子会社と親会社の定義・経営の支配
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第1章 総論・会社法総則 ⑥/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
40%しか持っていないのに子会社
図:40%でも子会社
- A=会社
- B=会社
- E=名義だけの株主:A→B 議決権40%+Bの取締役5人のうち3人がA側の人→BはAの子会社。別の板:Aの名義が60%でも損益はEのもの→Aの「自己の計算」は0
外食チェーンのA社が、仕入れ会社のB社の株式を持っています。議決権の割合は40パーセント。過半数には届きません。ところが、B社の取締役5人のうち3人は、A社の役員や元役員です。B社の仕入れ先も値段も、実際にはA社が決めています。会社法の答えは、子会社です。持株が過半数でなくても、取締役の過半数をA社の側の人が占めていれば、B社はA社の子会社になりえます。逆の場面もあります。A社の名義で議決権の60パーセントを持っていても、その株の損益がすべて別の人Eに帰属する約束なら、その60パーセントは、A社の持分として数えません。
会社法の子会社は、何パーセント持っているかでは決まりません。経営を支配しているかで決まります。今日の1問は、なぜ会社法は数字ではなく、支配で定義するのか、です。答えを先に言います。数字だけで決めると、名義を借りたり、比率を50パーセントちょうどに抑えたりして、規律を簡単に逃れられるからです。
なぜ会社はグループで動くのか
図:分社化
- 外食事業と不動産事業を別会社に
- メリット=業績が見える・意思決定が速い・失敗が他の事業に及びにくい
- デメリット=目が届きにくい・管理が重複
定義に入る前に、そもそもなぜ会社は子会社を持つのかを見ます。たとえば、外食と不動産の両方をやっている1つの会社があるとします。事業ごとに別の会社に分けることを、分社化といいます。分けるメリットは3つあります。1つ目は、事業ごとの業績が見えやすくなることです。2つ目は、それぞれの会社で意思決定が速くなることです。3つ目は、外食で大きな損失が出ても、不動産の事業への影響を抑えやすいことです。デメリットもあります。目が届きにくくなり、管理の仕事が重複します。分けた会社を、元の会社がどう見張るか。これが、親会社と子会社の定義が要る理由の1つです。前回、株主総会で議決権の過半数を握ると、取締役を全員選べると見ました。60パーセントを持つAさんの例です。
子会社の定義の直感は、ここにあります。過半数を持てば経営を握れる。握れているかどうかが本質です。
図:この回の地図
- 1.会社はなぜグループで動くのか
- 2.子会社の定義=経営の支配
- 3.過半数ルールと実質で見るルール
- 4.親会社の定義
- 5.広げた言葉と頂点の言葉
- 6.定義はどこで効くか
地図は6つです。1つ目のグループで動く理由は、今見ました。この後、子会社の定義、判定の二段、親会社の定義、広げた言葉、最後にこの定義がどこで効くかを見ます。すべて、誰が誰を支配しているか、という1つの問いにぶら下げます。
子会社の定義
図:子会社の定義
- 2条3号=過半数を有する株式会社+経営を支配している法人として法務省令で定めるもの
- 省令3条1項=財務及び事業の方針の決定を支配している場合
- 会社等=会社・組合・これらに準ずる事業体
2条3号です。
条文会社法2条3号
会社法第2条(3号) 三 子会社 会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。
前半は、会社が総株主の議決権の過半数を有する株式会社です。前回の総会の決議は出席した議決権の過半数でしたが、ここは出席に関係なく、全株主の議決権が分母です。後半は、経営を支配している法人として、法務省令で定めるものです。何が支配なのかは、省令に任せています。会社法施行規則3条1項です。
条文会社法施行規則3条1項
会社法施行規則第3条(1項) 1 法第二条第三号に規定する法務省令で定めるものは、同号に規定する会社が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等とする。
