3つは、断ったときに何が起きるかで、きれいに分かれます。今日は、その分け方と、法律の根拠が要るのはどれか、そして税務の2つの調査の違いまで進みます。

行政調査とは何か——第7章の地図

行政調査の意味と第7章の地図(行政調査=行政の目的を果たすために、行政機関が必要な情報を集める活動/決定の前提行為〔許可・課税・保護の決定の前に材料を集める〕/第7章=前半は決めるための調査・後半は決めたことを守らせる手段) 図:行政調査の意味と第7章の地図

  • 行政調査=行政の目的を果たすために、行政機関が必要な情報を集める活動
  • 決定の前提行為〔許可・課税・保護の決定の前に材料を集める〕
  • 第7章=前半は決めるための調査・後半は決めたことを守らせる手段

第6章までは、行政が使う行為の形を見ました。第7章は、その前後です。決める前に情報を集める調査と、決めたことを守らせる手段、そして違反への制裁です。今日は、最初の調査の話です。定義です。行政調査とは、行政の目的を果たすために、行政機関が必要な情報を集める活動です。許可を出すにも、税額を決めるにも、生活保護を決めるにも、まず材料が要ります。調査は、決定の前提になる行為です。かつては、強制的な調査を念頭に、即時強制という枠で論じられました。即時強制とは、相手に義務を課さずに、行政がいきなり実力を使う仕組みです。しかし、情報収集は強制的なものに限りません。むしろ、法律の根拠もなく、お願いベースで行われる任意の調査が、大部分を占めています。それなら、独立の項目として整理したほうが実態に合います。即時強制との関係は、後で扱います。なお、調査のきっかけは様々で、組織の内部の人の通報が端緒になることもあります。それを守る公益通報者保護法という法律がある、と名前だけ知っておけば足ります。

3分類——分け目は「拒まれたとき、行政に何ができるか」

行政調査の3分類(①任意調査=拒まれたら説得するだけ・何も起きない/②間接強制調査〔準強制調査とも〕=実力排除はできないが拒否・虚偽答弁に罰則/③強制調査〔直接強制調査〕=抵抗を実力で排除できる・裁判官の許可状が要るものが多い/軸=拒まれたとき行政に何ができるか) 図:行政調査の3分類

  • ①任意調査=拒まれたら説得するだけ・何も起きない
  • ②間接強制調査〔準強制調査とも〕=実力排除はできないが拒否・虚偽答弁に罰則
  • ③強制調査〔直接強制調査〕=抵抗を実力で排除できる・裁判官の許可状が要るものが多い/軸=拒まれたとき行政に何ができるか

見分ける軸は1本です。調査を拒まれたとき、行政に何ができるか。なぜこの軸か。拒まれたときに使える手段が強いほど、相手の自由を強く縛るからです。法律の根拠が要るかどうかも、この軸で決まります。このあと確かめます。1つ目、任意調査。相手が応じなくても、何も起きません。説得はできます。しかし、抵抗を実力で排除して立ち入ることも、応じない人を処罰することも、できません。2つ目、間接強制調査です。実力で抵抗を排除することはできません。その代わり、拒否したり、嘘の答えをしたりすると罰則があります。刑罰という圧力で、間接的に応じさせる仕組みです。実定法、つまり現に効力を持っている個々の法律では、この型が一番多いです。3つ目、強制調査です。相手の抵抗を、実力で排除できます。裁判官の許可状が要るものが多く、例外的で、強制の度合いが一番高い型です。

では、確認の問いです。税務署の職員に、帳簿を見せてください、と言われ、断ったとします。説得だけ、罰則、実力排除のどれが待っていますか?罰則です。でも、職員が無理やり金庫を開けることはできない、という意味で、間接強制だと思います。分け目は呼び名ではなく、拒まれたときの手段です。

法律の根拠が要るのはどれか

法律の根拠の要否(侵害留保=相手の自由・財産を侵害する活動には法律の根拠が要る/①任意調査=自由を制約しない→根拠は不要〔ただし限界あり〕/②間接強制と③強制=罰則や実力で自由を制約→個別の法律の根拠が必要/求めるのは根拠規範〔要件と効果を定めて権限を与える定め〕) 図:法律の根拠の要否

