強盗罪②前編——事後強盗238(窃盗の機会・身分犯性・予備)・昏酔強盗239
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第12章 財産に対する罪 ⑤/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
核心①=事後強盗238の意義=準強盗(236と逆順) 〔短答・論文共通〕

まず事後強盗。条文を読みます。238条。

ここが疑問①の答えです。順番を見てください。236は「暴行で反抗を抑圧して、奪う」順でした。事後強盗は、こっそり盗んでから、後で暴行する。逆です。もう奪った後の暴行ですからね。本来は窃盗+暴行罪のはず。現実に多いんです。盗んで逃げる時、見つかって暴れる。悪質さは強盗とほぼ同じ。だから強盗に準じて扱う。構成要件は四つ。主体は、窃盗犯人。3目的のどれか。取り返されまい、捕まるまい、証拠を消そう。反抗を抑圧する程度。これは236と同じ。#56でやりました。窃盗の機会の継続中。条文にない、書かれざる要件です。後で。忍び込んで盗み、出ようとして見つかり、突き飛ばして逃げる。そして効き目。「強盗として論ずる」がポイントです。致死傷240、不同意性交241、未遂243、予備237の対象になる。後編の240で、また効いてきます。覚えておいてください。
準強盗の構造図(順 vs 逆順) 〔短答・論文共通〕

図で、順番の違いを並べました。上が236、下が事後強盗。下は、窃盗、事後の暴行、強盗として論ずる。矢印の向きは同じでも、暴行の位置が前か後ろか。財物の取得と、反抗抑圧程度の暴行脅迫。これが共通。順番が逆なだけ、と腑に落ちれば疑問①は解けました。
暴行・脅迫の程度・相手方 〔短答〕

程度と相手方を、短く確認します。まず程度。強盗として扱う以上、236と同じ。#56の当てはめです。問題は相手方。誰に暴行したら事後強盗か。それだけではありません。追跡してきた警察官でもいい。逃げる犯人にとって、捕まえに来る者は皆 障害です。被害者でも警官でも第三者でも、事後強盗になりえます。
核心②=窃盗の機会の継続中(論証25・前編の山) 〔論文の骨格〕

疑問②の答え。まず、ありえない例。翌日 偶然 被害者に会って殴る。そうですよね。事後強盗は財産犯。無限定には広げられない。暴行脅迫が、窃盗の機会の継続中になされたか。これが要件です。書かれざる要件です。継続中かは、こう判断します。容易に発見され、取り返され、逮捕され得る状況だったか。二つ。①時間的・場所的接着性。②被害者側の追跡の有無。ここが大事。①と②は、独立に効きます。場所が離れても、②追跡が続いていれば、継続中になりうる。肯定されえます。距離だけでは決まらない。追っ手が鍵です。誰にも追われず安全圏に入って時間が経てば、機会は終了です。肯定例。窃取後しばらく現場付近に潜伏し、発覚して暴行。否定例。誰にも追われず現場を離れ、時間が経った後。別目的で現場付近に戻って脅迫。これは継続中といえない。自前のイメージは、鬼ごっこのタッチ範囲です。鬼の手が届く間は継続中。まいて安全地帯に入れば終了。
窃盗の機会フロー 〔論文の骨格〕

フローで整理します。窃盗から、判断要素へ。そこから、機会の継続中か、を問う。事後強盗238。強盗として論ずる、です。窃盗罪と、別途 暴行罪や脅迫罪。事後強盗にはなりません。肯定例は、潜伏して時間が空いても、現場で発覚。三つ目が、数km追跡継続。これも肯定。このフローで、肯定と否定を行き来できれば、論証25は固いです。
📝 論文の型

一つ目の型、窃盗の機会です。論証25。窃盗の機会の継続中。時間的・場所的接着性。追跡の有無。あとは趣旨から復元します。まず、事後強盗は財産犯。だから、窃盗の機会の継続中に限定する。そして、二つは独立に効く。場所が離れても追跡で肯定。

答案の型です。数km追われた地点で殴った設例。規範で、財産犯と、二つのメルクマールを立てる。なお容易に逮捕され得る状況だった、と書く。追跡の継続を拾うのが、この型の勝負所です。
目的犯性・居直り強盗との区別 〔短答・論文共通〕

目的犯性です。3目的のどれかが要る。そして、目的の達成は不要。成立します。目的があれば足りる。ここで一つ区別を。見つかった窃盗犯が、新たに奪う目的で暴行した場合。違います。新たな奪取目的なら、通常の強盗236です。目的で分岐します。取り返されまい等なら238。居直りの中身は#56でやったので、深入りしません。
核心③=暴行脅迫にのみ関与した者=身分犯性(論証26) 〔論文の骨格〕

