行政法ゼロから行政法#129

個人情報保護制度④(マイナンバー法)

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第9章 情報公開・個人情報保護 #129/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

番号を求めただけで、なぜ違法になるのか

今日の問い(前回=識別を消して役所のデータを使う道/今日=識別の力がいちばん強い番号の側/問い=学習塾が入塾申込書に「保護者の個人番号」の欄を設けただけで、なぜ違法になりうるのか/道筋=番号法の位置づけ→求める・渡す・集めて持つ→個人情報保護法の特例→法人番号→設例の通し→第9章のまとめ) 図:今日の問い

  • 前回=識別を消して役所のデータを使う道
  • 今日=識別の力がいちばん強い番号の側
  • 問い=学習塾が入塾申込書に「保護者の個人番号」の欄を設けただけで、なぜ違法になりうるのか
  • 道筋=番号法の位置づけ→求める・渡す・集めて持つ→個人情報保護法の特例→法人番号→設例の通し→第9章のまとめ

前回は、識別を消して、役所のデータを使う道を見ました。今日は、その反対側です。識別の力がいちばん強い、番号を扱います。マイナンバー法です。番号って、ただの数字ですよね。学習塾が、入塾申込書に保護者の個人番号を書く欄を作っただけで、違法になることがあるんですか。あります。しかも、役所ではなく、民間の学習塾に対する規制です。ただの数字なのに、なぜこれほど厳しく縛られるのか。これが今日の問いです。

設例の登場人物(A=乙市の長〔行政機関等〕/B=本人〔乙市の住民・児童手当を受ける〕/C=民間の学習塾/辺=BからAへ児童手当の申請書〔個人番号つき〕/CからBへ個人番号の提供を求める) 図:設例の登場人物

  • A=乙市の長〔行政機関等〕
  • B=本人〔乙市の住民・児童手当を受ける〕
  • C=民間の学習塾
  • 辺=BからAへ児童手当の申請書〔個人番号つき〕
  • CからBへ個人番号の提供を求める

設例を置きます。これまでと同じ配役です。乙市の長をA、乙市に住む本人をB、Bは児童手当を受けています。民間の学習塾Cも、これまでと同じです。前は、乙市に児童の名簿を求めた塾でした。今日は、保護者に番号を求める側に立ちます。Bが児童手当の申請書に個人番号を書いて乙市に出す。Cが入塾申込書に個人番号の欄を設ける。乙市の別の部署が、Bの個人番号の付いた情報を入居案内に使いたがる。この3つの場面を、最後まで通します。答えを先に言います。全員に付く、1人に1つの番号は、役所のばらばらの記録を、同じ一人のものとして結びつける鍵になります。マスターキーのようなものです。だから法律は、この鍵の動きを、求める、渡す、集めて持つ、の3つに分けて、誰に対しても止めます。

識別の鍵——番号法の位置づけと2つの定義

マイナンバー法の位置づけ(正式名=行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律・2013年制定/目的〔1条〕=活用の面〔個人番号と法人番号の識別機能を使い、行政運営の効率化・給付と負担の公正・手続の簡素化を図る〕+保護の面〔個人番号その他の特定個人情報の取扱いが安全かつ適正に行われるよう個人情報保護法の特例を定める〕/個人番号=2条5項・住民票コードを変換した番号・市町村長が指定して通知〔7条1項〕/特定個人情報=2条9項・個人番号をその内容に含む個人情報) 図:マイナンバー法の位置づけ

  • 正式名=行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律・2013年制定
  • 目的〔1条〕=活用の面〔個人番号と法人番号の識別機能を使い、行政運営の効率化・給付と負担の公正・手続の簡素化を図る〕+保護の面〔個人番号その他の特定個人情報の取扱いが安全かつ適正に行われるよう個人情報保護法の特例を定める〕
  • 個人番号=2条5項・住民票コードを変換した番号・市町村長が指定して通知〔7条1項〕
  • 特定個人情報=2条9項・個人番号をその内容に含む個人情報

