賄賂の没収と追徴・国家的法益の弁別
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第18章 国家的法益|国家の存立・国交・国家の作用 ㉕/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
使ってしまった賄賂
図:使い切った現金と接待
今日は、二つの場面から入ります。市役所で、道路の占用許可を担当している職員Aがいます。工事業者Bは、許可の見返りとして、Aに、現金で百万円を渡しました。Aは、その百万円を、もう使ってしまいました。手元には、一円も残っていません。別の日には、Bから、高級な料理店で接待を受けました。料理は、食べればなくなります。形としては、何も残りません。今日の問いは、使ってしまった賄賂や、形の残らない賄賂を、国は取り上げられるのか、です。答えは、197条の5にあります。前に、賄賂の罪の類型の地図で、名前だけ出した条文です。今日は、その中身を読みます。
条文刑法197条の5
刑法197条の5(没収及び追徴) 犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂は、没収する。その全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴する。
先に答えを言うと、取り上げられます。使っていても、形が残らなくても、です。鍵は、没収する、追徴する、と言い切る書き方にあります。この形が何を意味するのかは、すぐあとで見ます。
図:今日の流れ
今日の流れです。まず、没収の一般のルールと比べて、197条の5が何を変えているのかを見ます。次に、没収できないときの価額の追徴を、二つの場面に分けて確かめます。そして、二人で受け取った賄賂を、最高裁の決定で考えます。そのあとで、国家的法益の罪を事例で選び分けて、刑法の各論を、守るものから振り返ります。
必ず没収する条文
図:任意的と必要的
一般のルールを思い出します。没収は付加刑でした。主刑の言い渡しとセットで、単独では言い渡せない刑です。では、一般のルールでは、没収するかどうかを、誰が決めるのでしたか?裁判官です。没収は、原則として任意的で、裁判官の裁量に任されていました。条文で確かめます。19条1項です。
条文刑法19条1項
刑法19条1項(没収) 次に掲げる物は、没収することができる。 一 犯罪行為を組成した物 二 犯罪行為の用に供し、又は供しようとした物 三 犯罪行為によって生じ、若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物 四 前号に掲げる物の対価として得た物
没収することができる、と書いています。並んでいる四つは、没収できる物の種類です。追徴も、次の条文を見てください。
条文刑法19条の2
刑法19条の2(追徴) 前条第一項第三号又は第四号に掲げる物の全部又は一部を没収することができないときは、その価額を追徴することができる。
追徴も、することができる、です。これも裁判官の裁量です。条文にある、前条の第三号と第四号に掲げる物は、犯罪行為によって得た物や、その対価として得た物のことで、賄賂は、犯罪行為によって得た物に当たります。追徴は、刑罰の種類の回で見たとおり、没収できない物の代わりに、その価額を金銭で取り上げる処分でした。これに対して、197条の5は、没収する、追徴する、と書いています。できる、ではありません。没収するかどうか、追徴するかどうかについて、裁判官に裁量はありません。賄賂は必ず没収し、没収できなければ、必ず価額を追徴します。これを、必要的没収、必要的追徴と呼びます。この197条の5は、19条と19条の2の特則です。
同じ没収と追徴なのに、賄賂だけ裁量を外したのは、なぜですか。受け取った利益を、収賄者に残さないためです。たとえば、収賄罪で拘禁刑を受けても、受け取った百万円が手元に残るなら、割に合うと考える人が出てしまいます。そこで、裁判官の裁量に任せず、賄賂は必ず取り上げる形にしています。付加刑ですから、没収は、収賄罪の刑に付け加えて、言い渡されます。
