会社法ゼロから会社法#15

種類株主総会

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第2章 株式 ⑮/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

可決したのに効力が生じない

導入の場面(A=創業家〔普通株式7,000株〕/B=投資会社〔優先株式3,000株・取得請求権付〕/C=食品メーカー/D=優先株式の種類株主総会/A→C 総会で定款変更を可決〔議決権70%〕/C→B 転換の条件が悪化〔優先2株で普通1株〕/B→D その種類だけの総会で否決すれば効力を生じない) 図:導入の場面

  • A=創業家〔普通株式7,000株〕
  • B=投資会社〔優先株式3,000株・取得請求権付〕
  • C=食品メーカー
  • D=優先株式の種類株主総会
  • A→C 総会で定款変更を可決〔議決権70%〕
  • C→B 転換の条件が悪化〔優先2株で普通1株〕
  • B→D その種類だけの総会で否決すれば効力を生じない

地方に、食品メーカーの株式会社があります。株主は2者です。創業家が、普通株式を7,000株。投資会社が、優先株式を3,000株。議決権は、どちらも1株に1個です。投資会社の優先株式には、取得請求権が付いています。いつでも、優先株式1株を、普通株式1株に換えてもらえる。転換です。投資会社は、この約束を前提にお金を出しました。ところがある日、創業家が臨時株主総会を開いて、定款を変えました。転換の条件を、優先株式2株で普通株式1株に。換えてもらえる数が、半分になります。創業家の議決権は全体の70%です。定款変更の特別決議は3分の2以上ですから、足ります。可決です。

受け入れる必要はありません。この定款変更は、優先株式の種類株主総会の決議がなければ、効力を生じません。優先株式の株主は投資会社だけですから、投資会社が反対すれば、そこで止まります。前回、種類株主総会は、その種類の株主だけで開く総会だと言いました。拒否権付株式は、定款にそう書いてあるから働く仕組みでした。この会社の定款に、拒否権の定めはないとします。それでも、法律が種類株主総会を求めているのです。種類を作った会社では、多数派の種類が、少数派の種類にだけ不利なことを、総会の多数決で通せてしまいます。それを防ぐために、法律が、損をする側の種類の株主に、同意の場を足している。今日は、その仕組みを見ます。前回は後回しにした、種類株主総会の決議の重さも、ここで取り上げます。

この回の地図(順序=種類ごとに違う扱いができる場面→種類株主総会とは・決議の重さ→法律が求める場面〔322条1項〕と外せる線〔2項・3項〕→重い変更の特則〔111条〕/軸=ある種類だけが損をする決定に、その種類の株主の同意の場を足す) 図:この回の地図

  • 順序=種類ごとに違う扱いができる場面→種類株主総会とは・決議の重さ→法律が求める場面〔322条1項〕と外せる線〔2項・3項〕→重い変更の特則〔111条〕
  • 軸=ある種類だけが損をする決定に、その種類の株主の同意の場を足す

地図です。まず、種類ごとに違う扱いができる場面。ここで、損をする側が生まれる仕組みを見ます。次に、種類株主総会とは何か。決議の重さまで。3つ目が、法律が種類株主総会を求める場面と、それを外せる線、外せない線。最後に、特に重い変更の特則です。

種類ごとに違う扱い

種類ごとに違う扱いができる4場面(①株式の併合・分割=180条2項3号・183条2項3号〔併合・分割する株式の種類〕/②株式・新株予約権の無償割当て=186条1項3号・278条1項4号/③株主割当ての募集=202条1項1号・241条1項1号/④合併・株式交換・株式移転の対価の割当て=吸収合併は749条2項・新設合併は753条3項・株式交換は768条2項・株式移転は773条3項/ほかにも同型の規定がある) 図:種類ごとに違う扱いができる4場面

  • ①株式の併合・分割=180条2項3号・183条2項3号〔併合・分割する株式の種類〕
  • ②株式・新株予約権の無償割当て=186条1項3号・278条1項4号
  • ③株主割当ての募集=202条1項1号・241条1項1号
  • ④合併・株式交換・株式移転の対価の割当て=吸収合併は749条2項・新設合併は753条3項・株式交換は768条2項・株式移転は773条3項/ほかにも同型の規定がある