マイナンバー法は、正式には、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律です。番号法とも呼ばれ、2013年に制定されました。1条の目的は、2つの面を持ちます。1つは活用です。個人番号と法人番号の識別する機能を使って、行政運営の効率化、給付と負担の公正、手続の簡素化を図ります。もう1つは保護です。個人番号などを含む情報の取扱いが安全かつ適正に行われるように、個人情報保護法の特例を定めます。便利にする顔と、縛る顔の、2つを持つ法律です。前回は、個人番号が個人識別符号にあたるので、匿名加工では全部消す、と見ました。今日は、消さずに、持つ、使う、渡すときの縛りです。まず、個人番号の定義を、2条5項で確かめます。

条文行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律2条5項

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 第二条(第5項) 5 この法律において「個人番号」とは、第七条第一項又は第二項の規定により、住民票コード(住民基本台帳法(昭和四十二年法律第八十一号)第七条第十三号に規定する住民票コードをいう。以下同じ。)を変換して得られる番号であって、当該住民票コードが記載された住民票に係る者を識別するために指定されるものをいう。

次に、誰が指定するのかを、7条1項で確かめます。

条文行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律7条1項

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 第七条(第1項) 市町村長(特別区の区長を含む。以下同じ。)は、住民基本台帳法第三十条の三第二項の規定により住民票に住民票コードを記載したときは、政令で定めるところにより、速やかに、次条第二項の規定により機構から通知された個人番号とすべき番号をその者の個人番号として指定し、その者に対し、当該個人番号を通知しなければならない。

読み方です。個人番号は、住民票コードを変換して得られる番号で、その住民票に係る者を識別するために指定されるものです。指定して本人に通知するのは、市町村長です。この番号には、3つの性格があります。住民票に記載された全員に付くこと。1人に1つで、重複しないこと。目に見える番号であることです。全員に付くことと、1人に1つであることは、2条5項と7条から読めます。目に見える番号であることは、条文の言葉ではなく、性格の整理です。悉皆性、唯一無二性、視認性と呼ばれることもあります。全員に付いて、1人に1つしかない番号は、どの棚のどの記録も、同じ一人のものとして束ねられます。例えば、乙市の児童手当の記録、国保の記録、住民税の記録が別々の棚にあっても、Bの同じ番号が付いていれば、全部Bのものとして1本に束ねられます。便利な分だけ、悪用されたときの影響も大きい。そこで、取扱いが厳しく規制されます。続いて、特定個人情報の定義を、2条9項で読みます。

条文行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律2条9項

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 第二条(第9項) 9 この法律において「特定個人情報」とは、個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。第七条第一項及び第二項、第八条、第十八条の五第二項並びに第四十八条並びに附則第三条第一項から第三項まで及び第五項を除き、以下同じ。)をその内容に含む個人情報をいう。

読み方です。特定個人情報は、個人番号をその内容に含む個人情報です。個人番号には、個人番号に対応して、番号に代わって用いられる符号で、住民票コード以外のものも含まれます。特定個人情報は個人情報の一種です。だから、個人情報保護法の規律が及んだうえに、番号法の規律が上乗せされます。役所が持つ特定個人情報は保有個人情報でもあるので、本人は、開示、訂正、利用停止を請求できます。関連する制度を、名前と位置だけ挙げます。個人番号を使える事務は、法律か条例で定められた範囲に限られます。9条です。児童手当の支給事務も、その範囲に入っています。特定個人情報ファイルを保有しようとするときの評価は28条、ファイルの作成の制限は29条、役所どうしの提供を情報提供ネットワークシステムで行う形は、19条8号です。監督は、個人情報保護委員会が行います。設例に戻ります。Bが、児童手当の申請書に個人番号を書いて乙市に出すのは、あとで読む19条3号に当たり、適法です。乙市は、法律や別表で定められた事務のために、その番号を使います。

求める・渡す・集めて持つ——15条・19条・20条

番号法の3つの動詞(求める=15条〔19条各号に当たり提供を受けられる場合を除き、他人に個人番号の提供を求めてはならない〕/渡す=19条〔各号に当たる場合を除き特定個人情報の提供をしてはならない〕/集めて持つ=20条〔各号に当たる場合を除き、他人の個人番号を含む特定個人情報を収集・保管してはならない〕/名宛人は3つとも何人も=民間にも及ぶ/例外の物差しは3つとも19条各号/他人=自己と同一の世帯に属する者以外の者) 図:番号法の3つの動詞

