刑法ゼロから刑法#91

罪数論の基礎と評価上一罪

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第10章 罪数 ①/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

人を1人殺した。これは何個の犯罪か

服も破れ、凶器も用意され、未遂の瞬間もあった 図:服も破れ、凶器も用意され、未遂の瞬間もあった

Aは殺意を持ってBに日本刀で切りかかり、Bは死亡しました。切りかかった際にBの服も切り裂かれて破れ、その刀は事前に用意したもの、切りかかった瞬間には未遂の状態もありました。Aが犯した罪は、何個でしょうか。条文の文言だけを追うと、たしかに全部当てはまるように見えます。ですが実際にAが処罰されるのは、殺人罪1つです。今日は、なぜそうなるのか、その理由を1つずつほどいていきます。

なぜ罪数を数えるのか

数える理由は2つしかない 図:数える理由は2つしかない

冒頭のAの例に戻ります。仮に殺人罪・器物損壊罪・殺人予備罪・殺人未遂罪の4つが独立に成立するなら、刑を合算するのか、いちばん重い罪だけで処断するのか、その決め方が変わってきます。これが1つめの理由、処断刑の形成です。今日の裁判で殺人罪として裁かれたなら、その裁判の対象になった事実については、後からもう一度別の裁判にかけられることはありません。これを一事不再理といいます。器物損壊の部分だけ切り離して、後日改めて訴追できるのか——この範囲を画するためにも、罪数を決める必要があります。処断刑の形成と一事不再理の範囲、この2つの実益があるからこそ、「1罪か数罪か」を機械的にではなく、評価を交えて決めなければなりません。

前回の確認——幇助犯の刑は条文でどう扱われたか 図:前回の確認——幇助犯の刑は条文でどう扱われたか

本題に入る前に、1つ思い出してください。前回まで見てきた共犯のうち、幇助犯の刑は、条文の上でどう扱われていましたか?63条で、正犯の刑を減軽する。しかも、裁判官が選べる減軽ではなく、必ず減軽しなければならない必要的減軽でした。教唆犯のほうは、61条で、正犯と同じ法定刑の幅の中で処罰されました。刑の重さは、言い渡された刑ではなく、条文が定める幅で比べる——この感覚は、今日「重いほうの罪の刑で処断する」という場面でもう一度使いますので、覚えておいてください。

全体地図と罪数決定の基準

一罪から併合罪まで、4つの層 図:一罪から併合罪まで、4つの層

罪数の全体像を、地図として渡します。いちばんうえの層が一罪です。一罪の中にも、構成要件を明確に1回だけ充足する単純一罪と、複数回充足したように見えて1回だけと評価される評価上一罪があります。評価上一罪の中には、今日扱う法条競合と包括一罪の2つがあります。その下の層に、1個の行為から複数の結果が出る場合などをまとめる科刑上一罪、さらにその下に、まったく別の機会に犯された複数の罪をまとめる併合罪という層が続きます。今日歩くのは、いちばんうえの一罪の層までです。ここで、数える単位そのものを決める基準を確認します。何をもって「1個の犯罪」と数えるかについては、いくつかの考え方が対立してきました。行為の個数で数える行為標準説、侵害された法益の個数で数える法益標準説、犯人の意思の個数で数える意思標準説などです。ですが、これらはいずれも基準として不安定です。1個の行為から複数の法益が侵害されることもあれば、1個の意思のもとで複数の行為が積み重なることもあるからです。

⭐ 論文で書く規範:【犯罪の個数を数える基準】犯罪の個数は、構成要件を充足した回数によって数える。 (規範(通説で立てる))

そこで通説は、構成要件を充足した回数によって犯罪の個数を数えます。これを構成要件標準説といいます。構成要件は、立法者が「これだけの行為・結果・意思があれば1個の犯罪として処罰する」と定めた単位そのものです。だからこそ、構成要件を何回充足したかを数えることが、犯罪の個数を数えることと同じ意味を持ちます。ただし、この基準だけでは話が終わりません。条文の文言だけを追うと構成要件を複数回充足して見えるのに、実際には評価としては1回しか働かない場面が出てきます。冒頭のAの例がまさにそれです。この先の法条競合と包括一罪は、その「見た目は複数回、評価としては1回」がなぜ起きるのかを説明する議論です。