会社法の子会社は、財務と事業の方針の決定を支配されている相手です。ここで、会社等という言葉が出ました。会社と組合、その他これらに準ずる事業体のことです。外国の会社や組合も含みます。支配されているのが組合のような事業体でも、子会社になりえます。日常の、株を一番多く持っている会社、という感覚より広い言葉です。
判定の二段
図:子会社判定のフロー
- 自己の計算で議決権50%超?→はい=子会社(1号)
- いいえ→自己の計算で40%以上+支配の事情?→はい=子会社(2号)
- いいえ→自己の計算が0でも合算50%超+支配の事情?→はい=子会社(3号)
ここから、支配している場合の中身です。その前に1問。前回見たとおり、議決権の過半数を握ると、株主総会で何ができましたか?取締役を選べます。だから過半数が、支配の代表的な目印になります。省令3条3項は、数字だけで決める1号と、数字に支配の事情を足す2号と3号の、二段で判定します。3項の柱書です。ここは、後の号に共通する前提です。
条文会社法施行規則3条3項柱書
会社法施行規則第3条(3項柱書) 3 前二項に規定する「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」とは、次に掲げる場合(財務上又は事業上の関係からみて他の会社等の財務又は事業の方針の決定を支配していないことが明らかであると認められる場合を除く。)をいう(以下この項において同じ。)。
数字や形式が当てはまっても、財務上、事業上の関係から見て、支配していないことが明らかなときは除く、という例外です。
図:子会社の判定(1号〜3号)
- 1号=自己の計算で議決権50%超
- 2号=自己の計算で40%以上+イ〜ホのいずれか
- 3号=自己の計算が0でもよい・自己所有等の合算50%超+ロ〜ホのいずれか
- 再生・更生・破産手続中の会社等で有効な支配従属関係がないものは1号〜3号すべてで除く
ここから、号を1つずつ見ます。
条文会社法施行規則3条3項1号
会社法施行規則第3条(3項1号) 一 他の会社等(次に掲げる会社等であって、有効な支配従属関係が存在しないと認められるものを除く。以下この項において同じ。)の議決権の総数に対する自己(その子会社及び子法人等(会社以外の会社等が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該他の会社等をいう。)を含む。以下この項において同じ。)の計算において所有している議決権の数の割合が百分の五十を超えている場合 イ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)の規定による再生手続開始の決定を受けた会社等 ロ 会社更生法(平成十四年法律第百五十四号)の規定による更生手続開始の決定を受けた株式会社 ハ 破産法(平成十六年法律第七十五号)の規定による破産手続開始の決定を受けた会社等 ニ その他イからハまでに掲げる会社等に準ずる会社等
1号は、数字だけで決まる形式基準です。相手の議決権の総数のうち、自己の計算、つまり損益が自分に帰属する形で所有している議決権が、50パーセントを超えているとき。自己には、自分の子会社などの分も含みます。再生手続や更生手続、破産手続の開始決定を受けて、有効な支配従属関係がない会社等は除きます。手続が始まると、管財人や監督委員、裁判所の監督の下で進むため、株主の側が方針を決めているとは言えないことがあるからです。この除外は1号の中に書かれていますが、以下この項において同じ、とあるので、2号と3号にも掛かります。柱書の除外は、関係から見て支配がないことが明らかな場合一般です。こちらは、手続中の会社という型を名指しした除外です。
図:2号の要件(自己の計算で議決権40%以上+イ〜ホのいずれか)
条文会社法施行規則3条3項2号(柱書・イ)