  • 求める=15条〔19条各号に当たり提供を受けられる場合を除き、他人に個人番号の提供を求めてはならない〕
  • 渡す=19条〔各号に当たる場合を除き特定個人情報の提供をしてはならない〕
  • 集めて持つ=20条〔各号に当たる場合を除き、他人の個人番号を含む特定個人情報を収集・保管してはならない〕
  • 名宛人は3つとも何人も=民間にも及ぶ
  • 例外の物差しは3つとも19条各号
  • 他人=自己と同一の世帯に属する者以外の者

個人情報保護法の、取る、使う、渡す、守る、は、役所に課す義務でした。今日の3つは、番号法が、何人もに課す規制です。同じ渡すでも、こちらは19条です。番号の規制は、3つの動詞で覚えます。求める、渡す、集めて持つ、です。読む前に、1問置きます。学習塾Cが、入塾申込書に、保護者の個人番号の欄を設けて、書かせて、コピーを保管しました。3つの動詞のうち、どれに当たるでしょうか。では、同じ世帯の家族どうしが、お互いの番号を聞くのは?番号の欄を設けて書かせるのは、求める、だと思います。コピーを保管するのは、集めて持つ、です。家族どうしは、たぶん大丈夫だと思うんですけど、理由が言えません。申込書に欄を設けて番号を出させるところが、求める行為。コピーを取っておくところが、集めて持つ行為です。家族どうしが問題にならない理由は、条文の括弧書きにあります。まず、求める行為の15条です。

条文行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律15条

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 第十五条 何人も、第十九条各号のいずれかに該当して特定個人情報の提供を受けることができる場合を除き、他人(自己と同一の世帯に属する者以外の者をいう。第二十条において同じ。)に対し、個人番号の提供を求めてはならない。

読み方です。19条各号に当たって、特定個人情報の提供を受けられる場合を除き、他人に対して、個人番号の提供を求めてはなりません。他人とは、自己と同一の世帯に属する者以外の者です。だから、同じ世帯の家族どうしが番号を聞くのは、15条の問題になりません。そして主語は、何人も、です。役所だけでなく、民間の事業者にも及びます。

19条の構造(原則=何人も特定個人情報の提供をしてはならない/例外=各号〔全部で17号〕/代表の号=3号〔本人・代理人が事務の実施者に自分の番号を出す〕・6号〔委託・事業承継〕・16号〔生命・身体・財産の保護〕/1号・2号=番号を使う事務・関係事務の実施者が必要な限度で提供) 図:19条の構造

  • 原則=何人も特定個人情報の提供をしてはならない
  • 例外=各号〔全部で17号〕
  • 代表の号=3号〔本人・代理人が事務の実施者に自分の番号を出す〕・6号〔委託・事業承継〕・16号〔生命・身体・財産の保護〕
  • 1号・2号=番号を使う事務・関係事務の実施者が必要な限度で提供

次に、渡す行為の19条です。号は全部で17号あります。柱書と、代表の5つの号を読みます。

条文行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律19条(柱書・1号・2号)

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 第十九条(柱書+第1号・第2号) 何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報の提供をしてはならない。  一 個人番号利用事務実施者が個人番号利用事務を処理するために必要な限度で本人若しくはその代理人又は個人番号関係事務実施者に対し特定個人情報を提供するとき(個人番号利用事務実施者が、生活保護法(昭和二十五年法律第百四十四号)第二十九条第一項、厚生年金保険法第百条の二第五項その他の政令で定める法律の規定により本人の資産又は収入の状況についての報告を求めるためにその者の個人番号を提供する場合にあっては、銀行その他の政令で定める者に対し提供するときに限る。)。  二 個人番号関係事務実施者が個人番号関係事務を処理するために必要な限度で特定個人情報を提供するとき(第十二号に規定する場合を除く。)。

読み方です。何人も、各号のいずれかに当たる場合を除き、特定個人情報を提供してはなりません。原則が禁止で、例外が各号です。1号は、番号を使う事務を行う側が、その事務に必要な限度で、本人や代理人、関係する事務の実施者に提供するとき。2号は、関係する事務の実施者が、必要な限度で提供するとき。関係する事務の実施者とは、例えば勤務先です。税務署に出す書類を作るために、従業員の番号を扱います。続きの号です。

