刑法 ゼロから刑法#60

恐喝罪——強盗との境目・権利行使と恐喝〔論証38〕・2項恐喝

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第12章 財産に対する罪 ⑩/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

恐喝の意義・強盗との区別 〔短答・論文〕

1. 恐喝罪の意義・強盗との区別——「反抗抑圧に至らない」が分水嶺。恐喝罪(249)=暴行・脅迫を用いて相手方を畏怖させ、瑕疵ある意思に基づいて財物・財産上の利益を交付させる罪。強盗(#56)と同じく暴行・脅迫を手段とするが、恐喝の暴行・脅迫は程度が弱い=相手方の反抗を抑圧するに至らない程度のものを予定する(強盗=反抗抑圧。ここが分水嶺)。ゆえに恐喝罪は詐欺(#58)と同じく、被害者の処分行為(交付行為)によって財産を取得する交付罪。★暗記すべき規範=「恐喝の暴行・脅迫=①財物・財産上の利益を交付させる手段としてのものであって、②相手方の反抗を抑圧するに至らない程度のもの。」反抗抑圧の有無は客観的に判断(一般人基準=#56強盗の判断枠組みを流用)。🔴 反抗抑圧の意義そのものは#56既出=ここでは「至らない」で対比のみ。

一つ目、恐喝の意義と、強盗との区別です。恐喝は、暴行・脅迫で相手を畏怖させる。そして、瑕疵ある意思で交付させる。自由でない、ゆがんだ意思です。#58の道具。強盗も暴行脅迫を使う。違いは、程度です。強盗は、相手の反抗を抑圧する強さ。恐喝は、反抗を抑圧するには至らない程度。だから相手は、畏怖して”自分で”払う。うまい。そこが交付罪である理由です。反抗を抑圧する程度か、客観的に判断します。一般人基準。これは#56強盗の枠組みです。交付させる手段としての暴行脅迫で、反抗抑圧に至らない程度。

強盗/恐喝/詐欺 3罪対比表 〔短答・論文〕

🔴 強盗(236)/恐喝(249)/詐欺(246)3罪対比表。行=3罪/列=「手段」「反抗抑圧の有無」「交付(処分行為)の要否」。強盗236=手段:暴行・脅迫/反抗抑圧:あり(程度が強い)/交付:不要(自分で奪う=強取)。恐喝249=手段:暴行・脅迫/反抗抑圧:至らない(畏怖させる程度)/交付:必要(畏怖→処分行為)。詐欺246=手段:欺罔(嘘)/反抗抑圧:概念なし/交付:必要(錯誤→処分行為)。★恐喝の二面性=手段は強盗より弱い暴行脅迫+詐欺と同じ交付罪。自前の喩え=相手に財布を出させる3つのやり方。強盗=組み伏せて自分の手で抜き取る(反抗抑圧・奪う)/恐喝=肩に手を置き低い声で「払ったほうが身のため」=怖くなって自分の手で差し出す/詐欺=嘘をついて差し出させる。恐喝は強盗(力ずく)と詐欺(嘘)の中間=怖がらせて相手の手で出させる。

表にします。強盗、恐喝、詐欺の三つを並べます。見る列は三つ。手段、反抗抑圧、交付の要否。手段は暴行脅迫、反抗抑圧あり、交付は不要。次が恐喝。手段は暴行脅迫、反抗抑圧は至らない。必要です。畏怖させて、相手に処分行為をさせる。手段は嘘、反抗抑圧という概念はなし、交付は必要。喩えると、財布を出させる三つのやり方です。組み伏せて、自分の手で財布を抜き取る。肩に手を置いて、低い声で、払ったほうが身のため。詐欺は、嘘をついて差し出させる。

刑法249条(恐喝)条文全文 〔短答・論文〕

刑法249条(恐喝)=第1項「人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。」第2項「前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。」→ハイライト=恐喝して/財物を交付させた(1項=財物)/財産上不法の利益(2項=利益)/十年以下の拘禁刑。🔴 1項=財物恐喝・2項=利益恐喝(「前項の方法により」=同じく恐喝による)。法定刑は詐欺246と同じ十年以下の拘禁刑。e-Gov現行(140AC0000000045・2025年6月施行の拘禁刑統一後表記=旧「懲役」は使わない)。

条文を全文で出します。249条、恐喝罪。第1項。人を恐喝して財物を交付させた者は。十年以下の拘禁刑に処する。これが1項、財物恐喝です。十年以下の拘禁刑。詐欺246と同じです。現行は拘禁刑。古い教材の懲役は、使いません。前項の方法により、財産上不法の利益を得る。同じく恐喝によって、です。これが2項、利益恐喝。詐欺の246と、まったく同じ作りですね。

