間接正犯
印刷のコツ
プリンターでは次の設定がおすすめです。
- 用紙:A4 / 向き:縦
- 拡大縮小:「実際のサイズ」(フィット縮小しない)
- 両面印刷:オン、とじ方は「長辺をとじる」(左綴じ)
- モノクロ印刷OK(強調は色でなく太字なので白黒でも読めます)
第2章 構成要件と実行行為 ⑥/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
他人にやらせた人は、教唆犯なのか
図:店の前で起きたこと
他人にやらせたなら教唆犯だ——そう思いますよね。でも、教唆犯にすらならないことがあります。そこを、今日ほどいていきます。まず、出来事を1つ見てください。Aは、店の前で、通りがかりの4歳の子どもBに声をかけました。「あのワゴンのお菓子を取ってきて」。Bは、そのとおりにしました。Bが罰せられることは、ありません。Aは、店の商品に、指1本触れていません。そこが、今日の問いです。
図:実行行為の回が置いた、2つの宿題
ここで、思い出していただきたいことがあります。実行行為の定義を渡した回の最後に、宿題を2つ置いたのを思い出せますか?それは、不作為を扱った2回でお答えしました。もう1つが、自分で手を下していないのに、実行行為をしたと言えるか。今日その宿題に答えて、この章を閉じます。追いかける問いは、2つです。1つ目。なぜ、教唆犯ではなく、正犯なのか。2つ目。教科書が並べる6つの類型を、どう見分けるのか。
石や機械と、同じように見る——道具理論
図:道具にできるのは、物だけではない
人が犯罪を行うとき、たいてい何かを使っています。石を投げて窓を割る。スイッチを入れて、機械に物を壊させる。法律は、石や機械を「行為をした者」とは見ません。行為をしたのは、投げた人であり、スイッチを入れた人です。その当たり前の見方を、人にも当てはめる場面があります。これを道具理論と呼びます。ここから、定義が出てきます。他人を道具として利用し、実行行為を行う場合を、間接正犯と呼びます。そこだけ、言い方をひっくり返してください。「他人にやらせた」ではなく、「他人という道具を使って、自分がやった」。
この読み替えが、今日ずっと効いてきます。
なぜ、教唆犯では届かないのか
図:他人を巻き込んだ人を捕まえる条文は、もうある
教唆犯でいいのでは、というのはとても自然な発想です。条文を、実際に開いてみましょう。
条文刑法61条1項
刑法61条1項(教唆) 人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。
真ん中の言葉だけ、見てください。「犯罪を実行させた」。そこです。条文は、頼まれた側に犯罪の実行があることを前提にしています。隣の条文も、見ておきましょう。
条文刑法62条1項
刑法62条1項(幇助) 正犯を幇助した者は、従犯とする。
幇助というのは、手助けのことです。条文の従犯が、ふつう幇助犯と呼ばれるものです。こちらも「正犯を幇助した」=正犯がいることが前提です。では、4歳のBに当ててみましょう。Bには、犯罪が成立しません。教唆犯は、成り立ちません。幇助犯も、正犯がいないので同じです。そこを放っておくのは、いかにも不自然です。結果を作ったのは、Aですから。そこで、こう評価します。他人を道具として使った者は、自分で実行したのと同じだ。これが、間接正犯という概念の出どころです。
図:教唆犯で届く場合と、届かない場合
同じなのは、刑の重さだけです。分かれるのは、成り立つかどうかです。ここが、この概念が要る理由の芯です。なお、頼まれた側にどこまで犯罪が成立していれば共犯が成り立つのか。その理屈そのものは、共犯の章で扱います。今日は、条文の言葉だけで足ります。
では、なぜ「正犯」と言えるのか