会社法施行規則第3条(3項2号柱書・イ) 二 他の会社等の議決権の総数に対する自己の計算において所有している議決権の数の割合が百分の四十以上である場合(前号に掲げる場合を除く。)であって、次に掲げるいずれかの要件に該当する場合 イ 他の会社等の議決権の総数に対する自己所有等議決権数(次に掲げる議決権の数の合計数をいう。次号において同じ。)の割合が百分の五十を超えていること。 (1) 自己の計算において所有している議決権 (2) 自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者が所有している議決権 (3) 自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権
条文会社法施行規則3条3項2号ロ
会社法施行規則第3条(3項2号ロ) ロ 他の会社等の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の総数に対する次に掲げる者(当該他の会社等の財務及び事業の方針の決定に関して影響を与えることができるものに限る。)の数の割合が百分の五十を超えていること。 (1) 自己の役員 (2) 自己の業務を執行する社員 (3) 自己の使用人 (4) (1)から(3)までに掲げる者であった者
条文会社法施行規則3条3項2号ハ〜ホ
会社法施行規則第3条(3項2号ハ〜ホ) ハ 自己が他の会社等の重要な財務及び事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること。 ニ 他の会社等の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されているものに限る。)の総額に対する自己が行う融資(債務の保証及び担保の提供を含む。ニにおいて同じ。)の額(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係のある者が行う融資の額を含む。)の割合が百分の五十を超えていること。 ホ その他自己が他の会社等の財務及び事業の方針の決定を支配していることが推測される事実が存在すること。
2号は、実質基準です。1号に当たらないが、自己の計算で40パーセント以上を持っている。そのうえで、次のどれかが加わるときです。イは、自己の計算の議決権に、出資や人事、取引などで緊密な関係にあって自分と同じ内容で議決権を使うとみられる人や、同じ内容で議決権を行使すると同意した人の議決権を合わせて、50パーセントを超える場合。ロは、取締役会などの構成員の過半数を、自己の役員、使用人、またはそれらだった人が占める場合。ただし、会社の方針の決定に影響を与えうる人に限ります。ハは、重要な方針の決定を支配する契約がある場合。ニは、負債による資金調達額の総額のうち、50パーセントを超える額を自己が融資している場合。ホは、そのほか支配していると推測される事実がある場合です。冒頭のA社とB社は、40パーセントで、取締役5人のうち3人がA社の側の人でした。2号のロに当たります。
図:3号の要件(自己の計算が0でもよい・自己所有等の合算50%超+ロ〜ホのいずれか)
条文会社法施行規則3条3項3号
会社法施行規則第3条(3項3号) 三 他の会社等の議決権の総数に対する自己所有等議決権数の割合が百分の五十を超えている場合(自己の計算において議決権を所有していない場合を含み、前二号に掲げる場合を除く。)であって、前号ロからホまでに掲げるいずれかの要件に該当する場合
3号は、自己の計算の議決権がゼロでもよい形です。緊密な関係の人や同意した人の分を合わせた議決権が50パーセントを超え、かつ、2号のロからホのどれかに当たる場合です。合算で50パーセント超という入口は、2号のイと同じ中身です。だから3号で足す事情は、ロからホになります。数字で並べます。自分で45パーセントを持ち、取締役の過半数を自分の側が占めれば、2号です。自分では1株も持たず、自分と同じ内容で議決権を使うとみられる取引先が30パーセント、同調すると約束した人が25パーセントを持ち、取締役の過半数が自分の元役員なら、3号です。