  • 侵害留保=相手の自由・財産を侵害する活動には法律の根拠が要る
  • ①任意調査=自由を制約しない→根拠は不要〔ただし限界あり〕
  • ②間接強制と③強制=罰則や実力で自由を制約→個別の法律の根拠が必要/求めるのは根拠規範〔要件と効果を定めて権限を与える定め〕

ここで、前に見たことを思い出します。侵害留保説では、法律の根拠が要ったのは、どんな活動でしたか? それから、法律の根拠として求めるのは、規範3種のどれでしたか?相手の自由や財産を侵害する活動です。規範は、権限を与える根拠規範です。担当を決めるだけの組織規範では足りませんでした。3つ目の規制規範は、やり方を決める定めでした。それを調査に当てはめます。任意調査は、相手の自由を制約しません。応じるかどうかは、相手の自由です。だから、法律の根拠は不要です。ただし、任意という名前のもとに、どこまで踏み込んでよいかという限界の問題が残ります。前に、警察の担当を決めた組織の定めを手がかりに、自動車の一斉検問が許された話を見ました。その、どこまで許されるか、の続きです。次の回で扱います。間接強制と強制は違います。罰則や実力で、相手の自由を制約します。だから、個別の法律の根拠が要ります。しかも、許される強制の態様や程度は、法律ごとに違います。

法律に書いてあるからといって、全部が強制調査になるわけではありません。強制なら、必ず法律の根拠が要ります。しかし、逆は成り立ちません。その例は、後の節で見ます。

山場——税務の2つの調査を対にする

質問検査と犯則調査の対比(質問検査=国税通則法74条の2・拒否等は128条2号・3号で1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金→間接強制・目的=適正公平な課税/犯則調査=同法第11章〔131条=任意の質問・検査・領置/132条=許可状による臨検・捜索・差押え/137条=錠をはずす等の処分〕→強制・目的=脱税という犯罪の摘発) 図:質問検査と犯則調査の対比

  • 質問検査=国税通則法74条の2・拒否等は128条2号・3号で1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金→間接強制・目的=適正公平な課税
  • 犯則調査=同法第11章〔131条=任意の質問・検査・領置/132条=許可状による臨検・捜索・差押え/137条=錠をはずす等の処分〕→強制・目的=脱税という犯罪の摘発

山場です。同じ税務署の仕事でも、調査には2種類あります。1つ目は質問検査です。根拠は国税通則法74条の2、罰則は128条です。

条文国税通則法74条の2第1項

国税通則法第74条の2第1項(柱書) 国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は税関の当該職員(税関の当該職員にあつては、消費税に関する調査(第百三十一条第一項(質問、検査又は領置等)に規定する犯則事件の調査を除く。以下この章において同じ。)を行う場合に限る。)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(税関の当該職員が行う調査にあつては、課税貨物(消費税法第二条第一項第十一号(定義)に規定する課税貨物をいう。第四号イにおいて同じ。)若しくは輸出物品(同法第八条第一項(輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税)に規定する物品をいう。第四号イにおいて同じ。)又はこれらの帳簿書類その他の物件とする。)を検査し、又は当該物件(その写しを含む。次条から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)において同じ。)の提示若しくは提出を求めることができる。

条文国税通則法128条

国税通則法第128条(柱書・2号・3号) 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。 二 第七十四条の二、第七十四条の三(第二項を除く。)若しくは第七十四条の四から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者 三 第七十四条の二から第七十四条の六まで又は第七十四条の七の二(特定事業者等への報告の求め)の規定による物件の提示若しくは提出又は報告の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出し、若しくは偽りの報告をした者

質問に答えなかったり、嘘の答弁をしたり、帳簿を見せなかったりすると、罰則です。実力で排除する規定はありません。だから間接強制です。目的は、税額を正しく決めること、つまり適正公平な課税です。2つ目は犯則調査です。同じ国税通則法の、第11章に規定があります。目的は、脱税という犯罪を摘発することです。131条は、出頭を求めて質問したり、任意に提出された物を預かったりする、任意の調査です。そして132条1項が、強制の調査の根拠です。

条文国税通則法132条1項

国税通則法第132条第1項 当該職員は、犯則事件を調査するため必要があるときは、その所属官署の所在地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状により、臨検、犯則嫌疑者等の身体、物件若しくは住居その他の場所の捜索、証拠物若しくは没収すべき物件と思料するものの差押え又は記録命令付差押え(電磁的記録を保管する者その他電磁的記録を利用する権限を有する者に命じて必要な電磁的記録を記録媒体に記録させ、又は印刷させた上、当該記録媒体を差し押さえることをいう。以下同じ。)をすることができる。ただし、参考人の身体、物件又は住居その他の場所については、差し押さえるべき物件の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができる。

