会社の種類と持分会社・商法から会社法へ
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第1章 総論・会社法総則 ③/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
「有限会社」の看板は、違法?
図:商店街の看板「有限会社 むぎの屋」
- 会社法の会社は4種類=株式会社・合名会社・合資会社・合同会社
- その中に有限会社は無い
- 問い=看板の会社は何者か
商店街を歩いていて、パン屋さんの看板に「有限会社 むぎの屋」と書いてあるのを見かけたとします。会社法が用意している会社は、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の4種類です。この中に、有限会社はありません。看板の会社は、違法ではありません。有限会社は、会社法ができる前にあった種類だ、と前に少し触れましたね。結論を先に言います。会社法の施行前からある会社なら、この「有限会社」は、法律の上では、株式会社の一種です。特別の法律で、名前に有限会社と入れることになっているだけなんです。なぜそうなったのかは、最後に条文で確かめます。今日の1問は、会社の種類は何で分かれていて、その違いはなぜ生まれたのか、です。答えを先に言うと、出資者が会社の借金にどこまで責任を負うかと、出資者が自分で経営するかどうか、の2本の物差しです。会社法という法律の作りと、いまの形になった経緯も、あわせて持ち帰ってください。
図:この回の地図
- 1.会社の種類は「社員の責任」で分かれる
- 2.持分会社と株式会社=経営と出資・定款自治の違い
- 3.合同会社という組合せ
- 4.会社法の地図=8つの編
- 5.商法から会社法へ=有限会社はどこへ行ったか
地図はこの5つです。まず責任で種類が分かれることを見て、持分会社と株式会社の違いに進みます。次に、その2つの組合せである合同会社を見ます。そのあと、会社法の8つの編と、商法から会社法への経緯です。最後に、冒頭の看板に戻ります。
会社の種類は「社員の責任」で分かれる

責任の話に入る前に、前回の内容を一つだけ確認させてください。会社は法人です。では、会社の借金は、会社のものでしょうか。それとも、出資者のものでしょうか?会社のもの、ですよね。法人が財産と債務の持ち主だから。ただ、そこに「例外」を作れるかどうかで、会社の種類が分かれます。この話の前提として、言葉を整理します。会社の社員とは、出資者のことでした。従業員ではありません。株式会社の社員は、株主と呼びます。前に見たとおり、出資と融資は、違います。出資者は、事業がうまくいけば多くの取り分を得て、うまくいかなければ取り分が減る人です。会社の成否と運命を共にします。一方、会社にお金を貸した銀行は、事業がうまくいってもいかなくても、貸した元本と利息を返すよう求めます。こうした、お金を返せと求める側を、債権者といいます。会社の社債を買った人も、同じ債権者です。
ここから、この回の核心です。債権者の目で考えます。会社が借金を返せなくなったとき、債権者が回収に当てられる財産は何か。2つの場合があります。1つ目は、会社の財産だけ。2つ目は、会社の財産に加えて、出資者個人の財産まで。この違いが、会社の種類を分けます。出資者の財布が、債権者の手の届くところにあるか、ないか、と言い換えてもいいです。数字で見ましょう。AさんとBさんが出資して、会社を作りました。この会社が、取引先のCさんに、1000万円の借金を返せなくなりました。会社の財産は、600万円しか残っていません。
図:債権者から見た「当てにできる財産」
- A・B=社員が出資
- C=債権者に1000万円の借金
- 会社財産600万円
- 無限責任=C は会社財産600万円+A・B の財産から残り400万円
- 有限責任=C は会社財産600万円まで・A・B の追加負担なし
もしAさんBさんが無限責任を負う社員なら、足りない400万円を、AさんとBさんが、連帯して、自分の財産から払います。連帯して、とは、CさんがAさんにもBさんにも、400万円の全額を請求できる、ということです。無限責任とは、会社の財産で払いきれない借金を、社員が自分の財産で、上限なく払う責任です。逆にAさんBさんが有限責任なら、出資した金額を失うだけで、追加の負担はありません。出資を全部払い込んでいれば、Cさんが回収できるのは、会社の財産の600万円までです。有限責任とは、責任の上限が、出資の価額までということです。
