詐欺罪②前編——三角詐欺・訴訟詐欺/無銭飲食・キセル/誤振込/カードすり替え/不法原因給付/1項2項の交錯
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第12章 財産に対する罪 ⑧/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
三角詐欺の構造——だました人≠損した人 〔論文の骨格〕

一つ目、三角詐欺です。詰まり①の答え。例で言います。銀行の融資係をだます。うその書類で、融資を引き出す。だましたのは係員。銀行です。お金は銀行のものですから。これが三角詐欺=三者が登場します。二つあります。一つ目=だました人が、渡す人と同じ。二つ目が重要。だました相手に、処分権限がある。被害者の財産を、処分できる地位にあること。だから権限あり=鎖がつながります。扉が開かない。詐欺の鎖が切れます。次で見ます。
三角詐欺の三者関係図 〔論文の骨格〕

関係図です。Aがだます、Bが渡す、Cが損する。Bがだまされて、Cの財産を処分します。喩えると、合鍵を預かる管理人です。でも鍵を持たない通行人をだましても。そこが権限要件。これが次の訴訟詐欺の鍵になります。
訴訟詐欺——裁判所はOK・登記官はダメ 〔論文の骨格〕

二つ目、訴訟詐欺。裁判所をだます話です。うその証拠で、勝訴判決を取る。負けた相手から取る。損するのは、敗訴した相手です。裁判所には、処分権限がありますか。だから権限あり=詐欺成立です。通説判例も肯定。そこが対比の山。登記官をだまして登記を得る。ありません。不動産を処分する権限はない。詐欺は不成立。これが最決昭42・12・21です。裁判所はOK、登記官はダメ。権限要件で切れます。公正証書原本不実記載罪などで処理します。
無銭飲食——注文時か食後かで分岐 〔論文の骨格〕

三つ目、無銭飲食。食い逃げです。それが、いつ払う気をなくしたかで変わります。注文という行為が「払う意思あり」を表します。#58の道具です。注文で着手、飲食で既遂。問題は、食べた後で払う気をなくした場合。だから一項詐欺の余地はない。そこが処分意思の当てはめ。例を出します。「映画を観てくる、後で払う」と外出許可を得て逃げる。判例は意識説。債務免除の意思表示が要る。だから二項詐欺は不成立=不可罰になります。通説の無意識説なら、成立の余地があります。#58の論証31・32が、そのまま効きます。
無銭飲食の時系列フロー 〔論文の骨格〕

フローです。注文、飲食、支払の三段階。注文で着手、飲食で一項詐欺既遂。注文飲食は適法、食後の支払免脱が二項の問題。判例は不可罰、通説は成立の余地。そこが最初の分かれ目。一枚で見えますね。
キセル乗車——入口か出口か 〔短答・論文〕

四つ目、キセル乗車。少し古い論点です。乗る駅で短い切符、降りる駅で別の定期を見せる。だます瞬間が、入口と出口の二箇所ある。そこで説が分かれます。判例は乗車駅基準説。有力説は下車駅基準説。降りる駅で見る。ここも処分意思説で結論が割れます。自動改札は、錯誤に陥らない。だから詐欺が問題になるのは、有人改札だけです。
キセル乗車 構造図 〔短答・論文〕

構造図です。A駅からD駅まで。真ん中のB-Cが、ただ乗り区間。乗車駅基準説は入口、下車駅基準説は出口。自動改札なら、そもそも詐欺になりません。
誤振込——窓口かATMか 〔論文の骨格〕

五つ目、誤振込。間違って振り込まれた金です。多くの人がそう思います。でも、罪になります。誤振込と知った人には、銀行に告げる義務がある。それを黙って下ろすと、別罪です。黙ること自体が、不作為の欺罔。一項詐欺です。#58で出た判例です。ではATMだと。機械は錯誤に陥らない。だから詐欺は不成立。占有を侵して取る=窃盗です。ここが詐欺と窃盗の分水嶺、その一です。
カードすり替え——だまされてるのに窃盗 〔論文の骨格〕

六つ目、カードすり替え。被害者にカードを封筒に入れさせます。そして隙を見て、偽カードの封筒とすり替える。ここで問題。被害者は、何を渡す気でしたか。いえ。被害者は「封筒を保管する」つもりでした。だまされたのは「保管」で「交付」ではない。だから処分行為がない=処分意思がない。詐欺ではなく、窃盗になります。判例は最決令4・2・14です。すり替えて取る計画に、窃盗の実行着手を認めました。誤振込と並ぶ、詐欺と窃盗の分水嶺です。
誤振込&すり替え 詐欺/窃盗の分水嶺フロー 〔論文の骨格〕