最初に、損をする側が、どこから生まれるのかを見ます。会社は、いくつかの場面で、株式の種類ごとに違う扱いができるからです。4つの場面です。1つ目、株式の併合と分割。2つ目、株式や新株予約権の無償割当て。3つ目、株主割当てで募集するとき。最後に、合併や株式交換などで、対価を割り当てるとき。どの場面も、条文に、種類ごとに定める旨の規定があります。併合と分割だけ、条文で確かめます。

条文会社法180条2項3号

会社法第180条第2項第3号 三 株式会社が種類株式発行会社である場合には、併合する株式の種類

条文会社法183条2項3号

会社法第183条第2項第3号 三 株式会社が種類株式発行会社である場合には、分割する株式の種類

種類株式発行会社なら、併合する株式の種類、分割する株式の種類を、決めます。全部の株式を一律に、ではありません。この種類だけ、と選べるのです。

普通株式だけを分割した数値例(分割前=創業家の普通7,000株〔70%〕・投資会社の優先3,000株〔30%〕・総数10,000株/普通株式だけ1株を2株に分割=創業家14,000株・投資会社3,000株のまま・総数17,000株/議決権割合=創業家 70%→約82.4%・投資会社 30%→約17.6%/種類を選べる→ある種類の株主にだけ効果が及ぶ) 図:普通株式だけを分割した数値例

  • 分割前=創業家の普通7,000株〔70%〕・投資会社の優先3,000株〔30%〕・総数10,000株
  • 普通株式だけ1株を2株に分割=創業家14,000株・投資会社3,000株のまま・総数17,000株
  • 議決権割合=創業家 70%→約82.4%・投資会社 30%→約17.6%
  • 種類を選べる→ある種類の株主にだけ効果が及ぶ

食品メーカーで試します。普通株式だけ、1株を2株に分割する、と決めたとします。創業家の普通株式は、7,000株から14,000株。投資会社の優先株式は、3,000株のままです。総数は17,000株。議決権の割合は、創業家が70%から約82.4%。投資会社が30%から約17.6%です。種類を選べるので、ある種類の株主にだけ、効果が及びます。ここで、投資会社はこれを止められるのか、という問いが出ます。分割は、法律が種類株主総会を求める行為の1つに挙がっています。ただ、実際に要るかどうかは、別の条件で決まります。それは、あとで見ます。

種類株主総会とは

前回の問いの確認(拒否権付株式〔8号〕の定めがある事項を株主総会で可決→種類株主総会の決議がなかったら?→効力を生じない〔323条〕/株主総会で可決していても) 図:前回の問いの確認

  • 拒否権付株式〔8号〕の定めがある事項を株主総会で可決→種類株主総会の決議がなかったら?→効力を生じない〔323条〕
  • 株主総会で可決していても

種類株主総会に入る前に、前回の問いを1つ。拒否権付株式の定めがある事項を、株主総会で可決しました。種類株主総会の決議がなかったら、その事項はどうなるでしょうか?323条で、効力を生じないんでしたよね。株主総会で可決していても。では、種類株主総会そのものを、整理します。

種類株主総会と株主総会の対比(構成員=株主総会はすべての株主・議決権を行使できる株主/種類株主総会はその種類の株式の種類株主だけ/一方が他方を含む関係ではない/議決権制限株式の株主=株主総会では議案によって議決権がないが、その種類の種類株主総会では完全な議決権/任意=定款の定めに基づく〔323条・108条1項9号〕・法定=法律が求める〔322条1項・111条2項ほか〕) 図:種類株主総会と株主総会の対比

  • 構成員=株主総会はすべての株主・議決権を行使できる株主
  • 種類株主総会はその種類の株式の種類株主だけ
  • 一方が他方を含む関係ではない
  • 議決権制限株式の株主=株主総会では議案によって議決権がないが、その種類の種類株主総会では完全な議決権
  • 任意=定款の定めに基づく〔323条・108条1項9号〕・法定=法律が求める〔322条1項・111条2項ほか〕

