刑法 ゼロから刑法#57

強盗罪②前編——事後強盗238(窃盗の機会・身分犯性・予備)・昏酔強盗239

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第12章 財産に対する罪 ⑤/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

核心①=事後強盗238の意義=準強盗(236と逆順) 〔短答・論文共通〕

核心①=事後強盗238の意義=準強盗。238条=窃盗が、①財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、②逮捕を免れ、又は③罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる(準強盗)。236強盗=「暴行脅迫→反抗抑圧→強取」の順(手段が先)。事後強盗=「窃盗(既遂/未遂)→事後の暴行脅迫」の逆順(暴行は奪取の手段でなく事後)。なぜ強盗扱い=窃盗犯人が現場を離れる際に暴行脅迫を加える犯罪学的実態に照らし、財産犯の保護のため強盗に準じて扱う(多数説)。構成要件=①主体=窃盗(窃盗犯人)/②3目的のいずれか/③反抗を抑圧する程度の暴行脅迫(程度は236と同じ=#56接続)/④窃盗の機会の継続中(書かれざる要件・後述)。効き目=「強盗として論ずる」=240・241・243・237の適用対象(後編240の主体『強盗』に事後強盗も入る伏線)。自前イメージ=こっそり忍び込んで盗み、出ようとして見つかり、突き飛ばして逃げる。盗む→見つかる→暴行 の逆順。だが悪質さは強盗と地続き。

まず事後強盗。条文を読みます。238条。

刑法238条(事後強盗)。窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。→主体=窃盗(窃盗犯人)/3目的=取還し防止・逮捕免脱・罪跡隠滅(いずれか・達成不要)/暴行脅迫=反抗を抑圧する程度(236と同じ)/書かれざる要件=窃盗の機会の継続中。「強盗として論ずる」=240・241・243・237の射程。法定刑は236の例=五年以上の有期拘禁刑。e-Gov現行(2025年6月施行の改正後表記=拘禁刑に統一)。

ここが疑問①の答えです。順番を見てください。236は「暴行で反抗を抑圧して、奪う」順でした。事後強盗は、こっそり盗んでから、後で暴行する。逆です。もう奪った後の暴行ですからね。本来は窃盗+暴行罪のはず。現実に多いんです。盗んで逃げる時、見つかって暴れる。悪質さは強盗とほぼ同じ。だから強盗に準じて扱う。構成要件は四つ。主体は、窃盗犯人。3目的のどれか。取り返されまい、捕まるまい、証拠を消そう。反抗を抑圧する程度。これは236と同じ。#56でやりました。窃盗の機会の継続中。条文にない、書かれざる要件です。後で。忍び込んで盗み、出ようとして見つかり、突き飛ばして逃げる。そして効き目。「強盗として論ずる」がポイントです。致死傷240、不同意性交241、未遂243、予備237の対象になる。後編の240で、また効いてきます。覚えておいてください。

準強盗の構造図(順 vs 逆順) 〔短答・論文共通〕

準強盗の構造図。上段=236強盗=①暴行・脅迫(手段)→②反抗抑圧→③強取(強盗既遂)=手段が先。下段=238事後強盗=①窃盗(既遂/未遂)→②事後の暴行脅迫(3目的・反抗抑圧程度・窃盗の機会中)→③強盗として論ずる(240・241・243・237の射程)=手段が後ろ。★236は「暴行脅迫→反抗抑圧→強取」の順(暴行が奪取の手段)。事後強盗238は「窃盗→事後の暴行脅迫」の逆順(暴行は奪取の手段でなく事後)。順番は逆でも、財物の取得+反抗抑圧程度の暴行脅迫が結びつく点は共通=悪質さは強盗と地続き→238条「強盗として論ずる」(準強盗)。

図で、順番の違いを並べました。上が236、下が事後強盗。下は、窃盗、事後の暴行、強盗として論ずる。矢印の向きは同じでも、暴行の位置が前か後ろか。財物の取得と、反抗抑圧程度の暴行脅迫。これが共通。順番が逆なだけ、と腑に落ちれば疑問①は解けました。