分水嶺を、一枚にまとめました。問いは二つ。機械なら、錯誤に陥らないので窃盗。人なら、問二へ進みます。終局的に渡す気がなければ、窃盗。渡す気があれば、詐欺です。鎖のどこで切れるか、で全部さばけます。
不法原因給付と詐欺①——1項は成立 〔論文の骨格〕

七つ目、不法原因給付と詐欺。論証34です。賄賂の資金などを、だまし取る場合です。そこが論点。民法708条が引っかかります。不法な目的で渡した金は、返せと言えない。それなら詐欺不成立では、という疑問です。でも判例は、詐欺成立とします。多数説も同じ。欺いて、財物の支配権を侵害した。それで足りる。渡した金は、もう相手の手を離れています。最判昭25・7・4の考え方です。
不法原因給付と詐欺②——2項は不成立 〔論文の骨格〕

八つ目、同じく不法原因給付。今度は2項です。2項は逆に、不成立が多数説です。そこが非対称。例を出します。「払う」と偽って違法な役務をさせ、対価を踏み倒す。その役務は、公序良俗違反です。対価を請求する権利が、そもそもありません。しかも被害者も、自ら違法をしている。だから2項詐欺は不成立=多数説です。1項は「財物」の支配権を、現に奪っています。2項は「これから払う違法な約束」を免れただけ。だから守る利益がない=不成立です。
不法原因給付の1項/2項処理フロー 〔論文の骨格〕

フローです。客体が、財物か役務か。支配権侵害で、詐欺成立。保護に値せず、不成立。多数説です。渡した物は守る、違法な約束は守らない。
📝 論文の型

一つ目の型、不法原因給付の1項。論証34。財物に対する支配権を侵害した以上、詐欺成立を妨げない。708条で返せないなら損害なし、という疑問。不法原因は、だました側にある。支配権侵害で、詐欺成立まで言えれば完璧です。

答案の型です。賄賂資金をだまし取った設例。規範で、支配権侵害なら詐欺成立、と立てる。返還請求の可否と関係なく、1項詐欺成立です。
論文の型:不法原因給付②2項 〔論文〕

二つ目の型、不法原因給付の2項。論証35。公序良俗違反の役務は、対価請求権がない・保護に値しない。役務は公序良俗違反で、対価を請求できない。だから保護に値せず、2項詐欺不成立。渡した物は守る、違法な約束は守らない。

答案の型です。違法な役務の対価を踏み倒した設例。規範で、公序良俗違反だから保護に値しない。保護すべき利益がなく、2項詐欺は不成立です。
1項詐欺と2項詐欺の交錯 〔論文の骨格〕

最後、九つ目。1項と2項の交錯です。論証37。商品をだまし取り、続けて代金も免れる場合です。代金を免れるのが、2項。形式的には、そう見えます。でも実質は違う。守っている法益が、実質的に同じなんです。しかも時間的場所的に、くっついている。包括して、1個の詐欺罪です。通説です。代金を暴行脅迫で免れたら、2項強盗に包括。逆に、法益が別個なら併合罪になります。あれは法益が別=併合罪です。罪数は、この軸で切れます。
論文の型:1項2項の交錯 〔論文〕

三つ目の型、1項2項の交錯。論証37。保護法益が実質的に同一、時間的場所的に接着、包括一罪。商品詐取の1項、続いて代金免脱の2項。でも法益が同じで、くっついている。対比で2項強盗や併合罪も言えれば完璧です。

答案の型です。商品詐取の後、代金も免れた設例。規範で、法益同一+接着なら包括一罪。接着もしているので、包括して1個の詐欺罪です。
短答ひっかけ

整理します。①三角詐欺は、だました人と損した人が別。②訴訟詐欺は、裁判所OK・登記官ダメ。③無銭飲食は、注文時か食後か。食後は処分意思次第。⑤誤振込は、窓口で詐欺・ATMで窃盗。⑤⑥が、詐欺と窃盗の分水嶺です。⑧2項は、不成立。非対称でした。全部、#58の鎖のどこで切れるか、で説明できます。
今日の地図(保存版)

まとめます。軸は、新しい要件は学ばない。三角詐欺は、だました人と損した人が別。無銭飲食は、注文時か食後か。誤振込とすり替えが、詐欺と窃盗の分水嶺。不法原因給付は、1項成立・2項不成立。論証34・35・37の、三つの型が乗りました。いえ、前編まで。後編が残っています。#59後。クレカ詐欺と、電子計算機使用詐欺246の2。それと準詐欺248。心神耗弱者に乗じる罪です。効きます。機械は錯誤に陥らない、が後編の核です。