行政法ゼロから行政法#128

個人情報保護制度③(情報の利活用と匿名加工情報)

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第9章 情報公開・個人情報保護 #128/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

役所のデータを、社会が使う側

今日の問い(前回=本人が求める側/今日=役所が持つ住民の情報を社会が使う側/問い=69条は目的外の提供を原則禁止。なのに民間が使える道がある。どんな加工と手続か/道筋=加工情報の3つの名前→行政機関等匿名加工情報→提案から提供まで→提供のあとの義務→情報公開との噛み合い→設例の通し) 図:今日の問い

  • 前回=本人が求める側
  • 今日=役所が持つ住民の情報を社会が使う側
  • 問い=69条は目的外の提供を原則禁止。なのに民間が使える道がある。どんな加工と手続か
  • 道筋=加工情報の3つの名前→行政機関等匿名加工情報→提案から提供まで→提供のあとの義務→情報公開との噛み合い→設例の通し

前回は、本人が自分の情報を求める側でした。今日は反対側です。役所が持っている住民の情報を、社会が使う側を見ます。69条は、目的外の提供を原則として禁じています。それでも、役所の持つデータを民間の事業者が事業に使える道があります。氏名などを消して、元に戻せない形にして出す道です。どんな加工と手続を踏めば出せるのか。これが今日の問いです。

設例の登場人物(A=乙市の長〔行政機関等〕/B=本人〔乙市の住民・児童手当を受ける〕/E=匿名加工情報を事業に使いたい民間事業者/乙市は受給者ファイル〔申請書の内容・認定記録・個人番号などを含む〕を保有) 図:設例の登場人物

  • A=乙市の長〔行政機関等〕
  • B=本人〔乙市の住民・児童手当を受ける〕
  • E=匿名加工情報を事業に使いたい民間事業者
  • 乙市は受給者ファイル〔申請書の内容・認定記録・個人番号などを含む〕を保有

設例を置きます。前回までと同じ配役です。乙市の長をA、乙市に住む本人をBとします。Bは児童手当を受けています。乙市は、申請書の内容や認定記録、個人番号、つまりマイナンバーなどを含む受給者ファイルを保有しています。今日初めて出てくるのが、このファイルから作る加工情報を事業に使いたい事業者Eです。答えを先に言います。氏名などを消し、特定の個人を識別できず、元に戻せない形にして出します。これを行政機関等匿名加工情報といいます。ただし、誰にでも出すわけではありません。提案、審査、契約の手続を通した相手に渡し、渡したあとも、役所は照合を禁じられます。本人の同意がなくても出せる代わりに、こうした守りを重ねるのです。今日の軸は、識別です。識別をどこまで消せば、使ってよいのか。この軸で、最後まで通します。

識別の強さのはしご——加工情報の3つの名前

識別の強さのはしご(個人情報=2条1項/仮名加工情報=2条5項・他の情報と照合しない限り識別できない・照合すれば識別できる・行政機関等の規律は73条/匿名加工情報=2条6項・識別できず元の個人情報を復元もできない/改正が公布され、まだ施行されていない部分がある=今日読むのは現行の条文) 図:識別の強さのはしご

  • 個人情報=2条1項
  • 仮名加工情報=2条5項・他の情報と照合しない限り識別できない・照合すれば識別できる・行政機関等の規律は73条
  • 匿名加工情報=2条6項・識別できず元の個人情報を復元もできない
  • 改正が公布され、まだ施行されていない部分がある=今日読むのは現行の条文

まず、加工した情報の名前を整理します。この分野には、すでに公布されていて、まだ施行されていない改正があります。今日読む条文は、今の法律の条文です。加工情報は、識別の強さで、はしごのように並べられます。いちばんうえが、前回までの個人情報です。特定の個人を識別できる、生存する個人の情報でした。その下に、2つの加工情報があります。1つ目は、仮名加工情報で、2条5項です。他の情報と照合しない限り、特定の個人を識別できないように加工したものです。たとえば、氏名の欄を会員コードに置き換えたとします。会員コードと氏名の対応表を持っている人が照合すれば、誰かが分かります。だから、弱い加工です。行政機関等の規律は73条にあります。2つ目が、今日の中心になる匿名加工情報で、2条6項です。

条文個人情報の保護に関する法律2条6項

個人情報の保護に関する法律 第二条(第6項) 6 この法律において「匿名加工情報」とは、次の各号に掲げる個人情報の区分に応じて当該各号に定める措置を講じて特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたものをいう。  一 第一項第一号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる記述等の一部を削除すること(当該一部の記述等を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。  二 第一項第二号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削除すること(当該個人識別符号を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。

読み方です。個人情報を加工して、特定の個人を識別できないようにし、しかも、元の個人情報を復元できないようにしたもの、です。先ほどの会員コードの例では、対応表がある限り戻せます。匿名加工情報では、渡す情報そのものから、元に戻せないようにします。消した記述や置き換えの対応表は、作った役所の手元にだけ残り、外には出ません。役所自身がそれで突き合わせることも、あとで見る121条が禁じます。復元できないことまで求める点が、仮名加工情報との違いです。加工の中身は、1号と2号です。氏名などの記述等で識別できる個人情報は、記述等の一部を削除します。個人識別符号を含む個人情報は、その符号の全部を削除します。ここで、前々回、個人情報の定義で見た、個人識別符号が戻ってきます。指紋のデータや旅券の番号のように、それだけで本人と分かる符号でした。個人番号は、個人情報保護法施行令1条9号で、個人識別符号とされています。だから、番号の入ったファイルを匿名加工するには、番号を全部消すことになります。

仮名と匿名の見分け方(問い1=照合すれば識別できるか/問い2=元に戻せるか→照合すれば識別できる=仮名加工情報・識別できず元にも戻せない=匿名加工情報/別枠=個人関連情報〔2条7項〕=生存する個人の情報で、個人情報・仮名加工情報・匿名加工情報のどれにも当たらない・行政機関等の規律は72条/注意点①匿名加工情報は個人情報の義務の対象外/注意点②匿名加工情報と行政機関等匿名加工情報は別物) 図:仮名と匿名の見分け方