種類株主総会は、その種類の株を持つ株主だけで開く会議体です。株主総会は、議決権を行使できる株主全員の会議。別の会議体で、片方がもう片方を含む関係ではありません。注意点が1つあります。議決権が制限された株式の株主も、自分の種類の種類株主総会では、完全な議決権を持ちます。たとえば、投資会社の優先株式が、前回の3号の、役員の選任には議決権がない種類だったとします。株主総会の役員選任の議案では、投資会社は投票できません。しかし、優先株式の種類株主総会では、投資会社は、完全に投票できます。議決権が制限されるのは、株主総会で議決権を行使できる事項についてだからです。

種類株主総会には2種類あります。定款の定めに基づく任意のもの。拒否権付株式や、取締役の選任権付株式がそうでした。もう1つが、法律が求める法定のもの。今日の主役は、こちらです。権限には限りがあります。321条です。

条文会社法321条

会社法第321条 種類株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。

法律に書いてある事項と、定款で定めた事項だけです。何でも決められる総会ではありません。次に、決議の重さです。324条に、3段階あります。

条文会社法324条1項

会社法第324条第1項 1 種類株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、その種類の株式の総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。

1項が原則です。その種類の総株主の議決権の過半数が出席して、出席した議決権の過半数で決まります。

条文会社法324条2項

会社法第324条第2項(柱書・1号・4号) 2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる種類株主総会の決議は、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。 一 第百十一条第二項の種類株主総会(ある種類の株式の内容として第百八条第一項第七号に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合に限る。)… 四 第三百二十二条第一項の種類株主総会…

2項が特別決議。議決権を行使できる株主の議決権の過半数が出席して、出席した議決権の3分の2以上。今日の322条1項の種類株主総会は、この特別決議です。

条文会社法324条3項

会社法第324条第3項(柱書・1号) 3 前二項の規定にかかわらず、次に掲げる種類株主総会の決議は、当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。 一 第百十一条第二項の種類株主総会(ある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合に限る。)…

種類株主総会の決議の重さ(324条1項=原則・その種類の総株主の議決権の過半数が出席→出席した議決権の過半数/2項=特別決議・議決権を行使できる株主の議決権の過半数が出席〔定款で3分の1以上まで下げ可〕→出席した議決権の3分の2以上・該当=322条1項の総会〔4号〕・111条2項のうち全部取得条項〔1号〕ほか/3項=特殊の決議・議決権を行使できる株主の半数以上かつその議決権の3分の2以上・該当=111条2項のうち譲渡制限〔1号〕ほか/株主総会の普通・特別・特殊の決議〔309条〕と同型・招集や議事は株主総会の規定を準用〔325条〕) 図:種類株主総会の決議の重さ

  • 324条1項=原則・その種類の総株主の議決権の過半数が出席→出席した議決権の過半数
  • 2項=特別決議・議決権を行使できる株主の議決権の過半数が出席〔定款で3分の1以上まで下げ可〕→出席した議決権の3分の2以上・該当=322条1項の総会〔4号〕・111条2項のうち全部取得条項〔1号〕ほか
  • 3項=特殊の決議・議決権を行使できる株主の半数以上かつその議決権の3分の2以上・該当=111条2項のうち譲渡制限〔1号〕ほか
  • 株主総会の普通・特別・特殊の決議〔309条〕と同型・招集や議事は株主総会の規定を準用〔325条〕

3項が、特殊の決議。議決権を行使できる株主の半数以上で、かつ、その議決権の3分の2以上。頭数の要件が付く点が、特殊の決議の特徴でした。株主総会の、普通決議、特別決議、特殊の決議と、同じ形です。同じ型です。株主総会は309条、種類株主総会は324条。分母が、会社全体の株主から、その種類の株主に変わるだけです。招集や議事の進め方は、株主総会の規定を準用します。準用、つまり、同じ規定を当てはめて使います。325条です。ただし、決議の要件は309条ではなく324条が決めます。どの場面で特殊の決議になるかは、後半の111条で見ます。