図:没収される賄賂
次に、何を没収するのかです。条文は、犯人又は情を知った第三者が収受した賄賂、と書いています。二つに分かれます。一つ目は、犯人自身が収受した賄賂です。設例で言えば、Aが受け取った現金です。二つ目は、情を知った第三者が収受した賄賂です。たとえば、前に見た第三者供賄罪の場面です。公務員が、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させる罪でした。この罪で賄賂を受け取るのは、公務員ではなく、第三者です。その第三者が、賄賂だと分かって受け取ったなら、第三者の手元にある賄賂も、没収の対象になります。条文の言葉は、情を知った第三者です。知らずに受け取った第三者の賄賂は、この言葉には入らない、と読めます。
没収できないときの追徴
図:没収できない二つの場面
冒頭の二つの場面に戻ります。条文の後半を見てください。没収することができないとき、には、二つの場面が含まれるとされます。一つ目は、後から没収できなくなった場面です。受け取った現金を使った、受け取った物を人に譲った、というときです。受け取ったときには、確かに賄賂が手元にありました。しかし、没収のときには、もうありません。冒頭のAの、百万円が、これです。使い切っていても、百万円の価額が追徴されます。受け取った現金そのものが手元に無くても、Aは、百万円を国に納めなければなりません。二つ目は、はじめから没収できない場面です。接待を受ける、借金を免除してもらう、というのは、受け取ったものが、形のある物ではありません。取り上げる物が、はじめから存在しないのです。それでも、条文の後半の、没収することができないとき、に入ります。冒頭の接待が、これです。接待も、賄賂に当たります。賄賂は、金銭に限らず、職務に対する不正の報酬としての利益でした。形が残らなくても、価額が追徴の対象になります。一部だけの場合も、同じ後半です。百万円のうち四十万円を使い、六十万円が手元に残っていたなら、六十万円は没収し、使った四十万円は価額を追徴します。軸は、一つです。没収できなくなっても、利益は残さない。使っても、形が残らなくても、賄賂を受け取った人は、得をしたままにはなりません。ここで、確認です。Aが百万円を受け取って、使い切りました。裁判所は、追徴を命じなければならないでしょうか。それとも、命じるかどうかを、決められるでしょうか?
19条の2は、できる、でした。197条の5は、追徴する、ですから、命じなければなりません。裁量はありません。使い切っていても、接待でも、同じです。
図:追徴する額を測る時点
もう一つ、追徴する額を、いつの価額で測るのか、という問題があります。物の値段は動くからです。最高裁の大法廷判決を読みます。公務員が、賄賂として宅地を収受しました。その後、情を知らない人に、その宅地を贈与して、没収できなくなりました。宅地の価額は、収受したときと贈与したときで違っていて、値上がりしていました。どちらの価額で追徴するのかが、問題になりました。
判例最高裁判所大法廷判決(昭和43年9月25日・刑集22巻9号871頁)
追徴する額を測る時点 「収賄者は賄賂たる物を収受することによつてその物のその当時の価額に相当する利益を得たものであり、その後の日時の経過等によるその物の価額の増減の如きは右収受とは別個の原因に基づくものにすぎないのであるから、没収に代えて追徴すべき金額はその物の授受当時の価額によるべきものと解するのが相当である。」
判決は、こう述べています。収賄者は、賄賂の物を収受した時点で、その当時の価額に相当する利益を得た。その後の値段の増減は、収受とは別の原因による。だから、追徴する金額は、授受当時の価額による、という判断です。数字で確かめます。収受したときに百万円の価値があった物が、手放したときには百五十万円の価値になっていたなら、追徴は百万円です。逆に、価値が八十万円に下がっていても、追徴は、収受したときの百万円です。決め手は、収賄者が得た利益が、収受した時点で決まっていることです。手元から無くなった時点の値段は、基準になりません。