文言を暗唱する必要はありません。軸を押さえてください。1号は数字だけ。2号は40パーセント以上と、支配の事情。3号は自己の計算がなくても、合算で50パーセント超と、支配の事情。そして数字は、50パーセント超、40パーセント以上、取締役の50パーセント超、融資の50パーセント超です。ここで1問。C社の議決権の35パーセントを自己の計算で持つB社が、C社の取締役会の過半数を自社の使用人で占めています。ほかに合算できる株式はありません。C社はB社の子会社でしょうか。40パーセント以上が前提だから、2号には当たりません。ほかの合算もないなら、子会社とは言えないと思います。取締役の過半数だけでは足りません。35パーセントだけでは、ほかの株主がまとまれば、総会でその取締役を入れ替えられます。そこで2号は、40パーセント以上という入口を置き、そのうえで事情が加わったときに支配と見ます。数字も事情も、両方が要ります。40パーセントも50パーセントも、支配を見つけるための目印です。決め手は、経営を支配しているかどうかです。
自己の計算と孫会社
図:自己の計算
- 名義でなく損益の帰属
- ケースⅠ=名義はE・配当はAが受ける→Aの自己の計算
- ケースⅡ=名義はA・損益はEのもの→Aの自己の計算ではない
- 子会社の持分は合算
1号に出てきた自己の計算を見ます。これは、株式の名義ではなく、損益が誰に帰属するかで決まります。たとえばA社が、友人Eの名義で株を買い増したとします。配当も株価の値上がりも、A社のものになる合意です。この株は、名義が友人でも、A社の自己の計算です。数えます。逆に、名義はA社でも、配当や値上がりの損益がすべて友人Eのものなら、その株はA社の自己の計算ではありません。冒頭の名義の60パーセントは、この場合です。名義の株が数に入らないのは分かりました。なぜ名義で決めないんですか。名義で決めると、名義を他人に借りるだけで、子会社の規律から逃れられるからです。誰が実際に利益と損失を負うかで見れば、そのすり抜けは効きません。冒頭の問いの答えが、ここで出ます。もう1つ。自己には、その子会社などを含みます。これが、孫会社の考え方です。
図:孫会社も子会社
- A→B 55%、B→C 55%:C はAの子会社
- A→B 55%でBはAの子会社、A→C 20%+B→C 35%:子会社Bの分も入り合算55%でCもAの子会社
A社がB社の55パーセントを持ち、B社がC社の55パーセントを持っているとします。A社から見れば、C社は孫です。それでもC社も、A社の子会社になります。数え方は、こうです。A社が自分で持つ分と、子会社のB社が持つ分を合わせます。たとえばA社が自分でC社の20パーセント、子会社のB社が35パーセントを持てば、合わせて55パーセントで、1号に当たります。持株が分散していても、グループ全体で見ます。
親会社の定義
図:親会社の定義
- 2条4号=株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるもの
- 省令3条2項=会社等が株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配している場合の当該会社等
- 支配の中身は子会社と同じ
次は親会社です。2条4号です。
条文会社法2条4号
会社法第2条(4号) 四 親会社 株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう。
省令の3条2項です。
条文会社法施行規則3条2項
会社法施行規則第3条(2項) 2 法第二条第四号に規定する法務省令で定めるものは、会社等が同号に規定する株式会社の財務及び事業の方針の決定を支配している場合における当該会社等とする。
支配の中身は、子会社と同じで、3項で判断します。違いは、支配される側が株式会社に限られることです。子会社そのものは、株式会社でなくても子会社です。ただ、親会社という言葉は、支配される相手が株式会社の場合に限ります。会社法が、親会社に関する規律を、株式会社の側にだけ置いているからです。たとえば、親会社の株主が、必要があれば裁判所の許可を得て、子会社の定款や計算書類を見られる、という規律があります。見る相手は、株式会社が作る書類です。親会社の規律は、こうして支配される株式会社の側を見るものなので、支配される側が株式会社のときに、支配する側を親会社と呼ぶのです。冒頭のB社が株式会社なら、A社はB社の親会社です。もしB社が合同会社なら、B社はA社の子会社ですが、A社をB社の親会社とは呼びません。ただし例外が1つあります。135条1項の、子会社による親会社株式の取得の禁止では、株式会社に支配されている子会社が、合同会社のような株式会社でない会社でも、親の株式を取得できません。省令3条4項が、135条1項の場面に限って、その子会社を株式会社とみなすからです。これは名前だけにします。