  • 問い1=照合すれば識別できるか
  • 問い2=元に戻せるか→照合すれば識別できる=仮名加工情報・識別できず元にも戻せない=匿名加工情報
  • 別枠=個人関連情報〔2条7項〕=生存する個人の情報で、個人情報・仮名加工情報・匿名加工情報のどれにも当たらない・行政機関等の規律は72条
  • 注意点①匿名加工情報は個人情報の義務の対象外
  • 注意点②匿名加工情報と行政機関等匿名加工情報は別物

仮名加工情報と匿名加工情報は、次の2つの問いで見分けます。照合すれば識別できるか。元に戻せるか。照合すれば識別できるのが仮名加工情報、識別できず元にも戻せないのが匿名加工情報です。はしごから外れた枠が1つあります。個人関連情報で、2条7項です。生存する個人に関する情報のうち、個人情報、仮名加工情報、匿名加工情報のどれにも当たらないものです。たとえば、特定の端末の閲覧履歴のように、それだけでは誰か分からず、他の情報と容易に照合もできない情報です。行政機関等の規律は72条にあります。仮名加工情報と個人関連情報は、名前と条文の位置までで足ります。注意点を2つ言います。1つ目。匿名加工情報は、個人情報の定義とは別の定義なので、個人情報の義務の対象外です。ただし、行政機関等が、後で見る行政機関等匿名加工情報以外の匿名加工情報を第三者に提供するときなどは、123条が別に定めています。提供するときは、含まれる項目と提供の方法を前もって公表し、受け手に、匿名加工情報だと明示する、という決まりです。2つ目。匿名加工情報と、行政機関等匿名加工情報は、別物です。行政機関等匿名加工情報は、匿名加工情報のうち、一定の個人情報ファイルから作るものだけを指す、公的部門の制度です。次で見ます。

行政機関等匿名加工情報——60条3項の3要件

60条3項の3要件(匿名加工情報のうち、次の3つをすべて満たすファイルから作るもの/①ファイル簿に載せないものではない/②情報公開請求があったとしたら、全部か一部を開示する決定、または第三者に意見書提出の機会を与えることになる/③事務・事業の適正かつ円滑な運営に支障のない範囲で、116条1項の基準に従って加工できる) 図:60条3項の3要件

  • 匿名加工情報のうち、次の3つをすべて満たすファイルから作るもの
  • ①ファイル簿に載せないものではない
  • ②情報公開請求があったとしたら、全部か一部を開示する決定、または第三者に意見書提出の機会を与えることになる
  • ③事務・事業の適正かつ円滑な運営に支障のない範囲で、116条1項の基準に従って加工できる

加工情報のうち、役所が持つ個人情報を元にして作るのが、行政機関等匿名加工情報です。60条3項で定義されています。長いので、柱書、1号、2号、3号に分けて読みます。まず柱書です。

条文個人情報の保護に関する法律60条3項(柱書)

個人情報の保護に関する法律 第六十条(第3項柱書) 3 この章において「行政機関等匿名加工情報」とは、次の各号のいずれにも該当する個人情報ファイルを構成する保有個人情報の全部又は一部(これらの一部に行政機関情報公開法第五条に規定する不開示情報(同条第一号に掲げる情報を除き、同条第二号ただし書に規定する情報を含む。以下この項において同じ。)、独立行政法人等情報公開法第五条に規定する不開示情報(同条第一号に掲げる情報を除き、同条第二号ただし書に規定する情報を含む。)又は地方公共団体の情報公開条例(地方公共団体の機関又は地方独立行政法人の保有する情報の公開を請求する住民等の権利について定める地方公共団体の条例をいう。以下この章において同じ。)に規定する不開示情報(行政機関情報公開法第五条に規定する不開示情報に相当するものをいう。)が含まれているときは、これらの不開示情報に該当する部分を除く。)を加工して得られる匿名加工情報をいう。

読み方です。行政機関等匿名加工情報は、個人情報ファイルを構成する保有個人情報を加工して得る匿名加工情報です。ただし、そのファイルが、次の3つの条件をすべて満たさなければなりません。長い括弧書きは、加工の元にする部分から除くものを定めています。次が、1号です。

条文個人情報の保護に関する法律60条3項(一号)

個人情報の保護に関する法律 第六十条(第3項一号)  一 第七十五条第二項各号のいずれかに該当するもの又は同条第三項の規定により同条第一項に規定する個人情報ファイル簿に掲載しないこととされるものでないこと。

1号は、個人情報ファイル簿に載せないものではないこと。ファイル簿に載っているファイルだけが対象になります。なぜ、ファイル簿に載ることが条件なのか。ファイル簿は、前々回に見た、役所が持つファイルを帳簿にして公表するものです。このあと見る110条で、募集の旨もファイル簿に載せ、事業者はそれを見て提案します。犯罪の捜査のためのファイルのように、ファイル簿に載せないとされるものは、この入口を持てないのです。次が、2号です。

条文個人情報の保護に関する法律60条3項(二号)

個人情報の保護に関する法律 第六十条(第3項二号)  二 行政機関情報公開法第三条に規定する行政機関の長、独立行政法人等情報公開法第二条第一項に規定する独立行政法人等、地方公共団体の機関又は地方独立行政法人に対し、当該個人情報ファイルを構成する保有個人情報が記録されている行政文書等の開示の請求(行政機関情報公開法第三条、独立行政法人等情報公開法第三条又は情報公開条例の規定による開示の請求をいう。)があったとしたならば、これらの者が次のいずれかを行うこととなるものであること。   イ 当該行政文書等に記録されている保有個人情報の全部又は一部を開示する旨の決定をすること。   ロ 行政機関情報公開法第十三条第一項若しくは第二項、独立行政法人等情報公開法第十四条第一項若しくは第二項又は情報公開条例(行政機関情報公開法第十三条第一項又は第二項の規定に相当する規定を設けているものに限る。)の規定により意見書の提出の機会を与えること。