法律が種類株主総会を求める場面

322条1項の骨格(種類株式発行会社が列挙された行為をする場合で、ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがあるとき→その種類の種類株主総会の決議がなければ効力を生じない/列挙=1号 定款変更〔イ 株式の種類の追加・ロ 株式の内容の変更・ハ 発行可能株式総数の増加/111条1項・2項に当たるものは除く〕・1号の2 特別支配株主の売渡請求の承認・2号 株式の併合・分割・3号 株式無償割当て・4号 株式の募集・5号 新株予約権の募集・6号 新株予約権無償割当て・7号〜14号 合併・吸収分割・事業の承継・新設分割・株式交換・株式交換による取得・株式移転・株式交付/要件は2つ=①列挙された行為か〔形式〕②損害を及ぼすおそれ〔実質〕) 図:322条1項の骨格

  • 種類株式発行会社が列挙された行為をする場合で、ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがあるとき→その種類の種類株主総会の決議がなければ効力を生じない
  • 列挙=1号 定款変更〔イ 株式の種類の追加・ロ 株式の内容の変更・ハ 発行可能株式総数の増加/111条1項・2項に当たるものは除く〕・1号の2 特別支配株主の売渡請求の承認・2号 株式の併合・分割・3号 株式無償割当て・4号 株式の募集・5号 新株予約権の募集・6号 新株予約権無償割当て・7号〜14号 合併・吸収分割・事業の承継・新設分割・株式交換・株式交換による取得・株式移転・株式交付
  • 要件は2つ=①列挙された行為か〔形式〕②損害を及ぼすおそれ〔実質〕

本題です。322条1項。

条文会社法322条1項

会社法第322条第1項(柱書) 種類株式発行会社が次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、当該行為は、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。

まず柱書です。次に掲げる行為をする場合で、ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがあるときは、その種類の種類株主総会の決議がなければ、効力を生じません。掲げられる行為が、次から並びます。

条文会社法322条1項

会社法第322条第1項(1号・1号の2) 一 次に掲げる事項についての定款の変更(第百十一条第一項又は第二項に規定するものを除く。)  イ 株式の種類の追加  ロ 株式の内容の変更  ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加 一の二 第百七十九条の三第一項の承認

1号は定款変更です。株式の種類の追加、株式の内容の変更、発行可能株式総数の増加。1号の2は、特別支配株主の株式売渡請求の承認です。特別支配株主とは、総株主の議決権の9割以上を持つ株主で、残りの株主全員に、株式を売り渡すよう請求できます。その請求を、会社が承認する場面です。

条文会社法322条1項

会社法第322条第1項(2号〜6号) 二 株式の併合又は株式の分割 三 第百八十五条に規定する株式無償割当て 四 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集(第二百二条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。) 五 当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集(第二百四十一条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。) 六 第二百七十七条に規定する新株予約権無償割当て

2号から6号は、併合や分割、株式の無償割当て、株式の募集、新株予約権の募集、新株予約権の無償割当てです。続きは組織再編です。

条文会社法322条1項

会社法第322条第1項(7号〜14号) 七 合併 八 吸収分割 九 吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継 十 新設分割 十一 株式交換 十二 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得 十三 株式移転 十四 株式交付

長い条文ですが、要件は2つです。1つ目、列挙された行為であること。定款変更、併合や分割、無償割当て、募集、組織再編などが並びます。ここは、形式で見ます。2つ目、ある種類の株主に損害を及ぼすおそれがあること。ここは、実質で見ます。1つ目を満たさなければ、2つ目は問いません。2つ目を満たさなければ、種類株主総会は要りません。条文の言葉は、無効ではなく、効力を生じない、です。決議が無いかぎり、行為はまだ効力を持ちません。決議は特別決議で、株主総会の決議に加えて、必要になります。冒頭に戻ります。転換の条件を悪化させる定款変更は、株式の内容の変更、1号ロです。優先株主にとって明らかに不利ですから、おそれはあります。株主総会は創業家の70%で通っても、優先株式の種類株主総会は投資会社だけ。投資会社が反対すれば、定款変更は効力を生じません。逆の向きも見ておきます。転換の条件を、優先株式1株で普通株式2株に、と良くする変更なら、同じ1号ロでも、優先株主に損はありません。おそれが無いので、優先株式の種類株主総会は要りません。

条文の言葉は、損害を及ぼす「おそれ」です。損が出てしまってからではなく、不利になりうる、という段階を指す書き方です。ただ、どこまでがおそれか、その線は、実務でも不明確と言われてきました。さきほどの分割で考えます。普通株式だけの分割は、優先株主の議決権割合を下げます。これがおそれに当たると考えるなら、優先株式の種類株主総会が要ります。当たらないと考えるなら、要りません。この線が引きにくい。それが、次の制度の理由になっています。