法条競合——条文が重なって見えるだけ

入口は複数あっても、行き着く部屋は1つ 図:入口は複数あっても、行き着く部屋は1つ

1つめの理由が、法条競合です。法条競合とは、1個の行為が条文の文言上は複数の構成要件に当たって見えるものの、構成要件どうしの関係から、結局1個の条文しか適用されないと評価される場合をいいます。適用される条文が、最初から1個しかないのです。

4類型の違いを具体例で比較する 図:4類型の違いを具体例で比較する

法条競合には、4つの類型が挙げられます。1つめが特別関係です。特別法は一般法を排斥するという原則で、業務上横領罪と単純横領罪の関係がその例です。業務上、他人の物を占有する者がこれを横領すれば、業務上横領罪だけが成立し、単純横領罪は重ねて成立しません。2つめが補充関係です。基本となる法が、補充的な法を排斥するという原則です。冒頭のAの例に戻ると、殺人罪が既遂に達した以上、その手前の段階である殺人予備罪や殺人未遂罪は、殺人既遂罪に排斥されて重ねて成立しません。基本の犯罪が成立する以上、その完成に至る前段階の犯罪は、もはや独立に評価する必要が無いという考え方です。

3つめが択一関係です。どちらか一方が成立すれば他方は成立しない関係をいい、横領罪と背任罪の関係がその例に挙げられます。横領罪は、自分が占有する他人の物を、自分の物のように扱う罪です。背任罪は、他人のために事務を処理する者が、自分または第三者の利益を図る目的、あるいは本人に損害を加える目的で、その任務に背いて本人に財産上の損害を与える罪です。どちらも、他人のために財産を管理し、または処理する立場の者が、本人の利益を害する点で似ているので、1つの事件がどちらの入口にも見えます。ですが、占有する物そのものを不法に処分したなら横領罪、それ以外の方法で本人に財産上の損害を生じさせたなら背任罪と、行為の型によってどちらか一方に決まるため、択一関係とされます。4つめが吸収関係です。ある行為が他の行為を通常伴う場合をいい、既遂行為が未遂行為を通常伴う関係がその例です。ただし、この2つは、特別関係や補充関係との境目がはっきりせず、独立の類型として立てる実益は乏しいといえます。たとえば冒頭のAの例で、切りかかった際にBの服が破れた点は、殺人罪が器物損壊罪を通常伴うという意味で、吸収関係の例に挙げられることがあります。ですが、殺人罪が守っているのは人の生命、器物損壊罪が守っているのは物の財産的価値で、保護している法益がそもそも別です。適用条文が最初から1個しかないという法条競合の説明にはなじまず、服が破れたという被害は、殺人罪という重大な結果に対する評価の中に、軽微な付随事情として包み込まれている、と理解するのが的確です。

冒頭のAについて、殺人予備罪・殺人未遂罪が成立しない理由は、この補充関係で説明がつきます。

包括一罪(1)——同種の行為をまとめて評価する

実際に複数の行為があっても、1個の構成要件で評価し尽くされる 図:実際に複数の行為があっても、1個の構成要件で評価し尽くされる

2つめの理由が、包括一罪です。法条競合との違いを、はっきりさせておきます。法条競合は、適用される条文が最初から1個しかありませんでした。これに対して包括一罪は、行為も、構成要件への該当も、現実には複数回あります。それでもなお、すべてが1個の構成要件によって包括的に評価されるのです。入口が最初から1個なのが法条競合、複数の部屋を通っても1棟として数えるのが包括一罪です。包括一罪には、いくつかの型があります。まず、同種の行為が繰り返される場合から見ていきます。1つめは、常習犯や営業犯です。常習賭博罪のように、構成要件そのものが最初から行為の反復を予定している場合は、反復された賭博行為の全体で包括一罪となります。営業犯は、反復して行うことが収益を得る活動として構成要件に織り込まれている場合をいい、わいせつ物頒布等罪がその例です。常習犯が「繰り返す」こと自体を捉えているのに対して、営業犯は「繰り返して稼ぐ」ところまでを1個の罪の中身にしている、という違いです。どちらも、反復すること自体を立法者が1個の罪として処罰すると決めた構成要件です。だから、繰り返した回数で数え直す必要が無く、全体で1個に数えます。