2号は、そのファイルの保有個人情報が載った文書に、情報公開の請求があったとしたら、全部か一部を開示する決定をするか、第三者に意見書を出す機会を与えることになるもの、という条件です。情報公開の線に合わせるためのふるいです。ある文書に情報公開請求があったとき、全部が不開示になるなら、その文書のファイルは対象になりません。全部か一部が開示されるものだけが、加工の元になれます。たとえば、受給者ファイルの文書に請求があった場合、Bの氏名などを黒塗りにすれば、個人が分からなくなる部分は、開示されることがあります。そうした一部の開示なので、2号に当たりえます。ロの意見書は、情報公開の回で見た、第三者の情報が載った文書を開示するか決める前に、その第三者の意見を聞く手続です。意見を聞くのは、開示の見込みが残っているからです。だから、ロに当たるものも、全部が不開示と決まった文書ではない側に入ります。最後が3号です。

条文個人情報の保護に関する法律60条3項(三号)

個人情報の保護に関する法律 第六十条(第3項三号)  三 行政機関等の事務及び事業の適正かつ円滑な運営に支障のない範囲内で、第百十六条第一項の基準に従い、当該個人情報ファイルを構成する保有個人情報を加工して匿名加工情報を作成することができるものであること。

3号は、役所の事務や事業の適正かつ円滑な運営に支障のない範囲で、加工して匿名加工情報を作れること、です。加工の基準は116条1項に従います。

柱書の括弧書き(加工の元にする部分から除く=情報公開の不開示情報のうち、1号〔個人に関する情報〕を除いたもの〔2号以下に当たる部分〕・2号ただし書の情報/個人に関する情報は元にする=まさに匿名化して使う対象/例=Bの氏名・住所は情報公開では不開示でも加工の元になる) 図:柱書の括弧書き

  • 加工の元にする部分から除く=情報公開の不開示情報のうち、1号〔個人に関する情報〕を除いたもの〔2号以下に当たる部分〕・2号ただし書の情報
  • 個人に関する情報は元にする=まさに匿名化して使う対象
  • 例=Bの氏名・住所は情報公開では不開示でも加工の元になる

柱書の括弧書きも、同じ向きです。加工の元にする部分から除かれるのは、情報公開法5条の不開示情報のうち、1号の個人に関する情報を除いたものです。地方公共団体の場合は、これに相当する情報公開条例の不開示情報です。つまり、法人の利益や国の安全、審議検討、事務事業などの不開示情報に当たる部分は元にしません。2号ただし書の情報、つまり法人の情報でも、人の生命、健康、生活や財産を守るために公にすべきものも、ここでは元にしません。ただし、不開示情報を全部除くわけではありません。個人に関する情報、つまり5条1号の部分は除かれません。この部分は、匿名化して使う対象そのものだからです。たとえば、受給者ファイルのBの氏名や住所は、情報公開では不開示です。それでも加工の元にはなります。氏名を削り、復元できない形にして初めて、社会が使えるデータになるからです。なぜ、情報公開の線に合わせるのか。加工で消せるのは、誰のことかという識別だけです。法人の利益や国の安全のように、識別とは別の理由で隠している情報は、氏名を消しても守れません。だから、その部分は元にせず、個人に関する情報だけを、匿名化して使うのです。2つの暗記点です。1つ目。作成は、109条1項で、できる、とされています。義務ではありません。2つ目。本人の同意は要件ではありません。前々回、民間の学習塾Cには、Bの同意がなければ渡せませんでした。69条2項1号の、本人の同意の例外しか入口がなかったからです。それと違い、ここでは同意なしに出せます。その代わりに、識別できず復元できない加工と、これから見る審査、契約、識別行為の禁止で守ります。

提案から提供まで——一本線

提案から提供までの一本線(ファイル簿に「提案を募集するファイル」と記載〔110条〕→定期的に募集〔111条〕→Eが提案〔112条〕→欠格事由の確認〔113条〕→審査〔114条〕→契約〔115条〕→加工〔116条=識別できず元に戻せない基準〕→提供〔109条2項〕/手数料は119条/附則7条=一般の市は募集が任意/契約後=解除〔120条〕・識別行為の禁止〔121条〕) 図:提案から提供までの一本線

  • ファイル簿に「提案を募集するファイル」と記載〔110条〕→定期的に募集〔111条〕→Eが提案〔112条〕→欠格事由の確認〔113条〕→審査〔114条〕→契約〔115条〕→加工〔116条=識別できず元に戻せない基準〕→提供〔109条2項〕
  • 手数料は119条
  • 附則7条=一般の市は募集が任意
  • 契約後=解除〔120条〕・識別行為の禁止〔121条〕

ここから、設例に沿って手続を追います。事業者Eが、乙市の受給者ファイルから作る匿名加工情報で、子育て支援アプリの需要を調べたいとします。地区ごとの子どもの数や年齢の分布が分かれば足ります。この願いが叶うまでの手続を、役所の側から見て、一本の線で追います。順番は、ファイル簿に記載、募集、提案、審査、契約、加工、提供です。

記載と募集(乙市Aが、ファイルが60条3項の各号のすべてに当たると認める→ファイル簿に「提案を募集するファイルである旨」と「提案を受ける組織の名称・所在地」を記載〔110条〕→定期的に提案を募集〔111条=募集するものとする〕) 図:記載と募集

最初は、110条です。

条文個人情報の保護に関する法律110条

個人情報の保護に関する法律 第百十条 行政機関の長等は、当該行政機関の長等の属する行政機関等が保有している個人情報ファイルが第六十条第三項各号のいずれにも該当すると認めるときは、当該個人情報ファイルについては、個人情報ファイル簿に次に掲げる事項を記載しなければならない。この場合における当該個人情報ファイルについての第七十五条第一項の規定の適用については、同項中「第十号」とあるのは、「第十号並びに第百十条各号」とする。  一 第百十二条第一項の提案の募集をする個人情報ファイルである旨  二 第百十二条第一項の提案を受ける組織の名称及び所在地