排除の線(322条2項=ある種類の株式の内容として、種類株主総会を要しない旨を定款で定められる/3項=その種類には1項を適用しない・ただし1号の定款変更〔単元株式数についてのものを除く〕は外せない/4項=発行後に排除の定めを設けるにはその種類の種類株主全員の同意/代わりの守り=反対株主の株式買取請求〔116条1項3号〕/理由=おそれの線が不明確で、念のため常に総会を開くと事実上すべての種類に拒否権が生じる) 図:排除の線

  • 322条2項=ある種類の株式の内容として、種類株主総会を要しない旨を定款で定められる
  • 3項=その種類には1項を適用しない・ただし1号の定款変更〔単元株式数についてのものを除く〕は外せない
  • 4項=発行後に排除の定めを設けるにはその種類の種類株主全員の同意
  • 代わりの守り=反対株主の株式買取請求〔116条1項3号〕
  • 理由=おそれの線が不明確で、念のため常に総会を開くと事実上すべての種類に拒否権が生じる

そこで法律は、種類株主総会を外す仕組みも用意しました。322条2項から4項です。

条文会社法322条2項〜4項

会社法第322条第2項〜第4項 2 種類株式発行会社は、ある種類の株式の内容として、前項の規定による種類株主総会の決議を要しない旨を定款で定めることができる。 3 第一項の規定は、前項の規定による定款の定めがある種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会については、適用しない。ただし、第一項第一号に規定する定款の変更(単元株式数についてのものを除く。)を行う場合は、この限りでない。 4 ある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式について第二項の規定による定款の定めを設けようとするときは、当該種類の種類株主全員の同意を得なければならない。

2項。種類株式発行会社は、ある種類の株式の内容として、1項の種類株主総会を要しない旨を、定款で定められます。3項本文。その定めがある種類には、1項は適用されません。理由は、先ほどの不明確さです。おそれがあるのか分からないので、念のため、毎回、種類株主総会を開く。すると、事実上、すべての種類の株主に拒否権が生じてしまう。それなら最初から、要らないと定められるようにしよう、という発想です。外せないものがあります。3項ただし書です。322条1項1号の定款変更、つまり、株式の種類の追加、株式の内容の変更、発行可能株式総数の増加は、排除の定めがあっても、種類株主総会が要ります。種類株主の利害に最も重大な影響があるからです。括弧書きに注意してください。単元株式数についての定款変更は、除かれています。単元株式数の定款変更は、排除できます。単元株式数は、前に見た、議決権1個のまとまりの株式の数で、種類ごとに定めます。これを変えると、議決権の数が変わります。議決権の面では、株式の併合や分割と似た働きです。条文の置き方を見ると、併合や分割と同じ側に置かれ、代わりに買取請求の対象になっています。

排除した代わりの守り(116条1項3号=322条2項の定款の定めがある種類の株主に損害を及ぼすおそれがあるとき、反対株主は株式の買取請求ができる/対象=併合・分割/株式無償割当て/単元株式数の定款変更/株式の募集/新株予約権の募集/新株予約権無償割当て/組織再編〔7号以下〕は原則として損害の有無を問わず反対株主に買取請求が認められているので、この号には載らない) 図:排除した代わりの守り

  • 116条1項3号=322条2項の定款の定めがある種類の株主に損害を及ぼすおそれがあるとき、反対株主は株式の買取請求ができる
  • 対象=併合・分割
  • 株式無償割当て
  • 単元株式数の定款変更
  • 株式の募集
  • 新株予約権の募集
  • 新株予約権無償割当て
  • 組織再編〔7号以下〕は原則として損害の有無を問わず反対株主に買取請求が認められているので、この号には載らない

種類株主総会という拒否権を外す代わりに、お金で出る道が渡されます。116条1項です。

条文会社法116条1項

会社法第116条第1項(柱書・2号) 次の各号に掲げる場合には、反対株主は、株式会社に対し、自己の有する当該各号に定める株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。… 二 ある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更をする場合 第百十一条第二項各号に規定する株式

