刑法 ゼロから刑法#46

逮捕罪・監禁罪——「閉じ込められた」と気づいてなくても罪?

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第10章 自由・私生活の平穏に対する罪 ①/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

保護法益——身体活動(移動)の自由 〔短答・論文共通〕

保護法益=身体活動(場所的移動)の自由。逮捕・監禁罪が守るもの=動きたいところへ動ける自由。この点自体に争いはない(争うのは「自由」の中身=次の山場)。客体にならない者=自由を観念し得ない者。①法人=身体がない(移動という身体活動を観念できない)。②生まれたばかりの嬰児=およそ自力で移動できない(学説・通説)。趣旨=「動けなくする」罪だから、そもそも動ける身体を持つ者だけが客体。嬰児を動けなくしても、もともと自力で動けない以上、移動の自由を奪っていない。

まず保護法益。この罪が守るのは、身体活動の自由です。場所的に移動する自由、と言ってもいい。ここには争いがありません。争うのは「自由」の中身。それが次の山場です。先に、客体にならない者を押さえます。自由を観念できない者です。一つ目は法人。会社のような存在ですね。だから法人は逮捕監禁罪の客体になりません。二つ目は、生まれたばかりの嬰児。これは学説、通説の理解です。そもそも自力で移動できないからです。動けなくしても、奪う自由がない。いい整理です。「動けなくする」罪だから、動ける者が前提なんです。

山場——可能的自由説 vs 現実的自由説 〔短答・論文共通(山場)〕

🔴 「自由」の意味の対比。A説 可能的自由説〔判例・多数〕=動こうと思えば動けた自由(移動の可能性・選択肢を持つこと自体に価値)。趣旨=可能性そのものに意義、偶然気づかなくても自由は侵害。①認識=不要(気づいてなくても成立)②意思能力欠如=成立(施錠時)。B説 現実的自由説〔有力な反対説〕=現に動こうとしたときに動ける自由(移動の意思を現実に持って初めて)。①認識=必要(気づいた時点で成立)②意思能力欠如=不成立(目覚めた時点で初めて成立)。判例・多数は可能的自由説。

では山場。「自由」の中身に、二つの説があります。表で見ます。A説は可能的自由説。判例と多数説の立場です。「動こうと思えば、動けたはずの自由」と捉えます。移動できる可能性、選択肢を持っていること自体に価値がある、と。B説は現実的自由説。有力な反対説です。こちらは「現に動こうとしたときに、動ける自由」と捉えます。この一点の違いが、結論を分けます。たとえで言いますね。移動の自由を、いつでも開けられるドアだと思ってください。可能的自由説は、ドアが外から塞がれた瞬間に、自由が奪われたと見る。開けられるはずのドアが塞がれた。その時点でもう侵害だ、と。現実的自由説は、本人がドアを開けようとして初めて、塞がれてると分かる。なぜ判例は可能的自由説か。理由はこうです。移動の自由は、いつでも動ける状態そのものに意味がある。だから、たまたま気づかなかった、寝ていた、という偶然で保護が消えるのはおかしい。そこが核心です。この軸さえ握れば、次の二つの場合分けは一気に解けます。

場合分け①——認識なし(騙して車に乗せ発進) 〔短答頻出〕

場合分け①認識なし。事案=甲が乙に「駅まで送る」と偽る>乙が乗車・甲が発進>中央ロックで降ろさず走行。A説 可能的自由説〔判例・多数〕=移動の可能性は発進した時点で奪われた→発進時に監禁罪が成立、認識は不要。B説 現実的自由説〔有力〕=現に動こうとしたとき初めて自由が侵される→乙が気づいた時点で成立、認識が必要。判例(最決昭33・3・19)は可能的自由説=騙されて気づいていなくても、発進時に監禁罪が成立する。

場合分け①。冒頭の、騙して車に乗せる話です。事案を関係図で見ましょう。

認識なし事案の自前設例。甲(犯人)が乙(被害者)に対し、①「駅まで送る」と欺く、②乗車させ発進、③中央ロックで降ろさない。乙は「送ってもらっている」と思い込み、監禁を認識していない。可能的自由説なら、発進時に監禁罪が成立する。

