刑法 ゼロから刑法#62

横領罪②後編——業務上横領253〔二重身分・65条1項2項併用 最判昭32・11・19〕・占有離脱物横領254〔委託なき横領・大判大8・4・4〕

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第12章 財産に対する罪 ⑭/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

業務上横領253——252の加重類型・二重身分 〔短答・論文〕

1. 🔴🔴 業務上横領罪253(加重類型・二重身分)。条文=「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の拘禁刑に処する」。252(5年以下)の加重類型=法定刑が2倍。主体=業務上他人の物を占有する者=ここが二重身分になっている。①占有者という身分=真正身分(構成的身分)=これがないとそもそも横領自体が成立しない・犯罪を構成する身分。②業務者という身分=不真正身分(加減的身分)=横領は占有者なら誰でも成立するが、業務者だと刑が加重される・あると重くなる身分。🔴 つまづきの核=「業務者は占有者でもあるのに、なぜ身分を2つに分ける?」=占有者身分は横領の土台・業務者身分は加重の上乗せで役割が別。

まず、業務上横領の条文から。「業務上、自己の占有する、他人の物」——単純横領に「業務上」が付いただけです。法定刑は、十年以下の拘禁刑。252は五年以下でしたから、ちょうど二倍。だから、加重類型といいます。ここに難所があります。主体を、よく見てください。「業務上、他人の物を占有する者」。これ、身分が二つ、重なっているんです。占有しているんだから一つでは、と思いますよね。そこが最初のつまづきポイント。役割を分けて考えます。一つ目、占有者という身分。これがないと、そもそも横領が成立しない。横領を成り立たせる、土台の身分です。これを真正身分、または構成的身分といいます。二つ目、業務者という身分。占有者なら、業務者でなくても横領はできる——単純横領で五年以下。でも業務者だと、刑が重くなる——十年以下。上乗せされる。これを不真正身分、または加減的身分といいます。だから、土台と上乗せで、役割が別。同じ人が両方持っていても、別物として数えます。

二重身分の中身(金庫番のたとえ) 〔短答・論文〕

🔴 二重身分のイメージ(金庫番のたとえ)。会社の金庫番=甲は身分が2階建て。1階=占有者身分(真正)=金庫の鍵を任されている=これがないと横領自体が成り立たない(横領の土台)。2階=業務者身分(不真正)=それが毎日の仕事=反復継続して物を預かる立場=あると刑が加重される(加重の上乗せ)。★軸=占有者身分(土台)と業務者身分(上乗せ)は別物だから、後で身分なき者が共犯になったとき、土台と上乗せを別々に65条で処理できる。※ 真正身分=構成的身分、不真正身分=加減的身分(同義)。65条の理論体系は#36既出。

イメージで、つかみましょう。会社の金庫番。鍵を任された、甲です。身分が二階建てになっています。一階が、占有者身分。金庫の鍵を持っている——これがないと横領できない、土台です。二階が、業務者身分。それが毎日の仕事——反復・継続して預かる立場で、これがあると刑が加重される、上乗せです。一階が土台で、二階が上乗せ。この二階建てが、後で効いてきます。身分のない人が、共犯で加わったとき、土台と上乗せを別々に処理できる。そこが、まさに次のテーマです。

業務上横領253 条文カード 〔短答・論文〕

業務上横領罪の条文を全文で確認(253条・e-Gov現行 一字一致)。「業務上」「自己の占有する」「他人の物」「十年以下の拘禁刑」がハイライト。252(五年以下)の2倍=加重類型であることを法定刑で確認する。

条文を全文で出します。253条。「業務上、自己の占有する、他人の物を、横領した者」。十年以下の拘禁刑——ここが太字です。旧い表記だと「懲役」ですが、現行は拘禁刑。覚え直してください。252の五年以下の、ちょうど二倍。「業務上」が付くだけで、刑が倍になる。預かるのが仕事の人ほど、責任が重い、という趣旨です。

