恐喝罪——強盗との境目・権利行使と恐喝〔論証38〕・2項恐喝
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第12章 財産に対する罪 ⑩/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
恐喝の意義・強盗との区別 〔短答・論文〕

一つ目、恐喝の意義と、強盗との区別です。恐喝は、暴行・脅迫で相手を畏怖させる。そして、瑕疵ある意思で交付させる。自由でない、ゆがんだ意思です。#58の道具。強盗も暴行脅迫を使う。違いは、程度です。強盗は、相手の反抗を抑圧する強さ。恐喝は、反抗を抑圧するには至らない程度。だから相手は、畏怖して”自分で”払う。うまい。そこが交付罪である理由です。反抗を抑圧する程度か、客観的に判断します。一般人基準。これは#56強盗の枠組みです。交付させる手段としての暴行脅迫で、反抗抑圧に至らない程度。
強盗/恐喝/詐欺 3罪対比表 〔短答・論文〕

表にします。強盗、恐喝、詐欺の三つを並べます。見る列は三つ。手段、反抗抑圧、交付の要否。手段は暴行脅迫、反抗抑圧あり、交付は不要。次が恐喝。手段は暴行脅迫、反抗抑圧は至らない。必要です。畏怖させて、相手に処分行為をさせる。手段は嘘、反抗抑圧という概念はなし、交付は必要。喩えると、財布を出させる三つのやり方です。組み伏せて、自分の手で財布を抜き取る。肩に手を置いて、低い声で、払ったほうが身のため。詐欺は、嘘をついて差し出させる。
刑法249条(恐喝)条文全文 〔短答・論文〕

条文を全文で出します。249条、恐喝罪。第1項。人を恐喝して財物を交付させた者は。十年以下の拘禁刑に処する。これが1項、財物恐喝です。十年以下の拘禁刑。詐欺246と同じです。現行は拘禁刑。古い教材の懲役は、使いません。前項の方法により、財産上不法の利益を得る。同じく恐喝によって、です。これが2項、利益恐喝。詐欺の246と、まったく同じ作りですね。
客体——財物(不動産も含む)+財産上の利益 〔短答〕

二つ目、客体です。何を取れば恐喝か。ここで一つ、短答で問われる注意点。恐喝の財物には、不動産も含まれます。窃盗や詐欺の感覚と、少し違うところです。窃盗は占有を「奪う」罪。土地は持ち去れません。でも恐喝は、相手に交付させる罪です。怖がらせて、土地を引き渡させる、登記を移させる。だから恐喝の財物には、不動産も含む。交付罪だから不動産もいける、と理解します。
行為(恐喝)——広義の暴行/害悪の告知/違法行為の告知も 〔短答・論文〕

三つ目、行為です。どんな行為が「恐喝」か。まず暴行は、広い意味でいいんです。相手を畏怖させる性質があれば足りる。目の前で物を壊す、暴れる、でもいい。次に脅迫。畏怖させるに足る害悪の告知です。脅迫罪の脅迫より、広いんです。害悪の対象に、限定がない。黙示でもいい。違法行為の告知も、脅迫にあたります。例えば、お前の犯罪を警察に通報するぞ、と告げる。通報自体は、むしろ正当にも見えますよね。でも、それで金を取れば、本罪の脅迫にあたります。最判昭29・4・6。害悪の内容に制限はない。
処分行為——恐喝も交付罪(詐欺#58と同型) 〔論文〕

四つ目、処分行為です。ここは#58の写し替え。恐喝も交付罪。だから処分行為が要る。畏怖した結果、瑕疵ある意思で交付する。詐欺の、錯誤に基づく交付と同じ位置です。そこが強盗との、決定的な違いです。反抗を抑圧して、奪う。交付はいりません。だから恐喝は、交付罪に分類される。
未遂(250)——恐喝の因果経過と切れ目 〔短答・論文〕

五つ目、未遂です。どこで未遂になるか。①恐喝、②畏怖、③処分行為、④喝取。①欺罔・錯誤・処分・移転、の恐喝版です。まず、脅したけど相手が畏怖しなかった。②が欠けて、恐喝未遂です。③処分行為がない。これも、恐喝未遂。ここまでは、鎖の途中で切れた未遂です。脅して相手が怖がっていても、です。その脅しが、交付に向けられていない場合。ただの腹いせで怒鳴った、みたいな場合です。そもそも「恐喝」がない。未遂すら、不成立。脅迫罪や、暴行罪の問題になります。
恐喝の因果経過フロー 〔短答・論文〕

