刑法 ゼロから刑法#8

構成要件総論——要素と機能

第一関門=構成要件を機能・要素・確定の3面から整理する回。3つの機能(罪刑法定主義的・故意規制・違法性推定)、客観/主観の要素、未遂・共犯で広がる修正された構成要件まで。

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第2章 構成要件 ②/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

1. 軸:構成要件=犯罪の”型”=犯罪論のスタートライン

  • 構成要件とは、刑法の各条文が定める犯罪の型(犯罪類型)。殺人罪=「人を殺す」、窃盗罪=「他人の財物を盗む」。
  • 型に当たるか(構成要件該当性)が第一関門。ここを通って初めて 違法性 → 責任 の検討に進む。
  • 今日の話は全部「この型を どう使うか」=機能(働き)・要素(中身)・確定(広がり)の3つ。

2. 構成要件の3つの機能(働き)

  • ① 罪刑法定主義的機能(=自由保障機能):型に当たらなければ不可罰。罰する条文がなければ犯罪でない(∵該当しなければ不可罰)。→ 罪刑法定主義の現れ=#5
  • ② 故意規制機能:故意=構成要件に当たる事実の認識認容。型が「何を分かっていれば故意か」の照準(認識対象)を画す。→ 故意の中身=#16
  • ③ 違法性推定機能:型=ふつう違法・有責な行為の類型→当たればまず違法・有責と推定し、例外(阻却事由)を後で探す(原則アウト・例外で覆す)。→ 違法性の本質=#20
  • ※ #3「刑法の2機能(法益保護/自由保障)」とは別物(混同注意)。

3. 構成要件要素の種類(中身)

  • 客観的要素(外から認識):⑴実行行為(法益侵害の現実的危険性を有する行為)⑵構成要件的結果 ⑶因果関係。
  • 主観的要素(内心):故意(客観的要素の認識認容)・過失(予見可能性を前提とした結果回避義務違反〔通説〕)。
    • 主観的超過要素=目的犯の目的・傾向犯の傾向(故意を超えて要求される内心)。
  • 殺人罪で具体化:実行行為=ナイフで刺す(死の危険)/結果=死亡/因果=刺したから死んだ/故意=「殺す」の認識認容。
  • もう一つの切り口=記述的要素/規範的要素(記述的=見れば分かる「人」「物」/規範的=評価して意味が決まる「わいせつ」)。詳細は#9(c2-3)
  • 各要素の中身は#10〜(第2章④以降)で深掘り。

4. 構成要件の確定(広がり)

  • 基本的構成要件=各本条の型。既遂・単独正犯が通常の姿。文言だけでは足りず他条文・解釈で補完(故意=38条1項を読み込む/因果=解釈)。
  • 修正された構成要件=基本の型に修正を加え処罰範囲を伸ばす。未遂=43条・共犯=60条。
    • 199+43=殺人未遂/199+60=殺人の共同正犯。中身は未遂=#29/共同正犯=#33

📕 条文(全文・e-Gov 現行XML 逐語)

  • 刑法38条1項(故意の原則):「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」
  • 刑法43条(未遂減免):「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。」
  • 刑法60条(共同正犯):「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」
  • ※殺人罪199条は2025-06-01施行の改正で法定刑が「拘禁刑」に変わっている(本動画では199条を全文引用せず「殺人罪=199」のラベル参照のみ)。

🔁 送り先(この回で導入だけした論点の回収先)

論点回収先
各構成要件要素の中身(実行行為・結果・因果)#10〜(第2章④以降)
記述的/規範的要素の詳細(意味の認識)#9(c2-3)・#16
構成要件的故意の中身(38条1項・認識認容)#16(c2-10)
未遂(実行の着手)#29
共同正犯(60条)#33
罪刑法定主義の本論#5
違法性の本質・違法性阻却の各論#20〜

✅ 一問一答

  • Q. 構成要件の3つの機能は? → A. 罪刑法定主義的機能(自由保障)・故意規制機能・違法性推定機能。
  • Q. 故意規制機能とは? → A. 故意=構成要件に当たる事実の認識認容。型が故意の認識対象(照準)を画する働き。
  • Q. 違法性推定機能の帰結は? → A. 型に当たれば まず違法・有責と推定し、例外(阻却事由)だけ後で検討する。
  • Q. 主観的超過要素の例は? → A. 目的犯の目的(公文書偽造の行使の目的)・傾向犯の傾向。
  • Q. 修正された構成要件の例は? → A. 未遂(43条)・共犯(60条)。199+43=殺人未遂、199+60=殺人の共同正犯。

短答ひっかけ

  • 構成要件の3機能(罪刑法定主義的・故意規制・違法性推定)と、刑法の2機能(法益保護・自由保障)は別物(混同注意)
  • 違法性推定機能の帰結:型に当たれば「まず違法・有責と推定」し、例外(阻却事由)だけ後で探す(アウト原則・例外で覆す)
  • 主観的超過要素(目的・傾向)は故意を超えて要求される内心——故意の認識対象そのものではない
  • 修正された構成要件は処罰範囲を”広げる”(未遂43条・共犯60条)。基本型を縮める方向ではない
  • 基本的構成要件の完成形は既遂・単独正犯——未遂や共犯は修正が入って初めて処罰できる

📝 論文の型

  • 該当なし(導入回)

今日の地図(保存版)

  • 構成要件=各条文が定める犯罪の型(犯罪類型)。第一関門。
  • 3つの機能:①罪刑法定主義的機能(型になければ不可罰)、②故意規制機能(型が故意の認識対象を画す)、③違法性推定機能(型に当たれば違法・有責を推定)
  • 要素の2軸:客観的要素(実行行為・結果・因果)× 主観的要素(故意・過失+主観的超過要素)
  • もう一つの切り口:記述的要素(見ればわかる「人」「物」)vs 規範的要素(評価が要る「わいせつ」)
  • 基本的構成要件(各本条・既遂・単独正犯)→ 修正された構成要件(未遂43条・共犯60条)で処罰範囲を拡張
  • 条文だけでは足りず他条文・解釈で補完(故意=38条1項・因果=解釈)

次回は #9「犯罪の分類」。

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