米俵9俵、3回の窃取行為 図:米俵9俵、3回の窃取行為

2つめが接続犯です。同一の犯意に基づいて、時間的にも場所的にも近接した状況で、数個の同種の行為が行われ、それらが事実上切り離せないほど密接に関連している場合をいいます。実際にあった事案では、夜間の約2時間のあいだに、同じ倉庫から3回にわたって米俵を3俵ずつ、合計9俵を持ち出したという事案があります。

判例最高裁判所第二小法廷 昭和24年7月23日判決・刑集3巻8号1373頁

接続犯の判例(米俵の事案) 同一の機会を利用し、同一の犯意に基づいて行われた一連の同種の動作であるとして、原審の併合罪の認定を破棄し、窃盗罪の包括一罪と認めた。

3回に分けているので併合罪になりそうに見えますが、実際の判断は違いました。同一の機会を利用し、同一の犯意に基づいて行われた一連の同種の動作であるとして、3回の持ち出しをまとめて、窃盗罪の包括一罪と認めています。同じ機会に、同じ意思で、同じ種類の行為を繰り返しているなら、法律の目から見れば、9俵を1回で持ち出したのと変わらない、という評価です。

逮捕して、引き続き監禁したら 図:逮捕して、引き続き監禁したら

3つめが、狭義の包括一罪です。1個の構成要件が、同一の法益に向けた複数の行為態様を、最初から規定している場合をいいます。人を縄で縛って身動きを取れなくする逮捕行為と、そのまま引き続き部屋に閉じ込める監禁行為を考えてください。

条文刑法220条

刑法220条(逮捕及び監禁) 「不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。」

220条は、逮捕と監禁という2つの行為態様を、最初から1個の条文の中に並べて規定しています。人を逮捕し、引き続き監禁したときも、逮捕罪と監禁罪の2罪が成立するのではありません。

判例最高裁判所大法廷 昭和28年6月17日判決・刑集7巻6号1289頁

包括一罪の判例(逮捕監禁の事案) 人を、逮捕し監禁したときは、論旨も指摘するように、逮捕罪と監禁罪との各別の二罪が成立し、牽連犯又は連続犯となるものではなく、これを包括的に観察して刑法二二〇条一項の単純な一罪が成立するものと解すべきものである。

引用に出てくる牽連犯・連続犯は、どちらも複数の罪をまとめて扱うための別の枠組みの名前です。ここではそのどちらでもなく、逮捕と監禁を包括的に観察して、220条の単純な一罪が成立すると判断されています。逮捕と監禁、2つの行為態様がありますが、220条という1個の条文が、最初からその両方を1個の罪の中身として用意しているからです。

包括一罪(2)——異なる罪がまとまる場合

異なる構成要件でも、まとまることがある 図:異なる構成要件でも、まとまることがある

ここまでは、同じ種類の罪がまとまる場合でした。ここからは、異なる種類の罪がまとまる場合、混合包括一罪を見ます。見た目には別々の構成要件に当たる複数の行為でも、①被害法益の実質的な同一性と、②時間的・場所的な近接性という2つの要件がそろえば、包括一罪として評価されます。具体例で考えます。無銭飲食をする意図を隠して料理を注文し、受け取った後、発覚を恐れて強い暴行を加え、代金の支払いを免れたとします。料理をだまし取った点は詐欺罪に、代金の支払いを暴行で免れた点は強盗利得罪に、それぞれ当たるように見えます。

条文刑法236条2項

刑法236条2項(強盗利得) 「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」

ですが、だまし取った料理と、暴行で免れた代金は、実質的には同じ経済的利益を指しています。しかも、料理を受け取った時点と、暴行で支払いを免れた時点は、時間的にも場所的にも近接しています。被害法益の実質的な同一性と、時間・場所の近接性の両方がそろうため、詐欺罪と強盗利得罪は別々に成立するのではなく、より重い強盗利得罪の包括一罪として処理されます。

