刑法 ゼロから刑法#61

横領罪①後編——横領行為・不法領得の意思(利用処分意思は不要)・一時流用・盗品等の横領

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第12章 財産に対する罪 ⑫/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

横領行為の意義——領得行為説 〔短答・論文〕

1. 横領行為の意義(領得行為説)。本罪の行為は「横領」。「横領」=不法領得の意思を実現する一切の行為(領得行為説・通説)。この定義は最重要暗記。典型=他人の物の売却・質入れ・抵当権の設定(いずれも「所有者でなければできないような処分」)。ポイント=「横領」の中身は、結局「不法領得の意思とは何か」に帰着する=だから次の論点(不法領得の意思)が核心になる。★暗記すべき規範(短答・論文共通)=「『横領』=不法領得の意思を実現する一切の行為(領得行為説)。典型=売却・質入れ・抵当権設定。」

一つ目、横領行為の意義です。本罪の行為は、横領。横領とは、不法領得の意思を実現する一切の行為。これを、領得行為説といいます。通説です。だから、具体例で押さえます。典型が三つ。売却、質入れ、抵当権の設定。どれも共通点があります。何だと思いますか。うまい。所有者でなければできないような、処分です。それをやる=自分が所有者のように振る舞う。ここで、一つ気づいてほしい。横領の定義は、「不法領得の意思を実現する行為」。つまり横領の中身は、不法領得の意思が何か、に帰着する。横領罪の、不法領得の意思。

横領行為の具体例リスト 〔短答・論文〕

🔴 横領行為の具体例リスト(領得行為説)。中心=「横領=不法領得の意思を実現する一切の行為」。典型例で串刺し=①売却(預かった物を他人に売る)/②質入れ(預かった物を質草にする)/③抵当権の設定(預かった不動産に担保を付ける)/④(論証48)毀棄・隠匿(壊す・隠す=利用も売却もしないが、なお横領にあたる=次の論点)。共通の軸=すべて「所有者でなければできないような処分」=自分が所有者のように振る舞う行為。

具体例を、一枚に並べます。中心が、横領=不法領得の意思を実現する一切の行為。売却、質入れ、抵当権の設定。毀棄・隠匿。壊す、隠す。そこが、次の論点なんです。今は予告だけ。でも全部、一つの軸で貫けます。預かっただけの人が、やっちゃいけないこと。

横領罪の不法領得の意思——②利用処分意思は不要〔論証48〕 〔論文〕

2. 🔴🔴 横領罪の不法領得の意思〔論証48〕——②利用処分意思は不要。事案=AがBから預かっていた物を、もっぱら毀棄・隠匿した(利用も売却もせず壊す・隠すだけ)。Aに横領罪が成立するか。問題の所在=窃盗等の奪取罪では不法領得の意思=①権利者排除意思+②利用処分意思の2つが必要だった(#54)。②が必要だったのは毀棄隠匿罪との区別のため。では横領でも②が必要か。結論=②利用処分意思は不要。理由=もっぱら毀棄・隠匿目的で領得したケースでも、それはなお委託信任関係を破壊する行為だから(横領の処罰根拠=委託の背信=前編既出。利用処分意思の有無を問わず背信は成立)。判例の規範=横領罪の不法領得の意思とは「他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思」(利用処分意思不要説)。→毀棄・隠匿も「横領」にあたる。B説(西田ら・少数)=横領も奪取犯である以上、奪取罪と同様②も必要。

二つ目、横領罪の不法領得の意思。事案で考えます。AがBから、物を預かった。それを、Aがもっぱら、壊して隠した。さて、Aに横領罪が成立するか。いい着眼です。まず、窃盗を思い出しましょう。①権利者排除意思と、②利用処分意思。二つ。その②は、何のために要ったか、覚えてますか。壊すだけの罪と、利用目的で奪う罪を切り分ける。では横領でも、②が要るのか。これが問題。②が必要なら、横領にならない。結論は、横領では②利用処分意思は不要です。横領の処罰根拠を、思い出してください。預かった物を、壊して隠したら、どうですか。利用しようが、壊そうが、背信は成立する。そこです。だから②で切り出す必要が、ないんです。横領は背信が核だから、②が要らない。うまい。それが、軸です。判例の規範を見ましょう。横領罪の不法領得の意思とは、です。他人の物の占有者が、委託の任務に背いて、です。その物につき権限がないのに、です。所有者でなければできないような、処分をする意思。これが規範です。利用処分意思は、入っていない。だから、壊して隠す行為も。なお、少数説もあります。西田先生など。横領も奪取犯である以上、奪取罪と同じに解する。提示だけ。試験では、不要説が判例・通説です。