図:人と人のあいだには、ふつうゲートが1つある
なぜ、他人を使った人を「正犯」と呼べるのか。ここを詰めます。ふつう、人に何かを頼んでも、あいだにゲートが1つあります。頼まれた人自身が「これはやってはいけない」と気づいて、断る。このゲートを、法律の言葉では、規範に直面すると言います。規範とは、「やってはいけない」という命令のことです。それを受け止めて、思いとどまる機会を持つ、ということです。ところが4歳のBには、その機会がありません。言われても、意味そのものが届かないからです。すると、BはAの前に立ちはだかる障害物になりません。Aから見れば、石や機械と同じで、抵抗なく結果まで届いてしまう。
そこが、正犯だと言える理由です。答案では、この状態を「規範的障害がない」と書くこともあります。言葉は2つですが、指しているものは同じです。境目も、はっきりさせておきましょう。Aが、事情を分かっている大人のDに、同じことを頼んだとします。Dはゲートの前に立ち、それでも通り抜けました。このときAは、間接正犯ではありません。教唆犯です。
図:同じことを、二つの側から言う
もう1つ、別の角度からの言い方も置いておきます。いま見たのは、頼まれた側を見る言い方でした。反対に、利用した側を見て、結果に至る流れを握っていた、と説明する立場もあります。これを行為支配説と呼びます。どちらかが誤り、という関係ではありません。今日は、頼まれた側を見る言い方を、物差しとして持ち歩きます。
2つの要件——客観と主観
図:「間接正犯」という条文は、無い
間接正犯の条文は、ありません。刑法に「間接正犯」という言葉は、一度も出てきません。ですからこの先の2つは、条文から取り出した成立要件ではありません。解釈で立てた規範です。条文を音読しても、出てきません。だからこそ、丸暗記せず、趣旨から戻せるようにしてください。
⭐ 論文で書く規範:間接正犯の2つの要件 ① 客観=他人を、意思のある道具のように一方的に動かしていたこと(一方的な支配・利用) ② 主観=その犯罪を、「自己の犯罪」として実現する意思(正犯意思) (規範(通説で立てる))
Aに当ててみましょう。まず客観。4歳のBは、断る力を持たないまま、Aの言うとおりに動きました。次に主観。Aは、人の犯罪に手を貸すつもりではなく、自分の犯罪として、これをやっています。どちらも満たします。Aには、窃盗罪の間接正犯が成立しえます。手を動かしたのはBですが、法律が見るのは、Bを使ったAです。
なぜ、主観まで要るのか
図:自分の犯罪か、人の犯罪か
そこを詰めておきましょう。客観だけで足りるとすると、困ることが起きます。他人の犯罪に、強く関与しただけの人まで、正犯になってしまうんです。段取りを全部整え、道具まで用意して、実行だけを友人に任せた人がいたとします。相手の動きを、事実上、握っているとも言えます。その人が、あくまで友人の犯罪を実現させるつもりだったのなら、間接正犯とは呼びません。自分の犯罪としてやったのか、人の犯罪に手を貸したのか。この分かれ目が、正犯と共犯の境です。だから、主観まで見ます。境の引き方そのものは、共犯の章で正面から扱います。
6つの類型に入る前に、物差しを1本だけ渡す
図:今日の物差しは、これ1本
ここから、教科書が並べる6つの類型に入ります。この6つは、覚えません。覚えると、試験場で当てはめられなくなります。先に、物差しを1本だけ渡します。頼まれた側は、思いとどまる機会を持っていたか。これだけです。6つは、その機会がどう消えたかの違いにすぎません。1つ当ててみます。事情を分かっていた大人のDは、この機会を持っていました。だからAは、教唆犯でした。4歳のBは、持っていませんでした。だからAは、Bを道具として使った側です。1つ、確かめさせてください。この6つは、何が違うだけでしょうか?