身分なき者が共犯——65条をどう使うか 〔論文〕

🔴🔴 身分なき者が共犯となった場合の65条の処理(本回最重要の難所)。事案=業務者かつ占有者の甲(会社の経理担当)と、業務者でも占有者でもない友人乙が共謀し、甲の業務上占有する会社の金を着服。乙にいかなる罪が成立し、いかなる刑が科されるか。🔴 つまづきの核=「共同正犯になるのに、刑だけ軽い?」。鍵=253の二重身分を、65条も二階建てで受ける。①占有者身分(真正)→65条1項=真正身分は身分なき者にも連帯(1項「身分のない者であっても共犯とする」)→乙にも業務上横領罪の共同正犯が成立。②業務者身分(不真正)→65条2項=加重は身分ある者だけに作用(2項「身分のない者には通常の刑を科する」)→業務者でない乙には単純横領罪(252)の刑を科す。=罪名は1項で連帯・科刑は2項で個別=1項2項の併せ技(最判昭32・11・19)。

最大の難所です。身分のない人が、共犯になる場合。事案から。甲は、会社の経理担当で、業務者かつ占有者——金庫番の甲です。その甲と、友人の乙が共謀しました。乙は、業務者でも占有者でもない、ただの友人。会社とは無関係です。二人で、会社の金を着服した。甲は業務上横領。問題は、乙です。どんな罪で、どんな刑か。共謀しているから、共同正犯っぽい。ここで、65条を、二階建てで使います。さっきの身分と同じ構造です。まず一階、占有者身分。これは真正身分——横領の土台の身分です。真正身分は、65条1項で、身分なき者にも連帯する。条文は「身分のない者であっても、共犯とする」。だから乙にも、業務上横領の共同正犯が成立します。罪名は、重い方の業務上横領。でも、まだ終わりません。二階、業務者身分。加重の上乗せの方です。これは不真正身分。65条2項を使います。2項は「身分のない者には、通常の刑を科する」。加重は業務者だけに効く——乙には効きません。乙は、業務者じゃないからです。だから乙に科す刑は、単純横領の刑。罪名は業務上横領なのに、刑は単純横領。ここが、引っかかるところ。でも、筋は通っています。罪名は1項で連帯、科される刑は2項で個別、だからです。一階で罪名を決めて、二階で刑を決める。1項と2項の、併せ技。最判昭32・11・19です。この回で、一番大事な処理です。

65条 条文カード 〔論文〕

共犯と身分の条文を全文で確認(65条・e-Gov現行 一字一致)。1項=真正身分の連帯(「身分のない者であっても、共犯とする」)/2項=不真正身分の個別作用(「身分のない者には通常の刑を科する」)。253の二重身分を、1項(占有者=真正)と2項(業務者=不真正)で別々に受ける。※ 真正/不真正・違法身分/責任身分の理論体系は#36既出=本回は253への当てはめ用。

65条を全文で出します。1項は「身分のない者であっても、共犯とする」——これが真正身分の連帯で、罪名が身分なき者にも乗ります。2項は「身分のない者には、通常の刑を科する」——これが不真正身分の個別作用で、加重は身分ある者だけ。1項で罪名、2項で刑。役割が、きれいに分かれています。65条の理論そのものは#36でやりました。今日は、253への当てはめだけ。条文は出しますが、理論は#36に戻ってください。

二重身分と65条 適用表(甲/乙/丙) 〔論文〕

🔴🔴 業務上横領の二重身分/65条1項2項 適用表。上段=甲(業務者かつ占有者)=業務上横領253の正犯(罪名・科刑とも業務上横領)。共犯者の場合分け=列「占有者身分(真正・65条1項)」「業務者身分(不真正・65条2項)」「成立する罪/科される刑」。乙(非業務者・非占有者)=占有者身分なし→1項で業務上横領の共同正犯が成立/業務者身分なし→2項で単純横領252の刑。丙(占有者だが非業務者)=占有者身分あり→1項で業務上横領の共同正犯/業務者身分なし→2項で単純横領252の刑(自分の占有者身分で252の主体にはなるが、業務の加重は受けない)。脚注=最判昭32・11・19(刑集11巻12号3073頁)。★軸=罪名は1項で連帯・科刑は2項で個別。

