刑法 ゼロから刑法#32

共犯総論——手を下さなくても罰されるのはなぜか

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第6章 共犯 ①/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

ここからは複数人で犯罪を行う共犯。総論として、共犯を貫く2本の柱(処罰根拠・従属性)を押さえる。

共犯の種類

  • 必要的共犯:条文が最初から複数人を予定する犯罪。
    • 集団犯(集合犯・多衆犯)=同一目的に向けた多数人の集団的行為が構成要件(内乱罪77条・騒乱罪106条)。
    • 対向犯=互いに対向した行為が構成要件(収賄・贈賄197・198条/わいせつ文書頒布罪175条)。
  • 任意的共犯:1人でできる犯罪を複数人で(総論で扱うのはこちら)。
    • 広義の共犯=共同正犯(60条)・教唆犯(61条)・幇助犯(62条)。
    • 狭義の共犯=教唆犯・幇助犯(共同正犯は「正犯」側)。

片面的対向犯と任意的共犯(短答)

対向犯のうち、一方だけに法定刑が規定されているもの(片面的対向犯)がある。例:わいせつ文書頒布罪(175条)の受け手。この受け手を任意的共犯(60条以下)として処罰できるか。

  • 結論=原則否定最判昭43・12・24)。受け手は当然予想されるのに法律があえて処罰規定を設けていない=処罰意図なしと解すべき。
  • もっとも、当該犯罪が予想する程度を超え、特に大きな法益侵害を惹起する行為をした場合は、例外的に適用がありうる。

罪名従属性(共犯の本質)

共犯総論の柱は本来3本=①処罰根拠/②従属性(実行・要素)/③罪名従属性(共犯の本質)。罪名従属性は「異なる構成要件を実現した場合に共同正犯が成立するか」の問題で、行為共同説/犯罪共同説/部分的犯罪共同説が対立する。本格的な検討は#33 共同正犯で扱う(本回は存在の指摘にとどめる)。

共犯の処罰根拠

学説処罰根拠
責任共犯説(堕落説)正犯を犯罪・刑罰へと誘惑・堕落させた点
惹起説(因果的共犯論)正犯を介して間接的に法益侵害結果を惹起した点
混合惹起説〔通説〕共犯が違法・有責であることに加え、正犯が構成要件該当・違法に結果を惹起することを要する/正犯の実行行為を介して間接的に法益を侵害する点

共犯の従属性

  • 実行従属性:共犯成立に正犯の実行着手が必要か → 通説=共犯従属性説(正犯が実行に着手して初めて教唆・幇助が成立。教唆の未遂は原則不可罰)。
  • 要素従属性:正犯が犯罪成立のどこまでを備える必要があるか → 4形式(最小限/制限〔通説〕/極端/誇張)。通説=制限従属性説(正犯が構成要件該当・違法であれば足り、有責性は不要)。

違法は連帯的に、責任は個別的に

制限従属性説の帰結。例:成人Aが12歳の少年Bに窃盗を教唆した場合、Bは刑事未成年(41条)で責任なし→窃盗罪不成立。しかしBの行為は構成要件該当・違法だから、Aの教唆犯は成立しうる(違法はA・Bで連帯/責任はそれぞれ個別)。

※ これは制限従属性説を説明するための純粋な教唆設例。実際の判例(最決平13・10・25)は、12歳でも是非弁別能力があり自らの意思で実行した場合は道具性が否定され共同正犯(#33)、意思を抑圧していれば間接正犯(#12)になりうるとした。年齢だけで一律に決まらない点に注意(共同正犯/間接正犯との住み分けは各回で扱う)。

正犯なき共犯・共犯なき正犯

混合惹起説+制限従属性説の帰結:

  • 正犯なき共犯=否定(正犯の違法な実行行為がないと共犯も不成立)。例:他人に自傷行為を教唆しても、自傷は犯罪の実行行為でないため介した共犯も不成立。
  • 共犯なき正犯=肯定(1人で実行すれば正犯)。

📝 論文の型|共犯の処罰根拠と従属性

★コア規範(逐語で覚えるのはここだけ)

共犯の処罰根拠は、正犯の実行行為を介して間接的に法益侵害結果を惹起した点にある(惹起説)。共犯成立には正犯に構成要件該当・違法な結果惹起を要するが、違法は連帯し責任は個別に判断されるから、正犯の行為が構成要件に該当し違法であれば足り、有責であることは要しない(制限従属性説)。

復元キー(趣旨から再構成する鎖)

  1. 処罰根拠=正犯を通じた間接的な法益侵害(惹起説)
  2. どこまで正犯に要求するか=従属性の程度問題
  3. 原則=違法は連帯・責任は個別
  4. 結論=正犯は構成要件該当+違法で足り、有責性不要(制限従属性説)
  5. 帰結=刑事未成年(41条)の正犯でも教唆・幇助は成立

フル論証(正本)

共犯の処罰根拠は、共犯が正犯の実行行為を介して間接的に法益侵害結果を惹起した点にある(混合惹起説)。そうだとすれば、共犯が成立するには正犯において構成要件に該当する違法な結果惹起が存在することを要する。もっとも、正犯にどの程度の犯罪要素を要求するかについては、違法は連帯的に作用する一方、責任は行為者ごとに個別に判断されるべきである。したがって、正犯の行為が構成要件に該当し違法であれば足り、有責であることまでは要しない(制限従属性説)。

【事例】 成人甲は、是非を弁識する能力のない12歳の少年乙に対し、コンビニで商品を万引きするようそそのかし、乙はこれに従って商品を窃取した。

【問題提起】 正犯乙が刑事未成年(41条)で責任を欠く場合でも、甲に窃盗罪の教唆犯が成立するか。

【あてはめ】 乙は12歳で刑事未成年(41条)であり責任を欠くから、乙に窃盗罪は成立しない。もっとも、乙の万引き行為は窃盗罪の構成要件に該当し違法である。制限従属性説によれば正犯の行為が構成要件該当・違法であれば足りるから、甲はこの違法な正犯行為を介して間接的に法益を侵害したといえ、甲に窃盗罪の教唆犯が成立する(違法は連帯・責任は個別)。

短答ひっかけ

  • 広義の共犯=共同正犯60・教唆61・幇助62/狭義の共犯=教唆・幇助。
  • 処罰根拠=混合惹起説〔通説〕(正犯を介し間接的に法益侵害)。
  • 要素従属性=制限従属性説〔通説〕(構成要件該当・違法で足り有責性不要)。
  • 違法は連帯・責任は個別(12歳に教唆→正犯責任なしでも教唆犯成立しうる)。

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