会社法ゼロから会社法#16

株主平等の原則

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第2章 株式 ⑯/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

同じ種類なのに差がつく

導入の場面(A=創業家〔普通7,000株〕/B=同じ種類の株式〔普通株式〕/C=食品メーカー/D=個人株主Dさん〔普通100株〕/C→A 配当とは別に功労金を支払う〔1株50円相当〕/C→D 支払いなし/A・D=B 種類が同じなので種類株主総会では争えない) 図:導入の場面

  • A=創業家〔普通7,000株〕
  • B=同じ種類の株式〔普通株式〕
  • C=食品メーカー
  • D=個人株主Dさん〔普通100株〕
  • C→A 配当とは別に功労金を支払う〔1株50円相当〕
  • C→D 支払いなし
  • A・D=B 種類が同じなので種類株主総会では争えない

前回と同じ、地方の食品メーカーです。その後、普通株式を新しく発行して、個人のDさんも株主になりました。持株は100株です。ある日Dさんは、総会後の資料で知りました。会社は、配当を1株につき20円と決めました。それとは別に、創業家にだけ、功労金を支払うというのです。創業家の持株は、同じ普通株式で7,000株。功労金は1株につき50円相当、合わせて35万円です。Dさんには何もありません。種類株主総会では、止められません。この総会は、種類が違う株主どうしの歯止めでした。これは同じ種類の中の話で、その場がないのです。

泣き寝入りですか。違います。この功労金の約束は、株主平等の原則に反して無効です。種類が同じでも残る大原則が、ここで働きます。今日の1問は、何を平等にするのか、そしてどこまで破ってよいのか、です。先に答えると、平等にするのは人ではなく株式です。破れるのは、目的が合理的で、程度が相当なときだけです。

平等にするのは人ではなく株式

平等の2つの物差し(内容に応じて=種類が違えば扱いが違ってよい・優先株式は1株あたりの配当が違ってよい/数に応じて=持株数に比例・頭数ではない・議決権は1株1個〔308条1項〕・配当は株式数に応じて〔454条3項〕/数値例=1株20円の配当→創業家7,000株は14万円・Dさん100株は2,000円・どちらも1株あたり20円) 図:平等の2つの物差し

  • 内容に応じて=種類が違えば扱いが違ってよい・優先株式は1株あたりの配当が違ってよい
  • 数に応じて=持株数に比例・頭数ではない・議決権は1株1個〔308条1項〕・配当は株式数に応じて〔454条3項〕
  • 数値例=1株20円の配当→創業家7,000株は14万円・Dさん100株は2,000円・どちらも1株あたり20円

まず、その原則を定める条文から確かめます。

条文会社法109条1項

会社法第109条第1項 株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。

前に短く触れた原則の、中身です。株主を、株式の内容と数に応じて、平等に扱う。核心は、人ではなく株式を平等にする、という点です。1株あたりで見て、同じ内容の株式は同じに扱います。頭数ではなく、株式で見ます。「内容に応じて」と「数に応じて」に分けて見ます。

平等の2つの物差し(内容に応じて=種類が違えば扱いが違ってよい・優先株式は1株あたりの配当が違ってよい/数に応じて=持株数に比例・頭数ではない・議決権は1株1個〔308条1項〕・配当は株式数に応じて〔454条3項〕/数値例=1株20円の配当→創業家7,000株は14万円・Dさん100株は2,000円・どちらも1株あたり20円) 図:平等の2つの物差し

  • 内容に応じて=種類が違えば扱いが違ってよい・優先株式は1株あたりの配当が違ってよい
  • 数に応じて=持株数に比例・頭数ではない・議決権は1株1個〔308条1項〕・配当は株式数に応じて〔454条3項〕
  • 数値例=1株20円の配当→創業家7,000株は14万円・Dさん100株は2,000円・どちらも1株あたり20円

1つ目、内容に応じて。種類が違えば、扱いが違ってよいのです。優先株式の配当が普通株式と違っても、種類株式と平等原則は矛盾しません。内容が違うのですから。2つ目、数に応じて。持株が多い人ほど、多く受け取ります。議決権は1株に1個ですし、配当は株式数に応じて割り当てます。454条3項です。

