刑法 ゼロから刑法#59

詐欺罪②前編——三角詐欺・訴訟詐欺/無銭飲食・キセル/誤振込/カードすり替え/不法原因給付/1項2項の交錯

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第12章 財産に対する罪 ⑧/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

三角詐欺の構造——だました人≠損した人 〔論文の骨格〕

1. 三角詐欺の構造(被欺罔者=処分者 ≠ 被害者)。通常の詐欺は被欺罔者=被害者だが、両者が分離するのが三角詐欺。例=AがX銀行の融資係Bを欺いて融資を引き出す=被欺罔者・処分者=B(融資係)/被害者=X銀行。🔴 成立2要件=①被欺罔者と処分行為者が一致すること(一致しないと「欺罔に基づく処分行為」が欠ける)/②被欺罔者が被害者の財産を処分しうる地位・権限にあること(権限がなければ、いくら欺いても財産移転の鎖がつながらない)。軸=だます相手は「被害者の財産の扉を開けられる人」でなければならない。#58接続=処分行為(瑕疵ある意思に基づく終局的移転)の主体が被害者本人でなく第三者Bになるだけで、鎖の構造は同じ。

一つ目、三角詐欺です。詰まり①の答え。例で言います。銀行の融資係をだます。うその書類で、融資を引き出す。だましたのは係員。銀行です。お金は銀行のものですから。これが三角詐欺=三者が登場します。二つあります。一つ目=だました人が、渡す人と同じ。二つ目が重要。だました相手に、処分権限がある。被害者の財産を、処分できる地位にあること。だから権限あり=鎖がつながります。扉が開かない。詐欺の鎖が切れます。次で見ます。

三角詐欺の三者関係図 〔論文の骨格〕

🔴 三角詐欺の三者関係(だます人A→被欺罔者=処分者B→被害者C)。A(欺罔)→ B(だまされて処分・処分権限あり)→ C(財産を失う被害者)。成立2要件を矢印に注記=①A→Bの欺罔に基づきBが処分(被欺罔者=処分者の一致)/②BがCの財産を処分しうる権限・地位(権限なければ詐欺不成立)。具体例=B=銀行融資係/C=X銀行(融資の引き出し)。訴訟詐欺への置換=B=裁判所(判決で財産関係を確定する権限あり→成立)/C=敗訴者。✕の対比=B=登記官(不動産を処分する権限なし→②要件を欠く→詐欺不成立・公正証書原本不実記載等で処理)。自前の喩え=合鍵を預かる管理人(B)をだませば住人C宅は開く/鍵を持たない通行人をだましても開かない。

関係図です。Aがだます、Bが渡す、Cが損する。Bがだまされて、Cの財産を処分します。喩えると、合鍵を預かる管理人です。でも鍵を持たない通行人をだましても。そこが権限要件。これが次の訴訟詐欺の鍵になります。

訴訟詐欺——裁判所はOK・登記官はダメ 〔論文の骨格〕

2. 訴訟詐欺(三角詐欺の代表類型)。裁判所に虚偽の主張・証拠を提出して有利な判決を得、敗訴者から財物・財産上の利益を取得する類型。被欺罔者・処分者=裁判所/被害者=敗訴者。裁判所は判決により当事者の財産関係を確定・処分する権限がある→三角詐欺の2要件をみたす→詐欺罪成立(通説・判例は肯定)。※否定説=敗訴者の交付は意思に反し処分行為といえない/弁論主義。肯定説=被欺罔者・処分者は裁判所=敗訴者は被害者(三角詐欺で処理)。🔴 対比すべき限界事例=登記官を欺いて不動産の移転登記を得ても詐欺罪は成立しない。登記官には当該不動産を処分する権限がないため(②権限要件を欠く)→公正証書原本不実記載罪等で処理(最決昭42・12・21・刑集21巻10号1453頁=虚偽の即決和解を経て登記官吏に移転登記させた事案・登記官に処分権限なし)。※訴訟詐欺を肯定する判例の年月日はここでは断定しない(断定するのは登記官事案=昭42・12・21のみ)。

