刑法 ゼロから刑法#5

罪刑法定主義

「法律なければ犯罪なし・刑罰なし」という罪刑法定主義を扱う回。憲法上の根拠と2本の根(自由主義・民主主義)、そこから枝分かれする6つの派生原則を系図で理解する。

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第1章 刑法の基礎 ⑤/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

1. 意義(★定義・答案の出発点)

  • 罪刑法定主義:いかなる行為が犯罪となり、いかなる刑罰が科せられるかを、あらかじめ成文の法律で規定しておかなければならない、という刑法の基本原則。
  • 標語=「法律なければ犯罪なし、法律なければ刑罰なし」(フォイエルバッハの定式)。
  • 憲法上の根拠=憲法31条(適正手続)。さらに遡及禁止=39条、委任なき政令罰則の禁止=73条6号但書。

2. 根拠(なぜここまで国家を縛るのか=2本)

  • 自由主義=市民が「これをやったら罰せられる/これは大丈夫」を前もって予測できるように(=#3 の自由保障機能。書いてないこと・やってないことは罰しない)。
  • 民主主義=罪と罰という重大事は、国民の代表=議会(国会)が法律で定める(行政が勝手に作ってはいけない)。
  • → 6つの派生原則は、この2本の根から枝分かれする。

3. 派生原則(6つ)

  1. 法律主義(慣習刑法の排除)〔根=民主主義〕:罪と罰は成文の「法律」で。慣習・道徳だけで罰せない。例外的に、条例(地方議会)や法律の委任がある政令の罰則は可。委任のない政令の罰則は憲法73条6号但書に違反
  2. 事後法(遡及処罰)の禁止〔根=自由主義〕:行為時に適法だったものを後法でさかのぼって罰しない。根拠=憲法39条前段。ただし刑が軽くなる改正は遡及可(刑法6条=犯人に不利でないから)。時間的適用の中身は #6 へ。
  3. 類推解釈の禁止〔根=自由主義〕:禁止は被告人に不利な類推だけ。拡張解釈(言葉の可能な意味の範囲内)・有利な類推は可。
    • 線引き:「車両通行禁止」に原付を含める=範囲内=拡張解釈(可)/馬・手押し車まで含める=範囲を超える=類推(不利なら不可)。
  4. 明確性の原則〔根=自由主義〕:何が罰せられるか読めない不明確な刑罰法規は無効。
  5. 実体的適正〔根=自由+中身の正しさ〕:形式(事前に法律で)だけでなく中身も適正へ。罪刑の均衡(重すぎる刑は不可)/残虐な刑の禁止=憲法36条
  6. 絶対的不定期刑の禁止〔根=自由主義〕:「懲役に処す」と刑期を全く定めない宣告は×。上限・下限を定める相対的不定期刑(例:3年以上5年以下)は可。

4. 重要判例|明確性の判断基準

  • 徳島市公安条例事件(最大判昭50・9・10/大法廷・判決)
  • 規範:刑罰法規が不明確ゆえ憲法31条に違反するかは、「通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるかどうか」によって決する。
  • 趣旨:完璧な明確さは不要(要求すると法律が書けない)。一般人に読めれば合憲。

5. 条文(その場で全文)

  • 憲法31条:何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
  • 憲法39条(前段=遡及処罰の禁止):何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。
  • 刑法6条:犯罪後の法律によつて刑の変更があつたときは、その軽いものによる。
  • 憲法73条6号但書:政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。
  • 憲法36条:公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

今日の地図(保存版)

  • 根① 自由主義(予測可能性)→ ②遡及禁止・③類推禁止・④明確性・⑥絶対的不定期刑の禁止
  • 根② 民主主義(議会が決める)→ ①法律主義(慣習刑法の排除)
  • 自由+中身の正しさ → ⑤実体的適正(罪刑の均衡・残虐刑の禁止)
  • → 暗記する6行ではなく、2本の根から枝が伸びる1本の木。

送り先

  • 刑の変更・時間的適用の中身(行為時法の原則・刑法6条の適用範囲・刑の廃止=刑訴337②)→ #6 刑法の適用範囲
  • 違法性の意識(法律の不知=刑法38条3項)→ #27
  • #3 自由保障機能の回収(自由主義=予測可能性の根拠として接続)

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