甲が乙に「駅まで送るよ」と偽って、自分の車に乗せます。発進してから、中央ロックをかけて、乙を降ろさず走り続けた。そこが核心です。乙は拘束を認識していない。さあ、二つの説で見ます。可能的自由説なら、発進した時点で乙の移動の可能性は奪われている。だから発進時に監禁罪が成立。認識は要りません。現実的自由説なら、乙が現に動こうとして初めて自由が侵される。認識が必要になります。ここで判例の出番です。

判例=最決昭33・3・19(刑集12巻4号636頁・第二小法廷の決定)。被害者を欺いて自動車等に乗せて走行した事案で、被害者が監禁を認識していなくても監禁罪が成立すると判断した。可能的自由説に立つことを示した代表判例。判決ではなく決定。

昭和33年3月19日の決定です。判決じゃなく、決定。被害者を欺いて車に乗せ走行した事案でした。そこで、被害者が認識していなくても監禁罪が成立する、と判断した。これがこの論点の、答えを決める判例です。

場合分け②——意思能力欠如(熟睡・泥酔中に施錠) 〔短答 / 論文の骨格〕

場合分け②意思能力欠如。事案=乙が応接間でうたた寝>甲が外から施錠>乙は眠ったまま気づかず。A説 可能的自由説〔判例・多数〕=目覚めれば動けたはずの可能性を奪った→施錠した時点で監禁罪が成立、意思能力を欠いていても成立。B説 現実的自由説〔有力〕=現に動こうと思えない以上 侵害なし→目覚めて出ようとした時点で成立、施錠時はまだ不成立。軸は①と同じ=「自由」の捉え方一本で全部決まる。

場合分け②。今度は、相手が一時的に意思能力を欠いている場合。例えば、来客が応接間でうたた寝している間に、外から鍵をかける。これも可能的自由説と現実的自由説で分かれます。可能的自由説なら、目が覚めれば動けたはずの可能性を奪った。意思能力を欠いていても、可能性は奪われている。現実的自由説なら、現に動こうと思えない以上、その時点では侵害なし。施錠した時点では、まだ不成立になります。そこです。「自由」をどう捉えるか、この一本で全部決まる。

逮捕と監禁の区別 〔短答・論文共通〕

逮捕 vs 監禁。どちらも220条。逮捕=身体を直接拘束する(身体活動の自由を直接に奪う・羽交い締め・縛り上げる・取り押さえる)。監禁=場所から間接的に拘束する(一定の区域からの脱出を不可能・著しく困難にする・部屋に施錠して閉じ込める)。場所的拘束=逮捕は不要(その場で押さえても逮捕)/監禁は必要(区域からの脱出を妨げる)。区別の軸=身体への直接拘束(逮捕)か/場所的な閉じ込め(監禁)か。日常語の「逮捕」とは別物=220条は不法な直接拘束。

では、二つ目の疑問。逮捕と監禁の区別です。表で見ます。まず逮捕。人の身体を直接拘束することです。身体そのものを押さえて、移動の自由を直接に奪う。一方、監禁は、間接的な拘束。場所から逃げられなくすることです。一定の区域からの脱出を、不可能か、著しく困難にする。そこが区別の軸です。身体への直接拘束か、場所的な閉じ込めか。そして大事な注意。刑法の逮捕罪は、日常語の逮捕とは別物です。220条は「不法に」逮捕する罪。警察の適法な身柄確保とは違います。

監禁の手段——有形力に限らない(無形力も) 〔短答頻出〕

監禁の手段。①有形力=施錠・縄で縛る・物理的に閉じ込める(典型的な監禁)。②欺罔(だます)=騙して車に乗せ走り続ける・降車を求めても無視して走行・心理的に脱出を困難に。③脅迫(脅す)=「降りたら殺す」と脅す・怖くて出られなくする・心理的に脱出を困難に。ポイント=鍵や縄がなくても監禁になりうる。だます・脅すで心理的・場所的に脱出を困難にすれば監禁罪。②走行中の車に乗せ降車要求を無視=最決昭38・4・18ほか。

