毀棄・隠匿の罪——「効用侵害説」という一本の軸/258-261の客体棲み分け/親告罪は259・261・263だけ〔kiki_sonkai〕
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第12章 財産に対する罪 ⑰/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
総説——領得罪との対比/なぜ法定刑が軽いか 〔短答〕

総説です。まず、なぜ法定刑が軽いのか。窃盗や詐欺は、物を自分のものにする。これを、領得罪といいます。でも本罪は。自分の得にはならない。利得目的が、ない。だから、非難が類型的に、軽い。法定刑も軽め。同じ財産犯でも、こんなに違う。#54窃盗①で。ここでは、対比だけ。深掘りはしません。そして手薄になりがちですが。特に261器物損壊が、原則的規定で最重要。後で厚くやります。
「損壊」「毀棄」の意義——効用侵害説 〔論文の骨格〕

損壊・毀棄の、意味。それが、物理的に壊すだけ、じゃないんです。効用侵害説。物の効用を害する、一切の行為。物理的に割らなくても、効用を害せば「損壊」。お皿に、汚物をかける。割れてはいないけど。効用を、害してる。だから「損壊」。落書きも、隠すのも、同じ。効用を害せば損壊。そこが、効用侵害説の、肝です。隠匿も含む。物理的毀損説。損壊は、物理的に壊すことに限る、と。少数説です。判例・通説は、効用侵害説。絶対に。そして、この説の対立が、後で263で効いてきます。
258条——公用文書等毀棄罪 全文カード 〔短答〕

では、条文を全文で。258条、公用文書毀棄。公務所の用に供する、文書又は電磁的記録。三月以上、七年以下の拘禁刑。公務を守るからです。さて、客体が、ポイント。そこが、ひっかけ。作った人は、関係ないんです。公務所が、使ったり保管したりする文書なら、全部。役所に提出して、保管されていれば、客体です。「公務所が使うか」で、決まる。いい質問。違います。偽造罪の公文書は。作る人で、決める。でも258は、使う人で決める。ここは混同しやすい。作成主体か、用途か。公務の保護だから。後の対比表で、整理します。
259条——私用文書等毀棄罪 全文カード 〔短答〕

次、259条。私用文書毀棄です。権利又は義務に関する、他人の文書。客体が「権利又は義務に関する」文書。権利義務の、発生や消滅を証する文書。単なる事実証明の文書は、含まないんです。履歴書や、推薦状のような、事実を証する文書。原則、そうです。偽造罪と、比べてみてください。159は、権利義務文書も、事実証明文書も。偽造罪より、客体が狭いんです。ここ、短答で問われます。259は、親告罪。259は親告罪、と覚えておいてください。
客体の棲み分け——258公用文書/259私用文書/260建造物/261その他全部 〔短答〕

ここで、客体の棲み分けを、整理します。考え方は、上から消していく、です。まず、文書か?公務所が使う文書なら、258。権利義務に関する、他人の文書なら、259。建造物や、艦船なら、260。そして、そのどれでもない、他人の物は。261です。前3条に当たらない、他人の物すべて。261が、受け皿なんです。一番大事な条文が、最後の受け皿になってる。この棲み分けが、毀棄罪の、背骨です。
260条——建造物等損壊罪・同致死傷罪 全文カード 〔短答・論文共通〕

次は260条。建造物損壊と、その致死傷です。他人の建造物、又は艦船を損壊した者。後段に、よって人を死傷させた者は。ここ、論点が3つあります。一つ、何が「建造物」か。二つ、損壊とは。致死傷。結果的加重犯です。順に見ましょう。
建造物の一体性——玄関ドアも建造物(最決平19・3・20) 〔短答・論文共通〕

一つ目の論点。何が「建造物」か。建物本体は、当然そう。問題は、ドアや雨戸。玄関ドアは、建造物の一部でしょうか。そこが、論点。判例は、こう判断します。接合の程度と、機能上の重要性。この2つで総合判断。どれだけしっかり、くっついているか。その建具が、建物にとってどれだけ重要か。外界を遮断する、重要な役割。接合度も高い。最決平成19・3・20。玄関ドアは、建造物。関係ありません。機能と接合で、判断します。261器物損壊じゃなくて、260建造物損壊。そこが、この論点の、勝負どころです。
損壊=効用侵害——ビラ貼付・ラッカー落書き 〔短答・論文共通〕

二つ目の論点。建造物の「損壊」とは。建造物でも、物理的破壊に限りません。壁に、ビラを大量に、びっしり貼る。でも、はがすのに、相当な手間と費用がかかる。だから「損壊」。最決昭和41・6・10。もう一つ。外壁に、ラッカーで落書き。公衆便所の外壁に、スプレーで大書した事案です。でも、美観を著しく汚損して、原状回復に費用がかかる。最決平成18・1・17。これも、損壊。効用を害すれば、損壊。効用侵害説の、典型です。
致死傷(260後段)——結果的加重犯 〔短答〕