有限責任の会社の債権者は、不安になりませんか。そこが大事です。債権者から見ると、有限責任の会社は、当てにできる財産が会社の財産だけです。だから、法律は有限責任を認める代わりに、会社の財産を守るルールを厚くします。株式会社には、そうしたルールが後の回でたくさん出てきます。責任の軽重が、会社の種類ごとの規律の違いにつながっているんです。では、条文です。株式会社の株主は、有限責任でした。会社法104条です。
条文会社法104条
会社法第104条 株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする。
出すと約束した額が、上限です。株主は、それ以上の責任を会社の債権者に負いません。次に、持分会社の社員の責任を定めた580条です。無限責任の話は1項、有限責任の話は2項にあります。
条文会社法580条
会社法第580条 社員は、次に掲げる場合には、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負う。 一 当該持分会社の財産をもってその債務を完済することができない場合 二 当該持分会社の財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合(社員が、当該持分会社に弁済をする資力があり、かつ、強制執行が容易であることを証明した場合を除く。) 2 有限責任社員は、その出資の価額(既に持分会社に対し履行した出資の価額を除く。)を限度として、持分会社の債務を弁済する責任を負う。
1項は、社員が連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負う場合です。1号は、会社の財産で完済できない場合。2号は、会社の財産に強制執行、つまり裁判所の手続で財産を差し押さえて回収することをしても、効果がなかった場合です。さっきの数字の例は、1号にあたります。要件の細かい読み方は、後の回で扱います。今日は、見取り図まで持ち帰ってください。無限責任の中身は、会社の財産で払いきれない分を、社員が連帯して弁済することです。2項は有限責任社員です。出資の価額が上限ですが、すでに会社に払い込んだ分は除かれます。つまり、出資の約束をしたのに、まだ払い込んでいない分が残っていれば、その限度で、債権者に対して責任を負います。
ここまでで、物差しが1本できました。責任が無限か有限か、です。
持分会社3種の分け方
図:4種類×社員の責任の表
- 株式会社=株主は有限責任
- 合名会社=社員の全部が無限責任社員・576条2項
- 合資会社=一部が無限責任社員でその他は有限責任社員・576条3項
- 合同会社=社員の全部が有限責任社員・576条4項
- 持分会社=合名・合資・合同の総称・575条1項
持分会社の3種類は、この責任の組合せで分かれます。持分会社という総称と、それを決めているのが575条1項だということは、前に触れました。ここで、その条文を目で確かめます。
条文会社法575条1項
会社法第575条 合名会社、合資会社又は合同会社(以下「持分会社」と総称する。)を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければならない。
括弧書きで、合名、合資、合同の3つを、持分会社と総称しています。持分とは、出資者としての地位のことでしたね。持分会社を設立するときの定款、つまり前回見た、会社の根本のルールを書いた書面には、社員が無限責任社員か有限責任社員か、のどちらかを書かなければなりません。その書き方で、3種類に分かれます。条文は576条の2項から4項です。
条文会社法576条2項〜4項
会社法第576条(2項から4項) 2 設立しようとする持分会社が合名会社である場合には、前項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を無限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。 3 設立しようとする持分会社が合資会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の一部を無限責任社員とし、その他の社員を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。 4 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、第一項第五号に掲げる事項として、その社員の全部を有限責任社員とする旨を記載し、又は記録しなければならない。