二人で受け取った賄賂
図:二人で受け取って使い切った
追徴では、もう一つ、問題になる場面があります。二人で受け取った賄賂です。設例を変えます。Aは、知人のCと共謀して、Bから現金二百万円を受け取りました。Cは、公務員ではありません。二人は、その二百万円を、使い切ってしまいました。公務員でないCも、Aと共謀したなら、65条1項によって、収賄の共同正犯になりうることは、前に、身分犯と共犯の回で見ました。そのうえで、最高裁の決定を読みます。市長と、その支援者で公務員ではない人が、共謀して、業者から現金一億五千万円を収受しました。二人の間で、どう分けたか、どう使ったかは、はっきりしませんでした。第一審は、七千五百万円ずつを、各人から追徴しました。これは、総額の半分です。決定の判断は、四つに分かれます。命じられる額、執行、裁判所の裁量、そして、この事案の結論です。まず、前の二つを読みます。
判例最高裁判所第三小法廷決定(平成16年11月8日・刑集58巻8号905頁)
共同収受の追徴と執行 「刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの。)197条ノ5の規定による没収・追徴は、必要的に行うべきものであるが、本件のように収賄の共同正犯者が共同して収受した賄賂については、これが現存する場合には、共犯者各自に対しそれぞれ全部の没収を言い渡すことができるから、没収が不能な場合の追徴も、それが没収の換刑処分であることに徴すれば、共犯者ら各自に対し、それぞれ収受した賄賂の価額全部の追徴を命じることができると解するのが相当であり、賄賂を共同収受した者の中に公務員の身分を有しない者が含まれる場合であっても、異なる扱いをする理由はない。」 「……追徴が没収に代わる処分である以上、その全員に対し重複してその全部につき執行することが許されるわけではなく、共犯者中の1人又は数人について全部の執行が了すれば、他の者に対しては執行し得ないものであることはもちろんである。」
前の二つです。一つ目、共同して収受した賄賂は、残っていれば、各人に全部の没収を言い渡せます。たとえば、二百万円の現金が、一円も使われないまま二人の手元に残っていたとします。没収は、刑として、被告人一人ひとりに言い渡します。ですから、Aにも、Cにも、その二百万円を没収する、と言い渡すことができます。決定は、追徴を、没収の換刑処分と呼んでいます。没収に代わる処分、という意味です。だから、没収できないときの追徴も、各人に、収受した賄賂の価額全部を命じることができます。公務員でない人が混じっていても、同じです。二つ目、ただし、全員に重複して全部を執行する、つまり、実際に取り立てることは、できません。一人又は数人について全部の執行が済めば、ほかの人には執行は、できません。確認です。AとCに、二百万円ずつ追徴を命じたとします。国は、合わせて四百万円を取れるでしょうか?
取れません。二百万円を、どちらか一方から取れたら、全部の執行が済んだことになるので、もう一方には執行は、できません。追徴は、没収の代わりです。二百万円が残っていたとしても、言い渡しは二人それぞれに全部ですが、現金は二百万円しかありませんから、国が実際に取り上げられるのは、その二百万円だけでした。ですから、代わりの追徴でも、二百万円を超えては取れません。命じるのは言い渡しの話で、取るのは執行の話です。各人に命じられるのは全額でも、国が取れる総額は、二百万円までです。
図:ここまでに確かめたこと
次に、全額を、必ず各人に命じなければならないのか、という問題です。決定の続きを読みます。
判例最高裁判所第三小法廷決定(平成16年11月8日・刑集58巻8号905頁)