核心③、身分犯性です。設例を置きます。窃盗犯Aが逃走中。友人Bが、追跡者Xへの暴行だけ手伝う。暴行だけ。Aは事後強盗成立。問題は、Bです。これは、事後強盗を何と見るかで分かれます。一つ目、結合犯説。窃盗と暴行脅迫の合体と見る。承継的共同正犯の問題で処理。共犯を認めることが多い。難点があります。窃盗の着手だけで、事後強盗の未遂や予備。それは不自然でしょう。既遂未遂や予備の処理が崩れます。身分犯説。事後強盗は「窃盗犯人」という身分が要る、と見る。総論でやりました。真正身分犯と、不真正身分犯。真正は65条1項、不真正は65条2項。これも#34、35で済み。不真正と見ると、Bは暴行罪・脅迫罪の共犯どまり。Bにも事後強盗の共犯。呉が採るのは、真正身分犯説です。暴行脅迫罪は、財産犯ではない。その加重とは見られない。窃盗犯人にしか実現し得ない。だから真正身分犯。軸は、結論より「結合犯か身分犯か」の筋です。身分犯と見ると、その難点が出ない。判例も。身分犯説に立つ裁判例があります。年月日は断定しませんが。
暴行脅迫のみ関与者の処理 対比表 〔論文の骨格〕

表で、三つの見方を並べました。Bの結論が変わります。でも、未遂や予備で難点がある。Bは暴行罪・脅迫罪の共犯どまりになります。呉採用です。Bにも事後強盗の共犯が成立する。表で結論差を押さえるのが、論証26のコツです。
論文の型:暴行脅迫のみ関与者(身分犯性) 〔論文〕

二つ目の型、身分犯性です。論証26。窃盗犯人にしか実現し得ない真正身分犯。そして65条1項。復元キーは、結合犯説の難点から始めます。だから身分犯と捉える。窃盗犯人という身分。だから真正身分犯。65条1項で、Bにも共犯。

答案の型です。Bが追跡者に暴行だけ加えた設例。規範で、結合犯説の難点と、真正身分犯を立てる。窃盗犯人でないBにも、事後強盗の共犯。ここは当てはめだけで足ります。
核心④=予備(論証27)/既遂未遂 〔論文の骨格〕

核心④、予備です。先に既遂未遂を片付けます。先行する窃盗の既遂・未遂に従います。暴行を加えれば、事後強盗も既遂。窃盗が未遂なら、未遂です。関係ありません。捕まっても、窃盗が既遂なら事後強盗既遂。事後強盗の目的で予備したら、237の強盗予備か。

注目は、条文の位置です。237は、238より前にある。否定説は言います。237の「強盗」は、236だけを指す、と。だから事後強盗目的は含まない、という読み方。238が「強盗として論ずる」と言っている。これが効く。なら237の「強盗の罪を犯す目的」に事後強盗も含む。判例も肯定です。事後強盗目的の予備に、強盗予備罪が成立。
論文の型:予備 〔論文〕

三つ目の型、予備です。論証27。骨子だけで足ります。強盗として論ずる。強盗の罪を犯す目的。強盗予備罪。否定説の条文位置論を、まず示す。237が238より前。だから237の目的に事後強盗も含む、で逆転します。

答案の型です。事後強盗目的で凶器を準備した設例。規範で、位置論と、それを覆す文言論を立てる。だから事後強盗目的も含む。強盗予備罪成立で締めます。
核心⑤=昏酔強盗239(させて/乗じての対比) 〔短答・論文共通〕

最後、昏酔強盗です。疑問③の答え。条文を読みます。

暴行脅迫の代わりに、昏酔を使う強盗です。昏酔させる、とは、意識作用に障害を生じさせること。ここで、今日一番のひっかかりです。「昏酔させて」。これは、自分で昏酔状態を作るのが必要です。では、もう酔いつぶれて寝ている人から財布を抜いたら。違います。窃盗にとどまります。自分で昏酔させていない。既にある状態を、使っただけ。条文は「昏酔させて」。させる、が要ります。それは、自分で作出。昏酔強盗です。手段を作ったから。寝落ちした人の横で抜くのは、ただのこそ泥。239も「強盗として論ずる」。240・241・243の射程です。事後強盗と同じ争いですが、含むと解します。昏酔強盗予備も。
昏酔強盗の成否対比(させて/乗じて) 〔短答・論文共通〕

対比で、はっきりさせます。左が成立、右が不成立。自分で昏酔を作出。だから昏酔強盗、丸です。既存の状態に乗じただけ。だから窃盗どまり、ばつ。手段を自分で作ったか。これが分かれ目です。ここはひっかけの定番。確実に押さえてください。
短答ひっかけ

整理します。①事後強盗は、窃盗から事後の暴行。逆順。②窃盗の機会は、接着性と追跡の有無。③相手方は、被害者に限らず警官も含む。④暴行脅迫のみ関与者は、真正身分犯説。65条1項。⑥昏酔強盗は、自分で昏酔状態を作出。三つの直感破りが、ぜんぶ回収されました。
今日の地図(保存版)

まとめます。事後強盗は、窃盗から事後の暴行。逆順です。接着性と追跡の有無。離れても追跡継続なら肯定。予備も、「強盗として論ずる」から肯定でした。寝てる人から抜くのは窃盗どまり。ここが一番の罠。どれも「強盗として論ずる」が効きました。お楽しみに。