合名会社は、社員の全部が無限責任社員。合資会社は、社員の一部が無限責任社員で、その他が有限責任社員。合同会社は、社員の全部が有限責任社員です。合資会社だけが、無限と有限の混在です。だから、合資会社には、少なくとも無限責任社員と有限責任社員が、1人ずつ必要になります。ここで立ち止まって、考えてみてください。社員の一部が無限責任社員で、残りが有限責任社員という組合せになるのは、合名、合資、合同のうち、どれでしょうか。合資会社、です。さっきのAさんとBさんで言えば、2人とも無限責任なら合名会社、Aさんが無限でBさんが有限なら合資会社、2人とも有限なら合同会社です。もう一つ、有限責任社員の出資は、金銭その他の財産に限られます。576条1項6号のかっこ書きです。働くことで出資する労務出資や、自分の信用を差し出す信用出資は、有限責任社員には認められません。債権者が当てにできる財産が、会社の財産だけなら、せめて中身は確実なものにしておく、という趣旨です。
持分会社と株式会社の違い

次の物差しは、出資者が自分で経営するかどうかです。持分会社と株式会社を、見比べます。共通点が一つあります。どちらも法人で、出資者が社員です。違いは、誰を守る必要があるか、から説明できます。持分会社は、少人数で、互いをよく知る出資者の集まりを想定しています。顔の見える仲間どうしなので、法律はルールを細かく決めず、中のことは定款で自由に決めさせます。これを定款自治といいます。その代わり、見知らぬ人が突然入ってきては困ります。だから、持分の譲渡には、他の社員の同意が要ります。もう一つ、合名会社や合資会社には無限責任社員がいるので、債権者は社員個人の財布まで当てにできます。だから、法律が会社の財産のルールを細かく縛らなくても、債権者は困りにくいんです。
株式会社は、多数の、互いに知らない出資者を想定しています。経営の下手な人が出資者に混ざっていても困りますし、出資者全員が経営に関わるのも現実的ではありません。そこで、出資者と経営者を分け、細かいルールを法律が決めます。守る相手は、見知らぬ出資者と、債権者です。
図:持分会社と株式会社の違い3つ
- ①経営=持分会社は社員が原則自分で業務執行・590条1項=所有と経営の一致/株式会社は分離
- ②定款自治=業務執行・損益の分配も定款で(定めが無ければ出資の価額に応じる・622条)
- ③持分の譲渡=他の社員全員の承諾・585条1項/定款変更=総社員の同意・637条/株式会社は株式の譲渡が原則自由・127条、定款変更は株主総会・466条/持分会社は退社の道=任意退社606条・法定退社607条
違いは3つです。1つ目は、経営。持分会社の社員は、原則として自分で業務を執行します。会社法590条1項です。
条文会社法590条1項
会社法第590条 社員は、定款に別段の定めがある場合を除き、持分会社の業務を執行する。
出資する人と経営する人が一致しています。出資者は会社の持ち主にあたるので、所有と経営の一致、といいます。株式会社は、所有と経営が分かれます。その仕組みは、後の回で詳しく見ます。2つ目は、定款自治です。持分会社の内部のルールは、基本的に定款で決まります。業務執行も、利益の分け方も、そうです。定款に決めがなければ、損益の分け方は、出資の価額に応じる、と622条が定めています。3つ目は、持分の譲渡と、定款の変更です。まず譲渡から、585条1項です。
条文会社法585条1項
会社法第585条 社員は、他の社員の全員の承諾がなければ、その持分の全部又は一部を他人に譲渡することができない。
持分を他人に譲るには、他の社員の全員の承諾が要ります。仲間うちの信頼で成り立つ会社なので、誰が仲間に入るかは、仲間全員が決める、という考え方です。たとえば、AさんとBさんの合名会社で、Bさんが自分の持分を、Aさんの知らないDさんに売ろうとしても、Aさんが承諾しなければ譲れません。Dさんの経営の失敗で、Aさんの財布まで当てにされるかもしれないからです。2項から4項に、業務を執行しない有限責任社員の特則と、定款の別段の定めによる例外があります。ここでは、例外がある、とだけ押さえてください。定款の変更は、637条です。
条文会社法637条