窃盗/横領 不法領得の意思 対比表 〔論文〕

🔴 窃盗(奪取罪)/横領罪 不法領得の意思 対比表(論証48・最重要)。行=窃盗等の奪取罪/横領罪。列=「①権利者排除意思」「②利用処分意思」「②をめぐる理由」。窃盗等の奪取罪=①必要・②必要・理由=毀棄隠匿罪と区別するため(占有を侵害して奪う罪の中で利用目的を切り出す必要)。横領罪=①必要・②不要・理由=処罰根拠が委託信任関係の背信だから、もっぱら毀棄・隠匿目的でも背信=横領にあたり、②で切り出す必要がない。★この一枚で「横領は②利用処分意思が不要」を確定。軸=同じ「不法領得の意思」でも、罪の核(占有侵害か/委託の背信か)が違うから②の要否が逆になる。

一枚の表で、窃盗と横領を並べます。列は三つ。①権利者排除、②利用処分、②の理由。窃盗も横領も、両方とも必要。ここは同じ。窃盗は、必要。横領は、不要。ここが分かれ目。窃盗で②が要ったのは、毀棄隠匿罪との区別。横領で②が要らないのは、委託の背信が核だから。①は共通、②だけ逆。理由も書いておく。この一枚を、頭に焼き付けてください。

一時流用——費消時点の補填の意思+能力 〔論文〕

3. 一時流用——費消時点での補填の意思+能力。事案=買物用の代金としてBから預かった金銭(使途指定=前編で「他人の物」○と確定)を、Aが一時的に費消した。常に横領罪が成立するか。結論=成立しない場合がある。費消の時点で、もとに戻せる補填の意思と能力があった場合は、費消行為は不法領得の意思を実現する行為とはいえず「横領」にあたらない(軸=横領=不法領得の意思の発現行為だから、発現がなければ横領でない)。🔴 ポイント=意思だけでなく「能力(資力)」、しかも「費消の時点で」必要。後から「払うつもりだった」だけでは足りない。例=補填するつもりで競馬に充てたが外して払えない=費消時点で補填能力がない以上「横領」にあたる。★暗記すべき規範=「使途を定めて委託された金銭の費消も、費消の時点でもとに戻せる補填の意思と能力があれば、不法領得の意思の発現とはいえず『横領』にあたらない。意思のみならず能力が、費消時点で必要。」

三つ目、一時流用です。お金の話。買物用に預かった金を、Aが一時的に使った。じゃあ、いつも横領になるか。実は、ならない場合があるんです。費消の時点で、もとに戻せる意思と能力があった場合。そのときは、不法領得の意思の発現とはいえない。軸を思い出して。横領=発現行為でしたよね。ここで、超重要なポイントが二つ。一つ、意思だけじゃなく、能力。戻せる資力が要る。二つ、その能力は、費消の時点で必要。後から「払うつもりだった」では、足りない。補填するつもりで、その金を競馬に充てた。払えない。費消時点で、補填する能力がなかった。逆に、財布に同額あって即戻せるなら。戻す気プラス、戻せる力。しかも費消した瞬間に。

一時流用 補填の意思+能力フロー 〔論文〕

🔴 一時流用 補填の意思+能力フロー。使途を定めた預かり金を費消→「費消の時点で、もとに戻す補填の意思があるか?」→なし=横領成立/あり→「費消の時点で、もとに戻す補填の能力(資力)があるか?」→なし(後から払うつもり・競馬で外して払えない等)=横領成立/あり(自宅・財布に同額あり即戻せる等)=横領不成立。★軸=意思だけでは足りない。意思+能力、しかも判定の基準時は「費消の時点」。横領=不法領得の意思の発現だから、補填の意思+能力があれば発現とはいえない。