言い換えます。臨検は、場所に立ち入って調べること。捜索は、物や人を探すこと。差押えは、見つけた証拠を取り上げて確保することです。刑事事件の、家宅捜索に近いものです。ここで大事なのは、裁判官の許可状が、あらかじめ要る点です。次に、抵抗されたらどうするか。

条文国税通則法137条1項

国税通則法第137条第1項 当該職員は、臨検、捜索、差押え又は記録命令付差押えをするため必要があるときは、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる。

錠をはずす、封を開く、その他必要な処分。ドアが閉まっていても、開けられます。相手の抵抗を実力で排除する根拠です。だから犯則調査は強制調査です。131条のような任意の調べも含みますが、拒まれても実力で排除できる手段を持っている点で、強制調査に数えます。導入の2つ目と3つ目を、同じ店で並べます。税務署の職員が帳簿を見せてくださいと言い、店主が金庫に鍵を掛けて断りました。職員にできるのは、罰則を背に求めることまでで、金庫を開けることはできません。同じ店に、脱税の疑いで国税局の職員が許可状を持って来たら、話が変わります。鍵を開けるよう求め、開けなければ錠を外して中を調べられます。

同じ税務の職員の仕事がここまで違うのは、目的が違うからです。質問検査は、税額を正しく決める手続です。犯則調査は、犯罪の摘発であり、告発、間接国税の場合は通告処分という、刑事手続に密接につながります。告発は、検察官に処罰を求めて知らせること。通告処分は、罰金に当たる金額を納めるよう知らせ、納めれば刑事裁判に進まない仕組みです。比べると、拒んだら罰則か実力排除か、許可状は犯則調査にだけ明文で要る、という差が出ます。

調査パートの問い(質問検査に令状は要らないのか・供述を強いられないのか〔憲法35条・38条は及ぶか〕/質問検査で集めた資料を脱税の処罰に使ってよいのか/調査の要件・手続・違法な調査に基づく課税処分はどうなるか/歯止めの条文=74条の8〔質問検査の権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならない〕) 図:調査パートの問い

  • 質問検査に令状は要らないのか・供述を強いられないのか〔憲法35条・38条は及ぶか〕
  • 質問検査で集めた資料を脱税の処罰に使ってよいのか
  • 調査の要件・手続・違法な調査に基づく課税処分はどうなるか
  • 歯止めの条文=74条の8〔質問検査の権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならない〕

ここから先が、この調査パートの問いになります。ただし、今日は答えを出しません。質問検査に、裁判官の許可状は要らなくてよいのか。これが憲法35条の問題です。供述を強いられない権利を定めた憲法38条は、及ぶのか。質問検査で集めた資料を、脱税の処罰に使ってよいのか。調査の手続や、違法な調査に基づく課税処分はどうなるのか。すべて、後の回で扱います。一つだけ予告します。国税通則法74条の8は、質問検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない、と書いています。質問検査の権限を、犯則調査の目的に使うな、という歯止めの条文があることだけ、知っておいてください。

「書いてある」と「強制」は別——実定法の型

実定法に見える型(強制調査の他の例=入管法31条〔許可状による臨検・捜索・差押え〕・32条〔錠をはずし封を開く等〕・関税法や独占禁止法の犯則調査・児童虐待防止法の臨検・捜索/罰則以外で担保=生活保護法28条5項〔報告をせず・立入調査を拒む等→申請の却下・保護の変更、停止、廃止〕/受諾義務のみ=警察官職務執行法6条2項〔担保なし→実質は任意調査に近い〕/同意を要件とする立入り=水道法17条1項〔住居等への立入り〕・宗教法人法78条の2第1項→法律の根拠のある任意調査) 図:実定法に見える型

  • 強制調査の他の例=入管法31条〔許可状による臨検・捜索・差押え〕・32条〔錠をはずし封を開く等〕・関税法や独占禁止法の犯則調査・児童虐待防止法の臨検・捜索
  • 罰則以外で担保=生活保護法28条5項〔報告をせず・立入調査を拒む等→申請の却下・保護の変更、停止、廃止〕
  • 受諾義務のみ=警察官職務執行法6条2項〔担保なし→実質は任意調査に近い〕
  • 同意を要件とする立入り=水道法17条1項〔住居等への立入り〕・宗教法人法78条の2第1項→法律の根拠のある任意調査