次に、監禁の手段。これが意外と広いんです。それが有形力。物理的に閉じ込める、典型的な監禁ですね。でも、監禁はそれだけじゃない。無形力でも成立します。例えば、だますこと。欺罔ですね。騙して車に乗せて、降ろしてと言われても無視して走り続ける。走行中の車に乗せ、降車要求を無視する。これも監禁です。もう一つは、脅すこと。脅迫です。例えば、車の中で「降りたら殺す」と脅す。そこです。心理的に脱出を困難にすれば、それも監禁にあたる。

継続犯・逮捕に続く監禁=包括一罪 〔短答〕

継続犯・包括一罪(短答・軽く)。罪質=継続犯(拘束を続けている間ずっと実行行為が継続)。帰結①公訴時効の起算点=行為終了時(拘束が解かれた時から)。帰結②途中から加わった者も、加わった後の行為につき共犯が成立。継続犯の概念は総論既出(接続のみ)。逮捕に引き続く監禁=包括一罪(全体で220条の1罪・最大判昭28・6・17)。逮捕→そのまま監禁は別々に数えず1罪。罪数の詳細は深入りしない。

ここから短答向けの整理を、軽くまとめます。まず罪質。この罪は継続犯です。拘束を続けている間、ずっと実行行為が続く。帰結が二つ。一つは、公訴時効の起算点。行為が終わった時、つまり拘束が解かれた時から数えます。もう一つは、途中から加わった人。加わった後の拘束について、その人にも共犯が成立します。そのとおり、接続だけです。最後にもう一点、罪数を一つ。逮捕して、そのまま監禁した場合。全体で220条の一罪になります。包括一罪と呼びます。昭和28年の大法廷判決です。深入りはしません。

逮捕・監禁致死傷罪(221条)——結果的加重犯 〔短答(#37接続)〕

逮捕・監禁致死傷罪(221条)=220の結果的加重犯。逮捕・監禁の結果として人を死傷させた場合。致死傷の結果と逮捕・監禁との間に刑法上の因果関係が必要。法定刑=「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」=数値の法定刑を定めず、基本犯と傷害罪を比較する方式。結果的加重犯の理論は#37既出(接続のみ・二重解説しない)。前回の堕胎致死傷216や遺棄致死傷219と同じ「比較し重い刑」方式。

最後に221条、逮捕等致死傷罪です。条文を見ましょう。逮捕・監禁の結果、人を死傷させた場合の加重類型です。理論は#37の通りなので、接続だけ。一点だけ確認します。法定刑は「傷害の罪と比較して、重い刑により処断する」。よく覚えてました。数値の法定刑を持たず、傷害罪と比べて重い方を採る。致死傷の結果と、逮捕監禁との間に、因果関係が必要なのも#37通りです。

条文を確認——220条・221条 〔約束③(条文全文)〕

刑法220条(逮捕及び監禁)=不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。逮捕も監禁も、同じ条文・同じ法定刑。「不法に」=適法な身柄確保(現行犯逮捕など)は含まない。

では核心の条文を、全文で確認します。まず220条。「不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する」。区別は態様の違いで、扱いは同じ。そして「不法に」が大事。適法な身柄確保、現行犯逮捕などは、ここに含まれません。条文に「不法に」と明記されているのがポイントです。

短答ひっかけ

ここはひっかかる(短答まとめ)。①保護法益=身体活動(移動)の自由。法人・嬰児は客体にならない。②判例・多数は可能的自由説=動こうと思えば動けた自由を守る→拘束を認識していなくても/意思能力を欠いていても成立。③逮捕=直接拘束(縛る・取り押さえる)/監禁=場所的拘束(閉じ込め)。④監禁の手段は有形力に限らない=欺罔・脅迫の無形力も監禁。⑤継続犯(時効は行為終了時起算)/逮捕に続く監禁=包括一罪。⑥221致死傷=結果的加重犯(#37)。傷害の罪と比較し重い刑により処断。