客体——財物(不動産も含む)+財産上の利益 〔短答〕

2. 客体——財物(1項)+財産上の利益(2項)。本罪の客体=財物(1項)と財産上の利益(2項)。🔴 窃盗・詐欺の「財物」と違い、恐喝罪の「財物」には動産のほか不動産も含まれる(大判明44・12・4)。理由=恐喝は被害者の交付(処分行為)で財産が移る交付罪であり、被害者を畏怖させて不動産の引渡し・登記移転等の処分をさせることが可能だから(窃盗は占有を「奪う」罪=不動産は移動できず原則対象外、という整理との対比)。財産上の利益の意義は#53既出(債務免除・役務提供等)。★暗記すべき規範(短答)=「恐喝罪の客体たる『財物』には不動産も含まれる(大判明44・12・4)。」

二つ目、客体です。何を取れば恐喝か。ここで一つ、短答で問われる注意点。恐喝の財物には、不動産も含まれます。窃盗や詐欺の感覚と、少し違うところです。窃盗は占有を「奪う」罪。土地は持ち去れません。でも恐喝は、相手に交付させる罪です。怖がらせて、土地を引き渡させる、登記を移させる。だから恐喝の財物には、不動産も含む。交付罪だから不動産もいける、と理解します。

行為(恐喝)——広義の暴行/害悪の告知/違法行為の告知も 〔短答・論文〕

3. 行為=「恐喝」——広義の暴行・脅迫。本罪の行為=「恐喝」=①交付の手段としての暴行・脅迫で②反抗抑圧に至らない程度のもの。暴行=相手方を畏怖させる性質があれば足りる=広義の暴行(人の身体に直接向けられる必要はない=物を壊す・暴れる等でも可)。脅迫=相手方を畏怖させるに足る害悪の告知(脅迫罪の狭義の脅迫より広い=害悪の対象に限定なし/告知方法は黙示でもよい)。🔴 違法行為の告知も脅迫にあたる=犯罪事実を捜査機関に通報する旨を告げて口止め料を交付させる等、違法行為(権利の実現を装う場合も含む)の告知も本罪の脅迫にあたる(最判昭29・4・6=判例・通説)。害悪の内容に制限はない。★暗記すべき規範=「脅迫=相手方を畏怖させるに足る害悪の告知。違法行為の告知も脅迫にあたる(最判昭29・4・6)。」

三つ目、行為です。どんな行為が「恐喝」か。まず暴行は、広い意味でいいんです。相手を畏怖させる性質があれば足りる。目の前で物を壊す、暴れる、でもいい。次に脅迫。畏怖させるに足る害悪の告知です。脅迫罪の脅迫より、広いんです。害悪の対象に、限定がない。黙示でもいい。違法行為の告知も、脅迫にあたります。例えば、お前の犯罪を警察に通報するぞ、と告げる。通報自体は、むしろ正当にも見えますよね。でも、それで金を取れば、本罪の脅迫にあたります。最判昭29・4・6。害悪の内容に制限はない。

処分行為——恐喝も交付罪(詐欺#58と同型) 〔論文〕

4. 処分行為——恐喝罪も交付罪。本罪は詐欺と同じく交付罪=被害者による処分行為が必要。処分行為=畏怖した結果としてなされた、瑕疵ある意思に基づいて財物・財産上の利益を終局的に相手方に移転させる行為(意義は詐欺の処分行為とほぼ同じ=#58既出=ここでは当てはめのみ)。🔴「瑕疵ある意思」=畏怖により自由を欠いた状態でなされた意思=詐欺の「錯誤に基づく交付」と同じく、被害者が"自分で"財産を渡す点が強盗(反抗抑圧して奪う=交付不要)と決定的に違う。これがあるから恐喝は強盗ではなく交付罪に分類される。★暗記すべき規範=「処分行為=畏怖した結果、瑕疵ある意思に基づき財物・利益を終局的に移転させる行為。」

四つ目、処分行為です。ここは#58の写し替え。恐喝も交付罪。だから処分行為が要る。畏怖した結果、瑕疵ある意思で交付する。詐欺の、錯誤に基づく交付と同じ位置です。そこが強盗との、決定的な違いです。反抗を抑圧して、奪う。交付はいりません。だから恐喝は、交付罪に分類される。