暴行・脅迫の程度・相手方 〔短答〕

暴行・脅迫の程度・相手方。①程度=強盗として処理する以上、236と同じく相手方の反抗を抑圧するに足りる程度を要する(程度の規範は#56既出=当てはめのみ)。②相手方=3目的を達する障害になりうる者でよい。窃盗の被害者に限らず、追跡してきた警察官・第三者も含む(盗品と無関係の警官への暴行でも事後強盗が成立しうる)。初学者のひっかかり=相手方が被害者に限られない点。自前イメージ=逃げる窃盗犯にとって「捕まえに来る者」は誰でも障害=その障害を反抗抑圧程度の暴行で排除すれば事後強盗。

程度と相手方を、短く確認します。まず程度。強盗として扱う以上、236と同じ。#56の当てはめです。問題は相手方。誰に暴行したら事後強盗か。それだけではありません。追跡してきた警察官でもいい。逃げる犯人にとって、捕まえに来る者は皆 障害です。被害者でも警官でも第三者でも、事後強盗になりえます。

核心②=窃盗の機会の継続中(論証25・前編の山) 〔論文の骨格〕

核心②=窃盗の機会の継続中(論証25・前編の山)。事後強盗は財産犯である以上、暴行・脅迫は窃盗の機会の継続中に行われたことを要する(書かれざる構成要件要素・通説判例)。翌日 偶然 被害者に会って殴っても事後強盗にならない。機会の継続中か=容易に発見され、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況だったか。メルクマール=①窃盗と暴行脅迫の時間的・場所的接着性/②被害者側による追跡の有無。🔴①②は独立に効く=場所が離れても②追跡が継続していれば肯定されうる(数km離れても追跡継続→肯定)。逆に誰にも追われず安全圏に入り時間が経てば終了。肯定例=窃取後しばらく現場付近に潜伏し、発覚して逮捕を免れようと現場で暴行(最判平14・2・14)=時間が空いても機会の継続中。否定例=窃取後だれにも発見・追跡されず現場を離れ時間が経過し、再び別目的で現場付近に戻って脅迫(最判平16・12・10)=機会の継続中とはいえない。自前イメージ=窃盗の機会=鬼ごっこのタッチ範囲。鬼(被害者・追跡者)の手が届く間は継続中/鬼をまいて安全地帯に入れば終了。距離でなく『追っ手が続くか』で決まる。

疑問②の答え。まず、ありえない例。翌日 偶然 被害者に会って殴る。そうですよね。事後強盗は財産犯。無限定には広げられない。暴行脅迫が、窃盗の機会の継続中になされたか。これが要件です。書かれざる要件です。継続中かは、こう判断します。容易に発見され、取り返され、逮捕され得る状況だったか。二つ。①時間的・場所的接着性。②被害者側の追跡の有無。ここが大事。①と②は、独立に効きます。場所が離れても、②追跡が続いていれば、継続中になりうる。肯定されえます。距離だけでは決まらない。追っ手が鍵です。誰にも追われず安全圏に入って時間が経てば、機会は終了です。肯定例。窃取後しばらく現場付近に潜伏し、発覚して暴行。否定例。誰にも追われず現場を離れ、時間が経った後。別目的で現場付近に戻って脅迫。これは継続中といえない。自前のイメージは、鬼ごっこのタッチ範囲です。鬼の手が届く間は継続中。まいて安全地帯に入れば終了。

