因果関係②——危険の現実化の型・3類型
相当因果関係説に代わる判例・通説の到達点=「危険の現実化」を扱う回。実行行為の危険が結果に現実化したかで判断し、①直接実現②間接実現(誘発)③否定の3類型に振り分ける。
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第2章 構成要件 ⑧/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
#13の相当因果関係説(折衷説)に対し、現在の判例・通説の到達点は「危険の現実化」。条件関係を前提に、実行行為が持つ危険が結果へと現実化したといえるかで因果関係を判断する。帰責を絞る機能は相当因果関係説から引き継ぎ、判断の土台にする事情を限定しない点が折衷説と異なる。
1. なぜ折衷説 → 危険の現実化か
- 折衷説=相当性判断の土台を「一般人が認識・予見しえた事情+行為者が現に認識・予見していた事情」に限定する立場(#13)。
- 行為の後に予想外の介在事情(行為者が予見しえない第三者の行為・被害者自身の行動など)が割り込む事案では、折衷説だと「相当か」の判断が窮屈になりやすい。
- そこで判例は、基礎事情を限定せず、行為時の客観的事情を広く見たうえで「行為の危険が結果に現実化したか」を正面から問う枠組みを採った。
- 論文での使い分け:基本は判例(あてはめを厚く書ける=答案の軸)。ただし行為後の介在がなく行為時の特殊事情のみが問題となる事案や不能犯と同時に問われる事案では、基礎事情を限定する折衷説の方が書きやすい場面もある。
2. 規範と判断基底
【規範】因果関係(危険の現実化)(暗記) 因果関係は、実行行為に結果を帰責させることができるかという問題であるから、条件関係を前提に、行為の危険性が結果へと現実化したといえるかどうかで判断すべきであると解される。 (※ 危険性の有無は規範の文言には書き込まず、行為時の客観的事情を基礎に、あてはめで評価する。折衷説のように基礎事情を限定しない。)
3. 判断の3要素(あてはめのものさし)
抽象的な「危険が現実化したか」を、次の3要素で測る。
| 要素 | 中身 | 効き方 |
|---|---|---|
| ① 実行行為の危険性 | その行為が、その結果を生じさせる危険をどれだけ持っていたか | 大きいほど現実化(肯定)に傾く |
| ② 介在事情の異常性 | 間に入った事情が経験則上ありうるか/著しく異常か | 異常なほど介在の危険が原因(否定)に傾く |
| ③ 介在事情の結果への寄与度 | その介在事情が結果の発生にどれだけ直接効いたか | 大きいほど介在が原因(否定)に傾く |
- ① 大・② 小・③ 小 → 行為の危険がそのまま現実化(肯定方向)。
- ① 小・② 大・③ 大 → 行為とは別の危険が結果を生んだ(否定方向)。
4. 判断の3類型(自前の抽象例)
| 型 | 自前の例 | 3要素の効き方 | 結論 |
|---|---|---|---|
| ① 直接実現型 | 致命傷を負わせ放置 → 別人がさらに殴り死期が早まる | 危険性:大/異常性:小/寄与:小 | 肯定 |
| ② 間接実現型(誘発) | 執拗な暴行 → 恐怖で逃走 → とっさに危険な場所へ → 死亡 | 危険性:大/介在を行為が誘発 | 肯定 |
| ③ 否定型 | 軽傷のみ → 搬送途中に無関係の第三者が狙って殺害 | 危険性:小/異常性:大/寄与:大 | 否定 |
→ ①②=行為の危険が結果まで効いた(肯定)/③=行為とは別の危険が結果を生んだ(否定)。
📝 論文の型|因果関係(危険の現実化)
★コア規範(逐語で覚えるのはここだけ)
因果関係は、条件関係を前提に、実行行為の危険が結果へと現実化したといえる場合に認められる(危険の現実化説)。介在事情があるときは、①介在事情の異常性の程度と②結果への寄与度を考慮し、行為の危険が直接実現したか、介在事情を介して実現したかを判断する。
復元キー(趣旨から再構成する鎖)
- 因果関係=結果を実行行為に帰責できるかの問題
- 前提=条件関係(あれなければこれなし)
- 判断軸=行為の危険が結果に現実化したか
- 介在事情あり → ①異常性 ②寄与度で測る
- 型=危険が直接実現/介在事情を誘発して実現(大阪南港・高速進入)
フル論証(正本)
因果関係は、実行行為に結果を帰責させることができるかという問題であるから、条件関係を前提に、行為の危険性が結果へと現実化したといえるかどうかで判断すべきであると解される。
【事例】 甲は乙に暴行を加え、死因となる重い傷害を負わせて放置した。その後、何者かが乙にさらに暴行を加え、乙の死期がいくらか早まって乙は死亡した。
【問題提起】 甲の暴行と乙の死亡との間に、刑法上の因果関係(危険の現実化)が認められるか。
【あてはめ】 甲の暴行は、行為時の客観的事情を基礎にみて、乙の死因となる重い傷害を形成する危険な行為であり、その危険が直接結果に現実化している。介在した第三者の暴行は乙の死期をいくらか早めたにすぎず(異常でなく寄与も小さい)、甲の行為の危険を変質・増幅させていない。よって危険が現実化したといえ、因果関係が認められる(直接実現型)。
短答ひっかけ
- 条件関係はあくまで前提(条件関係があっても、危険の現実化は別に検討する。条件関係=因果関係ではない)。
- あてはめは3要素(危険性・異常性・寄与度)で測り、3類型(直接実現/間接実現〔誘発〕/否定)に振り分けるのがコツ。
- 介在事情があっても、因果が切れるとは限らない(行為が介在を誘発したか/介在が異常かで結論が変わる)。
※ 具体的な有名判例(大阪南港・米兵ひき逃げ・トランク・高速道路侵入)を事案付きで当てはめる実戦は、次回 #15(第2章⑨)で扱う(本回は型と要素まで)。