強盗罪①——暴行脅迫の程度(反抗抑圧)・事後的奪取意思・2項強盗と処分行為
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第12章 財産に対する罪 ④/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
核心①=1項強盗の構造(暴行脅迫→反抗抑圧→強取) 〔短答・論文共通〕

まず構造です。条文を読みます。236条1項。

客体は、他人の財物。財物については#53でやりました。後でやります。ここで核心は、強盗が手段の罪だという点。暴行・脅迫は、財物を奪うための手段。これが最重要です。暴行・脅迫で、反抗を抑圧して、財物を奪取することです。だから、決まった流れがある。三段階です。①暴行・脅迫、②被害者の反抗抑圧、③財物の奪取。この因果経過が、強盗には予定されている。ここが背骨です。強盗は「相手をマットに組み伏せてから、財布を抜く」。窃盗のこっそりとも、恐喝のすごみとも違う。力で伏せる。占有を取得した時点。#55の取得説と同じです。財物を取っても、未遂にとどまります。流れが完成しないから。予備は237条、未遂は243条。主観は故意と不法領得の意思。

強盗では争点になりにくいので、当てはめだけで大丈夫です。
1項強盗の構造フロー 〔短答・論文共通〕

構造を、フローで見ます。上の本流が三段階。下に伸びる矢印が、つまずきポイントの分岐です。左は、暴行が反抗抑圧に達しない場合。恐喝か窃盗です。現実に抑圧されなかった場合。通説では未遂。これが論証21。暴行が別目的だった場合。事後的奪取意思。論証22です。暴行・脅迫の、強さ・効き方・向き。順に見ます。
核心①-2=暴行・脅迫の程度=反抗抑圧(客観的基準) 〔論文の骨格〕

手段の「強さ」です。疑問①。どこからが強盗の暴行か。それを決めるのが、暴行・脅迫の程度です。強盗の暴行は、最強義。相手の反抗を抑圧する程度が必要です。これに達しないと、強盗にはなりません。軽い脅しで財布を出させれば、恐喝。すり取れば、窃盗です。客観的に決めます。社会通念上、一般人なら抑圧されるか。関係ありません。一般人基準で、客観的に判断します。本人基準だと、同じ暴行でも相手次第で罪名が変わる。だから、社会通念上の一般人で線を引きます。①ぶつかりざまの軽い接触ですり取る。これは窃盗です。②財物目的で、不意に突き飛ばす。これは強盗の暴行。③車で引きずって、転倒の危険があるひったくり。生命・身体に重大な危険がある。だから強盗の暴行です。程度は「組み伏せられるレベルか」。すごみどまりは恐喝。
核心①-3=反抗抑圧の要否(論証21・判例vs通説) 〔論文の骨格〕

次は、手段の「効き方」。反抗抑圧の要否です。程度は、暴行が客観的に強いか。要否は、現実に効いたか。問題はこうです。客観的には抑圧する程度の暴行をした。でも、相手は反抗を抑圧されず、畏怖して財布を出した。この場合、強盗が成立するか。ここで見解が割れます。判例は、強盗の成立を肯定。現実の抑圧は不要、とします。通説は、現実の抑圧が必要、とします。答案はこちらが書きやすい。軸に戻ります。強盗は、暴行→抑圧→奪取の流れが予定されている。現実に抑圧されないと、その流れが完成していない。だから、既遂にはならず、強盗未遂にとどまる。暴行自体は強盗の暴行だから、未遂は成立します。答案では、因果経過から「現実の抑圧が必要」と書く。
📝 論文の型

一つ目の型、反抗抑圧の要否です。論証21。反抗を抑圧するに足りる程度、社会通念上一般人。この二つ。暴行脅迫から反抗抑圧、奪取の因果経過。そして強盗未遂。あとは趣旨から復元します。まず、強盗は手段の罪。だから程度は、反抗抑圧に足りるか。客観的基準で見る。だから既遂には、現実の抑圧が必要。なければ未遂。

答案の型です。強い暴行はしたが、抑圧されなかった設例。規範で、程度と因果経過を立てる。流れが完成していないから、既遂に至らない。未遂で締めるのが、通説の書き方の勝負所です。
核心②=事後的奪取意思(論証22) 〔論文の骨格〕

次は、手段の「向き」。事後的奪取意思です。疑問②。暴行の後に、はじめて奪取の意思が生じた場合です。そこが引っかかる所です。でも、原則は強盗になりません。軸です。強盗の暴行は、財物奪取に向けられたものが必要。財布を取るために、殴ったかどうか。これが「向き」です。けんかや別の目的だった。財物に向いていない。これが原則。でも、例外があります。奪取意思が生じた後に、新たな暴行・脅迫があれば成立します。財物に向けられ、反抗抑圧状態を維持する程度の暴行・脅迫です。腕時計を奪うとき、腕をつかむ。これが新たな暴行になりうる。「この時計をもらっていくぞ」と言えば、新たな脅迫。被害者が、もう死んでいる場合です。新たな暴行・脅迫が、観念できない。だから死者の占有の問題に流れ、占有離脱物横領です。ところで、なぜ既発の抑圧の利用では足りないか。既にある抑圧を使っただけ。財物へ向けた新しい力がない。だから新たな暴行・脅迫が、決め手になります。
事後的奪取意思 時系列場合分け 〔短答・論文共通〕

時系列で整理します。上が時間の流れです。分岐が三つ。下のカードです。腕をつかむ、もらっていくぞ。これで強盗成立。既発の抑圧を利用しただけ。これは強盗不成立です。cは、被害者が既に死亡。死者の占有に流れて、占有離脱物横領です。新たな暴行・脅迫の有無が、生死を分けます。
核心③=2項強盗(236条2項)=処分行為不要(論証23/24) 〔論文の骨格〕

