強盗罪②後編——強盗致死傷240(死傷の原因=機会説/強盗殺人240後段/既遂時期)・強盗不同意性交等241
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第12章 財産に対する罪 ⑥/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
強盗致死傷240の意義・主体 〔短答・論文共通〕

まず240。条文を読みます。

負傷で無期か6年以上。死亡で死刑か無期です。強盗の中でも最も重い類型です。まず主体を見てください。236の正面の強盗だけではありません。「強盗として論ずる」連中も、240の主体に入る。しかも「強盗」は既遂・未遂を問いません。ここが詰まり③につながる。後で詰めます。強盗の現場では、人を死傷させる事件が犯罪学的に多い。だから240が第一に守るのは、財物でなく生命・身体。
240の全体地図(過失列+故意列) 〔短答・論文共通〕

240の全体像を、地図で見ます。縦に前段と後段。横に、過失と故意で分かれます。前段だと、過失=強盗致傷。故意=強盗傷人。過失=強盗致死。故意=強盗殺人。4マスです。そこが論証28。過失列が240なのは当然です。後で詰めます。手がかりは、条文の文言です。240は「よって」を使っていない。205条の傷害致死と違う。それが無い=単なる結果的加重犯ではない、の伏線です。
核心①=死傷の原因=手段説 vs 機会説(論証29・後編の山) 〔論文の骨格〕

後編の山、死傷の原因です。詰まり①の答え。そこに争いはありません。問題はその外側です。手段でない行為から死傷が出た場合、240か。二つの考え方があります。まず手段説。死傷は、強盗の手段の暴行脅迫から生じた場合に限る。次に機会説。これが判例・通説です。死傷は、強盗の機会に行われた行為から生じれば足りる。思い出してください。240の主体に、事後強盗238が入る。事後強盗の暴行は、もう奪取の手段ではない。それは不当ですよね。だから手段に限らない、と。240が「よって」を使わないのも、その表れです。いい疑問です。そこが詰まり①の本丸。無限定は避けます。死傷が、強盗行為と密接な関連性を有する行為から生じた場合。中身は二つ。財物奪取に関わる行為。発覚・追跡の障害除去。240が拾う死傷は、強盗事件の現場テープの内側、です。警察が事件現場に張る、黄色いテープを思ってください。ど真ん中。当然テープの内側です。逃走や追跡や口封じは。強盗事件が地続きで続いている。だから240で拾う。私怨で殺す。帰り道で無関係の通行人を殴る。数時間後の殺害。距離や時間そのものでなく、この強盗事件の一部かで決まる。
密接関連性フロー(肯定例/否定例) 〔論文の骨格〕

フローで整理します。死傷の原因行為から、判断へ。(a)財物奪取/(b)発覚・追跡の障害除去か、を問う。240成立。Noなら、240不成立で別罪です。肯定例。追跡してきた家人を突き刺し殺害。6km走らせた後、逃走のため降車させて射殺。被害者が逃げ出し、第三者の車にひかれ死亡も肯定例。誤って乳児を踏みつけ死亡。密接関連性なし、とされます。否定。一度 落ち着いた後の別行動=テープの外です。強盗を口実にしただけ。仲間割れの殺害も外です。なお、これらの判例は事案のイメージで覚えてください。機会説の代表は最判昭24・5・28。これは押さえます。
📝 論文の型

一つ目の型、死傷の原因です。論証29。強盗の機会。密接な関連性を有する行為。この二つ。240は、強盗の機会の死傷多発に着目した類型。でも無限定は避けて、密接な関連性で絞る。手段説への批判も書ければ完璧です。その筋で、機会説が導けます。

答案の型です。追跡してきた家人を刺し殺した設例。規範で、機会説と密接関連性を立てる。密接な関連性ありで、強盗致死成立。
核心②=殺意ある場合=強盗殺人240後段(論証28) 〔論文の骨格〕

核心②、殺意ある場合です。詰まり②の答え。問題は、最初から殺すつもりで殺した場合です。そう思いますよね。でも判例・通説は240に含めます。240後段に、故意の強盗殺人も入る。理由は二つ。まず、故意ある死傷も犯罪学的に多発します。もう一つ。240は「よって」を使っていない。だから単なる結果的加重犯ではない=故意も呑み込む。前段も、致傷と傷人を両方含みます。240が両方を呑み込むので、解消します。物取りに向けた行為なら、240に包括される。総論領域なので、深入りしません。結論だけで足ります。
240後段の射程図(旧判例 vs 現判例) 〔論文の骨格〕

射程図です。240後段の円を見てください。旧判例は、強盗殺人を円の外に置いていました。強盗罪+殺人罪で処理していた。現判例は。故意の殺人も240後段。before afterで見てください。多発と、「よって」不使用。前段も同じ構造です。ここを図で押さえれば、論証28は崩れません。