条文行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律19条(3号・6号・16号)

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 第十九条(第3号・第6号・第16号)  三 本人又はその代理人が個人番号利用事務等実施者に対し、当該本人の個人番号を含む特定個人情報を提供するとき。  六 特定個人情報の取扱いの全部若しくは一部の委託又は合併その他の事由による事業の承継に伴い特定個人情報を提供するとき。  十六 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合において、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難であるとき。

3号は、本人や代理人が、事務の実施者に、本人の番号を含む情報を出すときです。Bが申請書に番号を書いて乙市に出す場面が、これです。6号は、委託や事業の承継に伴う提供。16号は、人の生命、身体、財産の保護のために必要で、本人の同意があるか、同意を得るのが困難なときです。残りの号と、情報提供ネットワークシステムを通じた8号は、全部で17号ある、という数と見出しだけで足ります。暗記は、柱書の、何人も、各号を除いて禁止、という形と、代表の号までです。そして大事なのは、15条にあった物差しも、この19条各号だったことです。最後に、集めて持つ行為の20条です。

条文行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律20条

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 第二十条 何人も、前条各号のいずれかに該当する場合を除き、特定個人情報(他人の個人番号を含むものに限る。)を収集し、又は保管してはならない。

読み方です。19条各号に当たる場合を除いて、他人の個人番号を含む特定個人情報を、収集も保管もしてはなりません。括弧書きの、他人の個人番号を含むものに限る、がポイントです。自分の番号を自分で持つのは、規制の外です。

学習塾Cへの当てはめ(①他人か=Bは塾Cから見て他人/②19条各号に当たるか=入塾手続のための提供を受けられる号はない/結論=求めた=15条違反・コピーを保管=20条違反/境界の外=同一世帯の家族どうし・本人が自分の乙市への申請書に番号を書く〔19条3号〕は問題にならない) 図:学習塾Cへの当てはめ

  • ①他人か=Bは塾Cから見て他人
  • ②19条各号に当たるか=入塾手続のための提供を受けられる号はない/結論=求めた=15条違反・コピーを保管=20条違反/境界の外=同一世帯の家族どうし・本人が自分の乙市への申請書に番号を書く〔19条3号〕は問題にならない

3つの動作に、1本の物差しです。15条をもう一度見ると、19条各号で提供を受けられる場合を除き、とあります。受け取ってよい場面でなければ、求めてはいけない。持つのも同じです。そうしないと、渡すことを禁じた19条が、求める側と持つ側から崩れてしまうからです。当てはめます。学習塾Cが、入塾申込書に保護者の個人番号の欄を設けました。他人であるBに、個人番号の提供を求めています。入塾の手続のために提供を受けられる、という19条各号の場面は、ありません。1号と2号は、番号を使う事務や、それに関係する事務を処理するための提供です。そうした事務は、法律か条例で定められた範囲に限られる、と9条で見ました。入塾の手続は、その範囲に入っていません。3号は、本人が事務の実施者に出す場面です。委託や承継の6号でも、生命や財産を守る16号の場面でもありません。だから、15条の違反です。書かせたコピーを保管するのは、他人の個人番号を含む特定個人情報を保管することなので、20条の違反です。境界のすぐ外も見ます。Bと同じ世帯に属する家族が、お互いの番号を聞くのは、他人でないので、15条の問題になりません。また、Bが、自分の番号を書いて、自分の乙市への申請書に添えるのは、19条3号に当たります。同じ民間でも、勤務先が、税務署に出す書類のために従業員に番号を求めるのは、19条各号の場面があるので許されます。ここは論文で論点になりうるところです。他人か、19条各号に当たるか、の2段で当てはめます。全員に付く、1人に1つの鍵だから、民間の塾であっても、求める、渡す、集めて持つの3つが、同じ19条各号の物差しで止められるのです。

個人情報保護法の特例——30条

30条1項の読み替えの整理(行政機関等が保有する特定個人情報=個人情報保護法69条2項2号〔内部利用〕・3号〔他の行政機関等への提供〕・4号〔統計・学術研究等〕と88条は適用しない/69条1項「自ら利用し、又は提供してはならない」→「自ら利用してはならない」〔提供は19条が規律〕/69条2項1号「本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき」→人の生命・身体・財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意があり、又は同意を得ることが困難なとき) 図:30条1項の読み替えの整理