判例最高裁判所第一小法廷 昭和61年11月18日決定・刑集40巻7号523頁

混合包括一罪の判例 先行する本件覚せい剤取得行為がそれ自体としては、窃盗罪又は詐欺罪のいずれに当たるにせよ、前記事実関係にかんがみ、本件は、その罪と(二項)強盗殺人未遂罪のいわゆる包括一罪として重い後者の刑で処断すべきものと解するのが相当である。

この判例の事案は、覚せい剤を盗むか、だまし取るかして手に入れたうえで、その相手を殺そうとしたというものです。先行する取得行為が窃盗罪と詐欺罪のどちらに当たるかは確定できませんでしたが、実際の判断でも、そのいずれに当たるとしても、その後に続いた強盗殺人未遂罪と合わせて、重いほうの刑で処断すべきだと判断されています。異なる構成要件であっても、法益の同一性と時間・場所の近接性が認められれば、重いほうの罪の包括一罪として1個にまとまるのです。

今日の山場——盗んだ物を、どう扱うと別罪になるか

壊しても罪にならないのに、払戻しを受けると罪になる? 図:壊しても罪にならないのに、払戻しを受けると罪になる?

ここからが、今日いちばんの山場です。窃盗犯が、盗んだ物を後から壊しても、器物損壊罪は別に成立しません。盗んだ物を売り払っても、横領罪は別に成立しません。ところが、盗んだ通帳を使って銀行から払戻しを受けると、今度は詐欺罪が別に成立します。この違いは、どこから生まれるのでしょうか。犯罪の分類を学んだときに、状態犯の話でも少し触れましたが、ここで改めて掘り下げます。犯罪が完成した後、その犯罪に伴う違法な状態が続いている中で、通常含まれていると考えられる行為は、すでにその構成要件によって評価し尽くされている、という考え方があります。これを不可罰的事後行為といいます。

条文刑法261条

刑法261条(器物損壊等) 「前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

窃盗犯が盗んだ物を壊す行為を考えます。窃盗罪は、他人の財物に対する占有を奪うことで、被害者の財産権を侵害する罪です。盗んだ物をその後壊す行為は、被害者の財産権をさらに一段深く害しているだけで、窃盗罪がすでに評価した被害の範囲を出ていません。窃盗罪の評価がすでに及んでいる以上、261条をあらためて適用する必要が無いのです。

銀行への払戻し請求は、窃盗の評価の外に出る 図:銀行への払戻し請求は、窃盗の評価の外に出る

一方、盗んだ通帳を使って銀行から払戻しを受ける行為は違います。窃盗罪が保護しているのは、通帳の元の持ち主の財産権です。これに対して、銀行から払戻しを受ける行為は、通帳の名義人本人が請求していると誤信した銀行の窓口係員をだまして、銀行の財産を交付させています。ここで害されているのは、窃盗の被害者とは別の、銀行という新たな法益です。

条文刑法246条1項

刑法246条1項(詐欺) 「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。」

判例最高裁判所第二小法廷 昭和25年2月24日判決・刑集4巻2号255頁

不可罰的事後行為の限界判例(通帳払戻しの事案) 窃取または騙取した郵便貯金通帳を利用して郵便局係員を欺罔し、真実名義人において貯金の払戻を請求するものと誤信させて貯金の払戻名義の下に金員を騙取することは、更に新法益を侵害する行為であるから、ここにまた犯罪の成立を認めるべきであって、これをもって賍物の単なる事後処分と同視することはできない。

判断でも、盗んだ通帳を使って係員をだまし、払戻しを受ける行為は、更に新たな法益を侵害する行為であるから、あらためて犯罪の成立を認めるべきであり、これを盗品の単なる事後処分と同じに扱うことはできない、とされています。窃盗の評価が及ぶ範囲の外に出ているからこそ、別に詐欺罪が成立するのです。判例の事案は郵便局の貯金通帳ですが、いまの銀行預金でも筋は同じです。