いよいよ2項強盗。疑問③に入ります。236条2項です。まず客体。2項の客体は、財産上の利益です。債務を免れる、サービスを受ける。そういう利益です。利益自体が不法、という意味ではありません。本来払うべき債務の弁済を、不当に免れる。その意味です。判例は、法禁物の利益でも2項強盗を認めます。設例。債務者Aが、債権者Bを殺して借金を踏み倒す。処分行為、つまり債務免除の意思表示がない。結論は、なります。処分行為は不要です。いい比較です。詐欺・恐喝は、相手が自分の意思で渡す罪。だから、差し出す動作、処分行為が要件になる。2項強盗は、反抗を抑圧して、利益を取る罪です。自分でねじ伏せて、抜き取る。だから処分行為は要らない。うまい整理です。でも、これだけだと処罰が広がりすぎる。そこで歯止め。利益移転の具体性・確実性、が必要です。本当に利益が移ったと言える確かさ。次で詳しく見ます。
2項強盗は処分行為不要——交付罪との本質差 〔論文の骨格〕

本質の違いを、左右で並べました。左は、相手が自分の意思で差し出す。交付罪です。右は、反抗を抑圧して、自分で抜き取る。差し出させるか、抜き取るか。ここが根本の違いです。Bが債務免除を言わなくても、利益を抜き取れば成立。利益移転の具体性・確実性。これがないと成立しません。
核心③-2=利益移転の具体性・確実性(場合分けと注意点) 〔論文の骨格〕

歯止めの中身です。具体性・確実性。場合分けで見ます。まず①債権者に相続人がいない場合。だから債務を事実上免れた。具体性・確実性は丸です。借用書などがなければ、取り立てに来る見込みが薄い。これも丸。相続人が、権利を行使できます。だから、ばつ。利益を、取り切れていない。ここで注意があります。ばつのとき、2項強盗は未遂になる、と書くと誤りです。具体性・確実性がないと、強盗の暴行自体がない。だから不成立です。ここは間違いが多いので注意。借用書と相続人が残れば、まだ取り立てが来る。抜き取れていないなら、強盗の暴行がない。応用も一つ。暗証番号を、暴行で聞き出す。これも2項強盗になりえます。払戻しを受けられる地位を、確実に取得した、と見ます。
利益移転の具体性・確実性 場合分け表 〔短答・論文共通〕

場合分けを、表で確認します。三行あります。相続人なしは、丸。相続人ありで証拠なしも、丸。相続人が権利を行使できるからです。強盗の暴行を欠くので、未遂すら成立しません。
論文の型:2項強盗と処分行為の要否 〔論文〕

二つ目の型、2項強盗と処分行為です。論証23と24。被害者の反抗を抑圧して財産上の利益を取得する犯罪。これが核。処分行為は不要。そして、利益移転の具体性・確実性。復元キーは、交付罪との対比から。2項強盗は、反抗を抑圧して取るから、処分行為不要。具体性・確実性。場合分けまで書ければ完璧です。暴行の要件に、具体性・確実性を読み込む厳密な型です。論証23で十分。24は、理論的にはこう詰める、と知る程度で。

答案の型です。債権者を殺して借金を免れる設例。規範で、本質の違いと、歯止めを立てる。相続人や物的証拠を見て、具体性・確実性を判断する。240条の強盗殺人まで繋がるのが、この論点の典型です。
論文の型:事後的奪取意思 〔論文〕

三つ目の型、事後的奪取意思です。論証22。暴行・脅迫を手段として、財物奪取に向けられたもの。新たな暴行・脅迫、反抗抑圧状態を維持。この語が決め手です。強盗は手段の罪。暴行は財物に向いていないとダメ。でも、奪取意思の後に新たな暴行があれば成立する。原則と例外を、向きの軸で書き分けます。

答案の型です。別目的の暴行の後、時計を奪う設例。規範で、手段性と、原則・例外を立てる。でも、腕をつかむ行為が、新たな暴行になりうる。だから強盗成立。新たな暴行の認定が勝負所です。
核心④=強盗/恐喝/詐欺/窃盗 の区別 〔短答・論文共通〕

最後に、四つの罪を地続きで整理します。物差しは、暴行脅迫の程度と、処分行為の有無。詐欺は、だまして交付させる。処分行為が要ります。脅して交付させる。反抗抑圧には至らない程度。処分行為が要る。反抗抑圧の暴行で、強取。処分行為は要りません。詐欺・恐喝と強盗の境目は、処分行為の有無です。
四罪 手段・処分行為 対比表 〔短答・論文共通〕

表で、四罪を一望します。手段と処分行為の列が肝です。詐欺と恐喝は、処分行為が要。交付罪です。ねじ伏せて抜き取るからです。一枚で四罪を比べると、境目がくっきりしますね。
短答ひっかけ

整理します。①強盗は、暴行脅迫から反抗抑圧、強取の流れ。②程度は、反抗抑圧に足りるか。客観的基準。③反抗抑圧の要否は、判例 不要、通説は未遂。被害者死亡なら、占有離脱物横領でした。否定されれば、未遂すら不成立。⑥は四罪の区別。
今日の地図(保存版)

まとめます。手段の、強さ・向き・効き方。三つで全部ほどけました。客観的基準で見て、達しなければ恐喝や窃盗。財物に向けた暴行か。新たな暴行があれば強盗成立。反抗を抑圧して抜き取る罪だから、処分行為は要らない。否定されれば、未遂すら成立しない。ここは注意です。事後強盗や強盗致死傷に入ります。