刑法ゼロから刑法#9

犯罪の分類

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第2章 構成要件と実行行為 ③/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

住居に無断で立ち入る——結果は書いてあるか

敷地に無断で立ち入る

客観的構成要件要素が、実行行為・結果・因果関係・その他。主観が、故意・過失・目的・傾向。この8つでしたね。今日は、そのうち「構成要件的結果」という部品に着目します。この部品に着目すると、犯罪がいくつかの型に分かれます。まず、1つの出来事から見ていきましょう。Aは、正当な理由がないのに、Bの自宅の敷地に無断で立ち入りました。この出来事を、条文に当てはめてみましょう。

条文刑法130条

刑法130条(住居侵入等) 正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、 又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の拘禁刑又は 十万円以下の罰金に処する。

はい、そこだけ見てください。何が足りないと思いますか。「侵入した」という行為だけが、書かれています。何か結果が起きたことは、要求されていません。まさにそこに、今日の1つ目の分かれ方があります。

結果犯と挙動犯——名前が決まる瞬間

結果を要件にしているか、いないか

さっきの130条前段には、名前が付いています。結果の発生を要件にしていない犯罪を、挙動犯と呼びます。行為者の一定の身体的動静だけが、要件になっている犯罪です。では、逆のパターンも見ましょう。前回見た、殺人罪を思い出してください。あちらは、人の死亡という結果の発生が、要件です。こういう犯罪を、結果犯と呼びます。気づきましたね。まず条文を見て、それから名前を渡しました。刑法の多くの犯罪は、結果犯です。挙動犯は、少数派です。部品に着目して、条文を開いて、名前がつく。この順番を、これから何度もくり返します。

結果的加重犯——「よって」という目印

暴行から死亡へ

結果犯には、少し特殊な形があります。新しい出来事です。Aは、口論の末にBを殴打しました。Bは、その暴行によって死亡しました。いいえ、殴るつもりだけで、死なせるつもりはなかったとします。この条文を見てみましょう。

条文刑法205条

刑法205条(傷害致死) 身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期拘禁刑に処する。

そこが目印です。まず「身体を傷害し」、これが基本犯です。その基本犯に「よって」、故意を超えた重い結果が加わっています。こういう犯罪を、結果的加重犯と呼びます。基本犯より、重い刑が定められています。この「よって」という文言、覚えておいてください。同じ「よって」を持つ条文は、他にもあります。181条、219条、221条。名前だけ、覚えておいてください。はい、重い結果に故意が要るかという論点は、別の回で扱います。

240条には、「よって」が無い

「よって」を並べてみる

ここで、今日いちばんの注意点を扱います。この条文を見てください。

条文刑法240条

刑法240条(強盗致死傷) 強盗が、人を負傷させたときは無期又は六年以上の拘禁刑に処し、死亡させたときは 死刑又は無期拘禁刑に処する。

はい、よく見つけましたね。いいえ、240条も、結果的加重犯です。中身を見てみましょう。「強盗」、これが基本犯です。そこに、負傷や死亡という、故意を超えた重い結果が加わって、刑が重くなっています。基本犯プラス重い結果、という構造は、まったく同じです。「よって」という文言があるかどうかでは、判定してはいけません。目印は、あくまで補助です。判定の基準は、いつも同じです。「基本犯に、故意を超える重い結果が加わって、刑が加重されているか」、この構造です。それが、今日いちばんの注意点です。

侵害犯と危険犯——法益に着目する

何に着目するかが変わる

ここから、着目する部品が変わります。ここまでは「結果」という部品に着目していました。ここからは、保護法益という部品に着目します。法が守る利益のことです。条文の側から見た言い方が、保護法益です。まず、殺人罪を思い出してください。この結果の背後には、被害者の生命という保護法益があります。殺人罪は、この生命という法益が、現実に侵害されたことを要件にしています。こういう犯罪を、侵害犯と呼びます。では、別の犯罪を見てみましょう。内乱罪という犯罪があります。国家の存立を害する行為を処罰する犯罪です。条文番号は、77条です。内乱罪は、保護法益侵害の危険が生じれば、それで足ります。こういう犯罪を、危険犯と呼びます。重いから、ではありません。国家の存立が、現実に侵害された状態を、想像してみてください。その場合、その内乱を裁く主体、つまり国家そのものが、もう存在しません。だから、内乱罪は、侵害犯として作りようがありません。必然的に、危険犯にしかなり得ないんです。ここは正確に持ち帰ってください。