二つ目の型、殺意ある場合です。論証28。故意がある場合をも含む。よってを用いていない。この二つ。まず趣旨=強盗の機会の死傷の多発。故意も多発する。そして「よって」不使用=単なる結果的加重犯でない。

答案の型です。当初から殺意で刺殺し金品を奪った設例。規範で、多発と「よって」不使用を立てる。240後段に含むから、強盗殺人罪一本。二重評価の不安を、ここで打ち消します。
核心③=既遂時期と未遂(論証30・243条) 〔論文の骨格〕

核心③、既遂時期です。詰まり③の答え。判例・通説は、240既遂とします。理由は、240が守るのは財物でなく生命・身体だから。だから既遂未遂は、死傷を基準に判断します。既遂時期と無関係です。自前のイメージで言うと。普通の強盗は、奪えた額で完成度を測ります。採点基準が違う。人を死傷させたかで、完成を測る競技。ここで一つ、パズルがあります。240の未遂って、どんな時に成立すると思いますか。死傷が出れば既遂ですからね。場合分けします。致傷・致死=過失。結果が出なければ、基本犯の強盗だけ。強盗傷人=故意。傷害が出なければ、強盗どまり。残るのは一つ。強盗殺人で、被害者が死ななかった場合。これが殺人未遂=240後段の未遂として残る。死傷結果と殺意を掛け合わせると、ここに収束します。
既遂時期マトリクス 〔論文の骨格〕

マトリクスで整理します。縦が強盗、横が死傷結果。強盗が既遂でも未遂でも、240既遂です。240不成立。基本犯の強盗罪だけ、になります。右下の別枠が、さっきのパズルの答え。このマトリクスで、論証30は完成です。

三つ目の型、既遂時期です。論証30。死傷の結果が生じた時点で既遂。ここだけ固定。第一次的保護法益=生命・身体。だから死傷で判断。240未遂は、強盗殺人で死ななかった1パターンのみ。

答案の型です。金品は奪えず、傷害だけ負わせた設例。規範で、第一次的保護法益と死傷基準を立てる。死傷が生じた以上、240前段が既遂で成立。
枝葉(脅迫による死傷/傷害の程度/併発事例) 〔短答〕

枝葉を、薄く三つ。まず脅迫による死傷。脅されて驚き、危険な行動で死傷を招けば成立します。二つ目、傷害の程度。平成16年改正で下限が下がった。今は傷害罪と同じ意義=軽い傷でもよい、が有力です。併発事例。弾が標的と通行人を貫通したら。観念的競合です。錯誤論は総論なので送ります。
核心④=強盗・不同意性交等241(結合犯) 〔短答・論文共通〕

最後、強盗・不同意性交等241です。詰まり④の答え。教科書は「強盗強制性交等」かもしれません。2023年改正で、現行は「不同意性交等」です。241条1項は「177条の罪」を引用しています。だから241も、自動的に強盗・不同意性交等罪。強盗と不同意性交等を、1個に束ねる結合犯です。別々の併合罪でなく、1個の重い罪として処罰する。強盗が先でも、不同意性交等が先でも成立します。どちらが未遂でも成立。前後も既遂未遂も問いません。監護者性交等=179条2項は、除外されます。強盗と同じ機会に行われることが、想定しがたいからです。#49でやりました。241では、結合だけ扱います。
241条文カード(1項・2項・3項) 〔短答・論文共通〕


177条の罪=現行の不同意性交等です。1項が結合犯の本体です。2項を見てください。両方とも未遂なら、任意的に減軽できる。自己の意思でいずれかを中止したときは、減軽し又は免除。総論の中止犯43条但書の、延長線上の特則です。1項の行為で人を死亡させた者は、死刑又は無期拘禁刑。この3項致死、故意の殺害も含むんです。3項も「よって」を使っていない。240後段と同じ論法です。
241結合犯の構造図 〔短答・論文共通〕

構造図です。強盗と不同意性交等を、双方向の矢印で結ぶ。既遂でも未遂でも成立します。監護者性交等は除外。同じ機会が想定しがたいからです。3項が致死=死刑か無期。故意も含む。これで241の全体像が、一枚で見渡せます。観念的競合と見る説が有力ですが、総論なので深入りしません。
短答ひっかけ

整理します。①主体は236と、前編の238・239も含む。②死傷の原因は、機会説。密接な関連性で絞る。③殺意ある場合も、240後段に含む。④既遂時期は、死傷が生じれば既遂。⑤枝葉は、脅迫でも240、軽い傷でも240。前後も既遂未遂も問わず、179条2項は除外。
今日の地図(保存版)

まとめます。軸は、240が守るのは財物でなく生命・身体。死傷の原因は、機会説。密接な関連性で絞る。「よって」を使っていないのが、決め手でした。240未遂は、強盗殺人で死ななかった1パターンだけ。名前は今、不同意性交等。179条2項は除外でした。#56から3本、#57は前後編で詰めました。#58、詐欺罪①。欺罔・錯誤・交付行為に入ります。お楽しみに。