未遂(250)——恐喝の因果経過と切れ目 〔短答・論文〕

5. 未遂(250)——①恐喝→②畏怖→③処分行為→④喝取の因果経過。本罪は①恐喝→②畏怖→③処分行為(瑕疵ある意思に基づく交付)→④喝取の因果経過を予定する(詐欺#58の①欺罔→②錯誤→③処分行為→④移転と同型)。未遂は罰する(250)。切れ目=(a) 畏怖させるに足る暴行・脅迫はあったが相手方が畏怖しなかった/(b) 畏怖したが処分行為がなかった=②③④が欠ける=恐喝未遂(250)。(c) 暴行・脅迫がなされ相手方が畏怖していても、それが処分行為に向けられたものでない(ただの腹いせ等)=そもそも①の「恐喝」があったといえない=恐喝未遂すら不成立=別罪(脅迫罪・暴行罪)の問題に。★暗記すべき規範=「①恐喝→②畏怖→③処分行為→④喝取。畏怖せず/処分行為なし=未遂(250)。交付に向けた恐喝でなければ未遂すら不成立。」

五つ目、未遂です。どこで未遂になるか。①恐喝、②畏怖、③処分行為、④喝取。①欺罔・錯誤・処分・移転、の恐喝版です。まず、脅したけど相手が畏怖しなかった。②が欠けて、恐喝未遂です。③処分行為がない。これも、恐喝未遂。ここまでは、鎖の途中で切れた未遂です。脅して相手が怖がっていても、です。その脅しが、交付に向けられていない場合。ただの腹いせで怒鳴った、みたいな場合です。そもそも「恐喝」がない。未遂すら、不成立。脅迫罪や、暴行罪の問題になります。

恐喝の因果経過フロー 〔短答・論文〕

🔴 恐喝の因果経過フロー(未遂の切れ目つき)。①恐喝(交付に向けた暴行・脅迫)→②畏怖→③処分行為(瑕疵ある意思に基づく交付)→④喝取(既遂)。各矢印に切れ目を注記=②が欠=相手が畏怖せず→恐喝未遂(250)/③が欠=畏怖したが処分行為なし→恐喝未遂(250)/①が欠=交付に向けた恐喝でない(ただの腹いせの暴行脅迫)→恐喝未遂すら不成立=別罪(脅迫・暴行)。詐欺#58の因果連鎖(①欺罔→②錯誤→③処分行為→④移転)と同型である旨を脇に注記。

フローで、因果経過を見ます。①恐喝、②畏怖、③処分行為、④喝取。畏怖しなかった=恐喝未遂。処分行為なし=これも恐喝未遂。交付に向けた恐喝でない=未遂すら不成立、別罪。①欺罔が①恐喝に、②錯誤が②畏怖に変わるだけ。

権利行使と恐喝〔論証38〕——2段階で考える 〔短答・論文〕

6. 🔴🔴 権利行使と恐喝〔論証38・論文最重要〕。事案=貸主Aが、借主Bに対する正当な貸金債権を、暴行・脅迫を用いて取り立てた。正当な権利者が恐喝手段で弁済を受けた場合、Aに恐喝罪(249条1項)が成立するか。考え方=2段階。【第1段=構成要件該当性(保護法益論)】恐喝罪の保護法益を所有権等の本権と解すると、貸金につき正当な権利を有するAの取立ては構成要件に該当しないことになる。しかし自力救済が禁じられている現代社会(民202条2項参照)では、保護法益は本権ではなく占有そのものと解するのが妥当(#54窃盗で確立)。→Aの取立てがBの占有を侵害する以上、構成要件該当性は肯定。【第2段=違法性阻却】①権利の行使という正当な目的があり、②権利の範囲内であって、③その手段が社会的相当性の範囲内(社会通念上一般に忍容すべき程度)にあると認められるときは、正当行為(35条)として違法性が阻却=恐喝罪不成立。範囲・程度を超えれば恐喝罪成立。

いよいよ後半。権利行使と恐喝、論証38です。事案を確認します。AがBに10万円を貸した。そのAが、暴行・脅迫で取り立てた。これで、Aに恐喝罪が成立するか。多くの人がそう思います。でも、2段階で考えます。第1段は、構成要件に当たるか。保護法益の話です。仮に、守るのは所有権などの本権だとします。すると、Aには正当な権利がある。だから当たらない。でも、それでいいか。自力救済は禁止ですよね。現代社会は、それを禁じています。民202条2項。守るのは、占有そのもの。これは#54の窃盗。Aの取立ては、Bの占有を侵害している。自分の金でも、まず構成要件には当たるんです。第2段、違法性阻却です。三つの条件です。①権利行使という正当な目的。②権利の範囲内であること。③手段が、社会的相当性の範囲内。この三つを満たせば、35条で違法性阻却。でも、範囲や程度を超えたら、恐喝罪成立です。