実定法には、細かな型があります。個別の法律なので、暗記の対象ではありません。型の名前だけ押さえます。まず、強制調査の他の例です。出入国管理及び難民認定法の違反調査は、裁判官の許可状による臨検、捜索、差押えができます。税務の犯則調査と同じ型です。関税や独占禁止法の犯則調査、児童虐待防止法の臨検、捜索にも、同じ型の例があります。次が、罰則ではない不利益で担保する型です。生活保護法28条です。

条文生活保護法28条1項

生活保護法第28条第1項 保護の実施機関は、保護の決定若しくは実施又は第七十七条若しくは第七十八条(第三項を除く。次項及び次条第一項において同じ。)の規定の施行のため必要があると認めるときは、要保護者の資産及び収入の状況、健康状態その他の事項を調査するために、厚生労働省令で定めるところにより、当該要保護者に対して、報告を求め、若しくは当該職員に、当該要保護者の居住の場所に立ち入り、これらの事項を調査させ、又は当該要保護者に対して、保護の実施機関の指定する医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨を命ずることができる。

条文生活保護法28条5項

生活保護法第28条第5項 保護の実施機関は、要保護者が第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は医師若しくは歯科医師の検診を受けるべき旨の命令に従わないときは、保護の開始若しくは変更の申請を却下し、又は保護の変更、停止若しくは廃止をすることができる。

1項が、報告を求め、家に立ち入って調べる権限。5項が、応じないときの手当てで、刑罰ではなく、申請の却下や、保護の変更、停止、廃止です。たとえば、家庭訪問での調査を断り続けると、保護が止まることがありえます。調査の強制の度合いは、罰則があるかどうかだけでは決まりません。不利益が大きければ、実際には応じざるをえません。実力では入れず、不利益という圧力で応じさせるので、3分類で言えば、2つ目の間接強制調査に近い型です。任意調査ではなく、強制の側に数えます。反対の型もあります。警察官職務執行法6条2項は、旅館や駅のように多数の客が来る場所の管理者は、その公開時間中に、警察官が犯罪予防などのために立入りを要求したとき、正当な理由なく拒めない、としています。しかし、拒んでも、担保する仕組みがありません。法律が、拒めない、という受け入れる義務、つまり受諾義務を書いているので、名目の上では強制調査に数えられます。ところが、今日の軸で見ると、拒まれたとき、警察官にできるのは説得だけです。だから、実質は任意調査に近いのです。さらに、水道事業者の立入検査権や、宗教法人への立入調査のように、住居などに立ち入るときは相手の同意を得なければならないと明文で定めるものがあります。これは強制調査ではありません。法律の根拠のある任意調査です。結論です。法律に調査の根拠が書いてあることと、強制調査であることは別です。見るべきは、拒んだときの手当てです。

間接強制でも、意思に反する立入りはできない

間接強制調査の限界(罰則があっても相手の意思に反して実力で立ち入る権限はない/違法な立入り=国家賠償の問題/事案=税務調査で国税調査官が納税者の不在を確認する目的で、納税者の意思に反して店舗の内扉の止め金を外して立ち入った→質問検査権の範囲内の正当な行為とはいえず国家賠償法1条1項に該当/当時の根拠=所得税法234条1項〔現行の74条の2に相当〕) 図:間接強制調査の限界

  • 罰則があっても相手の意思に反して実力で立ち入る権限はない
  • 違法な立入り=国家賠償の問題
  • 事案=税務調査で国税調査官が納税者の不在を確認する目的で、納税者の意思に反して店舗の内扉の止め金を外して立ち入った→質問検査権の範囲内の正当な行為とはいえず国家賠償法1条1項に該当
  • 当時の根拠=所得税法234条1項〔現行の74条の2に相当〕

間接強制調査の限界を、一言だけ確認します。罰則があっても、実力で相手の意思に反して立ち入る権限は、ありません。判例があります。税務調査で、国税調査官が、納税者の不在を確認する目的で、納税者の意思に反して、店舗の内扉の止め金を外して立ち入りました。この行為は、質問検査権の範囲内の正当な行為とはいえず、国家賠償法1条1項に該当する、とされました。間接強制調査は、罰則で圧力をかけるところまでです。実力で入るなら、強制調査の根拠が要ります。当時の根拠は所得税法の規定で、今の74条の2にあたる同じ型の規定です。