フローで、整理します。預かり金を費消した。まず、補填の意思はあるか。なければ、横領成立。あれば、次へ進みます。費消の時点で、戻せる能力があるか。横領成立。後から払うつもり、競馬で外した、はここ。横領不成立。財布に同額あって、即戻せる場合など。しかも基準時は、費消の時点。一枚で確定です。

既遂時期——発現行為で直ちに既遂 〔短答〕

4. 既遂時期——不法領得の意思の発現で直ちに既遂。本罪は、不法領得の意思の発現行為が行われれば、行為の完成を待たず直ちに既遂となる(最判昭27・10・17)。だから本罪に未遂犯処罰規定がない=発現=即既遂なので、未遂を処罰する余地もない(通説)。🔴 不動産は#62へ送り(言及のみ)=不動産の二重譲渡・抵当権設定の既遂時期は登記が絡むため別扱い(登記の完了をもって既遂とする登記説が有力)。原状回復目的の不実の抵当権設定仮登記は仮登記時点で既遂(最決平21・3・26)。これらは#62(不動産二重売買・二重抵当)でまとめて扱う。★暗記すべき規範(短答)=「横領罪=不法領得の意思の発現行為で直ちに既遂(最判昭27・10・17)。未遂処罰規定なし。」

四つ目、既遂時期。いつ犯罪が成り立つか。横領は、不法領得の意思の発現行為があれば。行為の完成を待たず、直ちに既遂です。最判昭27・10・17。ここから、面白い結論が出ます。横領には、未遂を処罰する規定が、ないんです。理由は、発現したら即既遂だから。だから未遂を処罰する余地も、ないんです。一点だけ、注意。不動産の場合。二重譲渡や抵当権設定は、登記が絡むんです。だから既遂時期が、別扱いになる。

盗品等の横領——委託信任関係 vs 所有権〔論証43/44〕 〔論文〕

5. 🔴 盗品等の横領〔論証43/44〕——窃盗犯人との委託信任関係は保護に値するか。事案=窃盗犯人Xが盗品の保管をAに依頼し、盗品をAに預けた。Aがその盗品を領得した。Aに横領罪が成立するか(受寄した盗品を売却し売却代金を横領した場合も同様)。問題の所在(前編の回収)=①Xからの委託は広義の不法原因給付だが、民708の「給付」(終局的移転)にあたらず物の寄託にとどまる=「他人の物」要件は満たしうる(前編・折衷説と接続)。②横領罪の占有は委託信任関係に基づくことを要する(前編で確定)。ところが本件の委託者Xは窃盗犯人=窃盗犯人との委託信任関係が横領罪で保護に値するかが分かれ目。【肯定説(判例・大谷ら)論証43】窃盗犯人の占有も保護される以上、窃盗犯人との委託信任関係も保護に値する=横領罪成立。【否定説(西田ら)論証44】横領罪は所有権に対する罪であるから、委託者である窃盗犯人に所有権がない以上、横領罪は成立しない。※呉「試験ではいずれの見解を書いても問題はない」。

五つ目、盗品等の横領。前編の知識が、効きます。事案。窃盗犯人Xが、盗品をAに預けた。ところがAが、その盗品を自分の物にした。ここで、引っかかる人が多い。盗まれた被害者が、本当の所有者です。じゃあ、Aは誰を裏切ったことになるのか。整理しましょう。前編の知識を二つ使います。一つ。Xからの委託は、広義の不法原因給付です。でも、これは渡しきりじゃなく、寄託にとどまる。だから折衷説で、「他人の物」にはあたりうる。ここで「他人の物」の関門は、クリアできる。横領の占有は、委託信任関係に基づくことが必要。ところが、本件の委託者は、窃盗犯人Xです。問題は、その一点に絞られます。窃盗犯人との委託信任関係が、保護に値するか。ここで、二つの説に分かれます。窃盗犯人の占有も、保護されると考える立場。占有が保護されるなら、その委託信任関係も。だから横領罪が、成立する。これが肯定説。横領罪は、所有権に対する罪だ、と考える。委託者である窃盗犯人には、所有権がない。所有権がない以上、横領罪は成立しない。呉先生いわく、試験ではどちらでもいい。