二つ目、訴訟詐欺。裁判所をだます話です。うその証拠で、勝訴判決を取る。負けた相手から取る。損するのは、敗訴した相手です。裁判所には、処分権限がありますか。だから権限あり=詐欺成立です。通説判例も肯定。そこが対比の山。登記官をだまして登記を得る。ありません。不動産を処分する権限はない。詐欺は不成立。これが最決昭42・12・21です。裁判所はOK、登記官はダメ。権限要件で切れます。公正証書原本不実記載罪などで処理します。

無銭飲食——注文時か食後かで分岐 〔論文の骨格〕

3. 無銭飲食(注文時/食後で分岐・#58処分行為の当てはめ)。①当初から支払意思なし=ラーメンを注文する行為自体が「支払意思あり」を表示する挙動による欺罔。注文時に1項詐欺の実行着手→料理の交付を受けた時点で1項詐欺既遂。②当初は支払意思あり・食後に踏み倒す意思=注文・飲食は適法で1項詐欺の余地なし。食後に欺いて支払を免れた行為=2項詐欺の成否は処分意思(処分行為の要否)次第。判例=意識的処分行為説=債権者を欺いて債務免除の意思表示をなさしめることを要する→「映画を観てくる、後で払う」と外出許可を得て逃走しても、店主に債務免除の意思表示がない→2項詐欺不成立=不可罰。通説=無意識的処分行為説=準占有の終局的移転(客を離脱させること)の認識で足りる→2項詐欺成立の余地。#58接続=処分意思の意識説/無意識説(論証31/32)の当てはめ。

三つ目、無銭飲食。食い逃げです。それが、いつ払う気をなくしたかで変わります。注文という行為が「払う意思あり」を表します。#58の道具です。注文で着手、飲食で既遂。問題は、食べた後で払う気をなくした場合。だから一項詐欺の余地はない。そこが処分意思の当てはめ。例を出します。「映画を観てくる、後で払う」と外出許可を得て逃げる。判例は意識説。債務免除の意思表示が要る。だから二項詐欺は不成立=不可罰になります。通説の無意識説なら、成立の余地があります。#58の論証31・32が、そのまま効きます。

無銭飲食の時系列フロー 〔論文の骨格〕

🔴 無銭飲食 時系列の場合分け(注文→飲食→支払)。①当初から無銭=注文(「支払意思あり」を表示する挙動の欺罔=実行着手)→飲食(料理の交付)=1項詐欺既遂。②食後に踏み倒し意思=注文・飲食(適法・1項なし)→食後に欺いて支払免脱=2項詐欺の成否は処分意思次第。判例(意識的処分行為説)=外出許可は債務免除の意思表示でない→2項詐欺×=不可罰/通説(無意識的処分行為説)=準占有の終局的移転(客を離脱させること)の認識で足りる→2項詐欺〇の余地。★分水嶺=「払う気をなくしたのが注文の前か後か」で1項/2項が分かれ、後の場合は処分意思説で結論が割れる(#58論証31/32の当てはめ)。

フローです。注文、飲食、支払の三段階。注文で着手、飲食で一項詐欺既遂。注文飲食は適法、食後の支払免脱が二項の問題。判例は不可罰、通説は成立の余地。そこが最初の分かれ目。一枚で見えますね。

キセル乗車——入口か出口か 〔短答・論文〕

4. キセル乗車(簡潔に)。A駅→D駅と乗るのに、A-B間だけ乗車券を買い、D駅でC-D間の定期券を呈示してB-C間運賃を免れる手口。欺罔があるのはA駅入場時とD駅出場時のみ→どちらを処分行為に向けられた欺罔と構成するかで対立。乗車駅基準説(判例・大阪高判昭44・8・7)=乗車駅での呈示を欺罔とみて乗車駅で既遂。批判=正規のA-B間乗車券は有効で「無効券の呈示」と評価しづらい。下車駅基準説(有力)=A-B間券は有効ゆえ乗車駅は欺罔でない/D駅出場時の係員の対応を処分行為とみる=無意識的処分行為説なら処分行為あり→2項詐欺成立/意識的処分行為説では係員が差額運賃を認識せず処分行為といえない(成否で対立)。🔴 前提=機械(自動改札)は錯誤に陥らない→詐欺の成否が問題になるのは有人改札の場合のみ(#58の機械論点の当てはめ)。

