刑法 ゼロから刑法#56

強盗罪①——暴行脅迫の程度(反抗抑圧)・事後的奪取意思・2項強盗と処分行為

⬇ 印刷用PDF

第12章 財産に対する罪 ④/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

核心①=1項強盗の構造(暴行脅迫→反抗抑圧→強取) 〔短答・論文共通〕

核心①=1項強盗の構造。236条1項=暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は強盗。客体=他人の財物(利益が客体なら2項)。本罪は暴行・脅迫を手段とする犯罪類型(最重要ポイント)。強取=暴行・脅迫により被害者の反抗を抑圧して財物を奪取すること。すなわち①暴行・脅迫→②被害者の反抗抑圧→③財物の奪取という因果経過が予定されている。手段性=暴行・脅迫は財物奪取に向けられたものでなければならない(後の事後的奪取意思へ繋がる軸の核)。既遂時期=被害者の占有を排除し行為者・第三者が占有した時点(#55取得説と同旨・最判昭24・6・14)/反抗抑圧されなければ財物取得しても未遂。予備=237条(二年以下の拘禁刑・情状免除規定なし→予備の中止の実益あり)/未遂=243条/主観=故意+不法領得の意思(#53済)。自前イメージ=強盗は「相手をマットに組み伏せてから財布を抜く」。

まず構造です。条文を読みます。236条1項。

刑法236条(強盗)。1項=暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、五年以上の有期拘禁刑に処する。2項=前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。→1項=客体は財物(暴行脅迫で反抗抑圧→強取)/2項=客体は財産上不法の利益(手段は1項と同じ=前項の方法)。e-Gov現行(2025年6月施行の改正後表記=拘禁刑に統一)。

客体は、他人の財物。財物については#53でやりました。後でやります。ここで核心は、強盗が手段の罪だという点。暴行・脅迫は、財物を奪うための手段。これが最重要です。暴行・脅迫で、反抗を抑圧して、財物を奪取することです。だから、決まった流れがある。三段階です。①暴行・脅迫、②被害者の反抗抑圧、③財物の奪取。この因果経過が、強盗には予定されている。ここが背骨です。強盗は「相手をマットに組み伏せてから、財布を抜く」。窃盗のこっそりとも、恐喝のすごみとも違う。力で伏せる。占有を取得した時点。#55の取得説と同じです。財物を取っても、未遂にとどまります。流れが完成しないから。予備は237条、未遂は243条。主観は故意と不法領得の意思。

刑法237条(強盗予備)=強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の拘禁刑に処する。→強盗は予備も処罰される重い罪。中止犯(43条但書)の必要的減免のような明文の情状減免がないため、予備の段階での中止の扱いが論点になりうる(深入りは総論#5系)。e-Gov現行(拘禁刑表記)。

強盗では争点になりにくいので、当てはめだけで大丈夫です。

1項強盗の構造フロー 〔短答・論文共通〕

🔴 1項強盗の構造フロー。本流=①暴行・脅迫(反抗を抑圧する程度・財物奪取に向ける)→②被害者の反抗抑圧(もはや反抗できない状態)→③財物の強取(→強盗既遂・占有取得・#55)。分岐=反抗抑圧に達しない暴行→恐喝(畏怖させ交付)/窃盗(接触ですり取る)/現実に抑圧されず交付→通説=強盗未遂(判例=既遂・論証21)/暴行が別目的→事後的奪取意思(原則 強盗不成立・論証22)。★規範=236条1項は暴行・脅迫を用いて他人の財物を強取。強取=反抗を抑圧して奪取=①暴行脅迫→②反抗抑圧→③奪取の因果経過が予定。暴行・脅迫は⑴反抗を抑圧する程度(客観的基準)かつ⑵財物奪取に向けられたもの。反抗抑圧されなければ未遂。法定刑=五年以上の有期拘禁刑/予備237(二年以下の拘禁刑)・未遂243。

構造を、フローで見ます。上の本流が三段階。下に伸びる矢印が、つまずきポイントの分岐です。左は、暴行が反抗抑圧に達しない場合。恐喝か窃盗です。現実に抑圧されなかった場合。通説では未遂。これが論証21。暴行が別目的だった場合。事後的奪取意思。論証22です。暴行・脅迫の、強さ・効き方・向き。順に見ます。