条文会社法454条3項

会社法第454条第3項 第一項第二号に掲げる事項についての定めは、株主(当該株式会社及び前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて配当財産を割り当てることを内容とするものでなければならない。

括弧書きの、会社自身の株式と、配当を受けない種類は、除かれます。種類が複数あるときは、種類ごとの株式の数で割り当てます。食品メーカーで確かめます。配当は1株20円。創業家は7,000株で14万円。Dさんは100株で2,000円です。人は違っても、1株あたりは同額です。これが、人ではなく株式を平等にする、という意味です。名前は功労金でも、中身は、株主という地位に基づく、配当の上乗せです。同じ内容の株式なのに、1株あたりの受取りが違う。だから原則に反します。反した場合の効果は、無効です。最高裁も、特定の株主だけを有利にする約束を、無効と判断しました。事案は、無配の会社が、一般の株主には配当しない一方で、特定の大株主にだけ、報酬などの名目で、毎月、金員を支払うと約束したものです。無配になる直前の配当に見合う金額でした。

判例最高裁判所判決・昭和45年11月24日 民集24巻12号1963頁

特定の株主だけを有利にする約束 「株主中上告人のみを特別に有利に待遇し、利益を与えるものであるから、株主平等の原則に違反し、商法二九三条本文の規定の趣旨に徴して無効である。」

商法293条は、今の会社法454条3項に当たります。名目が何であっても、実質が配当の上乗せなら、無効です。特定の株主にお金を渡すのは、利益供与の問題にもなりませんか。なりえます。株主の権利の行使に関して財産上の利益を渡せば、120条の問題でもあります。どちらの問題でもありうる、という方向だけ覚えてください。利益供与の中身は、別の回で扱います。

なぜ要るのか・どこまで破ってよいのか

なぜ要るのか(昔の説明=正義・衡平の理念から当然=中身が曖昧/今日の説明=機能で言う→株式投資の収益の予測可能性を高める・投資を促す・多数派が持株比率以上に分配を受けられると他の株主は収益を予測できず投資できない・多数派による少数派の搾取を防ぐ) 図:なぜ要るのか

  • 昔の説明=正義・衡平の理念から当然=中身が曖昧
  • 今日の説明=機能で言う→株式投資の収益の予測可能性を高める・投資を促す・多数派が持株比率以上に分配を受けられると他の株主は収益を予測できず投資できない・多数派による少数派の搾取を防ぐ

昔は、正義や衡平の理念から、どの団体にも当然に認められる、と説明されました。ただ、これでは中身が曖昧です。今日は、機能で説明します。もし、多数派が、持株の割合以上に配当を受けられるなら、他の株主は、投資した株式から得られる収益を予測できません。予測できなければ、お金を出せません。株式の収益を予測できるようにして、株式への投資を促す。そして、多数派が少数派から吸い上げるのを防ぐ。それが趣旨です。答案の趣旨は、この言い方で書けます。差がついても、すべてが違反になるわけではありません。総会に来た株主に、社会的な儀礼の範囲で記念品を渡す程度でも違反になるなら、窮屈すぎます。そこで、今日の有力な見解は、合理的な理由に基づく一定の区別まで、すべて禁じるわけではない、と考えます。食品メーカーで、境界を引いてみます。総会に来た株主全員に、自社のお菓子を300円分渡す。出席を促す目的があり、金額は小さく、来た株主なら誰でも受け取れます。許されます。一方、同じ会社が、来た株主のうち、創業家にだけ、5万円分の商品券を渡す。目的を説明できず、程度も大きい。許されません。差を分けるのは、目的と程度です。

⭐ 論文で書く規範:平等原則違反の判断の手順 ① 109条1項の平等か。株式の内容と数に応じた扱いなら、問題はない。 ② 形式的に不平等でも、目的が合理的で、手段の程度が相当な範囲なら、許される。 ③ 許されないなら、その行為は無効。 (規範(①は条文どおり・②は有力説と最高裁の言い回しを重ねた答案の型・③は条文と判例))