四つ目、キセル乗車。少し古い論点です。乗る駅で短い切符、降りる駅で別の定期を見せる。だます瞬間が、入口と出口の二箇所ある。そこで説が分かれます。判例は乗車駅基準説。有力説は下車駅基準説。降りる駅で見る。ここも処分意思説で結論が割れます。自動改札は、錯誤に陥らない。だから詐欺が問題になるのは、有人改札だけです。

キセル乗車 構造図 〔短答・論文〕

🔴 キセル乗車 構造図(A駅—B駅—C駅—D駅)。乗車券=A-B間(有効)/定期券=C-D間(有効)/B-C間=空白=免脱区間。欺罔の機会=A駅入場時/D駅出場時の2点。乗車駅基準説(判例)=A駅起点(乗車券呈示を欺罔とみて乗車駅で既遂)。下車駅基準説(有力)=D駅起点(出場時の係員の対応を処分行為とみる・無意識説なら2項詐欺成立/意識説では係員が差額を認識せず処分行為といえず成否で対立)。★前提=自動改札は錯誤に陥らない→有人改札限定(自動改札のキセルは詐欺でなく別罪・#58機械論点)。

構造図です。A駅からD駅まで。真ん中のB-Cが、ただ乗り区間。乗車駅基準説は入口、下車駅基準説は出口。自動改札なら、そもそも詐欺になりません。

誤振込——窓口かATMか 〔論文の骨格〕

5. 誤振込(分水嶺=人か機械か・#58接続)。自己の口座に誤振込があると知った者には、銀行にその旨を告知すべき信義則上の法律上の義務(告知義務)がある。①窓口(人)で誤振込を秘して払戻し請求=告知義務違反=不作為による欺罔→1項詐欺成立(最決平15・3・12)。②ATM(機械)で引出し=機械は錯誤に陥らない→詐欺不成立。占有を侵害して現金を取得=窃盗罪(#58の機械論点の当てはめ)。暗記すべき規範=誤振込を知った受取人は銀行に告知義務を負う(不作為の欺罔の典型)。軸=「自分の口座のお金を下ろして何が悪い」への答え=誤振込された金は秘して引き出すと別罪。相手が人なら詐欺、機械なら窃盗。

五つ目、誤振込。間違って振り込まれた金です。多くの人がそう思います。でも、罪になります。誤振込と知った人には、銀行に告げる義務がある。それを黙って下ろすと、別罪です。黙ること自体が、不作為の欺罔。一項詐欺です。#58で出た判例です。ではATMだと。機械は錯誤に陥らない。だから詐欺は不成立。占有を侵して取る=窃盗です。ここが詐欺と窃盗の分水嶺、その一です。

カードすり替え——だまされてるのに窃盗 〔論文の骨格〕

6. キャッシュカードすり替え(処分意思なし→窃盗・分水嶺の白眉)。被害者を欺いてキャッシュカードを封筒に入れさせ、隙に偽カード入り封筒とすり替えて持ち去る特殊詐欺類似の手口。被害者は「封筒を保管する」認識はあるが、「カードの占有を終局的に移転させる処分意思」がない(だまされたのは『封筒の保管』であって『カードの交付』ではない)→処分行為(処分意思に基づく終局的占有移転)を欠く→詐欺ではなく窃盗罪。詐欺と窃盗を分ける「処分意思」の最重要当てはめ事例(#58論証31の枠組み)。🔴 判例=最決令4・2・14(刑集76巻2号101頁)=すり替え型のリーディングケース・キャッシュカードをすり替えて窃取する計画に基づく行為に窃盗罪の実行の着手を肯定。軸=だまされていても、終局的に渡す気がなければ処分行為なし=窃盗。誤振込(人/機械)と並ぶ、詐欺/窃盗の分水嶺。

六つ目、カードすり替え。被害者にカードを封筒に入れさせます。そして隙を見て、偽カードの封筒とすり替える。ここで問題。被害者は、何を渡す気でしたか。いえ。被害者は「封筒を保管する」つもりでした。だまされたのは「保管」で「交付」ではない。だから処分行為がない=処分意思がない。詐欺ではなく、窃盗になります。判例は最決令4・2・14です。すり替えて取る計画に、窃盗の実行着手を認めました。誤振込と並ぶ、詐欺と窃盗の分水嶺です。