読み方です。ファイルが、先ほどの60条3項の各号のすべてに当たると認めたら、ファイル簿に、提案を募集するファイルである旨と、提案を受ける組織の名称、所在地を記載します。次が、111条です。

条文個人情報の保護に関する法律111条

個人情報の保護に関する法律 第百十一条 行政機関の長等は、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、定期的に、当該行政機関の長等の属する行政機関等が保有している個人情報ファイル(個人情報ファイル簿に前条第一号に掲げる事項の記載があるものに限る。以下この節において同じ。)について、次条第一項の提案を募集するものとする。

読み方です。ファイル簿に募集の旨が載ったファイルについて、役所は、定期的に提案を募集するものとされています。

提案と欠格事由(Eが提案〔112条1項=募集に応じ、事業の用に供しようとする者/個人でも法人でもよい〕→書面に提案者・ファイルの名称・本人の数・加工の方法・利用の目的と事業の内容・利用期間・管理措置など/添付=欠格事由に当たらない誓約書+新たな産業の創出などに資する事業であることを明らかにする書面→欠格事由の確認〔113条=未成年者/心身の故障〔規則〕/破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者/拘禁刑以上の刑などで2年を経過しない者/120条で利用契約を解除されて2年を経過しない者/役員にこれらの者がいる法人〕) 図:提案と欠格事由

  • Eが提案〔112条1項=募集に応じ、事業の用に供しようとする者/個人でも法人でもよい〕→書面に提案者・ファイルの名称・本人の数・加工の方法・利用の目的と事業の内容・利用期間・管理措置など
  • 添付=欠格事由に当たらない誓約書+新たな産業の創出などに資する事業であることを明らかにする書面→欠格事由の確認〔113条=未成年者/心身の故障〔規則〕/破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者/拘禁刑以上の刑などで2年を経過しない者/120条で利用契約を解除されて2年を経過しない者/役員にこれらの者がいる法人〕

募集を受けて、Eが提案を出します。112条1項です。

条文個人情報の保護に関する法律112条1項

個人情報の保護に関する法律 第百十二条(第1項) 前条の規定による募集に応じて個人情報ファイルを構成する保有個人情報を加工して作成する行政機関等匿名加工情報をその事業の用に供しようとする者は、行政機関の長等に対し、当該事業に関する提案をすることができる。

読み方です。募集に応じて、ファイルを加工して作る行政機関等匿名加工情報を事業に使おうとする者は、提案ができます。提案者は、個人でも法人でもかまいません。提案は書面で、提案者の名称、ファイルの名称、本人の数、加工の方法、利用の目的と事業の内容、利用の期間、管理の措置などを書きます。添付するのは、法律が挙げる書面が、欠格事由に当たらないことの誓約書と、新たな産業の創出などに資する事業であることを明らかにする書面の2つで、ほかに委員会規則が定める書類もあります。欠格事由は、113条です。まず、1号から3号です。

条文個人情報の保護に関する法律113条(柱書・一号〜三号)

個人情報の保護に関する法律 第百十三条(柱書・一号〜三号) 次の各号のいずれかに該当する者は、前条第一項の提案をすることができない。  一 未成年者  二 心身の故障により前条第一項の提案に係る行政機関等匿名加工情報をその用に供して行う事業を適正に行うことができない者として個人情報保護委員会規則で定めるもの  三 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

読み方です。未成年者、心身の故障で事業を適正に行えないと個人情報保護委員会の規則で定められた者、破産手続開始の決定を受けて、まだ復権、つまり資格の回復を得ていない者は、提案ができません。この委員会は、前々回に見た、行政機関等も監督する機関です。続きの、4号から6号です。

条文個人情報の保護に関する法律113条(四号〜六号)

個人情報の保護に関する法律 第百十三条(四号〜六号)  四 拘禁刑以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定により刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者  五 第百二十条の規定により行政機関等匿名加工情報の利用に関する契約を解除され、その解除の日から起算して二年を経過しない者  六 法人その他の団体であって、その役員のうちに前各号のいずれかに該当する者があるもの

読み方です。拘禁刑以上の刑などを受けて、執行が終わるなどした日から2年を経過しない者、行政機関等匿名加工情報の利用契約を、あとで見る120条で解除されて2年を経過しない者、そして、役員にこれらの者がいる法人です。これらも、提案はできません。たとえば、Eの役員の1人が、以前に別の役所と結んだ行政機関等匿名加工情報の利用契約を、あとで見る120条で解除されてから2年たっていなければ、Eは提案できません。ほかの契約を解除されただけでは、ここには入りません。

審査と契約(提案→審査〔114条1項=基準7つ:①欠格事由なし②本人の数が規則の範囲③加工の方法が116条1項の基準に適合④新たな産業の創出などに資する事業⑤利用期間が規則の範囲内⑥利用の目的・管理措置が本人の権利利益の保護に適切⑦規則のその他の基準〕→全部に適合=契約を締結できる旨を通知〔2項〕/どれかに不適合=理由を付して通知〔3項〕→契約を締結〔115条〕) 図:審査と契約

  • 提案→審査〔114条1項=基準7つ:①欠格事由なし②本人の数が規則の範囲③加工の方法が116条1項の基準に適合④新たな産業の創出などに資する事業⑤利用期間が規則の範囲内⑥利用の目的・管理措置が本人の権利利益の保護に適切⑦規則のその他の基準〕→全部に適合=契約を締結できる旨を通知〔2項〕
  • どれかに不適合=理由を付して通知〔3項〕→契約を締結〔115条〕

次は審査です。114条です。長いので、3つに分けて読みます。まず1項の前半、柱書と1号から3号です。

条文個人情報の保護に関する法律114条1項(柱書・一号〜三号)

個人情報の保護に関する法律 第百十四条(第1項 柱書・一号〜三号) 1 行政機関の長等は、第百十二条第一項の提案があったときは、当該提案が次に掲げる基準に適合するかどうかを審査しなければならない。  一 第百十二条第一項の提案をした者が前条各号のいずれにも該当しないこと。  二 第百十二条第二項第三号の提案に係る行政機関等匿名加工情報の本人の数が、行政機関等匿名加工情報の効果的な活用の観点からみて個人情報保護委員会規則で定める数以上であり、かつ、提案に係る個人情報ファイルを構成する保有個人情報の本人の数以下であること。  三 第百十二条第二項第三号及び第四号に掲げる事項により特定される加工の方法が第百十六条第一項の基準に適合するものであること。