核心①-2=暴行・脅迫の程度=反抗抑圧(客観的基準) 〔論文の骨格〕

核心①-2=暴行・脅迫の程度。強盗の暴行・脅迫は最強義=相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のもの。これに達しない暴行・脅迫で財物を取れば、恐喝罪(畏怖させて交付)または窃盗罪にとどまる。判断基準=客観的基準=社会通念上、一般に被害者の反抗を抑圧するに足る程度か(被害者個人の主観でなく一般人基準)。強盗と恐喝の区別はこの客観的基準による(最判昭24・2・8)。段階的整理=①ぶつかりざまの軽い接触ですり取る=窃盗(反抗抑圧に達しない)/②財物奪取目的で不意に突き飛ばす=強盗の暴行(反抗を抑圧する程度)/③自動車で引きずって転倒の危険があるハンドバッグひったくり=強盗の暴行(生命・身体に重大な危険・最決昭45・12・22)。自前イメージ=程度=「組み伏せられるレベルか」。すごみ(恐喝)どまりなら強盗でない/軽い接触(窃盗)も強盗でない。

手段の「強さ」です。疑問①。どこからが強盗の暴行か。それを決めるのが、暴行・脅迫の程度です。強盗の暴行は、最強義。相手の反抗を抑圧する程度が必要です。これに達しないと、強盗にはなりません。軽い脅しで財布を出させれば、恐喝。すり取れば、窃盗です。客観的に決めます。社会通念上、一般人なら抑圧されるか。関係ありません。一般人基準で、客観的に判断します。本人基準だと、同じ暴行でも相手次第で罪名が変わる。だから、社会通念上の一般人で線を引きます。①ぶつかりざまの軽い接触ですり取る。これは窃盗です。②財物目的で、不意に突き飛ばす。これは強盗の暴行。③車で引きずって、転倒の危険があるひったくり。生命・身体に重大な危険がある。だから強盗の暴行です。程度は「組み伏せられるレベルか」。すごみどまりは恐喝。

核心①-3=反抗抑圧の要否(論証21・判例vs通説) 〔論文の骨格〕

核心①-3=反抗抑圧の要否。問題=客観的に反抗抑圧程度の暴行・脅迫を加えたが、現実には被害者の反抗が抑圧されず、畏怖した被害者が財物を交付した場合。強盗罪が成立するか。判例=強盗罪の成立を肯定(現実に反抗が抑圧されたことは不要・最判昭24・2・8)。🔴通説(答案で書く方)=強盗は暴行・脅迫→反抗抑圧→財物の奪取という因果経過が予定されている以上、既遂には現実に反抗が抑圧されたことが必要→現実に抑圧されなければ強盗未遂(243条・236条1項)にとどまる(予定された因果経過が完成していないから)。※反抗(抵抗はするが倒れる手前)と反抗抑圧(もはや反抗できない状態)は段階問題だが一応区別される。結論差=判例=既遂(不要)/通説=未遂(要)。

次は、手段の「効き方」。反抗抑圧の要否です。程度は、暴行が客観的に強いか。要否は、現実に効いたか。問題はこうです。客観的には抑圧する程度の暴行をした。でも、相手は反抗を抑圧されず、畏怖して財布を出した。この場合、強盗が成立するか。ここで見解が割れます。判例は、強盗の成立を肯定。現実の抑圧は不要、とします。通説は、現実の抑圧が必要、とします。答案はこちらが書きやすい。軸に戻ります。強盗は、暴行→抑圧→奪取の流れが予定されている。現実に抑圧されないと、その流れが完成していない。だから、既遂にはならず、強盗未遂にとどまる。暴行自体は強盗の暴行だから、未遂は成立します。答案では、因果経過から「現実の抑圧が必要」と書く。