それが言えていれば、あとは変奏を聞くだけです。
図:思いとどまる機会は、どう消えたか
一覧にすると、こうなります。今は眺めるだけで結構です。これから、1つずつ順番に見ていきます。出てくる設例は、どれも同じ形にしてあります。Aが背後の人、Bが手を下す人、Cがやられる側です。見る順番も、毎回同じです。設例、規範に直面したか、結論。
1つ目と2つ目の変奏——受け取れない、従えない
図:受け取れない場合と、従えない場合
まず、意思能力を欠く場合です。ここは、もう見ました。4歳のBです。「やってはいけない」という命令を、そもそも受け取れません。重い精神の障害で、善悪を判断できない人を使った場合も、同じです。そこは、正確に言うと大事です。理由は「4歳だから」ではありません。「規範を受け取る力が無いから」です。そこは、次の節で徹底的にやります。覚えておいてください。次が、意思を抑圧されている場合です。こちらは、規範を受け取ることが、できます。受け取っても、従えないんです。判例を見ましょう。12歳の養女に、窃盗をさせた事案です。養親である被告人は、日頃から暴行を加え、自分の言うとおりに従わせていました。そのうえで、窃盗を命じています。
判例最高裁判所第一小法廷決定(刑集37巻7号1070頁)
最決昭和58年9月21日——日頃の暴行で意のままに従わせていた養女に、窃盗をさせた事案 被告人が、自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている同女を利用して右各窃盗を行つたと認められるのであるから、たとえ……同女が是非善悪の判断能力を有する者であつたとしても、被告人については本件各窃盗の間接正犯が成立すると認めるべきである。
「同女」というのは、12歳の養女のことです。判決文の言い方ですね。いちばん見てほしいのは、後半です。「たとえ、是非善悪の判断能力を有する者であったとしても」。判決は、その区別がついていたとしても、と言っています。それでも、間接正犯を認めました。判断はできても、従えなかったからです。決め手は、意思の抑圧です。
「12歳だから道具」ではない
図:同じ12歳前後で、結論が割れる
ここが、この論点でいちばん間違えやすいところです。いまの判例が12歳だったからといって、「12歳なら道具だ」と覚えると、必ず外します。もう1つ、判例を見てください。12歳10か月の子に、指示命令した事案です。
判例最高裁判所第一小法廷決定(刑集55巻6号519頁)
最決平成13年10月25日——12歳10か月の子に指示命令したが、間接正犯は認められなかった事案 本件当時Bには是非弁別の能力があり、被告人の指示命令はBの意思を抑圧するに足る程度のものではなく、Bは自らの意思により本件強盗の実行を決意した上、臨機応変に対処して本件強盗を完遂した……。
判決文の「B」は、この子どものことです。「是非弁別の能力」は、さっきの是非善悪の判断能力と同じで、良し悪しが分かる力のことです。そこです。年齢は、ほとんど変わりません。違ったのは、意思が抑圧されていたかどうか、その一点です。しかもこの子は、自分の判断で、その場に応じた動き方までしています。背後の人が結局どうなったかは、共犯の章の話です。もう1つ、混ぜてはいけない条文があります。
条文刑法41条
刑法41条(責任年齢) 十四歳に満たない者の行為は、罰しない。
14歳未満なら、罰しない。これは条文にそのまま書いてあります。そこが、混ぜてはいけないところです。この条文が働くのは、3つの関門のうち、いちばん奥の責任です。道具かどうかは、いちばん手前の構成要件、実行行為の話です。別の階の話を、そのまま持ち込まないでください。
3つ目の変奏——何をしているか、知らない
図:知らない人は、規範の前に立っていない
3つ目の変奏です。今度は、頼まれた人が大人で、判断力もあります。Aが、駐輪場でBに声をかけます。「私の自転車を持ってきて」。そう言って、鍵を渡しました。ところが、その自転車はCのものでした。Bの頭の中に、「他人の物を盗む」という認識はありません。これを、構成要件的故意を欠くと言います。窃盗罪は、他人の財物を窃取した者を罰する罪です。「他人の物だ」と分かっていなければ、その故意はありません。Bに窃盗罪は成立しません。そして、ここが物差しの当てどころです。Bは、「他人の物を盗むな」という規範の前に、そもそも立っていません。