誤振込&すり替え 詐欺/窃盗の分水嶺フロー 〔論文の骨格〕

🔴 詐欺/窃盗の分水嶺フロー(#58の鎖のどこで切れるか)。問1=相手は人か機械か?→機械(ATM引出し・偽コイン自販機)=錯誤に陥らない→鎖が②で切れる→窃盗。→人なら問2へ。問2=処分意思はあるか(終局的に渡す気か)?→なし(カードすり替え=封筒の保管のつもり)=鎖が③で切れる→窃盗。→あり(誤振込を秘した窓口払戻し=不作為の欺罔/通常の交付)→詐欺(1項)。★詐欺/窃盗の境界=①機械か(②の輪で切れる)②処分意思があるか(③の輪で切れる)の2点。だまされていても、機械相手や保管のつもりなら窃盗。誤振込=人なら詐欺・機械なら窃盗/すり替え=処分意思なしで窃盗。

分水嶺を、一枚にまとめました。問いは二つ。機械なら、錯誤に陥らないので窃盗。人なら、問二へ進みます。終局的に渡す気がなければ、窃盗。渡す気があれば、詐欺です。鎖のどこで切れるか、で全部さばけます。

不法原因給付と詐欺①——1項は成立 〔論文の骨格〕

7. 不法原因給付と詐欺①(1項詐欺・論証34)。欺いて不法原因給付(賄賂資金・ヤミ取引代金・偽造資金等)をさせた場合、民法708条で交付者に返還請求権がない以上「財産的損害なし→詐欺不成立」とならないかが問題。判例・多数説=肯定説=「欺罔手段によって相手方の財物に対する支配権を侵害した以上、詐欺罪の成立を妨げない」(最判昭25・7・4)。理由=①支配権侵害があれば財産的損害は肯定/②被害者は欺かれなければ交付しなかった/③不法原因は専ら欺罔者側にあり民708条ただし書で返還請求できる場合もあり損害肯定(理由づけは学説で対立)。A説(否定説・稀)=708条で返還請求できない以上 財産的損害なし。軸=渡した財物はもう支配を奪われている=「すでに渡した物」は守られる。

七つ目、不法原因給付と詐欺。論証34です。賄賂の資金などを、だまし取る場合です。そこが論点。民法708条が引っかかります。不法な目的で渡した金は、返せと言えない。それなら詐欺不成立では、という疑問です。でも判例は、詐欺成立とします。多数説も同じ。欺いて、財物の支配権を侵害した。それで足りる。渡した金は、もう相手の手を離れています。最判昭25・7・4の考え方です。

不法原因給付と詐欺②——2項は不成立 〔論文の骨格〕

8. 不法原因給付と詐欺②(2項詐欺・論証35)。①「代金を払う」と偽り売春・犯罪行為をさせた場合=役務は公序良俗違反(民90条)で「財産上の利益」にあたらず2項詐欺不成立(争いなし)。②役務後に欺いて対価支払を免れた場合=成否で対立。多数説=否定説=売春・犯罪行為は公序良俗違反で対価請求権がなく(民90条)、被害者も自ら違法行為を行っている以上 保護に値しない→2項詐欺不成立。A説(肯定説)=社会秩序を乱す行為だから成立肯定。🔴 1項(論証34)との非対称=1項は「財物」の支配権侵害があるが、2項は「公序良俗違反の役務の対価免脱」で保護すべき財産上の利益がない。軸=「すでに渡した財物」は守るが、「これから払うはずの違法な約束」は法が守らない。※2項詐欺否定の判例年月日はここでは断定しない(多数説=否定を軸)。

八つ目、同じく不法原因給付。今度は2項です。2項は逆に、不成立が多数説です。そこが非対称。例を出します。「払う」と偽って違法な役務をさせ、対価を踏み倒す。その役務は、公序良俗違反です。対価を請求する権利が、そもそもありません。しかも被害者も、自ら違法をしている。だから2項詐欺は不成立=多数説です。1項は「財物」の支配権を、現に奪っています。2項は「これから払う違法な約束」を免れただけ。だから守る利益がない=不成立です。

