刑法の適用範囲(後編)
問い:日本の外で犯された罪に、日本の刑法はどの条文で届くか。日本の中でも責任を問えない・裁けない人はいるか。外国で裁かれた人を、日本でまた処罰できるか。
骨組み
- 1国外犯の全体像:国内の罪は(すべての者・属地主義)、国外の日本船舶・日本航空機内も同じ()。国外の罪は〜に当たる罪だけ=どれにも当たらなければ適用されない
- 2すべての者の国外犯(・保護主義):犯人の国籍を問わない。内乱・外患誘致等・通貨偽造・公文書偽造等・有価証券偽造・支払用カード電磁的記録・御璽等の偽造
- 3国民の国外犯(・属人主義):日本国民が犯した列挙の罪。過失犯と単純横領()は入っていない(業務上横領は入る)
- 4国民以外の者の国外犯(・消極的属人主義):日本国民に対して、日本国民以外の者が犯した殺人・傷害・強盗など。窃盗・詐欺・暴行は入っていない
- 5公務員の国外犯(・保護主義の一種):日本国の公務員(国籍は問わない)の収賄・公務員職権濫用・虚偽公文書作成等
- 6条約による国外犯(・世界主義):〜のほか、第二編の罪で、条約により国外で犯しても罰すべきとされるもの。すべての者
- 7議員の免責特権():議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない(在任中に限る、という定めは無い)
- 8裁判権・訴追が及ばない人:外交官=接受国の刑事裁判権から免除(条約)/摂政=在任中訴追されない(皇室典範21条)/国務大臣=在任中は内閣総理大臣の同意が要る()/天皇=明文なし(判例・平元は民事裁判権が及ばないとした)
- 9外国判決の効力():外国で確定裁判を受けても更に処罰することを妨げない/外国で刑の執行を受けたときは刑の執行を減軽し、又は免除する(判例・昭28は占領軍軍事裁判所の裁判を経た事実の事案で、が禁じるのはわが国の裁判権による二重の責任追及とした。外国の裁判所の判決やただし書について判断した判例ではない)
色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文、丸い札(出題)は押すと過去問の肢と正答が出ます。国外犯は「誰が・誰に対して・どの罪を」で条文が決まり、列挙に無い罪は拾えない。
1国外犯の全体像:列挙された罪だけ条文
- :この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。→ 国内なら、犯人・被害者の国籍も罪の種類も問わない(属地主義)。
- :日本国外にある日本船舶又は日本航空機内で罪を犯した者も、1項と同様(旗国主義)。
- 国外で犯された罪(日本船舶・日本航空機内を除く=)は、・・・の列挙された罪と、(条約で定まる第二編の罪)についてだけ適用される。どれにも当たらなければ、日本の刑法は適用されない。
- 国外犯の4つの主義は、何に着目するかで分かれる:犯人の国籍(属人主義)/被害者の国籍(消極的属人主義)/守る利益=国益(保護主義)/国際協同(世界主義)。
| 条文 | 主義 | 着目点 | 誰が・誰に |
|---|---|---|---|
| 属地主義 | 行為地(国内) | すべての者(国内の罪) | |
| 旗国主義 | 国外の日本船舶・日本航空機内 | その中で罪を犯した者 | |
| 保護主義 | 国益(通貨・公文書等) | すべての者 | |
| 属人主義 | 犯人の国籍 | 日本国民が | |
| 消極的属人主義 | 被害者の国籍 | 日本国民以外の者が、日本国民に対して | |
| 保護主義の一種 | 公務員の職務(身分) | 日本国の公務員が(国籍を問わない) | |
| 世界主義 | 国際協同(条約) | すべての者 |
外国人が国外で日本人をだまして代金をとった(詐欺)→ 犯人は日本国民でない(×)/詐欺はに無い(×)/に無い(×)/公務員でない(×)/条約なし(×)→ 不適用。
- 「国外で犯された罪でも、4つの主義のどれかで必ず日本の刑法が適用される」(列挙に無い罪は拾えない)
2すべての者の国外犯:条文
- 柱書:この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。→ 犯人の国籍を問わない。
