騒乱罪・往来妨害罪——第13章 完
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第13章 公共の安全に対する罪 ③/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
#66/#67の接続——危険犯分類軸の再確認(再講義はしない) 〔短答・論文共通〕

「条文に”○○を生じさせた”という語があるかどうか」という機械的な判別です。あれば具体的危険犯、なければ抽象的危険犯。だから抽象的危険犯。暴行・脅迫の事実があれば、危険の発生は問わない。だから具体的危険犯。実際に往来が妨害される状態が発生しないと成立しない。だから抽象的危険犯。転覆・破壊という行為があれば既遂で、公共の危険の具体的発生は不要。
🔴 106条 騒乱罪——保護法益・抽象的危険犯・「多衆」の構造 〔短答・論文共通〕

106条の全文です。「次の区別に従って」というのがポイントです。関与の仕方で刑が3段階に分かれる。首謀者というのは、騒乱の計画・扇動・指導の中心にいる者です。首謀者の下で積極的に加担した者。投石や暴力の先頭に立った者が典型です。群衆の流れに乗ってついていっただけ——罰金のみです。冒頭の問いの答えはここです。付和随行でも罪にはなる。ただし最も軽い。
106条の核心——保護法益・多衆・暴行の意義 〔短答・論文共通〕

人数の固定基準はありません。「公共の静謐を害するに足る暴行・脅迫をなすに適当な多数人」という質的基準です。重要なのは人数ではなく、集団として一地方の平穏を害するに足る規模かどうかです(大判大2・10・3)。普通「暴行」というと人への有形力を想像しますが、騒乱罪では物への有形力——投石・ガラス破壊・バリケードの破壊——も含まれます(最判昭35・12・8)。広義の暴行は人への有形力、最広義の暴行はそれに加えて物への有形力も含む。騒乱罪は最広義です。そしてもう一つ、「共同意思」が必要です(最判昭35・12・8)。バラバラに暴れているだけでなく、集団としての共同の意思がある状態が必要。
106条の3類型——刑の階段と具体例 〔短答・論文共通〕

駅前ロータリーで大規模なデモ隊が暴徒化したとしましょう。首謀者は最初から騒乱を計画し、マイクを握って「今夜ここを制圧しろ」と扇動した人。2号は、その指示に従って先頭で投石したり、グループを率いて駅構内に突入した人。3号は、流れに乗ってただその場にいた人。自分では暴力を振るっていないが、集団の一部として存在し続けた。集団として一地方の平穏を害する程度に至ることが前提ですが、その中にいたということ自体が問責される、というのが必要的共犯の構造です。
106条——他罪との関係(観念的競合) 〔短答・論文共通〕

「暴行罪や脅迫罪」は騒乱罪に吸収されます。でも「建造物侵入・建造物損壊・公務執行妨害」は吸収されない。騒乱罪と観念的競合になります(最判昭35・12・8)。騒乱の最中に建物に侵入した行為は「騒乱罪」と「建造物侵入罪」の両方が成立し、重い方で処断。「暴行・脅迫は吸収、建造物侵入・損壊・公務執行妨害は観念的競合」という区別を押さえてください。
107条 多衆不解散罪——真正不作為犯(一言) 〔短答知識〕

騒乱の一歩手前——暴行・脅迫をしようと多衆が集まった段階で、権限のある公務員が「解散しろ」と3回以上命じたのに、なお解散しなかった場合の罪です。だから真正不作為犯です。条文の枠組みは106条と同じで、首謀者(三年以下の拘禁刑)とその他の者(十万円以下の罰金)で刑が分かれます。ざっとみておく程度で足りる条文です。条文の構造を一言で把握しておけば十分です。
🔴 往来を妨害する罪——「危険の階段」で全体を一枚の地図に 〔短答・論文共通【この回の山】〕

まず「危険の階段」という地図を頭に入れてください。陸路や橋を壊して通行できなくする(124)→汽車の脱線事故が起きそうな状態を作る(125)→実際に乗客のいる電車が転覆する(126)→人が死ぬ(126③)。危険のレベルが上がっていく順番です。そしてこの階段の横に、結果的加重犯の枝が3本出ています。124②・126③・127です。まずは4段の階段を押さえてから、枝の位置を確認する順番で行きましょう。
124条 往来妨害罪——具体的危険犯・客体・行為 〔短答・論文共通〕