📝 論文の型

★コア規範|強盗罪における反抗抑圧の要否。強盗罪の暴行・脅迫は相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものを要し、その判断は社会通念上一般人の反抗を抑圧するに足る程度か(客観的基準)による。強盗罪は暴行・脅迫→反抗抑圧→財物の奪取という因果経過が予定されているから、既遂となるには現実に反抗が抑圧されたことが必要であり、抑圧されなければ強盗未遂にとどまる(通説)。※判例は現実の反抗抑圧を不要とする。復元キー=①強盗=暴行脅迫を手段として財物を奪取する犯罪類型②程度=反抗を抑圧するに足りる程度(最強義)・判断=社会通念上一般人基準(客観的基準)③暴行脅迫→反抗抑圧→財物の奪取の因果経過が予定④既遂には現実に反抗が抑圧されたことが必要(達しなければ強盗未遂・243条)⑤判例は不要(結論差)・答案は通説が書きやすい。圧縮根拠=逐語固定は採点キーワード(反抗を抑圧するに足りる程度/社会通念上一般人/暴行脅迫→反抗抑圧→財物の奪取/現実に反抗が抑圧されたことが必要/強盗未遂)のみ。

一つ目の型、反抗抑圧の要否です。論証21。反抗を抑圧するに足りる程度、社会通念上一般人。この二つ。暴行脅迫から反抗抑圧、奪取の因果経過。そして強盗未遂。あとは趣旨から復元します。まず、強盗は手段の罪。だから程度は、反抗抑圧に足りるか。客観的基準で見る。だから既遂には、現実の抑圧が必要。なければ未遂。

答案の型|強盗罪における反抗抑圧の要否。【事例】甲は、乙に対し客観的には反抗を抑圧するに足りる程度の暴行・脅迫を加えたが、現実には乙の反抗は抑圧されなかった。もっとも乙は畏怖し、その畏怖に基づき財物を甲に交付した。甲に強盗罪が成立するか。【問題提起】暴行・脅迫は客観的に反抗抑圧程度に達しているが、現実には反抗が抑圧されていない。強盗罪の成立に現実の反抗抑圧を要するか(反抗抑圧の要否)が問題となる。【規範】程度=反抗を抑圧するに足りる程度・客観的基準。強盗は暴行脅迫→反抗抑圧→奪取の因果経過が予定されている以上、既遂には現実の反抗抑圧が必要。【あてはめ】甲の暴行・脅迫は客観的に反抗抑圧程度に達するが、現実には乙の反抗は抑圧されていない。予定された因果経過が完成していないから、既遂には至らない。よって甲には強盗未遂罪(243条・236条1項)が成立するにとどまる。

答案の型です。強い暴行はしたが、抑圧されなかった設例。規範で、程度と因果経過を立てる。流れが完成していないから、既遂に至らない。未遂で締めるのが、通説の書き方の勝負所です。

核心②=事後的奪取意思(論証22) 〔論文の骨格〕

核心②=事後的奪取意思。問題=暴行・脅迫の後にはじめて財物奪取の意思を生じて奪った場合に強盗罪が成立するか(超重要基本論点)。軸=暴行は財物奪取に向けられたものか。原則=強盗不成立=強盗の暴行・脅迫は財物奪取に向けられたものでなければならない。当初の暴行は別目的(けんか・性犯罪等)で、財物奪取に向けられていない→これを捉えて強盗にはできない。例外=新たな暴行・脅迫=奪取意思を生じた後に、財物奪取に向けられ、反抗抑圧状態を維持・継続させるに足りる新たな暴行・脅迫があれば強盗成立。認定例=腕時計を奪う際に「腕をつかむ」等の有形力(反抗抑圧状態を継続させる程度なら)=新たな暴行/「この時計をもらっていくぞ」=新たな脅迫。認定できない例=被害者が既に死亡している場合(新たな暴行・脅迫は観念できない)→死者の占有(#54)の問題に流れ、占有離脱物横領罪にとどまる。なぜ既発の抑圧状態の利用では足りない=既にある抑圧を「使った」だけで、新たに財物へ向けた力を加えていないから。