  • 行政機関等が保有する特定個人情報=個人情報保護法69条2項2号〔内部利用〕・3号〔他の行政機関等への提供〕・4号〔統計・学術研究等〕と88条は適用しない
  • 69条1項「自ら利用し、又は提供してはならない」→「自ら利用してはならない」〔提供は19条が規律〕
  • 69条2項1号「本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき」→人の生命・身体・財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意があり、又は同意を得ることが困難なとき

番号法は、特定個人情報について、個人情報保護法の規定を一部適用せず、一部を読み替えます。30条です。読む前に、個人情報保護法69条の復習を1問。69条は、利用目的以外の目的のための利用と提供を、原則どうしていたでしょうか。2項の例外の4つの号は?原則は禁止でした。例外は、1号が本人の同意か本人への提供、2号が内部利用、3号が他の行政機関等への提供、4号が統計や学術研究、明らかに本人の利益になる場合、特別の理由がある場合、だったと思います。その69条2項の例外が、番号の付いた情報では絞られます。30条1項です。

条文行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律30条1項

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 第三十条(第1項・読み替えの表より前の部分) 行政機関等(個人情報保護法第百二十五条第二項の規定により個人情報保護法第二条第十一項第三号に規定する独立行政法人等又は同項第四号に規定する地方独立行政法人とみなされる個人情報保護法第五十八条第一項各号に掲げる者(次条第一項において「みなし独立行政法人等」という。)を含む。)が保有し、又は保有しようとする特定個人情報(第二十三条(第二十六条において準用する場合を含む。)に規定する記録に記録されたものを除く。)に関しては、個人情報保護法第六十九条第二項第二号から第四号まで及び第八十八条の規定は適用しないものとし、個人情報保護法の他の規定の適用については、次の表の上欄に掲げる個人情報保護法の規定中同表の中欄に掲げる字句は、同表の下欄に掲げる字句とする。

読み方です。行政機関等が保有する特定個人情報には、個人情報保護法69条2項の2号から4号と、88条を適用しません。内部利用、他の行政機関等への提供、統計や学術研究などの例外が、使えなくなるということです。2号と4号は、本人の同意が無くても、役所の判断で、目的外に使ったり渡したりできる例外でした。番号の付いた情報では、この役所の判断の道を閉じます。3号の、他の行政機関等への提供は、このあと見るとおり、番号法の19条で決めるので、69条の側からは外します。88条は、他の法令に同じ方法の開示の手続があるときは、そちらに任せて、個人情報保護法では、同じ方法の開示をしない、という調整の規定です。番号付きの情報では、この調整を外すので、本人は、他の法令に手続があっても、個人情報保護法の開示請求で、自分の情報を確かめられます。ほかに読み替える点は、板の整理で見てください。69条1項は、自ら利用し、又は提供してはならない、から、自ら利用してはならない、になります。提供は、番号法の19条が規律するからです。69条2項1号は、本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき、から、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意があり、又は本人の同意を得ることが困難なとき、になります。つまり、乙市のような地方公共団体の機関では、目的外の利用は、本人の同意があっても、生命、身体、財産の保護のために必要がある場合に限られます。19条16号と同じ型です。

30条1項による98条の読み替え(利用停止請求の事由=利用の停止・消去の事由に番号法20条違反の収集・保管と29条違反のファイル作成が加わる/提供の停止の事由は69条・71条違反から番号法19条違反に置き換わる) 図:30条1項による98条の読み替え

  • 利用停止請求の事由=利用の停止・消去の事由に番号法20条違反の収集・保管と29条違反のファイル作成が加わる
  • 提供の停止の事由は69条・71条違反から番号法19条違反に置き換わる

