詐欺罪②後編——クレジットカード詐欺〔論証36〕/電子計算機使用詐欺246の2/準詐欺248
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第12章 財産に対する罪 ⑨/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
クレカ詐欺・総論——三者がからむ取引 〔論文の骨格〕

一つ目、クレジットカード詐欺の総論です。そこを解くには、カードの仕組みを知る必要があります。登場人物は三人。会員、加盟店、カード会社です。会員が、お店で商品を買う。これが加盟店ですね。そのお店は、代金を誰からもらいますか。カード会社が、お店に立替払いをします。そしてカード会社が、後で会員から回収する。損をかぶるのは、カード会社です。お店は、責任を負いません。立替払いを受けて終わり。そこなんです。だから「詐欺じゃないのでは」と。そこで軸に戻ります。詐欺は何を捉える罪でしたか。お店という人を欺いて、商品を渡させた点です。お店が取引するか決める”重要事項”を偽ったか。それを、自己名義と他人名義で分けて見ます。
クレカ三者関係図 〔論文の骨格〕

関係図です。AがCで買い、BがCに立替払い。回収に失敗しても、損はBがかぶる。喩えると、カードは保証付き小切手です。お店は「この小切手は決済される」と信じて渡す。不渡りになる小切手を、渡すのと同じです。他人の名前のサインで切った小切手=なりすまし。
自己名義クレカ——支払意思なく使う 〔論文の骨格〕

二つ目、自己名義のカードを不正に使う場合。ただし、支払う意思も能力もないのに使う。これは多数説が、詐欺成立を認めます。問題は、どう構成するか。説が二つあります。一つ目が、1項詐欺説。下級審の多数です。加盟店が、被欺罔者で処分者で、被害者。払えないと知れば、お店は取引を断ったはず。商品を渡したのが処分行為=1項詐欺成立です。1項詐欺説で書けば足ります。そこが難点。お店に実質的な損害があるか。そこで二つ目、2項詐欺説が出ます。実質的に損するのは、カード会社だと考える。だまされたのは加盟店、損するのはカード会社。商品交付でカード会社が立替払債務を負う。だから商品交付時に、2項詐欺と構成します。原則1項詐欺説。損害論に触れたければ2項を補充です。支払の意思・能力は、お店が取引を決める重要事項。
他人名義クレカ——承諾を問わず1項詐欺 〔論文の骨格〕

三つ目、他人名義のカードを不正に使う場合。これは1項詐欺成立で、争いが少ない。ところが、ここに引っかけがあります。名義人本人が「使っていいよ」と許していた場合。多くの人がそう思います。でも、結論は変わりません。承諾があっても、1項詐欺は成立します。加盟店が判断の基礎にするのは何か、を考えます。名義人本人による、正当な利用かどうか、です。他人がなりすませば、それを偽っています。お店の窓口では、見えません。関係ないんです。だから本人性という重要事項を、偽っている。これが最決平16・2・9です。規約どおり決済されると誤信していても、同じ。売上票へのサイン=私文書偽造と、その行使です。名義人との関係では、背任も検討対象です。
クレカ詐欺 場合分けフロー 〔論文の骨格〕

フローで、クレカ詐欺をまとめます。だます相手は、お店の人。機械ではない。不正使用を、自己名義と他人名義で分けます。支払意思・能力を偽る→1項詐欺説か2項詐欺説。他人名義は。プラス、サインの私文書偽造です。お店が取引を決める重要事項を、偽ったか。一枚で論証36の全体像が見えますね。
📝 論文の型

論文の型、クレジットカード詐欺。論証36です。取引に応じるか否かの判断の基礎となる重要事項。名義人本人による正当な利用、詐欺成立は左右されない。だます相手は加盟店=人=詐欺の射程内。それを偽って商品を交付させた以上、1項詐欺。2項詐欺、三角詐欺構成で補充できます。そこまで言えれば完璧です。

答案の型です。自分のカードで腕時計を買った設例。規範で、支払意思は重要事項、と立てます。重要事項を偽って交付させた=1項詐欺成立です。応用として、添えておけば万全です。
電子計算機使用詐欺246の2——機械は錯誤しない 〔短答・論文〕