危険犯の内訳——「公共の危険」はあるか、ないか

公共の危険という4文字を探す

危険犯の分類を、もう一段細かく見ましょう。危険犯は「現実の危険が発生したか」という部品で、2つに割れます。条文を見てみましょう。

条文刑法110条1項

刑法110条1項(建造物等以外放火) 放火して、前二条に規定する物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた者は、 一年以上十年以下の拘禁刑に処する。

この条文は、公共の危険が実際に発生したことを、要件にしています。こういう危険犯を、具体的危険犯と呼びます。よく見ていますね。ここの「よって」は、焼損したことと、公共の危険とを、つないでいる言葉です。目印は補助でしかない、とお伝えしましたね。この分かれ方の判定に使うのは、「公共の危険」という言葉のほうです。文言そのものではなく、何を要件にしているかを見ます。

条文刑法108条

刑法108条(現住建造物等放火) 放火して、現に人が住居に使用し又は現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船又は鉱坑を 焼損した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。

はい、よく探しましたね。書かれていません。この条文は、焼損したという事実だけで、犯罪が成立します。公共の危険が実際に発生したことは、要件にされていません。こういう危険犯を、抽象的危険犯と呼びます。はい、108条は死刑もある、重い犯罪です。そこが、今日いちばんの引っかけです。直感では、そう思ってしまいますよね。はい、逆です。110条1項が具体的危険犯、108条が抽象的危険犯です。判定基準は、罪の重さではありません。条文が「公共の危険」の発生を、要件にしているかどうか、それだけです。ここは、向きを逆に覚えやすいので、正確に持ち帰ってください。

焼損しても、安全は壊れていない——108条という1つの条文

結果は起きた、でも法益は無事

ここで、今日いちばん大事な話をします。さっき、結果犯と危険犯を、別々に見ましたね。実は、この2つは、普段はぴったり重なります。殺人罪を思い出してください。結果は、人の死亡でしたね。そして、この結果は、生命という法益の現実の侵害、そのものです。多くの犯罪では、結果と法益侵害は、重なって見えます。では、108条を、もう一度見てみましょう。108条の構成要件的結果は、何でしたか。焼損という結果が起きれば、108条は結果犯として成立します。では、108条は、そもそも何を守るための条文だと思いますか。建物そのものより、もっと広いものです。不特定または多数人の、生命・身体・財産の安全。これが、放火罪の保護法益です。だから、周りにいる人たちの安全までが、守るべき利益になります。ここで、考えてみてください。1つの建物を焼損しただけで、この安全は、現実に侵害されるでしょうか。安全が害される「おそれ」、つまり危険が生じるだけです。現実に、侵害されたわけではありません。焼損という結果だけで、犯罪は成立します。つまり、108条は、結果犯でありながら、なお危険犯なんです。ここが、2つの分類軸が、独立しているという証拠です。「構成要件的結果」という部品と、「法益侵害」という部品は、別物です。普段は重なって見えるだけで、イコールではありません。その思い込みは、108条という1つの条文で、崩れます。ここが、今日いちばん「分かった」が起きる場所です。ここでも、名前を覚えたのではなく、どの部品を見ているかで分かれました。ここを正確に持ち帰ってください。