表で、場合分けを確定します。甲・乙・丙の三人。上段が、甲——業務者かつ占有者。二つとも持っている人で、これは業務上横領の正犯。罪名も刑も、業務上横領です。問題は、下。まず乙。業務者でも占有者でもない——占有者身分がない。でも1項で、業務上横領の共同正犯が成立する。罪名は連帯します。業務者身分もないから、2項で単純横領の刑。次に、丙。ここがちょっとひねり。丙は、占有者だけど、非業務者です。自分も占有者身分は持っているので、単純横領の主体にはなれる。でも、業務者ではない。だから結論は、乙と同じ——1項で業務上横領の共同正犯、2項で単純横領の刑。占有者身分があっても、業務の加重は受けないんです。乙も丙も、科刑は単純横領で揃う。罪名は業務上横領、刑は単純横領。表で一目です。

業務の意義——211の「業務」とは違う 〔短答・論文〕

2. 業務の意義(211対比で釘刺し)。253の「業務」=社会生活上の地位に基づき反復・継続して行われる事務で、他人の物の占有・管理を伴うもの(会社の経理・出納、質屋、倉庫業者、運送業者、公金を預かる公務員、会社財産を保管する会社員、示談金を預かった弁護士など)。🔴 つまづきの核=「業務=危ない仕事?」=211(業務上過失致死傷)の業務は「人の生命・身体に危害を及ぼすおそれのある危険な事務」(運転・医療など)=危険性ベース。253の業務は財産管理ベースで、意義が逆方向。共通点は「社会生活上の地位+反復継続」だけ。

二つ目、業務の意義。ここもつまづきます。「業務」って、危ない仕事のこと?——多くの人が、業務上過失致死の業務と、ごっちゃにします。あれは、人を傷つけかねない、危険な事務。運転とか、医療とか。危険性が、ベースです。でも253は違う。253の業務は、他人の物の占有・管理を伴う事務——財産を預かる仕事です。経理、出納、質屋、倉庫業、運送業。弁護士が示談金を預かる場合も入ります。危ない仕事ではなく、財産を預かる仕事。方向が、逆なんです。共通点は、社会生活上の地位に基づき、反復継続すること——そこだけ。骨格は同じ、中身は逆。対比表で見ましょう。

211業務 vs 253業務 対比表 〔短答・論文〕

🔴 211業務 vs 253業務 対比表。行=211(業務上過失致死傷)/253(業務上横領)。列=「業務の中身」「共通点」。211=人の生命・身体に危害を及ぼすおそれのある危険な事務(運転・医療など)=危険性ベース。253=他人の物の占有・管理を伴う財産的事務(経理・出納・質屋・倉庫業・運送業など)=財産管理ベース。共通点=どちらも「社会生活上の地位に基づき反復・継続して行う事務」。★軸=骨格(社会生活上の地位+反復継続)は同じ/中身は危険性ベース(211)と財産管理ベース(253)で逆。

表で、二つの業務を並べます。211と253。列は、業務の中身と、共通点。211の中身は、人の生命・身体に危害を及ぼす、危険な事務。253は、他人の物の占有・管理を伴う、財産的事務。共通点は、社会生活上の地位に基づき反復継続すること——これだけ。骨格は同じで、中身は逆向き。この一枚で、混同を防げます。「業務」と言われたら、どっちの業務か、確認してください。

占有離脱物横領254——委託のない横領 〔短答・論文〕

3. 🔴 占有離脱物横領罪254(委託なき横領)。条文=「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金若しくは科料に処する」。客体=「占有を離れた他人の物(占有離脱物)」。🔴 注意=遺失物・漂流物はその"例示"にすぎない(「遺失物横領罪」と覚えると視野が狭くなる)。占有離脱物は2類型=① 占有者の意思に基づかず占有を離れ、まだ誰の占有にも属していない物(落とし物・置き忘れ・風で飛んだ物・逃げた家畜)/② 委託関係に基づかず、たまたま行為者の占有に帰属した物(つり銭を多くもらって持ち帰った・誤配達された郵便物)。