権利行使と恐喝 2段階フロー 〔短答・論文〕

🔴 権利行使と恐喝 2段階フロー(論証38)。事案=貸主Aが暴行脅迫で貸金を取立て。【第1段:構成要件該当性】保護法益は本権か占有か?→本権説では正当な権利者は不可罰=不当→自力救済禁止(民202条2項)ゆえ保護法益=占有(#54)→Aの取立てはBの占有を侵害=構成要件該当。【第2段:違法性阻却】①権利行使という正当な目的②権利の範囲内③社会通念上一般に忍容すべき程度(社会的相当性)を超えない→3つ満たせば正当行為35条で違法性阻却=恐喝罪不成立/範囲・程度を逸脱すれば恐喝罪成立(交付を受けた全額・最判昭30・10・14)。脇に注記=権利行使と詐欺も同枠組み(処分行為の手段が欺罔か暴行脅迫かが違うだけ)。自前の喩え=正当な10万円の債権でも、深夜にバットを持って押しかけ脅す取立ては"作法"が社会の許容ラインを超える=中身(権利)が正しくても、やり方が反則なら反則。

フローで、2段階を整理します。保護法益は本権か占有か。本権説だと不可罰で不当。第2段は、三つの条件で違法性阻却。満たせば35条で不成立。超えれば恐喝成立。交付を受けた、全額です。最判昭30・10・14。喩えると、債権は正しくても作法の問題。深夜にバットを持って押しかけ、脅して取り立てる。中身が正しくても、やり方が反則なら反則です。権利行使と詐欺も、同じ枠組み。取り立ての手段が、脅しか嘘か、だけです。

短答ひっかけ

ここはひっかかる(恐喝のまとめ)。①🔴強盗との区別=暴行脅迫が反抗抑圧に至らない程度=恐喝(交付罪)/至れば強盗(強取)。客観的判断(#56)。②客体=恐喝の財物には不動産も含む(大判明44・12・4・交付罪だから)。③行為=広義の暴行/畏怖させるに足る害悪の告知=脅迫/違法行為の告知も脅迫(最判昭29・4・6)。④因果経過=①恐喝→②畏怖→③処分行為→④喝取(畏怖せず/処分行為なし=未遂250/交付に向けた恐喝でなければ未遂すら不成立=別罪)。⑤🔴権利行使と恐喝(論証38)=第1段:占有説で構成要件該当→第2段:権利の範囲内+社会通念上一般に忍容すべき程度なら35条で違法性阻却・不成立/逸脱すれば恐喝罪成立(全額・最判昭30・10・14)。⑥他罪=暴行脅迫は吸収/傷害は観念的競合(最判昭23・7・29)。★全体の軸=恐喝は強盗(より弱い暴行脅迫)と詐欺(同じ交付罪)の"あいだ"。

整理します。①強盗との区別は、反抗抑圧の程度。②客体は、不動産も含む。交付罪だから。③行為は、違法行為の告知も脅迫。④因果経過は、①恐喝から④喝取まで。⑤権利行使と恐喝が、最重要。逸脱すれば、全額が恐喝。最判昭30・10・14。暴行脅迫は吸収、傷害は観念的競合です。

📝 論文の型

★コア規範|権利行使と恐喝(論証38)。【第1段=構成要件該当性】「自力救済が禁じられている現代社会(民202条2項参照)では、恐喝罪の保護法益は本権ではなく占有そのものであり、正当な権利者の取立ても占有を侵害する以上、構成要件に該当する」。【第2段=違法性阻却】「①権利行使という正当な目的があり、②権利の範囲内で、③その手段が社会通念上一般に忍容すべき程度(社会的相当性の範囲内)にあれば、正当行為(35条)として違法性が阻却される(最判昭30・10・14)」。逐語固定は太字(占有そのもの/権利の範囲内/社会通念上一般に忍容すべき程度)のみ・あとは趣旨から復元。プレースホルダ=kyokatsu_kenri_kihan.png(compose_ronsho/visual-director が作成)。

論文の型です。権利行使と恐喝、論証38。三つだけ。占有そのもの、権利の範囲内。社会通念上一般に忍容すべき程度。本権説だと正当な権利者が不可罰で不当。取立ても占有侵害だから、構成要件該当。正当な目的、権利の範囲内、社会的相当性。逸脱すれば恐喝罪成立。これで書けます。