次は、手段の「向き」。事後的奪取意思です。疑問②。暴行の後に、はじめて奪取の意思が生じた場合です。そこが引っかかる所です。でも、原則は強盗になりません。軸です。強盗の暴行は、財物奪取に向けられたものが必要。財布を取るために、殴ったかどうか。これが「向き」です。けんかや別の目的だった。財物に向いていない。これが原則。でも、例外があります。奪取意思が生じた後に、新たな暴行・脅迫があれば成立します。財物に向けられ、反抗抑圧状態を維持する程度の暴行・脅迫です。腕時計を奪うとき、腕をつかむ。これが新たな暴行になりうる。「この時計をもらっていくぞ」と言えば、新たな脅迫。被害者が、もう死んでいる場合です。新たな暴行・脅迫が、観念できない。だから死者の占有の問題に流れ、占有離脱物横領です。ところで、なぜ既発の抑圧の利用では足りないか。既にある抑圧を使っただけ。財物へ向けた新しい力がない。だから新たな暴行・脅迫が、決め手になります。

事後的奪取意思 時系列場合分け 〔短答・論文共通〕

🔴 事後的奪取意思 時系列場合分け。時間軸=①別目的の暴行(けんか・性犯罪等)→反抗抑圧→②奪取意思が発生(はじめて財物がほしくなる)→③その後の行為で分岐。(a)新たな暴行・脅迫あり=財物奪取に向けられ、反抗抑圧状態を維持する程度の暴行(腕をつかむ)・脅迫(「もらっていくぞ」)→強盗成立。(b)既発の抑圧状態を利用しただけ=新たに財物へ向けた力を加えていない=手段としての暴行がない→強盗不成立(窃盗+元の暴行罪等)。(c)被害者が既に死亡=新たな暴行・脅迫は観念できない→死者の占有(#54)の問題に流れる→占有離脱物横領にとどまる。★規範=強盗の暴行・脅迫は財物奪取に向けられたものでなければならない。当初の暴行が別目的なら原則 強盗不成立。奪取意思を生じた後に反抗抑圧状態を維持するに足りる新たな暴行・脅迫があれば成立(論証22)。

時系列で整理します。上が時間の流れです。分岐が三つ。下のカードです。腕をつかむ、もらっていくぞ。これで強盗成立。既発の抑圧を利用しただけ。これは強盗不成立です。cは、被害者が既に死亡。死者の占有に流れて、占有離脱物横領です。新たな暴行・脅迫の有無が、生死を分けます。

核心③=2項強盗(236条2項)=処分行為不要(論証23/24) 〔論文の骨格〕

核心③=2項強盗。客体=財産上の利益(債務免脱・役務提供等/#53済=当てはめのみ)。「財産上不法の利益」の「不法」は利益自体の不法でなく、本来支払うべき債務の弁済を免れる趣旨。法禁物(麻薬代金等)の利益でも成立(最判昭35・8・30)。行為=暴行・脅迫(1項と同程度=反抗抑圧程度・利益取得に向けられたもの)を用いて財産上の利益を取得。🔴問題=債務者Aが債務を免れようと債権者Bを殺害(処分行為=債務免除の意思表示が存在しない)。それでも2項強盗(→強盗殺人)が成立するか=処分行為の要否。結論=処分行為は不要=交付罪(詐欺・恐喝)は被害者の意思に基づく占有移転を本質とするから処分行為が要件。だが2項強盗は被害者の反抗を抑圧して利益を取得する罪で、任意の処分行為は予定されていない(最判昭32・9・13)。🔴歯止め=利益移転の具体性・確実性=処分行為不要のままだと処罰が無限定→財産的利益の移転の具体性・確実性を要件として絞る。自前イメージ=2項強盗は「組み伏せて利益を抜き取る」罪。恐喝・詐欺は「差し出させる」罪(処分行為が要る)。

いよいよ2項強盗。疑問③に入ります。236条2項です。まず客体。2項の客体は、財産上の利益です。債務を免れる、サービスを受ける。そういう利益です。利益自体が不法、という意味ではありません。本来払うべき債務の弁済を、不当に免れる。その意味です。判例は、法禁物の利益でも2項強盗を認めます。設例。債務者Aが、債権者Bを殺して借金を踏み倒す。処分行為、つまり債務免除の意思表示がない。結論は、なります。処分行為は不要です。いい比較です。詐欺・恐喝は、相手が自分の意思で渡す罪。だから、差し出す動作、処分行為が要件になる。2項強盗は、反抗を抑圧して、利益を取る罪です。自分でねじ伏せて、抜き取る。だから処分行為は要らない。うまい整理です。でも、これだけだと処罰が広がりすぎる。そこで歯止め。利益移転の具体性・確実性、が必要です。本当に利益が移ったと言える確かさ。次で詳しく見ます。