後半です。占有離脱物横領、254。委託のない横領——落とし物をネコババした場合などです。客体は、占有を離れた他人の物。占有離脱物といいます。条文には「遺失物、漂流物」と書いてありますが、一つ注意。「遺失物横領罪」と覚えないでください。遺失物や漂流物は、あくまで例示なんです。本体は、占有を離れた他人の物、全部。これが2類型あります。一つ目。落として、まだ誰の占有にもない物。道端の落とし物、置き忘れ、風で飛んだ物、逃げた家畜も。持ち主の意思と関係なく、占有を離れた物です。二つ目。委託なく、自分の手元に来た物。つり銭を多くもらって、気付かず持ち帰った——お釣りのもらいすぎ。誤配達された郵便物も、これです。預かったわけじゃないのに、手元に来た物。この二つを合わせて、占有離脱物といいます。遺失物は、その一例にすぎません。

254 条文カード 〔短答・論文〕

占有離脱物横領罪の条文を全文で確認(254条・e-Gov現行 一字一致)。「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物」「一年以下の拘禁刑又は十万円以下の罰金若しくは科料」がハイライト。🔴 罰金10万円・科料の併記を削らない。法定刑が極端に軽い(252=5年以下/253=10年以下と比べて段違い)=委託信任関係への背信がないため。

条文を全文で。254条。「遺失物、漂流物、その他、占有を離れた他人の物」。法定刑を見てください。一年以下の拘禁刑、又は、十万円以下の罰金。さらに「若しくは科料」まで付きます。罰金で済むこともある——すごく軽い。252は五年、253は十年でしたから、段違いに軽い。なぜか。理由は次のテーマ——委託が、ないからです。

252との区別——委託信任関係の有無 〔短答・論文〕

4-a. 🔴 252との決定的区別=委託信任関係の有無。252(委託物横領)=所有者との委託信任関係に基づいて占有する物が客体/254=その委託信任関係がない物が客体。だから254の法定刑は極端に軽い(1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料)。🔴 なぜ軽い?=252・253は「預けてくれた人を裏切る」=背信があるから重い/254は誰からも預かっていない=裏切る相手がいない=背信がないから軽い。★軸=背信性の有無が法定刑を分ける。※ 委託信任関係の中身は#61既出=ここは差分(有無)のみ。

単純横領252との区別です。252も、自分が占有している他人の物でした。254も、形は似ています。でも、決定的に違う。252は、委託信任関係に基づいて占有している——預けてもらった物です。254は、その委託信任関係がない——落とし物を拾っただけで、預かっていません。だから、法定刑が極端に軽い。さっきの「すごく軽い」理由が、これです。考えてみてください。252は何を裏切るか——預けてくれた人の信頼です。背信があるから、重い。254は、誰からも預かっていない。裏切る相手が、そもそもいない。背信がないから、軽い。背信性の有無が、法定刑を分けるんです。委託信任関係の中身は#61でやりました。ここでは、有るか無いか、の差分だけ。

235(窃盗)との区別——占有があるか 〔短答・論文〕

4-b. 🔴 235(窃盗)との区別=「他人の占有」があるか。誰かの占有下にある物を奪えば窃盗235/誰の占有にも属さない物を領得すれば占有離脱物横領254。🔴 判定順序=まず占有の有無を見る(「誰の占有にもない」と即断しない)。🔴 旅館トイレ忘れ物の事案=宿泊客Xが旅館のトイレに財布を置き忘れた→旅館主Yの占有が及ぶ→これを領得者Zが持ち去れば、254でなく窃盗罪235(大判大8・4・4)。同様にゴルフ場のロストボール=ゴルフ場側の占有(#54既出)。★軸=拾えば全部254ではない・占有の有無を先に判定。※ 占有の意義・判例マップは#54既出=当てはめのみ。