- 列挙(1号は削除):内乱等(77〜79条)/外患誘致・外患援助等(81・82・87・88条)/通貨偽造等(148条と未遂)/詔書・公文書偽造等(154・155・157・158条、公務所等の電磁的記録に係る161条の2)/有価証券偽造等(162・163条)/支払用カード電磁的記録(163条の2〜163条の5)/御璽・公印・公記号偽造等(164〜166条)。
- 日本国の国益を害する一定の重大な罪だから、国籍を問わず適用する=保護主義。誰が偽造しても、日本の通貨制度への信用が傷つくのは同じ。
- 「国そのものへの攻撃」だけではない:有価証券偽造(6号)・支払用カード(7号)も入る。
外国人が国外で日本の役所名義の証明書(公文書)を偽造した → で適用。偽造したのが日本の会社の私文書なら、に無く、犯人が日本国民でないのでにも当たらない → 不適用(私文書偽造はだけ)。
- 「は、日本国民が国外で犯した場合に限って適用される」(すべての者)
- 「が列挙するのは内乱・外患のような国家そのものへの攻撃だけで、有価証券偽造は入らない」
3国民の国外犯:条文
- 柱書:この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。→ 主として犯人の国籍に着目(属人主義)。
- 列挙(17号):放火・浸害・私文書偽造等・私印偽造・不同意わいせつ・不同意性交等・重婚・贈賄・殺人・傷害・傷害致死・業務上堕胎等・保護責任者遺棄等・逮捕監禁・略取誘拐等・名誉毀損・窃盗・強盗等・詐欺・背任・恐喝等・業務上横領・盗品譲受け等。
- 列挙を全部覚える必要はないが、過失犯(209〜211条)と単純横領()が入っていないことは覚える。ほかに暴行()・侮辱()・収賄()も入っていない。
- 「法定刑の重い罪だけ」では覚えられない:名誉毀損()は入り、単純横領()は入らない。
日本人の会社員が海外出張中、友人から預かったカメラを売り払った(単純横領)→ に無いので不適用。勤務先の売上金を着服した(業務上横領・)ならで適用。
日本人が海外でスキー中の不注意で他人に衝突し死亡させた(過失致死)→ 不適用。わざと殴ってけがをさせた(傷害)ならで適用。
- 「日本国民が国外で単純横領をした場合も、により日本の刑法が適用される」
- 「日本国民が国外で過失により人を死亡させた場合も、により適用される」
- 「は法定刑の重い罪だけを列挙しているから、名誉毀損は入っていない」(名誉毀損は13号で入る)
4国民以外の者の国外犯:条文
- 柱書:この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。→ 主として被害者の国籍に着目(消極的属人主義)。
- 見出し「国民以外の者の国外犯」は犯人の側の呼び方、主義の名前は被害者の側の着目点=向きが逆に見える。柱書の「日本国民に対して」が被害者。
- 列挙(6号):不同意わいせつ・不同意性交等/殺人()と未遂/傷害・傷害致死/逮捕監禁/略取誘拐等/強盗等。
- 窃盗()・詐欺()・暴行()・名誉毀損()は入っていない=被害者が日本国民でも、罪名で拾えないことがある。
- 被害者が日本国民でなければ、の対象外。
| 国外で日本国民の財布をすり取った(窃盗) | 適用の条文 |
|---|---|
| 犯人が日本国民 | で適用 |
| 犯人が日本国民以外 | に窃盗が無い=不適用 |
外国人が国外で日本人旅行者を突き飛ばしたが、けがはなかった(暴行)→ 不適用。転んで骨折した(傷害)なら・3号で適用。
日本国内に住むA国民が、B国から毒入りの酒を送り、B国内で日本国民と、一緒に飲んだB国民が死亡した → 日本国民に対する殺人はで適用。B国民に対する殺人は、被害者が日本国民でないのででは拾えない。犯人が日本国内に住んでいても、日本国民でなければにも当たらない。
出題日本国民でない甲が国外で日本国民Aを殺害した場合、甲に199条が適用されることはない(×)
出題日本国内に住むA国民甲がB国から毒入酒を発送し、B国内に住む日本国民V1がB国内で飲んで死亡 → V1に対する行為に刑法(殺人罪)が適用される(○)
