中止未遂——自分でやめたら刑はどうなる
着手後に自分でやめた中止未遂(43条ただし書)を扱う回。効果は必要的減免。任意性はフランクの公式(やれたのにあえてやめた)、中止行為は実行未遂なら結果防止の真摯な努力が要ることを押さえる。
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第5章 未遂犯 ②/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
着手した後、自分でやめた場合の特別扱い=中止未遂(中止犯・43条ただし書)。
障害未遂と中止未遂
| 条文 | 効果 | |
|---|---|---|
| 障害未遂(通常の未遂) | 43条本文 | 任意的減軽(減らすかは裁量) |
| 中止未遂(中止犯) | 43条ただし書 | 必要的減免(必ず減軽 or 免除) |
43条ただし書 ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
要件:①自己の意思により(任意性)②犯罪を中止した(中止行為)+結果不発生・因果関係。
中止未遂の法的性格(必要的減免の根拠)
| 学説 | 内容 | 帰結 |
|---|---|---|
| 刑事政策説 | やめれば減免する「後戻りのための黄金の橋」で犯罪を防ぐ | 政策的恩典/違法・責任が減る根拠が薄い |
| 違法性減少説 | 中止により危険が除去され違法性が減少 | 違法は連帯的→共犯にも及ぶ不都合/因果関係を要求しやすい |
| 責任減少説〔有力〕 | 任意の中止で非難可能性(責任)が減少 | 責任は一身専属→中止者本人のみ・共犯に及ばず/因果関係不要と整合 |
中止の任意性「自己の意思により」
- 学説:主観説/限定主観説(広義の後悔)/客観説(一般人標準)/折衷説(外部的事情が行為者にある程度必然的に中止を決意させたか)。
- フランクの公式:「やろうと思えばできたが、やらなかった」=中止未遂/「やりたかったが、できなかった」=障害未遂。
あてはめの傾向:
- 同情・悔悟・憐憫(倫理的動機)→ 任意性肯定(やろうと思えばできた)。
- 恐怖・驚愕・流血を見て→ 任意性否定が多い。
【判例】最決昭32・9・10:被害者の出血を見て驚愕・恐怖し意力を抑圧されてやめた=「自己の意思により」とはいえず任意性否定。
中止行為「犯罪を中止した」
- 着手未遂(実行行為を終えていない)=以後の実行を放棄する不作為で足りる。
- 実行未遂(実行行為を終えた)=結果発生を防止する真摯な努力(作為)が必要。
- 〇:自ら救急車を呼び被害者を病院へ運ぶ。
- ×:放火後「よろしく頼む」と告げて逃亡(大判昭12・6・25)=真摯な努力といえず。
予備の中止
予備罪には中止未遂を直接適用できない(予備に「未遂」なし)。準用の可否:
- 判例=準用否定(最大判昭29・1・20)。
- 通説=準用肯定(責任減少・刑の均衡。着手後にやめれば減免されるのに手前の予備でやめると減免なしは不均衡)。
- 強盗予備(237条)には刑の免除規定がなく、準用の実益が大きい。
📝 論文の型|中止未遂
★コア規範(逐語で覚えるのはここだけ)
中止未遂(43条ただし書)の必要的減免の根拠は、任意の中止による責任非難の減少にある(責任減少説)。「自己の意思により」(任意性)は、外部的事情が中止をある程度必然的に決意させた場合には認められない(折衷説/フランクの公式=「やろうと思えばできたが、あえてやめた」)。「犯罪を中止した」は、着手未遂では実行放棄の不作為で足りるが、実行未遂では結果防止の真摯な努力(作為)を要する。
復元キー(趣旨から再構成する鎖)
- 減免の根拠=任意中止による責任減少(責任減少説)
- ①任意性=「やれたのにあえてやめた」(フランクの公式/折衷説)
- 外部的障害に強いられた中止は任意性なし
- ②中止行為=着手未遂は放棄・実行未遂は真摯な努力
- 効果=刑の必要的減免(≠過剰防衛の任意的)
フル論証(正本)
中止未遂(43条ただし書)の必要的減免の根拠は、任意の中止による責任非難の減少にある(責任減少説)。そこで『自己の意思により』(任意性)とは、外部的事情が行為者にとってある程度必然的に中止を決意させた場合には認められず、そうでない場合に認められる(折衷説。フランクの公式=『やろうと思えばできたが、あえてやめた』場合に肯定)。また『犯罪を中止した』(中止行為)は、実行行為を終えていない着手未遂では実行を放棄する不作為で足りるが、実行行為を終えた実行未遂では結果発生を防止する真摯な努力(作為)を要する。
【事例】 甲は、Aを殺害しようと包丁でAの腹部を一突きしたが、苦しむAを見て哀れに思い、自ら救急車を呼んでAを病院に運び、Aは一命をとりとめた。
【問題提起】 甲に中止未遂(43条ただし書)が成立し、刑が必要的に減免されないか。
【あてはめ】 甲はAの苦しむ姿を見て哀れに思いやめており、外部的障害に強いられたのではなく、やろうと思えば殺害を継続できたのにあえてやめたといえるから任意性がある。また既に実行行為を終えた実行未遂であるところ、甲は自ら救急車を呼びAを病院に運んでおり、結果発生防止の真摯な努力が認められる。よって中止未遂が成立し、刑は必要的に減免される。
短答ひっかけ
- 中止未遂=必要的減免(障害未遂は任意的減軽)。
- 任意性は折衷説・フランクの公式(恐怖・驚愕でやめたのは否定が多い=昭32・9・10)。
- 実行未遂は真摯な努力(作為)が必要(不作為で足りるのは着手未遂)。
- 予備の中止=判例は準用否定(最大判昭29・1・20)/通説は準用肯定。