会社法第637条 持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって、定款の変更をすることができる。
総社員の同意が原則です。これも、全員の信頼でつながる会社だからです。株式会社は、株式の譲渡が原則自由で、127条が定めています。定款の変更は、株主総会、つまり株主が集まって多数決で決める場の決議で、466条です。どちらも、条番号だけ頭に置いてください。見知らぬ多数の出資者がいる会社では、一人ひとりの同意は取れないからです。持分会社には、社員が会社から抜ける道が、制度として用意されています。自分の意思で抜ける任意退社が606条、一定の事由で当然に抜ける法定退社が607条です。株式会社のように、持分を市場で売る代わりに、抜ける道がある、と覚えてください。払戻しの中身は、後の回で扱います。
合同会社という組合せ
図:合同会社
- 責任は有限(576条4項)×中は自由(持分会社)
- 設立登記までに出資の全額を払い込む(578条)→成立後に追加で払う責任が残らない
- 比較=合資会社の有限責任社員は未履行の出資が残りうる(580条2項)・株式会社は有限責任だが中は法律が決める
ここが、この回の山です。合同会社は、責任は有限で、中は自由な会社です。責任は、全員が有限責任社員です。576条4項でした。それなのに、持分会社なので、経営も、利益の分け方も、定款で自由に決められます。株式会社の有限責任と、持分会社の自由さの、いいとこ取りです。ここで、2つの会社と並べて、輪郭を確かめます。同じ有限責任でも、株式会社は、中のルールを法律が細かく決めます。合資会社の有限責任社員は、中は自由ですが、出資が未履行なら、その分を債権者に払う責任が残ります。合同会社だけが、有限責任で、しかも中が自由です。
債権者が当てにできる財産は、会社の財産だけです。だから、合同会社には、主な手当てが、2つあります。1つ目は、出資の全額を、先に払い込ませることです。578条本文です。
条文会社法578条本文
会社法第578条(本文) 設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、当該合同会社の社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。
合同会社の社員になろうとする者は、設立登記、つまり会社が成立する時までに、出資の全部を履行します。だから、成立後に、580条2項の未履行の出資は残りません。社員が後から追加で払う責任が、そもそも残らない形です。後から社員が加わる場合も同じです。出資の履行が済んで、初めて社員になります。604条3項は、名前だけ頭に置いてください。数字で比べます。合資会社で、Aさんが無限責任社員、Bさんが有限責任社員として、200万円の出資を約束し、まだ100万円しか払っていないとします。会社の財産で払いきれなければ、Cさんは、Bさんにも、払っていない100万円までは請求できます。同じBさんが合同会社の社員なら、設立登記の時までに200万円を払い終えているので、後から請求される分は残りません。主な手当ての2つ目は、利益の配当、つまり会社の儲けを社員に分けることに、制限があることです。配当をすると、会社の財産が社員の手元に出ていきます。出ていけば、債権者が当てにできる会社の財産が、その分だけ減ります。だから628条は、会社の儲けの額を超えて配当することを禁じています。自由さと有限責任を、先払いの出資と配当の制限で釣り合わせている。これが、合同会社の設計です。
会社法の地図——8つの編
図:会社法の8編と法務省令
- 第一編総則1〜24条
- 第二編株式会社25〜574条=条文の大半
- 第三編持分会社575〜675条
- 第四編社債676〜742条
- 第五編組織変更・合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付743〜816条の10
- 第六編外国会社817〜823条
- 第七編雑則824〜959条
- 第八編罰則960〜979条