不法原因給付の1項/2項処理フロー 〔論文の骨格〕

🔴 不法原因給付と詐欺 1項/2項の処理(非対称が核心)。欺いて不法原因給付させた→客体は何か?で分岐。【1項=財物】賄賂資金・ヤミ取引代金等の財物を交付=欺罔で財物の支配権を侵害→財産的損害あり→1項詐欺成立(肯定・最判昭25・7・4・民708条ただし書)。【2項=公序良俗違反の役務の対価】違法な役務の対価支払を免脱=役務は公序良俗違反(民90条)で対価請求権なし+被害者も自ら違法=保護に値せず→財産上の利益として保護されず→2項詐欺不成立(多数説)。★非対称の理由=1項は「現に渡した財物の支配権侵害」(守る)/2項は「もともと法が守らない違法な約束の免脱」(守らない)。逐語暗記は核心文のみ=1項「財物に対する支配権を侵害した以上、詐欺罪の成立を妨げない」/2項「公序良俗違反の役務は財産上の利益にあたらず保護に値しない」。

フローです。客体が、財物か役務か。支配権侵害で、詐欺成立。保護に値せず、不成立。多数説です。渡した物は守る、違法な約束は守らない。

📝 論文の型

★コア規範|不法原因給付と詐欺①(1項詐欺)。欺罔手段によって相手方の財物に対する支配権を侵害した以上、たとえ給付が不法原因給付(民708条)にあたり交付者に返還請求権がないとしても、詐欺罪の成立を妨げない(最判昭25・7・4)。復元キー=①民708条で返還請求できない以上 財産的損害なし=詐欺不成立では?という疑問②しかし被害者は欺かれなければ交付せず、現に財物の支配権を奪われている③不法原因は専ら欺罔者側にあり、被害者保護の要請は失われない④→欺罔により財物の支配権を侵害した以上、財産的損害を肯定し詐欺成立⑤すでに交付された財物の支配権侵害は、708条の返還請求の可否とは別に評価できる。圧縮根拠=逐語固定は採点キーワード(財物に対する支配権を侵害した以上/詐欺罪の成立を妨げない)のみ。

一つ目の型、不法原因給付の1項。論証34。財物に対する支配権を侵害した以上、詐欺成立を妨げない。708条で返せないなら損害なし、という疑問。不法原因は、だました側にある。支配権侵害で、詐欺成立まで言えれば完璧です。

答案の型|不法原因給付①(1項詐欺)。【事例】甲は、Xから公務員への賄賂の資金を預かるふりをして、その意思も能力もないのにXを欺き、賄賂資金として現金100万円を交付させて自分のものにした。甲に1項詐欺罪が成立するか。【問題提起】賄賂資金の交付は不法原因給付(民708条)にあたり、Xに返還請求権がない。財産的損害がないとして詐欺罪が否定されないかが問題となる。【規範】欺罔により財物の支配権を侵害した以上、不法原因給付でも詐欺罪の成立を妨げない(最判昭25・7・4)。【あてはめ】Xは甲の欺罔がなければ100万円を交付せず、現に現金の支配権を奪われている。返還請求の可否にかかわらず、財物の支配権侵害があるから財産的損害が認められ、甲に1項詐欺罪が成立する。

答案の型です。賄賂資金をだまし取った設例。規範で、支配権侵害なら詐欺成立、と立てる。返還請求の可否と関係なく、1項詐欺成立です。

論文の型:不法原因給付②2項 〔論文〕

★コア規範|不法原因給付と詐欺②(2項詐欺)。「代金を払う」と偽って公序良俗違反の役務(売春等)をさせ、その対価の支払を免れても、当該役務は公序良俗違反(民90条)であって対価請求権がなく、被害者も自ら違法行為を行っている以上 保護に値しないから、財産上の利益として保護されず2項詐欺は成立しない(多数説)。復元キー=①役務後に欺いて対価支払を免脱②役務は公序良俗違反(民90条)で対価請求権なし③被害者は自ら違法行為を行っている=保護に値しない④→刑法上 保護すべき財産上の利益がない=2項詐欺不成立⑤1項との非対称=1項は現に渡した財物の支配権侵害(守る)/2項は法が守らない違法な約束の免脱(守らない)。圧縮根拠=逐語固定は採点キーワード(公序良俗違反の役務は対価請求権がない/保護に値しない)のみ。