窃盗の機会フロー 〔論文の骨格〕

🔴 窃盗の機会フロー。窃盗(既遂/未遂)→事後の暴行脅迫(3目的)→判断要素=①時間的・場所的接着性/②追跡の有無→窃盗の機会の継続中?(容易に発見・取返し・逮捕され得る状況か)→Yes=機会の継続中→事後強盗238(強盗として論ずる)/No=機会の終了→窃盗罪+(別途)暴行罪・脅迫罪等。判例3つ=肯定例(最判平14・2・14)=窃取後しばらく現場付近に潜伏→発覚し逮捕を免れようと現場で暴行=時間が空いても機会の継続中/否定例(最判平16・12・10)=窃取後だれにも発見・追跡されず現場を離れ時間経過→再び現場付近に戻り脅迫=機会の継続中とはいえない/数km追跡継続=肯定=場所が離れても②追跡が続いていれば機会の継続中(距離でなく『追っ手が続くか』で決まる)。★事後強盗は財産犯である以上、暴行・脅迫は窃盗の機会の継続中に行われたことを要する。継続中か=①時間的・場所的接着性/②被害者側による追跡の有無で判断(論証25)。

フローで整理します。窃盗から、判断要素へ。そこから、機会の継続中か、を問う。事後強盗238。強盗として論ずる、です。窃盗罪と、別途 暴行罪や脅迫罪。事後強盗にはなりません。肯定例は、潜伏して時間が空いても、現場で発覚。三つ目が、数km追跡継続。これも肯定。このフローで、肯定と否定を行き来できれば、論証25は固いです。

📝 論文の型

★コア規範|事後強盗罪における窃盗の機会。事後強盗罪は財産犯である以上、その暴行・脅迫は窃盗の機会の継続中に行われたことを要する。窃盗の機会といえるか否かは、①窃盗行為と暴行・脅迫との時間的・場所的接着性、②被害者側による追跡の有無などにより判断する。復元キー=①事後強盗は財産犯(236の流れを汲む)=暴行脅迫は無限定でなく窃盗の機会に限定②窃盗の機会=容易に発見され、財物を取り返され、あるいは逮捕され得る状況だったか③メルクマール=①時間的・場所的接着性/②被害者側による追跡の有無④①②は独立に効く=場所が離れても②追跡が継続していれば肯定(数km離れても追跡継続→肯定)⑤誰にも追われず安全圏に入り時間が経てば終了(肯定例 平14・2・14/否定例 平16・12・10)。圧縮根拠=逐語固定は採点キーワード(窃盗の機会の継続中/時間的・場所的接着性/追跡の有無/容易に発見され…逮捕され得る状況)のみ。

一つ目の型、窃盗の機会です。論証25。窃盗の機会の継続中。時間的・場所的接着性。追跡の有無。あとは趣旨から復元します。まず、事後強盗は財産犯。だから、窃盗の機会の継続中に限定する。そして、二つは独立に効く。場所が離れても追跡で肯定。

答案の型|事後強盗罪における窃盗の機会。【事例】甲は乙宅で窃盗を行い逃走したが、現場付近で乙に発見され、逮捕を免れようとして追跡してきた乙を数km先まで逃げた地点で殴打した。甲に事後強盗罪が成立するか。【問題提起】甲の暴行は窃盗現場から場所的に離れた地点で行われている。事後強盗罪の暴行・脅迫が「窃盗の機会の継続中」に行われたといえるか(窃盗の機会)が問題となる。【規範】事後強盗は財産犯=暴行脅迫は窃盗の機会の継続中に行われたことを要する。継続中か=①時間的・場所的接着性/②追跡の有無で判断。場所が離れても追跡継続なら肯定。【あてはめ】甲の暴行は窃盗現場から場所的に離れているが、乙の追跡は窃盗直後から継続しており、甲はなお容易に逮捕され得る状況にあった。よって暴行は窃盗の機会の継続中に行われたといえ、甲には事後強盗罪が成立する。

答案の型です。数km追われた地点で殴った設例。規範で、財産犯と、二つのメルクマールを立てる。なお容易に逮捕され得る状況だった、と書く。追跡の継続を拾うのが、この型の勝負所です。