124条の全文です。「往来の妨害を生じさせた」という語があります。橋を壊すだけでなく、「通行できない・著しく困難な状態が生じた」という結果が必要です。道路(陸路)、船が通る川や運河(水路)、橋梁(橋)です。ここで注意点があります。「橋」というのは、公衆の往来の用に供される橋のことで、鉄道専用の橋は含まれません。鉄道専用の橋は、次の125条の「鉄道」という客体の中に入るからです(大判昭11・11・6)。124条の橋は「陸路・水路を行く歩行者や車両のための橋」と考えてください。「損壊」は物理的に壊すこと。ここで重要なのは、物理的損壊に限るという点です(通説)。「心理的に通れない状態」——たとえば「この橋は危険だ」という嘘の看板を立てても、物理的に壊していなければ損壊には当たらない。「閉塞」は橋の上に障害物を置いて通れなくするなどです。
124条——結果的加重犯(2項)と罰金額の確認 〔短答・論文共通〕

1項の罪を犯して、その結果として人を死傷させた場合です。傷害罪(204条)か傷害致死罪(205条)の刑と比較して、重い方で処断するという意味です。具体的には死亡なら傷害致死罪の刑(3年以上の有期拘禁刑)と比べて……という判断になります。これは重要です。古い表記では「30万円以下の罰金」とされることがありますが、e-Gov現行XMLで確認したところ、正しくは「二十万円以下の罰金」です。129条1項の「三十万円」と混同しないように。
125条 往来危険罪——具体的危険犯・三鷹事件 〔短答・論文共通〕

125条の全文です。「往来の危険を生じさせた」という語がある。だから具体的危険犯です。124条は「通れなくなる状態」の発生が必要。125条は「脱線・転覆・衝突などの事故が起きうる状態」の発生が必要です。実際に列車が止まらなくてもいい、危険な状態が生じれば既遂。「鉄道」は運行に直接必要な一切の施設——レールだけでなく枕木、トンネル、信号設備なども含みます。そうです(大判大9・2・2)。もう一つ有名な判例があります。無人の電車を暴走させた事件——三鷹事件です。最大判昭和30年6月22日(刑集9巻8号1189頁)です。国鉄三鷹駅で無人の電車が暴走し、脱線・住宅に突入して死者が出た事件。この判決で「無人電車の暴走も往来の危険にあたる」と確定しました。125条は「現に人がいる」という要件がない。126条と対比して押さえてください。未遂罰は128条にあります。
125条——「鉄道」の意義と行為のバリエーション 〔短答・論文共通〕

だから「無人電車の暴走」のような直接の損壊がない行為でも入る。「鉄道を損壊する」という行為だけでなく、それ以外の方法でも汽車・電車の往来の危険が生じれば125条になります。灯台を壊したり浮標を取り除いたりして、艦船の往来が危険になったときです。1項が陸上の鉄道輸送、2項が海上の艦船輸送を守る。「脱線・転覆・衝突などに遭遇するおそれのある状態が発生した」で十分です。危険な状態が生じれば既遂であって、実際の事故発生は不要。
126条 汽車転覆等罪——抽象的危険犯・「破壊」の意義 〔短答・論文共通〕

126条の全文です。ここで「現に人がいる」というのがポイントです。125条にはなかった要件。「転覆させた」または「破壊した」という行為で既遂。「往来の危険を生じさせた」とは書いていない。だから抽象的危険犯です。無期又は3年以上という重い刑になっています。「前二項の罪を犯し、よって人を死亡させた者」という結果的加重犯です。汽車転覆等の結果として人が死亡した場合、死刑または無期拘禁刑という最重刑になります。
126条——「転覆」「破壊」の意義と3項致死の構造 〔短答・論文共通〕

脱線して線路を外れただけでは転覆ではない。転倒・横転・転落のように車両が横になったり落下したりする状態が「転覆」です。最判昭和46年4月22日です。「破壊」というのは交通機関としての機能——つまり走る、止まる、安全に移動するという機能——の全部または一部を失わせる程度の損壊。ガラスを割っても電車は走れます。だから器物損壊罪(261条)には当たりますが、126条の「破壊」ではない。3項の「人」の範囲についても確認しておきましょう。「現に人がいる電車を転覆させて人が死亡した」とき、3項の「人」に電車の外にいた人——駅ホームの人や沿線の住民——が含まれるかどうか。含まれると解するのが判例の立場です(最大判昭30・6・22・三鷹事件)。ただし有力な否定説もあります。試験でB論点として位置づけられていますので、「判例は含まれると解する」という結論を押さえておけば十分です。
往来を妨害する罪——危険犯分類表(整理の核心) 〔短答・論文共通〕

縦に各罪を並べ、横に「危険犯の種類」を見ると、124と125が具体的危険犯、106と126が抽象的危険犯になっていることが一目でわかります。124条「往来の妨害を生じさせた」、125条「往来の危険を生じさせた」——どちらも結果の発生を明示している。未遂罰の欄を見てください。124①・125・126①②には未遂罰があります(128条)。でも124②(致死傷)と126③(致死)には未遂罰がない。結果的加重犯は、基本犯が既遂に達した結果として加重された罪です。基本犯が未遂——つまり往来の妨害が生じていない、転覆が起きていない段階で、どうやって「致死傷」という加重結果が生じるのか。論理的に未遂がありえない構造です。
127条——往来危険による汽車転覆等罪(125の加重犯・現在性不要) 〔短答知識〕