答案の型|権利行使と恐喝(論証38)。【事例】Aは、Bに対し弁済期の到来した50万円の貸金債権を有していたが、Bが返済を渋ったため、深夜にB宅へ押しかけ「払わなければ痛い目を見るぞ」と申し向けて畏怖させ、その場で50万円の交付を受けた。Aに恐喝罪(249条1項)が成立するか。【問題提起】Aは正当な債権を有するから、その取立ては構成要件に該当しないとも思え、また仮に該当しても権利行使として違法性が阻却されないか。【規範】自力救済禁止(民202条2項)ゆえ保護法益は占有であり、正当な権利者の取立ても占有侵害=構成要件に該当する。もっとも、①権利行使という正当な目的があり、②権利の範囲内で、③手段が社会通念上一般に忍容すべき程度にあれば、正当行為(35条)として違法性が阻却される(最判昭30・10・14)。【あてはめ】AはBの占有を侵害し構成要件に該当する。Aには債権回収という正当な目的があり、額も50万円の範囲内である。しかし深夜の自宅押しかけと害悪の告知は、社会通念上一般に忍容すべき程度を逸脱する。よって違法性は阻却されず、交付を受けた50万円全額につき恐喝罪が成立する。

答案の型です。50万円の貸金を、脅して取った設例。正当な債権だから当たらないか、権利行使で阻却されないか。あてはめが、勝負どころです。目的は正当、額も範囲内。でも手段が問題。社会通念上、忍容すべき程度を逸脱。50万円全額につき、恐喝罪成立です。

他罪との関係——暴行脅迫は吸収/傷害は観念的競合 〔短答・論文〕

7. 他罪との関係。恐喝罪が成立するとき、その手段たる暴行・脅迫は恐喝罪に吸収され、別罪を構成しない(暴行罪・脅迫罪は不成立)。🔴 もっとも、手段の暴行により傷害結果が生じた場合は、恐喝罪に加えて傷害罪が成立し、両者は観念的競合(54条1項前段=1個の行為が2個の罪名にふれる)となる(最判昭23・7・29)。理由=傷害は恐喝の手段としての暴行の通常の範囲を超える重い結果であり、恐喝罪の評価に吸収しきれないから。公務員が恐喝的手段で賄賂を収受した場合=恐喝罪+収賄罪(詳細は贈収賄罪の回へ送り)。★暗記すべき規範(短答)=「暴行・脅迫は恐喝罪に吸収。傷害結果=恐喝罪+傷害罪の観念的競合(最判昭23・7・29)。」

最後、他罪との関係です。罪はいくつ成立するか。まず、手段の暴行・脅迫は、恐喝に吸収されます。恐喝の中に、飲み込まれます。ただし、殴って怪我をさせたら、話は別です。恐喝罪に加えて、傷害罪も成立します。両者は、観念的競合です。最判昭23・7・29。傷害は、恐喝の暴行に吸収しきれない重い結果。一個の行為だから、併合罪でなく観念的競合。恐喝罪と収賄罪。詳しくは、賄賂罪の回でやります。

今日の地図(保存版)

#60 恐喝罪 まとめ。軸=恐喝は強盗(#56=より弱い暴行脅迫)と詐欺(#58=同じ交付罪)の"あいだ"。①意義・区別=暴行脅迫だが反抗抑圧に至らない程度(強盗との分水嶺・客観的判断)→畏怖させ瑕疵ある意思で交付させる交付罪。②客体=財物(不動産も含む・大判明44・12・4)+財産上の利益(1項/2項・十年以下の拘禁刑)。③行為=広義の暴行/畏怖させるに足る害悪の告知=脅迫/違法行為の告知も脅迫(最判昭29・4・6)。④因果経過=①恐喝→②畏怖→③処分行為→④喝取(畏怖せず/処分なし=未遂250/交付に向かわぬ恐喝=未遂すら不成立・別罪)。⑤🔴権利行使と恐喝(論証38)=占有説で構成要件該当→権利範囲内+社会通念上一般に忍容すべき程度なら35条で阻却・不成立/逸脱すれば恐喝罪成立(全額・最判昭30・10・14)。⑥他罪=暴行脅迫は吸収/傷害は観念的競合(最判昭23・7・29)。→これで奪取罪・交付罪の地図は完結。次は#61=横領罪①(占有侵害を伴わない罪)。

まとめます。軸は、恐喝は強盗と詐欺のあいだ。区別は、反抗抑圧に至らない程度。客体は、財物に不動産も含む、と利益。因果経過は、①恐喝から④喝取まで。最重要は、権利行使と恐喝。逸脱すれば、全額が恐喝。覚えましたね。これで、奪取罪と交付罪の地図は完結です。次は何ですか。今までと、決定的に違う罪です。これまでは、他人の占有を侵害して財産を取る罪でした。横領は、占有侵害を伴わない罪です。自分が預かって持っている物を、自分の物にする罪。奪取罪とは、別の発想の罪です。楽しみに。

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