目的犯性・居直り強盗との区別 〔短答・論文共通〕

目的犯性・居直り強盗との区別。事後強盗は3目的(取還し防止・逮捕免脱・罪跡隠滅)のいずれかを要する目的犯。3目的の達成は不要(暴行したが結局 逮捕されても・取り返されても成立)。🔴居直り強盗との区別=窃盗が発見され、新たに財物を奪う目的で反抗抑圧程度の暴行脅迫をした場合=事後強盗238ではなく通常の強盗罪236(#56接続)。客観的に同じ「窃盗犯人の暴行脅迫」でも、目的(取還し防止・逮捕免脱・罪跡隠滅 か/新たな奪取 か)で238か236に罪名が分岐する。※居直りで成立する強盗罪と先行窃盗罪の罪数(混合包括一罪)は総論領域=本回は深入りしない。

目的犯性です。3目的のどれかが要る。そして、目的の達成は不要。成立します。目的があれば足りる。ここで一つ区別を。見つかった窃盗犯が、新たに奪う目的で暴行した場合。違います。新たな奪取目的なら、通常の強盗236です。目的で分岐します。取り返されまい等なら238。居直りの中身は#56でやったので、深入りしません。

核心③=暴行脅迫にのみ関与した者=身分犯性(論証26) 〔論文の骨格〕

核心③=暴行脅迫にのみ関与した者=身分犯性(論証26)。設例=窃盗犯Aが逃走中、事情を聞いた友人Bが追跡者Xへの暴行にのみ加担。Aは事後強盗成立。Bにも事後強盗の共同正犯が成立するか=事後強盗を結合犯と見るか身分犯と見るか。結合犯説=窃盗+暴行脅迫の結合犯。Bは承継的共同正犯で処理(多くは共犯肯定)。難点=窃盗の着手だけで事後強盗の未遂・予備が成立しかねず不自然(既遂未遂・予備の処理が崩れる)。身分犯説=事後強盗は「窃盗犯人」という身分を要する身分犯。さらに(a)不真正身分犯説=65条2項→Bは暴行罪・脅迫罪の共犯どまり/(b)真正身分犯説=65条1項→Bにも事後強盗の共犯。🔴呉採用=真正身分犯説=暴行脅迫罪(非財産犯)の加重類型とは見られず、事後強盗(財産犯)は窃盗犯人にしか実現し得ない真正身分犯→65条1項→Bにも事後強盗の共犯が成立。65条1項/2項の振り分け(真正=1項/不真正=2項)は総論#34/#35系既出=当てはめのみ。軸=結論より「結合犯か身分犯か→未遂・予備の処理がきれいか」の筋。※身分犯説に立つ裁判例があるが年月日は断定しない。

核心③、身分犯性です。設例を置きます。窃盗犯Aが逃走中。友人Bが、追跡者Xへの暴行だけ手伝う。暴行だけ。Aは事後強盗成立。問題は、Bです。これは、事後強盗を何と見るかで分かれます。一つ目、結合犯説。窃盗と暴行脅迫の合体と見る。承継的共同正犯の問題で処理。共犯を認めることが多い。難点があります。窃盗の着手だけで、事後強盗の未遂や予備。それは不自然でしょう。既遂未遂や予備の処理が崩れます。身分犯説。事後強盗は「窃盗犯人」という身分が要る、と見る。総論でやりました。真正身分犯と、不真正身分犯。真正は65条1項、不真正は65条2項。これも#34、35で済み。不真正と見ると、Bは暴行罪・脅迫罪の共犯どまり。Bにも事後強盗の共犯。呉が採るのは、真正身分犯説です。暴行脅迫罪は、財産犯ではない。その加重とは見られない。窃盗犯人にしか実現し得ない。だから真正身分犯。軸は、結論より「結合犯か身分犯か」の筋です。身分犯と見ると、その難点が出ない。判例も。身分犯説に立つ裁判例があります。年月日は断定しませんが。