三つ目。260の後段、致死傷です。傷害の罪と比較して、重い刑により処断。基本犯が建造物損壊、重い結果が死傷。要りません。結果的加重犯ですから。致傷なら、傷害罪204と比べて、重い方。傷害致死205と比べて、重い方で処断します。重い方の刑で、処断する。処断刑の作り方は、総論でやりました。ここは結論だけ。
261条——器物損壊罪 全文カード 〔短答・論文の骨格〕

さあ、261条。器物損壊罪です。前三条に規定するもののほか、他人の物。三年以下の拘禁刑、又は三十万円以下の罰金。受け皿、でしたね。だから原則的規定。損壊は、もちろん効用侵害。物理的破壊に限らない。そして、条文に「傷害」って、ありますよね。生き物の話です。動物を殺傷して、効用を害する。それも、261の「傷害」。動物傷害罪、と呼びます。生き物も、財産としては「物」ですからね。259と261と263が、親告罪。後でまとめます。効用侵害説の、論文の型。次でいきます。
📝 論文の型

論文の型です。効用侵害説。逐語は、どこを覚える?物理的損壊に限らず、物の効用を害する一切の行為。あとは、趣旨から復元します。領得罪と違って、効用を守る罪。効用を害せば、可罰とすべき。④あとは、効用を害したか、当てはめる。物理的毀損説に立っても、いいんですが。そこを、自説に据えるのが、無難です。

答案の型です。設例は、食器に汚物。問題提起は。規範は、コア規範。効用侵害説。汚物が付いて、二度と食器として使えない。だから「損壊」にあたり、器物損壊罪が成立。
262条——自己の物の損壊等の特例 〔短答〕

262条。自己の物の、特例です。原則は、罪じゃない。でも、例外があるんです。差押えを受けた物。物権を負担した物。賃貸した物。あと、配偶者居住権が、設定された物。前三条の例による。つまり、他人物と同様に処罰。第三者の権利を、守るためです。その人たちの権利が、及んでいるから。2020年の、民法改正で入りました。古い版だと、抜けてます。現行条文で、確認を。
262条の2——境界損壊罪 全文カード 〔短答〕

262条の2。境界損壊罪です。境界標を、損壊・移動・除去したり。その他の方法で、土地の境界を分からなくする。ここ、保護法益が、ちょっと特殊なんです。物の効用、じゃないんです。土地の境界の、明確性。だから、毀棄罪の中では、異質。境界標を壊しても、境界がまだ分かるなら。境界が、分からなくなって、初めて成立。そこが、ポイント。試験では、重要性は低めですが。これは非親告罪。それで十分です。
263条——信書隠匿罪/効用侵害説の決め所 〔短答・論文共通〕

263条。信書隠匿罪です。他人の信書を、隠匿した者。器物損壊の261より、軽いですよね。ここで、効用侵害説が、効いてきます。効用侵害説だと、隠匿も「損壊」に含まれる。本来は、261器物損壊に、当たるはず。なぜか。信書の隠匿を、特に軽く処罰する趣旨。でも、物理的毀損説だと、逆になるんです。物理的毀損説は、隠匿を「損壊」に含めない。不可罰のはず。なのに263があるのは。処罰を、拡張する規定。そこなんです。減軽規定にも、処罰拡張規定にも見える。だから、効用侵害説の理解を測る、いい素材なんです。259・261・263。次で、まとめます。
264条——親告罪/親告罪は259・261・263だけ 〔短答〕

最後、264条。親告罪の、規定です。第259条、第261条、及び前条の罪。つまり、親告罪は、259・261・263だけ。逆に、258・260・262の2は。なぜ、分かれるか、分かりますか。私的財産や、私生活に関わる。一方、258・260・262の2は。公務や、公共の安全、土地境界の公示。だから、被害者の告訴を待たずに、処罰する。ここ、短答で、よく問われます。○×表で、丸暗記を。
短答ひっかけ

整理します。①軸は、効用侵害説。②客体は、棲み分け。258は公用文書。259は、私用文書。権利義務文書だけ。260は、建造物。玄関ドアも、建造物。261は、その他の物すべて。原則的規定。③260後段の致死傷は、結果的加重犯。⑤263、信書隠匿。説で、逆に見える。⑥親告罪は。全部、効用侵害説で、つながりましたね。
今日の地図(保存版)

まとめます。毀棄・隠匿は、領得しない財産犯。①軸は、効用侵害説。物の効用を害する一切の行為。②258は公用文書、259は私用文書。④261は、その他の物すべて。原則的規定で、最重要。⑥263、信書隠匿。説で、意味が逆に見える。これで、毀棄・隠匿の罪が、完結です。長かった、第12章 財産に対する罪も、完結。お疲れさまでした。これまでは、個人の財産や身体=個人的法益でした。第2編。社会的法益に対する罪に、入ります。その最初が、放火罪。新しい章で、お会いしましょう。