柱書は、反対株主が、公正な価格での買取りを請求できる、というものです。2号は、譲渡制限や全部取得条項を付ける定款変更の場面で、あとで111条と合わせて見ます。今日の本題は、続く3号です。

条文会社法116条1項

会社法第116条第1項(3号) 三 次に掲げる行為をする場合において、ある種類の株式(第三百二十二条第二項の規定による定款の定めがあるものに限る。)を有する種類株主に損害を及ぼすおそれがあるとき 当該種類の株式 イ 株式の併合又は株式の分割 ロ 第百八十五条に規定する株式無償割当て ハ 単元株式数についての定款の変更 ニ 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集(第二百二条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。) ホ 当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集(第二百四十一条第一項各号に掲げる事項を定めるものに限る。) ヘ 第二百七十七条に規定する新株予約権無償割当て

3号です。排除の定めがある種類の株主は、併合や分割、無償割当て、単元株式数の定款変更、募集などで、損害を及ぼすおそれがあるとき、反対株主として、公正な価格での買取りを請求できます。反対株主とは、前に見たとおり、総会の前に反対を通知して、総会でも反対した株主です。総会の決議が要らない行為なら、すべての株主でした。分割を取締役会で決める会社なら、投資会社も、そのまま反対株主に当たります。組織再編は、この号に載っていません。組織再編では、原則として、損害の有無を問わず、反対株主に買取請求が認められているからです。食品メーカーで確かめます。投資会社の優先株式に、最初から排除の定めがあったとします。普通株式だけを分割しても、優先株式の種類株主総会は開きません。投資会社に損害のおそれがあれば、反対株主として、公正な価格での買取りを請求できます。止める力の代わりに、お金で出る道が残ります。最後に4項です。排除の定めを、種類の発行後に定款変更で置くには、その種類の種類株主全員の同意が要ります。守りを外すのだから、守られる人に決めさせる。前に見た、奪われる人に決めさせる、という軸と同じです。

定着の問い(排除の定めがある種類があるとき→それでも種類株主総会が要る定款変更は?/代わりの守りは?) 図:定着の問い

  • 排除の定めがある種類があるとき→それでも種類株主総会が要る定款変更は?
  • 代わりの守りは?

立ち止まって確かめます。ある種類に、種類株主総会を要しない旨の定めがあります。それでも種類株主総会が要る定款変更は、どれでしょうか? そして、その総会を外した代わりの守りは何でしょうか?えっと、322条1項1号の定款変更です。種類の追加と、内容の変更と、発行可能株式総数の増加。ただし、単元株式数についてのものは除きます。代わりの守りは、116条1項3号の買取請求です。補足すると、買取請求が守るのは、併合や分割、無償割当て、募集などの、総会を外した行為の側です。外せない1号の定款変更は、買取請求ではなく、種類株主総会そのものが守ります。単元株式数の定款変更は、外せるうえに、買取請求の対象です。冒頭の転換の条件の悪化は、1号の定款変更です。排除の定めがあってもなくても、投資会社の種類株主総会で止められます。損をする側の種類に同意の場を足す仕組みは、外せる線を引いても、いちばん重い変更には残るのです。

重い変更の特則

111条の一覧(行=付ける内容/列=株主総会・その種類の種類株主総会・反対株主の買取請求/取得条項〔6号〕=定款変更の株主総会は特別決議・その種類の株主全員の同意〔111条1項〕・買取請求なし/譲渡制限〔4号〕=特別決議・種類株主総会の特殊の決議〔111条2項1号・324条3項1号〕・買取請求あり〔116条1項2号〕/全部取得条項〔7号〕=特別決議・種類株主総会の特別決議〔111条2項1号・324条2項1号〕・買取請求あり〔116条1項2号〕/重さ=全員の同意>特殊の決議>特別決議) 図:111条の一覧

  • 行=付ける内容
  • 列=株主総会・その種類の種類株主総会・反対株主の買取請求
  • 取得条項〔6号〕=定款変更の株主総会は特別決議・その種類の株主全員の同意〔111条1項〕・買取請求なし
  • 譲渡制限〔4号〕=特別決議・種類株主総会の特殊の決議〔111条2項1号・324条3項1号〕・買取請求あり〔116条1項2号〕
  • 全部取得条項〔7号〕=特別決議・種類株主総会の特別決議〔111条2項1号・324条2項1号〕・買取請求あり〔116条1項2号〕
  • 重さ=全員の同意>特殊の決議>特別決議