共同収受の追徴額の裁量 「収賄犯人等に不正な利益の保有を許さないという要請が満たされる限りにおいては、必要的追徴であるからといって、賄賂を共同収受した共犯者全員に対し、それぞれその価額全部の追徴を常に命じなければならないものではないということができるのであり……、裁判所は、共犯者らに追徴を命じるに当たって、賄賂による不正な利益の共犯者間における帰属、分配が明らかである場合にその分配等の額に応じて各人に追徴を命じるなど、相当と認められる場合には、裁量により、各人にそれぞれ一部の額の追徴を命じ、あるいは一部の者にのみ追徴を科することも許されるものと解するのが相当である。」 「……収受した賄賂の総額を均分した金額を各被告人から追徴するものとしたことには相応の合理性があると認められ、また、各追徴の金額を合算すれば収受された賄賂の総額を満たすから、必要的追徴の趣旨を損なうものでもない。」
三つ目は、全額を常に命じなければならないわけではない、という点です。不正な利益の保有を許さない、という要請が満たされるなら、裁判所は、裁量で、各人に一部の額だけを命じたり、一部の人にだけ追徴を科したりしてもよい、と決定は述べています。たとえば、Aの取り分が百五十万円、Cの取り分が五十万円と明らかなら、その額に応じて命じる形も許されます。合わせれば二百万円ですから、利益は、どちらの手元にも残りません。197条の5は、裁判官の裁量を外した条文でした。この三つ目と、ぶつかるわけではない、と整理できます。197条の5が外したのは、賄賂の利益を、受け取った側に残してよいかどうかの裁量です。残すことは、許されません。決定が認めたのは、その先の、誰に、いくら命じるかの裁量です。四つ目は、この事案の判断です。分け方が分からなかったので、総額を均分した額を各人から追徴しました。決定は、これには相応の合理性があり、合算すれば総額を満たすから、必要的追徴の趣旨を損なわない、と述べています。
決定が述べたのは、この事案で均分で足りる、までです。分配が不明なら必ず均分する、とは述べていません。決定の物差しは、不正な利益の保有を許さないという要請が満たされるかどうかです。均分は、その要請を満たす一つのやり方として、この事案で認められました。
図:共同収受の追徴
四点を、一枚にします。命じられるのは各人に全額。執行は重複できない。全額は常には要らず、裁量で一部でもよい。そして、分配が分からない事案で、均分が許された例がある。以上です。
国家的法益の罪の選び分け
図:罪を選ぶ二つの問い
没収と追徴で、賄賂の罪の条文は、すべて読み終えました。ここからは、国家的法益の罪を、事例で選び分けます。その前に、思い出してください。賄賂の罪が守っているものは、何でしたか?職務の公正と、これに対する社会一般の信頼です。罪を学ぶときは、いつも、何を守る罪かから入りました。事例から罪を選ぶときは、順番が逆になります。先に、誰が、誰に、何をしたかを拾い、それがどの守るものを害したかで、罪を決めます。
図:五つの罪の決め手
五つの罪の、守るものと、決め手を並べました。これを使って、事例を五つ選び分けます。事例を聞いたら、先に、誰が、誰に、何をしたかを拾ってから、罪を選んでください。一つ目です。占用許可の窓口で、許可が出なかったBが、職員Aの胸ぐらをつかんで、押し返しました。公務執行妨害罪では、公務員は、職務中に暴行を受ける立場にいます。二つ目です。Aは、許可の審査の手続として、Bに、提出する義務のない書類を出させました。公務執行妨害罪と職権濫用罪は、同じ公務員とBの場面でも、公務員の立場が逆です。暴行を受けて害される立場か、職権という力を相手に向けて、義務のないことをさせる立場かが、分かれ目でした。
図:拾う三点
三つ目です。Aは、許可の見返りとして、Bから、現金を受け取りました。収賄罪では、公務員は、Bに力を向けていません。職務の対価として受け取ったことが、決め手です。四つ目です。公務員でも、事務を任された人でもないCが、Bに、工事の邪魔をされたくなければ現金を出せ、と告げて、現金を出させました。公務員という身分も、任された事務も、恐喝罪の決め手になりません。暴行や脅迫で畏怖させ、財物を交付させたことが決め手で、恐喝罪が守るものは、Bの財産です。五つ目です。民間の会社で、仕入れを任されたDが、知人の会社に有利になるよう、会社に損害が出ると分かっていながら、不当に高い値段で発注しました。