答案では、この手順で書きます。①は、条文を読めば出てくる、条文どおりの話です。②は、条文に書かれていない物差しを、解釈で立てたものです。出どころは、今日の有力な見解と、最高裁の言い回しです。③は、先ほどの判例のとおり、無効です。ここで、言い回しを混ぜないでください。最高裁は、「衡平の理念に反し、相当性を欠くものでない限り」と言いました。目的の合理性から手段の相当性へ、と進む順番は、答案での整理です。立ち止まって確かめます。形式的に不平等な扱いが許されるのは、どんな目的で、どんな程度のときでしょうか? 最高裁の言い回しと、答案での書き方を分けて、言ってみてください。

では、この手順を、4つの場面に当てます。

優待・贈与・座席・差別的な割当て

株主優待の場面(A=飲食チェーン/B=1,000株以上の株主/A→B 年に食事券2枚〔2,000円相当〕/配当ではなく営業上の給付・持株数に厳密には比例しない/考え方=投資を促す合理的な目的・少額・制度が広く周知/結論=相当な範囲で違反しない) 図:株主優待の場面

  • A=飲食チェーン
  • B=1,000株以上の株主
  • A→B 年に食事券2枚〔2,000円相当〕
  • 配当ではなく営業上の給付・持株数に厳密には比例しない
  • 考え方=投資を促す合理的な目的・少額・制度が広く周知
  • 結論=相当な範囲で違反しない

1つ目、株主優待です。飲食チェーンが、1,000株以上の株主に、年に自社の食事券を2枚、合わせて2,000円相当配る、とします。これは配当ではなく、会社の営業上の給付として行われます。持株数に、厳密に比例もしません。多くの見解は、違反しないと考えます。決め手は3つ。株式への投資を促す、合理的な目的があること。金額が少額であること。制度の内容が、広く知らされていること。程度が軽微なら、相当な範囲です。

特定株主への金銭の場面(功労金=配当の上乗せ・1株あたり50円の差/配当は株主権の内容そのもの・454条3項が株式数に応じた割当てを要求/名目がなんであれ実質で見る/結論=無効) 図:特定株主への金銭の場面

  • 功労金=配当の上乗せ・1株あたり50円の差
  • 配当は株主権の内容そのもの・454条3項が株式数に応じた割当てを要求
  • 名目がなんであれ実質で見る
  • 結論=無効

2つ目は、特定の株主への金銭の贈与です。さきほどの功労金です。優待との違いは、配当が、株主権の内容そのものだという点です。454条3項が、数に応じた割当てを求めています。名目がなんであれ、実質が配当の上乗せなら、厳しく見て、無効です。

総会の座席の場面(A=電力会社/B=従業員株主〔受付開始前に入場・最前列から5列目までのほとんどと中央部付近で78席〕/C=早朝から並んだ株主〔前から6列目の中央部付近・議長に指名され動議を提出〕/会場の椅子は約230/合理的な理由なし→措置は適切でない/権利の行使は妨げられず法的利益の侵害なし→賠償なし) 図:総会の座席の場面

  • A=電力会社
  • B=従業員株主〔受付開始前に入場・最前列から5列目までのほとんどと中央部付近で78席〕
  • C=早朝から並んだ株主〔前から6列目の中央部付近・議長に指名され動議を提出〕
  • 会場の椅子は約230
  • 合理的な理由なし→措置は適切でない
  • 権利の行使は妨げられず法的利益の侵害なし→賠償なし

3つ目は、総会の座席です。電力会社が、定時株主総会で、反対派の株主に議事を妨げられるのをおそれました。そこで、従業員である株主を、受付開始前に入場させ、株主席の前方に座らせました。会場の椅子は約230。従業員株主は、最前列から5列目までのほとんどと、中央部付近で、合わせて78席でした。早朝から並んだ株主が、希望する席に座れず、精神的苦痛などの賠償を求めました。この株主は、前から6列目の中央部付近に座り、議長に指名されて、動議も出しています。

判例最高裁判所判決・平成8年11月12日 集民180号671頁

同じ総会に出る株主の取扱い 「株式会社は、同じ株主総会に出席する株主に対しては合理的な理由のない限り、同一の取扱いをすべきである。」

判決は、株主平等の原則という言葉は使っていません。合理的な理由のない限り、同一の取扱いをすべきだ、と言いました。平等の考え方が、総会での扱いにも及ぶ、と位置づけるのは自然ですが、この判決が平等原則違反を認めた、とは言えません。