322条は、おそれがあるかで測る守りでした。これに対して、おそれを測らず、はじめから重く守る変更があります。111条です。前に、定款変更で後から付ける定めの決議に、3段階があると見ました。取得請求権は特別決議。譲渡制限は特殊の決議に買取請求。取得条項は株主全員の同意。奪うものが大きいほど、決議が重い、という軸でした。ただ、あれは、種類株式を発行していない会社の話です。種類株式発行会社が、ある種類に付けるときは、111条が別に定めます。

条文会社法111条1項

会社法第111条第1項 1 種類株式発行会社がある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式の内容として第百八条第一項第六号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該種類の株式を有する株主全員の同意を得なければならない。

1項。ある種類に取得条項、6号を付けるなら、その種類の株主全員の同意が要ります。種類株主総会の多数決では、できません。定款変更の株主総会の方は、特別決議で足ります。食品メーカーで、投資会社の優先株式に取得条項を付ける定款変更をしたとします。創業家が70%で可決しても、それだけでは付けられません。優先株式の株主は投資会社だけですから、投資会社が同意しなければ、取得条項は付きません。

条文会社法111条2項

会社法第111条第2項 2 種類株式発行会社がある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定款の定めを設ける場合には、当該定款の変更は、次に掲げる種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が二以上ある場合にあっては、当該二以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会。以下この条において同じ。)の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。 一 当該種類の株式の種類株主 二 第百八条第二項第五号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得請求権付株式の種類株主 三 第百八条第二項第六号ロの他の株式を当該種類の株式とする定めがある取得条項付株式の種類株主

2項。ある種類に譲渡制限、4号、または全部取得条項、7号を付ける定款変更は、種類株主総会の決議がなければ、効力を生じません。決議の重さは、324条が振り分けます。譲渡制限は特殊の決議、全部取得条項は特別決議。どちらも、反対株主に買取請求があります。前回、全部取得条項で後回しにした、種類株主総会と買取請求が、これです。取得条項は、前に見たとおり、事由が生じれば、株主が選ぶ余地なく、株主の地位を奪われます。しかも、一部の株式だけを取得する定めもありえます。同じ種類の株主の中で、取られる人と取られない人が分かれます。だから、一人ひとりの同意が要るのです。全部取得条項も地位を奪いますが、前回見たとおり、取得するときに、もう一度株主総会の決議が要ります。対価が安すぎれば、裁判所に価格を決めてもらえ、違法な取得なら、差止めを求められます。取得するときに値段で守るので、付けるときは決議で足ります。譲渡制限が特殊の決議なのは、前に見たとおり、その種類の株主みんなの、自由に売る道が狭まるからでした。全部取得条項は取得するときに守りますが、譲渡制限は、付けたその時から、ずっと効き続けます。だから付けるときに、頭数まで求めて重く守るのです。全部の種類に譲渡制限を付けるときも、各種類ごとに、特殊の決議が要ります。株主総会の方は、特別決議で足ります。309条3項は、種類株式を発行していない会社が譲渡制限を付けるときの、特殊の決議でした。種類株式発行会社の株主総会には、適用されません。影響を受けるのは、制限を付けられる種類の株主です。ですから、全体の総会ではなく、その種類の総会で、特殊の決議を求めるのです。

111条2項が総会を求める種類株主(1号=その種類の株主/2号=取得請求権付株式で、対価が「その種類の株式」とされている種類の株主/3号=取得条項付株式で、対価が「その種類の株式」とされている種類の株主/例=食品メーカーの普通株式に譲渡制限を付ける→普通株主の総会+優先株主の総会〔優先株式は転換の対価が普通株式〕/それぞれ特殊の決議) 図:111条2項が総会を求める種類株主