背任罪が守るのは、事務を任せた本人の財産で、任務に背いて、その本人に損害を加えたことが決め手です。五つとも、拾ったのは、誰が、誰に、何をしたか、の三点です。そこから、守るものと罪が決まりました。
図:冒頭の問いの答え
冒頭の問いに戻ります。三つ目の事例のAが受け取った現金は、どうなるでしょうか。使い切っていた場合と、接待だった場合も、答えてください。Aが受け取った賄賂は、現金を使い切っていても、接待のように形が残らなくても、没収か、価額の追徴で、必ず取り上げられます。利益は残さない。それが、没収と追徴の軸でした。
⭐ 論文で書く規範:没収と追徴の三点 「① 収受した賄賂は、197条の5により必ず没収される。19条・19条の2の特則で、没収するか追徴するかについて裁判官の裁量はない。没収できないときは、必ず価額が追徴される。」 「② 没収できないときには、後から没収できなくなった場合と、はじめから没収できない場合が含まれるとされる。追徴する額は、授受当時の価額による。」 「③ 共同で収受した賄賂は、各人に全額の追徴を命じることができるが、執行は重複できない。全額を常に命じる必要はなく、不正な利益を残さない限り、裁量で一部を命じてもよい。」 (要点)
各論の総復習と読み筋
図:個人的法益の地図
各論の全体を、守るものから並べ直します。まず、個人的法益です。人が持つ利益を守る罪で、第12章から第16章です。生命と身体を守るのが、殺人や傷害、過失致死傷、遺棄、堕胎。自由を守るのが、逮捕監禁や脅迫、強要、略取誘拐、性的自由に対する罪、住居侵入。秘密、名誉、信用、業務を守るのが、秘密を犯す罪、名誉毀損、信用毀損、業務妨害。財産を守るのが、窃盗と強盗、それから、詐欺、恐喝、横領、背任、盗品等に関する罪、毀棄です。
図:社会的法益の地図
次に、社会的法益です。第17章です。公共の平穏と安全を守るのが、騒乱、放火、往来妨害。取引の安全を守るのが、文書、通貨、有価証券、カード等の偽造。風俗を守るのが、わいせつ、賭博、礼拝所と墳墓に関する罪です。
図:国家的法益の地図
最後に、国家的法益です。第18章です。国家の存立を守るのが、内乱と外患に関する罪。その隣に置かれているのが、国交に関する罪で、こちらは、守る対象に争いがありました。外国の利益と見る説と、日本の外交上の利益と見る説です。そして、国家の作用、つまり、国の仕事が適正に行われることを守るのが、公務執行妨害、逃走、犯人蔵匿、証拠隠滅、偽証、虚偽告訴、職権濫用、賄賂です。今日の事例の、公務執行妨害、職権濫用、収賄は、この国家の作用の罪でした。恐喝と背任は、個人的法益の、財産の罪です。国家的法益か財産か、その分かれ目も、守るものが決めていました。第1回に戻ります。そこで、ある条文が守ろうとしている利益を、保護法益と呼ぶ、と言いました。個々の犯罪を扱う回では、これが毎回の出発点になる、とも言いました。各論を通して、この出発点から、何が決まったでしょうか?
一つ目の柱は、守るものから始めると、条文の要件の広さが決まることでした。もう一つの柱が、法益保護機能と自由保障機能の綱引きでした。利益を守るために犯罪の輪を広げる力と、行動の自由を守るために輪を絞る力です。賄賂の罪で、職務の公正だけを守ると見る立場と、社会一般の信頼まで守ると見る立場が分かれたのも、この綱引きの現れとして読めます。正しい仕事への謝礼では、職務の公正は害されていません。ですから、前者では、これを輪の内に入れる理由が言えません。後者なら、言えます。職務の対価として金品が渡れば、職務は、お金で動くのではないか、という疑いが生まれて、社会一般の信頼が害されるからです。信頼まで守ると見れば、輪は、そこまで広がります。第1回から今日まで変わらない読み筋は、刑法を、まず守るものを問い、犯罪の輪をどこまで広げるかの綱引きとして読むことです。
参照条文
- 刑法197条の5
- 刑法19条1項
- 刑法19条の2