広げた言葉と頂点の言葉
図:子会社等・親会社等
- 子会社等=子会社+会社以外の者が経営を支配している法人
- 親会社等=親会社+株式会社の経営を支配している者のうち法人でないもの
- 例=自然人Xが株式会社の議決権の50%超を自己の計算で持つ→親会社ではない・親会社等
ここまでの親会社は、会社の形をした支配者でした。では、人が支配している場合はどうでしょう。たとえば、社長のXさんが、自分で株式会社の議決権の50パーセントを超える分を、自己の計算で持っているとします。人であるXさんは、親会社ではありません。親会社は法人に限られるからです。ただ、会社法はXさんを、別の言葉で捉えます。2条4号の2です。
条文会社法2条
会社法第2条(定義) 四の二 親会社等 次のいずれかに該当する者をいう。 イ 親会社 ロ 株式会社の経営を支配している者(法人であるものを除く。)として法務省令で定めるもの
イは親会社、ロは法人でない支配者です。Xさんは、原則として親会社等です。子会社の側にも、対の言葉があります。2条3号の2です。
条文会社法2条
会社法第2条(定義) 三の二 子会社等 次のいずれかに該当する者をいう。 イ 子会社 ロ 会社以外の者がその経営を支配している法人として法務省令で定めるもの
子会社等は、子会社に、会社以外の者、つまり自然人などに支配されている法人を加えた言葉です。省令3条の2が、その中身を定めます。3条3項とほぼ同じ基準ですが、本人に加えて、配偶者と二親等内の親族の分も加えて考えます。この言葉は、後で社外取締役の要件に出てきます。社外取締役は、経営陣から距離を置いて、外の目で経営を見張る取締役です。だから、支配する側の関係者はなれません。社外取締役は、親会社等が自然人であるときのその人や、親会社等の取締役、使用人であってはなりません。さらに、親会社等の子会社等、つまり兄弟会社の、業務執行取締役や使用人のように、そこで実際に仕事をする人でもあってはなりません。2条15号のハとニです。中身は後の回で扱います。ここでは、人が支配する場合までこの言葉が広げてくれる、と持ち帰ってください。もう1問。自然人が株式会社の議決権の50パーセントを超えて自己の計算で持つ。その人は親会社でしょうか。
親会社ではなくて、親会社等です。ほかに、支配株主という呼び方があります。これは会社法上の用語ではなく、講学上の呼び名、つまり学者が説明のために使う呼び名です。親会社等の要件に当てはまらない人についても使います。名前だけで十分です。
図:完全親子関係の頂点
- A→B→C→D がそれぞれ100%
- 頂点のA=最終完全親会社等
- 完全子会社=発行済株式の全部を持たれている株式会社・間接所有分を合算
もう1つは、頂点の言葉です。発行済株式の全部を持たれている株式会社が、完全子会社です。それを持つ側が完全親会社で、間接に持つ分も合算して考えます。完全子会社等は、完全子会社を、株式会社でない法人まで広げた言葉です。完全親会社等は、親の側を、完全子会社等を通じて間接に持つ分まで含めて捉えた言葉で、こちらは株式会社に限られます。A社がB社の全株式を持ち、B社がC社の全株式を持ち、C社がD社の全株式を持つ関係を考えます。このとき、完全親会社等であって、その完全親会社等がないもの、つまり完全親子関係の頂点にいるA社を、最終完全親会社等といいます。847条の3第1項の括弧書きの定義です。使われる場所は多重代表訴訟です。頂点の会社の株主が、グループの奥深くの子会社の役員の責任を追及できる仕組みです。なぜ頂点なのか。途中のB社やC社の株主は、グループの会社だけで、仲間の役員の責任を自分から追及するとは考えにくい。グループの外から出資し、最後に損を負うのは、頂点のA社の株主です。中身は後の回で扱います。
定義はどこで効くか