  • 1号=その種類の株主
  • 2号=取得請求権付株式で、対価が「その種類の株式」とされている種類の株主
  • 3号=取得条項付株式で、対価が「その種類の株式」とされている種類の株主
  • 例=食品メーカーの普通株式に譲渡制限を付ける→普通株主の総会+優先株主の総会〔優先株式は転換の対価が普通株式〕
  • それぞれ特殊の決議

111条2項には、もう1つ、見落としやすい点があります。総会を開く種類株主は、1号から3号です。1号は、その種類の株主。2号は、取得請求権付株式で、対価が、その種類の株式とされている種類の株主。3号は、取得条項付株式で、対価が、その種類の株式とされている種類の株主です。食品メーカーで考えます。普通株式に、譲渡制限を付ける定款変更をする。普通株主の種類株主総会は、1号で要ります。さらに、優先株式は、取得請求権の対価が普通株式です。投資会社は、転換すれば、譲渡制限の付いた普通株式を受け取る立場です。2号で、優先株式の種類株主総会も要ります。対価として受け取る株式の中身が、変わるからです。

最後に、322条との切り分けです。322条1項1号の括弧書きは、111条1項と2項に当たる定款変更を、除いています。ですから、取得条項、譲渡制限、全部取得条項を付ける変更は、111条が決めます。それ以外の定款変更、種類の追加、内容の変更、発行可能株式総数の増加は、322条のおそれの基準で判断します。111条の3つは、おそれを測らず、はじめから重く守られるのです。

今日の地図(保存版)

まとめ(軸=ある種類だけが損をする決定に、その種類の株主の同意の場を足す/種類ごとに違う扱い〔併合・分割・無償割当て・株主割当て・対価の割当て〕→ある種類だけに効果が及ぶ/種類株主総会=その種類の株主だけの会議体・321条・324条の3段階/322条1項=列挙された行為+損害のおそれ・特別決議・効力を生じない/排除〔2〜4項〕=1号の定款変更〔単元株式数を除く〕は外せない・代わりに買取請求〔116条1項3号〕・後から置くには全員の同意/111条=取得条項は全員の同意・譲渡制限は特殊の決議・全部取得条項は特別決議/重さ=全員の同意>特殊の決議>特別決議) 図:まとめ

  • 軸=ある種類だけが損をする決定に、その種類の株主の同意の場を足す
  • 種類ごとに違う扱い〔併合・分割・無償割当て・株主割当て・対価の割当て〕→ある種類だけに効果が及ぶ
  • 種類株主総会=その種類の株主だけの会議体・321条・324条の3段階
  • 322条1項=列挙された行為+損害のおそれ・特別決議・効力を生じない
  • 排除〔2〜4項〕=1号の定款変更〔単元株式数を除く〕は外せない・代わりに買取請求〔116条1項3号〕・後から置くには全員の同意
  • 111条=取得条項は全員の同意・譲渡制限は特殊の決議・全部取得条項は特別決議
  • 重さ=全員の同意>特殊の決議>特別決議

まとめです。種類を作ると、多数派の種類が、少数派の種類にだけ不利な決定を通せてしまう。その歯止めが、種類株主総会です。短答では、次が問われます。種類株主総会の構成員と、議決権制限株式の株主が完全な議決権を持つこと。322条1項は、列挙された行為と、損害を及ぼすおそれの2要件で、決議がなければ効力を生じないこと。排除の定めがあっても、1号の定款変更は単元株式数のもの以外は外せず、代わりに買取請求があること。111条の、取得条項は全員の同意、譲渡制限は特殊の決議、全部取得条項は特別決議、という振り分けです。

転換の条件の悪化は、株式の内容の変更です。創業家が70%で可決しても、優先株式の種類株主総会が必要で、投資会社が反対すれば、効力を生じません。種類株式の会社で、会社の行為を検討するときは、株主総会の決議のほかに、種類株主総会が要るか、を落とさないでください。ここまでは、種類が違う株主の間の話でした。次は、同じ種類の株主の間で、会社がどう扱わなければならないか、という大原則を見ます。

参照条文

  • 会社法180条2項3号
  • 会社法183条2項3号
  • 会社法321条
  • 会社法324条1項
  • 会社法324条2項
  • 会社法324条3項
  • 会社法322条1項
  • 会社法322条2項〜4項
  • 会社法116条1項
  • 会社法111条1項
  • 会社法111条2項

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