判例最高裁判所判決・平成8年11月12日 集民180号671頁

措置は適切でなかったが法的利益の侵害はない 「そのおそれのあることをもって、被上告会社が従業員株主らを他の株主よりも先に会場に入場させて株主席の前方に着席させる措置を採ることの合理的な理由に当たるものと解することはできず、被上告会社の右措置は、適切なものではなかったといわざるを得ない。」 …… 「しかしながら、上告人A1は、希望する席に座る機会を失ったとはいえ、本件株主総会において、会場の中央部付近に着席した上、現に議長からの指名を受けて動議を提出しているのであって、具体的に株主の権利の行使を妨げられたということはできず、被上告会社の本件株主総会に関する措置によって上告人A1の法的利益が侵害されたということはできない。」

順に見ます。妨害されるおそれは、措置の合理的な理由に当たらない。措置は適切ではなかった、という判断です。この事案で会社は、従業員の株主を先に入場させて、前のほうに座らせていました。ここまでが、前半です。ただし、この株主は、中央付近に座り、動議も出せたので、権利の行使を妨げられたとは言えません。法的利益の侵害はなく、賠償は認められませんでした。決め手は、権利の行使が妨げられていない点です。この判決を、合理的な理由があったから違反しない、と読むのは誤りです。判旨は、合理的な理由を認めていません。「適切でなかった。ただし、賠償は認められない」と、判旨のとおりに言います。総会の議事運営の本体は、別の回で扱います。

差別的な新株予約権無償割当ての場面(A=買収者/B=会社/C=すべての株主/A=公開買付けを開始/B→C 新株予約権を無償で割当て・A側は行使できない/総会の特別決議・議決権総数の約83.4%が賛成/企業価値の毀損防止・衡平の理念に反せず相当性を欠かないなら許される) 図:差別的な新株予約権無償割当ての場面

  • A=買収者
  • B=会社
  • C=すべての株主
  • A=公開買付けを開始
  • B→C 新株予約権を無償で割当て・A側は行使できない
  • 総会の特別決議・議決権総数の約83.4%が賛成
  • 企業価値の毀損防止・衡平の理念に反せず相当性を欠かないなら許される

4つ目は、差別的な新株予約権の無償割当てです。名前と結論だけ見ます。新株予約権は、決められた値段を払えば会社から株式を受け取れる権利です。買収者が公開買付け、つまり、値段と期間を示して株主から広く株式を買い集める申込みを始めたのに対し、会社が、すべての株主に新株予約権を無償で割り当て、ただし買収者側は行使できない、という対応を、総会の特別決議で決めました。買収者側の新株予約権は、会社がお金を払って取得する、という手当ても付けていました。買収者は、株主平等の原則に反するとして、差止めを求めました。

判例最高裁判所決定・平成19年8月7日 民集61巻5号2215頁

新株予約権無償割当てにも及ぶ趣旨 「新株予約権無償割当てが新株予約権者の差別的な取扱いを内容とするものであっても,これは株式の内容等に直接関係するものではないから,直ちに株主平等の原則に反するということはできない。しかし,株主は,株主としての資格に基づいて新株予約権の割当てを受けるところ,法278条2項は,株主に割り当てる新株予約権の内容及び数又はその算定方法についての定めは,株主の有する株式の数に応じて新株予約権を割り当てることを内容とするものでなければならないと規定するなど,株主に割り当てる新株予約権の内容が同一であることを前提としているものと解されるのであって,法109条1項に定める株主平等の原則の趣旨は,新株予約権無償割当ての場合についても及ぶというべきである。」

判例最高裁判所決定・平成19年8月7日 民集61巻5号2215頁

差別的に扱っても許される場合 「株主平等の原則は,個々の株主の利益を保護するため,会社に対し,株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱うことを義務付けるものであるが,個々の株主の利益は,一般的には,会社の存立,発展なしには考えられないものであるから,特定の株主による経営支配権の取得に伴い,会社の存立,発展が阻害されるおそれが生ずるなど,会社の企業価値がき損され,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるような場合には,その防止のために当該株主を差別的に取り扱ったとしても,当該取扱いが衡平の理念に反し,相当性を欠くものでない限り,これを直ちに同原則の趣旨に反するものということはできない。」