出題同じ事例で、一緒に飲んだB国民V4がB国内で死亡 → V4に対する行為に刑法(殺人罪)が適用される(×)
- 「日本国民でない者が国外で日本国民を殺害しても、日本の刑法は適用されない」(・2号で適用される)
- 「日本国民でない者が国外で外国人を殺害した場合も、により適用される」(被害者が日本国民でなければ対象外。同じ機会に日本国民も殺されていても、外国人に対する殺人は別)
- 「は『国民以外の者』の国外犯だから、被害者が日本国民以外の者である場合を拾う」
- 「外国人が国外で日本国民から窃盗をした場合、により適用される」(窃盗は列挙に無い)
5公務員の国外犯:条文
- 柱書:この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国の公務員に適用する。
- 列挙(3号):看守者等による逃走援助(101条)と未遂/虚偽公文書作成等(156条)/公務員職権濫用(193条)・特別公務員暴行陵虐(195条2項)・収賄等(197条〜197条の4)・195条2項に係る特別公務員職権濫用等致死傷(196条)。
- 日本国の公務員であれば国籍は問わない=属人主義ではなく、保護主義の一種(公務員の職務に対する信頼は、勤務地が国外でも守る)。と同じく守る利益に着目するが、着目するのは「日本国の公務員」という身分。
日本の国の職員として採用されている外国籍の人が、海外出張先で職務に関して賄賂を受け取った → は国籍を問わないので適用。
在外の日本の公務員に賄賂を渡したのが日本人なら、贈賄はで適用。渡したのが外国人なら、贈賄はにもにも無い → 受け取った公務員()だけが対象。
- 「は、日本国籍を有する公務員にだけ適用される」(国籍は問わない)
- 「は、犯人の国籍に着目した属人主義の規定である」(保護主義の一種)
6条約による国外犯:条文
- 条文:第二条から前条までに規定するもののほか、この法律は、日本国外において、第二編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する。
- 要件は2つ:①刑法第二編の罪 ②条約が国外で犯した場合も罰すべきとしている。〜で拾える罪のほかに、これも適用対象に加える(「のほか」)。犯人の国籍は問わない(世界主義=国際社会全体で協調して処罰する発想)。
- 「第二編の罪」=刑法典の「第二編 罪」(第一編は「総則」)に定められた罪。特別法の罪は入らない。
- 条約を結んだだけでは足りない:人を処罰するには国内の法律に定めが要る(罪刑法定主義)=がその受け皿。
- 条文に罪名を並べるのではなく、条約で定まる罪に限る=世界中の犯罪を無制限に拾うわけではない。
- 第二編の罪に限る:特別法の罪の国外犯は、その法律自身が定める(例:航空機の強取等の処罰に関する法律5条「刑法第二条の例に従う」・ただし書)。
- の「条約」の例:国際的に保護される者(第三国の外交官も含む)への攻撃を締約国が処罰する、という条約(国際的に保護される者に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約)。締約国に課すのは、容疑者が領域内にいて引き渡さない場合にも裁判権を設定する義務と、引き渡さないなら訴追のため事件を自国の権限ある当局に付託する義務。
- 「付託する」=事件を自国の権限ある当局に回し、訴追するかどうかの判断に乗せること。必ず起訴する・有罪にする義務ではない。
外国人が赴任先の国で第三国の外交官を襲撃して負傷させ、その後日本に入国した → 傷害はに無い/犯人は日本国民でない(×)/被害者が日本国民でない(×)/日本の公務員でない(×)→ 傷害()は第二編の罪で条約が処罰を求める → で適用。被害者が日本の外交官なら、日本国民に対する傷害なので・3号が先に当たる。「その後日本に入国した」はの文言にある要件ではない(条約が裁判権の設定を求めるのが「容疑者が領域内にいて引き渡さない場合」)。
- 「日本が条約を締結すれば、国内の法律に定めが無くても、その条約に基づいて処罰できる」