次は、窃盗235との区別です。落とし物を拾えば、全部254?——それが、つまづきポイント。即断しないでください。まず、見るべきことがあります。占有の有無です。誰かの占有下にある物を奪えば、窃盗235。占有がなければ、254。だから、占有があるかを、先に判定します。具体例。宿泊客Xが、旅館のトイレに財布を置き忘れました。それを、別の客Zが見つけて、持ち去った。落とし物だから占有離脱物横領、と思いますよね。でも、違うんです。旅館の中は、旅館主Yの管理が及んでいます。トイレの忘れ物にも、Yの占有が及ぶ。誰の占有にもない、わけじゃないんです。Yの占有下にある物を、Zが持ち去った——それは窃盗。254ではなく、235です。大判大8・4・4が、この結論です。同じような話が、ありました——ゴルフ場のロストボール。あれもゴルフ場側の占有でした。#54でやった占有論です。占有の中身は#54に戻ってください。ここでは、その占有論を当てはめるだけ。

占有離脱物 2段ふるいフロー 〔短答・論文〕

🔴 占有離脱物 2段ふるいフロー(252・254・235の交通整理)。物を拾った・手にした→第1ふるい「誰かの占有下にあるか?」→【ある(他人の占有)】窃盗235(旅館トイレ忘れ物=旅館主の占有・大判大8・4・4/ゴルフ場ロストボール#54)/【自己の占有+委託信任関係あり】単純横領252→第2ふるい「委託信任関係はあるか?」→【ない(誰の占有にもない物/委託なく行為者占有に帰属)】占有離脱物横領254(遺失物・漂流物・つり銭過大受領・誤配郵便)。★軸=拾えば全部254ではない=第1で占有、第2で委託を順にふるう。

フローで、三つの罪を交通整理します。252、254、235。物を拾った、手にした、からスタート。第1ふるい——誰かの占有下に、あるか。他人の占有なら、それを奪えば窃盗235。旅館のトイレの忘れ物が、これでした。自己の占有で、委託があれば、単純横領252。第1を抜けたら、第2のふるい。委託信任関係は、あるか。なければ、占有離脱物横領254。これでやっと、254です。落とし物、つり銭のもらいすぎ、誤配の郵便。占有を見て、委託を見る——順番が大事。拾えば全部254、ではなかったんです。二段で、ふるいにかける。これで完成です。

254の行為・他罪との関係(軽く) 〔短答〕

4-c. 254の行為・他罪との関係(短答補強・軽く)。行為=「横領」=占有離脱物を不法領得の意思で自己の事実上の支配に置いた時点で既遂。法定刑の軽さから、領得後の利用・処分行為は不可罰的事後行為(別罪を構成しない)。★ポイント=254は委託がなく背信もないため法定刑が軽く、事後の処分も独立に処罰しない。

254の行為も、軽く触れます。行為も、横領。不法領得の意思で、自分の支配に置けば既遂です。拾って、自分の物にする気で持てば、もう成立。領得した後の処分——売ったり、使ったり——は、不可罰的事後行為で、別罪にはなりません。法定刑が軽いから、後始末も処罰しない。ここは、短答レベルで押さえれば十分です。

短答ひっかけ

ここはひっかかる(横領罪②後編のまとめ)。①🔴🔴業務上横領253=252の加重類型(10年以下)・主体は二重身分(占有者=真正身分/業務者=不真正身分)→身分なき共犯者は65条1項で業務上横領の共同正犯/65条2項で単純横領の刑(罪名は連帯・科刑は個別・最判昭32・11・19)。②業務の意義=財産管理を伴う事務(253)/危険な事務(211)で意義が逆(共通=社会生活上の地位+反復継続)。③🔴占有離脱物横領254=客体「占有を離れた他人の物」は2類型(誰の占有にもない物/委託なく行為者占有に帰属・遺失物漂流物は例示)。④🔴252区別=委託信任関係の有無(背信なし→1年以下/10万円以下罰金/科料)・🔴235区別=占有の有無(旅館トイレ忘れ物=旅館主の占有→窃盗235・大判大8・4・4)。★全体の軸=253は身分も65条も二階建て(罪名は1項連帯・科刑は2項個別)/254は拾えば全部254ではなく、占有→委託の2段ふるいで252・235と切り分ける。