2項強盗は処分行為不要——交付罪との本質差 〔論文の骨格〕

🔴 2項強盗は処分行為不要。詐欺・恐喝(交付罪)=処分行為 要=本質は被害者の意思に基づく占有・利益の移転→だまして/脅して、被害者に自分で差し出させる→「差し出す」動作=処分行為が要件。2項強盗(236条2項)=処分行為 不要=本質は被害者の反抗を抑圧して利益を取得→ねじ伏せて自分で抜き取る(最判昭32・9・13)→任意の処分は予定されない=処分行為不要。★問題=債務者Aが債務を免れようと債権者Bを殺害(Bは債務免除の意思表示=処分行為をしていない)。それでも2項強盗(→強盗殺人240)が成立するか。交付罪は被害者の意思に基づく占有移転を本質とするから処分行為が要件。だが2項強盗は反抗を抑圧して利益を取得する罪=任意の処分は予定されない→処分行為は不要。ただし無限定に成立させない歯止め=財産的利益の移転の具体性・確実性を要する(否定されれば「暴行」を欠き2項強盗は未遂すら不成立・論証23/24)。

本質の違いを、左右で並べました。左は、相手が自分の意思で差し出す。交付罪です。右は、反抗を抑圧して、自分で抜き取る。差し出させるか、抜き取るか。ここが根本の違いです。Bが債務免除を言わなくても、利益を抜き取れば成立。利益移転の具体性・確実性。これがないと成立しません。

核心③-2=利益移転の具体性・確実性(場合分けと注意点) 〔論文の骨格〕

核心③-2=利益移転の具体性・確実性。処分行為は不要。しかし無限定に2項強盗を成立させないため、財産的利益の移転の具体性・確実性を要件とする(処罰範囲の限定)。債務免脱の例=①相続人なし=○(債務を事実上免れた)/②相続人あり・債権の物的証拠なし=○(取り立てが来る現実的な見込みがない)/③相続人あり・物的証拠あり(相続人が権利行使できる)=×(なお取り立てが来る可能性が残り、利益を取り切れていない)。🔴重要な注意=具体性・確実性が否定されると、そもそも「利益移転に向けられた暴行」がない=強盗の暴行を欠く→2項強盗は未遂すら成立しない(不成立)。「未遂になる」と書くと誤り(論証23/24備考)。応用=キャッシュカードの暗証番号を反抗抑圧程度の暴行で聞き出す=ATMから払戻しを受けられる地位を具体的・確実に取得→2項強盗(東京高判平21・11・16)。自前イメージ=借用書(物的証拠)と相続人が残るなら、債権者を消してもまだ取り立てが来る=利益を抜き取れていない=強盗の暴行がない。

歯止めの中身です。具体性・確実性。場合分けで見ます。まず①債権者に相続人がいない場合。だから債務を事実上免れた。具体性・確実性は丸です。借用書などがなければ、取り立てに来る見込みが薄い。これも丸。相続人が、権利を行使できます。だから、ばつ。利益を、取り切れていない。ここで注意があります。ばつのとき、2項強盗は未遂になる、と書くと誤りです。具体性・確実性がないと、強盗の暴行自体がない。だから不成立です。ここは間違いが多いので注意。借用書と相続人が残れば、まだ取り立てが来る。抜き取れていないなら、強盗の暴行がない。応用も一つ。暗証番号を、暴行で聞き出す。これも2項強盗になりえます。払戻しを受けられる地位を、確実に取得した、と見ます。

