刑法の適用範囲
刑法が時間・場所・人のどこまで及ぶかを整理し第1章を締める回。場所は属地主義+国外犯、時間は行為時法主義(軽くなった時のみ6条)、人は原則すべての人を押さえる。
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第1章 刑法の基礎 ⑥/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
1. 場所的適用範囲(どこの犯罪に及ぶか)=この回の主役
- 原則=属地主義(1条1項):日本国内の犯罪なら、犯人・被害者の国籍も犯罪の中身も問わず日本の刑法。国の主権が及ぶ「領土」が基準。
- 旗国主義(1条2項):国外にある日本船舶・日本航空機内も国内同様(=動く日本領土)。
- 「国内で犯した」=遍在説:行為地か結果地の一部が国内なら国内犯(例:海外から毒を送り国内で死亡→属地主義で及ぶ)。
- 国外犯(属地主義で届かない所を補充)── 何に着目するか:
- 属人主義(3条)=犯人の国籍。日本国民が国外で一定の重い罪(殺人・傷害・強盗・放火等)。※3条に過失犯と単純横領罪は含まれない(業務上横領のみ)=短答ひっかけ。列挙の暗記は不要。
- 消極的属人主義(3条の2)=被害者の国籍。国外で日本国民が被害者になれば、犯人が外国人でも及ぶ。
- 保護主義(2条・4条)=守るべき国家・社会の法益(2条=内乱・通貨偽造・公文書偽造等/4条=公務員の職権犯罪・収賄)。
- 世界主義(4条の2)=国際協調(条約で罰すべき罪=ハイジャック等)。
- 外国判決の効力(5条):外国で確定裁判を受けても再処罰は妨げない。ただし外国で既に刑の執行を受けた分は、日本で刑を軽減・免除(二重処罰の酷を緩和)。
- 判定の順:属地→属人→消極的属人→保護→世界→(どれもみたさなければ)不適用。
2. 時間的適用範囲(いつの法律で裁くか)
- 原則=行為時法主義:行為の「時」の法律で裁く。=#5 の遡及処罰の禁止(憲法39条前段)そのもの。
- 例外①=刑法6条(刑の変更):犯罪後に刑が軽く変更されたら軽い方による。「犯罪後」=実行行為の終了後(途中の変更には6条を使わない=当然に新法)。
- 例外②=刑の廃止:裁判時までに刑が廃止されたら原則処罰できない(刑訴337②/免訴)。経過規定があれば処罰可。
- #5 との関係:6条が遡らせるのは”軽い=犯人に不利でない”方だけ=予測可能性・自由保障を害さない→遡及禁止と矛盾しない。
3. 人的適用範囲(誰に及ぶか)
- 原則=すべての人(国内にいれば国籍を問わない)。
- 例外(憲法・国際法が特別に外した一握り):① 天皇(象徴としての地位上、訴追されない)② 国会議員の免責特権(憲法51条) ③ 外交官の治外法権(国際法・ウィーン条約)。
4. 条文(その場で全文・e-Gov 現行XML 逐語)
- 刑法1条(国内犯):この法律は、日本国内において罪を犯したすべての者に適用する。/2 日本国外にある日本船舶又は日本航空機内において罪を犯した者についても、前項と同様とする。
- 刑法2条(すべての者の国外犯=保護主義):この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。(列挙=内乱・外患・通貨偽造・公文書偽造・有価証券偽造 等)
- 刑法3条(国民の国外犯=属人主義):この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。(列挙=放火・殺人・傷害・強盗・詐欺・贈賄・業務上横領 等/※過失犯・単純横領は含まない)
- 刑法5条(外国判決の効力):外国において確定裁判を受けた者であっても、同一の行為について更に処罰することを妨げない。ただし、犯人が既に外国において言い渡された刑の全部又は一部の執行を受けたときは、刑の執行を減軽し、又は免除する。
- 刑法6条(刑の変更):犯罪後の法律によつて刑の変更があつたときは、その軽いものによる。
- 憲法51条(議員の免責特権):両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
今日の地図(保存版)
- #1 刑法とは何か → #2 自然犯と法定犯 → #3 刑法の2つの機能 → #4 客観主義と学派の対立 → #5 罪刑法定主義 → #6 刑法の適用範囲。
- これで「刑法の基礎」が1枚の地図に。次回 #7 から第2章「犯罪の成立要件=3つの関門」。
送り先/枝葉
- 限時法の理論(刑の廃止の例外的処罰)→ 枝葉(深入りせず)。
- 2〜4条の2の列挙罪の暗記 → 枝葉(覚えない・代表例+“過失犯/単純横領は3条に含まない”のみ)。
- #5 罪刑法定主義(遡及処罰の禁止=憲39前段)の回収=行為時法主義の根拠+6条が矛盾しない理由として接続(完結)。