利用停止請求の事由も広がります。98条は、前々回見た、利用停止請求の条文です。法律に違反して利用や提供がされているとき、本人は、利用の停止や消去、提供の停止を求められます。その事由が、30条で読み替えられて変わります。利用の停止や消去の事由に、番号法20条に違反した収集、保管と、29条に違反して作成されたファイルへの記録が加わります。29条は、番号を使う事務の担当者が、事務に必要な範囲を超えて、特定個人情報ファイルを作ることを禁じる規定です。提供の停止の事由は、番号法19条の違反に置き換わります。番号法が新しく禁じた動きに違反していれば、本人がそれを止められるように、事由をそろえるのです。民間が保有する特定個人情報にも、30条2項で特例があります。名前だけ押さえてください。乙市の別の部署が、Bの個人番号を含む情報を、公営住宅の入居案内に使いたい場面です。番号が付いていない住所だけなら、69条2項2号の内部利用で検討できます。しかし、番号付きの情報には、30条1項が、2号を適用しません。入居案内は、生命、身体、財産の保護のために必要がある場合でもないので、許されません。

番号が付いた情報は、あらゆる情報を結びつける鍵を含んでいます。目的外に流用されたときの影響が大きいので、例外を絞っているのです。

法人番号は公開が前提——個人番号との対比

法人番号と個人番号の対比(個人番号=住民票コードを変換・市町村長が指定して通知・公表されない・厳しく縛る/法人番号=2条16項・特定の法人その他の団体を識別するための番号・国税庁長官が指定〔39条〕・商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号を公表〔39条4項〕・人格のない社団等はあらかじめ代表者又は管理人の同意/個人番号カード=2条7項・17条・申請に基づき市町村長が交付〔名前と位置まで〕) 図:法人番号と個人番号の対比

  • 個人番号=住民票コードを変換・市町村長が指定して通知・公表されない・厳しく縛る
  • 法人番号=2条16項・特定の法人その他の団体を識別するための番号・国税庁長官が指定〔39条〕・商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号を公表〔39条4項〕・人格のない社団等はあらかじめ代表者又は管理人の同意
  • 個人番号カード=2条7項・17条・申請に基づき市町村長が交付〔名前と位置まで〕

番号には、もう1種類あります。法人番号です。2条16項は、法人番号を、特定の法人その他の団体を識別するための番号として指定されるもの、と定めます。指定するのは国税庁長官で、39条です。公表の規定が、39条4項です。

条文行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律39条4項

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 第三十九条(第4項) 4 国税庁長官は、政令で定めるところにより、第一項又は第二項の規定により法人番号の指定を受けた者(以下「法人番号保有者」という。)の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地及び法人番号を公表するものとする。ただし、人格のない社団等については、あらかじめ、その代表者又は管理人の同意を得なければならない。

読み方です。国税庁長官は、法人番号保有者の商号又は名称、本店又は主たる事務所の所在地、法人番号を公表します。人格のない社団等は、あらかじめ代表者か管理人の同意が要ります。個人番号は、1人の暮らしの記録を束ねる鍵です。公表すれば、その人の情報が結びつけられてしまいます。法人の商号や所在地は、もともと取引の相手が確かめるための情報で、公開が前提です。看板に出ている住所のようなものです。違いは、公表の有無です。個人番号は公表されず、法人番号は公開で、誰でも使えます。個人番号カードは、2条7項と17条に定められた、氏名や住所、生年月日、性別、個人番号などが記載され、情報が電磁的に記録されるカードです。市町村長が申請に基づいて交付します。名前と位置だけ押さえてください。

設例の通し——Bの番号の3つの場面

設例の通し(①Bが児童手当の申請書に個人番号を書いて乙市に出す=19条3号・乙市は法律・別表で定められた事務で使う/②学習塾Cが入塾申込書に番号欄を設けて書かせ、コピーを保管=15条・20条違反〔同一世帯の家族は他人でない〕/③乙市の別部署がBの番号付き情報を入居案内に使う=30条1項で69条2項2号の例外が使えない) 図:設例の通し

  • ①Bが児童手当の申請書に個人番号を書いて乙市に出す=19条3号・乙市は法律・別表で定められた事務で使う
  • ②学習塾Cが入塾申込書に番号欄を設けて書かせ、コピーを保管=15条・20条違反〔同一世帯の家族は他人でない〕
  • ③乙市の別部署がBの番号付き情報を入居案内に使う=30条1項で69条2項2号の例外が使えない