利益移転の具体性・確実性 場合分け表 〔短答・論文共通〕

🔴 利益移転の具体性・確実性 場合分け表(債務免脱)。①相続人なし/物的証拠—/○/債務を事実上免れた→2項強盗 成立。②相続人あり/物的証拠なし/○/取り立てが来る現実的見込みなし→2項強盗 成立。③相続人あり/物的証拠あり/×/相続人が権利行使できる→利益を取り切れていない。🔴注意=具体性・確実性が否定(×)されると、そもそも「利益移転に向けられた暴行」がない=強盗の暴行を欠く→2項強盗は未遂すら成立しない(不成立)。「未遂になる」と書くと誤り(論証23/24備考)。応用=キャッシュカード暗証番号を聞き出す=払戻し地位を具体的・確実に取得→2項強盗(東京高判平21・11・16)。

場合分けを、表で確認します。三行あります。相続人なしは、丸。相続人ありで証拠なしも、丸。相続人が権利を行使できるからです。強盗の暴行を欠くので、未遂すら成立しません。

論文の型:2項強盗と処分行為の要否 〔論文〕

★コア規範|2項強盗と処分行為の要否。強盗利得罪(236条2項)は被害者の反抗を抑圧して財産上の利益を取得する犯罪であり、被害者による任意の処分行為は予定されていないから、処分行為は不要である。ただし、処罰範囲を限定するため、財産的利益の移転の具体性・確実性を要する。復元キー=①交付罪(詐欺・恐喝)=被害者の意思に基づく占有・利益の移転=処分行為が要件②2項強盗=被害者の反抗を抑圧して財産上の利益を取得する犯罪=任意の処分は予定されない③処分行為は不要(債務免除の意思表示がなくても成立しうる)④歯止め=無限定は不当→財産的利益の移転の具体性・確実性を要件として絞る⑤場合分け=相続人なし○/相続人あり・物的証拠なし○/相続人あり・物的証拠あり×。否定なら「暴行」を欠き未遂すら不成立。圧縮根拠=逐語固定は採点キーワード(被害者の反抗を抑圧して財産上の利益を取得する犯罪/処分行為は不要/財産的利益の移転の具体性・確実性)のみ。

二つ目の型、2項強盗と処分行為です。論証23と24。被害者の反抗を抑圧して財産上の利益を取得する犯罪。これが核。処分行為は不要。そして、利益移転の具体性・確実性。復元キーは、交付罪との対比から。2項強盗は、反抗を抑圧して取るから、処分行為不要。具体性・確実性。場合分けまで書ければ完璧です。暴行の要件に、具体性・確実性を読み込む厳密な型です。論証23で十分。24は、理論的にはこう詰める、と知る程度で。

答案の型|2項強盗と処分行為の要否。【事例】債務者甲は、債務の支払を免れようとして債権者乙を暴行により殺害した。乙は債務免除の意思表示(処分行為)をしていない。甲に強盗利得罪(236条2項)を基礎とした強盗殺人罪(240条後段)が成立するか。【問題提起】乙による処分行為が存在しない。2項強盗罪の成立に被害者の処分行為が必要か(処分行為の要否)が問題となる。【規範】2項強盗は反抗を抑圧して利益を取得する犯罪=処分行為不要。ただし処罰範囲限定のため財産的利益の移転の具体性・確実性を要する。【あてはめ】2項強盗に処分行為は不要であるから、乙の処分行為がなくとも成立しうる。乙に相続人がいない場合や、相続人がいても債権の物的証拠がない場合は、甲は債務を事実上免れ、利益移転の具体性・確実性が認められる。よってその場合、甲には強盗利得罪(→強盗殺人罪)が成立する。

答案の型です。債権者を殺して借金を免れる設例。規範で、本質の違いと、歯止めを立てる。相続人や物的証拠を見て、具体性・確実性を判断する。240条の強盗殺人まで繋がるのが、この論点の典型です。