フローで、因果経過を見ます。①恐喝、②畏怖、③処分行為、④喝取。畏怖しなかった=恐喝未遂。処分行為なし=これも恐喝未遂。交付に向けた恐喝でない=未遂すら不成立、別罪。①欺罔が①恐喝に、②錯誤が②畏怖に変わるだけ。
権利行使と恐喝〔論証38〕——2段階で考える 〔短答・論文〕

いよいよ後半。権利行使と恐喝、論証38です。事案を確認します。AがBに10万円を貸した。そのAが、暴行・脅迫で取り立てた。これで、Aに恐喝罪が成立するか。多くの人がそう思います。でも、2段階で考えます。第1段は、構成要件に当たるか。保護法益の話です。仮に、守るのは所有権などの本権だとします。すると、Aには正当な権利がある。だから当たらない。でも、それでいいか。自力救済は禁止ですよね。現代社会は、それを禁じています。民202条2項。守るのは、占有そのもの。これは#54の窃盗。Aの取立ては、Bの占有を侵害している。自分の金でも、まず構成要件には当たるんです。第2段、違法性阻却です。三つの条件です。①権利行使という正当な目的。②権利の範囲内であること。③手段が、社会的相当性の範囲内。この三つを満たせば、35条で違法性阻却。でも、範囲や程度を超えたら、恐喝罪成立です。
権利行使と恐喝 2段階フロー 〔短答・論文〕

フローで、2段階を整理します。保護法益は本権か占有か。本権説だと不可罰で不当。第2段は、三つの条件で違法性阻却。満たせば35条で不成立。超えれば恐喝成立。交付を受けた、全額です。最判昭30・10・14。喩えると、債権は正しくても作法の問題。深夜にバットを持って押しかけ、脅して取り立てる。中身が正しくても、やり方が反則なら反則です。権利行使と詐欺も、同じ枠組み。取り立ての手段が、脅しか嘘か、だけです。
短答ひっかけ

整理します。①強盗との区別は、反抗抑圧の程度。②客体は、不動産も含む。交付罪だから。③行為は、違法行為の告知も脅迫。④因果経過は、①恐喝から④喝取まで。⑤権利行使と恐喝が、最重要。逸脱すれば、全額が恐喝。最判昭30・10・14。暴行脅迫は吸収、傷害は観念的競合です。
📝 論文の型

論文の型です。権利行使と恐喝、論証38。三つだけ。占有そのもの、権利の範囲内。社会通念上一般に忍容すべき程度。本権説だと正当な権利者が不可罰で不当。取立ても占有侵害だから、構成要件該当。正当な目的、権利の範囲内、社会的相当性。逸脱すれば恐喝罪成立。これで書けます。

答案の型です。50万円の貸金を、脅して取った設例。正当な債権だから当たらないか、権利行使で阻却されないか。あてはめが、勝負どころです。目的は正当、額も範囲内。でも手段が問題。社会通念上、忍容すべき程度を逸脱。50万円全額につき、恐喝罪成立です。
他罪との関係——暴行脅迫は吸収/傷害は観念的競合 〔短答・論文〕

最後、他罪との関係です。罪はいくつ成立するか。まず、手段の暴行・脅迫は、恐喝に吸収されます。恐喝の中に、飲み込まれます。ただし、殴って怪我をさせたら、話は別です。恐喝罪に加えて、傷害罪も成立します。両者は、観念的競合です。最判昭23・7・29。傷害は、恐喝の暴行に吸収しきれない重い結果。一個の行為だから、併合罪でなく観念的競合。恐喝罪と収賄罪。詳しくは、賄賂罪の回でやります。
今日の地図(保存版)

まとめます。軸は、恐喝は強盗と詐欺のあいだ。区別は、反抗抑圧に至らない程度。客体は、財物に不動産も含む、と利益。因果経過は、①恐喝から④喝取まで。最重要は、権利行使と恐喝。逸脱すれば、全額が恐喝。覚えましたね。これで、奪取罪と交付罪の地図は完結です。次は何ですか。今までと、決定的に違う罪です。これまでは、他人の占有を侵害して財産を取る罪でした。横領は、占有侵害を伴わない罪です。自分が預かって持っている物を、自分の物にする罪。奪取罪とは、別の発想の罪です。楽しみに。