前の引用は、新株予約権の割当ては株式の内容そのものの話ではないので、直ちに原則違反とは言えない、それでも109条1項の趣旨は及ぶ、という点です。あとの引用は、企業価値の毀損を防ぐために、特定の株主を差別的に扱っても、衡平の理念に反せず、相当性を欠かなければ、直ちに原則の趣旨に反するとは言えない、という点です。株主一人ひとりの利益も、会社が存続し、発展してこそ守られるからです。この事件では、総会が、買収者が支配すれば会社の存立や発展が妨げられるおそれがある、と判断しました。企業価値が害されるかどうかは、会社の利益が帰属する株主自身が、最終的に判断すべきことです。その総会で、議決権総数の約83.4%が賛成し、判断に重大な瑕疵もなかった。だから、防ぐ目的は認められます。そのうえ、買収者側も、行使できない代わりにお金を受け取ります。扱いは相当性を欠かないとされ、差止めは認められませんでした。防衛策の適法性の本体は、別の回で扱います。ここでは、原則が破れる線の例として押さえてください。

目的と程度で選別するからです。優待は目的が合理的で軽微。功労金は配当そのものの上乗せで、無効。座席は、合理的な理由がなく、適切でないが賠償なし。無償割当ては、株主自身が企業価値を守ると判断した目的があり、買収者にもお金が渡るので相当とされ、許されました。

公開会社でない会社の例外

例外の入口(原則=109条1項は内容と数に応じた平等/例外=109条2項・公開会社でない株式会社だけ・剰余金の配当/残余財産の分配/株主総会の議決権の3つについて株主ごとに異なる取扱いを定款で定められる・通称は属人的な定め) 図:例外の入口

  • 原則=109条1項は内容と数に応じた平等
  • 例外=109条2項・公開会社でない株式会社だけ・剰余金の配当
  • 残余財産の分配
  • 株主総会の議決権の3つについて株主ごとに異なる取扱いを定款で定められる・通称は属人的な定め

ここまでが原則でした。最後に、法律が明文で認めた例外です。対象は、前に見た、株主の権利を並べた105条1項の3つです。

条文会社法105条1項

会社法第105条第1項 株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。 一 剰余金の配当を受ける権利 二 残余財産の分配を受ける権利 三 株主総会における議決権

条文会社法109条2項・3項

会社法第109条第2項・第3項 2 前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。 3 前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の株主が有する株式を同項の権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして、この編及び第五編の規定を適用する。

2項です。公開会社でない株式会社は、剰余金の配当、残余財産の分配、株主総会の議決権の3つについて、株主ごとに異なる取扱いを、定款で定められます。通称は属人的な定めで、条文の言葉ではありません。種類株式は、株式の内容の違いです。誰が持っても同じ内容。2項は、人の違いです。その株主が持つから特別、という定めです。食品メーカーに、事業承継の場面を足します。ここでは仮に、全部の株式に譲渡制限を付けた、公開会社でない会社だとします。創業者の長女に議決権を集めたい。方法は2つあります。1つ目は、前に見た種類株式で、ほかの相続人の株式を議決権のない種類にして、議決権を長女に集める。2つ目は、2項で、長女個人に議決権の定めを置く。たとえば、長女の持つ株式は、1株につき10個の議決権です。違いは、種類株式は株式に付き、定めは人に付くことです。長女が株式を手放せば、人に付いた定めは、長女の手を離れた株式には及びません。それから、複数議決権は、前に見たとおり、種類株式ではできませんでした。2項の定めでは可能です。ただし、公開会社でない会社に限ります。

どうして、公開会社でない会社だけなんですか。株主の個性が重く、その株主がいなければ事業が成り立たない会社があるからです。株主どうしの関係が密接な会社では、より広い定款自治を認めます。

属人的な定めの比較(行=種類株式/109条2項/列=何に付くか・決め方・例/種類株式=株式の内容・誰が持っても同じ・ほかの株式を議決権のない種類にして集める/109条2項=株主個人・その人が持つから特別・長女の株式は1株10個の議決権/置く手続=定款変更・特殊の決議〔309条4項〕・総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上) 図:属人的な定めの比較