盗品等の横領 肯定説/否定説 分岐 〔論文〕

🔴 盗品等の横領 肯定説/否定説 分岐(論証43/44)。窃盗犯人Xから預かった盗品をAが領得→前提①Xの委託は不法原因給付だが寄託にとどまる=「他人の物」○(前編折衷説)/前提②横領の占有は委託信任関係に基づくことを要する→分岐「委託者Xとの委託信任関係は横領罪で保護に値するか?」→【肯定説 論証43】窃盗犯人の占有も保護される→窃盗犯人との委託信任関係も保護に値する→横領成立/【否定説 論証44】横領罪は所有権に対する罪・委託者たる窃盗犯人に所有権なし→横領不成立。脇の注記=前編の不法原因給付・折衷説(給付か寄託か)と接続/試験はどちらの説でも可。

フローで、分岐を整理します。前提一、寄託だから「他人の物」は○。前提二、横領の占有は、委託信任関係に基づく。窃盗犯人との委託信任関係は、保護に値するか。窃盗犯人の占有も保護=委託信任関係も保護=成立。所有権の罪で、窃盗犯人に所有権なし=不成立。給付か寄託か、の話とつながっています。試験は、どちらの説でも書ければOKです。

横領と背任の区別——領得か権限内の背信か〔論証52入口〕 〔短答・論文〕

6. 横領と背任の区別〔論証52入口〕——領得行為か、権限内の背信か。両罪はともに信任関係の背信を処罰するため区別が問題になる。区別の軸=横領=特定の物について「所有者でなければできないような処分」(=領得行為)/背任=権限の範囲内で、本人の利益に反する行為(権限濫用・対外的取引)。横領にあたれば横領罪、あたらなければ背任罪。事案イメージ(自前例)=預かった物そのものを自分の物として処分(売る・壊す)=横領/与えられた権限の枠内で本人に損害を与える取引(回収見込みのない融資など)=背任。🔴 詳細は#63送り=事務処理者・図利加害目的・財産上の損害〔論証53〕・横領が優先される関係(横領にあたれば背任を論じない)は#63背任で扱う。本回は「区別の軸=領得か権限内の背信か」を提示するのみ。

最後、横領と背任の区別。入口だけです。両方とも、信任関係の背信を罰する罪です。だから、どう区別するかが問題になる。横領は、特定の物について、所有者でなければできない処分。背任は、権限の範囲内で、本人の利益に反する行為。例えば、預かった物そのものを売ったら。与えられた権限の枠内で、損な取引をして本人に損害。回収見込みのない融資を実行する、みたいな。横領にあたれば横領、あたらなければ背任。次の次、#63です。事務処理者や、図利加害目的。領得か、権限内の背信か。これだけ持ち帰ってください。

横領/背任 区別表 〔短答・論文〕

🔴 横領/背任 区別表(論証52入口)。行=横領罪/背任罪。列=「行為の性質」「対象」「典型例」。横領罪=行為の性質:所有者でなければできないような処分(領得行為)・対象:特定の物・典型例:預かった物を売却/質入れ/毀棄。背任罪=行為の性質:権限の範囲内で本人の利益に反する行為(権限濫用・対外的取引)・対象:財産全般・典型例:回収見込みのない融資など権限内の背信。★軸=横領にあたれば横領罪、あたらなければ背任罪。詳細(事務処理者・図利加害目的・損害〔論証53〕)は#63で。

一枚の表で、区別を確定します。列は、行為の性質、対象、典型例。所有者でなければできない処分=領得行為。対象は特定の物。権限の範囲内で、本人の利益に反する行為。対象は財産全般。横領は、物を売る・壊す。背任は、損な融資。この軸だけ持って、#63で詳しくやります。