暴行脅迫のみ関与者の処理 対比表 〔論文の骨格〕

🔴 暴行脅迫にのみ関与した者Bの罪責 対比表。設例=窃盗犯Aが逃走中、事情を聞いた友人Bが追跡者Xへの暴行にのみ加担(B自身は窃盗していない)。Aは事後強盗成立。Bにも事後強盗の共犯が成立するか。結合犯説=窃盗+暴行脅迫の結合犯=承継的共同正犯で処理/B=事後強盗の共犯(多くは肯定)/難点=窃盗の着手だけで事後強盗の未遂・予備が成立しかねず不自然。不真正身分犯説=身分犯=65条2項(不真正=刑の加重減軽)/B=暴行罪・脅迫罪の共犯どまり/評価=事後強盗を暴行脅迫罪の加重類型と見るのは無理がある。真正身分犯説(呉採用)=身分犯=65条1項(真正=身分で初めて犯罪成立)/B=事後強盗の共犯成立/評価=窃盗犯人にしか実現し得ない真正身分犯=最も整合的。★呉採用=事後強盗は窃盗犯人にしか実現し得ない真正身分犯→65条1項により、暴行・脅迫にのみ関与したBにも事後強盗の共犯(共同正犯)が成立。※65条1項/2項の振り分け(真正=1項/不真正=2項)は総論#34/#35系既出=当てはめのみ。身分犯説に立つ裁判例があるが年月日は断定しない。

表で、三つの見方を並べました。Bの結論が変わります。でも、未遂や予備で難点がある。Bは暴行罪・脅迫罪の共犯どまりになります。呉採用です。Bにも事後強盗の共犯が成立する。表で結論差を押さえるのが、論証26のコツです。

論文の型:暴行脅迫のみ関与者(身分犯性) 〔論文〕

★コア規範|暴行・脅迫にのみ関与した者の罪責(事後強盗の身分犯性)。事後強盗罪は、窃盗犯人にしか実現し得ない真正身分犯と解する。したがって、65条1項により、暴行・脅迫にのみ関与した者にも事後強盗罪の共同正犯(共犯)が成立する。復元キー=①設例=Bは窃盗をしていない(追跡者への暴行のみ加担)=Bに何罪が成立するか②結合犯と見る=窃盗着手だけで事後強盗の未遂・予備が成立しかねず不自然③そこで身分犯と捉える=事後強盗は「窃盗犯人」という身分を要する④暴行脅迫罪(非財産犯)の加重とは見られない=窃盗犯人にしか実現し得ない真正身分犯⑤真正=65条1項(不真正=65条2項との結論差)→Bにも事後強盗の共犯成立/身分犯説の裁判例があるが年月日は断定しない。圧縮根拠=逐語固定は採点キーワード(窃盗犯人にしか実現し得ない真正身分犯/65条1項)のみ。

二つ目の型、身分犯性です。論証26。窃盗犯人にしか実現し得ない真正身分犯。そして65条1項。復元キーは、結合犯説の難点から始めます。だから身分犯と捉える。窃盗犯人という身分。だから真正身分犯。65条1項で、Bにも共犯。

答案の型|暴行・脅迫にのみ関与した者の罪責(事後強盗の身分犯性)。【事例】Aは乙宅で窃盗を行い逃走したが、現場付近で乙に発見された。事情を聞いた友人Bは、Aの逮捕を免れさせようと、追跡してきた乙に暴行を加えた。B自身は窃盗をしていない。Bの罪責は。【問題提起】Bは窃盗を行わず、暴行・脅迫にのみ関与している。Bに事後強盗罪の共犯が成立するか(事後強盗罪の身分犯性)が問題となる。【規範】結合犯説の難点→事後強盗は身分犯。暴行脅迫罪の加重ではなく、窃盗犯人にしか実現し得ない真正身分犯=65条1項。【あてはめ】事後強盗罪は窃盗犯人にしか実現し得ない真正身分犯であるから、65条1項により、窃盗犯人でないBにも事後強盗罪の共犯が成立する。なお65条1項/2項の振り分けは総論で論じたとおりである。

