詐欺罪①——欺罔・錯誤・処分行為(処分意思)・財産的損害/1項詐欺と2項詐欺
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第12章 財産に対する罪 ⑦/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
導入=交付罪としての詐欺と因果の連鎖 〔短答・論文共通〕

導入です。詐欺と窃盗の、構造の違いから。窃盗・強盗は、犯人が「取る」罪です。これを盗取罪と言います。詐欺は違います。被害者自身が、騙されて自分で渡す。交付罪です。喩えで言います。詐欺は、ある泥棒です。宅配のフリをして、住人本人に玄関の鍵を開けさせて入る。これが処分行為です。窃盗は。住人は開けていない。だから処分行為がない。この処分行為を保証するのが、因果の連鎖です。①欺罔→②錯誤→③処分行為→④移転→⑤損害。この五つがつながって、初めて詐欺の既遂です。未遂・不成立・窃盗に落ちます。
因果連鎖フロー(どこで切れるか) 〔短答・論文共通〕

フローで、鎖を一枚にしました。左から見てください。各矢印の下に、切れた時の行き先があります。重要でない嘘や、機械相手。詐欺不成立か、窃盗です。相手が見抜いて錯誤に陥らない=詐欺未遂。処分行為がない=抜き取られただけ=窃盗です。損害がない=詐欺不成立、不可罰の嘘です。各論点は「鎖のどこを見るか」で位置づきます。
客体・保護法益(手短に) 〔短答〕

客体を、軽く押さえます。保護法益は財産です。財物が1項、利益が2項。手段は共通です。詐欺の財物は、不動産も含みます。騙して登記を移させる、なども詐欺で拾えます。成立しえます。財産の主体ですから。深掘りは#59です。
核心①=欺罔行為(重要事項を偽る・三類型) 〔論文の骨格〕

核心①、欺罔行為です。鎖の一つ目。ただ、嘘なら何でも詐欺、ではありません。重要な事項を偽ること。交付の判断の基礎となる事項です。相手が真実を知っていたら、渡さなかったという所です。世界一うまい、くらいの誇張では詐欺になりません。これが判例の近時の定式にもなっています。三つあります。判断軸は、告げる義務があるか、です。作為。はっきり嘘を言う。これは分かりますね。挙動による欺罔。行為それ自体が、真実を表示する。支払う気がないのに、飲食を注文する。口座も同じ。譲渡目的を隠して開設を申し込む。黙っていても、挙動が嘘をついている。三つ目は。信義則上の告知義務があるのに、黙る。例えば釣銭です。その場で気づいて黙って受け取る=釣銭詐欺です。告げる義務があるか。あれば不作為の欺罔になります。
欺罔行為の三類型フロー 〔論文の骨格〕

三類型を、一枚にしました。三つのカードです。作為は、はっきり嘘。投資詐欺などが典型です。行為が表示するパターン。飲食注文と、口座開設です。告知義務があるのに黙る。釣銭詐欺ですね。告げる義務があるか、で作為と不作為を分けます。告知義務ありで不作為の欺罔。詳細は#59に送ります。
核心②の前提=錯誤(機械は錯誤に陥らない) 〔短答・論文共通〕

鎖の二つ目、錯誤です。詰まり②の答え。そして最重要が、機械は錯誤に陥らない。錯誤の主体は、あくまで人です。機械は錯誤に陥らない。だから詐欺ではありません。窃盗です。詐欺は未遂すら成立しません。同じく窃盗です。相手が機械ですから。錯誤に陥らない=処分行為に進まない=詐欺未遂です。錯誤は「人の誤信」で初めて成立する、が軸です。
核心③=処分行為・処分意思(詐欺と窃盗の分水嶺) 〔論文の骨格〕

核心③、処分行為です。処分行為=瑕疵ある意思で、占有を終局的に移す。そこがポイント。試着と試乗で、対比してみます。店内で試着させるだけ=終局的移転ではない。終局的に渡してないので、窃盗です。試乗は。それは終局的に手放した=処分行為あり=詐欺になります。次が処分意思。被害者が何を認識すれば処分か。店主は本の移転は認識、でも1万円は知らない。考え方が二つ。判例は意識説です。特定の財物、つまり1万円札の認識が必要。認識なし=否定。通説は無意識説。呉もこちらです。個々の財物まで認識は不要。なんらかの財物の認識で足りる。だから処分行為あり=詐欺になります。本の移転すら認識がない=抜き取りなら、窃盗です。2項も同じ構造です。ホテルの一時外出で見ます。主人は、債務免除なんて認識していません。判例は、債務免除の意思表示が必要=否定です。債務免除の認識でなく、準占有の終局的移転の認識で足りる。客を終局的に離脱させること、の認識です。外出させた。終局的移転の認識すらなければ、未遂どまりです。不要にすると、窃盗と区別できなくなるからです。詳しくは#59で。ここは原理を押さえます。
処分意思の分水嶺図(論証31/32) 〔論文の骨格〕

