客観主義と学派の対立
同じ事件をどこから見るかで立場が分かれる理由を扱う回。客観主義と主観主義の対立を旧派・新派の系図として整理し、通説が客観主義を基本とする理由まで押さえる。
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第1章 刑法の基礎 ④/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
1. 対立の正体
- 設例:AがかっとなってBを殴り、Bが軽傷。
- 客観主義=外に現れた「殴った行為とケガという結果」を見る。
- 主観主義=Aという人の「また殴りかねない危険な性格」を見る。
- → 同じ事件でも見ている場所が違う。この1本の問いから立場の全部が枝分かれする。
2. 旧派(古典学派)=客観主義のルート
- 人間観:非決定論/意思自由論(最後は自分で選べる)。
- 犯罪の本質:客観主義(選べたのに選んだ行為と結果を見る)。
- 刑罰:応報(悪事への報い=犯罪と均衡・重すぎる刑は許されない)+一般予防(罰して社会の一般人を威嚇)。
- 責任の根拠:道義的責任論(自由意思で悪を選んだことへの道義的非難)。
3. 新派(近代学派)=主観主義のルート
- 人間観:決定論(行動は素質・環境で必然的に決まる)。
- 犯罪の本質:主観主義(本体は行為者の反社会的な危険性/行為は氷山の一角)。
- 刑罰:特別予防(危険なその人を改善・教育し隔離=教育刑)。
- 責任の根拠:社会的責任論(決定論前提=自由意思では説明できず、危険な者に社会が防衛のため負わせる地位)。
4. 対比表(系図)
| 軸 | 旧派=客観主義 | 新派=主観主義 |
|---|---|---|
| 人間観 | 非決定論(自由意思あり) | 決定論(素質・環境で決まる) |
| 犯罪の本質 | 客観主義(行為と結果を見る) | 主観主義(行為者の危険性を見る) |
| 刑罰の意味 | 応報+一般予防(威嚇) | 特別予防(改善・教育・隔離) |
| 責任の根拠 | 道義的責任論(自由意思への非難) | 社会的責任論(社会防衛) |
- ※ 人間観(選べる/決まっている)という1本の根から、下が全部反対に流れる。
5. なぜ純粋な新派は退いたか
- 主観主義を徹底すると、「危険な性格だ」というだけでまだ何もしていない人を罰しかねない。
- これは #3 の自由保障機能(やっていないこと・書いていないことは罰しない)と真っ向から衝突する。
- → この一点で純粋な新派は支持を失った。
6. 通説=相対的意思自由論(★定義・答案で使う)
- 相対的意思自由論:人は素質・環境による制約を受けつつも、最後は主体的に自己の行動を決定する自由意思を有すると考える立場。
- → 犯罪者を特別視する主観主義は採れない=犯罪の本質は外に現れた行為と結果=客観主義が基本。
- 刑罰理論は折衷=応報を基礎に、一般予防に加えて特別予防的配慮(改善・教育)も行う。
7. 論争は終わっていない(送り)
- 客観主義の中でも、違法性の本質を行為無価値(行為を重く見る)/結果無価値(結果を重く見る)でなお割れる → #20 違法性総論で本格的に扱う。
送り先
- 罪刑法定主義(客観主義・自由保障を制度で支える大原則)→ #5
- 行為無価値/結果無価値 → #20