論文の型:事後的奪取意思 〔論文〕

★コア規範|事後的奪取意思。強盗罪の暴行・脅迫は財物奪取に向けられたものでなければならない。暴行後にはじめて奪取意思を生じた場合、当初の暴行は財物奪取に向けられていないから、これを捉えて強盗罪とすることはできない(原則)。もっとも、奪取意思を生じた後に、反抗抑圧状態を維持するに足りる新たな暴行・脅迫があれば、強盗罪が成立する。復元キー=①強盗=暴行・脅迫を手段として財物を奪取する犯罪類型②手段性=暴行・脅迫は財物奪取に向けられたものでなければならない③当初の暴行は別目的=財物奪取に向けられていない④帰結(原則)=当初暴行を捉えて強盗とはできない=原則 強盗不成立⑤例外=奪取意思発生後に反抗抑圧状態を維持する新たな暴行・脅迫(腕をつかむ/「もらっていくぞ」)があれば成立/被害者死亡なら新たな暴行は観念できず占有離脱物横領。圧縮根拠=逐語固定は採点キーワード(暴行・脅迫を手段として/財物奪取に向けられたもの/新たな暴行・脅迫/反抗抑圧状態を維持)のみ。

三つ目の型、事後的奪取意思です。論証22。暴行・脅迫を手段として、財物奪取に向けられたもの。新たな暴行・脅迫、反抗抑圧状態を維持。この語が決め手です。強盗は手段の罪。暴行は財物に向いていないとダメ。でも、奪取意思の後に新たな暴行があれば成立する。原則と例外を、向きの軸で書き分けます。

答案の型|事後的奪取意思。【事例】甲は財物奪取の意思なく乙に暴行を加えて反抗を抑圧した後、乙が高価な腕時計をしているのにはじめて気づき、これを奪おうと考え、乙の腕をつかんで時計を奪った。時計奪取につき強盗罪が成立するか。【問題提起】当初の暴行は財物奪取に向けられていない。暴行後に生じた奪取意思に基づく財物奪取につき強盗罪が成立するか(事後的奪取意思)が問題となる。【規範】強盗の暴行・脅迫は財物奪取に向けられたものを要する。当初暴行は別目的=原則 強盗不成立。奪取意思発生後に反抗抑圧状態を維持する新たな暴行・脅迫があれば成立。【あてはめ】当初の暴行は財物奪取に向けられておらず、これを捉えて強盗とはできない。もっとも甲が「乙の腕をつかむ」行為は、時計奪取に向けられ、乙の反抗抑圧状態を維持するに足りる新たな暴行といえる。よって甲には強盗罪が成立する。

答案の型です。別目的の暴行の後、時計を奪う設例。規範で、手段性と、原則・例外を立てる。でも、腕をつかむ行為が、新たな暴行になりうる。だから強盗成立。新たな暴行の認定が勝負所です。

核心④=強盗/恐喝/詐欺/窃盗 の区別 〔短答・論文共通〕

核心④=四罪の区別。4罪は地続きで段階的に分かれる。物差し=暴行・脅迫の程度(反抗抑圧か)・処分行為の有無・客体。窃盗=意思に反する占有移転(暴行・脅迫なし・処分行為なし)。詐欺=欺罔→錯誤→交付(処分行為 要=交付罪)。恐喝=畏怖させて交付(反抗抑圧に至らない程度の暴行・脅迫+処分行為 要=交付罪)。強盗=反抗抑圧程度の暴行・脅迫→強取(処分行為 不要)。段階=暴行・脅迫が「反抗抑圧程度か」で強盗と恐喝が分かれ、暴行脅迫の有無・処分行為の有無で詐欺・窃盗が分かれる(恐喝詳細#60/詐欺詳細#58-59)。

最後に、四つの罪を地続きで整理します。物差しは、暴行脅迫の程度と、処分行為の有無。詐欺は、だまして交付させる。処分行為が要ります。脅して交付させる。反抗抑圧には至らない程度。処分行為が要る。反抗抑圧の暴行で、強取。処分行為は要りません。詐欺・恐喝と強盗の境目は、処分行為の有無です。

