横領罪①後編——横領行為・不法領得の意思(利用処分意思は不要)・一時流用・盗品等の横領
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第12章 財産に対する罪 ⑫/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
横領行為の意義——領得行為説 〔短答・論文〕

一つ目、横領行為の意義です。本罪の行為は、横領。横領とは、不法領得の意思を実現する一切の行為。これを、領得行為説といいます。通説です。だから、具体例で押さえます。典型が三つ。売却、質入れ、抵当権の設定。どれも共通点があります。何だと思いますか。うまい。所有者でなければできないような、処分です。それをやる=自分が所有者のように振る舞う。ここで、一つ気づいてほしい。横領の定義は、「不法領得の意思を実現する行為」。つまり横領の中身は、不法領得の意思が何か、に帰着する。横領罪の、不法領得の意思。
横領行為の具体例リスト 〔短答・論文〕

具体例を、一枚に並べます。中心が、横領=不法領得の意思を実現する一切の行為。売却、質入れ、抵当権の設定。毀棄・隠匿。壊す、隠す。そこが、次の論点なんです。今は予告だけ。でも全部、一つの軸で貫けます。預かっただけの人が、やっちゃいけないこと。
横領罪の不法領得の意思——②利用処分意思は不要〔論証48〕 〔論文〕

二つ目、横領罪の不法領得の意思。事案で考えます。AがBから、物を預かった。それを、Aがもっぱら、壊して隠した。さて、Aに横領罪が成立するか。いい着眼です。まず、窃盗を思い出しましょう。①権利者排除意思と、②利用処分意思。二つ。その②は、何のために要ったか、覚えてますか。壊すだけの罪と、利用目的で奪う罪を切り分ける。では横領でも、②が要るのか。これが問題。②が必要なら、横領にならない。結論は、横領では②利用処分意思は不要です。横領の処罰根拠を、思い出してください。預かった物を、壊して隠したら、どうですか。利用しようが、壊そうが、背信は成立する。そこです。だから②で切り出す必要が、ないんです。横領は背信が核だから、②が要らない。うまい。それが、軸です。判例の規範を見ましょう。横領罪の不法領得の意思とは、です。他人の物の占有者が、委託の任務に背いて、です。その物につき権限がないのに、です。所有者でなければできないような、処分をする意思。これが規範です。利用処分意思は、入っていない。だから、壊して隠す行為も。なお、少数説もあります。西田先生など。横領も奪取犯である以上、奪取罪と同じに解する。提示だけ。試験では、不要説が判例・通説です。
窃盗/横領 不法領得の意思 対比表 〔論文〕

一枚の表で、窃盗と横領を並べます。列は三つ。①権利者排除、②利用処分、②の理由。窃盗も横領も、両方とも必要。ここは同じ。窃盗は、必要。横領は、不要。ここが分かれ目。窃盗で②が要ったのは、毀棄隠匿罪との区別。横領で②が要らないのは、委託の背信が核だから。①は共通、②だけ逆。理由も書いておく。この一枚を、頭に焼き付けてください。
一時流用——費消時点の補填の意思+能力 〔論文〕

三つ目、一時流用です。お金の話。買物用に預かった金を、Aが一時的に使った。じゃあ、いつも横領になるか。実は、ならない場合があるんです。費消の時点で、もとに戻せる意思と能力があった場合。そのときは、不法領得の意思の発現とはいえない。軸を思い出して。横領=発現行為でしたよね。ここで、超重要なポイントが二つ。一つ、意思だけじゃなく、能力。戻せる資力が要る。二つ、その能力は、費消の時点で必要。後から「払うつもりだった」では、足りない。補填するつもりで、その金を競馬に充てた。払えない。費消時点で、補填する能力がなかった。逆に、財布に同額あって即戻せるなら。戻す気プラス、戻せる力。しかも費消した瞬間に。
一時流用 補填の意思+能力フロー 〔論文〕

フローで、整理します。預かり金を費消した。まず、補填の意思はあるか。なければ、横領成立。あれば、次へ進みます。費消の時点で、戻せる能力があるか。横領成立。後から払うつもり、競馬で外した、はここ。横領不成立。財布に同額あって、即戻せる場合など。しかも基準時は、費消の時点。一枚で確定です。
既遂時期——発現行為で直ちに既遂 〔短答〕

四つ目、既遂時期。いつ犯罪が成り立つか。横領は、不法領得の意思の発現行為があれば。行為の完成を待たず、直ちに既遂です。最判昭27・10・17。ここから、面白い結論が出ます。横領には、未遂を処罰する規定が、ないんです。理由は、発現したら即既遂だから。だから未遂を処罰する余地も、ないんです。一点だけ、注意。不動産の場合。二重譲渡や抵当権設定は、登記が絡むんです。だから既遂時期が、別扱いになる。
盗品等の横領——委託信任関係 vs 所有権〔論証43/44〕 〔論文〕