二つ目の型、不法原因給付の2項。論証35。公序良俗違反の役務は、対価請求権がない・保護に値しない。役務は公序良俗違反で、対価を請求できない。だから保護に値せず、2項詐欺不成立。渡した物は守る、違法な約束は守らない。

答案の型|不法原因給付②(2項詐欺)。【事例】乙は、対価を支払う意思も能力もないのに「終わったら報酬を払う」とYを欺き、Yに違法な行為(売春)を行わせたうえ、報酬を支払わずに立ち去った。乙に2項詐欺罪が成立するか。【問題提起】乙はYの役務(財産上の利益)の対価支払を免れている。もっとも当該役務は公序良俗違反であり、刑法上 保護すべき財産上の利益といえるかが問題となる。【規範】公序良俗違反の役務は対価請求権がなく、被害者も自ら違法行為を行う以上 保護に値しないから、2項詐欺は成立しない(多数説)。【あてはめ】Yが提供した役務は公序良俗違反でYに対価請求権がなく、Y自身も違法行為を行っている。保護すべき財産上の利益がないから、乙に2項詐欺罪は成立しない(1項と異なり財物の支配権侵害もない)。

答案の型です。違法な役務の対価を踏み倒した設例。規範で、公序良俗違反だから保護に値しない。保護すべき利益がなく、2項詐欺は不成立です。

1項詐欺と2項詐欺の交錯 〔論文の骨格〕

9. 1項詐欺と2項詐欺の交錯(論証37・包括一罪)。①Bを欺いて商品を詐取(1項詐欺)した後、②新たな欺罔でその代金支払を免れた(2項詐欺)場合。形式的には1項詐欺+2項詐欺の併合罪に見えるが、両罪の保護法益は実質的に同一(商品の占有とその代金債務)で、両行為は時間的・場所的に接着→包括して1個の詐欺罪が成立(通説)。対比=①1項詐欺後に②反抗を抑圧する暴行脅迫で代金債務を免れた場合=2項強盗罪に包括(#56で扱った道具)。②窃盗・詐欺した財物を別個に横領利用(郵便貯金通帳を窃取→窓口で払戻し請求等)=法益が別個で併合罪(最判昭25・2・24)。軸=法益が同一で接着していれば包括一罪、別個なら併合罪。

最後、九つ目。1項と2項の交錯です。論証37。商品をだまし取り、続けて代金も免れる場合です。代金を免れるのが、2項。形式的には、そう見えます。でも実質は違う。守っている法益が、実質的に同じなんです。しかも時間的場所的に、くっついている。包括して、1個の詐欺罪です。通説です。代金を暴行脅迫で免れたら、2項強盗に包括。逆に、法益が別個なら併合罪になります。あれは法益が別=併合罪です。罪数は、この軸で切れます。

論文の型:1項2項の交錯 〔論文〕

★コア規範|1項詐欺と2項詐欺の交錯(罪数)。同一の被害者に対し、欺いて財物を詐取(1項詐欺)した後、新たな欺罔によりその代金債務の支払を免れた(2項詐欺)場合、両罪の保護法益は実質的に同一であり、両行為は時間的・場所的に接着しているから、包括して1個の詐欺罪が成立する(通説)。復元キー=①商品詐取(1項)→②新たな欺罔で代金免脱(2項)③形式的には1項詐欺と2項詐欺の併合罪に見える④しかし保護法益は実質同一(商品の占有とその代金債務)+時間的場所的に接着⑤→包括一罪(1個の詐欺罪)。対比=②が反抗を抑圧する暴行脅迫なら2項強盗に包括(#56)/窃取財物の別個の横領利用(通帳窃取+払戻し)は法益別で併合罪。圧縮根拠=逐語固定は採点キーワード(保護法益が実質的に同一/時間的・場所的に接着/包括して1個の詐欺罪)のみ。

三つ目の型、1項2項の交錯。論証37。保護法益が実質的に同一、時間的場所的に接着、包括一罪。商品詐取の1項、続いて代金免脱の2項。でも法益が同じで、くっついている。対比で2項強盗や併合罪も言えれば完璧です。