読み方です。提案があったら、役所は、基準に適合するかを審査しなければなりません。1号は、欠格事由に当たらないこと。2号は、本人の数が、委員会規則で定める数以上で、ファイルの本人の数以下であること。3号は、加工の方法が、116条1項の基準に適合することです。続きの、4号から7号です。

条文個人情報の保護に関する法律114条1項(四号〜七号)

個人情報の保護に関する法律 第百十四条(第1項 四号〜七号)  四 第百十二条第二項第五号の事業が新たな産業の創出又は活力ある経済社会若しくは豊かな国民生活の実現に資するものであること。  五 第百十二条第二項第六号の期間が行政機関等匿名加工情報の効果的な活用の観点からみて個人情報保護委員会規則で定める期間を超えないものであること。  六 第百十二条第二項第五号の提案に係る行政機関等匿名加工情報の利用の目的及び方法並びに同項第七号の措置が当該行政機関等匿名加工情報の本人の権利利益を保護するために適切なものであること。  七 前各号に掲げるもののほか、個人情報保護委員会規則で定める基準に適合するものであること。

4号は、事業が、新たな産業の創出などに資すること。5号は、利用の期間が、委員会規則で定める期間を超えないこと。6号は、利用の目的と管理の措置が、本人の権利利益を守るために適切であること。7号は、規則で定めるその他の基準です。基準は全部で7つです。設例のEなら、子育て支援アプリの需要調べが4号の事業に当たるか、地区ごとの分布だけを使う目的と、手元で漏らさない措置が6号に適うかが見られます。次が、2項と3項です。

条文個人情報の保護に関する法律114条(第2項・第3項)

個人情報の保護に関する法律 第百十四条(第2項・第3項) 2 行政機関の長等は、前項の規定により審査した結果、第百十二条第一項の提案が前項各号に掲げる基準のいずれにも適合すると認めるときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該提案をした者に対し、次に掲げる事項を通知するものとする。  一 次条の規定により行政機関の長等との間で行政機関等匿名加工情報の利用に関する契約を締結することができる旨  二 前号に掲げるもののほか、個人情報保護委員会規則で定める事項 3 行政機関の長等は、第一項の規定により審査した結果、第百十二条第一項の提案が第一項各号に掲げる基準のいずれかに適合しないと認めるときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該提案をした者に対し、理由を付して、その旨を通知するものとする。

読み方です。7つの基準のすべてに適合すれば、契約を締結できる旨を通知します。どれかに適合しなければ、理由を付して通知します。次が115条です。

条文個人情報の保護に関する法律115条

個人情報の保護に関する法律 第百十五条 前条第二項の規定による通知を受けた者は、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、行政機関の長等との間で、行政機関等匿名加工情報の利用に関する契約を締結することができる。

通知を受けた者は、契約を締結できます。

加工と提供(契約後=乙市Aが116条1項の基準に従って加工〔識別できず元の保有個人情報を復元できないように〕→Eへ提供〔109条2項=法令に基づく場合〔この節に従う場合を含む〕などを除き提供してはならない〕/作成は「できる」〔109条1項〕/削除情報の目的外の利用・提供は禁止〔109条3項・4項〕/手数料は119条=行政機関は政令・地方公共団体は条例) 図:加工と提供

  • 契約後=乙市Aが116条1項の基準に従って加工〔識別できず元の保有個人情報を復元できないように〕→Eへ提供〔109条2項=法令に基づく場合〔この節に従う場合を含む〕などを除き提供してはならない〕
  • 作成は「できる」〔109条1項〕
  • 削除情報の目的外の利用・提供は禁止〔109条3項・4項〕
  • 手数料は119条=行政機関は政令・地方公共団体は条例

契約を結んだあとで、役所は加工します。なぜ契約のあとなのか。何をどう加工するかは、Eの提案が決めるからです。提案書に加工の方法を書き、審査の3号で、その方法が基準に合うかを見ました。相手と中身が決まってから、その相手のために作るのです。116条1項です。

条文個人情報の保護に関する法律116条1項

個人情報の保護に関する法律 第百十六条(第1項) 行政機関の長等は、行政機関等匿名加工情報を作成するときは、特定の個人を識別することができないように及びその作成に用いる保有個人情報を復元することができないようにするために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に従い、当該保有個人情報を加工しなければならない。

読み方です。役所は、特定の個人を識別できないように、かつ、元の保有個人情報を復元できないようにするために必要なものとして、委員会規則が定める基準に従って加工しなければなりません。ここで、先ほどの2条6項の、識別できず復元もできない、という要求が、加工の基準として具体化されます。設例のBの氏名や口座、個人番号は消され、Bには戻せない形になります。最後が提供です。109条です。1項と2項から読みます。

条文個人情報の保護に関する法律109条1項・2項

個人情報の保護に関する法律 第百九条(第1項・第2項) 行政機関の長等は、この節の規定に従い、行政機関等匿名加工情報(行政機関等匿名加工情報ファイルを構成するものに限る。以下この節において同じ。)を作成することができる。 2 行政機関の長等は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、行政機関等匿名加工情報を提供してはならない。  一 法令に基づく場合(この節の規定に従う場合を含む。)  二 保有個人情報を利用目的のために第三者に提供することができる場合において、当該保有個人情報を加工して作成した行政機関等匿名加工情報を当該第三者に提供するとき。

読み方です。1項は、作成することが、できる、という書き方で、義務ではありません。2項は提供の禁止で、例外は、法令に基づく場合で、この節に従う場合も含みます。もう1つは、元の保有個人情報を利用目的のために第三者に提供できる場合に、それを加工した情報を、その同じ第三者に提供するときです。Eへの提供は、この節に従う提供なので、1号に当たります。続いて3項と4項です。