答案の型です。Bが追跡者に暴行だけ加えた設例。規範で、結合犯説の難点と、真正身分犯を立てる。窃盗犯人でないBにも、事後強盗の共犯。ここは当てはめだけで足ります。

核心④=予備(論証27)/既遂未遂 〔論文の骨格〕

核心④=予備(論証27)/既遂未遂。既遂・未遂=事後強盗の既遂/未遂は先行する窃盗の既遂/未遂に従う(窃盗既遂犯が暴行→事後強盗既遂/窃盗未遂犯→事後強盗未遂・最判昭24・7・9)。3目的の達成の有無は既遂未遂と無関係。未遂は243で処罰。🔴予備=事後強盗の目的で予備した場合、237条 強盗予備が成立するか。否定説=237(予備)は条文位置上238より前にある=237の「強盗」は先行する236のみ=事後強盗目的は含まない。肯定説(呉・判例)=238が「強盗として論ずる」とする以上、237の「強盗の罪を犯す目的」に事後強盗の犯行目的も含むと解するのが素直→強盗予備罪が成立(最決昭54・11・19)。軸=「強盗として論ずる」の射程が予備(237)にまで及ぶか=条文位置論 vs 文言論。判例は肯定。

核心④、予備です。先に既遂未遂を片付けます。先行する窃盗の既遂・未遂に従います。暴行を加えれば、事後強盗も既遂。窃盗が未遂なら、未遂です。関係ありません。捕まっても、窃盗が既遂なら事後強盗既遂。事後強盗の目的で予備したら、237の強盗予備か。

刑法237条(強盗予備)。強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の拘禁刑に処する。→条文の位置=237(予備)は238(事後強盗)より前にある(→否定説の根拠)。しかし238が「強盗として論ずる」とする以上、237の『強盗の罪を犯す目的』に事後強盗目的も含むと解するのが素直(肯定説=判例・論証27)。e-Gov現行(2025年6月施行の改正後表記=拘禁刑に統一)。

注目は、条文の位置です。237は、238より前にある。否定説は言います。237の「強盗」は、236だけを指す、と。だから事後強盗目的は含まない、という読み方。238が「強盗として論ずる」と言っている。これが効く。なら237の「強盗の罪を犯す目的」に事後強盗も含む。判例も肯定です。事後強盗目的の予備に、強盗予備罪が成立。

論文の型:予備 〔論文〕

★コア規範|事後強盗罪と予備(強盗予備)。事後強盗罪も「強盗として論ずる」(238条)とされる以上、237条の「強盗の罪を犯す目的」には事後強盗罪の犯行目的も含むと解する。よって、強盗予備罪(237条)が成立する。復元キー=①否定説=237(予備)は条文位置上238より前にある=237の「強盗」は236のみを指す=事後強盗目的は含まない②しかし238は「強盗として論ずる」と規定している③237の文言「強盗の罪を犯す目的」に事後強盗の犯行目的も含むと解するのが素直④したがって事後強盗目的の予備にも強盗予備罪(237条・二年以下の拘禁刑)が成立(判例・最決昭54・11・19)。圧縮根拠=逐語固定は採点キーワード(強盗として論ずる/強盗の罪を犯す目的/強盗予備罪)のみ。

三つ目の型、予備です。論証27。骨子だけで足ります。強盗として論ずる。強盗の罪を犯す目的。強盗予備罪。否定説の条文位置論を、まず示す。237が238より前。だから237の目的に事後強盗も含む、で逆転します。

答案の型|事後強盗罪と予備(強盗予備)。【事例】甲は、窃盗に入った先で家人に発見された場合に逮捕を免れるため暴行を加える目的で、凶器を準備して被害者宅付近で待機していた(窃盗の着手前)。甲に強盗予備罪が成立するか。【問題提起】甲の目的は事後強盗(逮捕を免れるための暴行)であり、236条の強盗そのものではない。237条の「強盗の罪を犯す目的」に事後強盗目的が含まれるか(事後強盗と予備)が問題となる。【規範】否定説=条文位置/しかし238は「強盗として論ずる」以上、237の「強盗の罪を犯す目的」に事後強盗目的も含む=強盗予備罪が成立。【あてはめ】238条が事後強盗を「強盗として論ずる」とする以上、237条の「強盗の罪を犯す目的」には甲の事後強盗目的も含まれる。よって甲には強盗予備罪(237条)が成立する。