整理します。①業務上横領は、二重身分。占有者が真正、業務者が不真正。身分なき共犯者は、65条の併せ技——1項で業務上横領の共同正犯、2項で単純横領の刑。罪名は連帯、科刑は個別です。②業務は、253と211で意義が逆。253は財産管理、211は危険な事務。③占有離脱物254は、客体が2類型。誰の占有にもない物と、委託なく手元に来た物。④252区別は委託の有無、235区別は占有の有無。旅館トイレの忘れ物は、旅館主の占有で窃盗です。全体の軸は——253は身分も65条も二階建て、254は2段ふるい。二つの軸で、横領が完結します。

論文の型:業務上横領と65条 〔論文〕

★コア規範|業務上横領に身分なき者が加担した場合(gyomujoyokoryo_65)。「業務上横領罪における占有者という身分は真正身分であるから、身分なき共犯者にも65条1項により業務上横領罪の共同正犯が成立する。もっとも、業務者という身分は不真正身分であるから、業務者でない共犯者には65条2項により単純横領罪の刑を科すべきである」。逐語固定は太字(真正身分/65条1項/業務上横領罪の共同正犯/不真正身分/65条2項/単純横領罪の刑)のみ・あとは趣旨から復元。復元キー=①253は占有者(真正)+業務者(不真正)の二重身分犯→②占有者身分=構成的(真正)身分→65条1項で身分なき者にも連帯→③業務上横領の共同正犯が成立→④業務者身分=加減的(不真正)身分→65条2項で加重は身分ある者だけに作用→⑤業務者でない共犯者には単純横領罪の刑を科す(最判昭32・11・19)。

論文の型です。業務上横領と、65条。逐語で覚えるのは、太字だけ——真正身分、65条1項、業務上横領の共同正犯、それと、不真正身分、65条2項、単純横領罪の刑。あとは、趣旨から復元します。①253は、占有者と業務者の二重身分犯。②占有者は真正身分で、1項で連帯。③だから、業務上横領の共同正犯が成立。④業務者は不真正身分で、2項で個別。⑤だから、業務者でない者には単純横領の刑。この五ステップで、組み立てられます。最判昭32・11・19が、この処理です。

答案の型|業務上横領と65条(gyomujoyokoryo_65)。【事例】会社の経理担当者甲が、業務者でも占有者でもない友人乙と共謀し、甲が業務上占有する会社の金を着服した。乙の罪責を論ぜよ。【問題提起】二重身分犯である業務上横領罪に、身分なき乙が加担した場合、いかなる罪が成立し、いかなる刑が科されるか。65条1項・2項の適用が問題となる。【規範】業務上横領罪における占有者という身分は真正身分であるから、身分なき共犯者にも65条1項により業務上横領罪の共同正犯が成立する。もっとも、業務者という身分は不真正身分であるから、業務者でない共犯者には65条2項により単純横領罪の刑を科すべきである。【あてはめ】乙は占有者身分を有しないが、65条1項により業務上横領罪の共同正犯が成立する。もっとも、乙は業務者身分を有しないから、65条2項により単純横領罪の刑を科される。

答案の型です。経理担当甲と、友人乙の設例。問題提起は、二重身分犯に乙が加担=65条1項2項の適用。規範は、さっきのコア規範。あてはめは、二段で。占有者身分なし、でも1項で共同正犯。業務者身分なし、だから2項で単純横領の刑。身分が二つあるから、あてはめも二段。一つの事案を、1項と2項で順に処理します。

📝 論文の型(フル論証・正本)

論点:業務上横領と65条——身分なき者が加担した場合

コア規範(逐語固定)

業務上横領罪における占有者という身分は真正身分であるから、身分なき共犯者にも65条1項により業務上横領罪の共同正犯が成立する。もっとも、業務者という身分は不真正身分であるから、業務者でない共犯者には65条2項により単純横領罪の刑を科すべきである。