条文個人情報の保護に関する法律109条3項・4項

個人情報の保護に関する法律 第百九条(第3項・第4項) 3 第六十九条の規定にかかわらず、行政機関の長等は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために削除情報(保有個人情報に該当するものに限る。)を自ら利用し、又は提供してはならない。 4 前項の「削除情報」とは、行政機関等匿名加工情報の作成に用いた保有個人情報から削除した記述等及び個人識別符号をいう。

読み方です。3項は、法令に基づく場合を除き、削除情報を、利用目的以外の目的のために、自ら利用することも、提供することも禁じています。4項は、削除情報とは、加工のために保有個人情報から削った、記述等と個人識別符号のことだと定めます。この2つは、あとの情報公開の話で使います。手数料は119条で、行政機関は政令の額、地方公共団体は条例の額です。名前だけで足ります。

一般の市の特例(附則7条=都道府県・指定都市以外の地方公共団体の機関と地方独立行政法人は、当分の間、110条の記載は「募集をしようとする場合」に限られ、111条の「募集するものとする」は「募集することができる」に読み替え→募集は任意/国の行政機関・独立行政法人等・都道府県・指定都市は定期的な募集が原則) 図:一般の市の特例

  • 附則7条=都道府県・指定都市以外の地方公共団体の機関と地方独立行政法人は、当分の間、110条の記載は「募集をしようとする場合」に限られ、111条の「募集するものとする」は「募集することができる」に読み替え→募集は任意
  • 国の行政機関・独立行政法人等・都道府県・指定都市は定期的な募集が原則

ここまでの流れに、短答で問われる例外が1つあります。募集の義務についてです。募集は、111条で、するものとされています。ただし、附則7条に特例があります。

条文個人情報の保護に関する法律附則7条

個人情報の保護に関する法律 附則第七条  都道府県及び地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市以外の地方公共団体の機関並びに地方独立行政法人についての第百十条及び第百十一条の規定の適用については、当分の間、第百十条中「行政機関の長等は、」とあるのは「行政機関の長等は、次条の規定による募集をしようとする場合であって、」と、第百十一条中「ものとする」とあるのは「ことができる」とする。

読み方です。都道府県と指定都市以外の地方公共団体の機関、それから地方独立行政法人については、当分の間、110条の記載は、募集をしようとする場合に限られます。111条は、募集するものとする、が、募集することができる、に読み替えられます。つまり任意です。指定都市は、地方公共団体の組織の回で見た、人口50万以上で政令で指定された市です。この特例は附則に置かれ、当分の間、とあります。当分の間は、終わる時期を決めていない書き方で、原則はあくまで111条の定期的な募集のままです。乙市のような一般の市は、募集するかどうかを選べます。国の行政機関や独立行政法人等、都道府県、指定都市は、定期的な募集が原則です。短答では、ここが問われます。

提供のあとの義務と、もう一つの入口

提供のあと(解除〔120条〕=①偽りその他不正の手段で契約を締結したとき②113条の欠格事由に当たることになったとき③契約で定めた事項に重大な違反があったとき/解除「できる」であって「しなければならない」ではない) 図:提供のあと

  • 解除〔120条〕=①偽りその他不正の手段で契約を締結したとき②113条の欠格事由に当たることになったとき③契約で定めた事項に重大な違反があったとき
  • 解除「できる」であって「しなければならない」ではない

ここからは、提供したあとの場面です。Eに提供したあとも、乙市には義務が残ります。120条は、契約の解除です。

条文個人情報の保護に関する法律120条

個人情報の保護に関する法律 第百二十条 行政機関の長等は、第百十五条の規定により行政機関等匿名加工情報の利用に関する契約を締結した者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該契約を解除することができる。  一 偽りその他不正の手段により当該契約を締結したとき。  二 第百十三条各号(第百十八条第二項において準用する場合を含む。)のいずれかに該当することとなったとき。  三 当該契約において定められた事項について重大な違反があったとき。

読み方です。Eが不正の手段で契約を結んでいたとき、契約のあとで欠格事由に当たることになったとき、契約で定めた事項に重大な違反があったとき。この3つの場合に、乙市は契約を解除できます。解除できる、であって、解除しなければならない、ではありません。

識別行為の禁止と管理措置(121条=1項 元の本人を識別するために他の情報と照合してはならない/2項 行政機関等匿名加工情報・削除情報・加工の方法に関する情報の漏えいを防ぐ措置/委託を受けた者にも準用〔3項〕/従事者の義務〔122条〕/もう一つの入口=作成済みのものをファイル簿で知らせ〔117条〕事業者が提案する〔118条〕) 図:識別行為の禁止と管理措置

  • 121条=1項 元の本人を識別するために他の情報と照合してはならない
  • 2項 行政機関等匿名加工情報・削除情報・加工の方法に関する情報の漏えいを防ぐ措置
  • 委託を受けた者にも準用〔3項〕
  • 従事者の義務〔122条〕
  • もう一つの入口=作成済みのものをファイル簿で知らせ〔117条〕事業者が提案する〔118条〕

次が121条です。提供のあと、役所が自分に課す義務です。

条文個人情報の保護に関する法律121条1項・2項

個人情報の保護に関する法律 第百二十一条(第1項・第2項) 行政機関の長等は、行政機関等匿名加工情報を取り扱うに当たっては、法令に基づく場合を除き、当該行政機関等匿名加工情報の作成に用いられた個人情報に係る本人を識別するために、当該行政機関等匿名加工情報を他の情報と照合してはならない。 2 行政機関の長等は、行政機関等匿名加工情報、第百九条第四項に規定する削除情報及び第百十六条第一項の規定により行った加工の方法に関する情報(以下この条及び次条において「行政機関等匿名加工情報等」という。)の漏えいを防止するために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に従い、行政機関等匿名加工情報等の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。