短答ひっかけ

ここはひっかかる(横領罪①後編のまとめ)。①横領行為=不法領得の意思を実現する一切の行為(領得行為説)=売却・質入れ・抵当権設定が典型。②🔴🔴不法領得の意思〔論証48〕=窃盗と違い②利用処分意思は不要(毀棄・隠匿目的でも委託信任関係の背信=横領)/規範=「委託の任務に背いて…所有者でなければできないような処分をする意思」。③一時流用=費消の時点で補填の意思+能力があれば「横領」にあたらない(意思だけでなく能力、しかも費消時点)。④既遂時期=発現行為で直ちに既遂(最判昭27・10・17)・未遂処罰規定なし(不動産は#62)。⑤🔴盗品等の横領〔論証43/44〕=窃盗犯人との委託信任関係が保護に値するか(肯定/否定)。⑥横領と背任の区別〔論証52入口〕=領得か権限内の背信か(詳細#63)。★全体の軸=横領罪固有の不法領得の意思は、横領の核が「委託の背信」だから②利用処分意思が不要=この一本で、横領行為・一時流用・既遂時期・盗品まで貫ける。

整理します。①横領行為は、不法領得の意思の実現行為。②不法領得の意思は、②利用処分意思が不要。③一時流用は、費消時点の補填の意思+能力。④既遂時期は、発現行為で直ちに既遂。⑤盗品等の横領は、委託信任関係 対 所有権。⑥横領と背任は、領得か、権限内の背信か。横領の核が委託の背信だから、②利用処分意思が不要。

📝 論文の型

★コア規範|横領罪の不法領得の意思(論証48)。「『横領』とは不法領得の意思を実現する一切の行為をいう。もっぱら毀棄・隠匿目的で領得したケースでも、それはなお委託信任関係を破壊する行為といえる。そこで、横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいい、いわゆる利用・処分意思は不要と解する」。逐語固定は太字(不法領得の意思を実現する一切の行為/毀棄・隠匿目的/委託信任関係を破壊/委託の任務に背いて/所有者でなければできないような処分をする意思)のみ・あとは趣旨から復元。復元キー=①横領=不法領得の意思を実現する行為→②奪取罪で②利用処分意思が必要だったのは毀棄隠匿罪との区別のため→③しかし横領の処罰根拠は委託信任関係の背信→④毀棄・隠匿目的でも背信は成立→⑤ゆえに横領では利用処分意思は不要→⑥当てはめ(毀棄・隠匿も横領)。プレースホルダ=yokoryo_furyotoku_kihan.png(compose_ronsho/visual-director が作成)。

論文の型、一つ目。横領罪の不法領得の意思、論証48。太字だけ。毀棄・隠匿目的、委託信任関係を破壊。委託の任務に背いて、所有者でなければできないような処分をする意思。横領は、不法領得の意思を実現する行為。でも横領の核は、委託信任関係の背信。だから、横領では利用処分意思は不要。

答案の型|横領罪の不法領得の意思(論証48)。【事例】Aは、友人Bから保管を頼まれて預かっていたB所有の腕時計を、Bへの私怨から、転売も使用もせず叩き壊した。Aに横領罪(252条1項)が成立するか。【問題提起】本件腕時計は「自己の占有する他人の物」にあたる。では、これを毀棄する行為が「横領」にあたるか。横領罪における不法領得の意思の意義が問題となる。【規範】「横領」とは不法領得の意思を実現する一切の行為をいう。もっぱら毀棄・隠匿目的で領得したケースでも、それはなお委託信任関係を破壊する行為といえる。そこで、横領罪における不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいい、いわゆる利用・処分意思は不要と解する。【あてはめ】AはBから預かった腕時計を叩き壊しており、利用・処分意思はないが、委託の任務に背いて所有者でなければできないような処分をしたといえる。よってAには不法領得の意思の発現があり、横領罪が成立する。