図:定義が効く3か所
- ①社外取締役の要件=親会社等・子会社等との関係
- ②子会社による親会社株式の取得の禁止=135条1項
- ③多重代表訴訟=最終完全親会社等の株主/ほかに親会社社員の子会社書類の閲覧・グループの内部統制・連結計算書類
ここまでの定義が、どこで使われるかを見ます。1つ目は、先ほどの社外取締役の要件です。親会社等や、その子会社等の関係者は、社外になれません。2つ目は、子会社による親会社株式の取得の禁止です。135条1項です。
条文会社法135条1項
会社法第135条(1項) 1 子会社は、その親会社である株式会社の株式(以下この条において「親会社株式」という。)を取得してはならない。
子会社が親会社の株式を持つと、実質的に、親会社が自分の株式を持つのと同じことになります。親会社のお金が、子会社を通じて株主に戻る形になります。前々回見た出資の払戻しと同じく、債権者が当てにしていた財産が減ります。さらに、もし子会社に持たせた株の議決権を親会社の経営者が使えたとすれば、自分を選ぶ総会を自分で動かせてしまいます。これが支配のゆがみです。2項に例外があり、3項に処分の義務がありますが、後の回で扱います。3つ目は、多重代表訴訟です。最終完全親会社等の株主が、グループの子会社の役員の責任を追及できる仕組みです。
ほかにも、親会社の株主の子会社の書類の閲覧、グループの内部統制、連結計算書類などで使います。どれも後の回です。ここでは、なぜ今この定義が要るかを押さえてください。
第1章の締め:会社法の第3の役割
図:会社法の第3の役割
- 長い活動で利害関係人が多数になる→集団的な法律関係を処理し早期に確定
- 例=設立無効の訴え・株式発行無効の訴え→828条が提訴できる期間を限る
- 設立無効=成立の日から2年以内・株式発行無効=6か月以内
第1章の締めに、会社法の役割をもう1つ足します。前回、取引相手の保護と、参加者が安心して使えるルールの2つを見ました。3つ目は、法律関係を早く確定させることです。会社は長く活動し、株主も取引先も従業員も増えます。利害関係人が多数になると、1人ずつ法律関係を処理するのは無理です。集団的に処理し、早く確定させる工夫が要ります。たとえば、会社の設立や株式の発行が無効だったと主張する訴えです。設立から何年もたって、あの株式の発行は無効だった、と言い出せたらどうでしょう。その株式を買った人や、取引した相手は安心できません。そこで828条1項は、こうした会社の組織に関する行為の無効の訴えに、期間を設けています。たとえば、設立の無効は成立の日から2年以内、株式の発行の無効は原則6か月以内に限ります。取引の安定のため、争える期間を区切るのです。
今日の地図(保存版)
図:まとめ
- 子会社=経営の支配
- 1号=自己の計算で50%超
- 2号=40%以上+事情
- 3号=自己の計算が0でも合算50%超+事情
- 親会社=株式会社の支配者
- 親会社等・子会社等=自然人まで広げる
- 頂点=最終完全親会社等
今日の1問に答えます。なぜ会社法は、数字ではなく支配で定義するのか。数字だけで決めると、名義を借りる、比率を50パーセントちょうどに抑える、といった方法で、規律を逃れられるからです。そこで、省令は自己の計算という、損益の帰属で数え、40パーセント以上に支配の事情を足し、自己の計算がなくても合算と事情で捉えます。子会社は、経営を支配されている相手です。親会社は、株式会社を支配している会社等です。人が支配する場合までは、親会社等、子会社等という言葉で広げます。頂点の言葉が、最終完全親会社等です。冒頭のA社とB社は、40パーセントでも、取締役の過半数を握っていたから子会社だったんですね。名義の60パーセントが数に入らなかったのも、同じ考え方でした。次の回からは、会社法総則に入ります。
参照条文
- 会社法2条3号
- 会社法施行規則3条1項
- 会社法施行規則3条3項柱書
- 会社法施行規則3条3項1号
- 会社法施行規則3条3項2号(柱書・イ)
- 会社法施行規則3条3項2号ロ
- 会社法施行規則3条3項2号ハ〜ホ
- 会社法施行規則3条3項3号
- 会社法2条4号
- 会社法施行規則3条2項
- 会社法2条
- 会社法135条1項