126条は「現に人がいる汽車」という要件がありましたよね。でも127条は125条の結果的加重犯で、「現に人がいる」という要件を引き継がない、ということです。その場合でも127条が成立しうる(最大判昭30・6・22・三鷹事件)。「無人の電車が脱線転覆した場合でも127条の罪が成立する」という結論は押さえておいてください。往来危険(125条)を犯して現実に転覆等が起き、さらに人が死亡した場合は、126条3項(死刑又は無期拘禁刑)の例で処断されます(最大判昭30・6・22)。往来危険という「危険を生じさせた」段階から、転覆・致死という最悪の結果まで一気に責任を問われる、という構造です。
129条 過失往来危険罪・業務上過失 〔短答知識〕

故意犯(125条・126条)の過失バージョンです。1項が「往来の危険を生じさせた」または「転覆・破壊した」場合の過失。罰金は三十万円以下です。「その業務に従事する者」というのは、運行の業務に直接・間接に関与する者です(大判昭2・11・28)。鉄道の運転士や保線担当者などが典型。職業上、汽車・電車・艦船の安全な運行を確保する義務を負っているから、過失であっても加重されます。ここでの「業務」は、刑法の業務上過失致死傷(211条)と同じ方向性——社会生活上の地位に基づき反復継続して行う事務——で考えてください。124条1項(二十万円)・129条1項(三十万円)・129条2項(五十万円)という3段の罰金があります。試験で数字を聞かれることがあるので整理しておいてください。
その他の罪——名前と位置のみ 〔短答知識(地図のみ)〕

あります。119条から123条が「出水及び水利に関する罪」——洪水を起こしたり水利施設を壊したりする罪。136条から141条が「あへん煙に関する罪」、142条から147条が「飲料水に関する罪」です。試験との関係では原則無視してよい条文群です。地図上の位置だけ把握して、これらの条文が第13章の中に存在することを知っていれば十分です。
短答ひっかけ

ひっかかりポイントを整理します。現行条文はe-Gov現行XMLで「首謀者」と確認されています。古い解説書や古い判決文が「首魁」という旧漢字表記を使っていることがありますが、現行条文は「首謀者」です。「投石」「バリケード破壊」も騒乱罪の暴行に含まれる。建造物侵入・損壊・公務執行妨害は吸収されず観念的競合(最判昭35・12・8)。古い表記では「30万円」とされることがありますが、e-Gov現行XMLで「二十万円以下」が確認されています。129条1項の「三十万円以下」と混同しない。「条文に”生じさせた”の語があれば具体的、なければ抽象的」という判別軸で機械的に覚えられます。ガラス窓は機能と無関係だから器物損壊罪。「転覆」に単なる脱線は含まない。七つ目、127条は客体の現在性が不要(最大判昭30・6・22)。「前条の例による」で126③致死の重刑も含む。1つの判決から「無人電車暴走=往来危険」「127の現在性不要」「126③の”人”の範囲」「127→126③の例の適用」という4つの結論が出てくる、重要判例です。
今日の地図(保存版)

まとめます。騒乱罪(106条)は抽象的危険犯。「多衆で集合して暴行・脅迫」をした事実があれば、一地方の平穏が現実に害されなくてもよい。そして関与の仕方で3類型——首謀者・指揮者率先助勢者・付和随行者——に分けて刑が変わる。往来を妨害する罪は「危険の階段」で読む。124→125→126→致死と、危険のレベルが上がっていく構造。124と125が具体的危険犯(「生じさせた」の語あり)、126が抽象的危険犯(行為で既遂)。「破壊」の意義(最判昭46・4・22=交通機関の機能を失わせる程度)、127条の現在性不要(最大判昭30・6・22=三鷹事件)、128条の未遂罰の対象(124①・125・126①②のみ)——これらを危険犯分類表と一緒に押さえてください。第13章 公共の平穏・安全に対する罪、完結です。
次回予告——#69 文書偽造罪①総論(第14章へ) 〔予告〕

文書偽造罪①総論です。第13章は「社会の平穏と安全を守る」という物理的な法益保護でした。第14章は「取引の安全——文書という社会的なツールへの信頼」を守る法益保護です。有形偽造と無形偽造の対比と「名義人」の定義さえ押さえれば、偽造罪の全体像が見えてきます。お疲れさまでした。第13章 公共の平穏・安全に対する罪、完結です。