だからAは、Bを使って自分で盗ったのと同じ。窃盗罪の間接正犯です。
図:壊す気はあった。殺す気は、無かった
同じ「知らない」でも、少しややこしい形があります。Aは、Cを殺すつもりでいました。Cは、資材置き場で、積み上がった資材の陰にいます。Aは、それを知っています。Aは、重機を動かしていた作業員Bに、こう頼みました。「あの資材はCさんの物だけど、邪魔だから上から押し潰しておいて」。そして、「あのあたりに人はいないから大丈夫」と言い添えました。Bは資材を押し潰し、陰にいたCは、下敷きになって亡くなりました。殺意は、ありません。では、Bは何も分かっていなかったのでしょうか。そこです。他人の物を壊す罪は、この条文です。
条文刑法261条
刑法261条(器物損壊等) 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
Bは、「他人の物を壊すな」という規範には、直面しています。ですからBは、器物損壊罪の責任を負いえます。でも、「人を殺すな」という規範には、一度も直面していません。だからAは、殺人罪の間接正犯です。大事なのは、規範は罪ごとに別だ、ということです。別の罪の規範に直面していても、その罪の規範に直面していなければ、道具です。
図:同じ「知らない」でも、Bの罪責は違う
もう1つ、派生があります。建設現場です。Aは、下の区画にCがいることを知っていました。Aは、上で作業していたBに「その鉄骨、そこから下ろしておいて」と言いました。Bは、下を確認しないまま鉄骨を落とし、当たったCは亡くなりました。人を殺す故意は、ありません。そこを突けるのが大事です。Bには、業務上過失致死罪が成立しえます。ここで、1つ壊しておきたい思い込みがあります。道具にされた人は必ず無罪になる——そう覚えると、外します。さっきの重機のBも、器物損壊罪の責任を負いえました。鉄骨のBも、過失で問われはしますが、「人を殺すな」という故意の規範には直面していません。だからAは、やはり殺人罪の間接正犯です。ここで、名前だけ触れておきます。事情を知りつつ、まったく主体性なく指示に従っただけの人を、どう扱うか。故意ある幇助的道具と呼ぶ議論があります。ただ、この呼び名を使わなくても、正犯と共犯の区別で処理できます。ですから深入りせず、共犯の章に送ります。
4つ目と5つ目の変奏——目的がない、適法に動いている
図:知っていても、要件のどれかが欠ける
ここから、少し形が変わります。Bは、自分のしていることを知っています。罪が成り立つための要件が、Bの側で1つ欠けている場合があります。まず、目的犯です。Aは、偽の一万円札を手に入れたいと考えました。デザイン会社のBに、こう頼みます。「舞台の小道具に使うので、精巧な一万円札の複製を作ってほしい」。Bは、そのつもりで作りました。お札を作っている自覚は、あります。ただ、通貨偽造の条文には、冒頭に条件が付いています。構成要件の部品を並べた回で見た、目的犯の目的です。「行使の目的で」——本物として使うつもり、でした。
目的が無いので、Bに通貨偽造罪は成立しません。逆に、Aにはその目的があります。だからAが、通貨偽造罪の間接正犯です。そこが変奏です。目的の規範の前に、Bは立っていません。次が、違法性が阻却される場合です。成立要件の回で見た、3つの関門の2つ目ですね。阻却事由が無いかだけを見る階でした。警察官のAが、Cを閉じ込めようと考えました。そこで、適法な職務行為であるかのように装い、別の警察官Bを欺きます。そして、Cの留置を依頼して、留置させました。Bの行為は、つもりの問題にとどまりません。職務行為として、実際に適法だと評価されます。適法に動いている人には、「やってはいけない」という規範が向いていません。
そこです。この形は、古い判例で実際に問題になっています。この判例については、判決文ではなく、事案と結論だけをお伝えします。
判例大審院判決(刑集18巻497頁)
大判昭和14年11月4日——適法な職務行為を装って別の警察官を欺き、留置させた事案 不法な監禁を企てた者が、適法な職務行為であるかのように装って別の警察官を欺き、その警察官に相手方を留置させた。 → 監禁罪の間接正犯が成立する(事案の骨子と結論。判決文の引用ではない)。
「不法に人を逮捕し、又は監禁した者」のうち、監禁の側です。なお、公務員でない人が、公務員を使って中身の嘘の公文書を作らせる場合。これも同じ形の問題で、文書偽造の回で扱います。