- 「は、条約が処罰を求める罪であれば、刑法典以外の法律の罪にも適用される」(第二編の罪に限る)
- 「は、日本国民が国外で犯した罪だけを対象とする」(すべての者)
7議員の免責特権:条文
- 前提:国内で犯された罪には、人を問わず適用する(「すべての者」)。人による制約は刑法の外にある(憲法・皇室典範・条約。天皇は明文なし)。多くは刑法の適用ではなく、責任・訴追・裁判権の問題。
- 4つの型を分ける:「刑法が適用されない」=そもそも日本の刑法が届かない(国外犯の列挙に無い罪)/「裁判権が及ばない」=日本の裁判所が裁けない(外交官)/「訴追されない」=検察官が起訴できない(摂政。国務大臣は内閣総理大臣の同意が要る)/「院外で責任を問はれない」=議院での演説・討論・表決について、院の外で責任を追及されない(議員)。
- :両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
- 対象は「演説、討論又は表決」=院内での行為なら何でも、とは書かれていない。
- 「在任中」という限定が無い=議員を辞めた後も、その演説・討論・表決について院外で責任を問われない。在任中に限った定めの摂政(訴追されない)・国務大臣(内閣総理大臣の同意が要る)(項目8)とは型が違う。
- 理由:院内の討論が、あとで院外で責任を問われる心配で萎縮しては、議会が働けなくなるから。
- 「議員が議院で行った演説について院外で責任を問われないのは在任中だけで、辞職後は訴追できる」
- 「議員は、院内での行為であれば、どんな行為についても院外で責任を問われない」(条文の対象は演説、討論又は表決)
8裁判権・訴追が及ばない人条文判例学説
- 外交官:外交関係に関するウィーン条約31条1項により、接受国(滞在先の国)の刑事裁判権から免除される。同条4項=派遣国の裁判権からは免除されない(本国で裁かれることはありうる)。→ 日本の刑法が消えるのではなく、日本の裁判権が及ばない。理由=使節の職務が滞在先の国の圧力で止められないようにするため。
- 摂政:皇室典範21条「摂政は、その在任中、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。」→ 退任後は訴追できる。摂政は、天皇が成年に達しないときや、重患・重大な事故で国事行為をできないときに置かれる(皇室典範16条)。
- 国務大臣:「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない。」→ 同意があれば在任中も訴追できる/同意が無くても退任後は訴追できる(訴追の権利は害されない)。
- 天皇:刑事責任について明文の規定は無い。学説では、訴追されないと説明され、理由づけは、象徴という地位と刑事訴追が相容れないとする説明と、摂政(在任中は訴追されない)との均衡から考える説明に分かれる。
- 天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であることにかんがみ、天皇には民事裁判権が及ばないものと解するのが相当である。
- ↑ 最判平元・11・20 は民事の判例(天皇を被告とする訴えの訴状は却下すべき)。刑事について判断した判例ではない。
| 誰が | 何が及ばないか | 期間 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 国会議員 | 議院での演説・討論・表決について院外での責任 | 限定なし | 憲法 |
| 外交官 | 接受国の刑事裁判権(派遣国の裁判権は及ぶ) | — | ウィーン条約31条 |
| 摂政 | 訴追(訴追の権利は害されない) | 在任中 | 皇室典範21条 |
| 国務大臣 | 内閣総理大臣の同意のない訴追(同意があれば訴追できる・退任後は訴追できる) | 在任中 | 憲法 |
| 天皇 | 刑事は明文なし(学説は訴追されないと説明)。民事裁判権は及ばない(判例・平元) | — | 最判平元・11・20(民事) |
摂政は在任中は訴追されないが、退任後は訴追できる。国会議員の院内の演説は、辞めた後も院外で責任を問われない(項目7)。