逐語で固定するのは太字(真正身分/65条1項/業務上横領罪の共同正犯/不真正身分/65条2項/単純横領罪の刑)だけ。それ以外は、次の復元キーから趣旨で組み立てる。

復元キー(趣旨からの5ステップ)

  1. 253は、占有者という身分(真正・構成的身分)業務者という身分(不真正・加減的身分)が重なった二重身分犯である。
  2. 占有者身分は、これがなければそもそも横領が成立しない構成的身分(真正身分)であるから、65条1項により身分なき共犯者にも連帯する。
  3. したがって、身分なき共犯者にも業務上横領罪の共同正犯が成立する(=罪名は1項で連帯)。
  4. 他方、業務者身分は、あれば刑が加重されるにとどまる加減的身分(不真正身分)であるから、65条2項により身分のある者にのみ加重が作用する。
  5. よって、業務者でない共犯者には単純横領罪(252)の刑を科す(=科刑は2項で個別)。〔最判昭32・11・19 刑集11巻12号3073頁・第三小法廷判決〕

答案の型(事例→問題提起→規範→あてはめ→結論)

  • 〔事例〕 会社の経理担当者甲が、業務者でも占有者でもない友人乙と共謀し、甲が業務上占有する会社の金を着服した。乙の罪責を論ぜよ。
  • 〔問題提起〕 二重身分犯である業務上横領罪に、身分なき乙が加担した場合、乙にいかなる罪が成立し、いかなる刑が科されるか。65条1項・2項の適用が問題となる。
  • 〔規範〕 上記コア規範のとおり。
  • 〔あてはめ〕 乙は占有者身分を有しないが、占有者身分は真正身分であるから、65条1項により業務上横領罪の共同正犯が成立する。もっとも、乙は業務者身分を有しないところ、業務者身分は不真正身分であるから、65条2項により乙には単純横領罪の刑が科される。
  • 〔結論〕 乙には業務上横領罪の共同正犯が成立し、単純横領罪(252)の刑が科される(罪名は連帯・科刑は個別)。

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#62後 横領罪②後編 まとめ。軸=252を真ん中に、左へ+業務=業務上横領253(加重・身分も65条も二階建て)/右へ−委託=占有離脱物横領254(背信なし=極端に軽い・2段ふるいで切り分け)。①🔴🔴業務上横領253=加重類型(10年以下)・二重身分(占有者=真正/業務者=不真正)→身分なき共犯者は65条1項で業務上横領の共同正犯/65条2項で単純横領の刑(最判昭32・11・19)。②業務の意義=253は財産管理ベース/211は危険性ベース(共通=社会生活上の地位+反復継続)。③🔴占有離脱物横領254=客体2類型(誰の占有にもない物/委託なく行為者占有に帰属・遺失物漂流物は例示)・1年以下/10万円以下罰金/科料。④🔴252区別=委託信任関係の有無(背信なし→軽い)・🔴235区別=占有の有無(旅館トイレ忘れ物=旅館主の占有→窃盗・大判大8・4・4)。これで横領の罪が完結。→次回#63=背任罪247(事務処理者・図利加害目的・財産上の損害・横領と背任の区別)。

まとめます。軸は、252を真ん中に置く地図。左へ+業務、右へ−委託。①業務上横領253は、加重類型。二重身分で、65条も二階建て。罪名は1項で連帯、科刑は2項で個別——最判昭32・11・19でした。②業務の意義は、253と211で逆。財産管理ベースと、危険性ベース。③占有離脱物254は、客体が2類型。誰の占有にもない物と、委託なく手元に来た物。④252区別は委託、235区別は占有。旅館トイレの忘れ物は、旅館主の占有で窃盗。これで、横領の罪が、ぜんぶ完結です。単純、業務上、占有離脱物——三つそろいました。#61から#62まで、横領を仕上げました。次回は#63、背任罪247条です。前編で、二重抵当のとき出てきました。横領と背任の区別が、いよいよ本番です。横領で土台を作ったから、背任が読めます。次回、背任罪でお会いしましょう。お疲れさまでした。

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