犯罪はいつ終わるのか——即成犯と状態犯

犯罪が終わったあと、何が起きるか

ここから、着目する部品が、また変わります。法益侵害が、いつまで続くか、という時間軸です。最初に、釘を刺しておきます。この分類は、法益侵害の重さや、悪質さの話ではありません。はい、そこが罠です。まず、事例で見ましょう。Aは、口論の末にBを殴打し、全治2週間の傷害を負わせました。そのあと、Aは逃げる途中、腹いせに隣家の窓ガラスを割りました。器物損壊罪という、独立した別の犯罪になります。なぜだと思いますか。傷害罪という犯罪の中に、この新しい行為は予定されていません。だから、独立した別罪として成立します。こういう犯罪を、即成犯と呼びます。構成要件的結果が発生した時点で、法益侵害も、犯罪も、終わります。その後の行為者の関与は、また新しい別の話になります。Aは、Bの自転車を盗みました。窃盗罪です。そのあと、Aはこの自転車を、中古買取店に売却して、換金しました。いいえ、なりません。原則として、別罪を構成しません。換金するという行為は、窃盗罪という犯罪の中に、予定された行為だからです。盗んだものをどう扱うかは、窃盗罪の評価に、すでに含まれています。こういう、別罪にならない事後の行為を、不可罰的事後行為と呼びます。そして、この犯罪を、状態犯と呼びます。構成要件的結果が発生した時点で、既遂になる点は、同じです。条文の型を、すべて満たし終えた状態です。2つが同じなのは、そこまでです。違うのは、そのあとの、法益侵害の続き方です。新しい行為を、行為者本人がすることになっているかどうか、これだけです。予定されていなければ即成犯、予定されていれば状態犯です。この分かれ方だけは、「よって」や「公共の危険」のような、条文の目印がありません。だから、条文の文言ではなく、いまの基準で見分けます。窃盗のほうが軽いから状態犯、ではありません。犯罪がいつ終わるかという、時間軸の話だと、正確に持ち帰ってください。

継続犯——分類が答案でどう効くか

監禁が続いているあいだ

もう1つ、時間軸に着目した犯罪があります。この条文を見てください。

条文刑法220条

刑法220条(逮捕及び監禁) 不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の拘禁刑に処する。

Aが、Bを不法に監禁したとします。はい、構成要件的結果の発生とともに、既遂にはなります。でも、さっきの2つとは、決定的に違う点があります。監禁が続いている間、法益侵害の状態も、ずっと続きます。こういう犯罪を、継続犯と呼びます。法益侵害の重さの話ではないと、もう一度確認しておきます。では、この継続犯という分類、何の役に立つと思いますか。いいえ、答案で実際に効く実益が、2つあります。1つ目です。前回に見た実行行為、法益を侵す現実的な危険を持つ行為が、まだ続いています。だから、既遂のあとから加功しても、共犯が成立しえます。2つ目が、もっと実務で効きます。時効の時計が動き始めるのは、犯罪行為そのものが終わったあとです。一定の期間が過ぎると、起訴できなくなる制度です。刑事訴訟法253条1項です。はい、条文番号を混ぜないでください。中身は、その回で扱います。監禁が続いているかぎり、時効のカウントは、始まらないということです。分類は、暗記表ではありません。

故意犯と過失犯——条文の文言が決める原則と例外

本文とただし書、どちらが原則か

最後は、着目する部品が、また変わります。主観的構成要件要素です。前回、部品表の後半で拾いましたね。この条文を見てください。

条文刑法38条1項

刑法38条1項(故意) 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない

本文から見ましょう。「罪を犯す意思がない行為は、罰しない」。これは裏返すと、故意犯が原則だということです。「法律に特別の規定がある場合は、この限りでない」。つまり、法律に特別の規定がある場合に限って、過失犯も処罰されます。前回の、工場で安全装置を確認せずに同僚に大怪我をさせた例を思い出してください。ああした過失を罰する規定は、別に用意されています。規定が置かれていない犯罪は、過失で結果を起こしても、罪には問われません。ここが、今日の最後のポイントです。過失犯が例外だということは、誰かがそう言っているのではありません。ただし書という条文の形式そのものが、それを決めています。故意犯と過失犯、それぞれの中身は、前回すでに見ました。今日は、この「原則・例外」という配置だけを、確認しました。

5つの分かれ方、1枚の地図

今日拾った5つの分かれ方

今日拾った分かれ方を、1枚の表にまとめましょう。すべて、同じ手つきで作られていましたね。1つ目は、構成要件的結果への着目でした。ここから、結果犯・挙動犯、そして結果的加重犯が生まれました。2つ目は、保護法益への着目です。侵害犯・危険犯、そしてその内訳の具体的・抽象的危険犯が生まれました。そして、108条では、この2つの軸が独立していることも見ましたね。3つ目は、法益侵害の続き方への着目です。即成犯・状態犯・継続犯、220条が典型でしたね。最後、4つ目は、主観への着目です。故意犯が原則、過失犯が例外、38条1項が根拠でした。どの部品を見ているか、それさえ言えれば、名前は自分で出てきます。分類は、暗記表ではなく、着目する部品の結果です。

参照条文

  • 刑法130条
  • 刑法205条
  • 刑法240条
  • 刑法110条1項
  • 刑法108条
  • 刑法220条
  • 刑法38条1項

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