⭐ 論文で書く規範:【不可罰的事後行為の弁別】先行する犯罪によって、その構成要件が予定する法益の射程内にとどまる行為は、すでにその犯罪の評価に含まれ、別罪を構成しない。先行する犯罪とは別の新たな法益を侵害する行為は、その射程を超えており、別罪が成立する。 (規範(判例で立てる))

たとえば、盗んだ自転車のフレーム番号を削って誰の物か分からなくした場合は、被害者の財産権に対する侵害の範囲内にとどまるため器物損壊罪は別に成立しませんが、盗んだ通帳を使って銀行から払戻しを受けた場合は、詐欺罪が別に成立します。同じ「盗んだ後の扱い」なのに、結論が分かれるのはなぜでしょうか。この2つの結論を分けている軸は1つです。侵害した法益が、先行する犯罪の構成要件が予定している法益の射程内に収まっているか、それとも、その射程の外に出て、新たな法益を侵害しているか。盗んだ物を壊す・売る行為は、窃盗罪が最初から予定している被害者の財産権の範囲に収まっているので、射程内。銀行への払戻し請求は、窃盗の被害者ではなく銀行という、窃盗罪の射程には入っていない別の法益を侵害しているので、射程外です。

最後に、犯罪が完成する前の段階にも、似た発想があることに触れておきます。殺人予備罪が、殺人罪が成立すれば重ねて成立しないのは、さきほど法条競合の補充関係で見たとおりです。準備段階の行為が、完成した犯罪の中にすでに含まれていると考える点で、発想は共通しています。冒頭のAが結局殺人罪1つで処断されるのも、同じ理由です。予備・未遂の段階も、服が破れた被害も、殺人罪という1個の評価の内側に収まっているからです。

弁別の総ざらい

これは法条競合か、包括一罪か 図:これは法条競合か、包括一罪か

今日見てきた内容を、2つの問いにまとめます。①適用される条文は、最初から1個しかなかったか。はいなら法条競合です。②複数の行為・複数の構成要件該当が現実にあったが、法益の同一性や条文の作り、評価の射程から、1個に評価し尽くされるか。はいなら包括一罪です。この2つの問いで、ほとんどの場面を振り分けられます。試しに、いくつか振り分けてみましょう。1つめ、業務上、他人の物を占有する者が、これを横領した場合です。業務上横領罪だけが成立する法条競合です。2つめ、夜のうちに、同じ倉庫から3回に分けて米俵を持ち出した場合です。

同一の機会・同一の犯意による包括一罪です。3つめ、盗んだ通帳を使って、銀行の窓口で払戻しを受けた場合です。法条競合でも包括一罪でもなく、別罪として2つの罪が別々に成立する場面です。②の問いに「いいえ」で答えが出たなら、それはもう評価上一罪の話ではありません。1個の行為から複数の結果が出る場合や、手段と目的の関係にある場合にも、また別の理由で罪数がまとまることがありますが、それは次に扱います。

今日の地図(保存版)

今日の到達点 図:今日の到達点

今日を振り返ります。罪数を数えるのは、処断刑の形成と一事不再理の範囲、この2つの実益のためでした。数える単位は、構成要件を充足した回数、構成要件標準説です。そのうえで、数罪に見えて1罪に落ちる理由には2つあり、適用される条文が最初から1個しかない法条競合と、複数の行為・複数の構成要件該当があっても1個に評価し尽くされる包括一罪でした。そして今日の山場、不可罰的事後行為は、侵害した法益が先行する犯罪の射程内に収まっているか、外に出ているかで結論が分かれます。殺人予備罪・殺人未遂罪は、殺人既遂罪との補充関係により、法条競合として排斥されます。服が破れた点は、法条競合ではなく、殺人罪という重い評価の中に軽微な被害として包み込まれていると考えられるため、器物損壊罪を重ねて立てる必要がありません。だからAは、殺人罪1つで処断されます。

参照条文

  • 刑法220条
  • 刑法236条2項
  • 刑法261条
  • 刑法246条1項

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