責任と経営の違いが分かったところで、会社法という法律の作りを見ます。どこを開けば何があるかを、先に知っておくと、条文を探すのが楽になります。会社法は、全部で8つの編に分かれています。第一編が総則、第二編が株式会社、第三編が持分会社、第四編が社債、第五編が組織変更、合併、会社分割、株式交換、株式移転、株式交付、第六編が外国会社、第七編が雑則、第八編が罰則です。第二編は25条から574条まで。第三編は575条から675条までです。条文の数を見れば、会社法の中心が、株式会社の法律だと分かります。持分会社は、その一部にとどまります。第一編の総則は、1条から24条までです。会社全般に通じるルールで、会社の商号、つまり会社の名前や、使用人、事業を譲ったときの競業の禁止などがあります。前回、会社は商法の商人に当たる、と見ました。商法の総則は、商人の名前や使用人、登記など、商人一般に向けたルールです。ところが、商法11条1項のかっこ書きが、この総則でいう商人から、会社と外国会社を除いています。だから会社には、商法の総則に代わって、会社法の第一編が適用されます。会社法の総則の中身は、この第1章の後半で扱います。第七編の雑則には、訴えの手続、登記、公告といった、実務で重要な規定が集まっています。技術的な細目は、法務省令にあります。会社法施行規則、会社計算規則、電子公告規則という3つの省令です。省令は法律より改正しやすく、迅速に直せるので、細かな数字や書式は、そちらに任せています。
条文を頭から順に読んでも、うまく学べるとは限りません。会社法は、条文の順序と、学習の順序が違います。たとえば第二編の株式会社も、株式、機関、計算、資金調達、設立という順序では並んでいません。まず、どの編にあるかを押さえてから、開くようにしてください。たとえば、合同会社の出資の払込みを確かめたいなら、まず持分会社の第三編だと見当をつけて、578条を開きます。
商法から会社法へ——有限会社はどこへ行ったか
図:移行図
- かつて=商法の「会社」の編〔株式会社・合名会社・合資会社〕+有限会社法〔有限会社〕→平成17年に会社法を制定→会社法〔株式会社・合名・合資・合同〕
- 有限会社=廃止して株式会社に一本化→既存の有限会社=特例有限会社
- 合同会社=新設
- 最低資本金=廃止
最後に、いまの形になった経緯です。冒頭の看板の答えも、ここにあります。かつて、会社の規定は、商法の中の、会社の編にありました。株式会社、合名会社、合資会社です。有限会社は、商法とは別の、有限会社法という法律にありました。平成17年に、会社法ができました。商法の会社の編は削られ、有限会社法などは廃止されました。平成18年に施行されています。変わったことは、3つです。1つ目は、有限会社という形を廃止して、株式会社に一本化したことです。会社法では、株式会社でも、取締役の人数や機関の置き方を柔軟に選べるようにして、小さな会社向けの作りもできるようにしたので、有限会社を別に置く必要がなくなったんです。2つ目は、合同会社を新しく作ったことです。出資者は全員が有限責任のまま、中のルールは仲間どうしで自由に決めたい。そういう求めに応える形が、それまでの会社にはありませんでした。たとえば、開発の仕事を中心になって担う人と、資金を出す人が組んで、利益の分け方を出資の額とは違えて決めたい事業です。働くことは出資にならないので、出資は財産で行い、分け方だけを定款で決めます。3つ目は、最低資本金をなくしたことです。資本金とは、出資された財産をもとに決める金額で、会社に財産を留めておく目安になる数字です。最低資本金は、会社を作るなら資本金を最低これだけ用意しなさい、という下限でした。それまでは、株式会社は1000万円、有限会社は300万円が必要でした。いまは、資本金1円の株式会社も作れます。
図:旧有限会社のゆくえ
- 整備法2条1項=株式会社として存続
- 会社法6条2項=原則
- 整備法3条1項=商号に有限会社を用いなければならない=特例有限会社
- 整備法45条1項=定款変更で商号を株式会社に変更できる
だから、小さな事業でも、株式会社を使いやすくなったんです。では、有限会社として残っていた会社は、どうなったのか。会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律、略して整備法の2条1項です。これは会社法ではなく、移行のための法律です。
条文整備法2条1項
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第2条 前条第三号の規定による廃止前の有限会社法(以下「旧有限会社法」という。)の規定による有限会社であってこの法律の施行の際現に存するもの(以下「旧有限会社」という。)は、この法律の施行の日(以下「施行日」という。)以後は、この節の定めるところにより、会社法(平成十七年法律第八十六号)の規定による株式会社として存続するものとする。