答案の型です。預かった腕時計を、叩き壊した設例。問題提起は、毀棄が「横領」にあたるか。あてはめ。利用処分意思はないが、委託に背いて処分。

論文の型:盗品等の横領 〔論文〕

★コア規範|盗品等の横領(論証43/44)。【肯定説 論証43】「窃盗犯人の占有も保護される以上、窃盗犯人との委託信任関係も保護に値する。よって横領罪が成立する」。【否定説 論証44】「横領罪は所有権に対する罪であるところ、委託者たる窃盗犯人に所有権がない以上、横領罪は成立しない」。逐語固定は太字(占有も保護される/窃盗犯人との委託信任関係も保護に値する/所有権に対する罪/所有権がない)のみ・あとは趣旨から復元。復元キー=①盗品=広義の不法原因給付だが寄託にとどまり「他人の物」○(前編折衷説)→②横領の占有は委託信任関係に基づくことを要する→③本件委託者は窃盗犯人→④〔肯定説〕窃盗犯人の占有も保護→委託信任関係も保護に値する→成立/④'〔否定説〕横領罪は所有権の罪・窃盗犯人に所有権なし→不成立。※試験はいずれの説でも可。プレースホルダ=yokoryo_tohin_kihan.png(compose_ronsho/visual-director が作成)。

論文の型、二つ目。盗品等の横領、論証43と44。逐語は、太字だけ。まず肯定説。だから、委託信任関係も保護に値する=成立。所有権に対する罪、所有権がない。復元キーは、前提二つから入るのがコツ。そこから、窃盗犯人との関係が保護に値するか。

答案の型|盗品等の横領(論証43・肯定説で記載)。【事例】窃盗犯人Xは、盗んだ高級腕時計の保管をAに依頼してこれを預けた。Aはこれを自己の物として売却した。Aに横領罪(252条1項)が成立するか。【問題提起】本件時計はXの不法原因給付物だが、寄託にとどまり「他人の物」にあたる。もっとも、委託者Xは窃盗犯人であり、横領罪の占有は委託信任関係に基づくことを要するところ、窃盗犯人との委託信任関係が保護に値するかが問題となる。【規範】窃盗犯人の占有も保護される以上、窃盗犯人との委託信任関係も保護に値する。よって横領罪が成立する。【あてはめ】AはXとの委託信任関係に基づき本件時計を占有しており、その委託信任関係は保護に値する。これを売却したAには横領罪が成立する。(※否定説に立てば、横領罪は所有権に対する罪であり、委託者たる窃盗犯人Xに所有権がない以上、横領罪は成立しないと構成する。)

答案の型です。窃盗犯人から預かった盗品を、売った設例。問題提起は、窃盗犯人との委託信任関係が保護に値するか。あてはめ。委託信任関係に基づき占有=保護に値する。否定説で書くなら、所有権の罪で不成立、と。

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#61 横領罪①後編 まとめ。軸=横領罪固有の不法領得の意思は、横領の核が「委託の背信」だから②利用処分意思が不要=この一本で、横領行為・一時流用・既遂時期・盗品まで貫ける。①横領行為=不法領得の意思を実現する一切の行為(領得行為説)=売却・質入れ・抵当権設定。②🔴🔴不法領得の意思〔論証48〕=②利用処分意思は不要(毀棄・隠匿目的でも委託信任関係の背信=横領)/窃盗対比表。③一時流用=費消の時点で補填の意思+能力があれば「横領」にあたらない(意思だけでなく能力・費消時点)。④既遂時期=発現行為で直ちに既遂(最判昭27・10・17)・未遂処罰規定なし(不動産は#62)。⑤🔴盗品等の横領〔論証43/44〕=窃盗犯人との委託信任関係が保護に値するか(肯定/否定・前編の委託信任関係と不法原因給付を回収)。⑥横領と背任の区別〔論証52入口〕=領得か権限内の背信か(詳細#63)。→次回#62=横領罪②(業務上横領253・占有離脱物横領254・不動産二重売買〔論証45/46/47〕・二重抵当・横領後の横領〔論証49〕・不動産の既遂時期〔登記説〕・仮登記〔最決平21・3・26〕)。

まとめます。軸は、横領の不法領得の意思は②が不要。①横領行為は、不法領得の意思の実現行為。②不法領得の意思は、②利用処分意思が不要。③一時流用は、費消時点の補填の意思+能力。④既遂時期は、発現行為で直ちに既遂。未遂処罰なし。窃盗犯人との約束が保護に値するか、肯定/否定。これで、単純横領252が、ひととおり完成です。次は#62。横領罪②です。業務上横領と、占有離脱物横領。それと不動産。今日送りにした、不動産の既遂時期も、そこで。お疲れさまでした。

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