答案の型です。事後強盗目的で凶器を準備した設例。規範で、位置論と、それを覆す文言論を立てる。だから事後強盗目的も含む。強盗予備罪成立で締めます。

核心⑤=昏酔強盗239(させて/乗じての対比) 〔短答・論文共通〕

核心⑤=昏酔強盗239。239条=人を昏酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。暴行脅迫に代えて昏酔を手段とする強盗(手段が差し替わっただけ)。昏酔させる=睡眠薬・麻酔薬・アルコール等で意識作用に一時的または継続的な障害を生じさせること。🔴核心の罠=「昏酔させて」=自ら昏酔状態を作出することが必要。すでに泥酔・昏睡している被害者を利用しただけでは本罪は成立しない(窃盗にとどまる)。対比=させて(薬入りの酒を飲ませて眠らせる=自分で作る=昏酔強盗239)/乗じて(既に酔いつぶれて寝ている人から抜き取る=既存状態の利用=ただのこそ泥=窃盗)。適用=239も「強盗として論ずる」→240(致死傷)・241(不同意性交)・243(未遂)の適用あり。予備(237)も事後強盗と同じ争いがあるが「強盗として論ずる」以上 昏酔強盗予備も成立(呉)。自前イメージ=「飲ませて眠らせる」のが昏酔強盗/「寝落ちした人の横で財布を抜く」のはただのこそ泥(窃盗)。手段を自分で作ったかどうかが分かれ目。

最後、昏酔強盗です。疑問③の答え。条文を読みます。

刑法239条(昏酔強盗)。人を昏酔させてその財物を盗取した者は、強盗として論ずる。→「昏酔させて」=睡眠薬・麻酔・酒等で意識作用に障害を生じさせること(自ら昏酔状態を作出するのが必要)。すでに泥酔・昏睡している者を利用しただけでは本罪は成立せず窃盗にとどまる。暴行脅迫に代えて昏酔を手段とする強盗=240・241・243・237の射程。法定刑は236の例=五年以上の有期拘禁刑。e-Gov現行(拘禁刑表記)。

暴行脅迫の代わりに、昏酔を使う強盗です。昏酔させる、とは、意識作用に障害を生じさせること。ここで、今日一番のひっかかりです。「昏酔させて」。これは、自分で昏酔状態を作るのが必要です。では、もう酔いつぶれて寝ている人から財布を抜いたら。違います。窃盗にとどまります。自分で昏酔させていない。既にある状態を、使っただけ。条文は「昏酔させて」。させる、が要ります。それは、自分で作出。昏酔強盗です。手段を作ったから。寝落ちした人の横で抜くのは、ただのこそ泥。239も「強盗として論ずる」。240・241・243の射程です。事後強盗と同じ争いですが、含むと解します。昏酔強盗予備も。

昏酔強盗の成否対比(させて/乗じて) 〔短答・論文共通〕

昏酔強盗239の成否対比。左=薬で昏酔させて盗取=○=睡眠薬入りの酒を飲ませて眠らせ財布を抜く→自ら昏酔状態を作出=暴行脅迫に代わる手段→昏酔強盗239成立(強盗として論ずる)。右=既存の泥酔・昏睡を利用=×=すでに酔いつぶれて寝ている人から抜き取る→昏酔状態を作っていない=既存状態に乗じただけ→昏酔強盗不成立=窃盗にとどまる。★239条=人を昏酔させて財物を盗取=強盗として論ずる。「昏酔させて」=睡眠薬・麻酔・酒等で意識作用に障害を生じさせること。🔴核心=自ら昏酔状態を作出することが必要。すでに泥酔・昏睡している被害者を利用しただけでは本罪は成立せず、窃盗にとどまる。「させて」(作出=昏酔強盗)/「乗じて」(利用=窃盗)の対比。239も「強盗として論ずる」=240・241・243・237の射程。