「任意調査」という言葉の二重の使われ方

2つの「任意調査」(この回の①=応じる義務そのものが無い/判例の「任意調査」=質問検査を受忍すべき義務を一般的に負い、履行を間接的心理的に強制されているが、あえて受忍しない場合にはそれ以上直接的物理的に強制しえない関係を称する→この回の②間接強制調査に当たる) 図:2つの「任意調査」

  • この回の①=応じる義務そのものが無い
  • 判例の「任意調査」=質問検査を受忍すべき義務を一般的に負い、履行を間接的心理的に強制されているが、あえて受忍しない場合にはそれ以上直接的物理的に強制しえない関係を称する→この回の②間接強制調査に当たる

最後に、混乱しやすい点です。ここまで、任意調査は、応じなくても何も起きない調査でした。ところが、荒川民商事件の最高裁決定は、罰則つきの質問検査を指して、任意調査と呼んでいます。この事件は、税務署の職員の検査を拒んだ事業者が、その拒否を罪に問われたものです。先に確認です。判例が任意調査と呼ぶものは、今日の1つ目の任意調査のことでしょうか?罰則があるなら、1つ目ではない気がします。決定の言い方は、こうです。相手は質問検査を受忍すべき義務を一般的に負い、履行を間接的心理的に強制されている。ただ、相手があえて受忍しない場合に、それ以上直接的物理的に強制できない関係を、一般に任意調査と表現しているだけだ、という趣旨です。

受忍とは、受け入れて我慢する、という意味です。応じる義務がある、しかし拒まれたら物理的には強制できない。これは、今日の2つ目、間接強制調査のことです。ですから、判例を読むときは、任意調査という言葉が、応じる義務のない調査を言っているのか、義務はあるが物理強制ができない調査を言っているのかを、見分けてください。

今日の地図(保存版)

今日の持ち帰り(行政調査=行政機関が行政目的達成のため必要な情報を収集する活動/3分類=拒まれたとき行政に何ができるか〔説得だけ/罰則/実力排除〕/任意は根拠不要〔限界あり〕・間接強制と強制は根拠が要る/質問検査=間接強制・目的は適正公平な課税/犯則調査=強制・裁判官の許可状・目的は脱税の摘発/書いてある≠強制/判例の「任意調査」=間接強制調査) 図:今日の持ち帰り

  • 行政調査=行政機関が行政目的達成のため必要な情報を収集する活動
  • 3分類=拒まれたとき行政に何ができるか〔説得だけ/罰則/実力排除〕
  • 任意は根拠不要〔限界あり〕・間接強制と強制は根拠が要る
  • 質問検査=間接強制・目的は適正公平な課税
  • 犯則調査=強制・裁判官の許可状・目的は脱税の摘発
  • 書いてある≠強制
  • 判例の「任意調査」=間接強制調査

まとめます。1つ目、行政調査は、行政機関が行政目的のために情報を集める活動で、決定の前提です。2つ目、3分類の軸は、拒まれたとき行政に何ができるかです。説得だけが任意、罰則が間接強制、実力排除が強制です。3つ目、任意調査に法律の根拠は不要ですが、限界があります。間接強制と強制は、自由を制約するので、個別の法律の根拠が要ります。4つ目、税務の質問検査は間接強制で、目的は適正公平な課税。犯則調査は強制で、裁判官の許可状が要り、目的は脱税の摘発です。5つ目、法律に調査の根拠が書いてあることと、強制調査であることは別です。間接強制でも、意思に反する立入りは違法になりえます。判例の言う任意調査は、今日の間接強制調査です。導入の場面に戻ります。保健所の職員は任意で、断っても何も起きません。税務署の帳簿は間接強制で、断ると罰則ですが、実力では入れません。許可状を持った国税局の職員は強制で、抵抗を排除できます。この先は、問いごとに順に見ていきます。

参照条文

  • 国税通則法74条の2第1項
  • 国税通則法128条
  • 国税通則法132条1項
  • 国税通則法137条1項
  • 生活保護法28条1項
  • 生活保護法28条5項

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