読み方です。1項は、識別行為の禁止です。乙市は、元の本人を識別するために、行政機関等匿名加工情報を他の情報と照合してはなりません。たとえば、アプリ用に渡した年齢の分布を、手元の受給者の名簿と突き合わせて、誰の世帯かを割り出すことは許されません。これを許せば、加工して識別できなくした意味がなくなるからです。受け取ったEの側も、本人を割り出すための照合は、民間の事業者のルールで、別に禁じられています。2項は管理措置です。加工した情報のほかに、削った記述等である削除情報と、加工の方法の情報も、漏えいを防ぐ措置の対象です。これらの情報があれば、元の本人にたどり着けるからです。委託を受けた者にも、これらは準用されます。

条文個人情報の保護に関する法律122条

個人情報の保護に関する法律 第百二十二条 行政機関等匿名加工情報等の取扱いに従事する行政機関等の職員若しくは職員であった者、前条第三項の委託を受けた業務に従事している者若しくは従事していた者又は行政機関等において行政機関等匿名加工情報等の取扱いに従事している派遣労働者若しくは従事していた派遣労働者は、その業務に関して知り得た行政機関等匿名加工情報等の内容をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に利用してはならない。

読み方です。従事者の義務として、122条は、職員や元職員、委託を受けた業務の従事者、派遣労働者に、業務で知り得た内容をみだりに他人に知らせたり、不当な目的に利用したりすることを禁じています。もう1つの入口があります。募集に応じて作る道が、ここまで見た110条から115条です。これとは別に、すでに作った行政機関等匿名加工情報を活用してもらう道があります。作ったときに、ファイル簿に概要と提案を受ける組織、提案できる期間を記載するのが117条で、事業者がそれに提案するのが118条です。2つの入口がある、と名前だけ押さえてください。

情報公開法5条1号の2との噛み合い

情報公開と個人情報保護の噛み合い(元にする部分=60条3項で情報公開の線に合わせる/出来上がった行政機関等匿名加工情報と、作成に用いた保有個人情報から削除した記述等・個人識別符号=国の行政機関では情報公開法5条1号の2で不開示・7条の裁量的開示の対象外/乙市への請求は乙市の情報公開条例による/削除情報の目的外の利用・提供は109条3項で禁止/理由=審査と契約を通した相手に渡す情報が、誰にでも出す道から出ると素通りになる・削った記述等は元の本人にたどり着く手がかり) 図:情報公開と個人情報保護の噛み合い

  • 元にする部分=60条3項で情報公開の線に合わせる
  • 出来上がった行政機関等匿名加工情報と、作成に用いた保有個人情報から削除した記述等・個人識別符号=国の行政機関では情報公開法5条1号の2で不開示・7条の裁量的開示の対象外
  • 乙市への請求は乙市の情報公開条例による
  • 削除情報の目的外の利用・提供は109条3項で禁止
  • 理由=審査と契約を通した相手に渡す情報が、誰にでも出す道から出ると素通りになる・削った記述等は元の本人にたどり着く手がかり

情報公開の回で、約束した話を回収します。ここで復習を1問。情報公開法5条1号の2が不開示にしているのは、何と何で、7条の裁量的開示との関係はどうなっているでしょうか?5条1号の2が不開示にしているのは、行政機関等匿名加工情報と、その作成に用いた保有個人情報から削った記述等です。7条の裁量的開示の対象からも外れています。条文で確かめます。

条文行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条(柱書・1号の2)

行政機関の保有する情報の公開に関する法律 第五条(柱書・第一号の二) 行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。  一の二 個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第六十条第三項に規定する行政機関等匿名加工情報(同条第四項に規定する行政機関等匿名加工情報ファイルを構成するものに限る。以下この号において「行政機関等匿名加工情報」という。)又は行政機関等匿名加工情報の作成に用いた同条第一項に規定する保有個人情報から削除した同法第二条第一項第一号に規定する記述等若しくは同条第二項に規定する個人識別符号

続いて、7条です。

条文行政機関の保有する情報の公開に関する法律7条

行政機関の保有する情報の公開に関する法律 第七条 行政機関の長は、開示請求に係る行政文書に不開示情報(第五条第一号の二に掲げる情報を除く。)が記録されている場合であっても、公益上特に必要があると認めるときは、開示請求者に対し、当該行政文書を開示することができる。

読み方です。5条1号の2は、行政機関等匿名加工情報と、その作成に用いた保有個人情報から削除した記述等や個人識別符号を、不開示情報にしています。7条は、公益上特に必要があるときの裁量的開示ですが、括弧書きで、5条1号の2の情報を除いています。つまり、公益上の理由があっても、裁量では開示できません。たとえば、国の行政機関が事業者のために作った加工情報を、別の人が情報公開請求で見せてほしいと求めても、不開示です。公益上の必要を言っても、裁量で開示できません。乙市のような地方公共団体への請求は、情報公開法ではなく、乙市の情報公開条例の定めによります。2つの法律の向きを、1本の線にします。元にする部分は、60条3項が、情報公開の線に合わせます。出来上がった加工情報と、削った記述等は、国の行政機関では、5条1号の2が、情報公開から外します。理由は、情報公開の回で見た2つです。審査と契約を通した相手に渡す情報が、誰にでも出す情報公開の道から出てしまうと、この仕組みが素通りされるからです。そして、削った記述等は、加工前の本人にたどり着く手がかりそのものだからです。さきほどの109条3項が、この削除情報の目的外の利用と提供を、自分の側でも禁じています。同じ文書を、情報公開は、誰にでも見せてよいかで見ます。個人情報保護は、本人以外に出してよいかで見ます。この2つが、ここで噛み合います。

設例の通し——Bの児童手当の情報が使われるまで

設例の通し(①乙市Aが受給者ファイルを60条3項の3要件に当たると認め、ファイル簿に募集の旨を記載〔110条・一般の市は任意=附則7条〕→②Eが提案〔112条〕→欠格事由なし〔113条〕→審査〔114条〕→契約〔115条〕→③116条の基準で加工〔Bの氏名・口座・個人番号などは消え、Bには戻せない〕→提供〔109条2項・Bの同意は不要〕→④提供後=Aは照合してはならず〔121条〕・Eに不正や重大な違反があれば解除できる〔120条〕→⑤第三者が情報公開請求しても国の行政機関なら5条1号の2で不開示・7条の裁量的開示も不可/乙市への請求は乙市の情報公開条例による) 図:設例の通し