対比で、はっきりさせます。左が成立、右が不成立。自分で昏酔を作出。だから昏酔強盗、丸です。既存の状態に乗じただけ。だから窃盗どまり、ばつ。手段を自分で作ったか。これが分かれ目です。ここはひっかけの定番。確実に押さえてください。

短答ひっかけ

ここはひっかかる(短答・論文まとめ)。①事後強盗238=窃盗→事後の暴行脅迫(236と逆順)/3目的のいずれか(達成不要)/反抗抑圧程度(#56接続)/窃盗の機会の継続中(書かれざる要件)/「強盗として論ずる」=240・241・243・237の射程。②🔴窃盗の機会=①時間的・場所的接着性/②追跡の有無で判断/場所が離れても追跡継続なら肯定(平14・2・14肯定/平16・12・10否定・論証25)。③相手方=被害者に限らず追跡警官・第三者も含む/居直り強盗(新たな奪取目的)=事後強盗でなく236(#56接続)。④🔴暴行脅迫のみ関与者=結合犯説/不真正身分犯説65条2項/真正身分犯説65条1項=呉採用(窃盗犯人にしか実現し得ない真正身分犯・論証26)。⑤既遂未遂=窃盗の既遂未遂に従う(最判昭24・7・9)/予備=「強盗として論ずる」が237に及ぶ=肯定(最決昭54・11・19・論証27)。⑥🔴昏酔強盗239=「昏酔させて」=自分で昏酔状態を作出(既存の昏酔の利用は窃盗どまり)。法定刑=238/239=強盗として論ずる=五年以上の有期拘禁刑/237=二年以下の拘禁刑。

整理します。①事後強盗は、窃盗から事後の暴行。逆順。②窃盗の機会は、接着性と追跡の有無。③相手方は、被害者に限らず警官も含む。④暴行脅迫のみ関与者は、真正身分犯説。65条1項。⑥昏酔強盗は、自分で昏酔状態を作出。三つの直感破りが、ぜんぶ回収されました。

今日の地図(保存版)

#57前編 今日のまとめ。軸=強取の形が変わった強盗。236は手段が先(暴行脅迫→反抗抑圧→強取)/事後強盗238は手段が後ろ(窃盗→事後の暴行脅迫=逆順)/昏酔強盗239は手段が差替え(暴行脅迫の代わりに昏酔)。どれも「強盗として論ずる」。①事後強盗238=準強盗(窃盗→3目的の暴行脅迫)/反抗抑圧程度(#56)/相手方は警官も含む/法定刑=五年以上の有期拘禁刑。②🔴窃盗の機会の継続中(書かれざる要件)=①時間的・場所的接着性/②追跡の有無/離れても追跡継続なら肯定(論証25)。③🔴暴行脅迫のみ関与者=真正身分犯説(65条1項)=呉採用(結合犯説/不真正身分犯説65条2項との結論差・論証26)。④既遂未遂=窃盗に従う(最判昭24・7・9)/🔴予備=「強盗として論ずる」が237に及ぶ=肯定(最決昭54・11・19・論証27)。⑤🔴昏酔強盗239=「昏酔させて」=自分で昏酔状態を作出(既存の昏酔の利用は窃盗どまり)/239も240・241・243・237の射程。→次は#57後編(c12-6 強盗罪②後編)=強盗致死傷240・強盗不同意性交等241。

まとめます。事後強盗は、窃盗から事後の暴行。逆順です。接着性と追跡の有無。離れても追跡継続なら肯定。予備も、「強盗として論ずる」から肯定でした。寝てる人から抜くのは窃盗どまり。ここが一番の罠。どれも「強盗として論ずる」が効きました。お楽しみに。

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