分水嶺の図です。左が1項、右が2項。判例は意識説で、否定=窃盗。なんらかの財物の認識で足りる、でした。判例は債務免除の意思表示が必要=否定。外出させた認識があれば、2項詐欺です。論文では、無意識説を立てて当てはめます。
📝 論文の型

一つ目の型、被欺罔者の認識①1項です。論証31。なんらかの財物を移転させることの認識。この一つ。詐欺は瑕疵ある意思に基づく占有移転の構造。でも量目まで要求すると、典型類型を外して不当。本の認識すらなければ窃盗、まで言えれば完璧です。

答案の型です。本に挟んだ1万円札の設例。規範で、なんらかの財物の認識で足りる、と立てる。個々の財物の認識は不要で、1項詐欺が成立します。
論文の型:被欺罔者の認識②2項 〔論文〕

二つ目の型、被欺罔者の認識②2項です。論証32。準占有が終局的に移転することの認識。ここが核です。債務免除の意思表示を要する。これと対比します。判例だと、移転を認識させない類型を外して不当。一時離席の認識しかなければ、未遂どまりです。

答案の型です。ホテルの一時外出で逃走した設例。規範で、準占有の終局的移転の認識で足りる。債務免除の認識は不要で、2項詐欺が成立します。
核心④=財産的損害(形式説 vs 実質説) 〔論文の骨格〕

核心④、財産的損害です。詰まり④の答え。そこが論点。まず、詐欺は個別財産に対する罪です。損害の中身に、二つの考え方があります。形式説。財物や利益を渡したこと自体が損害、とする。いい所です。それが批判で、損害要件が空洞化します。実質説。呉も通説も、こちらです。取得しようとした物と、現に給付された物を比べる。経済的に重要な価値の差、隔絶があるかで判断します。取引の目的が達成されなければ、損害ありです。場合分けします。まず、効能どおりの薬を相当価格で買う。隔絶なし=損害なしです。次が按摩器の事案。市価相当の按摩器を、万病に効く特殊治療器と偽って売る。特別な治療器。でも実際は、ただの按摩器でした。だから損害あり=詐欺成立です。これが実質説です。公的証明書などは#59に送ります。
財産的損害 対比+場合分け 〔論文の骨格〕

対比表です。左が形式説、右が実質説。形式説は、交付自体が損害。実質説は、隔絶で判断。形式説は常に損害。実質説は、目的不達成なら損害です。薬は隔絶なしで損害なし。按摩器は隔絶ありで損害あり。実質説を立てて、隔絶を当てはめます。

三つ目の型、財産的損害です。論証33。経済的に重要な価値の差。価格相当の対価があっても。詐欺は個別財産罪=損害必要。形式説は空洞化で不当。隔絶があれば、価格相当でも損害ありです。両極を示せれば、当てはめが安定します。

答案の型です。万病に効くと偽った健康器具の設例。規範で、経済的に重要な隔絶で判断、と立てる。給付されたのはただの按摩器=隔絶あり=詐欺成立。
1項詐欺/2項詐欺・不法領得の意思・条文 〔短答・論文共通〕

最後に、1項2項の区別と条文です。財物なら1項、財産上の利益なら2項です。共通。欺罔・錯誤・処分行為は、1項2項で同じです。詐欺にも必要。ただ#53の道具なので、当てはめだけ。条文を読みます。

十年以下の拘禁刑です。前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は得させる。1項と同じ欺罔・錯誤・処分行為。手段は共通という意味です。同項と同様とする=十年以下の拘禁刑です。

未遂罰の根拠が、250条です。鎖が途中で切れた未遂を、ここで処罰します。見抜かれて錯誤に陥らなかった場合などです。
1項詐欺/2項詐欺 対比表 〔短答・論文共通〕

対比表です。左が1項、右が2項。例は、物を騙取するか、債務を免れるか。共通です。2項は「前項の方法により」で1項を引いています。十年以下の拘禁刑で、揃っています。
短答ひっかけ

整理します。①背骨は、五つの鎖。②欺罔は重要事項を偽る。三類型がある。③機械は錯誤に陥らない=窃盗。④処分行為は終局的移転=詐欺と窃盗の分水嶺。⑤損害は実質説=隔絶で判断、価格相当でも損害あり。十年以下の拘禁刑、未遂250まで押さえれば完璧です。
今日の地図(保存版)

まとめます。軸は、詐欺は交付罪=被害者自身が渡す。欺罔は重要事項を偽る。三類型がありました。処分行為は終局的移転=詐欺と窃盗の分水嶺。損害は実質説。価格相当でも、隔絶があれば損害あり。論文の型が三つ乗る、濃い回でした。次が応用類型。#59、詐欺罪②。訴訟詐欺・無銭飲食・誤振込に入ります。お楽しみに。