会社法ができる前からあった有限会社は、施行後は、株式会社として存続します。有限会社が、株式会社の一種になった、ということです。ただし、名前はどうなるのか。整備法3条1項です。会社法6条2項の原則の例外になっています。まず、その原則を見ておきます。
条文会社法6条2項
会社法第6条 会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれその商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。
会社は、種類に従って、商号に、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社という文字を使います。だから、会社法の施行後は、有限会社を新しく作ることはできません。その例外が、整備法3条1項です。
条文整備法3条1項
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第3条 前条第一項の規定により存続する株式会社は、会社法第六条第二項の規定にかかわらず、その商号中に有限会社という文字を用いなければならない。
使ってよい、ではなく、使わなければならない、です。この会社を、特例有限会社といいます。株式会社の一種ですが、整備法が、会社法の規定の一部を適用しない、あるいは読み替える、と定めていて、旧有限会社に近い扱いが残っています。名前に有限会社と付けさせるのは、取引の相手が、ふつうの株式会社とはルールの違う会社だと、看板を見て分かるようにするためです。会社法の施行前からある会社なら、冒頭の「有限会社 むぎの屋」は、まさにこの特例有限会社です。違法でも何でもなく、株式会社だったんです。この会社が通常の株式会社になりたいときは、定款を変更して、商号に株式会社という文字を使えば、移行できます。整備法45条1項です。
条文整備法45条1項
会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律第45条 特例有限会社は、第三条第一項の規定にかかわらず、定款を変更してその商号中に株式会社という文字を用いる商号の変更をすることができる。
移行の登記は、46条が定めています。細部は、名前だけで十分です。
図:改正の年表
- 平成17年=会社法を制定〔平成18年施行〕
- 平成26年改正
- 令和元年改正 ※中身は名前と年だけ
その後の改正も、名前と年だけ押さえてください。平成26年の改正と、令和元年の改正です。中身は、それぞれの回で扱います。最後に、判例を読むときの注意です。会社法の重要判例の多くは、会社法ができる前の、商法の時代のものです。前回の政治献金の判例も、そうでした。判旨に出てくる条番号は、いまの会社法の条番号と違います。判例を読むときは、いまの条文に読み替えて使う、と覚えておいてください。
今日の地図(保存版)
図:今日の地図・保存版
- 責任で種類が分かれる=株式会社104条・合名576条2項・合資576条3項・合同576条4項
- 無限責任=会社財産で払いきれない分を社員が弁済・有限責任=出資の価額が上限
- 持分会社=社員が自分で経営・定款自治・譲渡は全員承諾
- 合同会社=有限責任×定款自治・出資は先に全額
- 会社法は全8編・第二編が中心
- 有限会社=特例有限会社=株式会社の一種
冒頭の問いに戻ります。会社の種類は何で分かれていて、その違いはなぜ生まれたのか。出資者の責任の範囲と、出資者が自分で経営するかどうか、でした。責任が無限か有限かで、合名、合資、合同、株式が分かれます。債権者が当てにできる財産が変わるので、法律の作りも変わります。合同会社は、責任が有限で、中が自由な組合せです。その釣り合いを取るのが、設立前に出資の全額を払い込むことでした。会社法は全8編で、条文の大半は、第二編の株式会社です。そして冒頭の看板の「有限会社 むぎの屋」は、商法から会社法に変わるときに、株式会社の一種として残った、特例有限会社でした。次の回から、会社の仕組みの、さらに中身へ進みます。
参照条文
- 会社法104条
- 会社法580条
- 会社法575条1項
- 会社法576条2項〜4項
- 会社法590条1項
- 会社法585条1項
- 会社法637条
- 会社法578条本文
- 整備法2条1項
- 会社法6条2項
- 整備法3条1項
- 整備法45条1項