  • 行=種類株式
  • 109条2項
  • 列=何に付くか・決め方・例
  • 種類株式=株式の内容・誰が持っても同じ・ほかの株式を議決権のない種類にして集める
  • 109条2項=株主個人・その人が持つから特別・長女の株式は1株10個の議決権
  • 置く手続=定款変更・特殊の決議〔309条4項〕・総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上

置くには、定款の変更が要ります。決議は、309条4項です。

条文会社法309条4項

会社法第309条第4項 前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

総株主の半数以上で、総株主の議決権の4分の3以上。前に見た特殊の決議、309条3項は、議決権を行使できる株主の半数以上で、その議決権の3分の2以上でした。4項も、頭数の要件が付く仲間で、特殊の決議と呼ばれます。ただ、分母は、出席者ではなく、条文の言葉どおり総株主で、議決権は4分の3以上。3項より、さらに重いのです。それでも、株主全員の同意までは求めません。ある株主が人として特別扱いを受ける定めは、他の株主の権利に響くので、重くしているのです。括弧書きの、廃止する場合は除く、とは、この定めをやめる変更は、特別決議で足りる、ということです。ここで、種類株主総会を思い出してください。種類株主総会の構成員は誰で、議決権制限株式の株主は、その総会で議決権を持つでしょうか?

その種類の株主だけで、議決権制限株式の株主も、自分の種類の総会では、完全な議決権を持ちます。109条3項は、この定めのある株主の株式を、その権利について内容の異なる種類の株式とみなします。つまり、その株主の株式も、1つの種類として扱われます。すると、前回の322条1項が当てはまります。たとえば定款の変更が、その株主に損害を及ぼすおそれがあれば、その株主だけの種類株主総会の決議が要ります。ただし、この4項の決議を経ていても、特別扱いの目的が不当だったり、手段が相当性を欠いたりすれば、定款変更が無効とされることがあります。特定の株主を不利に扱う定款変更を、無効とした裁判例もあります。ここでも、目的と相当性の見方が出てきます。

今日の地図(保存版)

まとめ(軸=人ではなく株式の平等/109条1項=内容と数に応じて・1株あたりで見る/違反=無効/趣旨=収益の予測可能性と投資促進・少数派の保護/限界=目的が合理的で程度が相当なら許される(優待・無償割当て)・座席は合理的な理由なし=適切でないが賠償なし/例外=109条2項・公開会社でない会社・配当/残余財産/議決権・定款変更は特殊の決議〔309条4項〕・109条3項で種類株式とみなす) 図:まとめ

  • 軸=人ではなく株式の平等
  • 109条1項=内容と数に応じて・1株あたりで見る
  • 違反=無効
  • 趣旨=収益の予測可能性と投資促進・少数派の保護
  • 限界=目的が合理的で程度が相当なら許される(優待・無償割当て)・座席は合理的な理由なし=適切でないが賠償なし
  • 例外=109条2項・公開会社でない会社・配当
  • 残余財産
  • 議決権・定款変更は特殊の決議〔309条4項〕・109条3項で種類株式とみなす

まとめです。平等にするのは、人ではなく株式です。同じ内容の株式は、1株あたり同じに扱う。種類が違えば、扱いが違ってよく、数が違えば、比例して違ってよいのです。短答では、109条1項の、内容と数に応じて、という文言。2項の対象は、剰余金の配当、残余財産の分配、議決権の3つで、公開会社でない会社だけであること。定款の変更は309条4項、総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上。3項で、種類株式とみなされること。論文では、株主平等の原則に反する主張をする事例で、順番に書きます。まず、内容と数に応じた扱いかを見る。次に、形式的に不平等なら、目的の合理性と手段の相当性を見る。反するなら、無効です。ここは論文で論点になりうる部分です。

功労金は、名目が何であれ、配当の上乗せです。1株50円の差は、同じ普通株式の中で、合理的な目的も相当な程度も見当たりません。平等原則に反して、無効です。Dさんは、功労金の約束が無効だと主張できます。種類株主総会がなくても、この大原則が、同じ種類の株主を守ります。

参照条文

  • 会社法109条1項
  • 会社法454条3項
  • 会社法105条1項
  • 会社法109条2項・3項
  • 会社法309条4項

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