設例を通します。Bの個人番号が、3つの場面で、どう扱われるかです。1つ目。Bが児童手当の申請書に個人番号を書いて出します。本人が、事務の実施者に自分の番号を出すので、19条3号に当たります。乙市は、法律や別表で定められた事務のために、その番号を使います。2つ目。学習塾Cが、入塾申込書に番号の欄を設けて書かせ、コピーを保管します。他人であるBに番号を求めたので15条の違反、他人の個人番号を含む情報を保管したので20条の違反です。Bの家族が互いに聞くのとは、他人かどうかの点で違います。3つ目。乙市の別の部署が、番号付きの情報を入居案内に使います。30条1項により、69条2項2号の内部利用の例外が使えないので、許されません。

本人が自分で出した番号でも、出したときの目的を超えて動くたびに、鍵の使い道が増えます。だから、その先の動きにも縛りがかかります。本人が出した場面だけが、19条3号で守られていて、その先の動きは、15条、19条、20条、30条が止めています。

今日の地図(保存版)

第9章の地図(情報公開=何人も・原則開示・不開示情報・審査会/個人情報保護=役所の義務・本人の請求・使う側の加工情報・番号/2つの道=識別を消して使う道〔行政機関等匿名加工情報〕と識別の鍵を縛る道〔番号法〕/同じ文書を、情報公開は「誰にでも見せてよいか」、個人情報保護は「本人以外に出してよいか」の向きで見る/次=行政救済・行政不服申立て) 図:第9章の地図

  • 情報公開=何人も・原則開示・不開示情報・審査会
  • 個人情報保護=役所の義務・本人の請求・使う側の加工情報・番号
  • 2つの道=識別を消して使う道〔行政機関等匿名加工情報〕と識別の鍵を縛る道〔番号法〕
  • 同じ文書を、情報公開は「誰にでも見せてよいか」、個人情報保護は「本人以外に出してよいか」の向きで見る
  • 次=行政救済・行政不服申立て

最初の問いに戻ります。番号を求めただけで違法になりうるのは、なぜだったでしょうか。答えは、全員に付く、1人に1つの番号が、あらゆる情報を結びつける鍵だからです。15条は、何人も、他人に番号を求めてはならないと定めます。民間の学習塾も、その名宛人に入ります。だから、欄を設けて書かせただけで、違法になりえます。前回と今日を、ひと組にして比べます。同じ受給者ファイルでも、番号を消して、行政機関等匿名加工情報にして、前回見た、提案、審査、契約の手続を通せば、子育て支援アプリの需要を調べたいと申し出た事業者Eにも、本人の同意なしで渡せます。これが、識別を消す道です。番号を消さずに持つなら、役所の中でも外でも、求める、渡す、集めて持つが縛られ、69条の例外も絞られます。これが、識別の鍵を縛る道です。識別をどこまで消したかで、使えるかどうかが分かれます。持ち帰るのは、6点です。1つ目。番号法は、活用と保護の両面を持ちます。個人番号は、住民票コードを変換した番号で、市町村長が指定して通知します。特定個人情報は、個人番号をその内容に含む個人情報です。2つ目。求める15条、渡す19条、集めて持つ20条は、何人もに対する規制で、民間にも及びます。3つ目。15条の他人は、同一世帯の者以外です。20条は、他人の個人番号を含むものに限られます。例外の物差しは、19条各号です。4つ目。30条1項は、69条2項の2号から4号と、88条を適用しません。目的外の例外は生命などの保護に絞られ、利用停止の事由に、19条、20条、29条の違反が入ります。5つ目。法人番号は、39条4項で公表されます。6つ目。識別を消す道と、識別の鍵を縛る道です。

ここで、第9章の地図を閉じます。情報公開は、何人も請求でき、原則として開示し、不開示情報と審査会の仕組みを持っていました。個人情報保護は、役所の義務、本人の請求、データを使う側、そして今日の番号の、4つです。同じ文書を、情報公開は、誰にでも見せてよいか、で見ます。個人情報保護は、本人以外に出してよいか、で見ます。ここまでが、行政が情報をどう扱うか、でした。処分に不満があるとき、裁判所へ行く前に、または行かずに、行政機関自身に見直しを求める道があります。行政不服申立てです。全体の地図から見ます。

参照条文

  • 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律2条5項
  • 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律7条1項
  • 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律2条9項
  • 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律15条
  • 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律19条(柱書・1号・2号)
  • 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律19条(3号・6号・16号)
  • 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律20条
  • 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律30条1項
  • 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律39条4項

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