- 「外交官には、日本の刑法が適用されない」(日本の刑事裁判権から免除される=裁判権の問題)
- 「外交官は、派遣国でも刑事裁判権から免除される」(免除されるのは接受国の裁判権)
- 「摂政は、退任後も在任中の行為について訴追されない」(在任中だけ・訴追の権利は害されない)
- 「最高裁は、天皇には刑事裁判権が及ばないとした」(判例は民事裁判権)
9外国判決の効力:条文判例
- 本文:外国において確定裁判を受けた者であっても、同一の行為について更に処罰することを妨げない。→ 条文は「確定裁判」とだけ言い、有罪・無罪を分けていない=外国で無罪が確定していても、日本で処罰することは妨げられない。
- ただし書:犯人が既に外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除する。→ 「する」=必要的。減軽・免除されるのは刑の執行で、処罰そのものではない=日本でも有罪にして刑を言い渡すが、外国で執行を受けた分を考えて、日本で実際に執行する刑を減らす(減軽)か、執行しない(免除)。
- 外国で刑の執行を受けていなければ、ただし書は働かない。
- 趣旨:国外の罪は行為地国の刑法も受けるのが通常で、1つの犯罪を二重に処罰するのは妥当でない → 外国で執行を受けた分を、日本での刑の執行で調整する。
- の文言は「外国において確定裁判を受けた者」で、罪を犯した場所を問わない=国内で犯した罪について外国で確定裁判を受けた場合も文言に入る(国外犯に限っていない)。
- 判例(最大判昭28・7・22):日本への密入国の事実で日本の裁判所に処罰された被告人について、その事実がすでに占領軍の軍事裁判所の裁判を経ていたことから、に反するかが争われた(軍事裁判所で同じ不法入国の事実について有罪とされ服役した、という事案の詳細は少数意見が述べている)。
- 後段:「同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。」
- 憲法三九条は、同一の犯罪につき、わが国の憲法による裁判権によつて二重に刑事上の責任を問うことを禁じた趣旨と解すべきである。
- すなわち、同一事実についての前の裁判と後の裁判とが、共にわが国の裁判権にもとずくものである場合にはじめて、憲法三九条の定める二重問責の禁止にふれるものといわなければならない。
- 従つて、すでに占領軍軍事裁判所の裁判を経た事実について、重ねてわが裁判所で処罰をすることがあつても、憲法三九条に違反するものとはいえないのである。
- 事案は外国の裁判所ではなく占領軍の軍事裁判所。多数意見はただし書について判断していない=この判例から言えるのは「が禁じるのはわが国の裁判権による二重の責任追及」という所まで。仮に少数意見のいう法令違反があっても、未決勾留日数の通算で執行すべき残刑が無いので、職権で破棄しなければ著しく正義に反するとは認められない、とだけ述べた。
- 軍事裁判所をの外国の裁判所にあたるとしたのは4裁判官の少数意見(補足意見もこれを前提にしている)。ただし書による刑の執行の減軽・免除を言い渡さなかった原判決を違法としたのは、その少数意見と2裁判官の補足意見(補足意見も、残刑が無いので破棄までは要らないとして、結論は多数意見と同じ)。
外国で拘禁刑の有罪判決が確定した日本人が、収監前に日本へ逃げ帰った → 日本で同じ行為を処罰でき、外国で執行を受けていないのでただし書の減軽・免除は無い。外国で刑の一部を服役してから送還されたなら、日本での刑の執行を減軽し、又は免除する。
- 「外国で確定裁判を受けた者は、同一の行為について日本で更に処罰されない」
- 「外国で刑の執行を受けたときは、日本での刑の執行を減軽し、又は免除することができる」(「する」=必要的)
- 「外国で刑の執行を受けたときは、処罰そのものが免除される」(減軽・免除されるのは刑の執行)
- 「外国で有罪判決が確定していれば、刑の執行を受けていなくても、日本での刑の執行は減軽・免除される」
- 「判例は、占領軍軍事裁判所の裁判を経た事実を重ねて日本の裁判所で処罰することは憲法に違反するとした」(違反しないとした)