短答でひっかかる所を整理します。①保護法益は身体活動の自由。②判例・多数は可能的自由説。動こうと思えば動けた自由を守る。だから認識していなくても、意思能力を欠いていても成立。③逮捕は直接拘束、監禁は場所的拘束。④監禁の手段は無形力も含む。⑤継続犯で時効は行為終了時。逮捕に続く監禁は包括一罪。⑥221致死傷は結果的加重犯。傷害の罪と比較し重い刑により処断。

📝 論文の型

論文の型|逮捕監禁罪の保護法益。★コア規範(逐語で覚えるのはここだけ)=保護法益は身体活動(場所的移動)の自由であり、その「自由」とは、現実に移動しようとしたか否かを問わず、移動しようと思えば移動しうるという可能的自由をいう(可能的自由説)。したがって被害者が拘束を認識していなくても、また一時的に意思能力を欠いていても本罪は成立する。復元キー=①保護法益=身体活動の自由②「自由」に2説③可能的自由説=移動の可能性を有すること自体に意義④帰結=認識不要・意思能力欠如でも成立⑤反対説なら認識必要・覚醒時成立。

ここから論文の型です。覚える規範を、最小限にしぼります。逐語で覚えるのは、太字のキーワードだけ。あとは趣旨から復元します。核心はこう。保護法益は身体活動、場所的移動の自由。その「自由」とは、移動しようと思えば移動しうる、可能的自由をいう。だから拘束を認識していなくても、本罪は成立する。復元の鎖はこうです。まず保護法益は身体活動の自由。次に「自由」に二説あると示す。可能的自由説と現実的自由説。移動の可能性を有すること自体に意義がある、と。帰結として、認識不要、意思能力欠如でも成立、を導く。

答案の型|逮捕監禁罪の保護法益。【事例】甲が乙に「駅まで送る」と偽り車に乗せ、発進後に中央ロックをかけ降ろさず走行(乙は気づいていない)。【問題提起】乙が拘束を認識していなくても監禁罪が成立するか。【規範】保護法益=身体活動の自由=可能的自由→認識不要。【あてはめ】甲は乙を欺いて乗車させ中央ロックで降車を不可能にし、乙の移動の可能性を奪っている。可能的自由説によれば、乙が認識していなくても発進・降車不能の時点で監禁罪が成立する。

答案の型で、流れを実演します。事例は①の車の話。まず問題提起。乙が気づいていなくても監禁罪が成立するか。次に規範。保護法益は可能的自由だから、認識は不要。最後にあてはめ。甲は乙の移動の可能性を奪っている。この、事例・問題提起・規範・あてはめの流れで書けば、答案になります。

今日の地図(保存版)

#46 今日のまとめ。逮捕・監禁罪=身体活動(移動)の自由を不法に奪う罪(220条)。判例・多数は可能的自由説=動こうと思えば動けた自由。だから拘束を認識していなくても/意思能力を欠いていても成立(拘束した時点で)。逮捕=直接拘束(縛る)/監禁=場所的拘束(閉じ込め)。区別は拘束の態様。監禁の手段は有形力(施錠・縄)に限らず無形力(欺罔・脅迫)も含む。継続犯(時効は行為終了時)/逮捕に続く監禁=包括一罪/221致死傷=結果的加重犯(#37)。次回#47=脅迫罪・強要罪へ。

まとめます。逮捕・監禁罪は、身体活動の自由を不法に奪う罪。判例・多数は可能的自由説。動こうと思えば動けた自由を守ります。逮捕は直接拘束、監禁は場所的拘束。区別は拘束の態様。監禁の手段は、有形力に限らず、だます・脅すの無形力も含む。221の致死傷は結果的加重犯。傷害の罪と比較し重い刑。可能的自由説、という一点。第10章のつづき、意思決定の自由を侵す罪へ進みます。

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