後半に入ります。電子計算機使用詐欺、246の2。いい疑問です。まず詐欺になるか、を考えます。詐欺は「人」を欺く罪でしたね。機械は。#58の原理です。だから詐欺は成立しません。窃盗は、財物の占有を奪う罪です。でも口座の残高を振り替えただけだと。財物の移転がない=窃盗も成立しないんです。そこに穴が空きます。例を出しましょう。システムを操作して、他人の預金を自分の口座へ振替。そして現金化する前に、自動引落しで光熱費に充てる。だから詐欺も窃盗も、捕まえられない。条文を読みます。中身は二つの行為です。一つ目、機械に虚偽の情報や不正な指令を与える。入金がないのに、入金があったように入力する。二つ目は、虚偽の電磁的記録を供する。例えば、残高を改ざんしたプリペイドカードを使う。法定刑は、詐欺と同じ十年以下の拘禁刑です。
刑法246条の2(電子計算機使用詐欺)条文全文 〔短答・論文〕

条文です。少し長いので、区切って読みます。「前条に規定するもののほか」。前条は、詐欺246です。穴埋めだという宣言です。人の事務処理に使う電子計算機に、と続きます。虚偽の情報、若しくは不正な指令を与えて。財産権の得喪、若しくは変更に係る。不実の電磁的記録を作り、が一つ目の行為。二つ目が、虚偽の電磁的記録を、用に供して。そして財産上不法の利益を得、又は得させる。十年以下の拘禁刑です。詐欺と同じ重さ。「得喪」です。「侵害」ではありません。古い教材だと「侵害」と書いてあることがある。あと刑は拘禁刑=懲役ではない。現行はこちらです。
詐欺246/電子計算機使用詐欺246の2 役割分担図 〔短答・論文〕

役割分担図です。問いは一つ。だます相手は。人なら、欺いて処分させて=246の詐欺。さらに分岐。財物を取ったか、利益だけか。窃盗です。財物の占有を奪っている。246の2で穴埋め。口座振替だけ、みたいな場合。246の2は、詐欺の替え玉です。昔は人をだまして金を動かした。いまはシステムに嘘。だから詐欺と同じ重さの条文を、別に作った。
準詐欺248——だまさずに「つけ込む」 〔短答・論文〕

最後、準詐欺248。三つ目の詰まりです。詐欺は、積極的に嘘をついて錯誤に陥れる罪。でも、嘘をつくまでもない相手がいます。初めから判断力が、不十分な人です。幼い子どもや、認知症の高齢者。わざわざだまさなくても、つけ込むだけで取れてしまう。子どもに「お小遣い全部とこのおもちゃ交換ね」。でも判断力の不十分さに、つけ込んでいます。条文の言葉は二つの相手です。一つ目、未成年者の知慮浅薄。二つ目、人の心神耗弱。知慮浅薄は、知識が乏しく思慮が足りないこと。精神の障害で、通常の判断能力を備えていない状態。いい質問。違います。あれは行為者側、39条2項。被害者側の、判断力の話です。混同しないように。乗じて=誘惑にかかりやすい状態を利用する。
刑法248条(準詐欺)条文全文 〔短答・論文〕

条文です。これは短いので、一気に読みます。未成年者の知慮浅薄、又は人の心神耗弱に乗じて。その財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得る。又は他人にこれを得させた者は。十年以下の拘禁刑です。未成年者=18歳未満です。古い教材だと「20歳未満」と書いてあります。2022年の民法改正で、20歳から18歳に。条文本文に年齢はなく、民4条からの解釈です。懲役ではなく、拘禁刑。現行で固めます。
準詐欺248 詐欺との区別図 〔短答・論文〕

区別図です。詐欺と準詐欺の境目。積極的に嘘をついて、錯誤を作り出す。既に判断力が不十分な人に、そのままつけ込む。喩えると、詐欺は合鍵でこじ開ける。もともと開いていたドアに、そっと入り込む。嘘という合鍵を作れば、端的に詐欺です。境界は、欺罔があるかどうかです。
短答ひっかけ

整理します。①クレカ自己名義は、支払意思を偽る。②他人名義は、本人性を偽る。最決平16・2・9でした。③246の2。条文は「得喪」「拘禁刑」。侵害・懲役は誤り。⑤準詐欺248は、つけ込む罪。呉の20歳未満は、旧法。注意してください。責任能力の心神耗弱とは、別物です。
今日の地図(保存版)

まとめます。軸は、詐欺は「人」を欺く罪。クレカは、だます相手が人=射程内の応用。他人名義は、承諾を問わず1項詐欺でした。機械は錯誤しない=詐欺も窃盗もダメな穴埋め。準詐欺248は。未成年者は18歳未満、でしたね。自分のカードで詐欺、ATMで穴埋め、つけ込んで準詐欺。基本構造から後編まで、全部終わりました。#60、恐喝罪です。畏怖させて、交付させる罪。詐欺の隣にあります。楽しみにしていてください。お疲れさまでした。