6つ目の変奏——被害者自身を、道具にする
図:道具にされたのが、被害者だったら
最後の変奏です。ここだけ、少し毛色が違います。これまでは、道具にされたのは第三者でした。ところが、被害者自身が道具にされる形があります。判例です。Aは、Cに、後を追って自分も死ぬ、と嘘をつきました。Cはそれを信じ、自ら死を選びました。Aに、後を追うつもりはありません。そこが核心です。まず、判決が指している条文を見てください。
判例最高裁判所第二小法廷判決(刑集12巻15号3519頁)
最判昭和33年11月21日——後を追うと偽って被害者を欺き、自ら死を選ばせた事案 要するに被害者の自由な真意に基かない場合は刑法二〇二条にいう被殺者の嘱託承諾としては認め得られない。 → 本件は通常の殺人罪に該当する。
その202条が、これです。
条文刑法202条
刑法202条(自殺関与及び同意殺人) 人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、六月以上七年以下の拘禁刑に処する。
本人が頼んだ場合などを、殺人より軽く扱う条文です。軽く扱う理由は、本人が自分の生命について自分で決めた、という一点にあります。判決は、そこを「自由な真意に基かない」と切りました。嘘で作られた決断は、本人が自分で決めたとは言えません。軽く扱う理由が消えますから、Cの承諾は無効で、通常の殺人罪になります。ここだけ、1段ずれます。あいだに立つBがいないので、見る先はC自身に移ります。見るのは、Cの意思決定が自由だったかです。そこは正直に言っておきます。物差しの当て方が、少し変わります。もう1つ、大事な注意です。この判決文に「間接正犯」という言葉はありません。
判決は、承諾が有効かという形で論じています。整理したのは、学説の側です。
物差しが効かない場所——自手犯
図:他人を道具にできない罪がある
最後に、物差しが効かない場所を見ておきます。どれだけ相手を思いどおりに動かしても、成り立たない罪があります。無免許運転の罪です。Aも、頼まれたBも、免許を持っていないとします。Aが、Bに運転させました。Aは、無免許運転の罪になるでしょうか。正犯には、なりません。この罪は、自分がハンドルを握らなければ成り立ちません。人に頼んだこと自体の責任は、共犯の章の話です。こういう罪を、自手犯と呼びます。条文が、行為の主体と行為を、密接に結びつけているからです。免許証の不携帯も同じです。自分が持っていないことが、罪の中身ですから。
ここで、聞き覚えのある物差しが戻ってきます。不作為の前編で、真正か不真正かを分けるのは何だとお伝えしましたか。答えは、条文の書き方でした。ここでも、同じところを見ます。罪の重さでも、法益の重さでもありません。なお、その人の身分が問われる罪では、また別の限界が出ます。そこは、共犯の章に送ります。
三者の地図と、宿題への答え
図:他人を巻き込んで犯罪を実現する、3つの形
今日の位置を、地図で確認します。他人を巻き込んで犯罪を実現する形は、大きく3つあります。1つ目が、今日の間接正犯。他人を道具として使う形です。2つ目が、教唆犯。相手に決意させて、実行させる形です。3つ目が、共謀共同正犯。一緒に計画して、分担する形です。3つの名前と、形の違いだけ持ち帰ってください。基準は共犯の章です。間接正犯と共犯の錯誤、身分が問われる罪での限界も、同じところで扱います。もう1つ、今日は開けずに置いておく問いがあります。Aが指示した時点で、もう実行に着手したと言えるのか。それとも、Bが動き出した時点なのか。
そこは、未遂の章で正面から扱います。今日は、問いだけ置いておきます。
図:論文で書くときの流れ
今日の2つの要件は、論文でも書く規範です。事案から問題提起、規範、あてはめまでの流れは、専用の論文動画で渡します。では、最後に宿題へ答えます。自分で手を下していないのに、実行行為をしたと言えるか。実行行為とは、特定の構成要件に該当する法益侵害の現実的危険性を有する行為でした。言えます。相手が思いとどまる機会を持っていなかったときです。そして、機会が消えても届かない罪が、自手犯でした。実行行為の話は、これで一区切りです。今日で、この章が閉じます。
参照条文
- 刑法61条1項
- 刑法62条1項
- 刑法41条
- 刑法261条
- 刑法202条