  • ①乙市Aが受給者ファイルを60条3項の3要件に当たると認め、ファイル簿に募集の旨を記載〔110条・一般の市は任意=附則7条〕→②Eが提案〔112条〕→欠格事由なし〔113条〕→審査〔114条〕→契約〔115条〕→③116条の基準で加工〔Bの氏名・口座・個人番号などは消え、Bには戻せない〕→提供〔109条2項・Bの同意は不要〕→④提供後=Aは照合してはならず〔121条〕・Eに不正や重大な違反があれば解除できる〔120条〕→⑤第三者が情報公開請求しても国の行政機関なら5条1号の2で不開示・7条の裁量的開示も不可
  • 乙市への請求は乙市の情報公開条例による

設例を通します。Bの児童手当の情報が、事業者Eに使われるまでを、1本で追います。まず、乙市Aは、一般の市なので、附則7条により、募集するかどうかを選べます。募集しようとするなら、受給者ファイルが60条3項の3つの要件に当たると認めて、ファイル簿に、提案を募集する旨を記載します。そのうえで、Eが提案を出し、欠格事由がなく、審査に適合すれば、契約を結びます。そのあと、乙市は、116条の基準で加工します。Bの氏名や口座、個人番号などは消え、Bには戻せない形になります。この加工情報が、Eに提供されます。ここにBの同意は要りません。入口が、69条2項1号の、本人の同意とは別の道だからです。提供したあとも、乙市は、元の本人を識別するために照合してはならず、削除情報なども守ります。Eに、不正の手段による契約や重大な違反があれば、契約を解除できます。そして、国の行政機関が作った加工情報なら、第三者が情報公開請求で求めても、5条1号の2で不開示です。7条の裁量的開示も使えません。乙市への請求は、乙市の情報公開条例の定めによります。

同意がなくても本人の利益を守れるのは、守りが重なっているからです。識別できず、復元もできない加工。審査と契約で、相手を絞ること。提供のあとの、照合の禁止。そして、国の制度では、情報公開の道からも外されていること。同意の代わりに、これだけの守りがかかっています。

今日の地図(保存版)

今日のまとめ(①加工情報の強さ=個人情報→仮名加工情報〔照合すれば識別できる〕→匿名加工情報〔識別できず復元もできない〕/②行政機関等匿名加工情報=60条3項の3要件→ファイル簿に記載→募集→提案→審査→契約→加工→提供・作成は「できる」・同意は不要・附則7条=一般の市は任意/③提供後=解除〔120条〕・照合の禁止と管理措置〔121条〕・従事者の義務〔122条〕/出来上がりと削除情報は国の行政機関では5条1号の2で不開示〔7条の対象外〕) 図:今日のまとめ

  • ①加工情報の強さ=個人情報→仮名加工情報〔照合すれば識別できる〕→匿名加工情報〔識別できず復元もできない〕
  • ②行政機関等匿名加工情報=60条3項の3要件→ファイル簿に記載→募集→提案→審査→契約→加工→提供・作成は「できる」・同意は不要・附則7条=一般の市は任意
  • ③提供後=解除〔120条〕・照合の禁止と管理措置〔121条〕・従事者の義務〔122条〕/出来上がりと削除情報は国の行政機関では5条1号の2で不開示〔7条の対象外〕

最初の問いに戻ります。69条は目的外の提供を原則として禁じているのに、役所のデータを民間が使える道があるのは、なぜでしょうか。答えは、目的外の提供の原則禁止はそのままに、守りを重ねた道を、法律が別に用意しているからです。識別できず、元に戻せない形に加工する。提案、審査、契約で、相手を絞る。提供したあとも、照合を禁じる。そして、国の行政機関では、情報公開の道からは外す。この守りがそろった道が、本人の同意がなくても、役所のデータを民間の事業に使わせる入口になります。持ち帰るのは、3点です。1つ目。加工情報は、識別の強さで並びます。仮名加工情報は、照合すれば識別できる。匿名加工情報は、識別できず、復元もできない。個人関連情報は、どれにも当たらない生存する個人の情報です。2つ目。行政機関等匿名加工情報は、60条3項の3要件を満たすファイルから作ります。作成は、できる、であって義務ではなく、本人の同意は要りません。手続は、ファイル簿に記載、募集、提案、審査、契約、加工、提供の順で、一般の市は、附則7条で、募集が任意です。3つ目。提供のあとは、解除の120条、照合の禁止と管理措置の121条があります。出来上がった加工情報と削除情報は、5条1号の2で不開示で、7条の裁量的開示の対象外です。

参照条文

  • 個人情報の保護に関する法律2条6項
  • 個人情報の保護に関する法律60条3項(柱書)
  • 個人情報の保護に関する法律60条3項(一号)
  • 個人情報の保護に関する法律60条3項(二号)
  • 個人情報の保護に関する法律60条3項(三号)
  • 個人情報の保護に関する法律110条
  • 個人情報の保護に関する法律111条
  • 個人情報の保護に関する法律112条1項
  • 個人情報の保護に関する法律113条(柱書・一号〜三号)
  • 個人情報の保護に関する法律113条(四号〜六号)
  • 個人情報の保護に関する法律114条1項(柱書・一号〜三号)
  • 個人情報の保護に関する法律114条1項(四号〜七号)
  • 個人情報の保護に関する法律114条(第2項・第3項)
  • 個人情報の保護に関する法律115条
  • 個人情報の保護に関する法律116条1項
  • 個人情報の保護に関する法律109条1項・2項
  • 個人情報の保護に関する法律109条3項・4項
  • 個人情報の保護に関する法律附則7条
  • 個人情報の保護に関する法律120条
  • 個人情報の保護に関する法律121条1項・2項
  • 個人情報の保護に関する法律122条
  • 行政機関の保有する情報の公開に関する法律5条(柱書・1号の2)
  • 行政機関の保有する情報の公開に関する法律7条

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