五つ目、盗品等の横領。前編の知識が、効きます。事案。窃盗犯人Xが、盗品をAに預けた。ところがAが、その盗品を自分の物にした。ここで、引っかかる人が多い。盗まれた被害者が、本当の所有者です。じゃあ、Aは誰を裏切ったことになるのか。整理しましょう。前編の知識を二つ使います。一つ。Xからの委託は、広義の不法原因給付です。でも、これは渡しきりじゃなく、寄託にとどまる。だから折衷説で、「他人の物」にはあたりうる。ここで「他人の物」の関門は、クリアできる。横領の占有は、委託信任関係に基づくことが必要。ところが、本件の委託者は、窃盗犯人Xです。問題は、その一点に絞られます。窃盗犯人との委託信任関係が、保護に値するか。ここで、二つの説に分かれます。窃盗犯人の占有も、保護されると考える立場。占有が保護されるなら、その委託信任関係も。だから横領罪が、成立する。これが肯定説。横領罪は、所有権に対する罪だ、と考える。委託者である窃盗犯人には、所有権がない。所有権がない以上、横領罪は成立しない。呉先生いわく、試験ではどちらでもいい。
盗品等の横領 肯定説/否定説 分岐 〔論文〕

フローで、分岐を整理します。前提一、寄託だから「他人の物」は○。前提二、横領の占有は、委託信任関係に基づく。窃盗犯人との委託信任関係は、保護に値するか。窃盗犯人の占有も保護=委託信任関係も保護=成立。所有権の罪で、窃盗犯人に所有権なし=不成立。給付か寄託か、の話とつながっています。試験は、どちらの説でも書ければOKです。
横領と背任の区別——領得か権限内の背信か〔論証52入口〕 〔短答・論文〕

最後、横領と背任の区別。入口だけです。両方とも、信任関係の背信を罰する罪です。だから、どう区別するかが問題になる。横領は、特定の物について、所有者でなければできない処分。背任は、権限の範囲内で、本人の利益に反する行為。例えば、預かった物そのものを売ったら。与えられた権限の枠内で、損な取引をして本人に損害。回収見込みのない融資を実行する、みたいな。横領にあたれば横領、あたらなければ背任。次の次、#63です。事務処理者や、図利加害目的。領得か、権限内の背信か。これだけ持ち帰ってください。
横領/背任 区別表 〔短答・論文〕

一枚の表で、区別を確定します。列は、行為の性質、対象、典型例。所有者でなければできない処分=領得行為。対象は特定の物。権限の範囲内で、本人の利益に反する行為。対象は財産全般。横領は、物を売る・壊す。背任は、損な融資。この軸だけ持って、#63で詳しくやります。
短答ひっかけ

整理します。①横領行為は、不法領得の意思の実現行為。②不法領得の意思は、②利用処分意思が不要。③一時流用は、費消時点の補填の意思+能力。④既遂時期は、発現行為で直ちに既遂。⑤盗品等の横領は、委託信任関係 対 所有権。⑥横領と背任は、領得か、権限内の背信か。横領の核が委託の背信だから、②利用処分意思が不要。
📝 論文の型

論文の型、一つ目。横領罪の不法領得の意思、論証48。太字だけ。毀棄・隠匿目的、委託信任関係を破壊。委託の任務に背いて、所有者でなければできないような処分をする意思。横領は、不法領得の意思を実現する行為。でも横領の核は、委託信任関係の背信。だから、横領では利用処分意思は不要。

答案の型です。預かった腕時計を、叩き壊した設例。問題提起は、毀棄が「横領」にあたるか。あてはめ。利用処分意思はないが、委託に背いて処分。
論文の型:盗品等の横領 〔論文〕

論文の型、二つ目。盗品等の横領、論証43と44。逐語は、太字だけ。まず肯定説。だから、委託信任関係も保護に値する=成立。所有権に対する罪、所有権がない。復元キーは、前提二つから入るのがコツ。そこから、窃盗犯人との関係が保護に値するか。

答案の型です。窃盗犯人から預かった盗品を、売った設例。問題提起は、窃盗犯人との委託信任関係が保護に値するか。あてはめ。委託信任関係に基づき占有=保護に値する。否定説で書くなら、所有権の罪で不成立、と。
今日の地図(保存版)

まとめます。軸は、横領の不法領得の意思は②が不要。①横領行為は、不法領得の意思の実現行為。②不法領得の意思は、②利用処分意思が不要。③一時流用は、費消時点の補填の意思+能力。④既遂時期は、発現行為で直ちに既遂。未遂処罰なし。窃盗犯人との約束が保護に値するか、肯定/否定。これで、単純横領252が、ひととおり完成です。次は#62。横領罪②です。業務上横領と、占有離脱物横領。それと不動産。今日送りにした、不動産の既遂時期も、そこで。お疲れさまでした。