四罪 手段・処分行為 対比表 〔短答・論文共通〕

🔴 強盗/恐喝/詐欺/窃盗 手段・処分行為 対比表。窃盗=手段:暴行脅迫なし/処分行為:不要(意思に反する占有移転)/核:こっそり占有を移す。詐欺=手段:欺罔(暴行脅迫でない)/処分行為:要(錯誤に基づく交付)/核:だまして差し出させる=交付罪。恐喝=手段:反抗抑圧に至らない程度/処分行為:要(畏怖に基づく交付)/核:脅して差し出させる=交付罪。強盗=手段:反抗を抑圧する程度(最強義)/処分行為:不要(反抗抑圧して強取)/核:ねじ伏せて抜き取る。段階=暴行・脅迫が「反抗抑圧程度か」で強盗と恐喝が分かれる。詐欺・恐喝は処分行為(交付)が要件=交付罪、強盗は反抗を抑圧して取るので処分行為不要。客体=財物なら1項/財産上の利益なら2項(窃盗に2項はない=#55)。恐喝の詳細#60・詐欺の詳細#58-59。

表で、四罪を一望します。手段と処分行為の列が肝です。詐欺と恐喝は、処分行為が要。交付罪です。ねじ伏せて抜き取るからです。一枚で四罪を比べると、境目がくっきりしますね。

短答ひっかけ

ここはひっかかる(短答・論文まとめ)。①1項強盗236①=暴行・脅迫→反抗抑圧→強取の因果経過/暴行は財物奪取に向けられたもの/既遂=占有取得(#55取得説)/予備237・未遂243。②程度=反抗を抑圧するに足りる程度(最強義)/判断=社会通念上 一般人基準=客観的基準(最判昭24・2・8)/達しなければ恐喝・窃盗。③🔴反抗抑圧の要否=判例 不要(既遂)/通説 必要→達しなければ強盗未遂(因果経過が予定・論証21)。④🔴事後的奪取意思=当初暴行は別目的=原則 不成立/新たな暴行・脅迫(反抗抑圧状態を維持する程度)があれば成立/被害者死亡=占有離脱物横領(論証22)。⑤🔴2項強盗236②=処分行為不要(反抗を抑圧して取る罪=交付罪と本質差・最判昭32・9・13)/歯止め=利益移転の具体性・確実性(なければ「暴行」を欠き未遂すら不成立・論証23/24)。⑥区別=窃盗(暴行脅迫なし)/詐欺・恐喝(処分行為 要)/強盗(反抗抑圧+処分行為 不要)。法定刑=236=五年以上の有期拘禁刑。

整理します。①強盗は、暴行脅迫から反抗抑圧、強取の流れ。②程度は、反抗抑圧に足りるか。客観的基準。③反抗抑圧の要否は、判例 不要、通説は未遂。被害者死亡なら、占有離脱物横領でした。否定されれば、未遂すら不成立。⑥は四罪の区別。

今日の地図(保存版)

#56 今日のまとめ。軸=強盗罪は暴行・脅迫を手段として財物・利益を奪う罪。手段の「強さ」(反抗抑圧)・「向き」(財物奪取に向ける)・「効き方」(処分行為不要)の3つで全部演繹できる。①1項強盗236①=暴行・脅迫→反抗抑圧→強取の因果経過/暴行は財物奪取に向けられたもの/法定刑=五年以上の有期拘禁刑・予備237(二年以下の拘禁刑)。②程度=反抗を抑圧するに足りる程度(最強義)・客観的基準(一般人基準・最判昭24・2・8)/達しなければ恐喝・窃盗。③🔴反抗抑圧の要否=判例 不要(既遂)/通説 必要→達しなければ強盗未遂(論証21)。④🔴事後的奪取意思=原則 不成立/新たな暴行・脅迫で成立/被害者死亡=占有離脱物横領(論証22)。⑤🔴2項強盗236②=処分行為不要(最判昭32・9・13)/歯止め=利益移転の具体性・確実性(なければ未遂すら不成立・論証23/24)。次は#57 強盗罪②(事後強盗238・昏酔強盗239・強盗致死傷240・強盗不同意性交241)。

まとめます。手段の、強さ・向き・効き方。三つで全部ほどけました。客観的基準で見て、達しなければ恐喝や窃盗。財物に向けた暴行か。新たな暴行があれば強盗成立。反抗を抑圧して抜き取る罪だから、処分行為は要らない。否定されれば、未遂すら成立しない。ここは注意です。事後強盗や強盗致死傷に入ります。

刑法 全体ロードマップへ →