答案の型|1項詐欺と2項詐欺の交錯。【事例】甲は、商店主Bを欺いて商品を後払いで交付させ(1項詐欺)、後日その代金の請求を受けた際、再びBを欺いて「すでに支払った」と誤信させ、代金の支払を免れた(2項詐欺)。甲の罪数はどうなるか。【問題提起】1項詐欺と2項詐欺が成立するが、両者は併合罪か包括一罪かが問題となる。【規範】両罪の保護法益が実質的に同一で、両行為が時間的・場所的に接着していれば、包括して1個の詐欺罪が成立する(通説)。【あてはめ】商品の占有取得(1項)と その代金債務の免脱(2項)は同一の取引から生じ法益が実質同一で、両行為は接着している。よって包括して1個の詐欺罪が成立する。※②が反抗抑圧の暴行脅迫なら2項強盗に包括(#56)。

答案の型です。商品詐取の後、代金も免れた設例。規範で、法益同一+接着なら包括一罪。接着もしているので、包括して1個の詐欺罪です。

短答ひっかけ

ここはひっかかる(前編まとめ)。①🔴三角詐欺=だました人(被欺罔者=処分者)≠損した人(被害者)。成立2要件=一致+処分権限。②🔴訴訟詐欺=裁判所は処分権限あり→成立(通説判例)/登記官は権限なし→不成立(最決昭42・12・21)。③無銭飲食=注文時から無銭=1項既遂/食後の踏み倒し=2項の成否は処分意思次第(判例=意識説で不可罰)。④キセル=乗車駅/下車駅基準・有人改札限定(自動改札は錯誤せず)。⑤🔴誤振込=窓口=不作為の欺罔→1項詐欺(最決平15・3・12)/ATM=窃盗。⑥🔴カードすり替え=処分意思なし→窃盗(最決令4・2・14)=詐欺/窃盗の分水嶺。⑦不法原因給付①1項=支配権侵害で成立(論証34・最判昭25・7・4)。⑧同②2項=保護に値せず不成立(論証35・多数説/1項と非対称)。⑨1項2項の交錯=法益同一+接着→包括一罪(論証37)。★分水嶺=#58の鎖が②で切れる(機械)or③で切れる(処分意思なし)=窃盗、被欺罔者に処分権限なし=不成立。

整理します。①三角詐欺は、だました人と損した人が別。②訴訟詐欺は、裁判所OK・登記官ダメ。③無銭飲食は、注文時か食後か。食後は処分意思次第。⑤誤振込は、窓口で詐欺・ATMで窃盗。⑤⑥が、詐欺と窃盗の分水嶺です。⑧2項は、不成立。非対称でした。全部、#58の鎖のどこで切れるか、で説明できます。

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#59前編 まとめ。軸=新しい要件は学ばない。#58の鎖(①欺罔→②錯誤→③処分行為→④移転→⑤損害/処分意思/1項2項)を当てて、どの輪で切れるか=詐欺/窃盗/不成立を見極める。①三角詐欺=被欺罔者(処分者)≠被害者・成立2要件(一致+処分権限)。②訴訟詐欺=裁判所は権限あり成立/登記官は権限なし不成立(最決昭42・12・21)。③無銭飲食=注文時から無銭=1項既遂/食後の踏み倒し=2項は処分意思次第(判例=意識説で不可罰)。④キセル=乗車駅/下車駅基準・有人改札限定。⑤誤振込=窓口=不作為の欺罔→1項詐欺(最決平15・3・12)/ATM=窃盗。⑥カードすり替え=処分意思なし→窃盗(最決令4・2・14)。⑦⑧不法原因給付=1項は支配権侵害で成立(論証34)/2項は保護に値せず不成立(論証35・非対称)。⑨1項2項の交錯=法益同一+接着で包括一罪(論証37)。→次は#59後=クレカ詐欺・電子計算機使用詐欺246の2・準詐欺248(カード・機械・心神耗弱者)。

まとめます。軸は、新しい要件は学ばない。三角詐欺は、だました人と損した人が別。無銭飲食は、注文時か食後か。誤振込とすり替えが、詐欺と窃盗の分水嶺。不法原因給付は、1項成立・2項不成立。論証34・35・37の、三つの型が乗りました。いえ、前編まで。後編が残っています。#59後。クレカ詐欺と、電子計算機使用詐欺246の2。それと準詐欺248。心神耗弱者に乗じる罪です。効きます。機械は錯誤に陥らない、が後編の核です。

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